(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】冷却貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/02 20060101AFI20240517BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F25D23/02 305Z
F25D23/02 306D
F25D23/02 306Z
F25D23/02 A
F25D11/00 101D
(21)【出願番号】P 2019195218
(22)【出願日】2019-10-28
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 俊明
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-010775(JP,U)
【文献】特開平10-132448(JP,A)
【文献】実開昭48-007401(JP,U)
【文献】特開平09-014825(JP,A)
【文献】特開2011-111880(JP,A)
【文献】実開平01-175293(JP,U)
【文献】特開2017-156020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口した筐体状とされ、貯蔵物を貯蔵可能な貯蔵室を有する貯蔵庫本体と、前記貯蔵庫本体に対し、前記貯蔵室を閉じた状態と開いた状態との間で回動可能に取り付けられた扉と、前記貯蔵庫本体の下側に配された複数の車輪と、を備えて移動可能とされた冷却貯蔵庫であって、
前記扉は、
前記貯蔵室を閉じた状態において前記貯蔵室の開口縁部を覆う形の扉本体部と、
前記扉本体部において当該扉の回動軸側の端部とは反対側の端部に取り付けられた扉開閉機構部と、を備え、
前記扉開閉機構部は、
磁石が取り付けられた基部と、
前記基部に対し取付部によって取り付けられ、前記取付部を支点として揺動可能とされる把持部であって、前記基部から離れる方向に延伸し、作業者が把持可能な把持部と、
前記把持部に対する操作に基づいて、前記開口縁部に対して当接する状態と離間する状態との間で変位可能に構成された可変当接部と、を備え、
前記基部は、前記開口縁部に当接可能な当接面を備え、
前記磁石は、前記取付部よりも前記開口縁部に近い方向に位置し、前記当接面と面一になる形で配され、
前記磁石による磁力に基づいて前記扉が前記開口縁部に当接し前記貯蔵室を閉じた状態から、前記把持部が前記開口縁部から離れる方向に操作されることで、前記可変当接部の一部が、前記面一である前記磁石及び前記当接面よりも前記開口縁部に近い方向に延出して前記開口縁部に当接し、その当接によって前記磁力に抗して前記扉が前記開口縁部から離間することで、前記貯蔵室を開いた状態に変化する構成とされていることを特徴とする冷却貯蔵庫。
【請求項2】
前記扉本体部は、前記扉が前記貯蔵室を閉じた状態において、前記開口縁部側の面側、且つ外側の端部において、弾性力を有する弾性部を備え、
前記弾性部には、磁石が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項3】
前記扉開閉機構部は、前記扉本体部の端縁に取り付けられ、
前記把持部は、前記扉が前記貯蔵室を閉じた状態において、前記扉本体部における前記開口縁部側の
面とは反対側の面から離れる方向に延伸していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵室は、その内部において複数の棚板を上下方向に並ぶ形で載置可能な構成とされ、
当該冷却貯蔵庫は、
前記貯蔵室の下方に配され、圧縮機と凝縮器とを含む機械室と、
前記貯蔵室内における上部に配された冷却器と、
前記機械室から前記貯蔵室内に入り込んで前記圧縮機、前記凝縮器、及び前記冷却器を接続する冷媒管と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷却貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却貯蔵庫として、特許文献1に記載のものが知られている。具体的には、貯蔵物が配される貯蔵室を有する箱体と、貯蔵室の上方に配される機械室と、箱体に回動可能に取り付けられた扉と、を備え、扉には、作業者が把持して当該扉を開閉する把持部(ハンドル)が設けられた冷却貯蔵庫が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、例えば複数のキャスタ(車輪)を設けて冷却貯蔵庫を移動させようとすると、箱体に取り付けられた扉が振動等により不測に開いてしまう可能性が考えられる。また、冷却貯蔵庫の扉は、貯蔵室内の冷気が貯蔵室外に流出しないように、若しくは、貯蔵室外の空気が貯蔵室内に流入しないように、貯蔵室の気密性が確保できることが望ましい。さらに、扉の開閉の際に、作業者が把持部を安全に把持してスムーズに扉を開閉できることが望ましい。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、扉が不測に開くことを防ぐことができる冷却貯蔵庫を提供することを目的の一つとする。また、貯蔵室の気密性が確保できる冷却貯蔵庫を提供することをさらなる目的の一つとする。さらに、安全かつスムーズに扉を開閉可能な冷却貯蔵庫を提供することをさらなる目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の冷却貯蔵庫は、前方に開口した筐体状とされ、貯蔵物を貯蔵可能な貯蔵室を有する貯蔵庫本体と、前記貯蔵庫本体に対し、前記貯蔵室を閉じた状態と開いた状態との間で回動可能に取り付けられた扉と、前記貯蔵庫本体の下側に配された複数の車輪と、を備えて移動可能とされ、前記扉は、前記貯蔵室を閉じた状態において前記貯蔵室の開口縁部を覆う形の扉本体部と、前記扉本体部において当該扉の回動軸側の端部とは反対側の端部に取り付けられた扉開閉機構部と、を備え、前記扉開閉機構部は、磁石が取り付けられた基部と、前記基部から離れる方向に延伸し、作業者が把持可能な把持部と、前記把持部に対する操作に基づいて、前記開口縁部に対して当接する状態と離間する状態との間で変位可能に構成された可変当接部と、を備え、前記磁石による磁力に基づいて前記扉が前記開口縁部に当接し前記貯蔵室を閉じた状態から、前記把持部が前記開口縁部から離れる方向に操作されることで、前記可変当接部が前記開口縁部に当接し、その当接によって前記磁力に抗して前記扉が前記開口縁部から離間することで、前記貯蔵室を開いた状態に変化する構成とされていることに特徴を有する。
【0007】
このような冷却貯蔵庫によると、扉が貯蔵室を閉じた状態では、扉本体部において扉の回動軸側の端部とは反対側の端部に配された基部の磁石が、貯蔵室の開口縁部に吸着することで、扉本体部を開口縁部に密着させることができる。これにより、冷却貯蔵庫の移動中であっても、貯蔵室の気密性を確保し、扉が貯蔵室を閉じた状態を好適に保つことができる。また、扉開閉機構部は、磁石による磁力に基づいて扉が開口縁部に当接し貯蔵室を閉じた状態から、把持部が開口縁部から離れる方向に操作されることで、可変当接部が開口縁部に当接し、その当接によって磁力に抗して扉が開口縁部から離間することで、貯蔵室を開いた状態に変化する構成とされているので、作業者が、把持部を把持して前方に引っ張る等により操作することにより、スムーズに扉を回動させて貯蔵室を開いた状態にすることができる。
【0008】
上記構成において、前記扉本体部は、前記扉が前記貯蔵室を閉じた状態において、前記開口縁部側の面側、且つ外側の端部において、弾性力を有する弾性部を備え、前記弾性部には、磁石が取り付けられていることとすることができる。
【0009】
このような冷却貯蔵庫によると、扉が貯蔵室を閉じた状態では、弾性部に取り付けられた磁石が開口縁部に吸着することによって弾性部が開口縁部に引き寄せられる形で弾性変形することができる。これにより、貯蔵室内の気密性を向上させることができる。
【0010】
上記構成において、前記扉開閉機構部は、前記扉本体部の端縁に取り付けられ、前記把持部は、前記扉が前記貯蔵室を閉じた状態において、前記扉本体部における前記開口縁部側の面側とは反対側の面から離れる方向に延伸していることとすることができる。このような冷却貯蔵庫によると、把持部と、開口縁部及び扉本体部との間に隙間が設けられることとなるので、作業者が当該隙間に手指を安全に挿入し、把持部を把持することでスムーズに扉を開閉することができる。
【0011】
上記構成において、前記基部は、前記開口縁部に当接可能な当接面を備え、前記基部に取り付けられた前記磁石は、前記当接面と面一になる形で配されていることとすることができる。このような冷却貯蔵庫によると、扉を閉めた状態では、開口縁部と当接面が当接し、基部に取り付けられた磁石が開口縁部に対し面当てされる形で当接することができ、扉本体部を開口縁部にさらに密着させることができる。
【0012】
上記構成において、前記貯蔵室は、その内部において複数の棚板を上下方向に並ぶ形で載置可能な構成とされ、当該冷却貯蔵庫は、前記貯蔵室の下方に配され、圧縮機と凝縮器とを含む機械室と、前記貯蔵室内における上部に配された冷却器と、前記機械室から前記貯蔵室内に入り込んで前記圧縮機、前記凝縮器、及び前記冷却器を接続する冷媒管と、を備えることとすることができる。
【0013】
このような冷却貯蔵庫によると、貯蔵室内において冷気を好適に循環することができるとともに、比較的重い部材(圧縮機及び凝縮器)を貯蔵室の下方に配して冷却貯蔵庫の重心を下げることができる。これにより、作業者が扉を開閉する際に冷却貯蔵庫が動いたり転倒したりしてしまうことを防ぐことができる。そして、貯蔵室内に複数の棚板が載置されていても、作業者が安全かつスムーズに扉の開閉を行うことができる冷却貯蔵庫を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、扉が不測に開くことを防ぐことができる冷却貯蔵庫を提供することが可能となる。また、貯蔵室の気密性が確保できる冷却貯蔵庫を提供することが可能となる。さらに、安全かつスムーズに扉を開閉可能な冷却貯蔵庫を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態において、扉が貯蔵室を閉じた状態の冷却貯蔵庫を示す斜視図
【
図2】扉が貯蔵室を開いた状態の冷却貯蔵庫を示す斜視図
【
図3】扉が貯蔵室を開いた状態の冷却貯蔵庫を前方から視た正面図
【
図4】扉が貯蔵室を閉じた状態の冷却貯蔵庫の断面図(
図3におけるA-A線断面)
【
図7】扉が貯蔵室を閉じた状態において扉開閉機構部付近を左方から視た拡大図
【
図8】可変当接部が開口縁部に当接した態様を左方から視た拡大図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態である冷却貯蔵庫10を
図1から
図8によって説明する。尚、矢印方向Fを前方(冷却貯蔵庫10の正面側の方向)、矢印方向Bを後方(冷却貯蔵庫10の背面側の方向)、矢印方向Uを上方、矢印方向Dを下方、矢印方向Lを左方、矢印方向Rを右方として各図を説明する。
【0017】
図1に示すように、冷却貯蔵庫10は、複数のキャスタ(車輪)11を有する台車部12と、その台車部12上に立設する縦長の貯蔵庫本体13と、扉70と、を備えており、複数のキャスタ11が回転することにより、床面上を容易に移動させることが可能なものとなっている。貯蔵庫本体13は、
図2から
図4に示すように、前方に開口した筐体状とされ、貯蔵物を貯蔵可能な貯蔵室15と、その貯蔵室15の下方に配された機械室16と、を有している。尚、貯蔵室15は、貯蔵庫本体13におけるその貯蔵室15を形成する各壁部および扉70の内部に断熱材が充填されて、断熱性を有するものとなっているが、各断面図において断熱材の図示を省略している。
【0018】
貯蔵室15内には、左右の側壁面15A,15Bの各々に、前後2本ずつの棚柱20が固定されている。そして、左右の側壁面15A,15Bの各々において、前後の棚柱20に渡すようにしてトレイガイド21が着脱可能とされており、食材等の貯蔵物を載せたトレイ(棚板)22を、前方から挿入し、左右で一対をなすトレイガイド21上に載置することが可能とされている。なお、貯蔵室15内には、複数対のトレイガイド21を取り付けることが可能とされており、複数のトレイ22を上下方向に並ぶ形で載置することが可能となっている。
【0019】
冷却貯蔵庫10は、貯蔵庫本体13の内部(貯蔵室15)を冷却するための冷却装置30を備えている。
図4及び
図5に示すように、機械室16には、その冷却装置30の一部(機械室側ユニット)30Aが設けられている。機械室側ユニット30Aは、凝縮器31と、凝縮器ファン32と、圧縮機33と、を備える。機械室側ユニット30Aは、機械室16の右側に配されており、前方から凝縮器31,凝縮器ファン32,圧縮機33の順で設けられている。そして、この機械室側ユニット30Aから後方に向かって冷媒管34A,34Bが延び出しており、それら冷媒管34A,34Bによって、貯蔵室15内に配された冷却器(蒸発器)35と循環接続されている。なお、冷媒管34Aは、圧縮機33が凝縮器31を介して冷却器35側に冷媒を吐出する吐出側冷媒管であり、冷媒管34Bは、圧縮機33が冷却器35側から冷媒を吸入する吸入側冷媒管である。冷却装置30が作動することで、冷却器35が冷気を生成し、貯蔵室15を冷却することが可能な構成となっている。
【0020】
なお、機械室16内における台車部12の上面には、前後方向にスライド可能なスライダ36が設けられており、上記の凝縮器31,凝縮器ファン32,圧縮機33は、そのスライダ36上に固定されている。そして、機械室16の前方には、
図1から
図5に示すように、脱着可能なフロントパネル16Aが取り付けられている。フロントパネル16Aを取り外して、スライダ36を前方に移動させることで、機械室側ユニット30Aのメンテナンス等を行うことが可能とされている。
【0021】
図5に示すように、機械室16には、機械室側ユニット30Aの左側(機械室16の左側)で、フロントパネル16Aの後方に、本冷却貯蔵庫10が備える各機器類の動作を制御するための電装箱40が設けられている。その電装箱40の後方には、概して直方体形状の空間を区画するための区画部材41が設けられており、その区画部材41によって区画された空間に、冷却貯蔵庫10の庫内排水を溜めるドレンタンク42が設けられている。なお、この区画部材41によって区画された空間は、後方に開口しており、ドレンタンク42は、後方側から容易に取り出せるようになっている。
【0022】
図4に示すように、冷却器35は、貯蔵庫本体13における貯蔵室15の天井面15Cに固定されている。そして、上述した冷媒管34A,34Bは、機械室16における後端部において屈曲し、上方に向かって延び、冷却器35と接続されている。具体的には、冷媒管34A,34Bは、機械室16から貯蔵室15内に入り込んで、貯蔵室15の背面15Dにおける右側の側端部に沿って延設されている。なお、それら冷媒管34A,34Bは、貯蔵室15内の右奥の角部に沿って取り付けられた冷媒管カバー50によって覆われている。
【0023】
上記の冷却器35および冷媒管34A,34Bの冷却器35への接続部は、ハウジング部材51によって覆われている。ハウジング部材51は、天井面15Cに取り付けられた金属製のスペーサ51Aと、スペーサ51Aの下側に取り付けられた樹脂製のエアダクト51Bとからなる。ハウジング部材51と貯蔵室15の天井面15Cとの間には、冷却器室52が設けられている。エアダクト51Bにおいて、冷却器35の前方には、庫内ファン53が設けられている。その庫内ファン53の駆動により、貯蔵室15内の空気が冷却器室52内に吸引される。エアダクト51Bの後端と、貯蔵室15の背面15Dとの間には、隙間54が設けられている。庫内ファン53から吸引されて冷却器35を通過する間に熱交換されて生成された冷気は、その隙間54から下方に吹き出される。隙間54は、冷却器室52の吹出口となっているともいえる。以上のような構成から、圧縮機33、凝縮器ファン32および庫内ファン53が駆動されると、冷却器室52から貯蔵室15内に、冷気が循環供給される構成となっている。
【0024】
なお、エアダクト51Bは、ドレンパンとしても機能する。エアダクト51Bは、その底面が後方に向かうにつれて下降傾斜する形とされており、冷却器35からエアダクト51Bの底面に滴下した水は、後方に向かって流れるようになっている。エアダクト51Bの後端には、ドレンホース60が接続されている。ドレンホース60は、貯蔵庫本体13の背面15D側の壁部の内部を通って機械室16にまで延出されている。
図5に示すように、ドレンホース60の下端は、ドレンタンク42の上方に開口しており、冷却器室52において生じた除霜水は、ドレンタンク42に流下して溜まるようになっている。尚、冷却運転によって冷却器35に生じた着霜は、本実施形態では、適宜冷却運転を止めることによって融解させる構成としている。除霜の方法は、このようなオフサイクルデフロストに限定されるものではなく、冷却器35に除霜ヒータを付設し、これに通電して融解させる構成としてもよい。また、電源コードを抜き電力供給を停止した状態で冷却貯蔵庫10を移動させる際にも、冷却運転が止まることによって着霜が融解され、除霜水が生じる場合がある。
【0025】
図2から
図4に示すように、貯蔵室15は、前方の端部において、前方に開口した部分をなす開口部17を備える。開口部17は、その前方の縁部であって、正面視枠状の形をなす開口縁部17Aを備える。開口縁部17Aの左側かつ上下方向における中央部分には、金属からなる板状の金属板18が当該開口縁部17Aに沿う形で取り付けられている。扉70は、開口縁部17Aの右側、且つ上下側に設けられた2つのヒンジ部14A,14Bによって貯蔵室15に対し回動軸Oを回転軸として回動可能に取り付けられている。
図1及び
図4では、扉70が貯蔵室15を閉じた状態を示し、
図2及び
図3では、扉70が貯蔵室15を開いた状態を示している。尚、金属板18は、その前側の面が開口縁部17Aと面一となる形で取り付けられていてもよい。また、貯蔵室15は、その開口部17において金属製の開口縁部17Aを備え、上記金属板18が設けられていない構成であってもよい。
【0026】
扉70は、上下方向に長板状をなす扉本体部71と、扉本体部71において、回動軸O側の端部71Aとは反対側の端部71Bの端縁71B1に取り付けられた扉開閉機構部80と、を備える。扉本体部71は、扉70が貯蔵室15を閉じた状態において貯蔵室15の開口縁部17Aの一部(内側部分)を覆う形とされている。扉70が貯蔵室15を閉じた状態では、扉70における扉本体部71の周縁部(外側の端部)に設けられたパッキン72(詳細は後述する)が開口縁部17Aに密着し、開口部17の開口が扉本体部71によって塞がれることで、貯蔵室15内が密閉されている。扉70が貯蔵室15を開いた状態では、扉70が回動軸Oを回転軸として前方に回動し、貯蔵室15内が開放されている。
【0027】
図6は、扉70において開口縁部17Aに密着する面(裏面)70B側から当該扉70を見た図である。扉本体部71は、裏面70B側、且つ周端部(外側の端部)において、枠状をなす形で設けられた弾性力を有するパッキン(弾性部)72を備える。パッキン72は、中空状とされ、外側に向かうほど裏面側の方向に段階的に高くなる形をなしている。パッキン72の内部には、帯状の形をなす磁石M1が4つ取り付けられている。磁石M1は、磁力によって貯蔵室15の開口縁部17Aに吸着可能とされている。
【0028】
図1及び
図2や、
図6から
図8に示すように、扉開閉機構部80は、開口縁部17Aの金属板18に吸着可能な磁石M2が取り付けられた基部81と、基部81に対し取付部84によって取り付けられ、作業者が把持可能な把持部82と、後述する可変当接部83と、を備える。基部81は、扉70が貯蔵室15を閉じた状態において、開口縁部17Aに設けられた金属板18に当接する平面状の当接面81Aを備える。基部81に取り付けられた磁石M2は、上下方向に長板状をなし、当接面81Aと面一になる形で配されている。従って、扉70が貯蔵室15を閉じた状態では、基部81に取り付けられた磁石M2は、金属板18に面当てする形で当接する。尚、扉開閉機構部80としては、例えば、「Component Hardware Group」の「R25 Series」を採用することができる。
【0029】
図7及び
図8に示すように、把持部82は、その上端部82Aに向かうほど、基部81から上方(基部81から離れる方向)且つ扉70の裏面70Bとは反対側の面である表面70Aから前方(扉70の表面70Aから離れる方向)に延伸している。把持部82は、作業者に操作されることで、取付部84を支点として、その上端部82Aと下端部82Bが前後方向に揺動可能とされている。例えば、把持部82は、
図7に示す状態(この状態を定常状態とする)から、作業者の操作により上端部82Aが前方に傾くと(扉70が貯蔵室15を閉じた状態において、開口縁部17Aから離れる方向に操作されると)、下端部82Bが後方に傾き、
図8に示す状態(この状態を前傾状態とする)となる。尚、把持部82の下端部82Bの後端部には、当該下端部82Bを前方に付勢するバネ等からなる付勢部材85が取り付けられている。
【0030】
可変当接部83は、前後方向を高さ方向とする円柱状をなしており、把持部82に対する操作に基づいて、開口縁部17Aの金属板18に対して当接する状態と離間する状態との間で変位可能に構成されている。具体的には、
図7に示すように把持部82が定常状態のときは、可変当接部83は、基部81内に収容されており、当該可変当接部83の後端部が、基部81の当接面81Aよりも前方に位置し、金属板18から離間している(尚、把持部82が定常状態のときに、可変当接部83は、当接面81Aと面一の位置に配されていてもよく、この場合、例えば、基部81に設けられた磁石M2の磁力よりも小さい力で金属板18を押圧していてもよい)。一方、
図8に示すように、把持部82が前傾状態のときは、可変当接部83は、その後端部が、基部81の当接面81Aから後方に延出する(開口縁部17Aに当接する状態へ変位する)。扉70が貯蔵室15を閉じた状態のときは、把持部82が前傾状態となることで、可変当接部83の後端部が、開口縁部17Aの金属板18に対して当接しつつ、基部81に設けられた磁石M2の磁力に抗する形で金属板18を押圧する。
【0031】
図1及び
図7に示すように、扉70が貯蔵室15を閉じた状態、且つ把持部82が定常状態のときは、基部81に設けられた磁石M2(
図6参照)が開口縁部17Aの金属板18に引き寄せられ、当該磁石M2の磁力に基づいて扉70が開口縁部17Aに当接している。また、扉70のパッキン72が、その内部に設けられた磁石M1の磁力に基づいて開口縁部17Aに密着している。この状態から、作業者が把持部82の上端部82Aを把持して前方に傾ける等の操作を行うことで、把持部82が前傾状態となると、
図8に示すように、可変当接部83の後端部が、開口縁部17A側(後方)に変位し、開口縁部17Aの金属板18に対して当接しつつ、基部81に設けられた磁石M2の磁力に抗して、当該磁石M2と金属板18とを離間させる。そして、扉70が開口縁部17Aから離間することで、
図2に示すように、扉70が貯蔵室15を開いた状態に変化すると共に、付勢部材85が把持部82の下端部82Bを前方に付勢することにより、把持部82が定常状態に戻る。
【0032】
続いて、本実施形態の効果を説明する。本実施形態における冷却貯蔵庫10は、前方に開口した筐体状とされ、貯蔵物を貯蔵可能な貯蔵室15を有する貯蔵庫本体13と、貯蔵庫本体13に対し、貯蔵室15を閉じた状態と開いた状態との間で回動可能に取り付けられた扉70と、貯蔵庫本体13の下側に配された複数のキャスタ11と、を備えて移動可能とされ、扉70は、貯蔵室15を閉じた状態において貯蔵室15の開口縁部17Aを覆う形の扉本体部71と、扉本体部71において当該扉70の回動軸O側の端部71Aとは反対側の端部71Bに取り付けられた扉開閉機構部80と、を備え、扉開閉機構部80は、磁石M2が取り付けられた基部81と、基部81から離れる方向に延伸し、作業者が把持可能な把持部82と、把持部82に対する操作に基づいて、開口縁部17Aに対して当接する状態と離間する状態との間で変位可能に構成された可変当接部83と、を備え、磁石M2による磁力に基づいて扉70が開口縁部17Aに当接し貯蔵室15を閉じた状態から、把持部82が開口縁部17Aから離れる方向に操作されることで、可変当接部83が開口縁部17Aに当接し、その当接によって磁力に抗して扉70が開口縁部17Aから離間することで、貯蔵室15を開いた状態に変化する構成とされている。
【0033】
このような冷却貯蔵庫10によると、扉70が貯蔵室15を閉じた状態では、扉本体部71において扉70の回動軸O側の端部71Aとは反対側の端部71Bに配された基部81の磁石M2が、貯蔵室15の開口縁部17Aに吸着することで、扉本体部71を開口縁部17Aに密着させることができる。これにより、冷却貯蔵庫10の移動中であっても、貯蔵室15の気密性を確保し、扉70が貯蔵室15を閉じた状態を好適に保つことができる。また、扉開閉機構部80は、磁石Mによる磁力に基づいて扉70が開口縁部17Aに当接し貯蔵室15を閉じた状態から、把持部82が開口縁部17Aから離れる方向に操作されることで、可変当接部83が開口縁部17Aに当接し、その当接によって磁力に抗して扉が開口縁部17Aから離間することで、貯蔵室15を開いた状態に変化する構成とされているので、作業者が、把持部82の上端部82Aを把持して前方に引っ張る等により操作することにより、スムーズに扉70を回動させて貯蔵室15を開いた状態にすることができる。
【0034】
また、扉本体部71は、扉70が貯蔵室15を閉じた状態において、開口縁部17A側の面70B側、且つ外側の端部において、弾性力を有するパッキン72を備え、パッキン72には、磁石M1が取り付けられている。
【0035】
このような冷却貯蔵庫10によると、扉70が貯蔵室15を閉じた状態では、パッキン72に取り付けられた磁石M1が開口縁部17Aに吸着することによってパッキン72が開口縁部17Aに引き寄せられる形で弾性変形することができる。これにより、貯蔵室15内の気密性を向上させることができる。
【0036】
また、扉開閉機構部80は、扉本体部71の端縁71B1に取り付けられ、把持部82の上端部82Aは、扉70が貯蔵室15を閉じた状態において、扉本体部71における開口縁部17A側の面70B側とは反対側の面70Aから離れる方向に延伸している。このような冷却貯蔵庫10によると、把持部82の上端部82Aと、開口縁部17A及び扉本体部71との間に隙間が設けられることとなるので、作業者が当該隙間に手指を安全に挿入し、把持部82を把持することでスムーズに扉70を開閉することができる。
【0037】
また、基部81は、開口縁部17Aの金属板18に当接可能な当接面81Aを備え、基部81に取り付けられた磁石M2は、当接面81Aと面一になる形で配されている。このような冷却貯蔵庫10によると、扉70を閉めた状態では、開口縁部17Aの金属板18と当接面81Aが当接し、基部81に取り付けられた磁石M2が開口縁部17Aの金属板18に対し面当てされる形で当接することができ、扉本体部71を開口縁部17Aにさらに密着させることができる。
【0038】
また、貯蔵室15は、その内部において複数のトレイ22を上下方向に並ぶ形で載置可能な構成とされ、当該冷却貯蔵庫10は、貯蔵室15の下方に配され、圧縮機33と凝縮器31とを含む機械室16と、貯蔵室15内における上部に配された冷却器35と、機械室16から貯蔵室15内に入り込んで圧縮機33、凝縮器31、及び冷却器35を接続する冷媒管34A,34Bと、を備える。
【0039】
このような冷却貯蔵庫10によると、貯蔵室15内において冷気を好適に循環することができるとともに、比較的重い部材(圧縮機33及び凝縮器31)を貯蔵室15の下方に配して冷却貯蔵庫10の重心を下げることができる。これにより、作業者が扉70を開閉する際に冷却貯蔵庫10が動いたり転倒したりしてしまうことを防ぐことができる。そして、貯蔵室15内に複数のトレイ22が載置されていても、作業者が安全かつスムーズに扉70の開閉を行うことができる冷却貯蔵庫10を提供することができる。
【0040】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0041】
(1)上記実施形態以外にも、把持部の形状は適宜変更可能である。例えば、把持部は、その上端部が上方に向かうほど前方に膨出する形で湾曲していてもよい。
【0042】
(2)上記実施形態以外にも、可変当接部の形状は適宜変更可能である。上記実施形態では、可変当接部は、円柱状としたが、これに限られない。例えば、可変当接部は、四角柱状、台形柱状、又は半球状等の形状であってもよい。
【0043】
(3)上記実施形態以外にも、圧縮機と凝縮器とを含む機械室の位置は適宜変更可能である。上記実施形態では、機械室は、貯蔵室の下方に配されるものとしたが、これに限られない。例えば、機械室は、貯蔵室の上方に配されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…冷却貯蔵庫、11…キャスタ(車輪)、13…貯蔵庫本体、15…貯蔵室、16…機械室、17A…開口縁部、22…トレイ(棚板)、31…凝縮器、33…圧縮機、34A,34B…冷媒管、35…冷却器、70…扉、71…扉本体部、71B1…端縁、72…パッキン(弾性部)、80…扉開閉機構部、81…基部、81A…当接面、82…把持部、83…可変当接部、M1…弾性部に取り付けられた磁石、M2…基部に取り付けられた磁石