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  • 特許-エンジン用冷却システム 図1A
  • 特許-エンジン用冷却システム 図1B
  • 特許-エンジン用冷却システム 図2A
  • 特許-エンジン用冷却システム 図2B
  • 特許-エンジン用冷却システム 図3
  • 特許-エンジン用冷却システム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】エンジン用冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F01P 1/02 20060101AFI20240517BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20240517BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20240517BHJP
   F01P 7/12 20060101ALI20240517BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F01P1/02 B
B60K11/06
F01P5/06 502C
F01P7/12 A
F01P11/10 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019529650
(86)(22)【出願日】2017-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2017081231
(87)【国際公開番号】W WO2018100182
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-09-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】102016000122659
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】フレスキ,ジャコモ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ ネスティ
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ プッチオーニ
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】河端 賢
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-21363(JP,A)
【文献】特開2015-183664(JP,A)
【文献】米国特許第4932366(US,A)
【文献】特開2012-207574(JP,A)
【文献】特開2013-60845(JP,A)
【文献】特開昭57-34423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 1/00-F01P 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空冷式内燃機関(1)用の冷却システムであって、
冷却ファン(5)が、吸気口(7)を有するケース(6)の内部に配置され、かつ、クランクシャフト(2)によって回転状態にされるシャフト又は前記クランクシャフト(2)自身によって制御され、かつ、
前記該冷却ファン(5)が、空気流を、前記ケース(6)と連通するダクト(8)を通してエンジンブロックに接触させるよう導き、前記エンジンブロックがフィン付き表面を備えたシリンダブロックを備え、
隔壁(10)が設けられ、前記隔壁(10)が、前記ダクトを塞ぐ第一初期位置と、前記ダクト(8)を解放する第二作動位置との間で移動可能であり、前記隔壁(10)が、前記エンジン(1)の内部の流体の温度に感応する作動手段によって作動され、
前記隔壁(10)が、前記ダクト(8)の内部であって、前記冷却ファン(5)の下流であり、かつ、前記エンジンブロック及び前記エンジンブロックの前記シリンダブロックの前記フィン付き表面の上流に配置され、前記隔壁(10)が前記第一初期位置にある時に、空気流が前記エンジンブロック及び前記エンジンブロックの前記シリンダの前記フィン付き表面を冷却することを阻むようにした
ことを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記作動手段が、前記隔壁(10)を直接作動して開かせる
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記作動手段が、前記エンジン内部の前記流体の温度に感応して変位するように構成され、前記作動手段の変位方向が、冷却されるべき前記エンジン(1)の前記クランクシャフト(2)の軸線方向と一致している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記冷却ファン(5)が前記ケース(6)に収容され、前記ダクト(8)が、前記ケース(6)の延長部(9)によって形成されている
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記隔壁(10)が、前記冷却ファン(5)の近くで、支点として作用する軸(11)に回転可能に固定されている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記軸(11)の両端に、各々、予荷重バネが設けられ、
前記予荷重バネが、第一予荷重バネ(12)と第二予荷重バネ(13)を備え、
前記第一予荷重バネ(12)が、前記隔壁(10)が前記ダクト(8)を塞ぐ第一初期位置に前記隔壁(10)を維持するようにし、
前記第二予荷重バネ(13)が、前記隔壁(10)が前記ダクト(8)を解放する第二作動位置に前記隔壁(10)を維持するようにし、
前記第予荷重一バネ(12)によって前記隔壁(10)に及ぼされる力が、前記第二予荷重バネ(13)によって及ぼされる力より高い
ことを特徴とする請求項5に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記隔壁(10)の前記作動手段が、前記エンジンブロックを循環する潤滑油の温度に感応する
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記作動手段が、熱膨張性材料で満たされたタンク(15)を内部に有する熱膨張式作動装置(14)と、
前記熱膨張性材料の膨張によって変位される制御ロッド(17)と
を備えている
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の冷却システム。
【請求項9】
前記熱膨張式作動装置(14)の前記タンク(15)が、冷却すべき前記エンジンブロックの一部、好ましくは、前記シリンダブロックの外面に直接接触する
ことを特徴とする請求項8に記載の冷却システム。
【請求項10】
前記制御ロッド(17)が、前記第二予荷重バネ(13)を押圧し、それに伴い、前記第一予荷重バネ(12)のねじり力と反対の方向に、前記隔壁(10)を開く
ことを特徴とする請求項6を引用する請求項8に記載の冷却システム。
【請求項11】
前記隔壁(10)が、前記軸(11)に近い近位端部(18)と、それより遠い遠位端部(19)を備え、
前記第二作動位置において、前記近位端部(18)が、第二予荷重バネ(13)によって押圧されて第一当接要素(20)に当接し、隔壁(10)がそれ以上、前記制御ロッド(17)の変位によって及ぼされる力では動かないようにし、前記制御ロッド(17)が熱膨張性材料の膨張に応じて伸び続けている場合に、前記制御ロッド(17)の変位によって及ぼされる力前記第二予荷重バネ(13)にのみ作用するようにし、
前記第一初期位置において、前記第一予荷重バネ(12)の作用により、前記隔壁(10)の前記遠位端部(19)が前記第二当接要素(21)に載るようにした
ことを特徴とする請求項5を引用する時の請求項8を引用する請求項9に記載の冷却システム。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の前記冷却システムを備えたスクータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スクータ用の、例えば、空冷エンジンのようなエンジンの冷却システムに関し、冷却ファンが、クランクシャフトによって回転状態に置かれるシャフト、又はクランクシャフト自身によって制御され、ダクトを通して空気流をエンジンブロックに接触するように指向する冷却システムに関する。
【0002】
内燃機関の軸線は、概して、オートバイの長手方向に対して横方向であり、前記軸線は、地面に対して水平であり、かつ、直線に従ってオートバイが前進している時に、固定された、即ち、操舵されない後輪の回転面によって実質的に画定される垂直面に直交している。
【0003】
都合よくは、エンジンを冷却するファンは、ファンを回転させるクランクシャフトの一端に直接固定され得るか、又は、クランクシャフトに隣接して平行な別の軸であって、クランクシャフトによって回転状態で作動される別の軸に直接固定され得る。
【0004】
それを通して空気を吸引する保護ガードの位置決めにより、保護ガードに空気流が正面で当たらずに、接線方向に当たるようになる。その後、冷却のために必要な空気は、その軸線が、オートバイの前進運動から生じる空気流に対して実質的に直交するファンによって吸引される。
【背景技術】
【0005】
ファンがクランクシャフトの回転から独立して、例えば、電気モータによって作動されない公知の例では、ファンの回転状態は、冷却要求に直接依存せずに、エンジンの回転状態によって決められる。
【0006】
しかしながら、エンジンは、例えば、始動段階において、又は、特に寒い気候では、クランクシャフトの回転状態に依存しない冷却要求を有し得ることは明らかである。
【0007】
それにも拘わらず、ファンが回転を停止しないと、クランクシャフトの回転状態に依存して所定のヘッドで空気を吸引し続け、エンジンの温度上昇を遅れさせ、エンジンを始動して作動状態にすることを困難にする。
【0008】
これにより、高い慣性力及び流動性の低い流体に作用するオイルポンプの動作が原因となって、エネルギー消費が高くなり、エンジンが正しく動作しなくなる。
【0009】
本発明の根底にある技術的課題は、従来技術を参照して説明した問題点を解決することができるエンジン用冷却システムを提供することにある。
【発明の概要】
【0010】
このような問題は、添付の特許請求の範囲の請求項1に特定された冷却システムによって解決される。
【0011】
好ましい解決手段では、エンジン内部の流体は、エンジンブロック内を循環する潤滑油であり、作動手段は、熱膨張性材料を有し、前記熱膨張性材料は、温度が上昇した時にその体積を増やし、隔壁に直接作用して、それを回転させる。特に、この材料は、好ましくは、ワックスであり得、ワックス作動装置を用いて活性化が行われる。
【0012】
前記ワックス作動装置は、冷却されるべきエンジンブロックの一部に直接接触する位置に配置され得る。添付図面に示すように、前記ワックス作動装置は、内部でピストンが摺動するシリンダブロックのフィン付き壁に直接配置され得る。
【0013】
本発明に係る冷却システムの主たる利点は、エンジンのファンの構造を変えない完全に機械的な解決手段によって、エンジンがまだ冷えている時に、エンジンの望ましくない冷却を防止することにある。さらに、この解決手段は、作動手段がエンジンの冷却すべき部分の温度に直接リンクしているので、冷却システムの応答時間を早くすることを可能にする。
【0014】
また、隔壁がファンの下流にあるダクトの範囲内に直接配置されているので、隔壁を、その動作を妨げる可能性がある偶発的な衝撃から保護し、かつ、エンジンブロックの過度の加熱から生じ得る損傷から保護する。
【0015】
以下に、添付図面を参照して、限定する目的ではなく実施例として提供される好ましい実施の形態に従って、本発明を説明していく。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本発明による冷却システムを組み込んだ空冷式エンジン及びそのファンの長手方向断面の部分図を示している。
図1B】本発明による冷却システムを組み込んだ空冷式エンジン及びそのファンの長手方向断面の部分図を示している。
図2A図1A及び図1Bの冷却システムの動作を示す、空冷式エンジン及びそのファンの長手方向断面の部分図を示している。
図2B図1A及び図1Bの冷却システムの動作を示す、空冷式エンジン及びそのファンの長手方向断面の部分図を示している。
図3図1及び図2に示した冷却システムの上面斜視図の部分断面図である。
図4図3の冷却システムの詳細の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照すると、推進ユニット1が部分的に示されている。この推進ユニット1は、空冷式単気筒内燃機関を備え、そのエンジンブロックが図示されている。エンジンブロックの内部にはシリンダが形成され、エンジンブロックにはフィン付き外壁が設けられている。
【0018】
推進ユニット1は、クランクシャフト2を備え、該クランクシャフト2は、動力を不図示の動力伝達要素に伝達する。クランクシャフト2は、動力伝達要素に対して反対方向に延びており、各固定子巻線4を有する電気モータ3に接続されている。
【0019】
クランクシャフト2は、オートバイの長手方向に対して横方向であり、地面に対して水平であり、加えて、オートバイが直線に沿って前進する時に、固定された、即ち、操舵されない後輪の回転面によって実質的に確定される垂直面に対して直交している。
【0020】
モータ3は、単純な電流発生装置であり得、内燃機関及び使用可能な補助部材に電気エネルギーを供給し、及び/又はバッテリーに給電するよう機能する。
【0021】
この実施例では、推進ユニット1は、冷却システムを備え、該冷却システムは、クランクシャフト2に直接固定された冷却ファン5を有する。クランクシャフト2は、ファンを駆動させるためのシャフトとして機能する。
【0022】
ファンは、クランクシャフトとは異なる駆動シャフトに固定されてもよく、それによって、クランクシャフトに対してファンをオフセットして回転させることができる。
【0023】
ファン5は、ケース6の内部に設けられており、ケース6は、保護ガードを備え、吸気口7を有する。ファン5は、単純な固定接続部材によってクランクシャフト2の端部に固定されている。ファン5は、クランクシャフト2の領域で連続的に回転し、ケース6の延長部9によって形成されたダクト8を通して冷却空気流を導き、空気流がエンジンブロックのフィン付き表面に接触し、それを冷却するようにしている。ダクト8は、ファン5から空気流の排気方向に従って下流に延びている。
【0024】
隔壁10は、ファン5の近くで、かつ、ダクト8の内部で、支点として作用する軸11に回転可能に固定されている。軸11の両端には、各々、予荷重バネが設けられており、第一の予荷重バネ12は、隔壁10を、それがダクト8を塞ぐ初期位置に保ち(図1B及び図2B)、第二の予荷重バネ13は、隔壁10を、ダクト8を解放する第二レジーム位置に保つ(図1A及び図2A)。
【0025】
バネは両方とも、隔壁10の軸11に巻かれた螺旋バネであり、隔壁10に対向するねじり力を伝達する。第一バネ12によって加えられる力は、第二バネ13によって加えられる力より大きい。
【0026】
本明細書に記載の冷却システムは、推進ユニット1内を循環する流体の温度に感応して隔壁10を作動する手段を備えている。この実施例では、流体は、エンジンブロック内を循環する潤滑油であり、ユニット1のオイルポンプによって循環させられる。
【0027】
前記オイルは、前記作動手段に接触し、この実施例では、前記作動手段は、熱膨張性材料、好ましくは、ワックスで満たされたタンクを内部に有するワックス作動装置14で構成されている。
【0028】
この材料の膨張により、制御ロッド17の変位が決まり、制御ロッド17は、機械的部材やロッドを介在させることなく、隔壁10を直接押圧し、それに伴い、隔壁10を開かせる。隔壁10は、前記開く動作により、第一バネ12のねじり力に抗して、空気流の排気方向と実質的に平行に配置され(図1A)、第二バネ13及び第一バネ12よって及ぼされる力の差を克服する。
【0029】
隔壁10は、軸11の近くにある近位端部18及びそれより遠くにある遠位端部19を有する。
【0030】
初期状態では、隔壁10の遠位端部19は、第二当接要素21の上に載り、隔壁10は上昇させられ、空気ダクト8を塞いでいる(図1B)。
【0031】
温度が上昇すると、ロッド17が延び、第二バネ13及び隔壁10を前記レジーム位置まで回転させる。オイル温度が上昇するにつれて、二つのバネ12及び13の合成力並びにロッド17によって及ぼされる圧力によって、近位端部18が第一当接要素20に当たるまで、隔壁10は徐々に回転する。第一当接要素は、隔壁10が過度に回転することを防止する。
【0032】
ロッド17が伸び続けている時、それは第二バネ13にのみ作用する。これにより、隔壁10の位置は、所定の温度に関して、常に同じ位置になる。
【0033】
この方法により、エンジンが未だ最高温度に達していない時に、部分的な空気流の調整を行うことが可能になる。
【0034】
推進ユニット1の動作が停止すると、エンジンブロックは冷却され、隔壁は、その開始位置、即ち、第一位置に戻る。
【0035】
作動手段は、他の形態であってもよく、例えば、熱膨張性の剛性要素又は他の形態に基づくものであり得る。
【0036】
当業者は、追加の条件付きの要求を満たす満たす目的で、上述した冷却システムに対して、幾つかの改良及び変更を加えることができ、前記改良及び変更は、添付した特許請求の範囲によって定義された本発明の保護範囲内に全て含まれる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4