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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20240517BHJP
【FI】
H02K1/278
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020049348
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021151104
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 靖
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-201274(JP,A)
【文献】特開2008-182862(JP,A)
【文献】特開2009-171736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/17
1/27-1/2798
15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のステータと、
前記ステータに巻かれたコイルと、
前記ステータの径方向の内側に設けられ、かつ、回転軸線回りに回転するシャフトと、
前記シャフトに固定され、かつ、前記回転軸線に沿って貫通する貫通孔を備え、さらに前記回転軸線を径方向中心とする保持部材と、
前記保持部材の外周面に設けられた磁石と、
を有し、
前記保持部材は、前記シャフトに圧入される固定部と、前記磁石を保持する保持部とを備え、
前記貫通孔は、前記固定部に設けられた第1貫通孔と、前記保持部に設けられた第2貫通孔とを含み、
前記シャフトは、前記第1貫通孔に配置され、かつ、前記第2貫通孔には配置されず、
前記固定部と前記保持部とは、前記回転軸線に沿った方向において重ならない位置に設けられ
前記磁石を覆う筒状のカバーが設けられ、
前記カバーは、当該カバーの端部が前記固定部に固定され、
前記固定部は、当該固定部の径方向の厚さが前記保持部の径方向の厚さより厚い部分を備えていることを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
前記保持部材は、圧造部材であることを特徴とする請求項1に記載のモータ装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化を図ったモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるサンルーフ装置などの駆動源として用いられるモータ装置は、車両のドア内や天井内などの幅狭空間に配置されるため、小型化されていることが望ましい。そこで、モータ装置をより小型化するために、例えば、モータ装置が有するシャフトの一部を細くすることが考案されている。
【0003】
なお、小型化が図られたモータ装置として、例えば、特許文献1には、太さが異なり、かつ、一体に設けられた第1軸部と第2軸部とを備えたシャフト構造を有するモータ装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-140849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたモータ装置のシャフトには、太い部分と細い部分とが含まれているため、太い部分と細い部分の同軸度が悪くなり、さらに回転による振れも大きくなる可能性がある。また、シャフトにはロータコアが固定されるため、ロータコアの同軸度や振れも加わり、音や振動が大きくなる可能性もあることが課題であった。
【0006】
本発明の目的は、性能を高めつつ、小型化されたモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、環状のステータと、前記ステータに巻かれたコイルと、前記ステータの径方向の内側に設けられ、かつ、回転軸線回りに回転するシャフトと、前記シャフトに固定され、かつ、前記回転軸線に沿って貫通する貫通孔を備え、さらに前記回転軸線を径方向中心とする保持部材と、前記保持部材の外周面に設けられた磁石と、を有する。さらに、前記保持部材は、前記シャフトに圧入される固定部と、前記磁石を保持する保持部とを備え、前記貫通孔は、前記固定部に設けられた第1貫通孔と、前記保持部に設けられた第2貫通孔とを含み、前記シャフトは、前記第1貫通孔に配置され、かつ、前記第2貫通孔には配置されず、前記固定部と前記保持部とは、前記回転軸線に沿った方向において重ならない位置に設けられ、前記磁石を覆う筒状のカバーが設けられ、前記カバーは、当該カバーの端部が前記固定部に固定され、前記固定部は、当該固定部の径方向の厚さが前記保持部の径方向の厚さより厚い部分を備えている。
【0008】
本発明の他の態様では、前記保持部材は、圧造部材である。
【0009】
本発明の他の態様では、前記磁石を覆う筒状のカバーが設けられ、前記カバーは、当該カバーの端部が前記固定部に固定されている。
【0010】
また、本発明の他の態様では、前記固定部は、当該固定部の径方向の厚さが前記保持部の径方向の厚さより厚い部分を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータ装置において、性能を高めつつ、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両のルーフに搭載されたサンルーフ装置を示す概略図である。
図2】本発明の実施の形態1のサンルーフモータ(モータ装置)の斜視図である。
図3図2に示すモータ装置のシャフトに形成されたウォームとウォームホイールとの噛み合い状態を示す斜視図である。
図4図3のA-A線に沿う断面図である。
図5図2に示すモータ装置のロータコアユニットの分解斜視図である。
図6図5に示すロータコアの斜視図である。
図7】(a)、(b)は図5に示すロータコアユニットの軸方向に沿う断面図と部分断面図である。
図8図2に示すモータ装置のロータコアユニットのバリエーションを示す図であり、(a)は低トルクタイプ、(b)は高トルクタイプのロータコアユニットである。
図9図2に示すモータ装置のロータコアユニットをマグネットカバー側から眺めた分解斜視図である。
図10図2に示すモータ装置におけるマグネットカバーの固定状態を示す部分斜視図である。
図11図10に示すマグネットカバーの固定状態を後方側から眺めた外観図である。
図12図2に示すモータ装置のロータコアユニットにおけるマグネットの装着状態を示す斜視図である。
図13】本発明の実施の形態2のロータコアユニットの外観図である。
図14図13に示すロータコアユニットの分解斜視図である。
図15】(a)、(b)は図14に示すロータコアユニットの軸方向に沿う断面図と部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
まず、本実施の形態1のモータ装置が搭載されるサンルーフ装置について説明する。図1に示すように、サンルーフ装置10は、ルーフパネル11を備えている。ルーフパネル11は、車両12のルーフ13に形成された開口部14を開閉する。ルーフパネル11の車幅方向(図中上下方向)に沿う両側には、一対のシュー15a,15bがそれぞれ固定されている。また、ルーフ13の開口部14の車幅方向に沿う両側には、車両12の前後方向(図中左右方向)に延びるガイドレール16がそれぞれ固定されている。そして、一対のシュー15a,15bが、対応する一対のガイドレール16にそれぞれ案内されることで、ルーフパネル11が、車両12の前後方向に移動自在つまり開閉自在となっている。
【0015】
車両12の後方側(図中右側)に配置されたシュー15bのそれぞれには、ギヤ付きの駆動ケーブル17a,17bの一端が連結されている。これらの駆動ケーブル17a,17bの他端は、開口部14よりも車両12の前方側(図中左側)に取り回されている。
【0016】
車両12の前方側で、開口部14とフロントガラス18との間に配置されたルーフ13の内部には、サンルーフモータ(モータ装置)20が搭載されている。そして、一対の駆動ケーブル17a,17bの他端が、サンルーフモータ20に設けられた出力ギヤ42bに噛み合わされている。ここで、サンルーフモータ20が駆動されると、出力ギヤ42bの回転に伴い、一対のシュー15a,15bが互いに逆向きに移動される。これにより、ルーフパネル11は、一対のシュー15bを介して一対の駆動ケーブル17a,17bによって押し引きされ、これにより、自動的に開閉される。
【0017】
次に、本実施の形態1のサンルーフモータ20について説明する。なお、以下の説明において、単に軸方向という場合は、モータ部のシャフトの回転軸線方向をいい、単に周方向という場合は、上記シャフトの周方向をいい、単に径方向という場合は、上記シャフトの径方向をいうものとする。
【0018】
図2に示すように、サンルーフモータ20は、モータ部21とギヤ部40とを有している。モータ部21は、図4に示す環状のステータ29と、ステータ29に巻かれたコイル28と、ステータ29の径方向の内側に設けられ、かつ、図3に示す回転軸線31の回りに回転するロータシャフト(シャフト)27と、を有している。さらに、モータ部21は、ロータシャフト27に固定されるとともに、回転軸線31に沿って貫通する貫通孔22eを備え、かつ、回転軸線31を径方向中心とするロータコア(保持部材)22と、ロータコア22の外周面に設けられた図4に示すマグネット(磁石)23a,23b,23c,23dと、を有している。
【0019】
なお、サンルーフモータ20では、マグネット23は、4分割された状態でロータコア22の外周面に設けられている。すなわち、ロータコア22の外周面において、その周方向に沿ってマグネット23a,23b,23c,23dが設けられている。
【0020】
また、ロータシャフト27は、図3に示すように、ボールベアリング44によって回転自在に支持されている。そして、ロータコア22は、ロータシャフト27に固定される。具体的には、ロータコア22とロータシャフト27は、圧入によって固定されている。
【0021】
また、図4に示すように、ステータ29は、該ステータ29の内周面から径方向内側に向かって突出する複数のティース30を備えており、複数のティース30のそれぞれにコイル28が巻回されている。
【0022】
次に、図2に示すように、ギヤ部40には、ギヤケース41が設けられている。ギヤケース41の開口部分は、図示しないギヤカバーによって閉塞されている。このギヤカバーは、プラスチック等の樹脂材料により略平板状に形成され、ギヤケース41に対して所謂スナップフィットの係合構造により容易に装着可能となっている。
【0023】
また、ギヤケース41には、ウォームホイール収容部41aが設けられている。ウォームホイール収容部41aは、ギヤケース41の厚み方向であって、かつ上記ギヤカバー側とは反対側に窪んで設けられている。そして、ウォームホイール収容部41aには、減速機構を形成するウォームホイール42が回転自在に収容されている。
【0024】
ウォームホイール42は、プラスチック等の樹脂材料により略円板形状に形成され、その径方向外側には、図3に示すように、ロータシャフト27と連なって形成されたウォームシャフト43に設けられたウォーム43aが噛み合わされる歯部42aが形成されている。また、ウォームホイール42の回転中心には、出力ギヤ42bの軸方向基端側が固定されている。ここで、出力ギヤ42bは、鋼製であって、その軸方向中間部が図2に示すギヤケース41のボス部に回転自在に支持されている。そして、出力ギヤ42bの軸方向先端側は、ギヤケース41の外部に延出されており、これにより出力ギヤ42bの先端側には、一対の駆動ケーブル17a,17bの他端が噛み合わされる(図1参照)。
【0025】
本実施の形態1のモータ部21には、図5に示すように、マグネットユニット26として、ロータコア22と、4つのマグネット23a,23b,23c,23dと、マグネットホルダ24と、マグネットカバー(カバー)25と、が設けられている。
【0026】
ここで、本実施の形態1のロータコア22について説明する。図6に示す本実施の形態1のロータコア22は、圧造によって形成された環状の部材であり、回転軸線31に沿って貫通する貫通孔22eを備えている。そして、ロータコア22は、図7(a)に示すように、ロータシャフト27に圧入によって固定される部分である環状の固定部22aと、4つのマグネット23a,23b,23c,23d(図5参照)を保持する部分である環状の保持部22bとを備えている。なお、貫通孔22eは、固定部22aに設けられた第1貫通孔22fと、第1貫通孔22fに連通し、かつ、保持部22bに設けられた第2貫通孔22gとを含んでいる。
【0027】
そして、固定部22aと保持部22bとは一体である。なお、ロータシャフト27は、第1貫通孔22fに配置されているが、第2貫通孔22gには配置されていない。また、ロータコア22の回転軸線31に沿った方向において、固定部22aと保持部22bとは重ならない位置に設けられている。ここで、ロータシャフト27の圧入は、固定部22aのみに対して行われる。すなわち、ロータシャフト27は、図7(b)に示すように、固定部22aの第1貫通孔22fの終端(第2貫通孔22gとの境界部)までは入り込んでいるが、保持部22bの第2貫通孔22gには入り込んでいない。つまり、ロータコア22の保持部22bの領域までは入り込んでいない。したがって、ロータコア22の保持部22bの直下は、中空状態となっている。
【0028】
また、ロータコア22の固定部22aは、当該固定部22aの径方向の厚さが保持部22bの径方向の厚さより厚い部分を備えている。具体的には、固定部22aは、径方向の厚さが保持部22bの径方向の厚さより厚いフランジ部22cを備えている。すなわち、図7(b)に示すように、固定部22aにおけるフランジ部22cの径方向の厚さT1は、保持部22bの径方向の厚さT2より大きい(T1>T2)。
【0029】
なお、ロータコア22の固定部22aは、ロータコア22を圧造によって形成する際に、余肉を集めて形成するものであり、その際、より余肉を集めて厚肉部分であるフランジ部22cを形成する。また、図6に示すように、ロータコア22の保持部22bの外周面には、図5に示す4つのマグネット23a,23b,23c,23dのそれぞれを周方向の4つの領域に均等に分けて位置決めするための4つの細長いリブ状の突起22dが均等な間隔で形成されている。これにより、4つのマグネット23a,23b,23c,23dのそれぞれは、保持部22bの周方向において、均等な間隔で、かつ位置決めされつつ保持部22bの外周面に配置される。
【0030】
また、ロータコア22のフランジ部22cは、4つのマグネット23a,23b,23c,23dのそれぞれの端部の回転軸線31に沿った方向におけるロータシャフト27側の位置決めの機能も有している。
【0031】
一方、4つのマグネット23a,23b,23c,23dのそれぞれの回転軸線31に沿った方向におけるロータシャフト27側と反対側の端部を保持する部材として、マグネットホルダ24が設けられている。すなわち、4つのマグネット23a,23b,23c,23dのそれぞれは、ロータコア22の外周面において、ロータコア22のフランジ部22cとマグネットホルダ24とによって挟まれて保持されている。
【0032】
また、4つのマグネット23a,23b,23c,23dは、円筒形(筒状)のマグネットカバー25によって覆われている。そして、マグネットカバー25は、後述する図10に示すように、その端部である迫り出し部25aが固定部22aのフランジ部22cに固定されている。これにより、4つのマグネット23a,23b,23c,23dのロータコア22からの脱落を防止することができる。
【0033】
本実施の形態1のサンルーフモータ20では、圧造によって形成されたロータコア22の固定部22aの第1貫通孔22fのみにロータシャフト27が圧入されるため、ロータシャフト27に細い部分を形成することがなくロータシャフト27をストレート形状とすることができる。これにより、ロータシャフト27の短軸化を図ることができる。すなわち、ロータシャフト27を短くすることができるため、サンルーフモータ20の小型化および軽量化を図ることができる。
【0034】
また、ロータシャフト27がストレート形状であり、細い部分を必要としないため、太い部分と細い部分とを有した段付き構造のシャフトを採用することもない。したがって、段付き構造のシャフトの場合に発生する同軸度の悪化や回転による振れの悪化を阻止することができる。つまり、サンルーフモータ20においては、ロータシャフト27をストレート形状にして短軸化を図ることで、ロータシャフト27とロータコア22の同軸度を高めることができるとともに、回転による軸の振れの大きさを低減することができる。
【0035】
これにより、本実施の形態1のサンルーフモータ20の性能を高めつつ小型化および軽量化を図ることができる。
【0036】
また、ロータシャフト27の短軸化を図ることができるため、材料費を減らすことができ、サンルーフモータ20のコストの低減化を図ることができる。
【0037】
また、図7(b)に示すように、ロータシャフト27のロータコア22への圧入は、ロータコア22の固定部22aの第1貫通孔22fで完結させている。すなわち、ロータコア22の固定部22aの直下にはロータシャフト27が配置されているが、ロータコア22の保持部22bの直下には、ロータシャフト27は、配置されていない。これにより、保持部22bの直下は、中空構造となっている。なお、固定部22aは、圧造時に余肉を集めて形成された厚肉部分であるフランジ部22cを備えているため、ロータシャフト27の圧入時に、マグネット23の内側に圧力が掛かることはない。これにより、ロータシャフト27の圧入時のマグネット23への影響を低減することができ、マグネット23の変形や割れを防止することができる。
【0038】
なお、ロータシャフト27の圧入の位置は、圧入の際に反対側から入れる治具の位置によって決定される。すなわち、ロータシャフト27の圧入口とは反対側の開口部からロータコア22内に治具を挿入し、保持部22bの領域の固定部22aとの境界部分まで治具を挿入しておく。そして、ロータシャフト27の圧入時には、ロータシャフト27が治具に突き当たるまでロータシャフト27を圧入する。
【0039】
これにより、ロータシャフト27の圧入の位置を容易に決めることができるとともに、圧入の位置の管理も容易に行うことができる。
【0040】
また、ロータコア22において、圧入箇所である固定部22aおよびロータコア22の端面は、切削加工が施されており、これにより、圧入精度を確保することができる。なお、ロータシャフト27の圧入箇所にナーリング加工を施してもよく、これにより、ロータシャフト27の抜けや回転を防止することができる。
【0041】
また、図8に示すように、ロータコア22(マグネット23)の長さを、図8(a)に示す長さDから図8(b)に示す長さD+αに変更するだけで、サンルーフモータ20の性能を変えることができる。例えば、ロータコア22の長さが、図8(a)に示す長さDの場合、低トルクタイプのモータ装置となり、一方、ロータコア22の長さが、図8(b)に示す長さD+αの場合、高トルクタイプのモータ装置となる。すなわち、マグネット23の長さを変更するだけで、モータ装置の特性のバリエーションに対応させることができる。
【0042】
また、図9に示すマグネットユニット26において、4つのマグネット23a,23b,23c,23dは、ロータコア22の保持部22bの外周面に設けられているとともに、円筒形のマグネットカバー25によって覆われている。言い換えると、4つのマグネット23a,23b,23c,23dは、円筒形のマグネットカバー25内に納まっている。具体的には、4つのマグネット23a,23b,23c,23dのそれぞれは、ロータコア22の保持部22bの外周面に貼り付けられており、さらに、マグネット23a,23b,23c,23dのそれぞれの外周部を円筒形のマグネットカバー25が覆っている。
【0043】
これにより、マグネット23a,23b,23c,23dのロータコア22からの剥がれ落ちを防ぐことができる。
【0044】
なお、マグネットカバー25は、図10のP部に示すように、端部に設けられた複数の迫り出し部25aがロータコア22のフランジ部22cにカシメによって固定され、これにより、フランジ部22cに取り付けられている。その際、フランジ部22cの外径は、マグネット23の外径より大きい。したがって、マグネットカバー25がカシメによってフランジ部22cに固定される際も、そのカシメ荷重をロータコア22の固定部22aのフランジ部22cで受けるため、マグネットカバー25内のマグネット23への応力が発生することなく、マグネット23の割れを防止することができる。
【0045】
ここで、マグネットカバー25において、フランジ部22cへの固定部分は、迫り出し部25aに限らず、例えば、円筒形のマグネットカバー25の端部の全周に亘って設けられた固定部分であってもよく、その場合には、フランジ部22cに対してローリングカシメを行って固定することができる。
【0046】
また、マグネット23の一端は、ロータコア22の固定部22aのフランジ部22cによって支持されるため、マグネット23の他端を支持するマグネットホルダ24が1つで済み、部品点数を減らすことができる。
【0047】
また、本実施の形態1のサンルーフモータ20では、マグネットカバー25の固定方法として、接着剤を用いた固定ではなく、カシメによる機械固定を採用している。接着剤を使用した固定の場合、接着剤の硬化時間および硬化炉が必要となる。しかしながら、本実施の形態1のマグネットカバー25の固定方法によれば、カシメによる機械固定であるため、時間短縮による工程の簡略化および設備投資の抑制化を図ることができる。
【0048】
また、図9に示すように、マグネットホルダ24の裏面側には、4つの凸部24aが回転軸線31の周方向に対して均等な間隔で設けられている。そして、4つの凸部24aが設けられた面と反対側の面には、4つの突起部24bが回転軸線31の周方向に対して均等な間隔で設けられている。これら4つの突起部24bは、回転軸線31の周方向に対してロータコア22の保持部22bに設けられた4つの突起22dと同じ位置に配置されるように設けられている。
【0049】
また、マグネットカバー25の迫り出し部25aが設けられた端部と反対側の端部の面には、4つの切り欠き部25bが設けられている。これら4つの切り欠き部25bは、回転軸線31の周方向に対して均等な間隔で設けられており、回転軸線31の周方向に対してマグネットホルダ24の4つの凸部24aと同じ位置に配置されるように設けられている。
【0050】
これにより、図11に示すように、マグネットカバー25の装着に際し、マグネットホルダ24の4つの凸部24aと、マグネットカバー25の4つの切り欠き部25bとが勘合し、マグネットカバー25が位置決めされる。これにより、その後のマグネット組付けを容易に行うことができる。さらに、4つのマグネット23a,23b,23c,23dのそれぞれは、図12に示すように、ロータコア22の突起22dとマグネットホルダ24の突起部24bとによってロータコア22の周方向に対して位置決めされるため、マグネットホルダ24の凸部24aと各マグネット23の中央部とが同位置となっている。これにより、マグネットホルダ24の凸部24aを着磁工程での位置決めとして使用することができる。
【0051】
また、図12のQ部に示すように、各マグネット23の角部はR形状となっている。これにより、マグネットカバー25をカシメによって固定する際のカシメ荷重がマグネット23に付与された際にも、マグネット23の角部にはカシメ荷重が付与されないため、マグネット23の角部の割れを防止することができる。
【0052】
また、図9に示すマグネットユニット26を搬送する際に、ロータコア22のフランジ部22cにチャックすることが可能になる。これにより、搬送時にマグネット23等に荷重を掛けなくて済むため、マグネット23の割れや欠けを抑制することができる。
【0053】
なお、本実施の形態1のサンルーフモータ20では、図4に示すように、ステータ29の断面形状が、略六角形となっている。これにより、断面形状が円形の場合に比較して、ステータ29の厚さLを小さくすることができる。すなわち、ステータ29の厚さを薄くすることで、サンルーフモータ20の薄型化を図ることができる。そして、図1に示すサンルーフ装置10が取り付けられる車両部分では、サンルーフモータ20の薄型化を図ることが重要であるため、本実施の形態1のサンルーフモータ20は、サンルーフ装置10に組付ける際に非常に有効である。
【0054】
次に、サンルーフモータ20の動作について説明する。
【0055】
サンルーフモータ20では、外部から図2に示すターミナル32を介して図示しないコントローラ基板に供給された電力が、図4に示すモータ部21の各コイル28に選択的に供給される。すると、ステータ29(ティース30)に所定の鎖交磁束が形成され、この鎖交磁束と、ロータコア22に設けられたマグネット23により形成される有効磁束との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、ロータコア22が継続的に回転する。
【0056】
そして、ロータコア22が回転すると、図3に示すロータシャフト27と一体化されているウォームシャフト43が回転し、さらに、ウォームシャフト43に噛み合っているウォームホイール42が回転する。そして、ウォームホイール42に連結されている出力ギヤ42bが回転し、所望の電装品等を駆動させることができる。
【0057】
また、モータ部21は、ロータコア22の保持部22bの外周面にマグネット23a,23b,23c,23dを配置した構造となっている。このため、マグネット23の磁束の方向であるd軸方向のインダクタンス値を小さくすることができる。
【0058】
なお、ロータコア22の保持部22bの外周面には、4つの突起22dが周方向に等間隔で設けられている。突起22dは、径方向外側に突出され、かつロータコア22の軸方向全体に延びるように形成されている。そして、4つの突起22dのそれぞれは、径方向外側の端部における周方向の幅寸法が、電気角θで20°以上40°以下に設定されていることが好ましい。このように周方向における突起22dの幅寸法を電気角θで40°以下に設定することで、上記d軸に対して磁気的に直交するq軸方向におけるインダクタンス値を小さくすることができる。その結果、減磁界を抑えるとともに、高いリラクタンストルクを得ることができる。
【0059】
(実施の形態2)
本実施の形態2のロータコアユニットについて説明する。本実施の形態2のロータコアユニットには、図14に示すように、マグネットユニット26として、ロータコア22と、4つのマグネット23a,23b,23c,23dと、マグネットカバー(カバー)25と、が設けられている。実施の形態1のマグネットユニット26と異なる点は、図5に示すようなマグネットホルダ24を有していない点である。
【0060】
これにより、マグネットユニット26における部品点数を減らすことができ、マグネットユニット26の組立ての容易化およびコストの低減化を図ることができる。
【0061】
また、本実施の形態2では、図14に示すように、マグネットカバー25におけるロータコア22のフランジ部22cへの固定部分が、円筒形のマグネットカバー25の端部の全周に亘って設けられたカシメ部25cとなっている。これにより、フランジ部22cに対してローリングカシメを行うことで、図13に示すように、フランジ部22cの全周に亘ってマグネットカバー25のカシメ部25cを固定することができ、マグネットカバー25のフランジ部22cへ接合強度を高めることができる。
【0062】
また、本実施の形態2のロータコア22は、実施の形態1のロータコア22とほぼ同様の構造であるが、図15(a),(b)に示すように、ロータコア22の第2貫通孔22gを形成する部分が肉薄部22hとなっている。具体的には、ロータコア22に設けられた貫通孔22eにおいて、図15(b)に示すように、第1貫通孔22fの直径Φ1より第2貫通孔22gの直径Φ2の方が大きくなっている(Φ1<Φ2)。すなわち、ロータコア22の貫通孔22eの内周壁が段差構造となっており、ロータコア22の保持部22bの領域の肉厚が固定部22aの領域の肉厚より薄くなっている。したがって、固定部22aの領域の第1貫通孔22fの直径Φ1より保持部22bの領域の第2貫通孔22gの直径Φ2の方が大きい。
【0063】
これにより、ロータコア22にロータシャフト27を組み付ける際に、ロータシャフト27の組み付け方向を、ロータシャフト27の圧入側と反対側から組み付けることが可能になる。すなわち、第2貫通孔22gの端部開口側からロータシャフト27を通して、第2貫通孔22gを案内としながらロータシャフト27を第1貫通孔22fに圧入することができる。その結果、ロータシャフト27の圧入時に治具などが不要になり、実施の形態1に比べてロータシャフト27の圧入工程を容易にすることができる。
【0064】
なお、本実施の形態2のロータコアユニットの各部材(ロータコア22、4つのマグネット23a,23b,23c,23dおよびマグネットカバー25)それぞれのその他の構造については、実施の形態1のロータコアユニットにおける各部材それぞれの構造と同じであるため、その重複説明は省略する。
【0065】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、サンルーフモータ20に組み込まれるステータ29の断面形状が、略六角形となっている場合を取り上げたが、ステータ29の断面形状は、円形であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 サンルーフ装置
11 ルーフパネル
12 車両
13 ルーフ
14 開口部
15a,15b シュー
16 ガイドレール
17a,17b 駆動ケーブル
18 フロントガラス
20 サンルーフモータ(モータ装置)
21 モータ部
22 ロータコア(保持部材)
22a 固定部
22b 保持部
22c フランジ部
22d 突起
22e 貫通孔
22f 第1貫通孔
22g 第2貫通孔
22h 肉薄部
23,23a,23b,23c,23d マグネット
24 マグネットホルダ
24a 凸部
24b 突起部
25 マグネットカバー(カバー)
25a 迫り出し部(端部)
25b 切り欠き部
25c カシメ部(端部)
26 マグネットユニット
27 ロータシャフト(シャフト)
28 コイル
29 ステータ
30 ティース
31 回転軸線
32 ターミナル
40 ギヤ部
41 ギヤケース
41a ウォームホイール収容部
42 ウォームホイール
42a 歯部
42b 出力ギヤ
43 ウォームシャフト
43a ウォーム
44 ボールベアリング
図1
図2
図3
図4
図5
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