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特許7489802建設作業支援システムおよび建設作業支援方法
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  • 特許-建設作業支援システムおよび建設作業支援方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】建設作業支援システムおよび建設作業支援方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/00 20060101AFI20240517BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20240517BHJP
【FI】
E04G21/00 ESW
G06Q50/08
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020057530
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156015
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】久保田 善経
(72)【発明者】
【氏名】篠田 二郎
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/051080(WO,A1)
【文献】特開2019-148946(JP,A)
【文献】特開2019-024151(JP,A)
【文献】特開2019-133292(JP,A)
【文献】特許第6611868(JP,B1)
【文献】特開2014-170315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/00-21/10
G06F30/00-30/398
111/00-119/22
G06Q10/00-10/10
30/00-30/08
50/00-50/20
50/26-99/00
G16Z99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場における作業を支援する建設作業支援方法であって、
過去に建設した建設物の3次元設計データである過去設計データを利用して、前記建設現場における建設対象物を構成する各部材を扱った作業を行う際の注意事項を含めた前記3次元設計データを作成する設計データ作成工程と、
レーザスキャナにより前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得工程と、
前記建設現場における建設対象物の3次元設計データと前記3次元点群データとを比較するデータ比較工程と、
前記データ比較工程での比較結果に基づいて、前記建設現場で今後実施される作業内容と関連する前記部材の注意事項を3次元設計データ記憶部から抽出し、前記建設現場での作業に従事する作業員に提示する注意事項提示工程と、
を含んだことを特徴とする建設作業支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場における作業を支援する建設作業支援システムおよび建設作業支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場における安全性の向上を目的として、建設作業に従事する作業員に各種の注意を喚起する技術が開発されている。
例えば下記特許文献1は、建設機械の周囲に注意喚起領域を適切に設定して、該注意喚起領域を、建設機械の周囲の人に適切に認識させることを目的としている。建設機械の周囲に注意喚起領域を設定し、該注意喚起領域に可視光情報を発生させる。注意喚起領域は、建設機械の旋回動作又は走行動作の動作状態(旋回速度、旋回方向、走行速度、走行方向)に応じて、位置又は大きさが変化するように設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-105105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの作業現場では、作業管理者から作業員に対して、毎日の朝礼や昼礼等でその日の作業の注意点の説明が行われている。しかしながら、建設現場では日々様々な作業が行われており、このような説明のための準備は作業管理者にとって負担が大きいという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、作業管理者の負担を軽減しつつ、建設現場の安全性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる建設作業支援システムは、建設現場における作業を支援する建設作業支援システムであって、前記作業に関する注意事項を記憶する注意事項記憶部と、レーザスキャナにより前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得部と、前記建設現場における建設対象物の3次元設計データと前記3次元点群データとを比較するデータ比較部と、前記データ比較部の比較結果に基づいて、前記建設現場で今後実施される作業内容と関連する前記注意事項を前記注意事項記憶部から抽出し、前記建設現場での作業に従事する作業員に提示する注意事項提示部と、を備えることを特徴とする。
本発明にかかる建設作業支援方法は、建設現場における作業を支援する建設作業支援方法であって、レーザスキャナにより前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得工程と、前記建設現場における建設対象物の3次元設計データと前記3次元点群データとを比較するデータ比較工程と、前記データ比較工程での比較結果に基づいて、前記建設現場で今後実施される作業内容と関連する注意事項を注意事項記憶部から抽出し、前記建設現場での作業に従事する作業員に提示する注意事項提示工程と、を含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、作業管理者の負担を軽減しつつ、建設現場の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態にかかる建設作業支援システムの概要構成を示す図である。
図2】建設作業支援システムの機能的構成を示すブロック図である。
図3】建設作業支援システムにおける作業支援のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる建設作業支援システムおよび建設作業支援方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかる建設作業支援システムの概要構成を示す図である。
建設作業支援システム10は、建設現場における作業進捗を管理する。建設現場とは、ビルやマンション、倉庫などの建築建設現場であってもよいし、ダムや橋、トンネルなどの土木建設現場であってもよい。
建設作業支援システム10は、作業支援装置12、自動巡回移動体14(14A,14B)、設計データ作成装置16を備える。
【0009】
作業支援装置12は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されるコンピュータである。
作業支援装置12は、例えば建設現場の管理棟など建設現場の近傍に設置されており、建設現場の作業員や作業管理者等に利用される。図1では、作業支援装置12をノート型パソコンとして図示しているが、デスクトップ型パソコンやタブレット端末等であってもよい。
【0010】
自動巡回移動体14(14A,14B)は、レーザスキャナ18を搭載し、建設現場を自動巡回する。自動巡回移動体14は、例えば建設現場内を巡回する巡回経路が設定されており、建設現場内に設置されたビーコンやGPSなどにより現在位置を確認しながら、所定のスキャン地点においてレーザスキャナ18で周囲をスキャンし、建設現場内の点群データを取得する。
【0011】
図1では、自動巡回移動体14の一例としてドローン14Aと台車ロボット14Bとを図示しているが、自律的に移動できる機器であれば従来公知の様々な機器を自動巡回移動体14として利用することができる。例えば天井高さが高い建物を建設する建設現場(または建物のうち天井高さが高い箇所)ではドローン14Aを用い、その他の現場では台車ロボット14Bを用いる、など使い分けをしてもよい。
【0012】
レーザスキャナ18(3次元レーザースキャナ)は、計測対象物にレーザを放射状に照射し、レーザの反射時間から求められる計測対象までの距離と照射角度に基づいて計測対象物の表面形状の3次元座標を取得する。レーザスキャナ18の性能にもよるが、毎秒数万点程度の速度で非接触により計測し、高密度で面的な点群データを得ることができる。
また、レーザスキャナ18に内蔵されたカメラによって計測箇所で画像を撮影し、画像の色やレーザの反射強度(計測対象の材質や色によって変化するレーザの反射具合)に応じて点群データを着色することもできる。
また、1か所からでは計測ができない計測対象の裏側や広範囲なエリアでも、複数のスキャンデータ間でターゲットを共通点にして合成したり、座標付けをすることができる。
【0013】
本実施の形態では、自動巡回移動体14が建設現場を自動巡回し、建設現場各部の点群データを取得するものとするが、これに限らず、例えば建設現場の作業員がレーザスキャナ18を所持して建設現場内を巡回し、所定の地点でスキャン作業を行い、建設現場各部の点群データを取得するようにしてもよい。
また、ドローン14Aや台車ロボット14Bを自動巡回させるのではなく、遠隔操作により巡回およびスキャン作業を実施するようにしてもよい。
【0014】
設計データ作成装置16は、作業支援装置12と同様に、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されるコンピュータである。
図1では、設計データ作成装置16をデスクトップ型パソコンとして図示しているが、ノート型パソコン等であってもよい。
【0015】
設計データ作成装置16は、例えば建設工事を請け負う事業者等に設置されており、建設現場における建設対象物の設計データの作成に利用される。より詳細には、設計データ作成装置16には設計用アプリケーションがインストールされており、設計者の操作により建築対象物の設計図または施工図としての3次元設計データを作成する。
設計データ作成装置16は、過去に建設した建設物の設計データ(後述するBIMモデル)である過去設計データ160(図2参照)を記憶している。設計者は、今回の建設対象物と類似する建設物の3次元設計データを、過去設計データ160内から検索し、類似する箇所を部分的に再利用したり、参考にしながら設計作業を行う。これにより、設計作業を効率化することができる。
【0016】
本実施の形態では、3次元設計データとして、BIM(Building Information Modeling)モデルを用いる。
BIMでは、コンピュータ上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを建設作業の各フェーズで活用する。BIMモデルは、建設対象物を構成する各部材(パーツ)の部材モデルを含んでいる。部材モデルには、部材の寸法(幅や奥行き、高さ等)に加え、素材や組み立てる工程(時間)なども含めることができる。
なお、3次元設計データはBIMモデルに限らず、同等の機能を実現できればどのような形式のデータであってもよい。
【0017】
本実施の形態では、BIMモデルを構成する各部材モデルには、それぞれの部材を扱った作業を行う際の注意事項(注意事項データ)が含まれている。すなわち、BIMモデル内に注意事項が含まれている。
注意事項は、作業を行う際に注意すべき事項を具体的に指摘するテキスト(文言)であり、一般的な注意事項の他、過去の事故の事例なども考慮して作成されている。
【0018】
本実施の形態では、上記過去設計データ160内のBIMモデルに注意事項が含まれており、例えばBIMモデル作成時に過去設計データ160内のデータを流用することにより、新規に作成するBIMモデル内にも注意事項を含めることができる。
より詳細には、設計者が建築対象物のBIMモデルを作成する際、過去設計データ160内のBIMモデルと類似する箇所を部分的に再利用したり、参考にする。この時、BIMモデルの再利用部分(または参考部分)の構成部品に注意事項(注意事項データ)が登録されている場合、現在作成中のBIMモデルの同種の部品に当該データをインポートすることにより、今回作成するBIMモデル内に注意事項を含めることができる。
また、例えば設計用アプリケーションに、現在設計中の建設対象物と類似度が高い過去データ内の注意事項を抽出する機能を持たせてもよい。設計者は、必要に応じて抽出された注意事項を、今回設計するBIMモデル内の部材モデル内に含ませる。類似度が高い、とは、例えば建物の用途や種類、構造、利用者層、施主が共通する場合などである。
【0019】
図2は、建設作業支援システムの機能的構成を示すブロック図である。
作業支援装置12は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することにより、点群データ取得部122、データ比較部124、注意事項提示部126、注意事項登録部128として機能する。
また、作業支援装置12の記憶領域(ストレージ)であるEEPROMには、建設現場での作業の注意事項を含むBIMモデルが記憶されている。すなわち、作業支援装置12の記憶領域は、BIMモデル記憶部120および注意事項記憶部120Aとして機能する。
なお、BIMモデルおよび注意事項の記憶場所は作業支援装置12内に限らず、作業支援装置12がアクセス可能な外部ストレージ等であってもよい。
【0020】
BIMモデル記憶部120は、建設現場における建設対象物の3次元設計データであるBIMモデルを記憶する。上述のように、BIMモデルは建設対象物を構成する各部材(パーツ)の部材モデルを含んでおり、各部材モデルは、それぞれの部材を扱った作業を行う際の注意事項を示す注意事項(注意事項データ)を含んでいる。よって、BIMモデル記憶部120は、注意事項記憶部120Aを兼ねている。
【0021】
点群データ取得部122は、レーザスキャナ18により取得された建設現場の3次元点群データを取得する。本実施の形態では、点群データ取得部122は、自動巡回移動体14の自動巡回中(または作業員による巡回中)にレーザスキャナ18が取得した3次元点群データを、レーザスキャナ18のメモリから読み出す、またはレーザスキャナ18から送信させることにより、建設現場の3次元点群データを取得する。取得した3次元点群データは、作業支援装置12の記憶領域に記憶され、以下に説明する各種処理に利用される。
【0022】
データ比較部124は、BIMモデル(建設現場における建設対象物の3次元設計データ)と点群データ取得部122で取得した3次元点群データとを比較する。
BIMモデルには、建設対象物を構成する全ての部材が含まれているため、建設途中における3次元点群データと比較した場合でも、各点に対応する部材が存在するはずである。
例えば心材が露出した状態の壁をスキャンした点群データとBIMモデルとを比較すると、点群としてスキャンされた心材の位置とBIMモデル上の心材の位置が略一致する。
よって、データ比較部124は、建設現場上の同一領域に対応する3次元点群データとBIMモデルとを比較して、それぞれの部材の存在範囲に点群が存在する否かを判断する。
【0023】
そして、データ比較部124は、BIMモデルを構成する各部材モデル(建設対象物を構成する各部材)を、以下の3状態に分類する。
1.未着手:注目する部品の存在範囲に点群データが存在しない。
2.完了:注目する部品の形状と当該部分の点群データの形状との誤差が所定範囲内に収まっている。
3.仕掛:注目する部品の形状と当該部分の点群データの形状との誤差が所定範囲内に収まっていないが、注目する部品の存在範囲に点群データは存在する。
なお、分類判定の誤りを防止するため、データ比較部124による部材の分類結果(特に「完成」について)は、作業管理者等が実際に部材の作業状況を確認してから承認するようにしてもよい。
【0024】
注意事項提示部126は、データ比較部124の比較結果に基づいて、建設現場で今後実施される作業内容と関連する注意事項を注意事項記憶部120Aから抽出し、建設現場での作業に従事する作業員に提示する。
注意事項提示部126は、例えば上記「仕掛」および「未着手」に分類された部品モデルに登録されている注意事項を抽出する。作業管理者(または作業員)は、抽出された注意事項から、現場での作業進捗状態に応じて今回のミーティング(朝礼や昼礼)で提示する注意事項を選択する。また、例えば注意事項提示部126が予め定められた作業予定(作業支援装置12に登録された作業予定データ)に基づいて、当日に作業予定の部材を特定し、この部材に関連づけられた注意事項を抽出するようにしてもよい。
【0025】
さらに注意事項提示部126は、抽出した注意事項を建設現場での作業に従事する作業員に提示する。
注意事項提示部126は、例えばBIMモデルをフロアごとの平面図に展開するとともに、平面図上の部材を起点とする吹き出し内に上記の方法で抽出した注意事項を表示した資料を出力することにより注意事項を提示する。これらの平面図(資料)は、例えば印刷紙に印刷出力してもよいし、作業支援装置12のディスプレイ12A(図1参照)上に表示出力してもよい。例えばミーティング時に作業管理者が印刷出力された平面図を見ながら注意事項を作業員に伝えるようにしてもよい。
その他、例えば個々の作業員が携帯する携帯情報端末に注意事項を送信するなど、注意事項提示部126による注意事項の提示方法は、従来公知の様々な方法を採ることができる。
【0026】
注意事項登録部128は、BIMモデル内の部材モデルに対して新たな注意事項を関連づける。
作業管理者や作業員は、例えば実際の建設現場で注意喚起すべき事項に気づいた場合には、注意事項登録部128に対して部材を指定して注意事項を登録する。また、例えば注意喚起したにもかかわらず、結果として建設現場で事故や不具合が発生した場合なども、次回以降の新たな注意事項として当該箇所(当該箇所に対応する部材)に登録する。
注意事項登録部128は、例えば作業管理者や作業員から新たな注意事項の入力を受けると、BIMモデル内の指定された部材モデル内に注意事項を含める。また、注意事項登録部128は、例えば設計データ作成装置16の過去設計データ160内に記憶された当該建設対象物のBIMモデルを更新し、次回以降の設計データに今回登録された注意事項を反映できるようにしてもよい。
【0027】
図3は、建設作業支援システムにおける作業支援のフローを示す図である。
設計者は、設計データ作成装置16の過去設計データ160(注意事項を含む)を利用しながら今回の建設対象物のBIMモデル(3次元設計データ)を作成する(ステップS300)。作成されたBIMモデルは、建設対象物の建設現場に設置される作業支援装置12に記憶される(ステップS302)。なお、当該BIMモデルは、設計データ作成装置16にも過去設計データ160として記憶される。
【0028】
建設作業が始まると、定期的に自動巡回移動体14が建設現場内を巡回し、レーザスキャナ18で周囲をスキャンし、建設現場内の点群データを取得する(ステップS304)。上述のように、このステップは自動巡回ではなく、作業員等がレーザスキャナ18を持って建設現場内を巡回して行ってもよい。
【0029】
つぎに、作業支援装置12(作業支援装置)の点群データ取得部122により、レーザスキャナ18で取得した点群データを読み込み、今回スキャン時の点群データ(以下「今回スキャンデータ」という)や画像データを取得する(ステップS306)。ステップS304およびS306が点群データ取得工程に対応する。
【0030】
取得された今回スキャンデータは、必要に応じてノイズ除去や座標軸の統一などの前処理が行われる(ステップS308)。すなわち、この後BIMモデルと比較するため、点群データから仮設の手すりや足場、仮置き資材など不要な部分を削除し、両者の座標系(原点、スケール、方向)を一致させる。この工程は、作業員が手動で行ってもよいし、作業支援装置12のアプリケーションで自動的に行ってもよい。
【0031】
データ比較部124は、今回スキャンデータとBIMモデルとを比較し、BIMモデル内の各部材について、未着手、完成、仕掛のいずれかの状態に分類する(ステップS310:データ比較工程)。
つぎに、注意事項提示部126は、上記「仕掛」および「未着手」に分類された部品モデルに登録されている注意事項を抽出し、さらに作業管理者が今回のミーティングで提示する注意事項を選択する(ステップS312)。そして、注意事項提示部126は、フロアごとの平面図上に注意事項を表示した資料を出力する(ステップS314)。作業管理者等は、例えば上記資料を見ながら作業員に対して注意喚起を行う。また、作業員が直接上記資料を見て注意箇所を確認するようにしてもよい。
【0032】
また、作業支援装置12に対して新たな注意事項が登録された場合、注意事項登録部128は、BIMモデル内の部材モデルに対して当該注意事項を関連づける(ステップS316:注意事項登録工程)。また、注意事項登録部128は、設計データ作成装置16の過去設計データ160内に記憶された本建設対象物のBIMモデルを、新たに注意事項を加えたBIMモデルで更新することにより、注意事項の追加を反映させる(ステップS318)
【0033】
以上説明したように、実施の形態にかかる建設作業支援システム10は、建設対象物の3次元設計データと実際の建設現場の3次元点群データとの比較結果に基づいて、今後実施される作業内容と関連する注意事項を提示する。よって、実際の建設現場の状態に即した注意事項を精度よく選択し、提示する上で有利となる。
建設現場では、作業についての注意喚起が日々実施されており、そのための準備が作業管理者や作業員にとって大きな負担となる場合がある。建設作業支援システム10で自動的に注意事項を抽出することにより、作業管理者等の負担を軽減し、その分他の業務に多くの時間を割くことができ、建設現場での生産性を向上させる上で有利となる。
また、本実施の形態では、3次元設計データの部材モデル中に注意事項を関連づけるので、部材単位で注意事項を設定することができ、きめ細かい注意喚起が可能となり、建設現場の安全性を向上させる上で有利となる。
また、他の建設物を設計する際に3次元設計データを流用することにより、簡単に注意事項を引き継ぐことができ、作業管理者や設計者等の負担を軽減する上で有利となる。
また、本実施の形態のように自動巡回移動体14により3次元点群データを取得すれば、作業員等が建設現場を巡回してスキャンを行うのと比較して、作業員等の負担を軽減し、建設作業の効率を向上させる上で有利となる。
【符号の説明】
【0034】
10 建設作業支援システム
12 作業支援装置
120 BIMモデル記憶部
120A 注意事項記憶部
122 点群データ取得部
124 データ比較部
126 注意事項提示部
128 注意事項登録部
14 自動巡回移動体
16 設計データ作成装置
160 過去設計データ
18 レーザスキャナ
図1
図2
図3