(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】貫通穴閉塞具
(51)【国際特許分類】
F16L 5/02 20060101AFI20240517BHJP
F16L 5/04 20060101ALI20240517BHJP
F16L 5/10 20060101ALI20240517BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F16L5/02 F
F16L5/04
F16L5/10
H02G3/22
(21)【出願番号】P 2020082659
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2019206848
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】古賀 誠一
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105039(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00940615(EP,A1)
【文献】特開2012-255262(JP,A)
【文献】特開2012-042057(JP,A)
【文献】実開平06-007755(JP,U)
【文献】特開2006-176987(JP,A)
【文献】特開2016-223190(JP,A)
【文献】特開2016-223279(JP,A)
【文献】特開2007-205472(JP,A)
【文献】特開2021-011897(JP,A)
【文献】特開2021-078583(JP,A)
【文献】特開2021-081065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
A62C 3/16
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴に挿入して用いられ、
ねじり変形が可能な程度に柔軟であるシートが筒状に成形された筒部
であって、前記貫通穴に挿入した状態で周方向へねじれた状態とされることで前記貫通穴の空間を閉塞する筒部と、
前記筒部の、軸方向における少なくとも一方に周方向に沿って設けられ、前記貫通穴の内周面に合わせて縮径可能であって、縮径状態で元の状態への復元力を有する枠部と、を備え
、
前記枠部は、前記貫通穴に挿入された後の状態では、前記貫通穴の内部に位置させることができる貫通穴閉塞具。
【請求項2】
前記筒部が、熱を受けて膨張する膨張材を有する、請求項1に記載の貫通穴閉塞具。
【請求項3】
前記膨張材が、前記筒部における軸方向の一方側と他方側とに分かれて位置する、請求項2に記載の貫通穴閉塞具。
【請求項4】
前記筒部が、周方向において切断された筒部側切断部を有し、
前記枠部が、前記筒部側切断部と連続する位置において、周方向において切断された枠部側切断部を有する、請求項1~3のいずれかに記載の貫通穴閉塞具。
【請求項5】
前記筒部及び前記枠部は、前記貫通穴に挿入する際、前記筒部側切断部及び前記枠部側切断部を挟んだ各々の周方向一端部と周方向他端部とが径方向に重なり合うようにして前記縮径がなされる、請求項4に記載の貫通穴閉塞具。
【請求項6】
前記筒部は、径内側に、径方向に圧縮する柔軟層部を備える請求項1~
5のいずれかに記載の貫通穴閉塞具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通穴に挿入して用いられる貫通穴閉塞具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物等の壁を貫通する貫通穴に挿入して用いられる貫通穴閉塞具として、例えば、特許文献1に記載の「通路閉塞装置」が存在する。この装置は、軟質プラスチック製またはゴム製のチューブの両端にリングを取り付けて構成されている。建物の壁を貫通している通路(貫通穴)にチューブが通される。その後、チューブが周方向にねじられる。こうして、通路の空間が閉塞される。また、通路を配管が貫通している場合には、ねじられたチューブを配管に接触させることができる。よって、通路のうち配管の通る部分を除いた空間が閉塞される。ねじられた状態のチューブの両端にはリングが固定されることで、ねじられた状態が保たれる。
【0003】
ところが、特許文献1に記載の装置では、チューブの両端、または一端に設けられたリングが通路の外部(壁面)に露出している。このため、配置の自由度が制限されている。したがって、壁面に露出したリングとチューブの一部により美観を損ねる場合がある。また、チューブにつき、通路の貫通方向の全長に加え、ねじりによる変形寸法とリングに取り付けるための寸法が必要であることから、材料を多く要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第0940615号明細書(
図1~
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、配置の自由度が高い貫通穴閉塞具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、貫通穴に挿入して用いられ、ねじり変形が可能な程度に柔軟であるシートが筒状に成形された筒部と、前記筒部の、軸方向における少なくとも一方に周方向に沿って設けられ、前記貫通穴の内周面に合わせて縮径可能であって、縮径状態で元の状態への復元力を有する枠部と、を備えた貫通穴閉塞具である。
【0007】
この構成によれば、枠部を縮径させた状態で貫通穴閉塞具の全体を貫通穴の内部に挿入した上で、筒部を周方向にねじることにより、貫通穴の空間を閉塞できる。
【0008】
また、前記筒部が、熱を受けて膨張する膨張材を有することもできる。
【0009】
この構成によれば、火災時には熱により膨張材が膨張することで貫通穴の内部空間を塞ぐため、筒部が熱により消失しても、膨張した膨張材により、貫通穴を介した隣接区画への延焼を防止できる。
【0010】
また、前記膨張材が、前記筒部における軸方向の一方側と他方側とに分かれて位置することもできる。
【0011】
この構成によれば、筒部をねじることで、軸方向の一方側に位置する膨張材と他方側に位置する膨張材とが軸方向(貫通穴の貫通方向)で接近させられる。このため、貫通穴において防火を施すべき位置に膨張材を配置できる。
【0012】
また、前記筒部が、周方向において切断された筒部側切断部を有し、前記枠部が、前記筒部側切断部と連続する位置において、周方向において切断された枠部側切断部を有することもできる。
【0013】
この構成によれば、配管等の長尺状体が既に貫通している貫通穴に対して、各切断部に長尺状体を通すことができるため、後施工が可能である。
【0014】
また、前記筒部は、径内側に、径方向に圧縮する柔軟層部を備えることもできる。
【0015】
この構成によれば、筒部を周方向にねじることで、径内側の柔軟層部もねじれるため、柔軟層部で貫通穴の空間を閉塞できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、枠部を縮径させた状態で貫通穴閉塞具の全体を貫通穴の内部に挿入して貫通穴の空間を閉塞できる。よって、配置の自由度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る貫通穴閉塞具を示す斜視図である。
【
図2】前記貫通穴閉塞具を貫通穴に挿入している途中の状態を示す斜視図である。
【
図3】前記貫通穴閉塞具を長尺状体が配置された貫通穴に挿入して筒部をねじった状態を示す斜視図である。
【
図4】前記貫通穴閉塞具をねじった状態を示す側面図(貫通穴が形成された壁部を断面表示)である。
【
図5】変形例に係る貫通穴閉塞具を示す斜視図である。
【
図6】前記貫通穴閉塞具をねじることで、柔軟層部が略V字状の空間に入った状態を示す、軸方向視の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の貫通穴閉塞具につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。
【0019】
本実施形態の貫通穴閉塞具1は、
図1に示すような筒状とされている。貫通穴閉塞具1は、主に、筒部2と枠部3とを備える。
【0020】
筒部2は、平坦なシートが筒状に成形されている。本実施形態の筒部2は、周方向において切断(分断)された、スリット状である筒部側切断部21を有している。筒部側切断部21は軸方向に延びている。このため、軸方向に対して直交する断面で「C」字状とされている。ただし、筒部側切断部21を設けず、断面で「O」字形状とされていてもよい。また、筒部2において筒部側切断部21に面する周方向の一方側部分と他方側部分が径方向に重なり合うことで、スリットが露出しないようにされていてもよい。また、本実施形態では、筒部側切断部21は1箇所設けられているが、2箇所以上設けられていてもよい。
【0021】
筒部2に用いられるシートとしては、柔軟な材料が用いられる。このシートは、耐火性、耐熱性、対炎性がある材料から形成される。材料の具体例として、セラミックウールシート、耐火フォーム(発泡系フォーム)、熱膨張ブチルテープ、アルミガラスフィルムまたはアルミガラスクロスが例示できる。筒部2は、周方向へのねじり変形が可能な程度に柔軟であることが必要である。柔軟性に関し、シートが平坦な状態において、シートの面(表面、裏面)がねじれるような柔軟性を有していることはもちろん、特に、筒部2として成形された状態で、周方向に360度以上のねじりが可能な柔軟性を有することが望ましい。また筒部2の内周面は、
図3及び
図4に示すように、貫通穴Hを通る長尺状体L(配管、ケーブル等)に対して接触した場合に、少なくとも軸方向に滑る程度の滑らかさを有することが望ましい。また、筒部2に用いられるシートは、貫通穴閉塞具1を防火区画に設けられた貫通穴Hに取り付ける場合には、不燃性材料を用いることが望ましい。なお、後述する膨張材を用いる場合では、紙等の不燃性でない材料を用いることもできる。
【0022】
枠部3は、筒部2の軸方向における少なくとも一方に、周方向に沿って設けられる。本実施形態では、枠部3は、筒部2の軸方向における両端に、筒部2と一体に設けられる。また、枠部3は筒部2の径内側に設けられる。枠部3は軸方向視で円環状であって、例えば硬質樹脂製リングや金属製リングが用いられる。枠部3は、筒部2に対して接着されていてもよいし、ピン等の締結具により筒部2に対して取り付けられていてもよい。枠部3は、貫通穴Hの内周壁Hs(
図4参照)における内周面に合わせて縮径可能であって、縮径状態で元の状態への復元力を有する。
【0023】
本実施形態の枠部3は、周方向において切断(分断)された枠部側切断部31を有している。枠部側切断部31は軸方向に延びている。枠部側切断部31は、筒部側切断部21と連続する位置に、1箇所形成されている。このため、筒部側切断部21及び枠部側切断部31を介して、貫通穴閉塞具1の内部空間が外部空間に対して連通している。よって、各切断部21,31に配管等の長尺状体Lを通すことができる。従って、長尺状体Lが既に貫通している貫通穴Hに対して、各切断部21,31に長尺状体Lを通すことができるため、後施工が可能である。ただし、枠部側切断部31を設けず、枠部3が周方向で切れ目のない形状であってもよい。
【0024】
枠部3の外径寸法は取り付け対象の貫通穴Hの内周壁Hsにおける内周面の径寸法よりも大きく設定することが望ましい。この場合、
図2に示すように、枠部3を縮径させた状態で、筒部2及び枠部3を矢印Mの方向に移動させ、貫通穴Hの内部に挿入する。枠部3の縮径は、例えば、図示のように、枠部3のうち枠部側切断部31を挟んだ周方向一端部と周方向他端部とが径方向に重なり合うようにしてなされる。この場合、縮径に伴い前記各端部が周方向に移動させられることから、枠部3には、元の形態に戻ろうとする復元力が生じる。
【0025】
ここで、前述の特許文献1(欧州特許出願公開第0940615号明細書)に記載された装置では、チューブ(本実施形態の筒部2に対応)の両端、または一端に設けられたリング(本実施形態の枠部3に対応)が通路の外部(壁面)に露出している。このため、配置の自由度が制限されている。したがって、壁面に露出したリングとチューブの一部により美観を損ねる場合がある。また、チューブにつき、通路の貫通方向の全長に加え、ねじりによる変形寸法とリングに取り付けるための寸法が必要であることから、材料を多く要する。
【0026】
このことに対し、本実施形態の貫通穴閉塞具1では、
図3または
図4に示すように、枠部3を貫通穴Hの内部に位置させられることから、配置の自由度が高い。また、筒部2及び枠部3が貫通穴Hの外部(壁面)に露出しないようにできるので、美観上で問題になりにくい。また、筒部2の軸方向長さを、施工後で貫通穴Hの軸方向寸法よりも大きく設定する必要がなく、貫通穴Hの内部空間を塞ぐために必要な最低限の長さに設定できる。このため、筒部2の使用材料を節約できる。
【0027】
ここで、本実施形態の貫通穴閉塞具1は、建築物等における壁の内部に設けられた、内周壁Hsを有する貫通穴Hに挿入して用いられる。前記「内周壁を有する」とは、中空壁のように、壁が2枚の対向する壁板からなっていて、壁板が各々開口しており、二つの開口の間が何もない空間であるようなものではなく、例えば、二つの開口をつなぐように内周面が連続して存在するものである。ただし、本実施形態の貫通穴閉塞具1を、前述の、壁板が各々開口しており、二つの開口の間が何もない空間であるような構成に適用することも可能である。この場合、貫通穴Hにおける二つの開口の間を結ぶように、例えば鋼板製等である円筒形のスリーブを設ける。そうすれば、前記スリーブを設けた状態で、前述の、内周壁Hsを有する貫通穴Hとできるため、本実施形態の貫通穴閉塞具1を挿入可能となる。スリーブの形態は特に限定されないが、枠部3と同様、周方向において切断された切断部を有することで縮径できるような形態とすることが、貫通穴Hへの挿入が容易であるため好ましい。
【0028】
挿入に当たって縮径されていた枠部3は、貫通穴Hの内部に挿入された後は、枠部3自身の有する復元力により縮径前の径に戻ろうとする。このため、前記復元力によって内周壁Hsの内周面に枠部3が接触する。枠部3が内周壁Hsの内周面を押すことにより、枠部3が貫通穴Hに対して位置保持される。なお、内周壁Hsは、一つのまとまった面であることは必須ではなく、貫通穴閉塞具1の枠部3が前記接触する面を有してさえすればよい。よって、内周壁Hsは分断されていたり、穴が明いていたりしていてもよい。また、前述のようにスリーブを設ける場合、内周面はスリーブに形成される。
【0029】
貫通穴Hの内部に挿入された貫通穴閉塞具1に対し、作業者から近い側の枠部3を周方向に回すことで、筒部2がねじれる。筒部2をねじるための回転は、貫通穴Hの内部に挿入している途中の貫通穴閉塞具1に対して行うこともできる。また、回転と挿入を同時に行う(回転しつつ挿入する)こともできる。筒部2は柔軟な材料からなっているため、作業者は容易に筒部2をねじることができる。筒部2のうちねじれが生じた部分(ねじれ部22)は径方向中心に接近するように移動する。また、
図3及び
図4に示すように、長尺状体Lが貫通穴Hを貫通している場合、筒部2のうちねじれ部22が長尺状体Lの外周部に接触する。また、ねじりの程度が大きい場合には、ねじれ部22を長尺状体Lの外周部に絡ませることができる。このようにして、貫通穴Hの空間を、変形させた筒部2におけるねじれ部22によって閉塞することができる。この閉塞により、例えば貫通穴Hを挟んだ建物等の区画間での遮音が可能である。また、前記区画が防火区画で、防火に適した材料で貫通穴閉塞具1を形成した場合には、防火を行うことが可能である。
【0030】
なお、
図3では枠部3が貫通穴Hの端部近くに位置した状態が記載されているが、このような位置関係に限られず、
図4に示すように、枠部3を貫通穴Hの軸方向内部に位置させることができる。貫通穴閉塞具1における両端に設けられた枠部3は、筒部2をねじることに伴い、ねじる前の状態に比べて軸方向で接近させられる。なお、作業者から遠い側の枠部3は、復元力により内周壁Hsを押している。このため、前記遠い側の枠部3を周方向に回らないように作業者が持っておくことは特に必要ない。よって、作業者一人で作業が可能である。このように、枠部3を縮径させた状態で貫通穴Hの内部に挿入した上で、筒部2を周方向にねじることにより、貫通穴Hの空間を簡単に閉塞できる。
【0031】
ここで従来、貫通穴の空間を埋めるためにはモルタル、パテ、ロックウール、シーリング剤等を貫通穴に詰めていた。しかし、このような工法では、手間がかかる、作業者の手が汚れる、乾燥や硬化のための時間を要する等、不便な点があった。これに対して、本実施形態の貫通穴閉塞具1では、筒部2をねじるだけでいいので、従来に比べて利便性が高い。また、例えば機械的なシャッター構造のような複雑な構造ではないため、貫通穴閉塞具1の製造コストを抑制できる。また、機械的なシャッター構造を有する装置よりも軽量であるため、施工現場での作業者の体力的負担が小さい。
【0032】
筒部2は、防火のため、熱を受けて膨張する膨張材を有していてもよい。膨張材は、図示していないが、例えば、筒部2の内周面23に貼り付ける等によって配置される。膨張材は、種々の構成のものを用いることができる。火災時には熱により膨張材が膨張することで貫通穴Hの内部空間を塞ぐため、筒部2が熱により消失しても、膨張した膨張材により、貫通穴Hを介した隣接区画への延焼を防止できる。
【0033】
膨張材は、筒部2の内周に全面的に設けられていてもよいが、分散して設けられていてもよい。分散して設ける場合、膨張材が、筒部2における軸方向の一方側と他方側とに分かれて位置するようにできる。例えば、枠部3に一致させるように設けたり、軸方向において枠部3の内側に近い位置に設けたりすることができる。前述のように、筒部2をねじることに伴い、貫通穴閉塞具1における両端に設けられた枠部3が軸方向で接近するので、同じく、軸方向の一方側に位置する膨張材と他方側に位置する膨張材とが軸方向(貫通穴Hの貫通方向)で接近させられる。このため、貫通穴Hにおいて防火を施すべき位置に膨張材を配置できる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0035】
例えば、枠部3は、前記実施形態のように、筒部2における端部に設けられたものに限られない。筒部2の端部から、軸方向の内方に離れた位置に設けることもできる。
【0036】
また、枠部3は、前記実施形態では円環状とされていた。しかし、これに限定されず、多角形枠状であってもよい。ただし、円環状とした方が、貫通穴Hの内周壁Hsに沿って枠部3を周方向に移動(回転)する作業を行いやすい。
【0037】
また、前記実施形態では、枠部3は筒部2の径内側に設けられていた。しかし、これに限定されず、筒部2の径外側に設けられていてもよいし、筒部2の軸方向における側方に設けられていてもよい。つまり、貫通穴閉塞具1において枠部3が外部に露出していてもよい。
【0038】
また、枠部3に、貫通穴Hの内周壁Hsに固定できるストッパーを設けることにより、枠部3を軸方向に不動としてもよい。
【0039】
また、貫通穴閉塞具1の変形例として、筒部2は、
図5に示すように、径内側に柔軟層部4を備えてもよい。この場合、筒部2のうち、柔軟層部4を除いた本体部2aは、平坦なシートが筒状に成形されている。そして、筒部2の本体部2aに用いられるシートとしては柔軟な材料が用いられ、前記シートは、耐火性、耐熱性、耐延性がある材料から形成される。
【0040】
柔軟層部4は、筒部2の一部分を構成する。この柔軟層部4は、筒部2の径外側部分である本体部2aとは別体に形成されたものであり、筒部2の本体部2aにおける径内側に貼付等により設けられている。また、この柔軟層部4は、圧縮可能な柔軟性を有した素材により構成され、例えば、径方向で圧縮と復元が可能なスポンジ層により形成される。
図5において、柔軟層部4は、筒部2の本体部2aの軸方向中央部の径内側で、周方向の全周に沿って設けられている。そのため、柔軟層部4は、筒部2の本体部2aと径方向で重なっている。
【0041】
柔軟層部4は、あらかじめ、軸方向視で円環状に形成されていてもよいし、平坦なシートの本体部2aを筒状に成形した際に、円環状となるように構成されていてもよい。また、柔軟層部4の内周面は、
図5に示すように、軸方向視で略一定曲率の円環状に形成されていてもよいし、波打った形状などの凹凸状に形成してもよい。前記凹凸は、例えば軸方向に延びる凹状及び凸状とされていてもよいし、突起が内周面に飛び飛びに形成されていてもよい。これにより、例えば、複数の長尺状体L~Lが挿通された貫通穴Hに貫通穴閉塞具1を入れた際は、各長尺状体Lの間に生じる略V字状の空間に、凸状の柔軟層部4の内周面を充填できるとともに、各長尺状体Lの外形に凹状の柔軟層部4の内周面を沿わせることができる。さらに、前記柔軟層部4の内周面には、軸方向及び/又は周方向に延びる切込みを設けるようにしてもよい。これにより、切込みを介した隣の柔軟層部4の内周面の圧縮又は復元の影響を受けることを少なくできるため、柔軟層部4の内周面の柔軟性を高めることができる。
【0042】
柔軟層部4は、
図5に示すように、筒部2の軸方向中央部に設けられていることが好ましいが、これに限定されず、例えば、軸方向全域に亘って配置されていてもよいし、軸方向の偏った一部に配置されていてもよい。また、柔軟層部4は、筒部2の本体部2aに軸方向で一個だけ設けられていてもよいし、複数個が軸方向に並べられるように構成されていてもよい。加えて、柔軟層部4は、筒部2の径内側の全周を一個で覆うように構成されていてもよいし、複数個が周方向に並べられるように配置されていていてもよい。
【0043】
柔軟層部4は、
図5に示すように、周方向において切断(分断)された柔軟層部側切断部41を有していてもよい。この場合、柔軟層部側切断部41は、例えば、軸方向に延びている。また、柔軟層部側切断部41は、筒部側切断部21と径方向で連続する位置に、一箇所形成されている。このため、筒部側切断部21及び柔軟層部側切断部41を介して、貫通穴閉塞具1の内部空間が外部空間に対して連通している。よって、各切断部21、41に長尺状体Lを通すことができる。したがって、長尺状体Lが既に貫通している貫通穴Hに対して、各切断部21、41に長尺状体Lを通すことができる。なお、柔軟層部側切断部41を設けずに、柔軟層部4が周方向で切れ目のない形状でもよい。
【0044】
以上、変形例の貫通穴閉塞具1は柔軟層部4を備えているので、柔軟層部4は、貫通穴閉塞具1の径内位置にある空間を埋めることができる。例えば、貫通穴Hを複数の長尺状体L~Lが通る場合等、筒部2をねじるだけでは閉塞されずに残ってしまう空間を柔軟層部4により確実に閉塞できる。具体的に、
図6に示すように、貫通穴Hに複数の長尺状体L~Lが通る場合で、各長尺状体Lの断面形状が円形であるときは、集合した複数の長尺状体L~Lの間に生じる略V字状の空間(鋭角を有する空間)に柔軟層部4が充填される。このため、貫通穴Hを複数の長尺状体L~Lが通る場合であっても、貫通穴Hの内部空間を確実に閉塞できる。なお、変形例の貫通穴閉塞具1は、貫通穴Hを複数の長尺状体L~Lが通る場合に好適であるが、例えば、外周面に溝が形成された単一の長尺状体Lが貫通穴Hを通る場合にも好適である。また、断面形状が円形である単一の長尺状体Lが貫通穴Hを通る場合に使用することも可能である。
【0045】
また、長尺状体Lが貫通穴Hを貫通している場合、筒部2のうち、ねじれ部22が長尺状体Lの外周部に接触する。なお、本実施形態において長尺状体Lの外周部に接触するのは、筒部2の一部分である柔軟層部4である。また、ねじりの程度が大きい場合には、ねじれ部22(柔軟層部4を含む)を長尺状体Lの外周部に絡ませることができる。このようにして、貫通穴Hの空間を、変形させた筒部2におけるねじれ部22によって閉塞することができる。
【0046】
また、柔軟層部4は圧縮可能な柔軟性を有した素材により形成されているため、
図6に示すように、長尺状体L(具体的には、複数の長尺状体L~L)を挿通した状態で、筒部2をねじった際は、柔軟層部4を各長尺状体Lの外形に沿うように圧縮させることができるとともに、各長尺状体Lの間に生じる略V字状の空間に充填させるように復元させることができる。
【0047】
別の変形例として、貫通穴閉塞具1の軸方向の長さは、貫通穴Hの軸方向寸法よりも小さく設定されていればよく、例えば、貫通穴Hの軸方向中央において、周方向全域に亘って耐火材を配置した場合、貫通穴閉塞具1の軸方向の長さは、前記耐火材よりも軸方向の一方側又は他方側の貫通穴Hの内部空間を塞ぐための長さであればよい。この場合、前記実施形態に比べて、筒部2(この場合の筒部2は、柔軟層部4を備えていてもよいし、備えていなくてもよい)の軸方向での長さを軸方向の一方側又は他方側の貫通穴Hの軸方向での長さより短くすることや、前記筒部2の軸方向での長さを短くすることに加えて、枠部3の軸方向での長さを短くすることが考えられる。さらに、この場合、前記耐火材よりも軸方向の一方側又は他方側の貫通穴Hの内部空間を塞ぐための長さにした貫通穴閉塞具1を、前記耐火材よりも軸方向の一方側及び他方側それぞれに設けてもよい。
【0048】
以上、別の変形例として貫通穴閉塞具1の長さを上述したように短くすることにより、貫通穴閉塞具1は、軸方向の一方側及び/又は他方側で貫通穴Hを閉塞するため、軸方向視で、耐火材を隠す目隠しとして機能できる。なお、目隠しの対象物は前記耐火材に限られず、貫通穴Hの内部に配置される種々の部材であってよい。
【符号の説明】
【0049】
1 貫通穴閉塞具
2 筒部
21 筒部側切断部
22 ねじれ部
3 枠部
31 枠部側切断部
4 柔軟層部
41 柔軟層部側切断部
H 貫通穴
Hs 内周壁
L 長尺状体