(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】アイスディスペンサ
(51)【国際特許分類】
F25C 5/20 20180101AFI20240517BHJP
【FI】
F25C5/20 303A
(21)【出願番号】P 2020099187
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花井 崇
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 義之
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-117021(JP,A)
【文献】特開平10-227547(JP,A)
【文献】特開平07-019690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/00 ~ 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷を製氷する製氷部と、
前記製氷部で製氷された氷を貯える貯氷槽と、
前記貯氷槽に貯えられた氷を放出する放出口と、
前記放出口からの氷の放出を使用者が操作可能な操作部と、
時間の経過を計時する計時部と、
前記製氷部による製氷を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、所定の単位日数における前記放出口からの氷の放出量、及び前記計時部によってカウントされる前記単位日数の積算経過数に基づき、前記製氷部による製氷運転が異なる第1製氷運転と第2製氷運転とを切り替えて実行し、
前記第1製氷運転は、前記単位日数より短い所定の第1設定時間における前記放出量に基づき、第1モードと第2モードとを切り替える切替製氷運転である一方、
前記第2製氷運転は、前記第1モードと前記第2モードとを切り替えない通常製氷運転
であって、使用者による操作によって切り替えられない限り、前記第2モードのみが実行される通常製氷運転とされ、
さらに前記制御部は、前記第1モードでは、前記第2モードよりも前記貯氷槽の貯氷量が少なくなるように前記製氷部による製氷を制御するアイスディスペンサ。
【請求項2】
前記制御部は、
前記単位日数における前記放出量が第1放出量閾値以下となり、かつ、前記第1放出量閾値以下となった前記単位日数の積算経過数が第1積算経過数閾値以上の場合に、前記第1製氷運転を実行する一方、
前記単位日数における前記放出量が前記第1放出量閾値より大きい第2放出量閾値以上となり、かつ、前記第2放出量閾値以上となった前記単位日数の積算経過数が、第2積算経過数閾値以上の場合に、前記第2製氷運転を実行する請求項1に記載のアイスディスペンサ。
【請求項3】
前記単位日数は1日間とされ、前記第1積算経過数閾値及び前記第2積算経過数閾値は共に5日間とされる請求項2に記載のアイスディスペンサ。
【請求項4】
前記操作部は、その操作に応じた量の氷を前記放出口から放出させるものであり、
前記制御部は、前記操作部の操作に基づき前記放出量を算出する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアイスディスペンサ。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1製氷運転において、前記第1設定時間における前記放出量が第3放出量閾値以下である場合に、前記第2モードから前記第1モードに切り替える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアイスディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載された技術は、アイスディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、氷の貯氷量を所定の範囲に保持するように製氷運転を行うアイスディスペンサが知られている。特許文献1に記載のアイスディスペンサは、貯氷槽からの氷の放出量に基づき、2つの製氷モード(繁忙モードと閑散モード)を自動的に切り替える製氷運転を、使用者が選択できるように構成されている。当該製氷運転によって製氷量を制御することで、氷の放出量が多い繁忙期の氷不足、及び氷の放出量が少ない閑散期の無駄な製氷を抑制可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の2つの製氷モードを切り替える製氷運転によれば、短期的な放出量(直近30分の放出量)に基づいて製氷モードを切り替えるため、例えば氷の需要が大きい時期に、何らかの理由で氷の放出量が一時的に減少すると、製氷運転が閑散モードに切り替わり氷不足が生じることがある。具体的には、気温の高い季節に、アイスディスペンサの使用店舗が休業日になると、休業中は氷が放出されないことから製氷運転が閑散モードに切り替わり、その結果、次の営業日に氷不足が生じることがある。また、例えば氷の需要が小さい時期に、使用者が2つの製氷モードを切り替える製氷運転を選択し忘れると、必要以上に氷が製氷されることがある。その結果、貯氷槽には、その後長い間にわたって氷が残留したままとなり、残留して古くなった氷が、氷塊となって放出経路に詰まり、放出不良を引き起こす恐れがある。
【0005】
本明細書に記載された技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、氷の過不足を抑制する確実性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載の技術に関わるアイスディスペンサは、氷を製氷する製氷部と、前記製氷部で製氷された氷を貯える貯氷槽と、前記貯氷槽に貯えられた氷を放出する放出口と、前記放出口からの氷の放出を使用者が操作可能な操作部と、時間の経過を計時する計時部と、前記製氷部による製氷を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、所定の単位日数における前記放出口からの氷の放出量、及び前記計時部によってカウントされる前記単位日数の積算経過数に基づき、前記製氷部による製氷運転が異なる第1製氷運転と第2製氷運転とを切り替えて実行し、前記第1製氷運転は、前記単位日数より短い所定の第1設定時間における前記放出量に基づき、第1モードと第2モードとを切り替える切替製氷運転である一方、前記第2製氷運転は、前記第1モードと前記第2モードとを切り替えない通常製氷運転とされ、さらに前記制御部は、前記第1モードでは、前記第2モードよりも前記貯氷槽の貯氷量が少なくなるように前記製氷部による製氷を制御する。
【0007】
上記アイスディスペンサによれば、制御部によって、短期(所定の第1設定時間、例えば30分)における氷の放出量に基づき、第1モード(閑散モード)と第2モード(繁忙モード)とを切り替える切替製氷運転(第1製氷運転)が行われる一方で、長期(所定の単位日数、例えば1日)における氷の放出量、及び単位日数の積算経過数に基づき、閑散モードと繁忙モードとを切り替えない通常製氷運転(第2製氷運転)を実行可能となる。その結果、長期的に氷の需要が大きくなると、制御部によって通常製氷運転に自動的に切り替えられるため、何らかの理由で氷の放出量が一時的に減少しても、切替製氷運転に切り替わって閑散モードの製氷処理が実行されることはなくなる。これにより、氷の需要が大きい時期に、氷不足が生じる事態を確実に抑制できるようになる。また、長期的にみて氷の需要が小さくなると、制御部によって通常製氷運転から切替製氷運転に自動的に切り替えられるため、氷が必要以上に製氷され、貯氷槽に古い氷が残留してしまう事態を抑制できる。これにより、氷の需要が小さい時期に、氷過多となる事態を確実に抑制できるようになる。なお、所定の単位日数は、適宜設定可能であり、7日とすれば1週間の単位となる。
【0008】
また、前記制御部は、前記単位日数における前記放出量が第1放出量閾値以下となり、かつ前記第1放出量閾値以下となった前記単位日数の積算経過数が、第1積算経過数閾値以上の場合に、前記第1製氷運転を実行する一方、前記単位日数における前記放出量が前記第1放出量閾値より大きい第2放出量閾値以上となり、かつ前記第2放出量閾値以上となった前記単位日数の積算経過数が、第2積算経過数閾値以上の場合に、前記第2製氷運転を実行する。このように各閾値を設定すれば、制御部によって、第1製氷運転(切替製氷運転)と第2製氷運転(通常製氷運転)とを好適に切り替えられるようになる。
【0009】
また、前記単位日数は1日とされ、前記第1積算経過数閾値及び前記第2積算経過数閾値は共に5日とされる。このようにすれば、制御部によって、長期的な氷の需要に応じて、第1製氷運転と第2製氷運転とを好適に切り替えられるようになる。
【0010】
また、前記操作部は、その操作に応じた量の氷を前記放出口から放出させるものであり、前記制御部は、前記操作部の操作に基づき前記放出量を算出する。このようにすれば、制御部は、操作部の操作に基づき氷の放出量を容易に算出(検出)できる。
【0011】
また、前記制御部は、前記第1製氷運転において、前記第1設定時間における前記放出量が第3放出量閾値以下である場合に、前記第2モードから前記第1モードに切り替える。このようにすれば、第1製氷運転(切替製氷運転)において、制御部によって、第1モードと第2モードとを好適に切り替えられるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本明細書に記載の技術によれば、氷の過不足を抑制する確実性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係るアイスディスペンサの正面図
【
図6】アイスディスペンサの電気的構成を示すブロック図
【
図8】通常製氷運転から切替製氷運転への切り替えを示すフローチャート
【
図9】通常製氷運転から切替製氷運転への切り替え事例を示すグラフ
【
図11】切替製氷運転から通常製氷運転への切り替えを示すフローチャート
【
図12】切替製氷運転から通常製氷運転への切り替え事例を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るアイスディスペンサ10について、
図1から
図12を参照して説明する。
図1から
図4の各図面の一部には、X軸、Y軸、及びZ軸を示しており、各軸方向が各図で共通した方向となるように描かれている。また、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向とする。
【0015】
アイスディスペンサ10は、
図1及び
図2に示すように、略直方体形状のハウジング(筐体)11と、製氷機構20と、貯氷槽70と、搬送機構75と、放出機構90と、を備えている。製氷機構20は、ハウジング11の上方に配置されており、氷を製氷する。貯氷槽70は、ハウジング11内にて製氷機構20の下方に配置されており、製氷機構20により製氷された氷を貯える。放出機構90は、貯氷槽70内の氷を放出口92から容器台66に載置された容器(具体的にはカップ等)に放出する。搬送機構75は、貯氷槽70内の氷を放出機構90に搬送する。
【0016】
製氷機構20は、
図2に示すように、氷を製氷する製氷部22と、製氷部22の下方に配置されて製氷水を貯えるタンク45と、を備えている。製氷部22は、
図2及び
図5に示すように、製氷板23と、仕切り部材26と、を備えている。製氷板23は、鉛直に起立し、一方の板面が製氷面24となっている。仕切り部材26は、格子状をなし、製氷板23の製氷面24側に多数の製氷小室を形成するように設けられている。製氷板23及び仕切り部材26は熱伝導性の良い銅板またはアルミニウム板が用いられている。製氷面24を流下する製氷水は凍結し、各製氷小室内で多数のブロック形に製氷される。各製氷小室内のブロック形氷は、隣り合う製氷小室内のブロック形氷と部分的に連結されているため、製氷面24側には、ブロック形氷が連結されて全体として板形の形状となった板形連結氷が形成される。製氷板23の製氷面24と反対側には、冷凍装置30を構成する蒸発管34と、第1温度センサ38(
図5)と、が設けられている。
【0017】
製氷板23の製氷面24側には、
図2に示すように、製氷面24側を流下した製氷水が周囲に飛散するのを防ぐガイド板40が上端側を軸として所定角度回動可能に設けられている。ガイド板40には、製氷面24側にて製氷された氷の製氷板23からの離脱や、貯氷槽70内が満氷状態であることを検知するための検知部41(
図5)が固定されている。検知部41は、例えば近接センサからなる。製氷板23で製氷された板形連結氷は、製氷板23に形成された貫通孔18に挿入されるスライドピン19(
図5)によって押し出されるようになっている。押し出された板形連結氷がガイド板40に当接すると、ガイド板40が垂下姿勢から傾斜姿勢となるため、検知部41がガイド板40の位置を検知することにより、製氷された氷の製氷板23からの離脱を検知できる。また、貯氷槽70に落下した板形連結氷が貯氷槽70内で積み上がると、ガイド板40は積み上がった最上部の板形連結氷に当接して垂下姿勢に戻らずに傾斜姿勢を維持するため、検知部41がガイド板40の位置を検知することにより、貯氷槽70が満氷状態にあることを検知することができる。なお、検知部41は、貯氷槽70の満氷状態を検知可能に、貯氷槽70に設けられていても構わない。
【0018】
タンク45には、
図5に示すように、水道などの給水源に接続した給水管48が接続されており、給水管48には給水弁49が設けられている。給水弁49の開放によって給水源の水は給水管48を通ってタンク45に供給される。タンク45内の製氷水は、製氷水回路60により循環される。製氷水回路60は、タンク45内に設けた送水ポンプ61と、送水ポンプ61に接続された送水管62と、浮力で水位に合わせて上下変動し、送水をオンオフするフロートスイッチ46(水位センサの一例、
図3)と、タンク45内の水温を検知する水温センサ47と、製氷板23の上側に配設されて送水管62に接続された散水器63と、を備えている。また、送水管62の中間部には製氷水を容器台66に導く導水管64が接続されており、導水管64には排水バルブ65が設けられている。
【0019】
タンク45内の製氷水は、製氷運転において、送水ポンプ61の駆動によって送水管62を通って散水器63に送られ、散水器63から製氷板23の製氷面24側を流下してタンク45に流れ落ちる。タンク45内の製氷水は、このように製氷水回路60によってタンク45と製氷板23の製氷面24側とを循環する。なお、製氷運転後に残るタンク45内の製氷水は、排水バルブ65の開放によって導水管64から容器台66の排水路に排出される。
【0020】
フロートスイッチ46は、
図3に示すように、タンク45内に設けられている。フロートスイッチ46は、タンク45内の製氷水の第1水位、及び第1水位より高い第2水位を検出する。第1水位は、製氷板23にて製氷が完了したときのタンク45内の水位である。第2水位は、製氷板23の製氷面24側にて板形連結氷を製氷するのに必要なタンク45内の水位である。第2水位であったタンク45内の製氷水は、製氷板23に板形連結氷が形成されると第1水位まで減少する。この水位の変化をフロートスイッチ46が検出することにより、板形連結氷が形成されたことが検知される。板形連結氷が形成されたことが検知されると、送水ポンプ61が停止されるとともに、後述するように圧縮機31からホットガスが蒸発管34に送出される。これにより、板形連結氷は、製氷面24及び仕切り部材26との接触部分が僅かに融解され、製氷板23から離脱可能となる。そして、板形連結氷は、この状態でスライドピン19により押し出されると、貯氷槽70の内部に落下する。
【0021】
フロートスイッチ46は、
図4に示すように、固定部46Aと、本体部46Bと、浮き子46Cと、有する。固定部46Aは、タンク45の蓋体に固定される。本体部46Bは、棒状をなし、固定部46Aからタンク45内に垂下するように下方に延出している。本体部46Bの内部には、リードスイッチが設けられている。浮き子46Cは、中空筒部46C1と、水車羽根46C2と、を有し、浮力でタンク45内の水位に合わせて上下変動する。中空筒部46C1は、本体部46Bに挿通されており、その内部には磁石が埋設されている。浮き子46Cが水位に合わせて上下変動すると、中空筒部46C1内の磁石と、本体部46B内のリードスイッチとの距離が変化する。これにより、リードスイッチがオン、オフすることで、タンク45内の製氷水の水位(第1水位、第2水位)が検出される。
【0022】
水車羽根46C2は、
図4に示すように、中空筒部46C1の外周面において、周方向について一定間隔に形成されている。既述したように、製氷運転時において、製氷板23の製氷面24側を流下してタンク45に流れ落ちた製氷水は、送水ポンプ61の駆動によって送水管62に送られる。このため、タンク45内には、製氷板23から送水ポンプ61に向かう水流が形成されており、この水流によって水車羽根46C2は
図4の矢線で図示する方向に回転する。仮に、水車羽根46C2が形成されていない場合、中空筒部46C1は、水流を受けて傾く等の理由で、その内周面が本体部46Bの外周面に当接して接触抵抗が増大してしまうことがある。これにより、浮き子は、本体部46Bに引っ掛かって上下変動しにくくなり、水位の変化を適切に検出できなくなってしまう。そこで、本実施形態では浮き子46Cに水車羽根46C2を設けることで、中空筒部46C1が本体部46Bの外周面に引っ掛かってしまった場合でも、水車羽根46C2が回転して、引っ掛かりが解消されるようになっている。これにより、浮き子の引っ掛かりを手作業で解消したり、浮き子の引っ掛かりに備えて、フロートスイッチ46とは別の水位検知装置を設ける必要がなくなる。
【0023】
冷凍装置30は、
図5に示すように、冷媒を圧縮する圧縮機31と、圧縮した冷媒ガスを凝縮器ファン42の送風により冷却して液化させる凝縮器32と、液化冷媒を膨張させる電子式の膨張弁33と、膨張させた液化冷媒を気化させて製氷板23を冷却する蒸発管34とを備え、これらは冷媒管によって連結されて冷媒が循環する冷凍回路(冷媒回路)となっている。また、冷凍装置30は、圧縮機31と蒸発管34との間を接続するバイパス管36を備え、バイパス管36にはホットガス弁37が介装されている。冷媒管における蒸発管34の入口部分及び出口部分、並びにドライヤ35と凝縮器32との間には、冷媒の温度を検知するための第2温度センサ39A,39B,39Cがそれぞれ固定されている。さらに、冷媒管(バイパス管36を含む)には、冷媒管内に混入した水分を除去するためのドライヤ35が設けられている。
図5においては、冷媒及びホットガスの進行方向を矢線で示している。
【0024】
製氷運転時には、冷凍装置30のホットガス弁37を閉止させた状態で圧縮機31を作動させると、液化冷媒は蒸発管34で気化して製氷板23と仕切り部材26が冷却される。製氷板23の製氷面24側を流下する製氷水は冷却された製氷板23と仕切り部材26とにより冷却され、製氷水は製氷板23の製氷面24側で凍結して氷となる。
【0025】
除氷運転時には、冷凍装置30のホットガス弁37を開放させた状態で圧縮機31を作動させると、圧縮機31から送られたホットガスが蒸発管34を通過させるときに製氷板23及び仕切り部材26を加温する。これにより、製氷板23の製氷面24側に製氷された氷は、加温された製氷板23及び仕切り部材26との接触面で融解されて、製氷板23から離脱可能となる。
【0026】
ところで、除氷運転において、圧縮機31から送られたホットガスの熱量が大き過ぎると、製氷された氷が製氷板23から離脱される前に溶け過ぎてしまい、氷の大きさが設計値より小さくなってしまうことがある。例えば、外気温が高い環境下では、圧縮機31が製氷運転において高稼働状態となるため、除氷運転に移行した際に、ホットガスの熱量が過大になりやすい。そこで、本実施形態では、ホットガスの熱量が過大であると判断される場合に、後述する制御部100によって膨張弁33を開き、膨張させた液化冷媒をホットガスに混ぜることで、蒸発管34に流入するホットガスの熱量を下げる調整を行っている。より詳しくは、第2温度センサ39A,39Bの一方、または両方の検出温度がそれぞれの閾値以上である場合、ホットガスの熱量が過大であると判断して、膨張弁33を開くように調整している。膨張弁33の開度は、第2温度センサ39A,39Bの検出温度と閾値との差分に応じて、適宜調整されても構わない。
【0027】
また、上記した方法によってホットガスの熱量を下げるように調整可能となることで、ホットガスの熱量の初期値(具体的には流量等)をあらかじめ大きく設定しておけるようになる。その結果、ホットガスの熱量が小さ過ぎてしまう事態も抑制されるようになる。外気温が低い環境下では、圧縮機31が製氷運転において低稼働状態となるため、除氷運転に移行した際に、ホットガスの熱量が小さ過ぎることがある。その結果、除氷に要する時間が長くなってしまい、製氷された氷が製氷板23から離脱される前に、溶け過ぎてしまうことがあるが、このような事態も抑制可能となる。すなわち、外気温によって、製氷された氷の大きさが設計値より小さくなる事態を抑制でき、氷の大きさを安定化させることができる。
【0028】
次に、アイスディスペンサ10の電気的構成について説明する。アイスディスペンサ10は、
図6に示すように、CPUを主体に構成される制御部50を備えている。制御部50には、時間の経過を計時するタイマ(計時部)51と、記憶部52と、が一体的に設けられているが、別途設けられていても構わない。また、制御部50には、操作部99、水位センサ46、検知部41、第1温度センサ38、第2温度センサ39A,39B,39C、圧縮機31、凝縮器ファン42、膨張弁33、ホットガス弁37、送水ポンプ61、給水弁49、モータ77,78,93、氷定量器91Aが接続されている。制御部50は、記憶部52に記録された制御プログラムを実行することで、使用者による操作部99の操作、及び各センサの検出結果に基づいて、アイスディスペンサ10の各部を制御する。
【0029】
制御部50は、
図6に示すように、製氷部22による製氷運転が異なる第1運転と、第2運転と、を切り替える製氷切り替え手段54を有する。第1運転は、閑散モード(第1モード)と、繁忙モード(第2モード)と、を自動的に切り替えて実行する切替製氷運転である。閑散モードでは、繁忙モードよりも貯氷槽70の貯氷量が少なくなるように製氷部22による製氷が制御される。第2運転は、閑散モードと繁忙モードとを自動的に切り替えずに実行する通常製氷運転である。本実施形態では、通常製氷運転は、手動操作等によって強制的に切り替えられない限り、繁忙モードのみが実行されるように設定されている。従って、切替製氷運転は、閑散モードにおいて製氷が抑えられるため、製氷セーブ運転と言える。また、制御部50は、
図6に示すように、切替製氷運転において、閑散モードと繁忙モードとを切り替えるモード切替手段55を有する。本実施形態では、制御部50は、繁忙モードにおいて、常に貯氷槽70が満氷になるように製氷部22を制御している。
【0030】
次に、アイスディスペンサ10の製氷運転について
図7から
図12を参照して説明する。
図7及び
図8は通常製氷運転におけるフローチャート、
図10及び
図11は切替製氷運転におけるフローチャートである。
図9及び
図12はそれぞれ、1日ごとの氷の放出量を示す事例のグラフである。なお、
図7から
図12では、氷の放出量は、容器台66に載置される容器1杯(1杯=150g)を単位として記載されている。アイスディスペンサ10は、通常製氷運転、または切り替え製氷運転が選択的に実行されるが、初めて使用する際等の初期設定においては、いずれか一方が選択されているものとされる。
【0031】
通常製氷運転、及び通常製氷運転から切替製氷運転への自動切り替えについて、
図7及び
図8を参照して説明する。制御部50は、
図7に示すように、タイマ51により時間を計測している(S10)。制御部50は、操作部99の操作ボタンが押されたことを検知すると(S15で「YES」)、モータ93を駆動し、操作ボタンの種類及び押した回数に応じた角度で氷定量器91Aを回動させ、放出口92から氷を放出させるとともに、操作ボタンの種類及び回数により氷の放出量を算出する(S20)。また、制御部50は、氷の放出量に応じて貯氷槽70内の氷を搬送機構75によって放出機構90に搬送し、定量室91に氷を追加する。
【0032】
通常製氷運転において、制御部50は、
図7に示すように、繁忙モードの製氷処理を行う(S25)。繁忙モードでは、検知部41が満氷を検知するまで製氷機構20で製氷が行われ、製氷された氷が貯氷槽70に補充される。
【0033】
また、制御部50は、タイマ51により計測される1日間(単位日数の一例)ごとに、製氷運転の切り替え判断をするためのプログラムを実行する。制御部50は、
図8に示すように、1日間における氷の放出量が100杯(15kg、第1放出量閾値の一例)以下であり(S30で「YES」)、かつ当該放出量が100杯以下となった積算経過日数(単位日数の積算経過数)が5日間(第1積算経過数閾値の一例)以上である場合に(S35で「YES」)、製氷切り替え手段54によって、通常製氷運転から切替製氷運転に切り替える(S40)。一方で、ステップS30において「NO」の場合、またはステップS35において「NO」の場合には、通常製氷運転を継続する(S45)。なお、本実施形態のステップS35においては、積算経過日数は、1日間における氷の放出量が100杯以下となった日数が連続5日間以上か否かが判断されているが、必ずしも連続である条件は必要とされない。1日間における氷の放出量が100杯以下となった日数が、連続でなくても、積算して5日間以上であるか否かが判断されるようにしても構わない。
【0034】
図9の事例では、氷の放出量は、月曜日以降において100杯以下となっている。このため、100杯以下となった積算経過日数は、月曜日に1日間、火曜日に2日間、水曜日に3日間、木曜日に4日間、金曜日に5日間に達する。これにより、5日間に達した金曜日の終了時には、上記したステップS35における「YES」に該当するようになる。その結果、制御部50によって通常製氷運転から切替製氷運転に自動的に切り替えられて、土曜日からは切替製氷運転が実行されている。
【0035】
続いて、切替製氷運転、及び切替製氷運転から通常製氷運転への自動切り替えについて、
図10及び
図11を参照して説明する。制御部50は、
図10に示すように、タイマ51により時間を計測している(S10)。制御部50は、操作部99の操作ボタンが押されたことを検知すると(S15で「YES」)、モータ93を駆動し、操作ボタンの種類及び押した回数に応じた角度で氷定量器91Aを回動させ、放出口92から氷を放出させるとともに、操作ボタンの種類及び回数により氷の放出量を算出する(S20)。また、制御部50は、氷の放出量に応じて貯氷槽70内の氷を搬送機構75によって放出機構90に搬送し、定量室91に氷を追加する。
【0036】
切替製氷運転において、制御部50は、
図10に示すように、常時(微小時間ごとに)、直近30分間(所定の第1設定時間)における氷の放出量が4杯(600g、第3放出量閾値の一例)以上であるか否かを判断する(S50)。直近30分間の氷の放出量が4杯以上である場合には(S50で「YES」)、繁忙モードの製氷処理を行う(S25)。繁忙モードでは、検知部41が満氷を検知するまで製氷機構20で製氷が行われ、製氷された氷が貯氷槽70に補充される。一方、直近30分間の氷の放出量が4杯以上でない場合には(S50で「NO」)、閑散モードの製氷処理を行う(S55)。閑散モードでは、検知部41によって満氷が検知された後の経過時間が、所定の第2設定時間(例えば8時間)を超えているか否かが判断される。第2設定時間を超えていない場合には製氷が行われず、第2設定時間を超えている場合には、検知部41が満氷を検知するまで製氷機構20で製氷が行われ、製氷された氷が貯氷槽70に補充される。このように、閑散モードでは、満氷後に第2設定時間が経過するまで製氷が行われないため、繁忙モードに比べて貯氷槽70の貯氷量が少なくなるように制御されている。
【0037】
また、制御部50は、タイマ51により計測される1日間(単位日数の一例)ごとに、製氷運転の切り替え判断をするためのプログラムを実行する。制御部50は、
図11に示すように、1日間における氷の放出量が200杯(30kg、第2放出量閾値の一例)以上であり(S65で「YES」)、かつ当該放出量が200杯以上となった積算経過日数(単位日数の積算経過数)が5日間(第2積算経過数閾値の一例)以上である場合に(S70で「YES」)、製氷切り替え手段54によって、切替製氷運転から通常製氷運転に切り替える(S75)。ここで、第2放出量閾値は、第1放出量閾値より大きいものとされる。ステップS65において「NO」の場合、またはステップS70において「NO」の場合には、切替製氷運転を継続する(S80)。なお、本実施形態のステップS70においては、積算経過日数は、1日間における氷の放出量が200杯以上となった日数が連続5日間以上か否かが判断されているが、必ずしも連続である条件は必要とされない。具体的には、1日間における氷の放出量が200杯以上となった日数が、連続でなくても、積算して5日間以上であるか否かが判断されるようにしても構わない。
【0038】
図12の事例では、氷の放出量は、最初の日曜日以降において200杯以上となっている。200杯以上となった積算経過日数は、日曜日に1日間、月曜日に2日間、火曜日に3日間、水曜日に4日間、木曜日に5日間に達する。これにより、5日間に達した木曜日の終了時には、上記したステップS70の「YES」に該当するようになる。その結果、制御部50によって切替製氷運転から通常製氷運転に自動的に切り替えられて、金曜日からは通常製氷運転が実行されている。
【0039】
なお、単位日数は、上記では1日間として例示したが、任意の日数で設定可能である。例えば、単位日数を7日間とすると1週間に設定できる。その場合、例えば
図11におけるステップS65では、1週間における氷の放出量が第2放出量閾値(例えば500杯)以上であるか否かが判断され、ステップS70では、第2放出量閾値以上となった積算経過週数が第2積算経過数閾値(例えば3週間)以上であるか否かが判断される。
【0040】
以上説明したアイスディスペンサ10によれば、短期(所定の第1設定時間、本実施形態では直近30分)における氷の放出量に基づき、閑散モードと繁忙モードとを自動的に切り替える切替製氷運転が行われつつ、長期(所定の単位日数、本実施形態では1日間)における氷の放出量、及び経過日数(単位日数の積算経過数、本実施形態では5日間)に基づき、閑散モードと繁忙モードとを切り替えない通常製氷運転を実行できるようになる。その結果、長期的にみて氷の需要が大きくなると、制御部50によって切替製氷運転から通常製氷運転に自動的に切り替えられるため、何らかの理由で氷の放出量が一時的に減少しても、閑散モードの製氷処理が実行されることがなくなる。これにより、氷の需要が大きい時期に、氷不足が生じる事態を確実に抑制できるようになる。また、長期的にみて氷の需要が小さくなると、制御部50によって通常製氷運転から切替製氷運転に自動的に切り替えられるようになるため、氷が必要以上に製氷され、貯氷槽70に長い間古い氷が残留してしまう事態を抑制できる。これにより、氷の需要が小さい時期に、氷過多となる事態を確実に抑制できるようになる。
【0041】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0042】
(1)上記した単位日数、第1放出量閾値、第2放出量閾値、第3放出量閾値、第1積算経過数閾値、第2積算経過数閾値、第1設定時間、及び第2設定時間の具体的な値は一例に過ぎず、適宜設定可能である。また、第1積算経過数閾値及び第2積算経過数閾値は、異なる値(日数)であっても構わない。
【0043】
(2)
図9及び
図12では、単位日数としての1日間は曜日ごと(午前零時から翌午前零時まで)に区切られている例を示したが、任意の時刻から24時間までを1日間の区切りと設定しても構わない。
【0044】
(3)操作部99には、使用者が手動で閑散モードと繁忙モードとを強制的に切り替えたり、通常製氷運転と切替製氷運転とを強制的に切り替えるボタンが含まれていても構わない。
【0045】
(4)切替製氷運転において、閑散モードに切り替える際には、直近30分間(所定の第1設定時間)における氷の放出量だけでなく、検知部41が満氷を検知しているか否か等を考慮しても構わない。
【0046】
(5)除氷運転において膨張弁33を開いてホットガスの熱量を下げるように調整する際、ホットガスの熱量が過大であるとの判断は、外気温に基づき判断されても構わない。また、外気温が高い場合には、製氷運転における製氷時間が長くなるため、製氷時間に基づき判断しても構わない。さらには、第2温度センサ39A,39Bの検出温度、外気温、製氷時間の組み合わせによって、ホットガスの熱量が過大であると判断しても構わない。
【0047】
10:アイスディスペンサ、22:製氷部、50:制御部、51:計時部、70:貯氷槽、92:放出口、99:操作部