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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/10 20060101AFI20240517BHJP
   A01D 34/24 20060101ALI20240517BHJP
   A01D 34/28 20060101ALI20240517BHJP
   A01D 57/22 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A01B63/10 D
A01D34/24 105A
A01D34/28
A01D57/22 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020107946
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022002478
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤田 敏章
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-070318(JP,A)
【文献】特開2013-201958(JP,A)
【文献】特開2016-146061(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0245434(US,A1)
【文献】特開2019-170361(JP,A)
【文献】特開平02-147482(JP,A)
【文献】特開平05-297137(JP,A)
【文献】特開2016-010372(JP,A)
【文献】特開2008-237146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/00-63/12
A01B 69/00-69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行可能な走行装置と、
機体に上下昇降可能に支持され、圃場の作物を収穫する収穫部と、
前記収穫部を昇降操作するアクチュエータと、
前記収穫部の前方における圃場の凹凸の高さを検出する非接触式の高さ検出部と、
前記凹凸の高さに基づいて前記収穫部の対地高さを決定し、前記アクチュエータの駆動を制御して前記収穫部の対地高さを自動的に変更する収穫高さ制御部と、
機体の位置を示す測位データを出力する測位ユニットと、
前記凹凸の高さを前記測位データと関連付けて記憶可能な記憶部と、が備えられ、
前記高さ検出部は、走行装置が一方向へ向かって走行する際に、前記収穫部の収穫幅よりも左右外側に隣接する未収穫領域における前記凹凸の高さである第一高さを検出可能に構成され、
前記記憶部は、前記第一高さを前記測位データと関連付けて記憶し、
前記収穫高さ制御部は、前記未収穫領域が前記収穫幅の範囲に位置する状態で走行装置が前記一方向と反対方向へ向かって走行する際に前記高さ検出部によって検出された前記凹凸の高さである第二高さと、前記記憶部に記憶された前記第一高さと、に基づいて前記収穫部の対地高さを決定する収穫機。
【請求項2】
前記高さ検出部は、撮像装置による撮像画像に基づいて前記凹凸の高さを検出する請求項に記載の収穫機。
【請求項3】
前記高さ検出部は、光学式測距装置による距離情報に基づいて前記凹凸の高さを検出する請求項に記載の収穫機。
【請求項4】
前記収穫部に、前方の植立作物を受け入れる収穫ヘッダと、前記収穫ヘッダに支持されるとともに前記植立作物を切断する切断刃と、が備えられ、
前記高さ検出部は、前記切断刃よりも前側における前記凹凸の高さを検出する請求項1からの何れか一項に記載の収穫機。
【請求項5】
前記収穫ヘッダの先端部の収穫幅方向における端部位置にデバイダが設けられ、
前記高さ検出部は、前記デバイダよりも前側における前記凹凸の高さを検出する請求項に記載の収穫機。
【請求項6】
前記収穫部の作業幅に亘って複数の前記凹凸が並列し、
前記高さ検出部は、前記複数の凹凸の高さを検出可能に構成され、
前記収穫高さ制御部は、前記複数の凹凸のうちの最も高い前記凹凸を基準に前記収穫部の対地高さを決定する請求項1からの何れか一項に記載の収穫機。
【請求項7】
前記収穫部をローリングさせて前記収穫部の左右の傾きを変更可能な収穫傾斜変更機構が備えられ、
前記収穫高さ制御部は、前記収穫部の収穫幅の範囲内において、前記複数の凹凸のうちの左右一方側の領域の前記凹凸の高さが前記複数の凹凸のうちの左右他方側の領域の前記凹凸の高さよりも高い場合、前記収穫部のうちの前記左右一方側の部分の対地高さを前記収穫部のうちの前記左右他方側の部分の対地高さよりも高くするように、前記収穫傾斜変更機構に前記収穫部の左右の傾きを変更させる請求項に記載の収穫機。
【請求項8】
前記収穫部をローリングさせて前記収穫部の左右の傾きを変更可能な収穫傾斜変更機構が備えられ、
前記収穫高さ制御部は、前記収穫部が水平姿勢となるように、前記収穫傾斜変更機構に前記収穫部の左右の傾きを変更させる請求項1からの何れか一項に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の作物を収穫する収穫部が備えられている収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された収穫機に、収穫直後の圃場の凹凸状態を検出する高さ検出部(文献では「刈高さセンサ」)が備えられている。高さ検出部によって検出された圃場の凹凸状態に応じて、収穫部(文献では「刈取搬送部」)の対地高さが変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-180320号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された収穫機では、高さ検出部は収穫部の真下に設けられているため、収穫後の圃場の凹凸状態に基づいて、収穫部の昇降制御が行われる。このため、収穫前の圃場の凹凸状態を検出する構成と比較して、収穫部の昇降制御のタイミングが遅い。このことから、圃場の凹凸状態が激しいような場所では収穫部の昇降制御が遅れてしまって、収穫部の先端部分が圃場の地面に接触してしまい、収穫部が作物と一緒に地面の土等も拾ってしまう虞がある。
【0005】
本発明の目的は、作業後の圃場状態に応じて好適な収穫作業を可能な収穫機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による収穫機は、圃場を走行可能な走行装置と、機体に上下昇降可能に支持され、圃場の作物を収穫する収穫部と、前記収穫部を昇降操作するアクチュエータと、前記収穫部の前方における圃場の地面に対する畝の上面の高さである畝高さを圃場の凹凸の高さとして検出する非接触式の高さ検出部と、前記凹凸の高さに基づいて前記収穫部の対地高さを決定し、前記アクチュエータの駆動を制御して前記収穫部の対地高さを自動的に変更する収穫高さ制御部と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
本構成によると、非接触式の高さ検出部が収穫部の前方における圃場の凹凸の高さを検出する。このため、高さ検出部が収穫部の真下等に設けられて収穫後の圃場の凹凸状態を検出する構成と比較して、収穫部の昇降制御のタイミングを速くできる。よって、圃場の凹凸状態が激しいような場所であっても、収穫部の昇降制御が遅れることなく、収穫部の対地高さを自動的に変更可能となる。また、高さ検出部が非接触式であるため、高さ検出部が接触式である場合と比較して、接触による摩耗がなく、長寿命化が可能となる。また、圃場に畝が形成されている場合、収穫部の先端部分が畝の上面部分に接触してしまい、収穫部が作物と一緒に畝の土等も拾ってしまう虞がある。本構成であれば、収穫部が畝の上面部分と接触しないように、収穫高さ制御部が、収穫部の対地高さを自動的に変更可能となる。これにより、畝が形成された圃場で収穫作業の効率が向上する。これにより、作業後の圃場状態に応じて好適な収穫作業を可能な収穫機が実現される。
【0008】
本発明において、前記高さ検出部は、撮像装置による撮像画像に基づいて前記凹凸の高さを検出すると好適である。
【0009】
本構成であれば、撮像画像の解析によって、圃場の凹凸の高さを検出可能な非接触式の高さ検出部が実現される。
【0010】
本発明において、前記高さ検出部は、光学式測距装置による距離情報に基づいて前記凹凸の高さを検出すると好適である。
【0011】
本構成であれば、距離情報の解析によって、圃場の凹凸の高さを検出可能な非接触式の高さ検出部が実現される。
【0012】
本発明において、前記収穫部に、前方の植立作物を受け入れる収穫ヘッダと、前記収穫ヘッダに支持されるとともに前記植立作物を切断する切断刃と、が備えられ、前記高さ検出部は、前記切断刃よりも前側における前記凹凸の高さを検出すると好適である。また、本発明において、前記収穫ヘッダの先端部の収穫幅方向における端部位置にデバイダが設けられ、前記高さ検出部は、前記デバイダよりも前側における前記凹凸の高さを検出すると好適である。
【0013】
本構成によって、収穫部の前方における圃場の凹凸の高さを検出する非接触式の高さ検出部が容易に実現される。
【0014】
【0015】
【0016】
本発明において、前記収穫部の作業幅に亘って複数の前記凹凸が並列し、前記高さ検出部は、前記複数の凹凸の高さを検出可能に構成され、前記収穫高さ制御部は、前記複数の凹凸のうちの最も高い前記凹凸を基準に前記収穫部の対地高さを決定すると好適である。
【0017】
収穫部の作業幅に亘って複数の凹凸が並列する場合、複数の凹凸の何れかと収穫部とが接触する可能性は高くなる。収穫部と接触する凹凸が一つであっても、収穫部が圃場の凹凸と接触すると、収穫部が作物と一緒に圃場の土等も拾ってしまう虞がある。本構成であれば、収穫部が複数の凹凸の何れとも接触しないように、収穫高さ制御部が、収穫部の対地高さを自動的に変更可能となる。これにより、圃場で収穫作業の効率が向上する。
【0018】
本発明において、前記収穫部をローリングさせて前記収穫部の左右の傾きを変更可能な収穫傾斜変更機構が備えられ、前記収穫高さ制御部は、前記収穫部の収穫幅の範囲内において、前記複数の凹凸のうちの左右一方側の領域の前記凹凸の高さが前記複数の凹凸のうちの左右他方側の領域の前記凹凸の高さよりも高い場合、前記収穫部のうちの前記左右一方側の部分の対地高さを前記収穫部のうちの前記左右他方側の部分の対地高さよりも高くするように、前記収穫傾斜変更機構に前記収穫部の左右の傾きを変更させると好適である。
【0019】
収穫部の収穫幅の範囲内において、複数の凹凸の高さが異なる場合、植えられた作物にとっての最適な収穫高さが、複数の凹凸ごとに異なる場合も考えられる。特に、作物を株元から収穫する場合、収穫部の下端部と、複数の凹凸の夫々と、の離間距離は出来るだけ短いことが望ましい。本構成であれば、凹凸の高さに応じて、収穫部の左右の傾きが収穫傾斜変更機構によって変更されるため、複数の凹凸の夫々と、収穫部の下端部と、の離間距離の調節が容易になる。
【0020】
本発明において、前記収穫部をローリングさせて前記収穫部の左右の傾きを変更可能な収穫傾斜変更機構が備えられ、前記収穫高さ制御部は、前記収穫部が水平姿勢となるように、前記収穫傾斜変更機構に前記収穫部の左右の傾きを変更させると好適である。
【0021】
本構成によって、収穫部が水平状態に保持されるため、例えば凹凸の激しい圃場等で、収穫部の姿勢が安定的になる。
【0022】
本発明による収穫機は、圃場を走行可能な走行装置と、機体に上下昇降可能に支持され、圃場の作物を収穫する収穫部と、前記収穫部を昇降操作するアクチュエータと、前記収穫部の前方における圃場の凹凸の高さを検出する非接触式の高さ検出部と、前記凹凸の高さに基づいて前記収穫部の対地高さを決定し、前記アクチュエータの駆動を制御して前記収穫部の対地高さを自動的に変更する収穫高さ制御部と、機体の位置を示す測位データを出力する測位ユニットと、前記凹凸の高さを前記測位データと関連付けて記憶可能な記憶部と、が備えられ、前記高さ検出部は、走行装置が一方向へ向かって走行する際に、前記収穫部の収穫幅よりも左右外側に隣接する未収穫領域における前記凹凸の高さである第一高さを検出可能に構成され、前記記憶部は、前記第一高さを前記測位データと関連付けて記憶し、前記収穫高さ制御部は、前記未収穫領域が前記収穫幅の範囲に位置する状態で走行装置が前記一方向と反対方向へ向かって走行する際に前記高さ検出部によって検出された前記凹凸の高さである第二高さと、前記記憶部に記憶された前記第一高さと、に基づいて前記収穫部の対地高さを決定することを特徴とする
【0023】
高さ検出部が収穫部の前方における圃場の凹凸の高さを検出する場合、収穫部からの前方視点で作物の裏側に隠れて死角となる死角領域が圃場に存在し、高さ検出部は死角領域における凹凸の高さを検出できない。このため、収穫高さ制御部は、収穫部の対地高さを好適に変更できない虞がある。本構成によると、当該死角領域の存在する未収穫領域を収穫機が一方向に向かって作業走行する前に、未収穫領域に隣接する領域を収穫機が当該一方向と反対方向に走行する。このときに、高さ検出部が未収穫領域における凹凸の高さを反対方向から検出し、この検出された凹凸の高さが第一高さとして記憶されるため、死角領域における凹凸の高さが第一高さとして取得される。これにより、高さ検出部は死角領域における凹凸の高さを検出できるようになり、収穫高さ制御部は、収穫部の対地高さを好適に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】収穫機の全体側面図である。
図2】収穫装置で作物を収穫する状態を示す要部平面図である。
図3】収穫装置で作物を収穫する状態を示す正面図である。
図4】収穫機の制御系を示す機能ブロック図である。
図5】圃場の凹凸の高さを計測する際の死角領域を示す平面図である。
図6】未収穫領域の圃場の凹凸の高さを計測する状態を示す平面図である。
図7】未収穫領域の圃場の凹凸の高さを計測する状態を示す平面図である。
図8】収穫装置で作物を収穫する状態を示す正面図である。
図9】収穫装置で作物を収穫する状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る収穫機の一例としてのコンバインの実施形態が、図面に基づいて以下に記載されている。この実施形態で、機体1の前後方向を定義するときは、作業状態における機体進行方向に沿って定義する。図1及び図2に符号(F)で示す方向が機体前側、図1及び図2に符号(B)で示す方向が機体後側である。図1及び図3に符号(U)で示す方向が機体上側、図1及び図3に符号(D)で示す方向が機体下側である。図2及び図3に符号(L)で示す方向が機体左側、図2及び図3に符号(R)で示す方向が機体右側である。機体1の左右方向を定義するときは、機体進行方向視で見た状態で左右を定義する。
【0026】
〔収穫機の基本構成〕
図1乃至図3に示されるように、圃場に作物として大豆等の豆類が植えられ、収穫機の一形態である普通型のコンバインが豆類を収穫する。この普通型のコンバインに、機体1と、左右一対のクローラ式の走行装置11と、搭乗部12と、脱穀装置13と、穀粒タンク14と、収穫装置15(本発明の『収穫部』である)と、搬送装置16と、穀粒排出装置18と、が備えている。
【0027】
走行装置11は、コンバインの下部に備えられている。走行装置11は左右一対のクローラ走行機構を有し、コンバインは、走行装置11によって圃場を走行可能である。また、左右のクローラ走行機構の夫々に昇降装置が設けられている。当該昇降装置は、通称『モンロー』とも呼ばれ、左右のクローラ走行機構の夫々に対する機体1の高さ位置を各別に変更可能に構成されている。このことから、当該昇降装置は、左右のクローラ走行機構の夫々に対する機体1の高さ位置を変更可能に構成されている。換言すると、左右のクローラ走行機構の夫々における昇降装置が各別に昇降駆動することによって、機体1がローリングする(図9参照)。
【0028】
搭乗部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11よりも上側に備えられ、これらは機体1の上部として構成されている。コンバインの搭乗者と、コンバインの作業を監視する監視者と、の少なくとも一人が、搭乗部12に搭乗可能である。通常、搭乗者と監視者とは兼務される。なお、搭乗者と監視者とが別人の場合、監視者は、コンバインの機外からコンバインの作業を監視していても良い。搭乗部12の下方に駆動用のエンジン(不図示)が備えられている。穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の後下部に連結されている。
【0029】
収穫装置15は圃場の作物を収穫する。そして、コンバインは、収穫装置15によって圃場の作物を収穫しながら走行装置11によって走行する作業走行が可能である。搬送装置16は収穫装置15よりも後側に隣接して設けられている。収穫装置15及び搬送装置16は、機体1の前部に上下昇降可能に支持されている。収穫装置15及び搬送装置16は、伸縮動作可能なヘッダ用アクチュエータ15Hによって一体的に昇降操作(揺動操作)される。ヘッダ用アクチュエータ15Hは、本発明の『アクチュエータ』である。
【0030】
図1乃至図3に示されるように、圃場に複数の畝Rが形成され、畝Rの上面部分は圃場の地面に対して畝高さHだけ高い。複数の畝Rは一方向に沿って並列し、夫々の畝Rの上面部分に豆類が植えられている。普通型コンバインは、畝Rの長手方向(延び方向)に沿って走行しながら豆類を収穫装置15で収穫する。収穫装置15の下端部、即ち収穫ヘッダ15Aの底面部分が畝Rの上面部分よりも上側に位置する状態で、切断刃15Dが豆類の株元を切断するように、収穫装置15の対地高さが調節される。
【0031】
畝Rの上面部分の高さは畝高さHで一定ではなく、畝Rの上面部分に凹凸がある。図1では、この凹凸が上下差ΔHとして示される。このため、収穫装置15の対地高さは、上下差ΔHに応じて調整される。上下差ΔHに応じた収穫装置15の対地高さの調整は、例えば10センチメートル以上の範囲に亘るものであっても良いし、2~3センチメートル範囲の微調整であっても良い。
【0032】
収穫装置15に、収穫ヘッダ15Aと、掻込リール15Bと、横送りオーガ15Cと、バリカン状の切断刃15Dと、が備えられている。収穫ヘッダ15Aの先端部の収穫幅方向における両端部(端部位置)にデバイダが設けられている。収穫ヘッダ15Aは、左右両端部のデバイダで前方の植立作物を収穫対象と非収穫対象とに分草するとともに、前方の植立作物を受け入れる。掻込リール15Bは収穫ヘッダ15Aの上方に位置する。掻込リール15Bは、圃場から植立作物を収穫する際に、植立作物のうちの先端寄りの箇所を後方に向けて掻込む。切断刃15Dは、収穫ヘッダ15Aに支持されるとともに掻込リール15Bによって後方に掻き込まれた植立作物の株元側部分を切断する。横送りオーガ15Cは、機体横向き軸芯に回転駆動し、切断刃15Dによる切断後の収穫作物を左右方向の中間側に横送りして寄せ集めて後方の搬送装置16に向けて送り出す。
【0033】
収穫装置15によって収穫された作物は、搬送装置16によって脱穀装置13へ搬送され、脱穀装置13によって脱穀処理される。脱穀処理によって得られた収穫物としての穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。穀粒排出装置18は機体後部の縦軸芯回りに揺動可能に構成されている。即ち、穀粒排出装置18の遊端部が機体1よりも機体横外側へ張り出して作物を排出可能な排出状態と、穀粒排出装置18の遊端部が機体1の機体横幅の範囲内に位置する収納状態と、に切換可能なように穀粒排出装置18は構成されている。
【0034】
本実施形態の収穫機では、収穫装置15における右前端部と左前端部との夫々に光学式測距装置21A,21Bが備えられ、機体1と前方の物体(圃場の地面、作物等)との離間距離は光学式測距装置21A,21Bによって測定可能に構成されている。本実施形態では、光学式測距装置21A,21Bは、LIDAR(例えばレーザースキャナーやレーザーレーダー)であって、LIDARが、前方、左右に加え、上下方向を三次元でスキャンできる。このため、光学式測距装置21A,21Bは、二次元でスキャンするタイプのLIDARよりも測距範囲を広範囲にすることが可能であって、離間距離の測定が精度よく行われる。
【0035】
搭乗部12の天井部には、衛星測位モジュール80が設けられている。衛星測位モジュール80は、人工衛星GSからのGNSS(Global Navigation Satellite System)の信号(GPS信号を含む)を受信して、自車位置を取得する。なお、衛星測位モジュール80による衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法ユニットが衛星測位モジュール80に組み込まれている。もちろん、慣性航法ユニットは、コンバインにおいて衛星測位モジュール80と別の箇所に配置されても良い。
【0036】
〔制御ユニットの構成〕
図4に示される制御ユニット30は、コンバインの制御系の中核要素であり、複数のECUの集合体として示されている。制御ユニット30に、畝検出部31と、収穫高さ制御部32と、記憶部33と、走行制御部35と、作業制御部36と、が備えられている。衛星測位モジュール80は、本発明の『測位ユニット』であって、機体1の位置を示す測位データを出力する。衛星測位モジュール80から出力された測位データと、光学式測距装置21A,21Bの夫々から出力された距離データと、刈高さ検出部23から出力された高さ位置情報と、は配線網を通じて制御ユニット30に入力される。
【0037】
作業走行中において、光学式測距装置21A,21Bによる機体1と機体前方の物体との距離の測定が行われる。機体前方の物体に、作物の形状と、作物から透けて見える圃場の形状(図1乃至3では畝Rの形状)と、が含まれる。つまり、光学式測距装置21A,21Bによって距離データが経時的に遂次取得される。そして畝検出部31は、当該距離データに基づいて、特定の物体情報として、収穫装置15の前方の圃場形状及び作物形状を検出する。例えば畝検出部31は、機械学習(深層学習)されたニューラルネットワークを用いることによって、圃場における畝Rの形状及び畝高さHを検出する。畝検出部31及び光学式測距装置21A,21Bは、本発明の『高さ検出部』であって、光学式測距装置21A,21Bによる距離情報に基づいて畝高さHを検出する。畝検出部31は、切断刃15Dよりも前側における畝高さHを検出し、収穫ヘッダ15Aのデバイダよりも前側における畝高さHを検出する。畝高さHは、本発明の『凹凸の高さ』である。即ち、高さ検出部は、凹凸の高さとして畝高さHを検出する。
【0038】
制御ユニット30に記憶部33が備えられ、記憶部33は、例えばEEPROM等の半導体の記憶素子である。畝検出部31によって検出された畝Rの形状及び畝高さHは、衛星測位モジュール80から出力された測位データと関連付けられた状態で記憶部33に経時的に記憶される。つまり、記憶部33は、畝高さHを測位データと関連付けて記憶可能なように構成されている。このため、記憶部33に、測位データごとの畝高さHが記憶されている。
【0039】
収穫高さ制御部32は、測位データごとの畝高さHを記憶部33から読み出し可能に構成されている。収穫高さ制御部32は、畝検出部31から取得した畝Rの畝高さHと、記憶部33に記憶された所定の位置における畝高さHと、に基づいて、収穫装置15の目標対地高さを決定する。また、収穫高さ制御部32は、測位データに基づく所定の領域に亘る複数の畝高さHを記憶部33から読み出すことによって、当該所定の領域における畝高さHの上下差ΔHを算出可能である。このことから、収穫高さ制御部32は、上下差ΔHに応じて収穫装置15の目標対地高さを調整する。また、収穫高さ制御部32は、畝高さH及び上下差ΔHに応じて、走行装置11の車速と、走行装置11に対する機体1の高さ位置(いわゆる『モンローの高さ』)と、を調整可能に構成されている。
【0040】
刈高さ検出部23は、搬送装置16の揺動角度と、走行装置11に対する機体1の高さ位置(モンローの高さ)と、を検出することによって、収穫装置15の対地高さを検出可能に構成されている。刈高さ検出部23によって検出された対地高さは、高さデータとして収穫高さ制御部32へ送られる。収穫高さ制御部32は、収穫装置15の目標対地高さと、刈高さ検出部23から取得した高さデータと、に基づいて走行制御部35及び作業制御部36に制御信号を出力する。
【0041】
走行制御部35は、エンジン制御機能、操舵制御機能、車速制御機能、車高制御機能などを有し、操舵、車速及び車高(モンローの高さ)に関する制御を走行装置11に対して行う。走行制御部35は、車速制御部35Aと車高制御部35Bとを有する。収穫高さ制御部32から走行制御部35へ車速及び車高に関する制御信号が送られる。車速制御部35Aは、収穫高さ制御部32から取得した制御信号に基づいて、走行装置11の速度調整制御を行う。車高制御部35Bは、収穫高さ制御部32から取得した制御信号に基づいて、走行装置11の昇降機構に対する制御を行う。
【0042】
作業制御部36は、収穫装置15、脱穀装置13等、圃場の作物の収穫や脱穀に関する装置を制御する。作業制御部36はヘッダ制御部36Aを有する。収穫高さ制御部32は、目標対地高さに基づいて、収穫ヘッダ15Aに対する昇降制御用の信号をヘッダ制御部36Aへ出力する。収穫装置15の対地高さは、ヘッダ用アクチュエータ15Hによって制御される。つまり、ヘッダ制御部36Aは、収穫高さ制御部32から取得した昇降制御用の信号に基づいてヘッダ用アクチュエータ15Hを駆動制御する。このように、収穫高さ制御部32は、畝高さHに基づいて収穫装置15の対地高さを決定し、ヘッダ用アクチュエータ15Hの駆動を制御して収穫装置15の対地高さを自動的に変更する。また、例えば光学式測距装置21A,21Bによって計測された距離データに基づいて、作業制御部36は、掻込リール15Bの前後位置及び高さ位置と、収穫装置15用の変速装置(例えば静油圧式無段変速機)と、等を制御可能に構成されている。
【0043】
本実施形態の制御ユニット30は、通信ネットワークに接続可能に構成されている。制御ユニット30に通信部37が備えられ、通信部37は、有線または無線の通信ネットワークを介して管理コンピュータ2と通信可能である。例えば圃場における作物の倒伏情報と、圃場の地面の凹凸状態と、が衛星測位モジュール80によって測位された測位データとともに、無線通信ネットワークを介して圃場の管理コンピュータ2へ送信され、管理コンピュータ2における圃場のマップ情報に記録される。これにより、圃場の管理者は、圃場の作物の倒伏情報と、圃場の地面の凹凸状態と、を次年度の農業計画に活用できる。
【0044】
〔畝情報の取得について〕
図5乃至図7に基づいて、畝情報の取得について説明する。上述したように、収穫装置15における右前端部と左前端部との夫々に光学式測距装置21A,21Bが備えられ、畝検出部31は、光学式測距装置21A,21Bからの距離データに基づいて、圃場の畝情報を検出可能に構成されている。光学式測距装置21A,21Bからの距離データに、光学式測距装置21A,21Bと圃場の地面との距離と、光学式測距装置21A,21Bと前方の作物との距離と、が含まれる。畝検出部31は、距離データのうちの光学式測距装置21A,21Bと圃場の地面との距離を示す距離データを抽出して地面の凹凸を検出する。図5乃至図7では、収穫装置15の作業幅に亘って複数の畝R(凹凸)が並列し、畝検出部31は、複数の畝Rの畝高さHを検出可能に構成されている。
【0045】
図5に、圃場の地面のうち、光学式測距装置21A,21Bからの視点から圃場の作物の裏側に位置する領域が、死角領域DA1として示される。死角領域DA1は、光学式測距装置21A,21Bが圃場の地面との離間距離を計測する際に、圃場の作物に遮られて計測できずに死角となる領域である。死角領域DA1における圃場の凹凸状態が光学式測距装置21A,21Bによって計測されないままだと、収穫高さ制御部32は、上下差ΔHを精度良く算出できず、収穫装置15の対地高さを好適に調整できない虞がある。この不都合を回避するため、本実施形態では、図6及び図7に示されるように、光学式測距装置21A,21Bが、死角領域DA1対する距離データを計測可能なように構成されている。
【0046】
図6及び図7に、収穫装置15の収穫幅に亘るとともに畝Rの長手方向に延びる作業領域W1及び作業領域W2が示される。収穫機は、圃場を往復走行しながら作業領域W1及び作業領域W2の豆類を収穫する。本実施形態で、往復走行とは、収穫機が、畝Rの長手方向に沿って作業走行し、かつ、畝Rの長手方向端部領域での旋回走行によって左右一方に隣接する未収穫の畝Rに移動して、当該未収穫の畝Rの長手方向に沿って再度作業走行を繰り返しながら圃場の作物を収穫することを意味する。図6に示されるように、収穫機は、作業領域W1を畝Rの長手方向に沿って走行しながら豆類を収穫する。その後、畝Rの長手方向終端箇所で、収穫機が、作業領域W1における前進方向と反対方向に旋回して、図7に示されるように、作業領域W1に隣接する作業領域W2を畝Rの長手方向に沿って走行しながら豆類を収穫する。
【0047】
収穫機が作業領域W1における豆類を収穫している間に、光学式測距装置21A,21Bによって収穫装置15の前方の距離データの取得が行われ、畝検出部31によって畝Rの形状及び畝高さHが検出される。このとき、光学式測距装置21A,21Bは、収穫装置15の収穫幅よりも機体横外側の距離データも取得可能に構成されている。このことから、畝検出部31は、収穫装置15の収穫幅よりも機体横外側の畝Rの形状及び畝高さHも検出可能に構成されている。
【0048】
図6に示される例では、収穫機の進行方向左方に、未収穫領域として作業領域W2が存在する。このため、機体左側に位置する光学式測距装置21Aによって、作業領域W2の距離データが取得され、畝検出部31によって作業領域W2の畝Rの形状及び畝高さHが検出される。この未収穫領域である作業領域W2における畝高さHを『第一高さ』と称する。つまり、畝検出部31は、走行装置11が一方向へ向かって走行する際に、収穫装置15の収穫幅よりも左右外側に隣接する未収穫領域における畝高さHである『第一高さ』を検出可能に構成されている。作業領域W1での作業走行中に計測された作業領域W2の畝高さHは、衛星測位モジュール80によって測位された測位データと関連付けられて、記憶部33に記憶される。即ち、記憶部33は、『第一高さ』としての畝高さHを測位データと関連付けて記憶する。このとき、記憶部33に記憶される測位データは、衛星測位モジュール80の位置を示すものではなく、作業領域W2の畝Rの検出位置を示すものであることが望ましい。このため、記憶部33に記憶される測位データは、衛星測位モジュール80の位置から予め設定された距離だけ斜前方にオフセットしたデータ、即ち作業領域W2の畝Rの検出位置を示すデータであって良い。
【0049】
図6では、作業領域W2の地面のうち、光学式測距装置21Aからの視点に対して圃場の作物の裏側に位置する領域が、死角領域DA2として示される。つまり、死角領域DA2は、作業領域W1での作業走行中に光学式測距装置21A,21Bで検出できない領域である。
【0050】
図7に示されるように、収穫機が、作業領域W1における前進方向と反対方向に走行しながら、作業領域W2における豆類を収穫する。この間に、光学式測距装置21A,21Bによって収穫装置15の前方の距離データの取得が行われ、畝検出部31によって畝Rの形状及び畝高さHが検出される。このとき、作業領域W2は収穫装置15の収穫幅の範囲内に位置し、死角領域DA2に対する距離データが光学式測距装置21A,21Bによってしっかりと取得され、畝検出部31によって死角領域DA2における畝高さHが『第二高さ』として検出される。
【0051】
このとき、図5で示される場合と同じように、死角領域DA1が、光学式測距装置21A,21Bからの視点に対して圃場の作物の裏側に位置し、作業領域W2での作業走行中に光学式測距装置21A,21Bで距離データを測定できない領域となる。この死角領域DA1における畝高さHは、作業領域W1での作業走行中に、既に『第一高さ』として検出され、この第一高さは測位データと関連付けられて記憶部33に記憶されている。記憶部33に記憶された畝高さH(第一高さ)のうち、作業領域W2を作業走行中の時点の測位データに対応した領域の畝高さH(第一高さ)が、死角領域DA1における畝高さH(第一高さ)として収穫高さ制御部32によって読み出される。つまり、収穫高さ制御部32は、作業領域W2を作業走行中に畝検出部31によって検出された畝高さH(第二高さ)と、作業領域W1を作業走行中に記憶部33に記憶された畝高さH(第一高さ)と、を合成する。
【0052】
死角領域DA1,DA2の両方の畝高さHが検出され、作業領域W2における畝高さHが漏れなく検出される。これにより、収穫高さ制御部32は上下差ΔHを精度良く算出できる。そして、収穫高さ制御部32は、未収穫領域としての作業領域W2が収穫装置15の収穫幅の範囲に位置する状態で走行装置11が上述の一方向(作業領域W1で前進した方向)と反対方向へ向かって走行する際に、畝検出部31によって検出された畝高さHである第二高さと、記憶部33に記憶された第一高さと、に基づいて収穫装置15の対地高さを決定する。
【0053】
〔畝高さが異なる場合の収穫制御について〕
図8に示されるように、収穫装置15の収穫幅の範囲内で、複数の畝Rの夫々が異なる畝高さHを有する場合が考えられる。図8に示される例では、収穫装置15の収穫幅の範囲内に三つの畝Rが存在し、機体左側(紙面右側)の畝R1の畝高さHは、機体右側(紙面左側)の畝R3の畝高さHよりもΔH2だけ高い。また、機体左右中央(紙面中央)の畝R2の畝高さHは、機体右側(紙面左側)の畝R3の畝高さHよりもΔH1だけ高い。この場合、収穫高さ制御部32は、複数の畝R(凹凸)のうちの機体左側(紙面右側)の最も高い畝R1(凹凸)を基準に収穫装置15の対地高さを決定する。換言すると、収穫装置15の下端部、即ち収穫ヘッダ15Aの底面部分が畝R1の上面部分よりも上側に位置する状態で、切断刃15Dが豆類の株元を切断するように、収穫装置15の対地高さが調節される。
【0054】
豆類は畝Rの上面部分に植えられるため、圃場に凹凸が形成されている。走行装置11における左右のクローラ走行機構の何れかが畝Rを踏み潰しながら前進すると、収穫装置15が機体1とともに左右一方に傾くことが考えられる。このため、機体1をできるだけ水平に保持するため、左右の昇降装置は独立的に駆動制御可能なように構成されている。例えば、衛星測位モジュール80に組み込まれた慣性航法ユニット(例えばジャイロ加速度センサや磁気方位センサ)によって機体1の傾斜角度(ピッチ角、ロール角、ヨー角)が検出される。そして、収穫高さ制御部32が、機体1の傾斜角度に基づいて機体1を水平制御する構成であっても良い。
【0055】
図8では、走行装置11における左側(紙面右側)のクローラ走行機構が畝R1に乗り上げ、畝R1を踏み潰しながら走行している。このため、左右のクローラ走行機構の夫々における昇降装置のうち、畝R1を踏み潰している左側(紙面右側)の昇降装置の設定高さを、右側(紙面左側)の昇降装置の設定高さよりも低く設定するように、収穫高さ制御部32は走行制御部35の車高制御部35Bに制御信号を出力する。図8では、走行装置11における左側(紙面右側)のクローラ走行機構の車高(モンローの高さ)が、右側(紙面左側)のクローラ走行機構の車高(モンローの高さ)よりも高低差ΔH3だけ低くなっている。この場合、走行装置11のうち、左右のクローラ走行機構の夫々における昇降装置が、本発明の『収穫傾斜変更機構』であって、収穫装置15をローリングさせて収穫装置15の左右の傾きを変更可能に構成されている。即ち、収穫高さ制御部32は、収穫装置15が水平姿勢となるように、左右のクローラ走行機構の夫々の昇降装置に、収穫装置15の左右の傾きを変更させる。これにより、収穫装置15が傾斜することなく水平に保持される。
【0056】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0057】
(1)上述の実施形態では、図8に示されるように、収穫高さ制御部32は、複数の畝R(凹凸)のうちの最も高い畝R(凹凸)を基準に収穫装置15の対地高さを決定するが、この実施形態に限定されない。例えば、図9に示されるように収穫装置15をローリングさせる構成であっても良い。図9では、収穫装置15の収穫幅の範囲内に三つの畝Rが存在し、機体左側(紙面右側)の畝R1の畝高さHは、機体右側(紙面左側)の畝R3の畝高さHよりもΔH2だけ高い。また、機体左右中央(紙面中央)の畝R2の畝高さHは、機体右側(紙面左側)の畝R3の畝高さHよりもΔH1だけ高い。この場合、収穫高さ制御部32は、畝R1と畝R3との夫々の畝高さHの差と、畝R1と畝R3との夫々の機体横方向における離間距離と、に基づいて収穫装置15をローリングさせる角度を算出する。そして、収穫装置15のうち、左右一方側の部分の対地高さを左右他方側の部分の対地高さよりも高くするように、走行制御部35の車高制御部35Bに制御信号を出力する構成であっても良い。図9では、収穫装置15が傾斜し、収穫装置15のうちの機体左側(紙面右側)の畝R1の上方に位置する部分が、収穫装置15のうちの機体右側(紙面左側)の畝R3の上方に位置する部分よりもΔH2だけ高い。また、収穫装置15のうちの機体左右中央(紙面中央)の畝R2の上方に位置する部分が、収穫装置15のうちの機体右側(紙面左側)の畝R3の上方に位置する部分よりもΔH1だけ高い。このことから、収穫装置15の下端部、即ち収穫ヘッダ15Aの底面部分と、畝R1,R2,R3の夫々の上面部分と、の上下方向における離間距離が夫々等しい状態で、切断刃15Dが豆類の株元を切断する。このように、収穫高さ制御部32は、左右のクローラ走行機構の夫々の昇降装置に収穫装置15の左右の傾きを変更させる構成であっても良い。
【0058】
(2)上述した実施形態では、畝検出部31に、深層学習を用いて学習可能なニューラルネットワークが構築されているが、畝検出部31にニューラルネットワークが構築されなくても良い。この場合、ニューラルネットワークは他のコンピュータや端末CTに構築され、畝検出部31と、他のコンピュータや端末CTと、が通信をすることによってニューラルネットワークにおける入出力が行われるものであっても良い。即ち、畝検出部31は、収穫装置15の前方における圃場の凹凸の高さを検出するものであれば良い。
【0059】
(3)上述の高さ検出部は畝検出部31及び光学式測距装置21A,21Bであるが、高さ検出部は、光学式測距装置21A,21Bと畝検出部31とが一体的に構成されたものであっても良い。
【0060】
(4)高さ検出部は、必ずしも光学式測距装置21A,21B(LIDAR)で構成される必要は無い。高さ検出部は、ソナーであっても良いし、レーダー(ミリ波)であっても良い。高さ検出部がソナーであればコスト面で有利である。高さ検出部がミリ波レーダーであれば、天候に左右され難い測定が可能であって、コスト面で有利である。ミリ波レーダーが、前方、左右に加え、上下方向を三次元でスキャンできる構成であれば、二次元でスキャンするタイプのミリ波レーダーよりも測距範囲を広範囲にすることが可能となる。要するに、収穫装置15の前方における圃場の凹凸の高さを検出する非接触式の高さ検出部が備えられればよい。
【0061】
(5)高さ検出部は、必ずしも光学式測距装置21A,21B(LIDAR)で構成される必要は無い。高さ検出部に撮像装置が備えられ、高さ検出部は撮像装置による撮像画像に基づいて畝高さHを検出する構成であっても良い。撮像装置は、単眼カメラであっても良いし、ステレオカメラであっても良い。
【0062】
(6)畝検出部31は、圃場における凹凸の高さとして畝高さHを検出するが、この実施形態に限定されない。例えば畝検出部31は、稲または麦が植えられた畝Rのない圃場で、圃場の凹凸(上下差ΔH)を検出する構成であっても良い。
【0063】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る収穫機は、普通型のコンバインに限らず自脱型のコンバインであっても良い。また、本発明に係る収穫機は、コンバインに限らずその他の収穫機であっても良い。
【符号の説明】
【0065】
11 :走行装置
15 :収穫装置(収穫部)
15A :収穫ヘッダ
15D :切断刃
15H :ヘッダ用アクチュエータ(アクチュエータ)
21A :光学式測距装置(高さ検出部)
21B :光学式測距装置(高さ検出部)
31 :畝検出部(高さ検出部)
32 :収穫高さ制御部
33 :記憶部
80 :衛星測位モジュール(測位ユニット)
H :畝高さ(凹凸の高さ)
W2 :作業領域(未収穫領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9