(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】製氷機
(51)【国際特許分類】
F25C 1/12 20060101AFI20240517BHJP
F25C 5/10 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F25C1/12 301Z
F25C5/10 B
(21)【出願番号】P 2020128032
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】荒井 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】大谷 輝彦
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-023842(JP,A)
【文献】特開昭59-161661(JP,A)
【文献】実開平06-002073(JP,U)
【文献】特開2019-117020(JP,A)
【文献】特開2005-156002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/12
F25C 5/08,5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フレームに鉛直に立設して支持された製氷板の製氷面側に設けた格子状の仕切部によって前記製氷板と反対側に開口する複数の製氷小室を上下方向及び水平方向に並ぶように形成し、前記仕切部の開口側に沿って流下する製氷水を前記製氷小室内でブロック形氷となるように凍結させるとともに、ブロック形氷が前記仕切部の開口側の縁部で互いに隣り合う上下方向及び水平方向で連結するように凍結させて、前記ブロック形氷の縁部が上下方向及び水平方向で板状に連結した板状連結氷となるように製氷する製氷部と、
製氷運転にて前記製氷部に液化冷媒を送出して冷却し、除氷運転にて前記製氷部に気化冷媒を送出して加温する冷凍装置と、
前記製氷運転の際に前記製氷部で製氷された板状連結氷を前記除氷運転の際に前記製氷部から押し出して離脱させる氷離脱装置と、
前記製氷部で製氷された板状連結氷が離脱するのを検知する氷離脱検知器とを備え、
前記製氷運転の際には前記製氷部を前記冷凍装置により送出される液化冷媒により冷却して、前記製氷部で製氷水を板状連結氷となるように凍結させて製氷し、
前記製氷運転後の前記除氷運転の際には前記製氷部を前記冷凍装置により送出される気化冷媒により加温することで、前記製氷部にて製氷された板状連結氷を前記製氷部から離脱可能な状態とし、前記氷離脱装置の作動によって前記製氷部から板状連結氷を離脱させるようにし、前記製氷運転と前記除氷運転とを交互に実行するようにして板状連結氷を製氷する製氷機であって、
前記除氷運転で前記氷離脱装置を作動開始後に、前記氷離脱検知器による板状連結氷の離脱が検知されないときに、前記製氷部の一部の製氷小室でブロック形氷を離脱させることができなかった不完全除氷であると検知するようにしたことを特徴とする製氷機。
【請求項2】
請求項1に記載の製氷機において、
前記氷離脱装置は、前記製氷部から板状連結氷を押し出す前に待機する待機位置と板状連結氷を押し出す押出位置とで移動可能に支持された押出部材と、前記押出部材の位置を検出する位置検出センサとを備え、
前記位置検出センサにより
、前記押出部材が前記待機位置から前記押出位置まで押し出され、前記押出部材が前記押出位置から前記待機位置に戻ったことを検出するまでに、前記氷離脱検知器によって板状連結氷が離脱したことが検知されてないときに、前記不完全除氷であると検知されるようにしたことを特徴とする製氷機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製氷機において、
前記不完全除氷であると検知されたときに、前記冷凍装置による前記製氷部への気化冷媒の送出を継続させるように制御したことを特徴とする製氷機。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の製氷機において、
前記製氷部の温度を検出する温度センサを備え、
前記温度センサの検出温度が前記製氷部から氷を離脱させることが可能な温度として設定される氷離脱設定温度となると前記氷離脱装置を作動させるように制御したものであり、
前記除氷運転にて前記氷離脱装置を作動させてから前記氷離脱検知器により前記製氷部で製氷された板状連結氷が離脱するのを検知するのに要した時間に基づいて前記氷離脱設定温度を変更可能としたことを特徴とする製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷運転の実行によって製氷部でブロック形氷が上下方向及び水平方向に連結された板状連結氷を製氷し、除氷運転の実行によって製氷部で製氷した板状連結氷を離脱させて除氷する製氷機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には製氷機構を備えたアイスディスペンサの発明が開示されている。特許文献1に記載のアイスディスペンサの製氷機構は、支持フレームに鉛直に立設して支持された製氷板の製氷面側に設けた格子状の仕切部によって製氷板と反対側に開口する複数の製氷小室を上下方向及び水平方向に並ぶように形成し、仕切部の開口側に沿って流下する製氷水を製氷小室内でブロック形氷となるように凍結させるとともに、ブロック形氷が仕切部の開口側の縁部で互いに隣り合う上下方向及び水平方向で連結するように凍結させて、ブロック形氷の縁部が上下方向及び水平方向で板状に連結した板状連結氷となるように製氷する製氷部と、製氷運転にて製氷部に液化冷媒を送出して冷却し、除氷運転にて製氷部に気化冷媒を送出して加温する冷凍装置と、製氷運転の際に製氷部で製氷された板状連結氷を除氷運転の際に製氷部から押し出して離脱させる氷離脱装置と、製氷部で製氷された板状連結氷が離脱するのを検知する氷離脱検知器とを備えている。
【0003】
この製氷機構においては、製氷運転では、製氷部は冷凍装置により送出される液化冷媒により冷却されており、製氷部の仕切部の開口側に沿って流下する製氷水は製氷小室内で凍結してブロック形氷となり、流下する製氷水はさらにブロック形氷の仕切部の開口側の縁部で凍結してブロック形氷の互いに隣り合う上下方向及び水平方向を連結させる連結部となり、製氷部にはブロック形氷の縁部が連結部によって上下方向及び水平方向で板状に連結した板状連結氷が製氷される。製氷運転後の除氷運転では、製氷部は冷凍装置により送出される気化冷媒により加温され、製氷部で製氷された板状連結氷は製氷部との接触面で融けて製氷部から離脱可能な状態となり、氷離脱装置のスライドピンにより製氷部から板状連結氷を押し出すと、板状連結氷は製氷部から離脱して下側の貯氷槽に落下する。このとき、製氷部の前側に設けられた導水カバーが板状連結氷によって押されて垂下姿勢から傾動姿勢に傾動し、氷離脱検知器を構成する氷離脱検出センサが導水カバーの傾動姿勢を検出して、製氷部から板状連結氷が離脱して貯氷槽に落下したことを検知され、貯氷槽内に落下した板状連結氷は貯氷槽内に設けた撹拌装置の撹拌アームによってブロック形氷に崩される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように構成した特許文献1に記載のアイスディスペンサの製氷機構においては、製氷運転により製氷部で製氷された板状連結氷は、除氷運転時に冷凍装置から送出される気化冷媒によって加温されて製氷部との接触面で融けて製氷部から離脱可能な状態となり、氷離脱装置のスライドピンによって製氷部から押し出されて離脱して下側の貯氷槽に落下する。板状連結氷のブロック形氷を連結させる連結部の厚みが薄い等の要因で、板状連結氷の連結部の強度が弱いときや、板状連結氷が製氷部との接触面で充分に融ける前に氷離脱装置のスライドピンにより押し出されると、板状連結氷のブロック形氷を連結させる連結部が割れて、スライドピンと対向する位置の近傍の製氷小室のブロック形氷だけが製氷部から押し出されて離脱し、スライドピンと対向する位置から離れた位置の製氷小室のブロック形氷が製氷部に残ることがある。
【0006】
製氷部の製氷小室の一部でブロック形氷が残った状態で再び製氷運転を実行すると、ブロック形氷が残る一部の製氷小室でブロック形氷にさらに製氷水を凍結させることになり、一部の製氷小室のブロック形氷が他の製氷小室のブロック形氷よりも大型のブロック形氷となり、製氷される板状連結氷を構成するブロック形氷の大きさがばらつくことになる。板状連結氷が製氷部の接触面に対して融ける前に氷離脱装置のスライドピンによって押し出すことで、板状連結氷のブロック形氷を連結する連結部が割れることに起因して一部の製氷小室内にブロック形氷が残る問題に対しては、除氷運転時に冷凍装置から気化冷媒を送出する時間を長くすれば、板状連結氷が製氷部の接触面に対して確実に融けて製氷部から離脱可能な状態となり、板状連結氷を全てのブロック形氷が連結した状態で氷離脱装置のスライドピンにより製氷部から押し出すことができる。しかし、除氷運転によって板状連結氷が多く融けて、製氷される氷の量が減るとともに、除氷運転に要する時間が長くなる問題が生じることになる。本発明は、製氷部で製氷したブロック形氷を連結させた板状連結氷を除氷するときに、製氷部の一部の製氷小室でブロック形氷を離脱させることができなかった不完全除氷であることを素早く検知できるようにして、除氷運転に要する時間が長くなることで製氷効率が低くならないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するため、支持フレームに鉛直に立設して支持された製氷板の製氷面側に設けた格子状の仕切部によって製氷板と反対側に開口する複数の製氷小室を上下方向及び水平方向に並ぶように形成し、仕切部の開口側に沿って流下する製氷水を製氷小室内でブロック形氷となるように凍結させるとともに、ブロック形氷が仕切部の開口側の縁部で互いに隣り合う上下方向及び水平方向で連結するように凍結させて、ブロック形氷の縁部が上下方向及び水平方向で板状に連結した板状連結氷となるように製氷する製氷部と、製氷運転にて製氷部に液化冷媒を送出して冷却し、除氷運転にて製氷部に気化冷媒を送出して加温する冷凍装置と、製氷運転の際に製氷部で製氷された板状連結氷を除氷運転の際に製氷部から押し出して離脱させる氷離脱装置と、製氷部で製氷された板状連結氷が離脱するのを検知する氷離脱検知器とを備え、製氷運転の際には製氷部を冷凍装置により送出される液化冷媒により冷却して、製氷部で製氷水を板状連結氷となるように凍結させて製氷し、製氷運転後の除氷運転の際には製氷部を冷凍装置により送出される気化冷媒により加温することで、製氷部にて製氷された板状連結氷を製氷部から離脱可能な状態とし、氷離脱装置の作動によって製氷部から板状連結氷を離脱させるようにし、製氷運転と除氷運転とを交互に実行するようにして板状連結氷を製氷する製氷機であって、除氷運転で氷離脱装置を作動開始後に、氷離脱検知器による板状連結氷の離脱が検知されないときに、製氷部の一部の製氷小室でブロック形氷を離脱させることができなかった不完全除氷であると検知するようにしたことを特徴とする製氷機を提供するものである。
【0008】
上記のように構成した製氷機においては、除氷運転で氷離脱装置を作動開始後に、氷離脱検知器による板状連結氷の離脱が検知されないときに、製氷部の一部の製氷小室でブロック形氷を離脱させることができなかった不完全除氷であると検知するようにしたので、不完全除氷の状態を素早く検知できるようになり、除氷運転の時間が長くなることで製氷効率が低くならないようにすることができる。
【0009】
上記のように構成した製氷機においては、氷離脱装置は、製氷部から板状連結氷を押し出す前に待機する待機位置と板状連結氷を押し出す押出位置とで移動可能に支持された押出部材と、押出部材の位置を検出する位置検出センサとを備え、位置検出センサにより、押出部材が待機位置から押出位置まで押し出され、押出部材が押出位置から待機位置に戻ったことを検出するまでに、氷離脱検知器によって板状連結氷が離脱したことが検知されてないときに、不完全除氷であると検知されるようにするのが好ましい。
【0010】
上記のように構成した製氷機においては、不完全除氷であると検知されたときに、冷凍装置による製氷部への気化冷媒の送出を継続させるように制御するのが好ましい。このようにしたときには、製氷部の不完全除氷を解消することができる。
【0011】
上記のように構成した製氷機においては、製氷部の温度を検出する温度センサを備え、温度センサの検出温度が製氷部から氷を離脱させることが可能な温度として設定される氷離脱設定温度となると氷離脱装置を作動させるように制御したものであり、除氷運転にて氷離脱装置を作動させてから氷離脱検知器により製氷部で製氷された板状連結氷が離脱するのを検知するのに要した時間に基づいて氷離脱設定温度を変更可能とするのが好ましい。このようにしたときには、製氷部から板状連結氷を離脱させるのに最適なタイミングで氷離脱装置によって板状連結氷を離脱させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明によるアイスディスペンス機構付きの製氷機の一実施形態の斜視図である。
【
図3】製氷機構を示すための
図1のB-B線の一部断面図である。
【
図4】製氷機構を示すための
図1のC-C線の一部断面図である。
【
図5】冷凍装置と製氷水供給部を示す概略図である。
【
図7】製氷機構の板状連結氷を製氷する製氷プログラムのフローチャートである。
【
図8】製氷プログラムの除氷運転を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明による製氷機の一実施形態をアイスディスペンス機構付きの製氷機の実施形態により図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示したように、本発明によるアイスディスペンス機構付きの製氷機10は、筐体11内の上部に製氷機構20と、筐体11内にて製氷機構20の下側に貯氷槽50とを備えている。
【0014】
図2及び
図3に示したように、製氷機構20は、氷を製氷する製氷部21と、製氷運転にて製氷部21に液化冷媒を送出して冷却するとともに除氷運転にて製氷部21に気化冷媒を送出して加温する冷凍装置24と、製氷運転の際に製氷された氷を除氷運転の際に製氷部21から離脱するように押し出す氷離脱装置40と、製氷部21で製氷された氷が離脱したのを検知する氷離脱検知器44とを備えている。
【0015】
図2~
図4に示したように、製氷部21は、筐体11内に設けた支持フレーム12に鉛直に立設するように支持された製氷板22と、製氷板22の製氷面側となる前面に設けた格子状の仕切部23とを備えている。製氷板22の製氷面側には仕切部23によって仕切られた複数の製氷小室が上下方向及び左右方向(水平方向)に並んで形成されており、複数の製氷小室は製氷板22と反対側となる前側で開口している。製氷部21を後述する冷凍装置24によって冷却した状態で、製氷部21の仕切部23による開口側に製氷水を流下させると、流下する製氷水は各製氷小室内で凍結してブロック形氷となり、流下する製氷水はブロック形氷の仕切部23による開口側の縁部で凍結してブロック形氷の互いに隣り合う上下方向及び水平方向で連結させる連結部として凍結し、製氷部21にはブロック形氷の縁部が連結部によって連結した凹凸のある板状を呈した板状連結氷が製氷される。また、仕切部23は上下方向を仕切る水平方向に延びる横板部が開口側が下側となるように傾斜しており、製氷小室内に製氷されるブロック形氷が除氷時に落下しやすくなっている。
【0016】
図2、
図3及び
図5に示したように、製氷板22の製氷面と反対面となる後面には冷凍装置24の蒸発器24dが固定されている。
図5に示したように、冷凍装置24は、製氷運転を実行するときに製氷部21を冷却するとともに、除氷運転をするときに製氷部21を加温するものである。冷凍装置24は、冷媒を圧縮する圧縮機24aと、圧縮機24aから圧送された冷媒を冷却して液化させる凝縮器24bと、凝縮器24bにて液化させた液化冷媒を膨張させて低圧の液化冷媒とする膨張弁24cと、膨張弁24cにより膨張させた液化冷媒を気化させて製氷部21を冷却する蒸発器24dとを備え、蒸発器24dを除いて筐体11内の貯氷槽50の下側及び後側に配置される機械室13に収容されている。冷凍装置24は圧縮機24a、凝縮器24b、膨張弁24c及び蒸発器24dを冷媒管24eによって環状に接続して冷凍回路が構成されている。製氷運転時に、製氷部21は蒸発器24dに送られる液化冷媒が気化する気化熱によって冷却され、製氷部21の仕切部23による開口側を流下する製氷水は蒸発器24dに送られる液化冷媒によって冷却される。
【0017】
冷凍装置24は、除氷運転をするときに蒸発器24dにホットガス(気化冷媒)を供給するホットガス管(ホットガス経路)24fを備えている。ホットガス管24fは、圧縮機24aの下流側と蒸発器24dの上流側とを接続して、圧縮機24aからのホットガスを蒸発器24dに導くようにしている。ホットガス管24fにはホットガス弁24gが介装されており、圧縮機24aから送られるホットガスはホットガス弁24gの開放によってホットガス管24fを通って蒸発器24dに導かれる。除氷運転時に、製氷部21は蒸発器24dに送られるホットガスによって加温され、製氷部21で凍結した板状連結氷は製氷部21との接触面で融けて製氷部21から離脱可能となる。
【0018】
製氷部21には温度センサ25が設けられており、温度センサ25は製氷部21の温度を検出するものである。温度センサ25は、製氷板22の製氷面の反対側にて蒸発器24dの冷媒の出口部の位置に設けられており、蒸発器24dの冷媒の出口部の温度を検出している。温度センサ25は、除氷運転を実行したときに製氷部21から板状連結氷を離脱可能な状態となるのを検知するのに用いられている。なお、温度センサ25は蒸発器24dの冷媒の出口部の温度を検出する位置に配置するものに限られるものではなく、製氷部21の他の位置の温度を検出するものであってもよい。
【0019】
図4及び
図5に示したように、製氷機構20は、製氷部21の仕切部23による開口側を循環流下する製氷水を供給する製氷水供給部30を備えている。製氷水供給部30は、製氷部21の下側に設けた製氷水タンク31を備え、製氷水タンク31は製氷部21を支持する支持フレーム12に着脱可能に取り付けられている。製氷水タンク31には外部の水道等の給水源に接続した給水管32が配設されており、給水管32には給水弁33が介装されている。給水源の水は、給水弁33を開放することによって製氷水として給水管32から製氷水タンク31に供給される。
【0020】
製氷水タンク31内にはフロートスイッチ34と水温センサ35が設けられている。フロートスイッチ34は製氷水タンク31内の上限及び下限水位を検出するものであり、フロートスイッチ34により検出される上限水位は製氷部21に板状連結氷を形成させるのに必要な水量の水位であり、フロートスイッチ34により検出される下限水位は製氷部21に上述した板状連結氷が形成されたことによって製氷水が減少したときの水位である。水温センサ35は製氷水タンク31内の製氷水の温度を検出するものである。
【0021】
製氷水供給部30は、製氷部21の上側に設けた散水器36と、製氷水タンク31内の製氷水を散水器36に送り出すための送水ポンプ37とを備えている。散水器36は製氷部21の幅と略同じ長さの管部材よりなり、周面下部には長手方向に沿って多数の散水孔36aが穿設されている。散水器36は送水管38によって送水ポンプ37に接続されており、製氷水タンク31内の製氷水は送水ポンプ37の作動によって送水管38を通って散水器36に送られる。散水器36に送られた製氷水は散水孔36aから製氷部21の仕切部23による開口側に散水され、製氷水は製氷部21の仕切部23による開口側に沿って流れ落ちる。
【0022】
図2及び
図3に示したように、製氷水供給部30は、製氷部21の仕切部23による開口側に導水カバー39を備えている。導水カバー39は、散水器36から製氷部21の仕切部23による開口側に散水された製氷水を製氷水タンク31に導くとともに、製氷部21の仕切部23による開口側を流下する製氷水が貯氷槽50の内部に飛散するのを防ぐ機能を有している。導水カバー39の上端部は製氷部21の仕切部23による開口側で支持フレーム12の上端部に水平軸線回りに回動可能に支持されている。導水カバー39の下端部は後方に湾曲して製氷水タンク31の内部に挿通されており、製氷部21の仕切部23による開口側を流下する製氷水は導水カバー39の下端部で受けられて製氷水タンク31の内部に導かれる。導水カバー39は製氷部21で製氷させる製氷運転時には鉛直方向に垂下した垂下姿勢(
図2及び
図3にて実線にて示す)となっており、製氷部21から板状連結氷を離脱させるときには板状連結氷によって下端部が前方(製氷部21から離間する方向)に押し出された傾動姿勢(
図2及び
図3にて2点鎖線にて示す)となる。導水カバー39が垂下姿勢から傾動姿勢となったことを検出することによって、板状連結氷が製氷部21から離脱したことが検知可能となっている。
【0023】
図3に示したように、製氷板22の後側(製氷面と反対側)には製氷部21で製氷した板状連結氷を離脱させる氷離脱装置40が設けられている。氷離脱装置40は製氷板22の上下方向及び左右方向の略中央部に形成された挿通孔22aに挿通可能なスライドピン(押出部材)41を備えている。スライドピン41は、ギヤモータ42の回転駆動を受けて回転するカム43によって前後方向に移動可能となっており、製氷板22の後側で製氷部21で製氷された板状連結氷を押し出す前に待機する待機位置と、製氷板22の挿通孔22aに挿通されて製氷部21で製氷された板状連結氷を押し出す押出位置(
図3に示した)とで移動可能になっている。
【0024】
スライドピン41を前後に移動させるギヤモータ42は駆動軸42aの回転角度を検出する角度センサ(位置検出センサ)42bを備えており、角度センサ42bは駆動軸42aに取り付けたエンコーダにより駆動軸42aの回転角度を検出する。角度センサ42bの検出角度に基づいてギヤモータ42を作動させて、スライドピン41を待機位置から押出位置に移動させると、製氷部21の仕切部23による開口側に形成された板状連結氷は製氷部21から押し出されて離脱して貯氷槽50の内部に落下する。スライドピン41によって板状連結氷が製氷部21の開口側から押し出されたときには、導水カバー39は板状連結氷によって押し出されることによって傾動姿勢となる。
【0025】
図3に示したように、また、製氷機構20は製氷部21にて製氷した板状連結氷を製氷部21から離脱させたことを検知する氷離脱検知器44を備えている。氷離脱検知器44は導水カバー39の姿勢の状態(上述した垂下姿勢と傾動姿勢)を検出することで、製氷部21から板状連結氷が離脱したことを検知するものである。氷離脱検知器44は、製氷部21の支持フレーム12に取り付けたリードスイッチよりなる姿勢検出センサ45と、導水カバー39の側面部の上下方向の中央部に取り付けた磁石46とを備えている。姿勢検出センサ45は垂下姿勢にある導水カバー39に取り付けた磁石46と対向する位置に配置されている。
【0026】
製氷機構20で製氷運転を実行している状態では、導水カバー39は垂下姿勢となっており、導水カバー39の磁石46は姿勢検出センサ45に対向する位置にて近接している。この状態では、姿勢検出センサ45は磁石46が近接していることを検出し、製氷部21から板状連結氷が離脱していないことが検知される。これに対し、製氷機構20による製氷運転が完了し、除氷運転にて氷離脱装置40により製氷部21から板状連結氷を押し出したときには、導水カバー39は製氷部21から離脱する板状連結氷に押されて垂下姿勢から傾動姿勢となり、導水カバー39の磁石46は姿勢検出センサ45に対向する位置から離間する。この状態では、姿勢検出センサ45は磁石46が離間したことを検出し、製氷部21から板状連結氷が離脱したことが検知される。さらに、製氷部21から離脱した板状連結氷が貯氷槽50に落下したときには、導水カバー39は傾動姿勢から垂下姿勢に戻る。この状態では、姿勢検出センサ45は磁石46が再び近接したことを検出し、製氷部21から離脱した板状連結氷が貯氷槽50に落下したことが検知される。
【0027】
図2に示したように、筐体11内に設けた貯氷槽50は前後方向の中間部より後側を氷を貯える貯氷室51とし、前部を氷を定量するための氷定量室52としている。貯氷室51の底部には製氷機構20により製氷した氷を氷定量室52に搬出する氷搬出機構60が設けられている。氷搬出機構60は、貯氷室51の底部に設けたギヤモータ61と搬出羽根62とを備えている。ギヤモータ61は主として搬出羽根62を回転させるものであり、貯氷室51の下側に配設されている。ギヤモータ61の出力軸には駆動軸61aが固定されており、駆動軸61aはギヤモータ61の出力軸と一体的に回転する。駆動軸61aは貯氷室51内に突出しており、駆動軸61aには搬出羽根62がねじによって着脱可能に取り付けられている。また、ギヤモータ61は出力軸の回転角度を検出することで駆動軸61aの回転角度を検出する角度センサ61bを備えている。角度センサ61bは、出力軸に固定したロータリエンコーダ61cによって駆動軸61aの回転角度を検出するものであり、この実施形態ではフォトセンサが用いられている。
【0028】
搬出羽根62は、略円板形をした本体部62aと、本体部62aの周部にて等間隔に配置した6箇所から外側に突出する羽根部62bとを備えている。搬出羽根62は、貯氷室51の底面にてギヤモータ61の駆動軸61aに取り付けられている。ギヤモータ61により搬出羽根62を回転させると、貯氷室51内の氷は羽根部62bによって氷定量室52の内部に搬出される。
【0029】
ギヤモータ61の駆動軸61aにはさらに撹拌アーム(撹拌部材)63が取り付けられており、撹拌アーム63は駆動軸61aと搬出羽根62の本体部62a上面とに固定された固定板部63aと、固定板部63aの長手方向の両端部から搬出羽根62の上面側となる貯氷室51の内部側に延びる一対の第1及び第2アーム部63b,63cとを備えている。これら第1及び第2アーム部63b、63cは貯氷室51内にて製氷機構20によって製氷した板状連結氷が落下して積み上がる位置を通るように配置されている。第1アーム部63bは貯氷室51内の板状連結氷が落下して積み上がる位置の上下方向の中央部を通るように配置されており、第2アーム部63cは貯氷室51内の板状連結氷が落下して積み上がる位置の上下方向の下部を通るように配置されている。
【0030】
図2に示したように、氷定量室52は氷を所定の容量(重量)に定量して放出するための空間となっており、氷定量室52には氷定量機構70が設けられている。氷定量機構70は、氷定量室52下側にギヤモータ71と氷定量室52内に氷定量器72とを備えている。ギヤモータ71は氷定量器72を回動させるものであり、氷定量室52の下側に配設されている。ギヤモータ71の出力軸には駆動軸71aが固定されており、駆動軸71aはギヤモータ71の出力軸と一体的に回転する。駆動軸71aは氷定量室52の略中央部に突出しており、駆動軸71aには氷定量器72が着脱可能に取り付けられている。また、ギヤモータ71は出力軸の回転角度を検出することで駆動軸71aの回転角度を検出する角度センサ71bを備えている。角度センサ71bは、出力軸に固定したロータリエンコーダ71cにより駆動軸71aの回転角度を検出するものであり、この実施形態ではフォトセンサが用いられている。
【0031】
氷定量器72は貯氷室51から送られる氷を所定の容量(重量)に定量するものである。氷定量器72は、氷定量室52の内部に同心的かつ回動自在に支持された中心軸部72aと、中心軸部72aの周面にて周方向に等間隔の6カ所の位置から放射状に延びる6つのセパレータ部72bとを備えている。氷定量器72の中心軸部72aと氷定量室52の内周面との間には6つのセパレータ部72bによって区画形成された6つの扇形定量空間72cが形成されており、扇形定量空間72cにより所定量の氷が定量される。氷定量室52の底部には放出口52aが形成されており、氷定量器72をギヤモータ71によって扇形定量空間72cの周方向の範囲の角度に応じて回動させたときに、扇形定量空間72cで定量された氷は放出口52aの上側を通過するときに放出口52aからカップ台14に載置したカップに放出される。
【0032】
図6に示したように、この製氷機10は制御装置80を備えており、制御装置80は、圧縮機24a、ホットガス弁24g、温度センサ25、給水弁33、フロートスイッチ34、送水ポンプ37、氷離脱装置40のギヤモータ42、姿勢検出センサ45、氷搬出機構60のギヤモータ61、氷定量機構70のギヤモータ71とに接続されている。制御装置80はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(いずれも図示省略)を備えている。制御装置80のROMには製氷機構20で板状連結氷を製氷する製氷プログラムが記憶されており、製氷プログラムは製氷部21で板状連結氷を製氷する製氷運転と、製氷運転で製氷した板状連結氷を除氷して離脱させる除氷運転を交互に実行するものである。
【0033】
図7に示したように、制御装置80は、製氷プログラムを実行することで、製氷機構20で製氷運転と除氷運転を交互に実行するように制御しており、ステップ101では製氷機構20で製氷運転を実行するように制御している。製氷運転では、冷凍装置24の作動を制御して製氷部21を冷却するように制御するとともに、フロートスイッチ34により上限水位を検出するまで給水弁33を開放して、製氷水タンク31内に板状連結氷を製氷するのに要する製氷水を供給し、製氷水供給部30の作動を制御して製氷水を製氷部21に供給するように制御している。
【0034】
製氷部21は冷凍装置24を循環する冷媒が蒸発器24dで蒸発することによって冷却され、製氷部21には製氷水供給部30によって製氷水タンク31内の製氷水が循環供給される。製氷水タンク31内の製氷水は送水ポンプ37によって散水器36に送られ、散水器36から散水された製氷水は製氷部21の仕切部23による開口側を通って導水カバー39によって再び製氷水タンク31に戻される。製氷水タンク31内の製氷水は製氷部21との間を循環する過程で徐々に冷却される。なお、製氷水タンク31に上限水位まで製氷水を供給するときに、冷凍装置24に大きな負荷が発生しないように、製氷水タンク31内に製氷水を断続的に供給するように制御してもよい。具体的には、製氷水タンク31内の製氷水を上限水位の水量の一部だけ供給されるように給水弁33を一定時間開放し、水温センサ35による検出水温が所定温度として例えば2℃まで冷却されてから、再び給水弁33を一定時間開放して製氷水タンク31内の製氷水を上限水位の水量の一部だけ供給する制御を製氷水タンク31内の水位が上限水位となるまで繰り返し実行する。製氷水タンク31内の製氷水は、製氷部21との間で循環する過程で冷却されながら、断続的に製氷水が供給されることで、冷凍装置24を循環する冷媒の温度が一時的に過度に上昇するのを防ぐようにしてもよい。
【0035】
製氷部21の仕切部23による開口側を流下する製氷水は、製氷部21の製氷小室内で凍結してブロック形氷となり、流下する製氷水はさらにブロック形氷の仕切部23の開口側の縁部で凍結してブロック形氷の互いに隣り合う上下方向及び水平方向を連結させる連結部となり、製氷部21にはブロック形氷の縁部が連結部によって上下方向及び水平方向で板状に連結した板状連結氷が製氷される。製氷部21に板状連結氷が製氷されると、製氷水タンク31内の製氷水は下限水位まで減少する。フロートスイッチ34によって下限水位が検出されると、制御装置80は送水ポンプ37の作動を停止させて製氷運転を終了する。
【0036】
製氷運転が終了すると、制御装置80は、ステップ102(ステップ200)で除氷運転を実行する。
図8に示したように、制御装置80は,ステップ201にて、ホットガス弁24gを開放して、圧縮機24aから送出されるホットガスを蒸発器24dに送出させる。製氷部21で製氷された板状連結氷は蒸発器24dに送られるホットガスによって製氷部21との接触面で徐々に融ける。製氷部21の温度が蒸発器24dに送出されるホットガスによって徐々に上昇し、制御装置80は、ステップ202にて、温度センサ25による検出温度tが製氷部21から板状連結氷を離脱させることが可能な温度として設定される氷離脱設定温度Tsより高くなったか否かを判定する。該検出温度tが氷離脱設定温度Tsより高くなっていなければ、制御装置80は、ステップ202にてNOと判定してステップ201に戻す。製氷部21が蒸発器24dに送出されるホットガスによって温められて、温度センサ25による検出温度tが氷離脱設定温度Tsより高くなると、制御装置80は、ステップ202にてYESと判定してステップ203に進める。
【0037】
制御装置80は、ステップ203にて、氷離脱装置40の作動として、ギヤモータ42を角度センサ42bによって検出される駆動軸42aの回転角度に応じて駆動させ、スライドピン41を待機位置から製氷板22の挿通孔22aを通って前方に挿通させて板状連結氷を押し出す押出位置まで移動させ、押出位置から再び待機位置まで移動させる。スライドピン41を待機位置から押出位置まで移動させると、板状連結氷は製氷部21から押し出されて離脱して貯氷槽50の内部に落下する。
【0038】
このとき、導水カバー39は垂下姿勢から板状連結氷によって下端部を前方に押し出された傾動姿勢となり、製氷部21から押し出された板状連結氷が下側の貯氷槽50に落下すると、導水カバー39は傾動姿勢から再び垂下姿勢に戻る。導水カバー39が板状連結氷によって押されて垂下姿勢から傾動姿勢に傾動すると、導水カバー39に取り付けた磁石46は姿勢検出センサ45に近接した位置から離間して、姿勢検出センサ45によって磁石46が離間したことの検出に基づいて、製氷部21から板状連結氷が離脱したことが検知される。また、板状連結氷が製氷部21の前側から貯氷槽50に落下して、導水カバー39が傾動姿勢から垂下姿勢に戻ると、導水カバー39に取り付けた磁石46は姿勢検出センサ45に離間した位置から近接して、姿勢検出センサ45によって磁石46が再び近接したことの検出に基づいて、製氷部21の前側から板状連結氷が貯氷槽50に落下したことが検知される。
【0039】
これに対し、板状連結氷のブロック形氷を連結させる連結部の強度が弱いときや、板状連結氷が製氷部21との接触面で充分に融けてないときに、スライドピン41を待機位置から押出位置まで移動させると、製氷部21で製氷された板状連結氷のスライドピン41と対向する位置の近傍の製氷小室内のブロック形氷だけがスライドピン41によって押し出されて製氷部21から離脱して貯氷槽50に落下し、スライドピン41と対向する位置から離れた位置の製氷小室内にブロック形氷が残る不完全除氷が発生する。このとき、導水カバー39は板状連結氷に押されずに垂下姿勢を維持するか、仮に、導水カバー39が板状連結氷の一部のブロック形氷に押されても、スライドピン41が押出位置から待機位置に戻った後で、残ったブロック形氷の一部が後から自重によって製氷小室から落下して、導水カバー39を傾動姿勢に傾動させることがある。
【0040】
また、製氷部21で不完全除氷が発生しないようにするために、氷離脱設定温度Tsが高く設定されていると、ホットガスを蒸発器24dに送出する時間が長くなることに起因して板状連結氷が製氷部21との接触面で過剰に融け、製氷部21で製氷された板状連結氷がスライドピン41によって押し出される前に製氷部21から離脱して貯氷槽50に落下することもある。
【0041】
制御装置80は、ステップ204にて、氷離脱装置40のギヤモータ42を駆動開始させてから板状連結氷が製氷部21の前側から離脱するまでの時間を計測する。具体的には、制御装置80は、氷離脱装置40のギヤモータ42を待機位置から押出位置に移動開始させたときから、姿勢検出センサ45によって導水カバー39の磁石46が離間したことの検出をするまでの時間を計測する。制御装置80は、ステップ205にて、ステップ204にて計測した氷離脱装置40のギヤモータ42を駆動開始させてから板状連結氷が製氷部21の前側から離脱するまでの時間に基づき、次回の氷離脱設定温度Ts’を算出する。氷離脱装置40のギヤモータ42を駆動開始させてから板状連結氷が製氷部21の前側から離脱するまでの標準の時間がこの実施形態では20秒(20秒は一例であり、これに限られるものではない)と設定されていて、この標準の時間に対する偏差をte秒としたときに、次回に設定される氷離脱設定温度Ts’は今回設定されている氷離脱設定温度Tsを用いて次式により算出する。
Ts’=Ts+0.01×te
【0042】
また、不完全除氷が発生したときのように、氷離脱装置40のギヤモータ42を駆動開始させても氷離脱検知器44によって製氷部21の前側から板状連結氷が離脱したことが検知されないときには、板状連結氷が製氷部21との接触面で充分に融ける前に氷離脱装置40のスライドピン41によって押し出されたため、偏差te秒を大きなプラスの偏差として例えば60秒として、次回の氷離脱設定温度Ts’を大幅に高い設定とする。また、製氷部21の板状連結氷を氷離脱装置40のスライドピン41によって押し出す前に、姿勢検出センサ45によって製氷部21の前側から板状連結氷が離脱したことが検知されたときには、板状連結氷が製氷部21との接触面で充分に融けていて氷離脱装置40のスライドピン41によって押し出される前に自重によって自然に落下したため、偏差te秒を大きなマイナスの偏差として例えば-30秒として、次回の氷離脱設定温度Ts’を大幅に低い設定とする。
【0043】
制御装置80は、ステップ204にて計測した氷離脱装置40の作動開始から氷離脱検知までの計測時間に基づいて、ステップ205にて次回の氷離脱設定温度Ts’を算出するとともに、ステップ206にて、ギヤモータ42の角度センサ42bによりスライドピン41を押出位置から待機位置に戻すことが検出されるまでに、導水カバー39の磁石46が姿勢検出センサ45に近接した位置から離間した位置が検出されたか否かを判定することで、スライドピン41を押出位置まで移動させても、製氷部21から板状連結氷のブロック形氷の全てが離脱せずに一部のブロック形氷が残る不完全除氷が発生したか否かを判定する。
【0044】
上述したように、製氷部21から一部のブロック形氷が残ることなく板状連結氷が離脱しているときには、スライドピン41を待機位置から押出位置に移動させたときに、製氷部21から板状連結氷が押し出されて、導水カバー39が垂下姿勢から傾動姿勢に傾動し、ギヤモータ42の角度センサ42bによりスライドピン41を押出位置から待機位置に戻すことが検出されるまでに、導水カバー39の磁石46が姿勢検出センサ45に近接した位置から離間した位置が検出される。ギヤモータ42の角度センサ42bによりスライドピン41を押出位置から待機位置に戻すことが検出されるまでに、導水カバー39の磁石46が姿勢検出センサ45に近接した位置から離間した位置が検出されると、製氷部21で不完全除氷が発生しなかったと検知されて、制御装置80は、ステップ206にてNOとて判定してステップ208に進める。制御装置80は、ステップ208にて、ホットガス弁24gを閉弁させて除氷運転を終了する。
【0045】
これに対し、製氷部21から一部のブロック形氷が残るときには、スライドピン41を待機位置から押出位置に移動させたときに、製氷部21から板状連結氷の全てのブロック形氷が押し出されず、導水カバー39が垂下姿勢を維持し、ギヤモータ42の角度センサ42bによりスライドピン41を押出位置から待機位置に戻すことが検出されるまでに、導水カバー39の磁石46が姿勢検出センサ45に近接した位置の検出が継続される。ギヤモータ42の角度センサ42bによりスライドピン41を押出位置から待機位置に戻すことが検出されるまでに、導水カバー39の磁石46が姿勢検出センサ45に近接した位置の検出が継続すると、製氷部21で不完全除氷が発生したと検知されて、制御装置80は、ステップ206にてYESとて判定してステップ207に進める。制御装置80は、ステップ207にて、不完全除氷を解消するために、温度センサ25による検出温度tが氷離脱設定温度Tsより高く設定された追加除氷温度Ta(一例として10℃)となるまで引き続きホットガス弁24gを開放した状態として蒸発器24dにホットガスを供給させる。製氷部21に残るブロック形氷は追加除氷温度Taとなる前に製氷部21との接触面で充分に融けて自重により貯氷槽50に落下し、温度センサ25による検出温度が追加除氷温度Taとなると、制御装置80はステップ207にてYESと判定し、ステップ208に進めてホットガス弁24gを閉弁させて除氷運転を終了する。なお、ステップ207では、温度センサ25による検出温度tが氷離脱設定温度Tsより高く設定された追加除氷温度Ta(一例として10℃)となるまで引き続き蒸発器24dにホットガスを供給させているが、これに限られるものではなく、タイマによって所定の追加除氷時間でホットガス弁24gを継続して開放するように制御してもよい。このように、除氷運転で氷離脱装置40を作動させたときに製氷部21で発生した不完全除氷が素早く検知され、製氷部21に継続してホットガスが送出されるようにしているので、次に実行される製氷運転で製氷部21で一部のブロック形氷が他のブロック形氷より大型となるのを防ぐことができる。
【0046】
ステップ102(ステップ200)による除氷運転が終了すると、制御装置80は、ステップ103にて、氷搬出機構60のギヤモータ61を駆動させ、搬出羽根62に固定されている撹拌アーム63を回動させて、貯氷槽50内にて製氷機構20の下側に落下した板状連結氷をブロック形氷に崩すようにする。貯氷槽50内に氷が積み上がっていると、撹拌アーム63を回動させても、板状連結氷が製氷部21の前側から貯氷槽50内に落下せず、板状連結氷が製氷部21の前側に残り、導水カバー39は傾動姿勢を維持する。制御装置80は、ステップ103の処理後に、ステップ104にて、磁石46が姿勢検出センサ45に再び近接したことの検出がされたか否かを判定することで、製氷部21から離脱した板状連結氷が貯氷槽50に落下して、導水カバー39が傾動姿勢から再び垂下姿勢に戻ったか否かを判定する。製氷部21の下側まで板状連結氷が積み上がっているときには、製氷部21から離脱した板状連結氷が貯氷槽50に落下せず、導水カバー39が傾動姿勢を維持し、磁石46が姿勢検出センサ45に離間していることの検出が継続し、制御装置80は、ステップ104にてNOの判定を繰り返し実行して待機する。これに対し、製氷部21の下側で板状連結氷が積み上がっていないときには、製氷部21から離脱した板状連結氷が貯氷槽50に落下し、導水カバー39が傾動姿勢から垂下姿勢に戻り、磁石46が姿勢検出センサ45に近接したことの検出がされ、制御装置80は、ステップ104にてYESの判定をして再びステップ101の製氷運転を実行する。
【0047】
上記のように構成した製氷機10においては、支持フレーム12に鉛直に立設して支持された製氷板22の製氷面側に設けた格子状の仕切部23によって製氷板22と反対側に開口する複数の製氷小室を上下方向及び水平方向に並ぶように形成し、仕切部23による開口側に沿って流下する製氷水を製氷小室内でブロック形氷となるように凍結させるとともに、ブロック形氷が仕切部23の開口側の縁部で互いに隣り合う上下方向及び水平方向で連結するように凍結させて、ブロック形氷の縁部が上下方向及び水平方向で板状に連結した板状連結氷となるように製氷する製氷部21と、製氷運転にて製氷部21に液化冷媒を送出して冷却し、除氷運転にて製氷部21に気化冷媒を送出して加温する冷凍装置24と、製氷運転の際に製氷部21で製氷された板状連結氷を除氷運転の際に製氷部21から押し出して離脱させる氷離脱装置40と、製氷部21で製氷された板状連結氷が離脱するのを検知する氷離脱検知器44とを備えている。
【0048】
この製氷機10は、製氷運転の際には冷凍装置24により送出される液化冷媒により製氷部21を冷却して、製氷部21で製氷水を板状連結氷となるように凍結させて製氷し、製氷運転後の除氷運転の際には冷凍装置24により送出される気化冷媒により製氷部21を加温することで、製氷部21にて製氷された板状連結氷を製氷部21から離脱可能な状態とし、氷離脱装置40の作動によって製氷部から板状連結氷を離脱させるようにし、製氷運転と除氷運転とを交互に実行するようにして板状連結氷を製氷するように制御されている。
【0049】
この製氷機10においては、除氷運転で氷離脱装置40を作動開始後に、氷離脱検知器44による板状連結氷の離脱が検知されないときに、製氷部21の一部の製氷小室でブロック形氷を離脱させることができなかった不完全除氷であると検知するようにしている。この実施形態では、氷離脱装置40は、製氷部21から板状連結氷を押し出す前に待機する待機位置と板状連結氷を押し出す押出位置とで移動可能に支持されたスライドピン(押出部材)41と、スライドピン41の位置を検出するギヤモータ42の角度センサ(位置検出センサ)42bとを備えている。除氷運転時の氷離脱装置40の作動開始後に、ギヤモータ42の角度センサ42bの検出に基づいてスライドピン41を待機位置から押出位置まで移動させてから再び待機位置に戻すまでに、氷離脱検知器44として姿勢検出センサ45により導水カバー39の磁石46が近接した位置から離間した位置が検出されない、すなわち、製氷部21から板状連結氷の離脱が検知されないときに、不完全除氷であると検知されるようにしている。
【0050】
この種の製氷機において、製氷部21の温度を検出する温度センサ25の検出温度に基づき、製氷部21の全ての製氷小室のブロック形氷が離脱したことを検知するようにすると、熱容量や熱伝導の応答の遅さによって該検知が遅れるおそれがあり、除氷運転の時間が長くなることで製氷効率が低くなる問題があった。これに対し、この実施形態の製氷機10においては、氷離脱装置40の作動開始後に、氷離脱検知器44による板状連結氷の離脱が検知されないことで、製氷部21の一部の製氷小室でブロック形氷を離脱させることができなかった不完全除氷であると検知するようにしている。これによって、不完全除氷の状態を素早く検知できるようになり、除氷運転の時間が長くなることで製氷効率が低くならないようにすることができる。
【0051】
また、この製氷機10においては、除氷運転で氷離脱装置40を作動開始後に、氷離脱検知器44による板状連結氷の離脱が検知されず、製氷部21の一部の製氷小室でブロック形氷を離脱させることができなかった不完全除氷であると検知したときに、冷凍装置24による製氷部21への気化冷媒の送出を継続させるように制御している。この実施形態では、不完全除氷である検知されると、制御装置80は、温度センサ25による検出温度が氷離脱設定温度Tsより高く設定された追加除氷温度Taとなるまで引き続き蒸発器24dにホットガスを送出させるように制御している。
【0052】
このように、不完全除氷を検知後に、蒸発器24dにホットガスを引き続き送出するようにして製氷部21を温めるようにしているので、製氷部21の製氷小室の一部に板状連結氷のブロック形氷が残らないようになり、除氷運転後に製氷運転を実行したときに、製氷部21の一部の製氷小室でブロック形氷が二重に製氷されて大型のブロック形氷が製氷されるのを防ぐことができる。なお、不完全除氷の検知後に、蒸発器24dにホットガスを引き続き送出するようにして製氷部21を温めるようにするのに限られるものではなく、製氷水タンク31内の製氷水を製氷部21に送出するようにして、製氷部21の製氷小室に残るブロック形氷を製氷水により融かして製氷部21から離脱させるようにしてもよい。
【0053】
また、この製氷機10においては、温度センサ25の検出温度tが製氷部21から氷を離脱させることが可能な温度として設定される氷離脱設定温度Tsとなると氷離脱装置40を作動させるように制御しており、除氷運転にて氷離脱装置40を作動させてから氷離脱検知器44により製氷部21で製氷された板状連結氷が離脱するのを検知するのに要した時間に基づいて氷離脱設定温度Tsを変更可能としている。
【0054】
この実施形態では、制御装置80は、氷離脱装置40のギヤモータ42を駆動開始させてスライドピン41を待機位置から移動開始させたときから姿勢検出センサ45によって製氷部21の前側から板状連結氷が離脱したことを検知するまでの時間を計測している。制御装置80は、ステップ205にて、ステップ204にて計測した氷離脱装置40のギヤモータ42を駆動開始させてから姿勢検出センサ45によって製氷部21の前側から板状連結氷が離脱したことを検知するのに要した時間に基づき、次回の氷離脱設定温度Ts’を算出する。氷離脱装置40のギヤモータ42を駆動開始させてから姿勢検出センサ45によって製氷部21の前側から板状連結氷が離脱したことを検知するまでの標準の時間がこの実施形態では20秒(20秒は一例であり、これに限られるものではない)と設定されていて、計測時間のこの標準の時間に対する偏差te秒としたときに、次回に設定する氷離脱設定温度Ts’は今回設定されている氷離脱設定温度Tsを用いて下式により算出している。
Ts’=Ts+0.01×te
【0055】
また、不完全除氷を検知するときのように、氷離脱装置40のギヤモータ42を駆動開始させても姿勢検出センサ45によって製氷部21の前側から板状連結氷が離脱したことが検知されないときには、板状連結氷が製氷部21との接触面で充分に融ける前に氷離脱装置40のスライドピン41によって押し出されたため、偏差te秒を大きなプラスの偏差として例えば60秒として、次回の氷離脱設定温度Ts’を大幅に高い設定とする。また、製氷部21の板状連結氷を氷離脱装置40のスライドピン41によって押し出す前に、姿勢検出センサ45によって製氷部21の前側から板状連結氷が離脱したことが検知されたときには、板状連結氷が製氷部21との接触面で充分に融けていて氷離脱装置40のスライドピン41によって押し出される前に自重によって自然に落下したため、偏差te秒を大きなマイナスの偏差として例えば-30秒として、次回の氷離脱設定温度Ts’を大幅に低い設定とする。
【0056】
これによって、除氷運転を実行したときに、板状連結氷が製氷部21との接触面で過剰に融けることなく確実に離脱させることができるタイミングで、氷離脱装置40を作動させることができ、製氷機構20による製氷効率を高くすることができる。なお、次回に設定する氷離脱設定温度Ts’は、上述した氷離脱装置40のギヤモータ42を駆動開始させてから姿勢検出センサ45によって製氷部21の前側から板状連結氷が離脱したことを検知するのに要した時間に基づいて算出するのに限られるものではなく、ギヤモータ42の電流を計測する電流計の計測電流に基づいて算出するようにしものであってもよい。具体的には、ギヤモータ42に電源に対して直列的に接続した電流計によりギヤモータ42に供給される電流Iを計測し、スライドピン41を待機位置から押出位置に移動させたとき(または、待機位置から押出位置に移動させてから待機位置に再び移動させたとき)の電流Iの積算値∫Idtの標準の値である5A・s(この値は一例であり、これに限られるものではない)に対しての偏差がIe(A・s)であるときに、次回の氷離脱設定温度Ts’を次式により設定するようにしてもよい。
Ts’=Ts+0.01×Ie
【0057】
上記の実施形態においては、氷離脱装置40は、ギヤモータ42の回転駆動を受けて回転するカム43によってスライドピン41を前後方向に移動させるものであるが、これに限られるものではなく、モータとばねを組み合わせて前後に動くアクチュエータ、リニアモータまたは直動ソレノイドアクチュエータ等を用いてスライドピン41を前後に移動させるものであってもよい。また、氷離脱装置40は、スライドピン41の代わりに空気圧によって板状連結氷を押し出すものであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…製氷機、21…製氷部、22…製氷板、23…仕切部、24…冷凍装置、25…温度センサ、40…氷離脱装置、41…押出部材(スライドピン)、42b…位置検出センサ(角度センサ)、44…氷離脱検知器。