(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】文字板及び時計
(51)【国際特許分類】
G04B 19/06 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
G04B19/06 B
(21)【出願番号】P 2020130990
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】山影 大輔
(72)【発明者】
【氏名】坂本 朝夫
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-122169(JP,A)
【文献】特開2007-107940(JP,A)
【文献】特開2015-143641(JP,A)
【文献】特開昭56-007073(JP,A)
【文献】特開2004-163482(JP,A)
【文献】特開平08-194431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/06
G01D 13/02,13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用の文字板であって、
前記文字板の前面側に形成された、
複数の金属箔片を含む装飾層と、
前記
複数の金属箔片を被覆する、透光性の軟質樹脂層と、
前記軟質樹脂層を被覆する、前記軟質樹脂層よりも硬い透光性の硬質樹脂層と、
を有し、
前記軟質樹脂層は、鉛筆硬度がF以下となるように形成される
ことを特徴とする文字板。
【請求項2】
前記文字板の前面側に設けられた接着層をさらに有し、
前記装飾層は、前記接着層を被覆するように、前記接着層に接着される、
請求項1に記載の文字板。
【請求項3】
前記装飾層は、前記複数の金属箔片を前記接着層に接着させることにより形成される、
請求項
2に記載の文字板。
【請求項4】
前記接着層は、漆と合成樹脂塗料とを含む塗料により形成される、
請求項
2または3に記載の文字板。
【請求項5】
前記硬質樹脂層は、有色透明に形成される、
請求項
1-4の何れか一項に記載の文字板。
【請求項6】
前記硬質樹脂層を被覆する、無色透明の保護層をさらに有する、
請求項
1-5の何れか一項に記載の文字板。
【請求項7】
請求項
1-6の何れか一項に記載の文字板
を有する時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字板及び時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時計に高級感をもたせるために、文字板に種々の装飾を施すことがなされている。文字板の装飾として、金箔や銀箔等の金属箔を用いた装飾が知られている。漆や合成樹脂等の樹脂塗料を用いて文字板に金属箔を接着させることで、文字板に工芸品に似た高級感を与えることができる。
【0003】
文字板を金属箔で加飾する場合、金属箔が剥離又は損傷することを防ぐために、金属箔を覆うように樹脂を塗布することが望ましい。しかしながら、金属箔は一般に強度が小さいため、塗布した樹脂が硬化する際の熱収縮や、金属と樹脂との熱膨張率の差等により破断又は変形することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、文字板の基板上に形成された樹脂層の上に、樹脂層とは熱膨張率が異なる、金属箔からなる装飾層を形成し、文字板を加熱又は冷却することにより、装飾層にひび又は亀裂を生じさせた文字板が記載されている。特許文献1によれば、装飾層のひび又は亀裂による個性的な模様が形成された文字板が提供される。
【0006】
他方、ひび又は亀裂による模様は事前に予測することが困難であるため、特許文献1の手法では、文字板の外観品質を安定させることは難しかった。そこで、金属箔等の装飾部材を用いた装飾において、装飾部材に破断又は変形を生じさせないことが求められていた。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、箔状又は粒子状の装飾部材が樹脂によって破断又は変形するおそれを低減しつつ、装飾部材による加飾を可能とする文字板及び時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る文字板は、時計用の文字板であって、文字板の前面側に形成された、装飾部材を含む装飾層と、装飾層を被覆する、透光性の軟質樹脂層と、軟質樹脂層を被覆する、軟質樹脂層よりも硬い透光性の硬質樹脂層と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る文字板において、装飾部材は、金属箔であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る文字板は、文字板の前面側に設けられた接着層をさらに有し、装飾層は、接着層を被覆するように、接着層に接着される、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る文字板において、装飾層は、複数の金属箔片を接着層に接着させることにより形成される、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る文字板において、接着層は、漆と合成樹脂塗料とを含む塗料により形成される、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る文字板において、軟質樹脂層は、鉛筆硬度がF以下となるように形成される、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る文字板において、硬質樹脂層は、有色透明に形成される、ことが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る文字板は、硬質樹脂層を被覆する、無色透明の保護層をさらに有する、ことが好ましい。
【0016】
本発明に係る時計は、本発明に係る文字板を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る文字板及び時計は、箔状又は粒子状の装飾部材が樹脂によって破断又は変形するおそれを低減しつつ、装飾部材による加飾を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】文字板13の製造方法の流れの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限られず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0020】
図1は、本発明に係る時計1の正面図であり、
図2は、時計1の断面図である。
図2は、
図1のII-II断面の断面図である。時計1は、外装ケース11、風防ガラス12、文字板13、ムーブメント14、時針141、分針142、秒針143、竜頭15等を有する。
【0021】
外装ケース11は、文字板13及びムーブメント14等を内蔵する扁平な略円板形状の部材である。外装ケース11は、時計1の前面に設けられた環状のベゼル111、背面に設けられた裏蓋113及びベゼル111と裏蓋113とを接合する胴112から形成される。
【0022】
ベゼル111は、接着部材114により胴112の前部と接着される。胴112は、その後部において、接着部材115により裏蓋113と接着される。また、胴112の外周部には、バンドを取付けるための取付部118が形成される。また、胴112の外周部には、竜頭15が挿通される竜頭孔が形成される。
【0023】
ベゼル111、胴112及び裏蓋113は、ステンレス鋼により形成される。ベゼル111、胴112及び裏蓋113は、チタン又は金等の他の金属又は樹脂等により形成されてもよい。
【0024】
風防ガラス12は、外装ケース11の前面に、ベゼル111に囲まれるようにして取付けられる。風防ガラス12は、円板状に形成された透明のガラス板であり、サファイアガラス又はミネラルガラス等により形成される。風防ガラス12は、胴112の前部と接着部材124により接着され、文字板13、時針141、分針142及び秒針143を覆うことにより、これらを前方から視認可能にしながら保護する。
【0025】
文字板13は、時針141、分針142及び秒針143によって指示される時字131が前面に表示された平板状の部材である。文字板13は、風防ガラス12に平行するように外装ケース11に内蔵される。文字板13には、カレンダーを視認可能とするカレンダー穴132が設けられる。文字板13の前面の外周部分を覆うように、円環形状の第1見返し116が配置される。第1見返し116の外周部分及び外装ケース11の胴112の内周を覆うように、第2見返し117が配置される。なお、文字板13の断面構造については
図3を用いて詳述するため、
図2では文字板13の断面は簡略化されて図示されている。
【0026】
時針141、分針142及び秒針143は、文字板13の前面に設けられ、文字板13の背面側に設けられたムーブメント14によって、文字板13に表示された時字131を指示するように駆動される。時針141、分針142及び秒針143の回転軸は、同軸の時針パイプ144、分針パイプ145及び秒針パイプ146にそれぞれ挿通されてムーブメント14に接続される。時針141、分針142及び秒針143は、回転軸を介してムーブメント14から回転力を伝達されることにより駆動する。ムーブメント14は、機械式ムーブメント又はクォーツ式ムーブメントである。なお、
図2では、ムーブメント14を構成する各部材の図示が省略されている。
【0027】
竜頭15は、外装ケース11の胴112に設けられた竜頭孔に挿通されてムーブメント14に接続される、回転可能な軸状の部材である。ムーブメント14が機械式ムーブメントである場合、竜頭15の回転力は、時針141、分針142及び秒針143を駆動するためのムーブメント14の動力ぜんまいに伝達され、動力ぜんまいを巻上げる。また、竜頭15の回転力は、時刻合わせのため、ムーブメント14を介して時針141、分針142及び秒針143に伝達され、時針141、分針142及び秒針143を回転させる。
【0028】
図3は、文字板13の断面図である。文字板13は、基板133の前面に、下地層134、接着層135、装飾層136、軟質樹脂層137、硬質樹脂層138及び保護層139の各層が順に積層された断面構造を有する。なお、見やすさのため、
図3においては各層の厚さが適宜伸縮されて図示されている。
【0029】
基板133は、真鍮により形成される、円板状の部材である。基板133は、ステンレス等の他の金属又は樹脂により形成されてもよい。基板133は、例えば、直径が36mmとなり、厚さが350μmとなるように形成される。
【0030】
下地層134は、基板133と後述する接着層135との密着性を高めるための層である。下地層134は、ウレタン樹脂系のプライマーを基板133の前面に塗布することにより、基板133を被覆するように文字板13の前面側に形成される。下地層134は、エポキシ樹脂系のプライマーにより形成されてもよい。下地層134は、例えば、厚さが25μmとなるように形成される。基板133と接着層135との密着性が十分に高い場合は、下地層134は、不要となる。
【0031】
接着層135は、装飾層136を接着させるための層である。接着層135は、樹脂塗料を下地層134の前面に塗布することにより、下地層134を被覆するように文字板13の前面側に形成される。接着層135を形成する樹脂塗料は、漆と合成樹脂塗料とを含む有色の混合塗料であり、例えば、黒漆と黒色のウレタン樹脂塗料を2:8の重量比率で混合した塗料である。接着層135を形成する樹脂塗料は、白漆と白色の合成樹脂塗料とを含む塗料でもよく、他の色の漆又は合成樹脂塗料を含む塗料でもよい。接着層135は、例えば、厚さが50μmとなるように形成される。
【0032】
装飾層136は、装飾部材を含む層である。装飾部材として、金属箔を含んでいる。装飾層136は、接着層135の前面が乾燥する前に、接着層135を被覆するように複数の金属箔片を接着させることにより形成される。複数の金属箔片は、扁平に形成された金属箔を2.0mm~5.0mm程度の小片に分割することにより形成される。複数の金属箔片は、金属箔を手でちぎること等により、それぞれが異なる形状を有するように形成されることが好ましい。金属箔を形成する金属は、例えば銀又は硫化銀であるが、これらの例に限られず、金等でもよい。また、複数の種類の金属からなる金属箔片が混合して用いられてもよい。装飾層136は、例えば、厚さが0.1~0.2μmとなるように形成される。
【0033】
軟質樹脂層137は、装飾層136を形成する金属箔を保護するための透光性の層である。軟質樹脂層137は、樹脂塗料を装飾層136の前面に塗布することにより、装飾層136を被覆するように形成される。軟質樹脂層137を形成する樹脂塗料は、JIS K 5600-5-4(ISO/DIS 15184 1996)に規定される鉛筆硬度がF以下である。好ましくは、軟質樹脂層137を形成する樹脂塗料は、鉛筆硬度がHB以上F以下である。
【0034】
軟質樹脂層137を形成する樹脂塗料は、ウレタン樹脂塗料である。軟質樹脂層137を形成する樹脂塗料は、エポキシ樹脂塗料等の他の樹脂塗料でもよい。軟質樹脂層137は、無色透明に形成される。軟質樹脂層137は、例えば、厚さが1μm以上50μm以下となるように形成され、好ましくは、厚さが25μmとなるように形成される。
【0035】
硬質樹脂層138は、軟質樹脂層137を保護するとともに、文字板13に着色するための透光性の層である。硬質樹脂層138は、樹脂塗料を軟質樹脂層137の前面に塗布することにより、軟質樹脂層137を被覆するように形成される。硬質樹脂層138を形成する樹脂塗料は、JIS K 5600-5-4(ISO/DIS 15184 1996)に規定される鉛筆硬度がH以上である。これにより、硬質樹脂層138は、軟質樹脂層137よりも硬く形成される。
【0036】
硬質樹脂層138を形成する樹脂塗料は、ウレタン樹脂塗料である。硬質樹脂層138を形成する樹脂塗料は、エポキシ樹脂塗料等の他の樹脂塗料でもよい。硬質樹脂層138は、青色、緑色、赤色または白色等の有色透明に形成される。硬質樹脂層138は、無色透明に形成されてもよい。硬質樹脂層138は、例えば、厚さが25μmとなるように形成される。
【0037】
保護層139は、硬質樹脂層138を保護するための透光性の層である。保護層139は、ウレタン樹脂塗料を硬質樹脂層138の前面に塗布することにより、硬質樹脂層138を被覆するように形成される。保護層139は、無色透明に形成される。保護層139は、エポキシ樹脂等の他の樹脂の塗料により形成されてもよい。保護層139は、例えば、厚さが50μmとなるように形成される。軟質樹脂層137及び硬質樹脂層138を形成していることにより十分に保護層としての効果が得られている場合には、保護層139は省略することができる。
【0038】
図4は、文字板13の正面図である。軟質樹脂層137、硬質樹脂層138及び保護層139は透光性の層であるため、文字板13を正面から見た場合に、装飾層136を形成する金属箔片の形状が模様として視認される。また、有色透明に形成される硬質樹脂層138の色調と金属箔片の形状との組合せにより、多様な装飾が施された文字板13が形成される。
【0039】
図5は、文字板13の製造方法の流れの一例を示すフロー図である。
【0040】
まず、基板133の前面に下地層134が形成される(S1)。基板133の前面にプライマーが塗布される。塗布されたプライマーが80度の温度下で2時間かけて硬化される。硬化したプライマーの前面をサンドペーパー等により研磨することにより、下地層134が形成される。なお、プライマーを塗布する前にサンドペーパーで擦ること等により基板133の表面が荒らされてもよい。これにより、基板133と下地層134との密着性が向上する。
【0041】
続いて、下地層134を被覆するように接着層135が形成される(S2)。硬化した下地層134の前面を被覆するように、黒漆と黒色のウレタン樹脂塗料とを混合した混合塗料が塗布される。塗布された混合塗料は、80度の温度下で2時間かけて硬化される。硬化した混合塗料の前面に、さらに混合塗料が薄く塗布される。
【0042】
続いて、接着層135を被覆するように装飾層136が形成される(S3)。二度目に塗布された混合塗料が硬化される前に、接着層135の前面に複数の金属箔片が振りかけられる。振りかけられた金属箔片は、指で押し付けること等により偏平にされる。その後、二度目に塗布された混合塗料が80度の温度下で2時間かけて硬化されることにより、金属箔片が接着層135に接着され、装飾層136が形成される。
【0043】
続いて、装飾層136を被覆するように軟質樹脂層137が形成される(S4)。装飾層136の前面に、硬化後の鉛筆硬度がF以下となる合成樹脂塗料が塗布される。塗布された合成樹脂塗料が80度の温度下で2時間かけて硬化されることにより、軟質樹脂層137が形成される。
【0044】
続いて、軟質樹脂層137を被覆するように硬質樹脂層138が形成される(S5)。硬化された軟質樹脂層137の前面に、硬化後の鉛筆硬度がH以上である合成樹脂塗料が塗布される。塗布された合成樹脂塗料が80度の温度下で2時間かけて硬化されることにより、硬質樹脂層138が形成される。
【0045】
続いて、硬質樹脂層138を被覆するように保護層139が形成される(S6)。硬化された硬質樹脂層138の前面に、合成樹脂塗料が塗布される。塗布された合成樹脂塗料が80度の温度下で2時間かけて硬化されることにより、保護層139が形成される。硬化された後に、保護層139の表面が研磨されてもよい。
【0046】
以上説明したように、文字板13は、文字板の13の前面側に形成された、金属箔からなる装飾層136と、装飾層136を被覆する、透光性の軟質樹脂層137と、軟質樹脂層137を被覆する、軟質樹脂層137よりも硬い、透光性の硬質樹脂層138とを有する。これにより、文字板13は、金属箔が樹脂によって破断又は変形するおそれを低減しつつ、金属箔による加飾を可能とする。
【0047】
すなわち、文字板13は、装飾層136と硬質樹脂層138との間に軟質樹脂層137を有する。軟質樹脂層137は、硬質樹脂層138よりも軟らかいため、硬化時の熱収縮により金属箔の形状に与える影響が硬質樹脂層138よりも小さい。したがって、金属箔の破断又は変形のおそれが低減される。特に、軟質樹脂層137の鉛筆硬度がF以下である場合に、金属箔の破断又は変形のおそれが低減される。
【0048】
また、文字板13において、装飾層136は、接着層135を被覆するように複数の金属箔片を接着させることにより形成される。これにより、金属箔片のそれぞれの大きさが小さくなるため、金属箔の破断又は変形のおそれがさらに低減される。また、金属箔片の形状により模様が表現される。なお、装飾層136は、接着層135を被覆するように一枚の金属箔を貼り付けることによって形成されてもよい。
【0049】
また、文字板13において、接着層135は、漆と合成樹脂塗料とを含む塗料により形成される。これにより、漆の独特な質感が表現され、文字板13に高級感が与えられる。また、接着層135は、有色の塗料により形成される。これにより、接着層135の色が金属箔片により反射され、接着層135の色に応じた色味が表現される。
【0050】
また、文字板13において、硬質樹脂層138は、有色透明に形成される。これにより、透明感がある塗料を通して金属箔片が視認され、奥行きがある独特な見栄えが表現される。また、硬質樹脂層138の色に応じて多様な見栄えを表現することが可能となる。なお、文字板13は、複数の硬質樹脂層138を有してもよい。これにより、グラデーション等の表現が実現され、さらに多様な見栄えが表現される。
【0051】
上述した説明では、装飾層136は金属箔により形成されるものとしたが、このような例に限られない。例えば、装飾層136は、接着層135を被覆するように金属粒子を振りかけることにより形成されてもよい。これにより、光の反射により高級感のある見栄えが表現される。また、金属粒子に代えて、薄板状の雲母粒子の表面を二酸化チタンで被覆したパール顔料等の非金属が用いられてもよい。このように、装飾性を備える装飾部材を用いるならば、金属、非金属に限らず、あらゆる部材を装飾層に用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 時計
11 外装ケース
12 風防ガラス
13 文字板
133 基板
134 下地層
135 接着層
136 装飾層
137 軟質樹脂層
138 硬質樹脂層
139 保護層
14 ムーブメント
141 時針
142 分針
143 秒針
15 竜頭