(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ワーク搬送装置
(51)【国際特許分類】
B21D 43/05 20060101AFI20240517BHJP
B21D 43/10 20060101ALI20240517BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20240517BHJP
B21D 43/18 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
B21D43/05 U
B21D43/10 C
B25J11/00 D
B21D43/18 C
(21)【出願番号】P 2020133882
(22)【出願日】2020-08-06
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】394019082
【氏名又は名称】コマツ産機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明石 秀利
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-230995(JP,A)
【文献】特開2013-129007(JP,A)
【文献】特開昭62-064438(JP,A)
【文献】特開2017-030015(JP,A)
【文献】国際公開第2011/004644(WO,A1)
【文献】特開2019-018339(JP,A)
【文献】特開2005-211965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/05
B21D 43/10
B25J 11/00
B21D 43/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機械でプレス加工されるワークの搬送を行うワーク搬送装置であって、
ベース部と、
前記ワークを保持する保持部と、
前記ベース部に支持され、前記ワークの搬送の方向である搬送方向と上下方向とによって規定される平面内で動作することにより前記ベース部に対する前記保持部の相対位置を変更するように構成されたパラレルメカニズムと、
前記ベース部に搭載された、前記パラレルメカニズムを駆動させるための駆動力を発生するアクチュエータと、を備
え、
前記パラレルメカニズムは、互いに並列な第1アーム部と第2アーム部とを含み、
前記第1アーム部のねじり剛性が前記第2アーム部のねじり剛性よりも大きい、ワーク搬送装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記第1アーム部を前記ベース部に対して相対移動させる駆動力を前記第1アーム部に作用し、前記第1アーム部とは独立に前記第2アーム部を前記ベース部に対して相対移動させる駆動力を前記第2アーム部に作用する、請求項1に記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記ベース部は、前記搬送方向に移動可能に構成されている、請求項1
または請求項
2に記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
前記搬送方向に延び、前記ベース部を支持する案内レールをさらに備え、
前記ベース部は前記案内レールに沿って前記搬送方向に移動する、請求項
3に記載のワーク搬送装置。
【請求項5】
前記プレス機械は、前記上下方向に移動する金型と、前記金型が装着されるスライドと、前記上下方向に延びる柱部と、前記スライドを前記上下方向に移動可能に前記柱部に取り付ける取付部とを有し、
前記案内レールは、前記取付部の下方に配置される、請求項
4に記載のワーク搬送装置。
【請求項6】
前記案内レールは、前記プレス機械に固定されている、請求項5に記載のワーク搬送装置。
【請求項7】
前記案内レールは、前記平面に直交する方向から見て、前記スライドと重なる、請求項
5に記載のワーク搬送装置。
【請求項8】
前記ベース部に搭載され、前記第1アーム部と前記第2アーム部との両方を上方に付勢する1つの付勢部材をさらに備える、請求項
1に記載のワーク搬送装置。
【請求項9】
前記付勢部材はガススプリングである、請求項8に記載のワーク搬送装置。
【請求項10】
前記ガススプリングは、シリンダと、前記シリンダから突き出し前記ベース部に回転可能に連結されるロッドとを有し、
前記シリンダと前記第1アーム部とに連結され、長さが不変の第1連結部材と、前記シリンダと前記第2アーム部とに連結され、長さが不変の第2連結部材とをさらに備え、
前記ロッドは、前記シリンダから押し出される向きに付勢されている、請求項9に記載のワーク搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005-211965号公報(特許文献1)には、プレス機間でワークを自動的に搬送する搬送ロボットが開示されている。
【0003】
上記文献に記載の搬送ロボットは、第1プレス機および第2プレス機の一側および他側にそれぞれ配置された一対の駆動部と、両プレス機間の空間に延び一対の駆動部を結ぶクロスバーとを含む。各駆動部は、両プレス機を結ぶ方向に延びた案内部材と、その上を走行可能な走行部材と、その一端が走行部材に支持され他端が両プレス機を結ぶ方向に揺動可能な揺動部材とを含む。クロスバーはその一端および他端が各揺動部材の他端に結合され、中間部にワークを保持する保持部を持つ。揺動部材は、その一端が走行部材に支持された第1揺動部材と、その一端が第1揺動部材の他端に支持された第2揺動部材とを含む。第2揺動部材を揺動させるモータは、第2揺動部材の一端に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献に記載の搬送ロボットでは、揺動部材にモータが設けられる構成であるため、ワークの搬送速度を上げるためにモータを大型化しても、揺動部材の重量が増大することから搬送速度を十分に上げることができない。
【0006】
本開示では、ワークの搬送速度を向上し生産性を高めることが可能な、ワーク搬送装置が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従うと、プレス機械でプレス加工されるワークの搬送を行うワーク搬送装置が提案される。ワーク搬送装置は、ベース部と、ワークを保持する保持部と、パラレルメカニズムと、アクチュエータとを備えている。パラレルメカニズムは、ベース部に支持されている。パラレルメカニズムは、ワークの搬送の方向である搬送方向と上下方向とによって規定される平面内で動作することにより、ベース部に対する保持部の相対位置を変更するように、構成されている。アクチュエータは、パラレルメカニズムを駆動させるための駆動力を発生する。アクチュエータは、ベース部に搭載されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るワーク搬送装置によれば、ワークの搬送速度を向上し生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】
図4中に示される矢印V方向から見たワーク搬送装置の側面図である。
【
図6】
図4に示されるワーク搬送装置の、案内レールを除いた斜視図である。
【
図7】搬送方向の最上流位置にクロスバーを配置した状態の、第1駆動装置の側面図である。
【
図8】搬送方向の最下流位置にクロスバーを配置した状態の、第1駆動装置の側面図である。
【
図9】動作軌跡に沿ったクロスバーの移動を示す第1の図である。
【
図10】動作軌跡に沿ったクロスバーの移動を示す第2の図である。
【
図11】動作軌跡に沿ったクロスバーの移動を示す第3の図である。
【
図12】動作軌跡に沿ったクロスバーの移動を示す第4の図である。
【
図13】動作軌跡に沿ったクロスバーの移動を示す第5の図である。
【
図14】動作軌跡に沿ったクロスバーの移動を示す第6の図である。
【
図15】実施例および比較例のガススプリングによるアーム部に作用するトルクについて示すグラフである。
【
図16】第二実施形態の第1駆動装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
[第一実施形態]
図1は、実施形態に係るワーク搬送装置が適用される、ワークのプレス加工を行うプレス機械10の斜視図である。プレス機械10および後述するプレス機械20を含むプレスシステムでプレス加工されるワークは、たとえば、自動車用の外装パネルである。
図1に示されるように、プレス機械10は、スライド11と、ボルスタ13と、アプライト15とを主に備えている。
【0012】
アプライト15は、柱状の部材である。4本のアプライト15は、平面視において矩形の各頂点の位置に配置されている。4本のアプライト15によって、図示しないクラウンが支持されている。クラウンは4本のアプライトの上に配置されている。アプライト15は、実施形態の柱部に相当する。
【0013】
スライド11は、4本のアプライト15によって囲われるように配置されている。スライド11は、アプライト15の上のクラウンから吊り下げられ、クラウンに対して上下方向に移動可能とされている。スライド11の下端部には、
図1には図示しない上金型12が、着脱可能に装着される。スライド11は、4つのスライドアーム16によって、上下方向に移動可能にアプライト15に取り付けられている。スライドアーム16は、実施形態の取付部に相当する。4つのスライドアーム16によって、各々のアプライト15に対するスライド11の位置決めがなされている。スライドアーム16は、アプライト15に対して摺動可能である。
【0014】
図においては、ワークの搬送の方向である搬送方向Xと、アプライト15の延びる方向でありスライド11および上金型12の移動方向である上下方向Zと、搬送方向Xに直交しかつ上下方向Zに直交する方向である左右方向Yとを、それぞれ両矢印で示している。
【0015】
ボルスタ13は、4本のアプライト15によって囲われるように配置されている。ボルスタ13の上面には、
図1には図示しない下金型14が装着される。スライド11が上下方向Zに移動することで、上金型12がスライド11と一体に上下方向Zに移動して、上金型12は下金型14に対して接近および離隔する。上金型12と下金型14との間でワークが挟まれて、ワークがプレス加工される。
【0016】
図2は、複数のプレス機械と、プレス機械間のワークの搬送を行うワーク搬送装置100とを備える、プレスシステムの側面図である。
図2には、プレスシステムに含まれる複数のプレス機械のうちの2台のプレス機械10,20と、プレス機械10とプレス機械20との間に設けられ、搬送方向Xにおける上流側のプレス機械10から下流側のプレス機械20へワークを搬送するワーク搬送装置100とが図示されている。
【0017】
プレス機械10とプレス機械20とは、搬送方向Xに間隔を空けて並んで配置されている。プレス機械20は、
図1を参照して説明したプレス機械10と同様の、スライド21、上金型22、ボルスタ23、下金型24、4本のアプライト25、および4つのスライドアーム26を備えている。
【0018】
ワーク搬送装置100は、プレス機械10の上金型12および下金型14と、プレス機械20の上金型22および下金型24との間の、ワークの搬送を行う。プレス機械10の上金型12と下金型14との間で挟まれてプレス加工されたワークが、プレス機械10からプレス機械20へ受け渡されて、次にプレス機械20の上金型22と下金型24との間の間で挟まれてプレス加工される。プレス機械10,20を含む複数のプレス機械は、タンデムプレスラインを構成しており、ワークを順次加工する。
【0019】
図3は、
図2に示されるプレスシステムの平面図である。なお
図2には、
図3中に示される矢印II方向から見たプレスシステムの側面図が図示されている。
【0020】
ワーク搬送装置100は、左右方向Yの一方側に配置された第1駆動装置120と、左右方向Yの他方側に配置された第2駆動装置150とを備えている。第1駆動装置120は、搬送方向Xに延びる案内レール121を有している。第2駆動装置150は、搬送方向Xに延びる案内レール151を有している。案内レール121,151は、移動不能に構成されている。案内レール121,151は、たとえばプレス機械10,20のアプライト15,25に固定されている。搬送方向Xにおける案内レール121,151の長さは、プレス機械10,20の間隔よりも大きい。
【0021】
図2を併せて参照して、案内レール121,151は、スライドアーム16,26の下方に配置されている。案内レール121,151は、上下方向に移動可能なスライドアーム16,26の可動範囲の下限位置よりも下方に配置されている。
図3に示される平面視において、案内レール121,151は、スライドアーム16,26と重なっている。
【0022】
案内レール121,151は、プレス機械10のアプライト15を越えて延びている。案内レール121,151の搬送方向Xの上流端は、プレス機械10のアプライト15よりも搬送方向Xの上流側に位置する。プレス機械10の内部に、案内レール121,151の一部分が配置されている。案内レール121,151は、プレス機械20のアプライト25を越えて延びている。案内レール121,151の搬送方向Xの下流端は、プレス機械20のアプライト25よりも搬送方向Xの下流側に位置する。プレス機械20の内部に、案内レール121,151の一部分が配置されている。
【0023】
案内レール121,151は、プレス機械10のスライド11と、プレス機械20のスライド21とにわたって延びている。案内レール121,151は、プレス機械10の上金型12および下金型14と、プレス機械20の上金型22および下金型24との間にかけ渡されている。案内レール121,151は、搬送方向Xと上下方向Zとにより規定される平面に直交する方向から見て、すなわち左右方向Y(
図2においては紙面垂直方向)に見て、スライド11,21と重なっている。
【0024】
ワーク搬送装置100は、クロスバー180をさらに備えている。クロスバー180は、左右方向Yに延びている。クロスバー180は、案内レール121,151の下方に、案内レール121,151からは離れて配置されている。クロスバー180は、第1駆動装置120により支持される一端と、第2駆動装置150により支持される他端とを有している。クロスバー180は、第1駆動装置120と第2駆動装置150との間にかけ渡されている。
【0025】
クロスバー180は、一端と他端との間の中間部において、ワークを保持する。クロスバー180は、実施形態の保持部に相当する。クロスバー180は、たとえば中間部に真空カップを有しており、真空を利用してワークを吸着することでワークを保持することができる。
【0026】
プレス機械10でのワークのプレス加工が終了した後、クロスバー180が上金型12と下金型14との間に進入してワークを保持する。クロスバー180がワークを保持した状態で第1駆動装置120および第2駆動装置150がクロスバー180を所定の動作軌跡に沿って移動させることにより、プレス機械10からプレス機械20にワークが搬送される。プレス機械20の上金型22と下金型24との間にクロスバー180が進入してワークの保持を解除することで、プレス機械20にワークが引き渡される。
【0027】
図4は、ワーク搬送装置100の斜視図である。
図5は、
図4中に示される矢印V方向から見たワーク搬送装置100の側面図である。
図6は、
図4に示されるワーク搬送装置100の、案内レール121,151を除いた斜視図である。
【0028】
第1駆動装置120は、ベース部122を有している。ベース部122は、案内レール121に支持されている。
図4~6に示されるベース部122は、案内レール121の下面に取り付けられており、案内レール121から吊り下げられている。ベース部122は、案内レール121の上面に搭載されてもよく、案内レール121の側面に取り付けられてもよい。
【0029】
ベース部122は、案内レール121に沿って、ワークの搬送の方向である搬送方向Xに移動可能に構成されている。モータなどの図示しない駆動源からベース部122に走行駆動力が伝達されることにより、ベース部122は案内レール121に対して相対移動する。ベース部122は、案内レール121の一端と他端との間を往復移動する。
【0030】
ベース部122に走行駆動力を伝達する動力伝達装置は、ラックピニオン機構、タイミングベルト、またはボールスクリューを含んでもよい。ベース部122を移動させる駆動源は、リニアモータであってもよい。
【0031】
第1駆動装置120は、パラレルメカニズム123を有している。パラレルメカニズム123はベース部122に支持されている。パラレルメカニズム123は、互いに並列な第1アーム部124と第2アーム部132とを含んでいる。
【0032】
第1アーム部124は、レバー125と、リンク126とを有している。レバー125は、ベース部122に対して相対回転可能に、ベース部122に取り付けられている。レバー125は、ベース部122に取り付けられている基端と、基端と反対側の先端とを有している。リンク126は、レバー125に対して相対回転可能に、レバー125に取り付けられている。リンク126は、レバー125の先端に取り付けられている基端と、基端と反対側の先端とを有している。リンク126の先端に、クロスバー180が取り付けられている。クロスバー180は、パラレルメカニズム123の先端部分に支持されている。
【0033】
第2アーム部132は、レバー133と、リンク134とを有している。レバー133は、ベース部122に対して相対回転可能に、ベース部122に取り付けられている。レバー133は、ベース部122に取り付けられている基端と、基端と反対側の先端とを有している。リンク134は、レバー133に対して相対回転可能に、レバー133に取り付けられている。リンク134は、レバー133の先端に取り付けられている基端と、基端と反対側の先端とを有している。リンク134の先端は、リンク126の先端に、リンク126に対して相対回転可能に連結されている。リンク134の先端はクロスバー180に連結されておらず、リンク126に連結されている。リンク134の先端がクロスバー180に直接連結されていてもよい。
【0034】
第1アーム部124のレバー125およびリンク126と、第2アーム部132のレバー133およびリンク134とは、ベース部122からクロスバー180まで並列に連結された多関節のリンク機構を構成している。パラレルメカニズム123は、並列の2本の第1アーム部124および第2アーム部132を介して、1本のクロスバー180を移動させる。
【0035】
第1アーム部124のレバー125は、第2アーム部132のレバー133よりも厚みが大きく形成されている。第1アーム部124のリンク126は、第2アーム部132のリンク134よりも径が大きく形成されている。これにより、第1アーム部124のねじり剛性が、第2アーム部132のねじり剛性よりも大きくされている。
【0036】
ベース部122には、アクチュエータが搭載されている。アクチュエータは、モータ128と、モータ136とを含む。アクチュエータは、パラレルメカニズム123を駆動させるための駆動力を発生する。
【0037】
モータ128,136は、ベース部122に搭載されており、第1アーム部124および第2アーム部132とはベース部122の反対側に配置されている。モータ128と第1アーム部124との間にベース部122が位置し、モータ136と第2アーム部132との間にベース部122が位置する。モータ128,136の重量は、ベース部122を介して、案内レール121によって支えられている。モータ128の重量は第1アーム部124に作用せず、モータ136の重量は第2アーム部132に作用しない。
【0038】
モータ128は、第1アーム部124をベース部122に対して相対移動させる駆動力を、第1アーム部124に作用する。モータ128の発生する駆動力は、図示しない減速機によって回転数が低減されトルクが増大された後に、第1アーム部124に伝達される。モータ136は、第1アーム部124とは独立に第2アーム部132をベース部122に対して相対移動させる駆動力を、第2アーム部132に作用する。モータ136の発生する駆動力は、図示しない減速機によって回転数が低減されトルクが増大された後に、第2アーム部132に伝達される。
【0039】
モータ128,136は、パラレルメカニズム123を駆動させるための駆動力を発生するアクチュエータであり、ベース部122に搭載されている。パラレルメカニズム123を駆動させるための駆動力を発生するアクチュエータは、第1アーム部124および第2アーム部132には搭載されていない。
【0040】
パラレルメカニズム123は、モータ128,136の駆動力を受けて、搬送方向Xと上下方向Zとによって規定される平面内で動作可能である。パラレルメカニズム123を構成する第1アーム部124と第2アーム部132とは、
図5においては紙面と平行に移動する。パラレルメカニズム123が動作することにより、リンク126の先端に取り付けられているクロスバー180の、ベース部122に対する相対位置が変更される。
【0041】
第1駆動装置120は、1つのガススプリング141を有している。ガススプリング141は、ベース部122に搭載されている。
【0042】
具体的には、ガススプリング141は、シリンダ142と、ロッド143とを有している。シリンダ142の内部に密閉空間が形成されており、この密閉空間には高圧ガスが封入されている。ロッド143の一方の端部は、シリンダ142の密閉空間内に配置されているピストンに連結されており、ロッド143の他方の端部は、シリンダ142から突き出しシリンダ142の外部に配置されている。ロッド143の他方の端部は、ベース部122に回転可能に連結されている。
【0043】
ガススプリング141のシリンダ142には、第1連結部材146と、第2連結部材147とが連結されている。第1連結部材146は、第1アーム部124のレバー125に連結されている。第2連結部材147は、第2アーム部132のレバー133に連結されている。第1連結部材146と第2連結部材147とは、長さが不変の剛体として形成されている。
【0044】
シリンダ142は、ロッド143がシリンダ142から突き出る一方の端部と、他方の端部とを有しており、第1連結部材146と第2連結部材147とはシリンダ142の他方の端部に連結されている。ガススプリング141は、全体として、ベース部122に取り付けられている一端144と、第1連結部材146および第2連結部材147が連結されている他端145とを有している。
【0045】
ロッド143は、シリンダ142内の高圧ガスによって、シリンダ142から押し出される方向に付勢されている。ガススプリング141は、全体として、一端144から他端145までの長さを大きくする方向に付勢されている。他端145がベース部122から離れる方向にガススプリング141が付勢されることで、他端145に連結されている第1連結部材146および第2連結部材147が上方に付勢される。これに伴い、第1連結部材146に連結されているレバー125と、第2連結部材147に連結されているレバー133とが、上方に付勢される。ガススプリング141は、第1アーム部124と第2アーム部132との両方を上方に付勢する、付勢部材としての機能を有している。
【0046】
第2駆動装置150は、第1駆動装置120と同じ構成を有しており、第1駆動装置120を180°反転させた配置とされている。
図4,6に示されるように、第2駆動装置150の各構成には、対応する第1駆動装置120の構成に付された参照番号に30を加えた参照番号が付されている。第2駆動装置150の構成の詳細な説明は、第1駆動装置120の説明と重複するため、省略する。
【0047】
クロスバー180は、ベース部122,152の案内レール121,151に対する搬送方向Xの相対往復移動と、パラレルメカニズム123,153によるベース部122,152に対するクロスバー180の移動との合成運動によって、一定の動作軌跡に沿って移動する。
【0048】
図7は、搬送方向Xの最上流位置にクロスバー180を配置した状態の、第1駆動装置120の側面図である。ベース部122が案内レール121に沿って搬送方向Xの最上流位置にまで移動し、その位置で第1アーム部124のレバー125を
図7中の時計回り方向に移動させるようにモータ128を駆動させ、第2アーム部132のレバー133を
図7中の時計回り方向に移動させるようにモータ136を駆動させる。これにより、クロスバー180が、
図7に示されるように搬送方向Xの最上流位置に配置される。
【0049】
このときクロスバー180は、プレス機械10の上金型12と下金型14との間に進入している。プレス機械10でプレス加工された後のワークを、クロスバー180が真空カップ等を用いて保持することで、ワーク搬送装置100は、プレス機械10からワークを搬出することができる。
【0050】
図8は、搬送方向Xの最下流位置にクロスバー180を配置した状態の、第1駆動装置120の側面図である。ベース部122が案内レール121に沿って搬送方向Xの最下流位置にまで移動し、その位置で第1アーム部124のレバー125を
図8中の反時計回り方向に移動させるようにモータ128を駆動させ、第2アーム部132のレバー133を
図8中の反時計回り方向に移動させるようにモータ136を駆動させる。これにより、クロスバー180が、
図8に示されるように搬送方向Xの最下流位置に配置される。
【0051】
このときクロスバー180は、プレス機械20の上金型22と下金型24との間に進入している。この位置でクロスバー180によるワークの保持を解除することで、ワーク搬送装置100によって搬送されたワークが、プレス機械20に搬入される。これにより、プレス機械20がワークの次のプレス加工を行うことが可能になる。
【0052】
図9~
図14は、所定の動作軌跡Tに沿ったクロスバー180の移動を示す図である。
図9~
図14には、
図7,8と同様の側面視した第1駆動装置120の、案内レール121と、第1アーム部124および第2アーム部132とが、模式的に図示されている。なお
図9には、
図7に示される第1アーム部124および第2アーム部132の配置が模式的に示されており、
図13には、
図8に示される第1アーム部124および第2アーム部132の配置が模式的に図示されている。
【0053】
図9~
図14に示される点P1は、ベース部122とレバー125との連結点を示し、レバー125のベース部122に対する回転中心を示す。点P2は、レバー125とリンク126との連結点を示し、リンク126のレバー125に対する回転中心を示す。点P3は、レバー125とクロスバー180との連結点を示す。点P4は、ベース部122とレバー133との連結点を示し、レバー133のベース部122に対する回転中心を示す。点P5は、レバー133とリンク134との連結点を示し、リンク134のレバー133に対する回転中心を示す。点P6は、リンク126とリンク134との連結点を示す。
図9~
図14中に二点鎖線で示される動作軌跡Tは、ベース部122およびパラレルメカニズム123によるクロスバー180の移動の軌跡を示す。
【0054】
クロスバー180を
図9に示される搬送方向Xの最上流位置に移動させて、プレス機械10で加工が終了したワークを、クロスバー180で保持する。
図10に示されるように、ベース部122を搬送方向Xの下流側へ移動させ、レバー125を図中の反時計回り方向に移動させ、レバー133を図中の時計回り方向に移動させることで、クロスバー180に保持されたワークが持ち上げられて、プレス機械10から取り出される。
【0055】
図11,12に示されるように、ベース部122を搬送方向Xの下流側へ移動させ、レバー125を図中の反時計回り方向に移動させ、レバー133を図中の反時計回り方向に移動させることで、クロスバー180に保持された状態のワークがプレス機械20に向かって搬送される。クロスバー180を
図13に示される搬送方向Xの最下流位置に移動させ、レバー125およびレバー133を図中の時計回り方向に移動させてクロスバー180によるワークの保持を解除することで、ワークがプレス機械20の下金型24に置かれる。
【0056】
プレス機械20にワークを搬入後、
図14に示されるように、ベース部122を搬送方向Xの上流側へ移動させ、レバー125を図中の時計回り方向に移動させ、レバー133を図中の時計回り方向に移動させることで、次のワークの搬送のためにクロスバー180が搬送方向Xの上流側へと移動する。
【0057】
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0058】
実施形態のワーク搬送装置100は、
図5に示されるように、ベース部122と、パラレルメカニズム123とを備えている。パラレルメカニズム123は、ベース部122に支持されている。パラレルメカニズム123は、搬送方向Xと上下方向Zとにより規定される平面内で動作することにより、ベース部122に対するクロスバー180の相対位置を変更するように構成されている。ワーク搬送装置100はさらに、
図6に示されるように、モータ128,136を備えている。モータ128,136は、ベース部122に搭載されている。モータ128,136は、パラレルメカニズム123を駆動させるための駆動力を発生する。
【0059】
クロスバー180を移動させるための機構としてパラレルメカニズム123を利用することで、パラレルメカニズム123を駆動させるためのモータ128,136を、ベース部122に搭載することが可能になる。モータ128,136がベース部122によって支えられ、モータ128,136の重量がパラレルメカニズム123の第1アーム部124および第2アーム部132に作用しない構成とされている。モータ128,136によって駆動されるパラレルメカニズム123の重量増大が回避されており、パラレルメカニズム123を容易に駆動させることが可能とされている。したがって、パラレルメカニズム123の先端のクロスバー180に保持されたワークの搬送速度を向上することができ、プレス機械10,20の生産性を高めることができる。
【0060】
図5に示されるように、パラレルメカニズム123は、互いに並列な第1アーム部124と第2アーム部132とを含んでいる。
図7,8に示されるように、モータ128は、第1アーム部124をベース部122に対して相対移動させる駆動力を、第1アーム部124に作用する。モータ136は、第2アーム部132をベース部122に対して相対移動させる駆動力を、第2アーム部132に作用する。これにより、ベース部122に搭載されたモータ128で第1アーム部124を駆動させることができ、ベース部122に搭載されたモータ136で第2アーム部132を駆動させることができる。
【0061】
図5に示されるように、第1アーム部124のねじり剛性が、第2アーム部132のねじり剛性よりも大きくされている。このようにすれば、パラレルメカニズム123の必要なねじり剛性を確保でき、かつ、第1アーム部124のねじり剛性と第2アーム部132のねじり剛性とを等しくするよりも、パラレルメカニズム123全体としての重量を低減でき、コストを低減できる。したがって、パラレルメカニズム123の適正化を達成することができる。
【0062】
図7,8に示されるように、ベース部122は、搬送方向Xに移動可能に構成されている。ベース部122が搬送方向Xに移動できない構成の場合、金型間でのワークの搬送を実現するには、パラレルメカニズム123の第1アーム部124および第2アーム部132を長く伸ばすことが必要となる。ベース部122が移動可能であることで、ベース部122に支持されているパラレルメカニズム123が、全体として搬送方向Xに移動可能とされている。パラレルメカニズム123の第1アーム部124および第2アーム部132の長さを短くしても、プレス機械10の金型12,14とプレス機械20の金型22,24との間でワークを搬送することが可能になる。
【0063】
第1アーム部124および第2アーム部132の長さを短くすることで、第1アーム部124および第2アーム部132のねじり剛性が高められ、クロスバー180の振動を低減できる。ワーク搬送装置100を小型化できるので、コストの低減を実現できる。ワーク搬送装置100とプレス機械10,20との干渉を容易に回避することができ、プレスシステムの信頼性を向上することができる。さらに、既存のプレスシステムのワーク搬送装置を更新するレトロフィットに適したワーク搬送装置100を実現することができる。
【0064】
図7,8に示されるように、ベース部122は、搬送方向Xに延びる案内レール121に沿って、搬送方向Xに移動する。ベース部122の移動の間、ベース部122に搭載されたモータ128,136の重量が案内レール121によって支えられることにより、モータ128,136の重量がパラレルメカニズム123に作用しない構成を確実に実現することができる。
【0065】
図2,3に示されるように、案内レール121は、スライドアーム16,26の下方に配置されている。ワーク搬送装置100とプレス機械10,20との干渉が確実に回避されることで、プレス機械10,20によるプレス加工の生産性を確保することが可能になる。
【0066】
図2に示されるように、案内レール121は、左右方向Yに見て、スライド11,21と重なっている。案内レール121に沿ったベース部122の搬送方向Xの移動距離がより大きくなることで、パラレルメカニズム123の第1アーム部124および第2アーム部132の長さをより短くすることができる。したがって、ワーク搬送装置100をより小型化することができる。
【0067】
図5に示されるように、ベース部122に搭載された1つのガススプリング141が、第1アーム部124と第2アーム部132との両方を上方に付勢している。
【0068】
図15は、実施例および比較例のガススプリングによるアーム部に作用するトルクについて示すグラフである。
図15に示されるグラフの横軸は、第1アーム部124のレバー125の角度を示す。レバー125の延在方向が上下方向Zの下方向に一致するときを角度0°とし、側方視したレバー125が下方向から図中の反時計回り方向に移動した範囲を正の角度範囲とする。
図15に示されるグラフの縦軸のバランストルクとは、レバー125に作用する、レバー125を上方へ付勢するトルクの大きさを示す。バランストルクが大きいほど、ガススプリングの、レバー125を上方へ持ち上げるカウンタバランサとしての機能が大きいことになる。
【0069】
図15中に実線で示す実施例は、1つのガススプリング141が第1アーム部124と第2アーム部132との両方を上方に付勢する、実施形態の構成を示す。
図15中に破線で示す比較例は、第1アーム部124を上方に付勢するガススプリングと、第2アーム部132を上方に付勢するガススプリングとを、別々に設ける例を示す。
【0070】
図15に示されるように、実施例では、角度範囲の全域に亘って、一定以上の大きさのトルクを発生することができている。全体として、比較例よりも実施例のほうがバランストルクが大きくなっている。比較例では、バランストルクがマイナスになる角度範囲があり、カウンタバランサとして機能しない場合がある。したがって、比較例よりも実施例が、カウンタバランサとしてより優れている。
【0071】
パラレルメカニズム123を構成する第1アーム部124と第2アーム部132との両方を1つのガススプリング141が上方に付勢する構成とすることで、必要なガススプリング141のストロークを小さくできる。ガススプリング141を小型化するか、または、ガススプリング141のストロークを従来と同じにしてより離れた位置に支点を位置させることでトルクを増大させることが可能になる。
【0072】
ガススプリング141の使用条件が緩和されるので、ガススプリング141を長寿命化し、または小型化することができる。モータ128,136の負荷が低減され、より緩和された条件でモータ128,136を運転できるので、モータ128,136を長寿命化し、または小型化することができる。第1アーム部124および第2アーム部132を持ち上げる効果で、減速機に作用する第1アーム部124および第2アーム部132の自重を小さくできるので、減速機を長寿命化し、または小型化することができる。
【0073】
図5に示されるように、ガススプリング141は、シリンダ142と、シリンダ142から突き出るロッド143とを有している。ロッド143はベース部122に回転可能に連結されている。第1連結部材146は、シリンダ142と第1アーム部124とに連結されている。第2連結部材147は、シリンダ142と第2アーム部132とに連結されている。ロッド143は、シリンダ142から押し出される向きに付勢されている。このようにすれば、第1連結部材146および第2連結部材147を介して、第1アーム部124および第2アーム部132に上方へ持ち上がる向きの力を確実に作用することができる。
【0074】
第1アーム部124および第2アーム部132を上方に付勢する付勢部材は、ガススプリング141に限られるものではない。ガススプリング141に替えて、油圧シリンダと油圧シリンダのボトム側に接続されたアキュムレータとを備える装置が用いられてもよい。油圧シリンダのロッドがシリンダ内に押し込まれると、油圧シリンダのボトム側に封入されている作動油が、アキュムレータに押し出される。アキュムレータに封入されたガスで作動油が押し戻されることで、油圧シリンダのロッドが、シリンダから押し出される向きに付勢される。
【0075】
[第二実施形態]
図16は、第二実施形態の第1駆動装置120の側面図である。第二実施形態では、ベース部が搬送方向Xに2つに分離されている。第1アーム部124は、搬送方向Xの下流側の第1のベース部122Aに支持されている。第2アーム部132は、搬送方向Xの上流側の第2のベース部122Bに支持されている。
図16には図示しないモータ128,136は、それぞれ、ベース部122A,122Bに搭載されている。
【0076】
このような構成としても、モータ128,136の重量をパラレルメカニズム123の第1アーム部124および第2アーム部132に作用させない上述した作用効果を、同様に得ることができる。
【0077】
ベース部122Aとベース部122Bとを独立して搬送方向Xに移動可能とすることで、第1アーム部124および第2アーム部132が上方に突き出ることを抑制できる。たとえば、
図10に示される点P4を搬送方向Xのより下流側に位置させることで、点P5の上下方向の位置を下げることができる。
図12に示される点P1を搬送方向Xのより上流側に位置させることで、点P2の上下方向の位置を下げることができる。したがって、第1アーム部124および第2アーム部132とプレス機械10,20との干渉をより確実に回避できるので、プレス機械10,20によるプレス加工の生産性を向上することができ、プレスシステムの信頼性を向上することができる。
【0078】
これまでの実施形態の説明においては、パラレルメカニズム123を構成する第1アーム部124の、リンク126の先端にクロスバー180が取り付けられる例について説明した。この例に限られず、リンク126の先端に直列なリンクが連結されて、当該リンクの先端にクロスバー180が取り付けられる、並列機構と直列機構とが混在するハイブリッド型のリンク機構を適用したワーク搬送装置100としてもよい。この場合、直列機構を駆動させるためのモータが、リンク126の先端に搭載されてもよい。このようにしても、並列機構を駆動させるためのモータはベース部に搭載されていることで、リンク機構の重量増大が抑制される効果を得ることができる。
【0079】
実施形態では、左右方向Yの両側に配置された第1駆動装置120と第2駆動装置150とで、クロスバー180の両端を支持する例について説明した。クロスバー180を支持する駆動装置は、必ずしも一対設けられなくてもよく、1つの駆動装置がクロスバー180の一箇所を支持する構成としてもよい。
【0080】
また、ワーク搬送装置100が必ずしもクロスバー180を備える必要はなく、パラレルメカニズム123の先端部分および/またはパラレルメカニズム153の先端部分に左右方向Yに進退可能なフィンガーを備え、フィンガーによってワークを保持するようにしてもよい。左右方向Yに進退可能なフィンガーもまた、保持部に相当する。
【0081】
または、駆動装置のパラレルメカニズムの先端部分に、クロスバーを介さずに真空カップを装着するようにしてもよい。
【0082】
実施形態では、ワーク搬送装置100が、タンデムプレスラインを構成するプレス機械10,20間のワークの搬送を行う例について説明した。実施形態のワーク搬送装置100は、トランスファープレスラインにおける、1台のプレス機械内に配置された複数の金型間でのワークの搬送を行うために、適用されてもよい。
【0083】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
10,20 プレス機械、11,21 スライド、12,22 上金型、13,23 ボルスタ、14,24 下金型、15,25 アプライト、16,26 スライドアーム、100 ワーク搬送装置、120 第1駆動装置、121,151 案内レール、122,122A,122B,152 ベース部、123,153 パラレルメカニズム、124 第1アーム部、125,133 レバー、126,134 リンク、128,136 モータ、132 第2アーム部、141 ガススプリング、142 シリンダ、143 ロッド、144 一端、145 他端、146,147 連結部材、150 第2駆動装置、180 クロスバー。