(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
F24C 3/12 20060101AFI20240517BHJP
F24C 3/02 20210101ALI20240517BHJP
【FI】
F24C3/12 E
F24C3/02 H
F24C3/12 K
(21)【出願番号】P 2020137678
(22)【出願日】2020-08-17
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】柴山 総一郎
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-073256(JP,A)
【文献】特開2019-143919(JP,A)
【文献】実開昭54-026138(JP,U)
【文献】特開2002-122324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
F24C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親バーナと該親バーナよりも最大火力が小さな子バーナとが同軸上に配置された親子バーナを用いて、調理容器を加熱するガスコンロにおいて、
前記親子バーナに燃料ガスを供給すると共に、分岐位置で2つの接続通路に分岐して、一方の前記接続通路は前記親バーナに接続され、他方の前記接続通路は前記子バーナに接続されたガス供給通路と、
前記分岐位置よりも上流側の前記ガス供給通路に設けられて、前記燃料ガスのガス流量を調節するガス流量調節手段と、
前記分岐位置または2つの前記接続通路に設けられて、前記親バーナと前記子バーナとの間での前記燃料ガスの分配比率を変更する分配比率変更手段と、
前記ガスコンロの使用者によって設定された設定火力に応じて、前記ガス流量調節手段および前記分配比率変更手段を制御する制御手段と
、
前記調理容器が載置される五徳と、
前記親バーナで形成された炎が前記調理容器から溢れる炎溢れ状態の有無を監視する炎溢れ状態監視手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記炎溢れ状態が検知された場合には、前記設定火力の増加に伴って前記子バーナへの分配比率が増加するように前記分配比率変更手段を制御可能となっている
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスコンロにおいて、
前記制御手段は、
前記子バーナへの前記分配比率を増加させる際に、前記親バーナおよび前記子バーナに供給される燃料ガスの合計のガス流量を維持したままで、前記子バーナへの前記分配比率を増加させる
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項3】
親バーナと該親バーナよりも最大火力が小さな子バーナとが同軸上に配置された親子バーナを用いて、調理容器を加熱するガスコンロにおいて、
前記親子バーナに燃料ガスを供給すると共に、分岐位置で2つの接続通路に分岐して、一方の前記接続通路は前記親バーナに接続され、他方の前記接続通路は前記子バーナに接続されたガス供給通路と、
前記分岐位置よりも上流側の前記ガス供給通路に設けられて、前記燃料ガスのガス流量を調節するガス流量調節手段と、
前記分岐位置または2つの前記接続通路に設けられて、前記親バーナと前記子バーナとの間での前記燃料ガスの分配比率を変更する分配比率変更手段と、
前記ガスコンロの使用者によって設定された設定火力に応じて、前記ガス流量調節手段および前記分配比率変更手段を制御する制御手段と、
前記調理容器が載置される五徳と、
前記五徳上に載置された調理容器の大きさを検出する検出手段と、
前記親バーナで形成された炎が前記調理容器から溢れる炎溢れ状態となる前記設定火力である炎溢れ火力を、前記調理容器の大きさに基づいて決定する炎溢れ火力決定手段と
を備え、
前記制御手段は、前記設定火力が前記炎溢れ火力を超える場合には、前記設定火力が増加しても、前記親バーナへの前記ガス流量が前記炎溢れ火力時の前記ガス流量に保たれるように前記分配比率変更手段を制御可能となっている
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項4】
親バーナと該親バーナよりも最大火力が小さな子バーナとが同軸上に配置された親子バーナを用いて、調理容器を加熱するガスコンロにおいて、
前記親子バーナに燃料ガスを供給すると共に、分岐位置で2つの接続通路に分岐して、一方の前記接続通路は前記親バーナに接続され、他方の前記接続通路は前記子バーナに接続されたガス供給通路と、
前記分岐位置よりも上流側の前記ガス供給通路に設けられて、前記燃料ガスのガス流量を調節するガス流量調節手段と、
前記分岐位置または2つの前記接続通路に設けられて、前記親バーナと前記子バーナとの間での前記燃料ガスの分配比率を変更する分配比率変更手段と、
前記ガスコンロの使用者によって設定された設定火力に応じて、前記ガス流量調節手段および前記分配比率変更手段を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記設定火力が所定の閾値以下の場合は、前記設定火力の増加に伴って前記親バーナへの分配比率が増加するように前記分配比率変更手段を制御し、
前記設定火力が前記閾値よりも大きい場合は、前記設定火力の増加に伴って前記子バーナへの分配比率が増加するように前記分配比率変更手段を制御する
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載のガスコンロにおいて、
少なくとも前記親バーナに供給される一次空気の空気流量を調節する一次空気流量調節手段を備え、
前記制御手段は、前記燃料ガスの分配比率を変更する際に、前記一次空気流量調節手段を用いて前記一次空気の空気流量も調節する
ことを特徴とするガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親バーナと、親バーナよりも最大火力が小さな子バーナとが同軸上に配置された親子バーナを搭載するガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
親バーナと、親バーナよりも最大火力の小さな子バーナとが同軸上に配置された親子バーナは広く使用されている。この親子バーナを搭載したガスコンロは、子バーナが単独で燃焼する状態(単独燃焼状態)と、親バーナおよび子バーナが同時に燃焼する状態(同時燃焼状態)とを切り換えることで、広い火力範囲を実現することが可能である。ここで、単独燃焼状態と同時燃焼状態との切り換えは、次のようにして実現されている。先ず、親子バーナに燃料ガスを供給するガス供給通路を途中で2つの接続通路に分岐させ、一方の接続通路はそのまま子バーナに接続し、他方の接続通路は開閉弁を介して親バーナに接続する。こうすれば、開閉弁を閉じた状態では燃料ガスが親バーナには供給されないので子バーナが単独で燃焼するが、開閉弁を開くと燃料ガスが親バーナにも供給されるので、親バーナおよび子バーナが同時に燃焼する状態となる。また、親バーナや子バーナに供給されるガス流量は、分岐位置よりも上流側のガス供給通路に設けたガス流量調節弁を用いて調節するようになっている。
【0003】
このように親子バーナを搭載したガスコンロでは、小火力から大火力までの広い火力範囲を実現可能であるが、加熱しようとする調理容器が小径であった場合には、炎が調理容器の底部から溢れた状態(いわゆる炎溢れ状態)となる。炎溢れ状態になると、調理容器を効率よく加熱することが出来なくなり、更に、調理容器の取手などが炎で炙られて熱くなるため使用者に不快な思いをさせてしまう虞がある。このような問題を回避するために、調理容器の大きさを検出してガスコンロの最大火力を制限する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した提案されている技術では、調理容器の大きさによって最大火力が制限されてしまうので、広い火力範囲を実現できるという親子バーナの利点を活かすことができないという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、親子バーナの最大火力を制限することなく、炎溢れ状態となる事態を抑制することが可能なガスコンロを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の第1のガスコンロは次の構成を採用した。すなわち、
親バーナと該親バーナよりも最大火力が小さな子バーナとが同軸上に配置された親子バーナを用いて、調理容器を加熱するガスコンロにおいて、
前記親子バーナに燃料ガスを供給すると共に、分岐位置で2つの接続通路に分岐して、一方の前記接続通路は前記親バーナに接続され、他方の前記接続通路は前記子バーナに接続されたガス供給通路と、
前記分岐位置よりも上流側の前記ガス供給通路に設けられて、前記燃料ガスのガス流量を調節するガス流量調節手段と、
前記分岐位置または2つの前記接続通路に設けられて、前記親バーナと前記子バーナとの間での前記燃料ガスの分配比率を変更する分配比率変更手段と、
前記ガスコンロの使用者によって設定された設定火力に応じて、前記ガス流量調節手段および前記分配比率変更手段を制御する制御手段と、
前記調理容器が載置される五徳と、
前記親バーナで形成された炎が前記調理容器から溢れる炎溢れ状態の有無を監視する炎溢れ状態監視手段と
を備え、
前記制御手段は、前記炎溢れ状態が検知された場合には、前記設定火力の増加に伴って前記子バーナへの分配比率が増加するように前記分配比率変更手段を制御可能となっている
ことを特徴とする。
【0008】
かかる本発明の第1のガスコンロにおいては、燃料ガスを供給するガス供給通路が2つの接続通路に分岐して、一方の接続通路は親バーナに接続され、他方の接続通路は子バーナに接続されている。また、ガス供給通路を流れる燃料ガスのガス流量や、燃料ガスの親バーナおよび子バーナへの分配比率は、ガスコンロの使用者によって設定された設定火力に応じて制御されている。そして、親バーナで形成された炎が五徳上の調理容器から溢れる炎溢れ状態の有無を監視しておき、炎溢れ状態が検知された場合には、設定火力の増加に伴って子バーナへの分配比率を増加させることも可能となっている。
【0009】
子バーナへの分配比率を増加させれば、子バーナの炎は大きくなり、それに伴って親バーナの炎は小さくなる。従って、親バーナの炎が調理容器から溢れる炎溢れ状態が検知された場合には、燃料ガスの子バーナへの分配比率を増加させるようにしておけば、親バーナの炎を小さくすることによって炎溢れ状態となることを防止することが可能となる。また、子バーナへの分配比率を増加させることによって親バーナの炎を小さくしているため、親バーナの炎を小さくすると、その分だけ子バーナの炎が大きくなる。このため、親子バーナ全体としての火力が低下することがなく、最大火力が制限されることも無い。
【0010】
また、上述した本発明の第1のガスコンロにおいては、子バーナへの分配比率を増加させる際に、親バーナおよび子バーナに供給される燃料ガスの合計のガス流量を維持したままで、子バーナへの分配比率を増加させることとしてもよい。
【0011】
こうすれば、親バーナでの炎溢れ状態を解消するために親バーナの炎を小さくしても、親バーナおよび子バーナの全体での火力は変わらないので、ガスコンロの使用者に違和感を与えることが無い。
【0012】
前述した課題を解決するために、本発明の第2のガスコンロは次の構成を採用した。すなわち、
親バーナと該親バーナよりも最大火力が小さな子バーナとが同軸上に配置された親子バーナを用いて、調理容器を加熱するガスコンロにおいて、
前記親子バーナに燃料ガスを供給すると共に、分岐位置で2つの接続通路に分岐して、一方の前記接続通路は前記親バーナに接続され、他方の前記接続通路は前記子バーナに接続されたガス供給通路と、
前記分岐位置よりも上流側の前記ガス供給通路に設けられて、前記燃料ガスのガス流量を調節するガス流量調節手段と、
前記分岐位置または2つの前記接続通路に設けられて、前記親バーナと前記子バーナとの間での前記燃料ガスの分配比率を変更する分配比率変更手段と、
前記ガスコンロの使用者によって設定された設定火力に応じて、前記ガス流量調節手段および前記分配比率変更手段を制御する制御手段と、
前記調理容器が載置される五徳と、
前記五徳上に載置された調理容器の大きさを検出する検出手段と、
前記親バーナで形成された炎が前記調理容器から溢れる炎溢れ状態となる前記設定火力である炎溢れ火力を、前記調理容器の大きさに基づいて決定する炎溢れ火力決定手段と
を備え、
前記制御手段は、前記設定火力が前記炎溢れ火力を超える場合には、前記設定火力が増加しても、前記親バーナへの前記ガス流量が前記炎溢れ火力時の前記ガス流量に保たれるように前記分配比率変更手段を制御可能となっている
ことを特徴とする。
【0013】
かかる本発明の第2のガスコンロにおいては、調理容器の大きさに基づいて炎溢れ火力を決定しておく。そして、設定火力が炎溢れ火力を超える場合には、子バーナへの分配比率を増加させることで、親バーナへのガス流量を、炎溢れ火力時のガス流量に保つようにする。こうすれば、炎溢れ状態になるか否かを監視しておかなくても、炎溢れ状態となることを防止することが可能となる。
【0014】
前述した課題を解決するために、本発明の第3のガスコンロは次の構成を採用した。すなわち、
親バーナと該親バーナよりも最大火力が小さな子バーナとが同軸上に配置された親子バーナを用いて、調理容器を加熱するガスコンロにおいて、
前記親子バーナに燃料ガスを供給すると共に、分岐位置で2つの接続通路に分岐して、一方の前記接続通路は前記親バーナに接続され、他方の前記接続通路は前記子バーナに接続されたガス供給通路と、
前記分岐位置よりも上流側の前記ガス供給通路に設けられて、前記燃料ガスのガス流量を調節するガス流量調節手段と、
前記分岐位置または2つの前記接続通路に設けられて、前記親バーナと前記子バーナとの間での前記燃料ガスの分配比率を変更する分配比率変更手段と、
前記ガスコンロの使用者によって設定された設定火力に応じて、前記ガス流量調節手段および前記分配比率変更手段を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記設定火力が所定の閾値以下の場合は、前記設定火力の増加に伴って前記親バーナへの分配比率が増加するように前記分配比率変更手段を制御し、
前記設定火力が前記閾値よりも大きい場合は、前記設定火力の増加に伴って前記子バーナへの分配比率が増加するように前記分配比率変更手段を制御する
ことを特徴とする。
【0015】
かかる本発明の第3のガスコンロにおいては、設定火力が所定の閾値より小さい場合は、設定火力が増加するに従って親バーナへの分配比率が増加するが、設定火力が閾値より大きい場合は、設定火力が増加するに従って子バーナへの分配比率が増加するようになっている。こうすれば、設定火力が閾値より大きくなった時に炎溢れ状態が発生することを、防止することが可能となる。
【0016】
また、上述した本発明の第1~第3のガスコンロにおいては、少なくとも親バーナに供給される一次空気の空気流量を調節可能としておき、燃料ガスの分配比率を変更する際には、一次空気の空気流量も調節するようにしてもよい。
【0017】
子バーナへの燃料ガスの分配比率を増加させると子バーナの炎が大きくなるため、親バーナの炎と干渉して、特に親バーナでは燃料ガスの燃焼に用いる二次空気が不足気味となり、燃料ガスを効率よく燃焼させることが出来なくなる。このような場合でも、一次空気の空気量を増加させれば、二次空気の不足を補うことが出来るので、燃料ガスを効率よく燃焼させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施例の親子バーナ10を搭載したガスコンロ1の外観形状を示した斜視図である。
【
図2】第1実施例の親子バーナ10の大まかな形状を示した斜視図である。
【
図3】第1実施例の親子バーナ10のバーナボディ11bおよびバーナキャップ20の内部構造を示す分解組立図である。
【
図4】調理容器が大径の場合に、第1実施例のガスコンロ1が設定火力に応じて、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに供給する燃料ガスのガス流量を制御する様子を示した説明図である。
【
図5】調理容器が小径の場合に、第1実施例のガスコンロ1が設定火力に応じて、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに供給する燃料ガスのガス流量を制御する様子を示した説明図である。
【
図6】調理容器が小径の場合に、第1実施例のガスコンロ1が設定火力に応じて、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに供給する燃料ガスのガス流量を制御する他の態様を示した説明図である。
【
図7】第2実施例の親子バーナ10を搭載したガスコンロ1の外観形状を示した斜視図である。
【
図8】調理容器が小径の場合に、第2実施例のガスコンロ1が設定火力に応じて、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに供給する燃料ガスのガス流量を制御する様子を示した説明図である。
【
図9】第2実施例のガスコンロ1の制御部50が設定火力に応じて、親側の開閉弁42pおよび子側の開閉弁42cの開度を設定する様子を示した説明図である。
【
図10】第1変形例の親子バーナ10についての説明図である。
【
図11】親バーナ10Pの炎Fpと子バーナ10Cの炎Fcとが干渉する様子を示した説明図である。
【
図12】第2変形例の親子バーナ10に搭載された可変ダンパ70についての説明図である。
【
図13】燃焼ファン80を備える第3変形例の親子バーナ10についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.第1実施例 :
図1は、第1実施例の親子バーナ10を搭載したガスコンロ1の外観形状を示した斜視図である。
図1に例示したガスコンロ1は、図示しないシステムキッチンのカウンタートップに嵌め込んで設置されるビルトインタイプのガスコンロ1であり、箱形状のコンロ本体2と、コンロ本体2の開口した上面を覆って設置される天板3とを備えている。
【0022】
コンロ本体2の内部には、後述する親バーナと子バーナとが上下二段に組み合わされた親子バーナ10が、左右に並べて2つ収容されており、これらの親子バーナ10は、上部が天板3に形成された挿通孔から突出した状態となっている。また、天板3上には、それぞれの親子バーナ10の上部が突出した箇所を囲むようにして五徳4が設置されており、五徳4上に鍋などの調理容器を置くことで、調理容器を下方から親子バーナ10で加熱することが可能となっている。更に、親子バーナ10には、中央を貫通した状態で温度センサ5が内蔵されている。温度センサ5は図示しない付勢バネによって上方に付勢されており、温度センサ5の上部が親子バーナ10の上面中央から突出した状態となっている。そして、五徳4に調理容器を置くと、調理容器の底面が温度センサ5を押し下げることで温度センサ5の上端が調理容器の底面に当接した状態となって、調理容器の温度を検出することが可能となる。
【0023】
また、ガスコンロ1の前面にはグリル扉7が設けられており、グリル扉7の奥には図示しないグリル庫やグリルバーナが搭載されている。グリル扉7の右方には、2つの親子バーナ10に対応して2つのコンロ操作ボタン8が設けられており、ガスコンロ1の使用者は何れかのコンロ操作ボタン8を操作することによって、対応する親子バーナ10に点火したり、消火したり、火力を調節したりすることができる。また、グリル扉7の左方には、グリル操作ボタン9が設けられており、使用者はグリル操作ボタン9を操作することによって、グリルバーナに点火したり、消火したり、火力を調節したりすることができる。
【0024】
更に、ガスコンロ1の上方にはレンジフード60が設置されており、レンジフード60には、親子バーナ10を上方から撮影するカメラ61と、炎溢れ状態監視部62とが搭載されている。カメラ61は、親子バーナ10での調理中に撮影した画像を炎溢れ状態監視部62に出力し、炎溢れ状態監視部62は、カメラ61から受け取った画像を解析することによって、調理中に親子バーナ10の炎が調理容器から溢れていないかどうかを監視する。そして、炎溢れ状態監視部62は、調理容器から炎が溢れていると判断すると、ガスコンロ1に向かって、その旨を無線通信によって送信する。
【0025】
尚、本実施例の炎溢れ状態監視部62は、本発明における「炎溢れ監視手段」に対応する。また、第1実施例では、炎溢れ状態監視部62がレンジフード60に搭載されているものとしているが、ガスコンロ1に搭載されていてもよい。更には、カメラ61も、ガスコンロ1の天板3上に搭載してもよい。あるいは、カメラ61を搭載する代わりに、炎溢れ状態監視部62がスマートフォンなどの外部の機器で撮影した画像を取得することによって、調理容器から炎が溢れているか否かを判断するようにしてもよい。
【0026】
図2は、本実施例の親子バーナ10の大まかな形状を示した斜視図である。図示されるように親子バーナ10は、板金製部材を組み合わせて形成されたバーナ本体11と、略円筒形状のバーナキャップ20とを備えている。バーナ本体11には、略円筒形状のバーナボディ11bと、バーナボディ11bに接続された親混合管12と、親混合管12よりも小径でバーナボディ11bに接続された子混合管13とが形成されている。また、バーナボディ11bの上には、バーナキャップ20が載置されている。更に、バーナキャップ20の中央には挿通孔20hが形成されており、この挿通孔20hには、
図1を用いて前述した温度センサ5が挿通されるようになっている。
【0027】
バーナキャップ20は、上下二段に分割された部材であり、アルミニウム合金あるいは真鍮を用いて、鋳造あるいはダイカストによって形成されている。以下では、バーナキャップ20を構成する上側の部材を上側キャップ部21と称し、下側の部材を下側キャップ部22と称する。図示したように下側キャップ部22の上に上側キャップ部21を載置した状態では、
図2中に拡大して示したように、上側キャップ部21の外周面に複数の上側炎口21fが形成され、更に、下側キャップ部22の外周面には複数の下側炎口22fが形成されている。そして、上側キャップ部21と下側キャップ部22とは、上側炎口21fと下側炎口22fとが互い違いとなる位置で組み合わされるようになっている。
【0028】
また、バーナボディ11bの上にバーナキャップ20を載置すると、下側キャップ部22とバーナボディ11bとの間に、複数の小さな炎口(以下、子炎口22u)が形成されるようになっている。後述するようにバーナボディ11bの内部には、親混合管12が接続された空間と、子混合管13が接続された空間とが形成されている。そして、下側キャップ部22とバーナボディ11bとの間に形成された子炎口22uは、子混合管13が接続された空間に連通している。また、上側キャップ部21に形成された上側炎口21fと、下側キャップ部22に形成された下側炎口22fとは、親混合管12が接続された空間に連通している。このため、後述するように、子混合管13に燃料ガスを供給すると、その燃料ガスが子炎口22uから流出し、親混合管12に燃料ガスを供給すると、その燃料ガスが上側炎口21fおよび下側炎口22fから流出することになる。
【0029】
親混合管12および子混合管13には、次のようにして燃料ガスが供給される。先ず、親混合管12はバーナボディ11bに接続されていない側が開口端12oとなっており、子混合管13もバーナボディ11bに接続されていない側が開口端13oとなっている。親混合管12の開口端12oを臨む位置にはガス噴射ノズル43pが設けられており、子混合管13の開口端13oを臨む位置にはガス噴射ノズル43cが設けられている。尚、以下では、親混合管12側に設けられたガス噴射ノズル43pを「親側のガス噴射ノズル43p」と称し、子混合管13側に設けられたガス噴射ノズル43cを「子側のガス噴射ノズル43c」と称することがある。そして、親側のガス噴射ノズル43pには接続パイプ40pが接続されており、子側のガス噴射ノズル43cには接続パイプ40cが接続されている。これら2つの接続パイプ40p、40cは、ガス供給パイプ40から分岐している。
【0030】
ガス供給パイプ40に燃料ガスを供給すると、燃料ガスが接続パイプ40pと接続パイプ40cとに分岐して、親側のガス噴射ノズル43pと子側のガス噴射ノズル43cとに供給される。そして、親側のガス噴射ノズル43pから、親混合管12の開口端12oに向かって燃料ガスを噴射すると、燃料ガスはエジェクタ効果によって周囲の空気を巻き込みながら親混合管12内に流入し、親混合管12内で空気と混合した後、上側炎口21fおよび下側炎口22fから流出する。同様に、子側のガス噴射ノズル43cから、子混合管13の開口端13oに向かって燃料ガスを噴射すると、燃料ガスはエジェクタ効果によって周囲の空気を巻き込みながら子混合管13内に流入し、子混合管13内で空気と混合した後、子炎口22uから流出する。
【0031】
また、ガス供給パイプ40の途中には、燃料ガスのガス流量を調節するためのガス流量調節弁41が取り付けられている。更に、親混合管12に燃料ガスを供給する接続パイプ40pの途中には、接続パイプ40pの通路抵抗を調節するための開閉弁42pが取り付けられており、子混合管13に燃料ガスを供給する接続パイプ40cの途中には、接続パイプ40cの通路抵抗を調節するための開閉弁42cが取り付けられている。以下では、接続パイプ40pに取り付けられた開閉弁42pを「親側の開閉弁42p」と称し、接続パイプ40cに取り付けられた開閉弁42cを「子側の開閉弁42c」と称し、更に、開閉弁42pおよび開閉弁42cをまとめて、単に開閉弁42と称することがある。また、ガス流量調節弁41や、親側の開閉弁42p、子側の開閉弁42cとしては、連続的にあるいは複数段階にガス流量を調節することが可能な周知の種々の弁を使用することができるが、第1実施例では、ステッピングモータで駆動される流量調節弁が使用されている。
【0032】
尚、本実施例では、ガス供給パイプ40が本発明における「ガス供給通路」に対応し、接続パイプ40pおよび接続パイプ40cが、本発明における「接続通路」に対応する。また、本実施例のガス流量調節弁41は、本発明における「ガス流量調節手段」に対応し、本実施例の開閉弁42は本発明における「分配比率変更手段」に対応する。
【0033】
また、バーナ本体11には、バーナボディ11bの外周面に近接して、点火プラグ30と火炎センサ32とが設けられており、点火プラグ30および火炎センサ32は制御部50に接続されている。更に、点火プラグ30の上方には、バーナキャップ20の外周面から点火ターゲット31が突設されている。制御部50は、接続パイプ40pに設けられた親側の開閉弁42pを全閉状態とした後、点火プラグ30から点火ターゲット31に向かって火花放電させながら、ガス流量調節弁41を開弁させると、子炎口22uから燃料ガスが流出し、その燃料ガスが着火して燃焼が開始される。火炎センサ32は、子炎口22uで生じた炎を検知することが可能となっており、制御部50は子炎口22uの炎を検知することで、燃焼が開始されたことを認識することができる。更に、その状態で親側の開閉弁42pを開弁させると、上側炎口21fおよび下側炎口22fからも燃料ガスが流出し、その燃料ガスが子炎口22uの炎によって着火して、上側炎口21fおよび下側炎口22fでも燃焼が開始される。尚、本実施例の制御部50は、ガス流量調節弁41や開閉弁42の動作を制御していることから、本発明における「制御手段」に対応する。
【0034】
図2に示したように、上側炎口21fおよび下側炎口22fは、子炎口22uに比べて大きな開口面積に設定されている。また、バーナ本体11の内部で上側炎口21fおよび下側炎口22fと連通している親混合管12は、子炎口22uと連通している子混合管13も大径に形成されている。このため、上側炎口21fおよび下側炎口22fでは、子炎口22uよりも多量の燃料ガスを燃焼させて、大火力を発生させることができる。そこで、親子バーナ10は、必要な火力が小さい間は、子炎口22uで燃料ガスを燃焼させておき、大火力が必要になったら、上側炎口21fおよび下側炎口22fでも燃料ガスを燃焼させるような使われ方をする。このことから、親子バーナ10の中の子炎口22uの部分は「子バーナ10C」と呼称され、親子バーナ10の中の上側炎口21fおよび下側炎口22fの部分は「親バーナ10P」と呼称されている。
【0035】
尚、
図2に示したように、本実施例の親子バーナ10は、親バーナ10Pと子バーナ10Cとが、同軸上の上下二段に配置されているものとしているが、親バーナ10Pと子バーナ10Cとは、必ずしも上下二段に配置する必要はなく、例えば円環形状の親バーナ10Pの内側に、親バーナ10Pよりも小径の子バーナ10Cが配置された親子バーナ10とすることもできる。また、本実施例の親子バーナ10は、親バーナ10Pの上側炎口21fと下側炎口22fとが千鳥状に配列されることによって2段の炎口となっているが、これに限らず、親バーナ10Pの上側炎口21fと下側炎口22fとが上下に揃った状態で配列されることによって1段の炎口となっていてもよい。
【0036】
図3は、第1実施例の親子バーナ10のバーナボディ11bおよびバーナキャップ20の内部構造を示した分解組立図である。図示されるように、略円筒形状のバーナボディ11bは、上端側が内向きに折り曲げられることによって、バーナキャップ20を載置する円環状の載置面11aが形成されている。また、バーナボディ11bの内側には、円筒形状の中央筒体14が立設されており、バーナボディ11bと中央筒体14との間に、混合ガスが供給される環状の混合室16が形成されている。
【0037】
更に、バーナボディ11bと中央筒体14との間には、略円筒形状の仕切り筒体15が設けられており、この仕切り筒体15によって、混合室16は仕切り筒体15よりも内側の空間と、仕切り筒体15よりも外側の空間とに分けられている。仕切り筒体15よりも内側の空間が後述する親混合室16pとなり、仕切り筒体15よりも外側の空間が後述する子混合室16cとなる。仕切り筒体15は、バーナボディ11bと同様に板金部材によって形成されており、円筒形状の上端側が内向きに折り曲げられた後、その内側が下向きに折り曲げられることによって短い円筒形状の嵌合面15aが形成されている。
【0038】
バーナキャップ20は、前述したように上側キャップ部21と下側キャップ部22とを備えており、下側キャップ部22はバーナボディ11bの載置面11aの上に載置され、上側キャップ部21は、下側キャップ部22の上に載置されるようになっている。図示されるように、下側キャップ部22は略円環形状の部材であり、内縁部分からは下方に向けて円筒形状の隔壁筒22aが垂設されている。更に、外縁部分の下面(バーナボディ11bの載置面11aに当接する面)には、下側キャップ部22の中心に対して放射状に複数の下段溝22bが形成されている。
【0039】
また、下側キャップ部22の外縁部分には、上方に向けて筒状に突出した上向筒状壁22cが設けられており、上向筒状壁22cの上端面には、上向筒状壁22cの中心に対して放射状に複数の下側溝22dが形成されている。尚、下側溝22dは、五徳4の複数の爪部に対向する位置には設けられていない。加えて、上向筒状壁22cの外周面からは、前述した点火プラグ30の上方の位置に点火ターゲット31が突設されている。
【0040】
一方、上側キャップ部21は円環形状に形成されており、内縁部分からは下方に向けて、図示しない円筒形状の内筒が垂設されている。更に、外縁部分からは下方に向けて筒状の下向筒状壁21aが設けられており、下向筒状壁21aの下端面には、下向筒状壁21aの中心に対して放射状に複数の上側溝21bが形成されている。尚、上側溝21bは、上述した下側溝22dと同様に、五徳4の複数の爪部に対向する位置には設けられていない。
【0041】
上側キャップ部21と下側キャップ部22とは、上側キャップ部21の上側溝21bと、下側キャップ部22の下側溝22dとが重ならないように位置決めされた状態で組み合わされる。このため、上側キャップ部21と下側キャップ部22とを組み合わせてバーナキャップ20を形成すると、上側溝21bが下向筒状壁21aの外周面に開口した部分には上側炎口21fが形成され、下側溝22dが上向筒状壁22cの外周面に開口した部分には下側炎口22fが形成される(
図2参照)。また、上側溝21bと下側溝22dとが重ならないように位置決めされているから、上側炎口21fと下側炎口22fとは互い違いの位置に形成される。
【0042】
バーナキャップ20をバーナボディ11bに載置する際には、先ず、下側キャップ部22の内縁部分から下方に垂設された隔壁筒22aを、仕切り筒体15の嵌合面15aの内側に挿入しつつ、上側キャップ部21の内縁部分から下方に垂設された図示しない内筒を、中央筒体14の内側に挿入しながら、バーナキャップ20を下降させる。すると、下側キャップ部22の外縁部分の下面に形成された下段溝22bが、バーナボディ11bの載置面11aに当接して、バーナキャップ20がバーナボディ11bに載置される。
【0043】
バーナキャップ20をバーナボディ11bに載置した状態では、下側キャップ部22の隔壁筒22aが仕切り筒体15の嵌合面15aに嵌合し、上側キャップ部21の図示しない内筒が中央筒体14の上部の内周面に嵌合した状態となる。その結果、仕切り筒体15の外側には、仕切り筒体15とバーナボディ11bと下側キャップ部22とで囲まれた子混合室16cが形成される。この子混合室16cは子混合管13と連通している。また、仕切り筒体15の内側には、中央筒体14と仕切り筒体15と隔壁筒22aと上側キャップ部21とで囲まれた親混合室16pが形成される。この親混合室16pは親混合管12と連通している。
【0044】
ガスコンロ1の前面に搭載された2つのコンロ操作ボタン8(
図1参照)は、
図2に示した制御部50に接続されており、更に、制御部50には開閉弁42やガス流量調節弁41も接続されている。ガスコンロ1の使用者がコンロ操作ボタン8を操作することによって、加熱調理に用いる火力を設定すると、制御部50は、使用者が設定した火力(設定火力)を取得する。そして、設定火力に応じてガス流量調節弁41や開閉弁42の動作を制御することによって、親子バーナ10で燃料ガスを燃焼させる。例えば、設定火力が小さい場合は、親側の開閉弁42pを閉弁させ、子側の開閉弁42cは開弁させることによって、親バーナ10Pを使用せずに子バーナ10Cで燃料ガスを燃焼させる単独燃焼状態とする。また、設定火力が大きい場合は、親側の開閉弁42pも開弁させることによって、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cで燃料ガスを燃焼させる同時燃焼状態とする。こうすることで、使用者による設定火力に従って、小火力から大火力までの広い火力範囲を実現することが可能となる。
【0045】
もっとも、五徳4の上に置かれた調理容器が小径の調理容器であった場合には、使用者による設定火力の通りの火力を実現すると、炎が調理容器から溢れた状態となって、調理容器を効率よく加熱することが出来なくなる。そこで、調理容器が小径の調理容器であった場合には、炎が調理容器から溢れない程度に最大火力を制限することが提案されているが、最大火力を制限したのでは、広い火力範囲を実現可能な親子バーナ10の利点が損なわれてしまう。
【0046】
これに対して、第1実施例の制御部50は、開閉弁42pおよび開閉弁42cを用いて、親バーナ10Pと子バーナ10Cとの間での燃料ガスの分配比率を制御することが可能となっており、使用者の設定火力に応じて分配比率を適切に制御することで、小径の調理容器であっても、炎を溢れさせることなく大火力で加熱することができる。以下では、こうしたことを可能とするために、第1実施例の制御部50が使用者の設定火力に応じて、親バーナ10Pと子バーナ10Cとの間での燃料ガスの分配比率を制御する方法について説明する。
【0047】
図4は、五徳4上に置かれた調理容器が大径の調理容器であった場合に、第1実施例の制御部50が使用者の設定火力に応じて、親バーナ10Pと子バーナ10Cとの間での燃料ガスの分配比率を制御する様子についての説明図である。
図4の横軸は使用者による設定火力を表しており、縦軸は燃料ガスのガス流量を表している。尚、燃料ガスのガス流量は、単位時間に通過する燃料ガスの重量や体積ではなく、通過した燃料ガスを燃焼させた時の発熱量で表すことが慣例となっている。このことに対応して、
図4では、燃料ガスのガス流量が、単位時間あたりの燃料ガスの発熱量を表すインプット(kcal/h)で表示されている。また、
図4で、単なるインプットではなく「合計インプット」と表示されているのは、燃料ガスが親バーナ10Pと子バーナ10Cとに分配されるので、それらを合計したインプット(すなわち、親子バーナ10全体としてのインプット)を表しているためである。更に、
図4中で斜線を付して示されている部分は、子バーナ10Cに供給されるガス流量を表している。従って、合計インプットから斜線の部分を除いた残りの部分が、親バーナ10Pに供給されるガス流量となる。
【0048】
図4に示されるように、使用者によって設定された設定火力が、最小値Sminから所定の閾値S1までの範囲内にある場合は、全ての燃料ガスが子バーナ10Cに供給される。従って、合計インプットの全てが子バーナ10Cに供給されるガス流量となる。このような状況は、親側の接続パイプ40pに搭載された親側の開閉弁42pを全閉状態にすると共に、子側の接続パイプ40cに搭載された子側の開閉弁42cは全閉状態と全開状態との間の半開状態に制御することによって実現することができる。また、この状態では、親子バーナ10は子バーナ10Cが単独で燃料ガスを燃焼させる単独燃焼状態となっている。そして使用者が、閾値S1までの範囲内で設定火力を増加させると、それに伴って、ガス流量調節弁41が燃料ガスのガス流量を増加させ、その結果、子バーナ10Cの火力が増加する。
【0049】
図4中には、単独燃焼状態で子バーナ10Cによって形成される炎Fcが概念的に示されている。図中に示されるように、単独燃焼状態では燃焼するガス流量が小さいので、子バーナ10Cで大きな炎Fcが形成されることが無く、調理容器から炎が溢れた状態(炎溢れ状態)となることもない。
【0050】
使用者による設定火力が、所定の閾値S1よりも大きくなると、制御部50が親側の開閉弁42pを全開状態にすることにより、親バーナ10Pにも燃料ガスが供給されるようになる。このとき、子側の開閉弁42cは半開状態のままで変化していないが、それまで子バーナ10Cだけに供給されていた燃料ガスが親バーナ10Pと子バーナ10Cとに分配されることになるため、子バーナ10Cに流れるガス流量は急激に低下する。また、この時の親バーナ10Pと子バーナ10Cとの間での燃料ガスの分配比率は、親バーナ10Pに燃料ガスを供給する通路全体での通路抵抗と、子バーナ10Cに燃料ガスを供給する通路全体での通路抵抗との比率によって決まる一定値となる。
【0051】
また、こうして親バーナ10Pと子バーナ10Cとに燃料ガスが供給される結果、親子バーナ10は親バーナ10Pと子バーナ10Cで同時に燃料ガスが燃焼する同時燃焼状態となる。そして、同時燃焼状態でも、使用者が設定火力を増加させると、ガス流量調節弁41が燃料ガスのガス流量を増加させ、それに伴って、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへのガス流量が、分配比率を保ったまま増加する。その結果、親バーナ10Pに形成される炎Fpおよび子バーナ10Cに形成される炎Fcは、設定火力の増加に伴って大きくなる。
【0052】
図4中には、設定火力の増加に伴って、同時燃焼状態で親バーナ10Pに形成される炎Fpおよび子バーナ10Cに形成される炎Fcが大きくなる様子が概念的に示されている。また、親バーナ10Pには子バーナ10Cよりも多くの燃料ガスが分配されることに対応して、親バーナ10Pには子バーナ10Cよりも大きな炎Fpが形成されている。そして、設定火力が最大値Smaxになると、親バーナ10Pの炎Fpおよび子バーナ10Cの炎Fcが最も大きくなる。但し、五徳4上の調理容器が十分に大径である場合は、設定火力が最大値Smaxになっても、親バーナ10Pの炎Fpが調理容器から溢れる炎溢れ状態となることは無い。
【0053】
以上では、五徳4上に置かれた調理容器が、最大の設定火力でも炎溢れ状態とならない大径の調理容器であった場合に、制御部50が設定火力に応じて、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに供給する燃料ガスのガス流量を制御する方法について説明した。従来の一般的な親子バーナには子側の開閉弁42cは搭載されていないものの、一般的な親子バーナでも、設定火力に応じて親バーナ10Pや子バーナ10Cへのガス流量が同様な態様で制御されている。すなわち、第1実施例の制御部50は、調理容器が大径で炎溢れ状態とならない限りは、従来の一般的な親子バーナと同様な態様で、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへのガス流量を制御することになる。しかし、五徳4上に置かれた調理容器が小径の調理容器であった場合には、従来の一般的な親子バーナと同様な態様(
図4に示した態様)で、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへのガス流量を制御したのでは、炎溢れ状態となってしまう。そこで、第1実施例の制御部50は、五徳4上に小径の調理容器が置かれた場合には、次のような態様で、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへのガス流量を制御する。
【0054】
図5は、五徳4上に置かれた調理容器が小径の調理容器であった場合に、第1実施例の制御部50が設定火力に応じて、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスのガス流量を制御する様子についての説明図である。使用者が設定した設定火力が最小値Sminから所定の閾値S1までの範囲内にある場合は、前述した
図4と同様に、全ての燃料ガスを子バーナ10Cに供給する。このため、設定火力が最小値Sminから所定の閾値S1までの範囲では、親子バーナ10は単独燃焼状態となっている。また、この時の子側の開閉弁42cは半開状態となっている。
【0055】
設定火力が閾値S1よりも大きくなると、前述した
図4と同様に、親側の開閉弁42pが全開状態となり、それに伴って、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cで同時に燃料ガスが燃焼する同時燃焼状態となる。この段階では、子側の開閉弁42cはまだ半開状態のままとなっている。また、親バーナ10Pと子バーナ10Cとの間の燃料ガスの分配比率は、
図4の場合と同じ比率となる。
【0056】
使用者が設定火力を増加させると、ガス流量調節弁41を通過する燃料ガスのガス流量が増加し、それに伴って親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへのガス流量が増加して、親バーナ10Pの炎Fpおよび子バーナ10Cの炎Fcが大きくなっていく。そして、やがては、親バーナ10Pの炎Fpが調理容器から溢れた炎溢れ状態となる。
【0057】
図1を用いて前述したように、第1実施例のガスコンロ1では、レンジフード60に搭載されたカメラ61および炎溢れ状態監視部62で炎溢れの有無を監視しており、炎溢れ状態監視部62は、炎溢れ状態を検知すると、その旨を無線で制御部50に送信する。このため制御部50は、炎溢れ状態になったことを検知することができる。炎溢れ状態となる設定火力は、調理容器の大きさによって異なるが、
図5で設定火力がS2に達した時に炎溢れ状態になるものとしている。
【0058】
第1実施例の制御部50は、炎溢れ状態を検知すると、全開状態になっていた親側の開閉弁42pを所定の一定開度だけ閉じることによって、親バーナ10Pに供給するガス流量を減少させる。すると、親バーナ10Pへのガス流量が減少した分だけ、子バーナ10Cへのガス流量が増加する。その結果、調理容器から溢れていた親バーナ10Pの炎Fpが小さくなる。また、使用者が設定火力を少しずつ大きくしていく途中で炎溢れ状態が検知されているから、親バーナ10Pの炎Fpを少し小さくするだけで炎溢れ状態を解消することができる。また、子バーナ10Cの炎Fcは大きくなるが、子バーナ10Cの炎Fcは元々小さいので、大きくなっても炎溢れ状態となることは無い。
【0059】
図5には、設定火力がS2に達した段階で炎溢れ状態が検知されたことにより、親バーナ10Pのガス流量が減少し、その分だけ子バーナ10Cのガス流量が増加する様子が示されている。また、このように、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cのガス流量を変更することで、親バーナ10Pの炎Fpが小さくなり、子バーナ10Cの炎Fcが大きくなって、炎溢れ状態が解消される様子が概念的に示されている。尚、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cにはガス流量調節弁41を通過した燃料ガスが供給されており、親側の開閉弁42pおよび子側の開閉弁42cは、親バーナ10Pと子バーナ10Cとの間での燃料ガスの分配比率を変更しているに過ぎない。従って、炎溢れ状態を解消する前後で、親子バーナ10としての火力が変化することは無い。
【0060】
こうして炎溢れ状態を解消した後、使用者が更に設定火力を増加した場合は、設定火力の増加に合わせてガス流量調節弁41を通過するガス流量を増加させることによって、親子バーナ10全体としての火力を増加させる。もっとも、これに伴って親バーナ10Pの炎Fpが大きくなってしまうと炎溢れ状態になってしまうので、親バーナ10Pへのガス流量が一定に保たれるように、親側の開閉弁42pは少しずつ閉じると共に、子側の開閉弁42cは少しずつ開くことによって、子バーナ10Cへのガス流量が増加するようにする。こうすれば、親バーナ10Pの炎Fpが調理容器から溢れないようにしながら、親子バーナ10全体としての火力を増加させることが可能となる。
【0061】
また、この時、子バーナ10Cの炎Fcは大きくなるが、子バーナ10Cの炎Fcは元々から小さいので多少は大きくなっても調理容器から溢れることは無い。加えて、親バーナ10Pは子バーナ10Cよりも上方(すなわち、調理容器に近い位置)にあるので、親バーナ10Pの炎Fpは、大きくなると調理容器の底部に接触して半径方向外側に誘導されて炎溢れ状態となり易い。これに対して子バーナ10Cの炎Fcは、調理容器の底部から遠い位置に形成されるので、炎Fcが調理容器の底部に接触しにくく、従って炎溢れ状態となりにくい。このため、子バーナ10Cの炎Fcを大きくしても炎溢れ状態が発生する事態を回避することができる。
【0062】
図5には、設定火力がS2から更に増加するに伴って、親バーナ10Pのガス流量を一定に保ったまま、子バーナ10Cのガス流量を増加させる様子が示されている。また、このようにすることで、親バーナ10Pの炎Fpは炎溢れ状態とならない大きさに保ったまま、子バーナ10Cの炎Fcを大きくすることによって、親子バーナ10全体としての火力を増加させることができる。
【0063】
以上では、五徳4上に小径の調理容器が置かれた場合に、使用者が設定火力を少しずつ増加させた場合を想定して説明した。もちろん、使用者が設定火力を少しずつ増加させるとは限らない。例えば、子バーナ10Cの単独燃焼状態から、
図5に示した炎溢れ状態となる設定火力S2より大きな設定火力に、いきなり変更する場合も起こり得る。このような場合、制御部50は次のようにして、親側の開閉弁42pおよび子側の開閉弁42cを制御する。
【0064】
図6は、子バーナ10Cの単独燃焼状態から使用者が設定火力をいきなり増加させて炎溢れ状態となった場合に、制御部50が炎溢れ状態を解消する様子を示した説明図である。図示した例では、設定火力が子バーナ10Cの単独燃焼状態から、炎溢れ状態となるS2よりも大きなS3までいきなり増加した場合が示されている。子バーナ10Cの単独燃焼状態では炎溢れは生じていない。従って制御部50は、
図4を用いて前述した大径の調理容器の場合と同様に、設定火力が所定の閾値S1よりも大きなS3に増加したことに対応して親側の開閉弁42pを全開状態とし、更に、設定火力S3に対応するガス流量まで、ガス流量調節弁41を用いてガス流量を増加させる。また、子側の開閉弁42cは半壊状態のままなので、ガス流量調節弁41を通過した燃料ガスは、
図4の同時燃焼状態で親バーナ10Pと子バーナ10Cとに燃料ガスが分配される比率と同じ比率で分配される。従って、設定火力がS3に増加した直後では、親子バーナ10は
図6中に示したP点の位置で燃料ガスを燃焼させることになる。
【0065】
図4を用いて説明した場合のように、五徳4上に置かれた調理容器が大径であれば、P点の位置で燃料ガスを燃焼させても炎溢れ状態にはならないが、調理容器が小径の場合は炎溢れ状態となる(
図5参照)。すると、制御部50は、炎溢れ状態監視部62からの通知によって、炎溢れ状態となったことを認識して、親側の開閉弁42pを少しずつ閉じると共に、子側の開閉弁42cを少しずつ開いていく。この結果、親バーナ10Pの炎Fpは少しずつ小さくなり、子バーナ10Cの炎Fcは少しずつ大きくなる。また、この間は、ガス流量調節弁41を通過するガス流量は変わらないので、合計インプット(すなわち、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへのガス流量の合計値)は変化せず、親子バーナ10全体としての火力は一定に保たれている。こうしたことを、炎溢れ状態監視部62で炎溢れ状態が検知されなくなるまで継続することにより、最終的には親子バーナ10は、
図6中のQ点の位置で燃料ガスを燃焼させることになる。
図6中に示した黒い矢印は、炎溢れ状態を解消するために、制御部50が燃料ガスを燃焼させる位置を移動させた経路を表している。
【0066】
こうして炎溢れ状態を解消した後は、
図5を用いて前述したように、親バーナ10Pへのガス流量が一定となるように、親側の開閉弁42pおよび子側の開閉弁42cを制御すればよい。あるいは、使用者による設定火力に応じてガス流量調節弁41のガス流量を制御しておき、その結果として炎溢れ状態となったら、その都度、
図6を用いて前述したようにして炎溢れを解消するようにしてもよい。
【0067】
B.第2実施例 :
上述した第1実施例では、調理容器から炎が溢れた状態になっていることを検知すると、子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を増加させることによって、親子バーナ10全体としての火力を維持したままで、炎溢れ状態を解消するものとして説明した。しかし、調理容器の大きさが分かれば、炎溢れ状態となる設定火力は推定することができる。従って、炎溢れ状態になると推定される設定火力よりも大きな火力では、子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を初めから増加させておくようにしてもよい。こうしても、親子バーナ10全体としての火力を低下させることなく、炎溢れ状態となることを防止することができる。以下では、このような第2実施例について説明する。
【0068】
図7は、第2実施例の親子バーナ10を搭載したガスコンロ1の外観形状を示した斜視図である。
図7に例示した第2実施例のガスコンロ1は、
図1を用いて前述した第1実施例のガスコンロ1に対して、カメラ61や炎溢れ状態監視部62を備えておらず、その代わりに、天板3に複数の調理容器検知センサ6が搭載されている点で異なるが、その他の点については第1実施例のガスコンロ1と同様である。そこで、第2実施例では、第1実施例と同様な構成については、第1実施例と付番を共通化することによって説明を省略する。
【0069】
図7に示されるように、第2実施例のガスコンロ1の天板3には、親子バーナ10の中心位置から放射状に複数の調理容器検知センサ6が搭載されている。調理容器検知センサ6としては、光センサや超音波センサなどを用いることができるが、第2実施例では超音波センサが用いられている。尚、
図7では、放射状に配列された調理容器検知センサ6の列には、それぞれ調理容器検知センサ6が3つずつ配置されているものとして表示しているが、より多数の調理容器検知センサ6を配置してもよい。また、それぞれの列では、親子バーナ10の中心位置から、それぞれの調理容器検知センサ6までの距離は異なるが、列同士を比較すると、親子バーナ10の中心位置から対応する調理容器検知センサ6までの距離は同じとなっている。
【0070】
これらの調理容器検知センサ6は、制御部50(
図2参照)に接続されている。このため制御部50は、五徳4上に調理容器が置かれると、複数の調理容器検知センサ6の出力に基づいて、調理容器の大きさを検出することができる。例えば、五徳4上に置いた調理容器が中径の調理容器であった場合には、親子バーナ10の中心位置から一番外側の調理容器検知センサ6は、調理容器よりも外側の位置となる。このため、調理容器検知センサ6から上方に向けて超音波を発射しても、超音波は調理容器の外側を通過してしまい、超音波が反射して戻って来ないので、調理容器検知センサ6は調理容器を検出することができない。
【0071】
これに対して、その内側の調理容器検知センサ6は、上方に調理容器の底面が存在する状態となっている。このため、調理容器検知センサ6から上方に向けて超音波を発射すると、調理容器の底面で超音波が反射して戻ってくるため、調理容器検知センサ6は調理容器を検出するができる。このことから、親子バーナ10の中心位置から一番外側の調理容器検知センサ6では調理容器を検出できないが、その内側の調理容器検知センサ6では調理容器を検出できる場合は、五徳4上には中径の調理容器が置かれているものと判断することができる。
【0072】
五徳4上に小径あるいは大径の調理容器が置かれた場合にも、同様にして、調理容器の大きさを判断することができる。例えば、一番内側の調理容器検知センサ6では調理容器を検出できるが、その外側の調理容器検知センサ6では調理容器を検出できない場合は、五徳4上の調理容器は小径の調理容器と判断することができる。また、一番外側の調理容器検知センサ6でも調理容器を検出できる場合は、五徳4上の調理容器は大径の調理容器と判断することができる。尚、以上では、調理容器検知センサ6が超音波センサであり、調理容器検知センサ6から超音波を発射して、調理容器で反射して戻って超音波を調理容器検知センサ6で検出することによって、調理容器を検出するものとして説明した。しかし、調理容器検知センサ6として光センサを採用して、調理容器検知センサ6から上方に向けて光を発射し、調理容器で反射して戻って光を調理容器検知センサ6で検出することによって、調理容器を検出してもよい。
【0073】
以上のような方法で、五徳4上に置かれた調理容器の大きさが分かれば、炎溢れ状態になるか否かを判断することができ、炎溢れ状態になる場合は、炎溢れ状態となる設定火力を推定することができる。そして、炎溢れ状態になると推定される設定火力よりも大きな火力では、子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を増加させることによって、炎溢れ状態となることを防止することができる。
【0074】
図8は、第2実施例の制御部50が、五徳4上に置かれた調理容器の大きさに応じて、炎溢れ状態とならないように、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を制御する様子についての説明図である。
図8中に示した設定火力S4は、炎溢れ状態になると推定される設定火力である。炎溢れ状態となる設定火力は次のようにして推定することができる。
【0075】
先ず、炎溢れ状態となることを考慮しない場合は、制御部50は、
図4を用いて前述した分配比率で、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに燃料ガスを分配する。すなわち、設定火力が所定の閾値S1より小さい間は、全ての燃料ガスを子バーナ10Cに分配するが、設定火力が閾値S1よりも大きくなると、親バーナ10Pと子バーナ10Cとに一定の比率で燃料ガスを分配する。従って、設定火力が決まれば親バーナ10Pに分配される燃料ガスのガス流量が決まり、親バーナ10Pへのガス流量が決まれば親バーナ10Pで形成される炎Fpの大きさも概ね決まる。このことから、調理容器の大きさが分かれば、その調理容器で炎溢れ状態となる設定火力を推定することができる。
図8の設定火力S4は、このようにして決定された炎溢れ状態になると推定される設定火力である。
【0076】
尚、第2実施例の設定火力S4は、本発明における「炎溢れ火力」に対応する。また、第2実施例の制御部50は、調理容器検知センサ6の出力に基づいて調理容器の大きさを検出すると共に、炎溢れ状態となる設定火力を推定しているから、本発明における「検出手段」および「炎溢れ火力決定手段」に対応する。
【0077】
使用者によって設定された設定火力が、設定火力S4よりも小さい間は、炎溢れ状態にはならないと考えられるので、制御部50は、
図4を用いて前述した方法で親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに燃料ガスを分配する。このため、親子バーナ10の炎は設定火力が増加するほど大きくなって行くが、設定火力S4を超えない限りは炎溢れ状態となることは無い。
【0078】
これに対して設定火力がS4を超えた場合は、制御部50は、親バーナ10Pに供給される燃料ガスのガス流量が、設定火力S4でのガス流量を維持するように制御する。もちろん、設定火力がS4から増加するに従って、ガス流量調節弁41を通過するガス流量も設定火力がS4に設定されていた状態からは増加するが、増加した分のガス流量はもっぱら子バーナ10Cに供給されることになる。こうしたことを実現するためには、設定火力がS4から増加するに従って、親側の開閉弁42pは少しずつ閉じて行き、子側の開閉弁42cは少しずつ開くようにすればよい。
【0079】
また、第2実施例では、炎溢れ状態を検知することはできないので、炎溢れ状態の発生を検知して親側の開閉弁42pおよび子側の開閉弁42cの開度を修正することはできない。そこで、第2実施例の制御部50は、調理容器の大きさに基づいて炎溢れ状態となる設定火力S4を決定すると、設定火力に対する親側の開閉弁42pおよび子側の開閉弁42cの開度を予め設定しておく。
【0080】
図9は、第2実施例の制御部50が、設定火力に対応付けて、親側の開閉弁42pおよび子側の開閉弁42cの開度を設定した様子についての説明図である。
図9中の設定火力S4は、調理容器の大きさに基づいて推定された炎溢れ状態となる設定火力である。設定火力が最小値Sminから所定の閾値S1までの間では、親側の開閉弁42pは全閉状態に設定し、子側の開閉弁42cは、所定開度の半開状態に設定する。また、設定火力がS1からS4までの間では、親側の開閉弁42pは全開状態に設定し、子側の開閉弁42cは半開状態のままとしておく。そして、設定火力がS4から最大値Smaxまでの間では、設定火力が増加するほど、親側の開閉弁42pの開度が全開状態から一定の傾きで小さくなるように設定し、子側の開閉弁42cの開度は半開状態から一定の傾きで大きくなるように設定する。親側の開閉弁42pの開度を小さくする傾きや、子側の開閉弁42cの開度を大きくする傾きは、実験的に予め決定しておくことができる。あるいは、一定の傾きではなく、実験的に決定しておいた曲線に従って開度が変化するようにしてもよい。
【0081】
このようにして、親側の開閉弁42pおよび子側の開閉弁42cの開度を設定火力に対して決定して記憶しておけば、
図8に示したような態様で、親バーナ10Pと子バーナ10Cとに燃料ガスを分配することができる。このため、炎溢れ状態になると推定される設定火力S4より大きな火力に設定されても、親バーナ10Pの炎Fpは設定火力S4で形成される炎Fpよりも大きくならないので、炎溢れ状態となることを回避することができる。加えて、設定火力が増加するに従って子バーナ10Cの炎Fcは大きくなるので、親子バーナ10全体としては設定火力を発生させることが可能となる。
【0082】
尚、上述した第2実施例では、調理容器検知センサ6を用いて調理容器の大きさを検出するものとして説明した。しかし、前述した第1実施例と同様に、レンジフード60や天板3に搭載したカメラで撮影した調理容器の画像(あるいは、ガスコンロ1の使用者がスマートフォンで撮影した画像)に基づいて、調理容器の大きさを検出するようにしてもよい。
【0083】
また、上述した第2実施例では、検出した調理容器の大きさを検出すると、炎溢れ状態となる設定火力S4を推定し、使用者による設定火力の値がS4を超える場合は、設定火力が大きくなるほど子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を大きくするものとして説明した。しかし、調理容器の大きさが分かれば、設定火力が最大値Smaxになっても親バーナ10Pの炎Fpが炎溢れ状態とならない分配比率を決定することができる。従って、使用者による設定火力の値がS1を超えた場合(すなわち、親バーナ10Pと子バーナ10Cとの同時燃焼状態の場合)には、子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を、調理容器の大きさに基づいて決定した分配比率(設定火力Smaxでも親バーナ10Pの炎Fpが穂の溢れ状態とならない分配比率)に設定しても良い。このようにしても親バーナ10Pの炎Fpが炎溢れ状態となることを防止することができる。
【0084】
C.変形例 :
上述した第1実施例および第2実施例には、幾つかの変形例が存在する。以下では、これらの変形例について簡単に説明する。
【0085】
C-1.第1変形例 :
上述した第1実施例および第2実施例では、ガス供給パイプ40が親側の接続パイプ40pと子側の接続パイプ40cとに分岐して、親側の接続パイプ40pには開閉弁42pが搭載され、子側の接続パイプ40cには開閉弁42cが搭載されているものとして説明した。しかし、親側の開閉弁42pおよび子側の開閉弁42cは、ガス供給パイプ40から供給された燃料ガスが、親バーナ10Pと子バーナ10Cとに分配される比率を変更しているに過ぎない。従って、親側の接続パイプ40pに開閉弁42pを搭載し、且つ、子側の接続パイプ40cに開閉弁42cを搭載する代わりに、ガス供給パイプ40が親側の接続パイプ40pと子側の接続パイプ40cとに分岐する位置に、燃料ガスの分配比率を変更する分配弁を設けることとしてもよい。
【0086】
図10には、このような分配弁45を備える第1変形例の親子バーナ10が示されている。第1変形例の親子バーナ10は、
図2を用いて前述した第1実施例および第2実施例の親子バーナ10に対して、親側の開閉弁42pおよび子側の開閉弁42cが、分配弁45に変更されている点で異なるが、その他の点については、第1実施例および第2実施例と同様である。
【0087】
分配弁45は、1つの流入ポートと2つの流出ポートを備え、内部で移動する弁体を備えた周知の分配弁である。分配弁45は、内蔵されている弁体を移動させると、一方の流出ポートの開口面積が増加し、それに伴って他方の流出ポートの開口面積が減少するようになっている。流入ポートにはガス供給パイプ40が接続されており、一方の流出ポートには親側の接続パイプ40pが接続され、他方の流出ポートには子側の接続パイプ40cが接続されている。そして、制御部50は分配弁45の弁体の位置を制御可能となっている。
【0088】
このような第1変形例の親子バーナ10では、制御部50が分配弁45の弁体の位置を制御することによって、ガス供給パイプ40から分配弁45に流入した燃料ガスを、適切な比率で、親側の接続パイプ40pおよび子側の接続パイプ40cに分配することができる。その結果、前述した第1実施例および第2実施例と同様なメカニズムによって、親子バーナ10が炎溢れ状態となることを防止することが可能となる。
【0089】
C-2.第2変形例 :
前述した第1実施例および第2実施例では、炎溢れ状態となる設定火力よりも大きな火力では、親バーナ10Pの炎Fpは炎溢れ状態とならない大きさに保ったままで、子バーナ10Cの炎Fcを大きくすることによって、親子バーナ10全体としての火力を増加させている。この結果、親バーナ10Pと子バーナ10Cとで炎の干渉が発生し易くなる。特に、
図11に例示したように、親バーナ10Pの炎Fpは子バーナ10Cの炎Fcによって囲まれた状態となるため、燃料ガスが燃焼するための二次空気が不足し易くなり、燃料ガスを効率よく燃焼させることが出来なくなる。そこで、親混合管12の開口端12o(および子混合管13の開口端13o)に、一次空気の空気流量を調節する可変ダンパ70を搭載してもよい。
【0090】
図12は、第2変形例の親子バーナ10に親混合管12に搭載されている可変ダンパ70についての説明図である。図示されるように可変ダンパ70は、親混合管12の開口端12o(
図2参照)に装着された有底で短い円筒形状の固定ダンパ71と、固定ダンパ71よりも一回り大きく形成されて、固定ダンパ71を覆う状態で取り付けられた回転ダンパ72と、回転ダンパ72を回転させるアクチュエータ73とを備えている。
【0091】
固定ダンパ71の円形の底部71aの中央には、ガス噴射ノズル43p(
図2参照)が挿通される挿通孔71cが形成されており、挿通孔71cの両側には、親混合管12に一次空気を取り入れるための空気取入口71bが形成されている。また、回転ダンパ72の円形の底部72aの中央にも、ガス噴射ノズル43pが挿通される挿通孔72cが形成されており、挿通孔72cの両側には、親混合管12に一次空気を取り入れるための空気取入口72bが形成されている。固定ダンパ71の空気取入口71bと、回転ダンパ72の空気取入口72bとは少なくとも一部が重なる位置に形成されており、このため一次空気は、空気取入口71bと空気取入口72bとが重なった部分から親混合管12内に流入する。尚、以下では、空気取入口71bと空気取入口72bとが重なった部分を、「一次空気取入口」と称することがある。
【0092】
また、固定ダンパ71は親混合管12に固定されているが、回転ダンパ72は固定ダンパ71に対して摺動しながら回転可能に取り付けられている。更に、回転ダンパ72の外周側面には図示しないギアが形成されており、このギアには、アクチュエータ73の駆動ギア73gが嵌合している。アクチュエータ73は制御部50に接続されており、制御部50はアクチュエータ73を駆動することで、回転ダンパ72の固定ダンパ71に対する回転位置を変更して、固定ダンパ71の空気取入口71bと回転ダンパ72の空気取入口72bとが重なった部分(一次空気取入口)の面積を変更することが可能となる。そして、一次空気取入口の面積を変更することで、一次空気の流量を変更することが可能となる。尚、第2変形例では、アクチュエータ73としてステップモータが採用されているが、制御部50から回転位置を制御可能なモータであれば、各種の周知なサーボモータを使用することができる。また、第2変形例では、親混合管12だけに可変ダンパ70が搭載されているものとしているが、子混合管13の開口端13o(
図2参照)にも可変ダンパ70を搭載してもよい。
【0093】
前述した第1実施例および第2実施例では、炎溢れ状態を回避するために子バーナ10Cの炎を大きくすると、親バーナ10Pで燃料ガスを燃焼させるための二次空気が不足気味となり(
図11参照)、燃料ガスを効率よく燃焼させることが困難となる。これに対して、上述した第2変形例の親子バーナ10では、親混合管12の開口端12o(
図2参照)に可変ダンパ70が搭載されているので、回転ダンパ72を回転させて、一次空気取入口(空気取入口71bと空気取入口72bとが重なった部分)の面積を増加させることで一次空気の流量を増加させて、二次空気の不足を補うことにより、燃料ガスを効率よく燃焼させることが可能となる。
【0094】
また、子バーナ10Cの炎Fcを大きくすると、親バーナ10Pの炎Fpとの干渉によって、子バーナ10Cでも二次空気が不足気味となる。従って、子混合管13にも上述した可変ダンパ70を搭載しておけば、二次空気の不足を一次空気の増加で補うことで、燃料ガスを効率よく燃焼させることが可能となる。尚、第2変形例の可変ダンパ70は、本発明における「一次空気流量調節手段」に対応する。
【0095】
C-3.第3変形例 :
上述した第2変形例では、親混合管12(および子混合管13)に可変ダンパ70を搭載することで、二次空気の不足を補うものとして説明した。しかし、
図13に示したように、燃焼ファン80と親混合管12の開口端12oとを送風ダクト81で接続することにより、燃焼ファン80から一次空気を供給するようにしてもよい。こうすれば、制御部50で燃焼ファン80の回転速度を制御することで、一次空気の流量を制御することが出来るので、たとえ二次空気が不足気味となっても、一次空気の流量を増加させて二次空気の不足を補うことにより、親バーナ10Pで効率よく燃料ガスを燃焼させることが可能となる。
【0096】
尚、
図13では、親混合管12にのみ送風ダクト81を接続して燃焼ファン80から一次空気を供給しているが、子混合管13にも送風ダクト81を接続して、あるいは別途に燃焼ファン80を設けることで、子混合管13にも一次空気を供給してもよい。こうすれば、子バーナ10Cで二次空気が不足気味となった場合でも、一次空気の増加によって二次空気を補うことで、子バーナ10Cでも効率よく燃料ガスを燃焼させることが可能となる。
【0097】
以上、各種の実施例および各種の変形例の親子バーナ10を搭載したガスコンロ1について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0098】
1…ガスコンロ、 2…コンロ本体、 3…天板、 4…五徳、
5…温度センサ、 6…調理容器検知センサ、 7…グリル扉、
8…コンロ操作ボタン、 9…グリル操作ボタン、 10…親子バーナ、
10C…子バーナ、 10P…親バーナ、 11…バーナ本体、
11a…載置面、 11b…バーナボディ、 12…親混合管、
12o…開口端、 13…子混合管、 13o…開口端、 14…中央筒体、
15…仕切り筒体、 15a…嵌合面、 16…混合室、 16c…子混合室、
16p…親混合室、 20…バーナキャップ、 20h…挿通孔、
21…上側キャップ部、 21a…下向筒状壁、 21b…上側溝、
21f…上側炎口、 22…下側キャップ部、 22a…隔壁筒、
22b…下段溝、 22c…上向筒状壁、 22d…下側溝、
22f…下側炎口、 22u…子炎口、 30…点火プラグ、
31…点火ターゲット、 32…火炎センサ、 40…ガス供給パイプ、
40c、40p…接続パイプ、 41…ガス流量調節弁、 30…点火プラグ、
42、42c、42p…開閉弁、 43c、43p…ガス噴射ノズル、
45…分配弁、 50…制御部、 60…レンジフード、 61…カメラ、
62…炎溢れ状態監視部、 70…可変ダンパ、 71…固定ダンパ、
71a…底部、 71b…空気取入口、 71c…挿通孔、
72…回転ダンパ、 72a…底部、 72b…空気取入口、
72c…挿通孔、 73…アクチュエータ、 73g…駆動ギア、
80…燃焼ファン、 81…送風ダクト。