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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】集合住宅
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/04 20060101AFI20240517BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
E04H1/04 B
E04H9/02 321A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020140262
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035740
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 耕次
(72)【発明者】
【氏名】杉田 浩
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正人
(72)【発明者】
【氏名】金子 怜美
(72)【発明者】
【氏名】山谷 裕介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 絵里
(72)【発明者】
【氏名】花田 諭史
(72)【発明者】
【氏名】松崎 真豊
(72)【発明者】
【氏名】小田 稔
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-097342(JP,A)
【文献】特開平10-306604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/04
E04H 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁に沿って周状に配置された複数の住戸と、
各住戸につながる共用廊下を有するコアスペースと、
複数の第1の通り芯と、
前記第1の通り芯と直交する複数の第2の通り芯と、
前記複数の第1の通り芯と前記複数の第2の通り芯の各交点に配置された複数の柱と、
前記第1の通り芯または前記第2の通り芯に沿って互いに隣接する一対の前記柱を両端とする複数の区間のうち、一部の区間だけに配置された複数の梁と、を有し、
前記コアスペースは前記外壁に面し、前記共用廊下は前記コアスペースの前記外壁に面していない部分に配置され
前記複数の梁は、前記コアスペースに対応する矩形領域を形成する前記区間及び前記コアスペースの内部の前記区間のすべてに設けられた複数の第1の梁と、外壁の一部に沿って設けられた逆梁構造の複数の第2の梁と、順梁構造の第3の梁と、からなり、前記第1の梁は前記第3の梁より梁成が大きい、集合住宅。
【請求項2】
前記第2の梁は前記第3の梁より梁成が大きい、請求項に記載の集合住宅。
【請求項3】
前記コアスペースに隣接して設けられ、前記コアスペースとともに前記集合住宅の中央部に配置されたコアスペース隣接領域を有し、前記コアスペース隣接領域を形成する前記区間及び前記コアスペース隣接領域の内部の前記区間のすべてに前記第1~第3の梁のいずれかが設けられている、請求項またはに記載の集合住宅。
【請求項4】
前記複数の第1の通り芯は通り芯C1~C3からなり、前記複数の第2の通り芯は通り芯R1~R5からなり、通り芯C1,C2及び通り芯R2~R4で囲まれた領域に前記コアスペースが設けられ、通り芯C2,C3及び通り芯R2~R4で囲まれた領域に前記コアスペース隣接領域が設けられている、請求項に記載の集合住宅。
【請求項5】
通り芯C1、C3の通り芯R1~R2間及びR4~R5間に前記第1~第3の梁が設けられていない、請求項に記載の集合住宅。
【請求項6】
通り芯C2,C3の通り芯R1~R2間及びR4~R5間に前記第1~第3の梁が設けられていない、請求項に記載の集合住宅。
【請求項7】
通り芯C1,C2の通り芯R1~R2間及びR4~R5間に前記第1~第3の梁が設けられていない、請求項に記載の集合住宅。
【請求項8】
通り芯R1,R5に前記第1~第3の梁が設けられていない、請求項に記載の集合住宅。
【請求項9】
通り芯C1,C3に沿った前記柱は、通り芯C1,C3に沿った前記外壁から通り芯C2側に入り込んでいない、請求項からのいずれか1項に記載の集合住宅。
【請求項10】
外壁に沿って周状に配置された複数の住戸と、
各住戸につながる共用廊下を有するコアスペースと、
複数の第1の通り芯と、
前記第1の通り芯と直交する複数の第2の通り芯と、
前記複数の第1の通り芯と前記複数の第2の通り芯の各交点に配置された複数の柱と、
前記第1の通り芯または前記第2の通り芯に沿って互いに隣接する一対の前記柱を両端とする複数の区間に配置された複数の梁と、を有し、
前記コアスペースは前記外壁に面し、前記共用廊下は前記コアスペースの前記外壁に面していない部分に配置され、
前記複数の梁は、前記コアスペースに対応する矩形領域を形成する前記区間及び前記コアスペースの内部の前記区間のすべてに設けられた複数の第1の梁と、外壁の一部に沿って設けられた逆梁構造の複数の第2の梁と、順梁構造の第3の梁と、順梁構造の第4の梁からなり、前記第1の梁は前記第3の梁より梁成が大きく、前記第4の梁は前記第3の梁より梁成が小さい、集合住宅。
【請求項11】
前記コアスペースを取り囲む耐震壁を有する、請求項1から1のいずれか1項に記載の集合住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集合住宅に関し、特に平面寸法が制約された中層~超高層の搭状集合住宅(タワーマンション)に関する。
【背景技術】
【0002】
搭状集合住宅では、構造及びレイアウトの優位性から、中央にコアスペースを設けることが一般的である。特許文献1,2には、矩形の平面形状を有し、中央部にエレベータ、階段室、共用廊下などを含むコアスペースが設けられた集合住宅が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-119311号公報
【文献】特開2002-256727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自然災害への強靭性、人口分布の高齢化、柔軟な都市計画等のため、一層4~6住戸程度、40階程度までの搭状集合住宅の開発が進められている。しかし、建物の平面寸法が制約される搭状集合住宅においては、特許文献1、2に記載されているようにコアスペースを中央に設けることが困難な場合がある。
【0005】
本発明は、平面寸法が制約された場合でも付加価値の向上が可能な集合住宅を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の集合住宅は、外壁に沿って周状に配置された複数の住戸と、各住戸につながる共用廊下を有するコアスペースと、を有している。コアスペースは外壁に面し、共用廊下はコアスペースの外壁に面していない部分に配置されている。
一態様では、集合住宅は複数の第1の通り芯と、第1の通り芯と直交する複数の第2の通り芯と、複数の第1の通り芯と複数の第2の通り芯の各交点に配置された複数の柱と、第1の通り芯または第2の通り芯に沿って互いに隣接する一対の柱を両端とする複数の区間のうち、一部の区間だけに配置された複数の梁と、を有し、複数の梁は、コアスペースに対応する矩形領域を形成する区間及びコアスペースの内部の区間のすべてに設けられた複数の第1の梁と、外壁の一部に沿って設けられた逆梁構造の複数の第2の梁と、順梁構造の第3の梁と、からなり、第1の梁は第3の梁より梁成が大きい。
他の態様では、集合住宅は複数の第1の通り芯と、第1の通り芯と直交する複数の第2の通り芯と、複数の第1の通り芯と複数の第2の通り芯の各交点に配置された複数の柱と、第1の通り芯または第2の通り芯に沿って互いに隣接する一対の柱を両端とする複数の区間に配置された複数の梁と、を有し、複数の梁は、コアスペースに対応する矩形領域を形成する区間及びコアスペースの内部の区間のすべてに設けられた複数の第1の梁と、外壁の一部に沿って設けられた逆梁構造の複数の第2の梁と、順梁構造の第3の梁と、順梁構造の第4の梁からなり、第1の梁は第3の梁より梁成が大きく、第4の梁は第3の梁より梁成が小さい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、平面寸法が制約された場合でも付加価値の向上が可能な集合住宅を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る集合住宅の概略平面図である。
図2図1に示す集合住宅の概略縦側面図である。
図3図1に示す集合住宅の効果を説明する概略断面図である。
図4】第2の実施形態に係る集合住宅の概略平面図である。
図5】第3の実施形態に係る集合住宅の概略平面図である。
図6】第4の実施形態に係る集合住宅の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の集合住宅1のいくつかの実施形態について説明する。本発明の集合住宅1は搭状集合住宅(タワーマンション)であり、コアスペース2が設けられている。しかし、平面寸法が制限されていることから、コアスペース2を集合住宅1の中央部に設けることは困難である。本発明は搭状集合住宅を対象とし、本発明を限定するものではないが、一辺の長さが15~35m程度、あるいはコアスペース2の両側に住戸が1戸ずつ配置される程度の平面寸法を有する、矩形形状の搭状集合住宅を対象とする。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る集合住宅1の平面図を、図2は集合住宅1の断面図を示している。図1図2のC-C線からみた平面図であり、図2図1のA-A線に沿った縦断面図である。図1を参照すると、集合住宅1は外壁13に沿って周状に配置された複数の住戸RM1~RM5と、コアスペース2と、を有している。住戸は各階に5つ設けられているが、住戸の数は限定されない。住戸RM1~RM5間、住戸RM1~RM5とコアスペース2間は、間仕切り壁14で相互に仕切られている。各住戸RM1~RM5の外壁13にはバルコニー6が設けられている。コアスペース2はエレベータ3と、階段室4と、各住戸RM1~RM5につながる共用廊下5と、を有している。コアスペース2は外壁13に面しており、集合住宅1の中心に対して偏心した位置に設けられている。しかし、共用廊下5はコアスペース2の外壁13に面していない部分、具体的には集合住宅1のほぼ中央部に、略矩形の形状で設けられている。このため、本実施形態の集合住宅1では、共用廊下5をコアスペースの外周に沿って周回することなく、最短距離で各住戸RM1~RM5へのアクセスが可能となっている。また、共用廊下5は集合住宅1の屋内部分に設けられた内部廊下であるため、一般的な搭状集合住宅1と同様、居住者が風雨に晒されることがなく、一旦集合住宅1に入ればプライバシーも保たれる。これらの特徴により集合住宅1の付加価値が向上する。
【0011】
図1を参照すると、集合住宅1は複数の柱11と、柱11間に設けられた複数の梁12A~12Cとを有し、柱11と梁12A~12Cはフレーム構造を構成している。しかし、本実施形態では、フレーム構造を構成する梁の一部が設けられていない。この点についてより具体的に説明する。
【0012】
集合住宅1は、複数の第1の通り芯(本実施形態では、長辺方向と平行な通り芯C1~C3)と、第1の通り芯と直交する複数の第2の通り芯(本実施形態では、短辺方向と平行な通り芯R1~R5)と、を有している。コアスペース2は、概ね通り芯C1,C2,R2,R4で囲まれた領域に設けられている。複数の第1の通り芯C1~C3と複数の第2の通り芯R1~R5の各交点に柱11が配置されている。以下の説明で、第1の通り芯C1~C3または第2の通り芯R1~R5に沿って互いに隣接する一対の柱11を両端とする領域を「区間」という。区間は、互いに直交する通り芯C1~C3,R1~R5によって形成される格子の、単位矩形の一辺に相当する。以下の説明において、Xを通り芯、Y1,Y2を通り芯Xと直交し且つ互いに隣接する2つの通り芯としたときに、通り芯XのY1,Y2によって分割された一区間をX(Y1,Y2)と称することがある。区間は一つの梁が設けられる領域に対応し、通常はすべての区間に梁が設けられてフレーム構造が形成される。これに対して、本実施形態では、一部の区間に梁が設けられない部分無梁フレーム構造が形成される。
【0013】
複数の梁12A~12Cは、複数の第1の梁12Aと、複数の第2の梁12Bと、複数の第3の梁12Cと、からなっている。第1の梁12Aと第3の梁12Cは順梁であり、第2の梁12Bは逆梁である。第1の梁12Aはコアスペース2に対応する矩形領域(通り芯C1,C2,R2,R4で囲まれた区間)を形成するすべての区間と、コアスペース2の内部の区間R3(C1,C2)に設けられている。コアスペース2に対応する矩形領域とは、通り芯C1~C3,R1~R5によって形成される格子状の複数の単位矩形のうち、コアスペース2の面積が半分以上である単位矩形からなる領域である。具体的には、通り芯C1~C3,R1~R5によって形成される単位矩形は合計8つあり、このうち、コアスペース2が含まれる単位矩形は、通り芯C1~C2,R1~R4で囲まれる3つの単位矩形である。そして、この3つの単位矩形のうち、通り芯C1~C2,R1~R2で囲まれる単位矩形はほとんどが住戸RM3,RM5で占められおり、通り芯C1~C2,R2~R3で囲まれる単位矩形と、通り芯C1~C2,R3~R4で囲まれる単位矩形は、ほとんどがコアスペース2で占められている。従って、コアスペース2に対応する矩形領域は、通り芯C1~C2,R2~R4で囲まれる矩形領域となる。第2の梁12Bは通り芯C3に沿った区間C3(R2,R3)、C3(R3,R4)に設けられ、バルコニー6の手摺としても利用される。第3の梁12Cは、通り芯R1、R5に沿ったすべての区間、区間C2(R1~R2)、区間C2(R4~R5)、区間R2(C2~C3)、区間R3(C2~C3)、区間R4(C2~C3)に設けられている。第1の梁12Aは第3の梁12Cより梁成及び断面積が大きい。第3の梁12Cの梁成は850mm程度であり、第1の梁12Aの梁成は950mm程度である。または、第1の梁12Aの梁成は、コアスペース2に耐震要素を集中させるため、第3の梁12Cの梁成より10%程度大きくされる。第2の梁12Bは梁成の制限が厳しくない(バルコニー6の手摺の高さまで梁成を増やすことができる)ため、第3の梁12Cよりも梁成及び断面積を大きくし、構造耐力を容易に確保することができる。一例では、第2の梁12Bの梁成は1000mm程度である。通り芯R1,R5に沿った区間の第3の梁12Cは順梁である。一方、通り芯C1、C3の通り芯R1~R2間とR4~R5間には第1~第3の梁12A~12Cのいずれも設けられていない。以下の説明で、梁が設けられていない区間を無梁区間という。
【0014】
コアスペース2に隣接して設けられ、コアスペース2とともに集合住宅1の中央部に配置された領域をコアスペース隣接領域7(通り芯C2,C3,R2,R4で囲まれた領域)と称する。コアスペース隣接領域7を形成するすべての区間(コアスペース2と重複する区間を除く)と、コアスペース隣接領域7の内部のすべての区間には、第2の梁12Bまたは第3の梁12Cが設けられている(無梁区間を設けていない)。コアスペース2は構造要素が最も集中して設けられた領域であり、コアスペース隣接領域7は、コアスペース2に次いで構造要素が集中して設けられた領域である。本実施形態では、コアスペース2のすべての区間とコアスペース隣接領域7のすべての区間に、第1~第3の梁12A~12Cのいずれかを設ける一方、コアスペース2及びコアスペース隣接領域7の両側ないし両翼(通り芯R1,R2の間の領域及び通り芯R4,R5の間の領域)には無梁区間を集中的に設け、全体として建物に必要な構造要素を確保している。換言すれば、コアスペース2及びコアスペース隣接領域7の両側の領域は住戸が集中する領域であることから、無梁区間を集中配置し、後述するように開放感と良好な採光性を備えた住戸空間を実現している。
【0015】
通り芯C1,C3に沿った柱11は、通り芯C1,C3に沿った外壁13から通り芯C2側に入り込んでいない。すなわち、通り芯C1,C3側ではいわゆるアウトフレーム構造を採用している。住戸RM1~RM5内に柱11の出張りがなくなるため、住戸内の空間を有効に使うことができる。
【0016】
また、本実施形態では免震構造を採用しているため、無梁区間を設けたことにより建物の耐力が低下した場合も、地震力を低減することができる。コアスペース2が偏心しているため、免振装置(積層ゴム)8の配置は建物の重量分布に従い適宜設定することが好ましい。図示は省略するが、敷地条件や求められる耐震性能により、免震構造の代わりに制振構造や耐震構造を採用することもできる。
【0017】
図3(a)には図1のB-B線に沿った断面図を示す。バルコニー6側に梁が設けられていないため、室内からサッシ9を介して室外を見たときの視野角θが大きく、開放感及び採光性が改善される。図3(b)はバルコニー6側に梁122が設けられた比較例の断面図を示す。梁122がバルコニー6の天井付近の視界を遮るため、視野角θが小さく、開放感、採光性とも本実施形態より不利である。図3(c)に示すように、逆梁222を設けることで、バルコニー6の天井付近の視界を改善することは可能であるが、逆にバルコニー6の床面付近の視界が低下し、開放感、採光性とも本実施形態より不利である。このように、本実施形態ではバルコニー6側の開放感及び採光性が改善されるため、集合住宅1の付加価値が向上する。また、本実施形態では、バルコニー6側に梁が設けられていないため、給排気ダクトの梁貫通位置を考慮する必要がなくなり、設備設計の自由度が高まる。
【0018】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る集合住宅1の平面図を示している。本実施形態は、通り芯C2,C3の通り芯R1~R2間とR4~R5間に第1~第3の梁12A~12Cのいずれも設けられていない(無梁区間とされている)ことを除き、第1の実施形態と同じである。具体的には、コアスペース2とコアスペース隣接領域7の構造は第1の実施形態と同じである。第3の梁12Cは、通り芯R1,R5に沿ったすべての区間、通り芯C1の通り芯R1~R2間とR4~R5間、区間R2(C2~C3)、区間R3(C2~C3)、区間R4(C2~C3)に設けられている。一方、通り芯C2,C3の通り芯R1~R2間とR4~R5間には第1~第3の梁12A~12Cのいずれも設けられていない。従って、住戸RM1,RM3に関しては第1の実施形態と同様、バルコニー6側の開放感と採光性の改善が実現される。また、住戸RM1,RM3内には通り芯C2が通っているが、通り芯C2に沿った区間C2(R1,R2)及びC2(R4,R5)に梁が存在しないため、住戸内を横切る梁がなくなり、住戸RM1,RM3の開放性が一段と向上する。本実施形態でも、通り芯C3には逆梁(第2の梁12B)が設置されている。これに対して、通り芯C1には順梁(第3の梁12C)が設置されている。すなわち、コアスペース2内の区間C1(R2,R3)及びC1(R3,R4)を逆梁とすると、エレベータホールの床面に梁が現れ、エレベータホールとして使用することが困難となる。従って、コアスペース2内の区間C1(R2,R3)及びC1(R3,R4)は順梁とすることが好ましい。そして、梁構造は一つの通り芯で統一することが望ましいことから、区間C1(R1,R2)及びC1(R4,R5)も順梁としている。しかし、このような問題が生じない場合、区間C1(R1,R2)及びC1(R4,R5)を逆梁とすることも可能である。
【0019】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係る集合住宅1の平面図を示している。本実施形態は、通り芯C1,C2の通り芯R1~R2間とR4~R5間に第1~第3の梁12A~12Cのいずれも設けられていない(無梁区間とされている)ことを除き、第1の実施形態と同じである。具体的には、コアスペース2とコアスペース隣接領域7の構造は第1の実施形態と同じである。第2の梁12Bは、通り芯C3に沿ったすべての区間に設けられている。第3の梁12Cは、通り芯R1,R5に沿ったすべての区間、区間R2(C2~C3)、区間R3(C2~C3)、区間R4(C2~C3)に設けられている。一方、通り芯C1,C2の通り芯R1~R2間及びR4~R5間には第1~第3の梁12A~12Cのいずれも設けられていない。従って、住戸RM4,RM5に関しては第1の実施形態と同様、バルコニー6側の開放感と採光性の改善が実現される。また、住戸RM1,RM2に関しては、住戸内を横切る梁がないため、第2の実施形態と同様、開放性が一段と向上する。
【0020】
(第4の実施形態)
図6は、本発明の第4の実施形態に係る集合住宅1の平面図を示している。本実施形態は、通り芯R1,R5に第1~第3の梁12A~12Cのいずれも設けられていない(無梁区間とされている)ことを除き、第1の実施形態と同じである。第2の梁12Bは、通り芯C3に沿ったすべての区間に設けられている。第3の梁12Cは、通り芯C1,C2の通り芯R1~R2間とR4~R5間、区間R2(C2~C3)、区間R3(C2~C3)、区間R4(C2~C3)に設けられている。一方、通り芯R1,R5には第1~第3の梁12A~12Cのいずれも設けられていない。本実施形態では、住戸RM1,RM3~RM5に関しては、第1の実施形態と同様の理由により、通り芯R1,R5に沿ったバルコニー6側の開放感と採光性の改善が実現される。なお、通り芯C3に沿った梁は逆梁であり、通り芯C1に沿った梁は順梁である。
【0021】
(変形例)
以上、本発明をいくつかの実施形態によって説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、コアスペース2を取り囲む耐震壁を設けることができる。具体的には通り芯C1,C2の通り芯R2~R4間、区間R2(C1,C2)、区間R4(C1,C2)に耐震壁を設けることができる。これらの区間には外壁13、またはコアスペース2と住戸RM2,RM4,RM5の間仕切り壁14が設けられているため、これらを耐震壁に変更することは容易である。これによって、コアスペース2の構造要素をさらに補強し、それによって建物全体の強度をさらに向上させることができる。なお、耐震壁はこれらの区間の一部だけ(例えば、区間R2(C1,C2)、区間R4(C1,C2)のみ)に設けることも可能である。
【0022】
さらに、上述した無梁区間に順梁構造の第4の梁を設けることもできる。この場合、従来と同様、すべての区間に梁が配置される。第3の梁12Cは第1の梁12A及び第2の梁12Bより梁成が小さく、第4の梁は第3の梁12Cより梁成がさらに低くされる。この場合、開放性や採光性は上述の実施形態と比べて若干不利となることもあるが、建物全体の強度の確保が容易となる。
【0023】
さらに、上述の各実施形態では全フロアに部分無梁フレーム構造を適用しているが、一部のフロアだけに部分無梁フレーム構造を適用することもできる。例えば、地震力が小さい上階では部分無梁フレーム構造とし、下階は無梁部のないフレーム構造とすることができる。同様の理由から、無梁区間の数を上階で増やし、下階で減らすこともできる。
【符号の説明】
【0024】
1 集合住宅
2 コアスペース
5 共用廊下
7 コアスペース隣接領域
11 柱
12A~12C 第1~第3の梁
13 外壁
C1~C3 第1の通り芯
R1~R5 第2の通り芯
RM1~RM5 住戸
図1
図2
図3
図4
図5
図6