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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
   B67D 3/00 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
B67D3/00 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020143804
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022039028
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】嘉戸 修治
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 泰光
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-113138(JP,A)
【文献】特開2000-281133(JP,A)
【文献】特許第4854820(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/00- 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の収容空間に貯えた液体を前面下部に設けた注出部から注出する液体収容袋を収納可能とする袋収納部を備えた液体用のディスペンサであって、
前記袋収納部には前記液体収容袋内の液体を前記注出部側に寄せるためのプレートと、前記液体収容袋内の液体を前記注出部側に寄せる方向に前記プレートを付勢する付勢部材とを設け
前記袋収納部には前記プレートと前記付勢部材とが下部に取り付けられて前記液体収容袋を収納可能とした袋収納箱が着脱可能に取り付けられており、
前記袋収納箱には前記プレートが前記液体収容袋内の液体を前記注出部側に寄せていない位置で移動しないようにロックするロック機構を設け、
前記袋収納部には前記袋収納箱を取り付けたときに前記ロック機構を解除するロック解除機構を設けたことを特徴とするディスペンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のディスペンサにおいて、
前記プレートは後部が上下動するように前部が水平軸線回りに回動可能に軸支され、
前記付勢部材は前記プレートの後部を前記液体収容袋の重量に応じて上側に付勢していることを特徴とするディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容袋内の飲料等の液体を注出部から注出するディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には飲料水を収容する袋体に開閉自在な注水栓(注出部)を備えている飲料水バッグ(液体収容袋)をバッグ収納室に取替自在に収容するウォーターサーバー(ディスペンサ)が開示されている。このウォーターサーバーは、飲料水バッグを取替自在に収納するバック収納室と、収納室を支持するサーバー台の間に冷却室を備え、冷却室に冷却手段の熱交換器を備えている。飲料水バッグの注水栓はバッグ収納室の前壁下部に設けた栓取出口から外部に露出しており、飲料水バッグ内の飲料水は冷却室内の熱交換器により冷却された状態にて注水栓から外部のカップ等の容器に注出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-163539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1のウォーターサーバーにおいては、飲料水バッグの下部には袋体内の飲料水を注出する注水栓が設けられており、飲料水バッグの注水栓はバッグ収納室内の前壁下部に設けた栓取出口から外部に露出している。また、注水栓は飲料水バッグの下端位置よりも少し高い位置に取り付けられており、飲料水バッグ内の飲料水は注水栓よりも下側の水位となると注出栓から注水されないようになる。飲料水バッグがバッグ収納室内に収納されていなければ、飲料水バッグを前側に傾けることで、飲料水バッグ内の注水栓より下側の水位の飲料水を注出することができる。しかし、飲料水バッグはバッグ収納室内に収納されているので、飲料水バッグを前側に傾けることができず、飲料水バッグの下部に飲料水が残ることになる。本発明は、液体収容袋内の液体を注出するディスペンサにおいて、液体収容袋の下部に液体が残りにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、内部の収容空間に貯えた液体を前面下部に設けた注出部から注出する液体収容袋を収納可能とする袋収納部を備えた液体用のディスペンサであって、袋収納部には液体収容袋内の液体を注出部側に寄せるためのプレートと、液体収容袋内の液体を注出部側に寄せる方向にプレートを付勢する付勢部材とを設け、袋収納部にはプレートと付勢部材とが下部に取り付けられて液体収容袋を収納可能とした袋収納箱が着脱可能に取り付けられており、袋収納箱にはプレートが液体収容袋内の液体を注出部側に寄せていない位置で移動しないようにロックするロック機構を設け、袋収納部には袋収納箱を取り付けたときにロック機構を解除するロック解除機構を設けたことを特徴とするディスペンサを提供するものである。
【0006】
上記のように構成したディスペンサにおいては、袋収納部には液体収容袋内の液体を注出部側に寄せるためのプレートと、液体収容袋内の液体を注出部側に寄せる方向にプレートを付勢する付勢部材とを設けたので、液体収容袋内の液体が少なくなっても、液体収容袋内の液体は付勢部材によって注出部側に付勢されるプレートにより注出部側に寄せられるようになり、液体収容袋内の下部に液体を残りにくくすることができる。また、プレートを液体収容袋内の液体が注出部側に寄せていない位置で移動しないようにロック機構によってロックしておくことで、液体収容袋をプレートに遮られることなく袋収納箱に収納しやすくすることができる。さらに、液体収容袋を収納した袋収納箱を袋収納部に収納したときに、ロック機構がロック解除機構によって解除されるので、袋収納箱を筐体内の袋収納部に収納するだけで、液体収容袋内の液体が注出部側に寄るようにプレートを付勢部材により付勢することができるので、液体収容袋の交換作業に手間がかかりにくくすることができる。
【0007】
上記のように構成したディスペンサにおいては、プレートは後部が上下動するように前部が水平軸線回りに回動可能に軸支され、付勢部材はプレートの後部を液体収容袋の重量に応じて上側に付勢するようにしてもよい。このようにしたときには、プレートは液体収容袋内の液体が減少して液体収容袋が軽くなると注出部側となる前側に回動するようになり、液体収容袋内の液体は注出部側に回動するプレートによって注出部側に寄せられるようになり、液体収容袋内の下部に液体を残りにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明によるディスペンサを斜め前方から見た斜視図である。
図2】フロントカバーを開放した状態の図1の斜視図である。
図3】液体収容袋を前方から見た斜視図である。
図4】液体収容袋を袋収納箱に収容した状態で、袋収納箱だけを前後方向に沿って切断した縦方向断面図である。
図5】袋収納箱と受皿部とドレンパンとを取り外した状態の図2に相当する斜視図である。
図6】ロック機構を解除した状態で液体収容袋の飲料が減少したときの図4に相当する縦方向断面図(a)であり、液体収容袋の飲料がさらに減少して空となったときの図4に相当する縦方向断面図(b)である。
図7】弁機構操作部が配置される位置で前後方向に沿って切断した縦方向断面図である。
図8】弁機構操作部の正面図(a)、A-A断面図(b)、B-B断面図(c)及び駆動機構部により操作レバーを開放位置に移動させた状態のA-A断面図(d)である。
図9】載置部を前方から見た斜視図(a)、載置部を前後方向に沿って切断した断面図(b)及び受皿部を取り外した状態の前後方向に沿って切断した断面図(c)である。
図10】制御装置のブロック図である。
図11】自動注出プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のディスペンサの一実施形態を図面を参照して説明する。この実施形態のディスペンサ10は、注出コック21からグラスやデカンタ等の飲料用容器(液受容器)にワイン等の飲料(液体)を自動注出するものである。図1及び図2に示したように、ディスペンサ10は、筐体11内に液体収容袋20を収納するため袋収納部12を備え、袋収納部12は筐体11の前面上端部に水平軸線回りに回動可能に設けたフロントカバー13によって開閉自在に塞がれている。この実施形態の袋収納部12は、2つの液体収容袋20を左右に並べて収納可能な広さとなっている。また、筐体11の下部には冷凍装置14が設けられており(図7に示した)、袋収納部12は冷凍装置14によって冷却されている。なお、袋収納部12を冷凍装置14に代えてペルチェ素子や保冷材を用いて冷却するようにしてもよい。図2に示したように、袋収納部12の前側下部には液体収容袋20の注出コック21を取り付けるための取付板15が固定されており、取付板15には注出コック21を取り付けるためのU字形の係合凹部15aが形成されている。
【0011】
図3に示したように、液体収容袋20はこのディスペンサ10で注出する飲料(液体)を貯えるものであり、変形可能な柔軟性を有した樹脂材を用いた容器である。この実施形態の液体収容袋20は、2~3層の長方形状の2枚のフィルムの四方の周縁部(周部)をヒートシール法やインパルスシール法で熱溶着(固着)させて封止し、内部に密閉(密封)状態の収容空間を形成したフィルム袋としたものである。液体収容袋20の周縁部にはフィルムを溶着させる熱溶着部20aが形成されている。なお、液体収容袋20は上記のフィルムタイプに限られるものではなく、内部に収容空間が形成されるように略直方体形状等の形状に成型したコンテナ形の成型タイプのものであってもよい。
【0012】
この実施形態では、液体収容袋20の下部の角部には液体を注出するための注出コック(注出部)21が熱溶着によって溶着されている。注出コック21は、内蔵する弁機構部(図示省略)を開放させることで液体収容袋20内の液体を外部に注出するものである。注出コック21にはレバー21aが設けられており、弁機構部はレバー21aを上側に移動させることによって開放される。レバー21aは注出コック21に内蔵されているばね部材(図示省略)によって弁機構部を閉止させるように下側に付勢されている。注出コック21は液体収容袋20内の飲料残量をできるだけ少なくするために右下の角部近傍に熱溶着(固着)されていて、注出コック21は液体収容袋20に熱溶着するための溶着フランジ部21bを備えている。注出コック21の溶着フランジ部21bを液体収容袋20の下縁部の熱溶着部20aに対して離して溶着する必要があり、液体収容袋20の下縁に対して間隔を介して溶着されている。同様に、注出コック21は、液体収容袋20の右側縁部の熱溶着部20aに対して離して溶着する必要があり、液体収容袋20の右側縁に対して間隔を介して溶着されている。
【0013】
図4に示したように、液体収容袋20の下部には注出コック21の後側に飲料の通路が形成された状態で結束具22が取り付けられており、結束具22は、液体収容袋20の注出コック21より下側部分を持ち上げて、液体収容袋20の下部にて注出コック21より下側に液体収容袋20の収容空間が形成されないようにしている。結束具22は注出コック21の飲料の流入口より大きな内径を有した環形状をし、液体収容袋20の下部は結束具22により注出コック21への飲料の通路が形成された状態で液体収容袋20の注出コック21の周縁部を結束している。結束具22は、可撓性のC形のクランプを用いて、クランプの両側の開口端部を連結させて環形状としたり、可撓性の結束バンドを用いて、結束バンドを環形状に形成するようにしたものであってもよい。さらに、結束具22を注出コック21の後側で延出する筒形状としたものであってもよく、筒形状の結束具22であるときには、注出コック21の後側に飲料を導く通路を長く形成することができる。
【0014】
図2及び図5に示したように、液体収容袋20は袋収納箱30によって筐体11の袋収納部12に出し入れ自在に収納されており、袋収納箱30は筐体11の袋収納部12に着脱可能に取り付けられている。図2は液体収容袋20が袋収納箱30を介して筐体11の袋収納部12に収納された状態を示しており、図5は液体収容袋20を収納した袋収納箱30を袋収納部12から取り外した状態を示している。図2及び図4に示したように、袋収納箱30は、上面が開口した略直方体形状をし、内部に液体収容袋20を収納可能としている。袋収納箱30の前壁下部には開口部30aが形成されており、液体収容袋20の注出コック21は開口部30aから前側に露出可能となっている。注出コック21は開口部30aから露出して取付板15の係合凹部15aに係合して取り付けられている。
【0015】
図4に示したように、袋収納箱30の下部には液体収容袋20の下側に液体収容袋20内の飲料を前側の注出コック21側に寄せるためのプレート31が設けられている。プレート31は後部が上下動するように前部が水平軸線回りに回動可能に軸支されている。袋収納箱30の前部にはプレート31の前部の位置にばね部材(付勢手段)32が設けられており、プレート31はばね部材32によって液体収容袋20の重量に応じて後部が上側に付勢されている。ばね部材32は、液体収容袋20内の飲料が多い(満量の)ときにプレート31を上側に回動させることができず、図6(a)に示したように、液体収容袋20内の飲料の減少に伴ってプレート31を少しずつ上側に回動させ、図6(b)に示したように、液体収容袋20内の液体が空となっているときにプレート31を鉛直または鉛直よりも前側に回動させるように設定されている。
【0016】
図4図7に示したように、袋収納箱30の下部にはプレート31の後部が上側に回動(移動)するのをロックするロック機構33が設けられており、筐体11の袋収納部12には袋収納箱30を袋収納部12に収納したときにロック機構33を解除するロック解除機構36が設けられている。ロック機構33は、プレート31が液体収容袋20内の飲料を注出コック21側に寄せていない位置である、プレート31の後部を袋収納箱30の下部位置で回動(移動)しないようにロックするものである。
【0017】
図4に示したように、ロック機構33は、プレート31の後端部にて前後に移動可能に設けたロックピン34と、ロックピン34を後方に付勢するコイルスプリング35と、袋収納箱30の後壁下部に形成されてロックピン34が係合可能な係合孔部30bとを備えている。プレート31の後部を袋収納箱30の下部に配置させ、ロックピン34をコイルスプリング35の付勢力によって後方に付勢させているときには、ロックピン34が袋収納箱30の後壁下部の係合孔部30bに係合し、プレート31は液体収容袋20内の飲料を注出コック21側に寄せていない位置で移動しないようにロックされている。
【0018】
図5及び図7に示したように、ロック解除機構36は、袋収納部12の後部にて前方に突出する突起部37を備えている。袋収納箱30を袋収納部12に収納したときに、突起部37は袋収納箱30の後壁下部の係合孔部30bに挿通され、ロックピン34を係合孔部30bに係合した状態から離脱させる。
【0019】
図4に示したように、袋収納箱30を筐体11内の袋収納部12に収納させていない状態で、プレート31の後部を袋収納箱30内の下部に配置させているときには、ロックピン34はコイルスプリング35の付勢力によって後方に付勢されて袋収納箱30の係合孔部30bに係合し、プレート31の後部はロック機構33によって上側に回動しないようにロックされている。このため、袋収納箱30内に収納した液体収容袋20内の飲料はプレート31によって注出コック21側に寄せてられていない状態となっている。
【0020】
図7に示したように、ロック機構33によるロックピン34を袋収納箱30の係合孔部30bに係合させた状態で、袋収納箱30を筐体11内の袋収納部12に収納すると、ロック解除機構36を構成する突起部37が袋収納箱30の係合孔部30bに挿通され、ロックピン34はコイルスプリング35の付勢力に抗して係合孔部30bに係合した状態から前側に戻され、プレート31はロック解除機構36によってロック機構33によるロックされた状態が解除される。ロック機構33がロック解除機構36によって解除されると、プレート31の後部はばね部材32によって上側に付勢され、プレート31は液体収容袋20内の液体を注出コック21側に寄せるようにばね部材32により付勢されるようになる。
【0021】
図7に示したように、袋収納部12の下部には台秤構造40が設けられている。台秤構造40は袋収納箱30を支持する基台部41と、基台部41上の荷重を検出する第1重量センサ42とを備えている。第1重量センサ42は、ロードセルが用いられており、基台部41の下方への変位によるひずみを検出することで、基台部41上の袋収納箱30を含む液体収容袋20内の飲料の重量を検出するものである。
【0022】
図1及び図7に示したように、フロントカバー13の下部には取付板15の係合凹部15aに係合させた注出コック21の前側位置に弁機構操作部50が設けられており、弁機構操作部50は液体収容袋20の注出コック21のレバー21aを操作することで注出コック21の弁機構部を開閉操作する。弁機構操作部50は、フロントカバー13の前面下部に設けたケーシング51と、ケーシング51に水平軸線回りに回動可能に支持された操作レバー52と、操作レバー52を回動させる駆動機構部54とを備えている。弁機構操作部50は、駆動機構部54により操作レバー52を自動で操作可能であるとともに、操作レバー52を手動で操作可能としたものである。
【0023】
図7及び図8に示したように、操作レバー52はケーシング51内で前後方向に延びた中央部より少し後側部が水平軸線回りに回動可能に支持され、操作レバー52の前部及び後部はケーシング51の前壁及び後壁から前方及び後方に突出している。操作レバー52の前部はケーシング51の前壁から前方に突出してユーザによって操作可能な操作部52aとなっている。操作レバー52の後部はケーシング51の後壁から注出コック21のレバー21aの下側に突出しており、レバー21aを上側に移動させる作用部52bとなっている。
【0024】
図8(b)に示したように、ケーシング51内には操作レバー52の前部の操作部52aを上側に付勢するばね部材53が設けられており、ばね部材53は、操作レバー52の前部の操作部52aを上側に、操作レバー52の後部の作用部52bを下側となる閉止位置に付勢している。操作レバー52の操作部52aに下側に移動させる力を付与すると、操作レバー52の作用部52bがばね部材53の付勢力に抗して上側の開放位置に移動する。注出コック21のレバー21aは開放位置に移動する操作レバー52の作用部52bによって上側に押し上げられて、注出コック21の弁機構部が開放される。操作レバー52の操作部52aに下側に移動させる力を取り除くと、操作レバー52の作用部52bがばね部材53の付勢力によって下側の閉止位置に移動し、注出コック21のレバー21aは下側に戻されて、注出コック21の弁機構部が閉止される。
【0025】
駆動機構部54は、操作レバー52を上下動させるカムローラ55と、カムローラ55を回動させるギヤモータ56とを備えている。カムローラ55は操作レバー52の上側でギヤモータ56の従動ギヤ56dの回転軸56eに取り付けられている。図8(b)に示した位置から、ギヤモータ56を駆動させることによってカムローラ55を図8(d)に示した下側位置に回動させると、操作レバー52の前部の操作部52aが下側に後部の作用部52bが上側に移動し、注出コック21のレバー21aが上側に押し上げられて、注出コック21の弁機構部が開放される。
【0026】
ギヤモータ56は駆動モータ56aと、駆動モータ56aの駆動軸56bに固定された駆動ギヤ56cと、駆動ギヤ56cに噛み合う従動ギヤ56dと、従動ギヤ56dの回転軸56eとを備えている。図8(c)に示したように、従動ギヤ56dの回転軸56eにはセンサプレート56fが固定されており、センサプレート56fの回動角度によって受光または遮光される2つのフォトセンサ56g、56hが設けられている。フォトセンサ56gは、センサプレート56fの回動角度を検出することで、カムローラ55を下側に回動させることで操作レバー52の後部の作用部52bを上側に移動させたことを検知し、注出コック21の弁機構を開放状態としたことを検知している。フォトセンサ56hは、センサプレート56fの回動角度を検出することで、カムローラ55を上側に回動させてることで操作レバー52の後部の作用部52bを下側の閉止位置に移動させたことを検知し、注出コック21の弁機構を閉止状態としたことを検知している。
【0027】
図1図7及び図8に示したように、ケーシング51の前面には注出スイッチ57が設けられており、注出スイッチ57は後述する自動注出プログラムを実行する制御信号を出力して、注出コック21から載置部60に載置したグラスやデカンタ等の飲料用容器に所定量の飲料を注出させる。また、注出スイッチ57には表示ランプ57aが内蔵されており、表示ランプ57aの点灯状態(点灯または点滅)または表示色に応じて、液体収容袋20内の飲料の残量、飲料用容器への注出状態等について表示するようにしている。
【0028】
図1及び図5に示したように、筐体11の前面下部は水平方向の断面形状が内側に凹む前側に開いたコ字形をした取付凹部11aとなっており、取付凹部11aの前面には注出コック21から注出される飲料を受けるグラスやデカンタ等の飲料用容器を載置する載置部60と、載置部60の受皿部62の下側にて溢出する飲料を受けるドレンパン70とが設けられている。図7及び図9に示したように、載置部60は、筐体11内の下部に固定された基台部61と、基台部61に着脱可能に支持されて飲料用容器を載置する受皿部62とを備えている。基台部61には受皿部62を取り付けるためのブラケット部61aが設けられており、ブラケット部61aには2本のシャフト61b,61cが前後に平行に設けられている。
【0029】
受皿部62には基台部61に取り付けるための左右一対のアーム部63が後方に延出して設けられている。アーム部63の上部後端には後側のシャフト61bに下側から係合可能な上側に開いたU字溝63aが形成され、アーム部63の上部後端のU字溝63aより前側位置には前側のシャフト61cに上側から係合可能な下側に開いたU字溝63bが形成されている。アーム部63の後側のU字溝63aが後側のシャフト61bに下側から係合し、アーム部63の前側のU字溝63bが前側のシャフト61cに上側から係合して、受皿部62はアーム部63によって基台部61に着脱可能に支持されている。
【0030】
図1図5及び図9に示したように、受皿部62を筐体11内の基台部61に取り付けるときには、アーム部63を筐体11の前壁下部に形成した挿通孔部11bに挿通させ、アーム部63の後側のU字溝63aを後側のシャフト61bに下側から係合させ、アーム部63の前側のU字溝63bを前側のシャフト61cに上側から係合させて、受皿部62を筐体11の前壁の前側に位置するように基台部61に支持させる。受皿部62を筐体11内の基台部61から取り外すときには、受皿部62を斜め上側に持ち上げて、アーム部63の後側のU字溝63aを後側のシャフト61bから下側に離脱させ、アーム部63の前側のU字溝63bを前側のシャフト61cに上側に離脱させて、受皿部62を前方に引き出して取り外す。
【0031】
図7及び図9に示しように、基台部61にはアーム部63を介して受皿部62の重量を検出する第2重量センサ64が設けられている。第2重量センサ64は、ロードセルが用いられており、アーム部63を介してから伝達される受皿部62の下方への変位によるひずみを検出することで、受皿部62上に載せたグラスやデカンタ等の飲料用容器を含めて注出コック21から注出される飲料の重量を検出するものである。
【0032】
図1及び図5に示したように、ドレンパン70は略直方体形状をして載置部60の受皿部62の下側に配置されている。ドレンパン70の上面には受皿部62の下側に略円形の孔部71が形成されており、孔部71は受皿部62を下側に移動可能としている。ドレンパン70の左右の両側面には後端から前側に延びる水平溝と水平溝の前端から上方に延びる垂直溝とが連続して形成されたL字形溝72が形成されている。筐体11の前面下部の取付凹部11aには側面部に係合突部11cが設けられており、係合突部11cはドレンパン70のL字形溝72に係合可能となっている。ドレンパン70の背面が筐体11の取付凹部11aの前面に当接した状態で、係合突部11cがL字形溝72の垂直溝の上端に係合することで、ドレンパン70は筐体11の取付凹部11aに着脱可能に取り付けられている。
【0033】
図10に示したように、ディスペンサ10は、グラスやデカンタ等の飲料用容器に飲料を注出するのを制御する制御装置80を備えている。制御装置80は、第1重量センサ42、ギヤモータ56と、注出スイッチ57及び第2重量センサ64に接続されている。制御装置80は、マイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(いずれも図示省略)を備えている。
【0034】
制御装置80のメモリには飲料を自動注出する自動注出プログラムが記憶されており、自動注出プログラムは第1及び第2重量センサ42,64の検出重量に基づいて弁機構操作部50のギヤモータ56を制御し、受皿部62に載置したグラスやデカンタ等の飲料用容器に飲料を自動注出するように制御する。
【0035】
このディスペンサ10においては、第2重量センサ64による検出重量に基づいて、操作レバー52を開放位置から閉止位置に移動させるように、弁機構操作部50のギヤモータ56を作動開始させて、注出コック21の弁機構部を開放状態から閉止させるようにしている。しかし、第2重量センサ64の感度等によって重量の検出遅れや、弁機構操作部50のギヤモータ56を作動開始させてから、注出コック21の弁機構部を開放状態から閉止完了させるまでに僅かであるが時間を要するので、受皿部62に載置した飲料用容器に設定量の飲料が注出され、第2重量センサ64によって所定重量を検出後に注出コック21からの飲料を停止させようとしても、注出コック21から僅かであるが飲料が注出されることになる。
【0036】
また、このディスペンサ10は、液体収容袋20内の飲料を自重によって下部の注出コック21から送り出して注出するようにしたものであり、注出コック21から注出される飲料の流量(注出速度:v)は、下記に示すトリチェリの定理によって液体収容袋20内の飲料(液体)の残量(液体の高さ)によって変化することが知られている。
v=√(2×g×h)
g:重量
h:液体の高さ(液面の高さ)
このように、このディスペンサ10では、液体収容袋20内の飲料が多い(液体の液面が高い)ときには、注出コック21から注出される飲料の流量が多く(注出速度が速く)、液体収容袋20内の飲料が減少すると(液体の液面が低くなると)、注出コック21から注出される飲料の流量も減少する(注出速度が遅くなる)ことになる。
【0037】
上述したように、第2重量センサ64によって所定重量を検出後に注出コック21からの飲料を停止させようとしても、注出コック21から僅かであるが飲料が注出されることと、液体収容袋20内の飲料(液体)の残量(液体の高さ)によって注出コック21から注出される飲料の流量が変化することから、第2重量センサ64によって所定重量を検出後に注出コック21から注出される飲料の量は液体収容袋20内の飲料(液体)の残量によって変わることになる。
【0038】
このため、制御装置80は、自動注出プログラムによる注出制御の実行前に、第1重量センサ42により検出される液体収容袋20内の飲料の重量に基づき、注出コック21から注出される飲料の流量を算出する。算出した飲料の流量に弁機構操作部50を閉止させるように操作開始させてから注出コック21の弁機構部が閉止完了するまでに要する時間を乗じた飲料の量となる閉止操作開始後注出量を算出し、自動注出プログラムによる注出制御を実行するときに、グラスやデカンタ等の飲料用容器に注出する設定注出量から閉止操作開始後注出量を減じた重量である閉止開始設定重量を算出する。制御装置80は、自動注出プログラムの注出制御を実行したときに、第2重量センサ64により閉止開始設定重量を飲料用容器の重量より増加した増加分の重量として検出したときに、弁機構操作部50のギヤモータ56を作動開始させて注出コック21の弁機構部を閉止開始させるように制御している。
【0039】
また、このディスペンサ10においては、載置部60の受皿部62に載置した種々の容量の飲料用容器に飲料を注出可能としたものであり、飲料用容器の容量に応じた注出量が設定注出量として設定されている。例えば、飲料用容器がグラスであるときには、設定注出量は180mlと設定され、飲料用容器が小型のデカンタであるときには、設定注出量は300mlと設定され、飲料用容器が大型のデカンタであるときには、設定注出量は500mlと設定されている。制御装置80は、自動注出プログラムの注出制御を実行前に第2重量センサ64により検出される検出重量に基づき受皿部62に載置されている飲料用容器の容量を決定し、決定した飲料用容器の容量に応じて自動注出プログラムの注出制御を実行するときの設定注出量を決定する。
【0040】
また、このディスペンサ10においては、制御装置80は、第1及び第2重量センサ42,64の少なくとも一方の検出重量に基づいて、袋収納箱30の収納状態、液体収容袋20内の飲料残量、受皿部62に載置した飲料用容器での飲料の注出状態等を注出スイッチ57の表示ランプ57aにより表示(報知)するように制御している。
【0041】
詳述すると、袋収納箱30が筐体11の袋収納部12に収納されていないときには、第1重量センサ42により袋収納箱30の重量以上を検出していないことに基づいて、注出スイッチ57の表示ランプ57aを橙色に点灯させ、液体収容袋20を含めて袋収納箱30が筐体11の袋収納部12に収納されていないことを色によって表示(報知)している。これに対し、袋収納箱30が筐体11の袋収納部12に収納されているときには、第1重量センサ42により袋収納箱30の重量以上を検出していることに基づいて、注出スイッチ57の表示ランプ57aを桃色に点灯させ、液体収容袋20を含めて袋収納箱30が筐体11の袋収納部12に収納されていて、飲料の注出を待機する待機状態であることを色によって表示(報知)している。
【0042】
受皿部62にグラスやデカンタ等の飲料用容器を載置すると、制御装置80は、第2重量センサ64によって受皿部62に飲料用容器が載置されたことを検知し、自動注出プログラムを実行する前に注出スイッチ57の表示ランプ57aを青色に点灯させて、注出可能状態であることを色によって表示(報知)している。
【0043】
注出スイッチ57を操作して制御装置80により自動注出プログラムを実行させると、注出スイッチ57の表示ランプ57aを青色に点滅させて、注出状態であることを表示ランプ57aの点滅によって表示(報知)している。自動注出プログラムを実行しているときに、第2重量センサ64により上述した閉止開始設定重量を飲料用容器の重量より増加した増加分の重量として検出したときには、自動注出プログラムを終了するとともに、注出スイッチ57の表示ランプ57aを青色に点灯させて、注出完了したことを表示ランプ57aの点灯によって表示(報知)している。受皿部62から飲料用容器を持ち上げると、制御装置80は、第2重量センサ64によって受皿部62から飲料用容器が持ち上げられたことを検知し、注出スイッチ57の表示ランプ57aを桃色に点灯させて、飲料の注出を待機する待機状態であることを色によって表示(報知)する。
【0044】
また、自動注出プログラムを実行して飲料を注出させたときには、液体収容袋20内の飲料は注出コック21から注出されて徐々に減少する。注出スイッチ57を操作して自動注出プログラムを実行させているときに、液体収容袋20の残量の低下による交換時期が近くなったときの重量であり、液体収容袋20内の飲料の残量が所定の下限値として設定された設定下限重量より減少し、第1重量センサ42により設定下限重量以下の重量を検出すると、制御装置80は、注出スイッチ57の表示ランプ57aを青色に代えて橙色に点滅させて、飲料の注出中に液体収容袋20内の飲料の残量が少なくなったことを点滅によって表示(報知)している。液体収容袋20内の飲料の残量が少ない状態で自動注出プログラムを実行しているときに、第2重量センサ64により上述した閉止開始設定重量を飲料用容器の重量より増加した増加分の重量として検出したときには、自動注出プログラムを終了するとともに、注出スイッチ57の表示ランプ57aを青色に点灯させて、注出完了したことを表示ランプ57aの点灯によって表示(報知)している。
【0045】
これに対し、液体収容袋20内の飲料の残量が少ない状態で自動注出プログラムを実行しているときに、第2重量センサ64により上述した閉止開始設定重量を増加分の重量として検出しないときには、自動注出プログラムを終了せずに、注出スイッチ57の表示ランプ57aを橙色に点滅させた状態を継続し、注出完了していないことを表示ランプ57aの色と点滅状態によって表示(報知)している。液体収容袋20内の飲料不足により注出完了していない状態で、受皿部62から飲料用容器を持ち上げると、制御装置80は、第2重量センサ64によって受皿部62に飲料用容器が持ち上げられたことを検知し、弁機構操作部50のギヤモータ56を制御して操作レバー52の作用部52bを下側の閉止位置に移動させて、注出コック21の弁機構部を閉止状態とし、注出スイッチ57の表示ランプ57aを桃色に点灯させて、待機状態であることを色によって表示(報知)する。
【0046】
次に、このディスペンサ10において、液体収容袋20の袋収納部12の収納作業の手順と飲料の自動注出プログラムの説明をする。液体収容袋20内の飲料残量をできるだけ少ないようにするために、液体収容袋20の下部にて注出コック21の後側に予め結束具22を取り付けておく。液体収容袋20の注出コック21より下側部分は結束具22によって注出コック21の後側で持ち上げられ、液体収容袋20には注出コック21より下側に飲料の収容空間が形成されにくくなる。
【0047】
注出コック21の後側を結束具22で結束した状態で液体収容袋20を袋収納箱30に収納し、液体収容袋20を収納した袋収納箱30を筐体11内の袋収納部12に収納することで、液体収容袋20を袋収納箱30を介して筐体11内の袋収納部12に収納する。液体収容袋20を袋収納箱30に収納するときには、図4に示したように、袋収納箱30の下部のプレート31の後部を下側に回動させ、ロックピン34をコイルスプリング35の付勢力によって後方に付勢させて袋収納箱30の後壁下部の係合孔部30bに係合させるようにして、プレート31の後部がばね部材32によって上側に付勢されないようにロック機構33によってロックしておく。プレート31をロック機構33によりロックした状態で、注出コック21が袋収納箱30の前壁下部の開口部30aから露出するように、液体収容袋20をプレート31の上側で袋収納箱30内に収納し、筐体11のフロントカバー13を開放して、液体収容袋20を収納した袋収納箱30を筐体11内の袋収納部12に収納する。
【0048】
袋収納箱30を筐体11内の袋収納部12に収納したときには、ロック解除機構36を構成する袋収納部12の後部の突起部37が袋収納箱30の後壁下部の係合孔部30bに挿通され、ロックピン34がコイルスプリング35の付勢力に抗して係合孔部30bから突起部37によって内側に戻され、ロック機構33がロック解除機構36によって解除される。ロック機構33がロック解除機構36によって解除されると、プレート31の後部がばね部材32によって上側に付勢されるようになる。また、取付板15より後側に溶着フランジ部21bが配置されるように、注出コック21を取付板15の係合凹部15aに係合させて、筐体11のフロントカバー13を閉じると、注出コック21から飲料を注出可能な状態とすることができる。
【0049】
次に、このディスペンサ10を用いた自動注出プログラムについて図11のフローチャートを用いて説明する。制御装置80は、ステップ101から始まる自動注出プログラムを繰り返し実行しており、ステップ101にて、第1重量センサ42による検出重量が袋収納箱30以上の重量を検出したか否かを判定し、袋収納部12に袋収納箱30が収納されているか否かを判定する。上述したように、液体収容袋20を収納した袋収納箱30を筐体11内の袋収納部12に収納していなければ、注出コック21から飲料を注出することできない。袋収納箱30が筐体11内の袋収納部12に収納されてなく、第1重量センサ42によって袋収納箱30以上の重量が検出されていなければ、制御装置80はステップ101にてNOと判定してステップ102に進める。制御装置80は、ステップ102にて、表示ランプ57aを橙色に点灯させることで、筐体11の袋収納部12に液体収容袋20を含めて袋収納箱30が収納されていないことを表示し、このプログラムを終了し、ステップ101からの処理を再び実行する。
【0050】
これに対し、袋収納箱30が筐体11内の袋収納部12に収納されていて、第1重量センサ42によって袋収納箱30以上の重量が検出されていれば、制御装置80はステップ101にてYESと判定してステップ103に進める。制御装置80は、ステップ103にて、表示ランプ57aを桃色に点灯させることで、筐体11の袋収納部12に液体収容袋20を含めて袋収納箱30が収納されて、飲料の注出を待機する待機状態であることを表示する。
【0051】
制御装置80は、ステップ104にて、第2重量センサ64により飲料用容器の重量に相当する荷重を検出したか否かを判定し、受皿部62にグラスやデカンタ等の飲料用容器が載置されたか否かを判定する。受皿部62に飲料用容器が載置されてなく、第2重量センサ64により飲料用容器の重量に相当する荷重を検出していなければ、制御装置80は、ステップ104にてNOと判定してこのプログラムを終了し、ステップ101からの処理を再び実行する。
【0052】
ステップ101でのYESの判定処理と、ステップ103の処理と、ステップ104でのNOの判定処理とを実行しながら、受皿部62に飲料用容器が載置されるのを待機している状態で、ユーザが受皿部62にグラスやデカンタ等の飲料用容器を載置すると、第2重量センサ64により飲料用容器の重量に相当する荷重が検出され、制御装置80は、ステップ104にてYESと判定してステップ105に進める。制御装置80は、ステップ105にて、第2重量センサ64の検出重量から受皿部62に載置された飲料用容器の種類を決定し、飲料用容器の容量に応じた設定注出量を設定し、弁機構操作部50の作動を開始させる閉止開始設定重量を算出するとともに、表示ランプ57aを青色に点灯させることで、注出スイッチ57をオン操作して注出可能状態であることを表示する。
【0053】
制御装置80は、このステップ105での閉止開始設定重量の算出では、メモリに記憶されている液体収容袋20の飲料の量(想定される飲料の高さ)と注出コック21から注出される飲料の流量との相関性を示すグラフのデータから、第1重量センサ42の検出重量から液体収容袋20の飲料の量(想定される飲料の高さ)に応じた流量を算出し、算出した飲料の流量から弁機構操作部50を閉止させるように操作開始させてから注出コック21の弁機構部が閉止完了するまでに注出される閉止操作開始後注出量を算出し、飲料用容器の種類によって変わる容量に応じて設定される設定注出量から閉止操作開始後注出量を減じた重量である閉止開始設定重量を算出する。第2重量センサ64によってこの閉止開始設定重量を飲料用容器の重量より増加した増加分の重量として検出したときに、注出コック21の弁機構部が閉止されるように弁機構操作部50のギヤモータ56を作動開始させると、受皿部62の飲料用容器には閉止操作開始後注出量を含めて設定注出量の飲料が注出されることになる。
【0054】
制御装置80は、ステップ106にて、注出スイッチ57がオン操作されたか否かを判定し、注出スイッチ57がオン操作されなければステップ104に戻す。また、注出スイッチ57がオン操作されずに、受皿部62から飲料用容器が持ち上げられると、制御装置80はステップ104にてNOと判定してこのプログラムを終了し、ステップ101からの処理を再び実行する。受皿部62に飲料用容器を載置した状態で、ステップ104でのYESの判定処理、ステップ105の処理とステップ106のNOの判定処理を繰り返し実行して、注出スイッチ57がオン操作されるのを待機している状態で、注出スイッチ57がオン操作されると、制御装置80は、ステップ106にてYESと判定してステップ107に進める。制御装置80は、ステップ107にて、注出コック21の弁機構部が開放されるように弁機構操作部50のギヤモータ56を作動開始させると、注出コック21から受皿部62に載置した飲料用容器に飲料が注出される。また、制御装置80は、表示ランプ57aを青色の点灯から点滅させることで、注出コック21で飲料の注出状態であることを表示する。
【0055】
制御装置80は、ステップ107で弁機構操作部50を開放操作させた後で、ステップ108にて、第1重量センサ42によって液体収容袋20内の飲料の残量が所定量より少ない設定下限重量を検出したか否かを判定する。この設定下限重量は、液体収容袋20内の飲料の残量が少なくなり、例えば、液体収容袋20内の飲料がグラスに1杯(これに限られるものではなく、1~2杯程度であってもよい)程度の量となったときの重量であり、液体収容袋20の交換時期が近くなったときの重量である。第1重量センサ42によって液体収容袋20内の飲料の残量が設定下限重量を検出していなければ、制御装置80は、ステップ108にてNOと判定してステップ110に進める。
【0056】
制御装置80は、ステップ110にて、第2重量センサ64により飲料用容器の重量以上の荷重を検出したか否かを判定し、受皿部62から飲料用容器が持ち上げられたか否かを判定する。注出コック21から注出される飲料を受ける飲料用容器が引き続き受皿部62に載置されていて、第2重量センサ64により飲料用容器の重量以上の荷重を検出してれば、制御装置80は、ステップ110にてYESと判定してステップ111に進める。制御装置80は、ステップ111にて、第2重量センサ64により上述した閉止開始設定重量を増加分の重量として検出したか否かを判定し、受皿部62の飲料用容器に閉止開始設定重量の飲料が注出されていなければ、ステップ111にてNOと判定してステップ108に戻す。
【0057】
注出コック21から受皿部62の飲料用容器に飲料を注出しているときに、ユーザが受皿部62から飲料用容器を誤って持ち上げると、第2重量センサ64により飲料用容器の重量以上の荷重を検出されなくなることで、制御装置80は、ステップ110にてNOと判定し、ステップ114にて、注出コック21の弁機構部が閉止されるように弁機構操作部50のギヤモータ56を作動開始させて、操作レバー52を閉止位置に移動させる。このように、受皿部62から飲料用容器を誤って持ち上げても、注出コック21から飲料が継続して注出されないようにすることができる。
【0058】
また、注出コック21から受皿部62の飲料用容器に飲料を注出しているときに、受皿部62の飲料用容器に閉止開始設定重量の飲料が注出されると、第2重量センサ64により閉止開始設定重量が飲料用容器の重量より増加した増加分の重量として検出され、制御装置80は、ステップ111にてYESと判定しステップ112に進める。制御装置80は、ステップ112にて、注出コック21の弁機構部が閉止されるように弁機構操作部50のギヤモータ56を作動開始させると、注出コック21から飲料が受皿部62の飲料用容器に注出されないようになる。また、制御装置80は、表示ランプ57aを青色に点滅から点灯させることで、注出コック21から飲料が注出完了した状態であることを表示する。注出コック21を閉止操作開始後の注出量は液体収容袋20内の飲料の量によって変動するが、受皿部62の飲料用容器には液体収容袋20内の飲料の量に関わらず常に一定の設定注出量の飲料が注出される。
【0059】
制御装置80は、ステップ113にて、第2重量センサ64により飲料用容器の重量以上の荷重を検出したか否かを判定し、受皿部62から飲料用容器が持ち上げられたか否かを判定する。受皿部62から飲料用容器が持ち上げられていなければ、第2重量センサ64により飲料用容器の重量以上の荷重が検出され、制御装置80はステップ113にてYESと判定してステップ113の処理を繰り返し実行する。これに対し、受皿部62から飲料用容器が持ち上げられると、第2重量センサ64により飲料用容器の重量以上の荷重が検出されなくなり、制御装置80はステップ113にてNOと判定してこのプログラムを終了し、ステップ101からの処理を再び実行する。
【0060】
自動注出プログラムによって上述したステップ101から処理を繰り返し実行すると、液体収容袋20内の飲料が注出コック21から受皿部62の飲料用容器に注出され、液体収容袋20内の飲料は徐々に減少する。液体収容袋20内の飲料が多いとき(満量のとき)には、図7に示したように、袋収納箱30内のプレート31の後部は液体収容袋20の重みでばね部材32の付勢力に抗して袋収納箱30内の下部に位置している。液体収容袋20内の飲料が徐々に減少すると、図6に示したように、袋収納箱30内のプレート31の後部は液体収容袋20が飲料の減少によって軽くなることでばね部材32の付勢力によって上昇し、液体収容袋20内の飲料は前側の注出コック21側に寄せられるようになる。このため、液体収容袋20内の飲料残量が少なくなっても、液体収容袋20内の飲料は袋収納箱30内の下部に残りにくくなり、液体収容袋20内の飲料をできるだけ残さずに注出できるようになる。
【0061】
また、液体収容袋20の下部には注出コック21の後側にて飲料の通路が形成された状態で液体収容袋20の注出コック21の周縁部を結束する結束具22が設けられている。これによって、液体収容袋20の下部は注出コック21よりも下側部分が結束具22によって注出コック21の後側で持ち上げられるようになり、液体収容袋20内の飲料が少なくなっても、液体収容袋20の下部には注出コック21より下側に飲料が残りにくくなり、液体収容袋20内の飲料をできるだけ残さずに注出できるようになる。
【0062】
液体収容袋20内の飲料を注出コック21から繰り返し注出すると、液体収容袋20内の飲料が減少する。液体収容袋20内の飲料を注出コック21から受皿部62の飲料用容器に注出しているときに、液体収容袋20内の飲料が上述した設定下限重量まで減少して、第1重量センサ42により設定下限重量を検出すると、制御装置80は、ステップ108にてYESと判定してステップ109に進める。制御装置80は、ステップ109にて、表示ランプ57aを青色の点滅から橙色の点滅に変えることで、液体収容袋20内の飲料の残量が少ない状態で注出状態であることを表示する。
【0063】
液体収容袋20内の飲料が設定下限重量まで減少した状態でも、受皿部62の飲料用容器に閉止開始設定重量(弁機構部を閉止後に設定注出量となる)の飲料を注出することができ、第2重量センサ64により閉止開始設定重量を増加分の重量として検出すると、制御装置80は、ステップ111にてYESと判定し、ステップ112にて、注出コック21の弁機構部が閉止されるように弁機構操作部50のギヤモータ56を作動開始させ、表示ランプ57aを桃色の点滅から青色に点灯させることで、注出コック21から飲料が注出完了した状態であることを表示する。
【0064】
これに対し、液体収容袋20内の飲料が設定下限重量まで減少した状態で、受皿部62の飲料用容器に閉止開始設定重量の飲料を注出することができないときには、制御装置80は、ステップ108~ステップ111の処理を繰り返し実行して、注出コック21から飲料が注出されなくなっても弁機構操作部50の操作レバー52が開放位置にあり、表示ランプ57aが橙色の点滅状態で飲料の残量が少ない状態で注出状態であることを表示している。このため、ユーザは、液体収容袋20内の飲料が無くなったことで、受皿部62の飲料用容器に飲料の注出が完了していないことを知ることができ、また、飲料が満たされた新しい液体収容袋20に交換する必要性について知ることができる。
【0065】
この状態で、受皿部62の飲料用容器を持ち上げると、第2重量センサ64により飲料用容器の重量以上の荷重を検出されなくなることで、制御装置80は、ステップ110にてNOと判定し、ステップ114にて、注出コック21の弁機構部が閉止されるように弁機構操作部50のギヤモータ56を作動開始させて、操作レバー52を閉止位置に移動させる。受皿部62の飲料用容器を持ち上げた後は、上述したステップ101からの処理を再び実行することで、表示ランプ57aが桃色の点灯によって待機状態であることを表示する。なお、新しい液体収容袋20に交換した後は、操作レバー52の操作部52aを手動で操作することによって、受皿部62に載置した飲料用容器に不足分の飲料を注出させることができる。
【0066】
上記のように構成したディスペンサ10は、内部の収容空間に貯えた飲料(液体)を前面下部に設けた注出コック(注出部)21から注出する液体収容袋20を収納可能とする袋収納部12を備え、袋収納部12には液体収容袋20内の飲料を注出コック21側に寄せるためのプレート31と、液体収容袋20内の飲料を注出コック21側に寄せる方向にプレート31を付勢するばね部材(付勢部材)32とが設けられている。
【0067】
この実施形態では、液体収容袋20は袋収納箱30を介して筐体11内の袋収納部12に収納され、プレート31とばね部材32は袋収納箱30の下部に取り付けられた状態で袋収納部12の下部に設けられている。また、プレート31は後部が上下動するように前部が水平軸線回りに回動可能に軸支され、ばね部材32はプレート31の後部を液体収容袋20の重量に応じて上側に付勢するようにしている。プレート31は液体収容袋20内の飲料が減少して液体収容袋20が軽くなると注出コック21側となる前側に回動するようになり、液体収容袋20内の飲料は注出コック21側に回動するプレート31によって注出コック21側に寄せられるようになり、液体収容袋内の下部に飲料を残りにくくすることができる。
【0068】
この実施形態のディスペンサ10は、プレート31とばね部材32とを袋収納箱30の下部に設け、袋収納箱30を筐体11内の袋収納部12に収納することにより、プレート31とばね部材32とを袋収納部12に設けるようにしたものであるが、プレート31とばね部材32を筐体11内の袋収納部12に直接設けるようにしたものであってもよい。また、プレート31は後部が上下動するように前部が水平軸線回りに回動可能に軸支され、ばね部材32はプレート31の後部を液体収容袋20の重量に応じて上側に付勢するようにしているが、これに限られるものではなく、袋収納箱30内または袋収納部12に鉛直に起立または鉛直より上部が後側となるように斜めに傾斜した状態で起立するプレート31を前後に移動可能に支持させ、プレート31の後側に設けたばね部材32によってプレート31を前方に付勢させるようにし、液体収容袋20内の飲料をプレート31によって注出コック21側に寄せるように付勢したものであってもよい。
【0069】
このディスペンサ10においては、袋収納部12にはプレート31とばね部材32とが下部に取り付けられて液体収容袋20を収納可能とした袋収納箱30が着脱可能に取り付けられている。袋収納箱30にはプレート31が液体収容袋20内の飲料を注出コック21側に寄せていない位置で移動しないようにロックするロック機構33を設け、筐体11の袋収納部12には袋収納箱30を取り付けたときにロック機構33を解除するロック解除機構36が設けられている。
【0070】
プレート31を液体収容袋20内の飲料が注出コック21側に寄せていない位置で移動しないようにロック機構33によってロックしておくことで、液体収容袋20をプレート31に遮られることなく袋収納箱30に収納しやすくすることができる。また、液体収容袋20を収納した袋収納箱30を筐体11内の袋収納部12に収納したときに、ロック機構33がロック解除機構36によって解除されるので、袋収納箱30を筐体11内の袋収納部12に収納するだけで、液体収容袋20内の液体が注出コック21側に寄るようにプレート31をばね部材32により付勢することができるので、液体収容袋20の交換作業に手間がかかりにくくすることができる。
【0071】
上記の実施形態のディスペンサ10は、ワイン等の飲料を注出するものであるが、これに限られるものではなく、ワイン以外の水やジュース等の飲料以外に、味噌汁やスープ等の温度の高いまたは低い汁(汁物)や、洗剤、薬剤等の他の液体を注出するものであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
10…ディスペンサ、11…筐体、12…袋収納部、20…液体収容袋、21…注出部(注出コック)、30…袋収納箱、31…プレート、32…付勢部材(ばね部材)、33…ロック機構、36…ロック解除機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11