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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8236 20060101AFI20240517BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20240517BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240517BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240517BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240517BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20240517BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20240517BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20240517BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20240517BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20240517BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20240517BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H01L27/088 311A
H01L27/088 D
H01L29/78 301G
H01L29/78 301P
H01L27/088 C
H01L21/88 N
H01L21/88 S
H01L21/90 K
H01L21/28 301S
H01L29/58 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020146508
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2021077864
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2019198257
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 尚
(72)【発明者】
【氏名】小山 威
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸二郎
(72)【発明者】
【氏名】川端 康平
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144267(JP,A)
【文献】特開2019-153714(JP,A)
【文献】特開2003-124340(JP,A)
【文献】特開2019-149531(JP,A)
【文献】特開2018-148244(JP,A)
【文献】特開2012-015531(JP,A)
【文献】特開平06-177200(JP,A)
【文献】特開2007-300139(JP,A)
【文献】国際公開第2007/066400(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28-21/288
H01L 21/3205-21/3213
H01L 21/329
H01L 21/336
H01L 21/44-21/445
H01L 21/768
H01L 21/8232-21/8238
H01L 21/8249
H01L 23/522
H01L 23/532
H01L 27/06
H01L 27/07
H01L 27/085-27/092
H01L 27/118
H01L 29/40-29/49
H01L 29/76
H01L 29/772
H01L 29/78
H01L 29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧発生回路を有する半導体装置であって、
前記基準電圧発生回路は、
定電流を発生させ、ゲート電極及びソース領域が接続されているデプレッション型電界効果トランジスタと、
前記デプレッション型電界効果トランジスタのソース領域にドレイン領域及びP型ゲート電極が接続され、前記定電流に基づいて電圧を発生させるエンハンスメント型電界効果トランジスタと、
を備え、
半導体基板と、
前記半導体基板上に配置されている、前記デプレッション型電界効果トランジスタ及び前記エンハンスメント型電界効果トランジスタと、
前記デプレッション型電界効果トランジスタ及び前記エンハンスメント型電界効果トランジスタ上に配置されている層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上であって前記P型ゲート電極の上方の近傍に配置されている金属配線層を兼ね、かつ前記金属配線層と同じ層において前記デプレッション型電界効果トランジスタの前記ゲート電極及び前記ソース領域並びに前記エンハンスメント型電界効果トランジスタの前記ドレイン領域及び前記P型ゲート電極を接続する金属配線層を兼ね、水素を遮断する水素遮断金属膜と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記水素遮断金属膜は、アルミニウム合金である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記エンハンスメント型電界効果トランジスタは、前記P型ゲート電極を有するNチャネル電界効果トランジスタである請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記水素遮断金属膜が1層のみに配置されている請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板を平面視した際に、前記デプレッション型電界効果トランジスタ及び前記エンハンスメント型電界効果トランジスタの全体又は一部を覆うように前記水素遮断金属膜の上方に配置されている広域水素遮断金属膜を更に有する請求項1から4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記P型ゲート電極の上部に金属シリサイド膜が形成されている請求項1から5のいずれかに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンなどの半導体基板上に微細な素子が形成される半導体装置のうち、MISFET(Metal-Insulator-Semiconductor Field-Effect Transistor)、抵抗素子、ヒューズ素子などの半導体素子を組み合わせたアナログ用半導体装置がある。
【0003】
アナログ用半導体装置としては、例えば、ボルテージレギュレータ、ボルテージディテクタ、スイッチングレギュレータなどが挙げられる。これらのアナログ用半導体装置では、ウェアラブルデバイスやIoT(Internet of the Things)の発展に伴い、二次電池などにより低電圧・低消費電流で長時間駆動可能なものが開発されている。特にボルテージレギュレータなどのパワーマネジメントICで基準電圧発生回路を備えている場合には、基準電圧のばらつき低減や長期の安定性が重要となっている。
しかしながら、このような基準電圧発生回路に用いるMISFETは、ゲート酸化膜とシリコン基板との界面に存在するダングリングボンド(非結合手)に、パッシベーション膜などから発生する水素が結合してしまい、しきい値電圧が製造時にばらつく場合や経時で変化する場合がある。
【0004】
そこで、例えば、NチャネルMOSトランジスタなどに水素が拡散しないように、NチャネルMOSトランジスタなどの上に水素遮へい用のシリコン窒化膜が形成されている半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-152100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの側面では、形成する膜を増やすことなく、水素による不具合の発生を抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における半導体装置は、
半導体基板と、
前記半導体基板上に配置され、かつアナログ回路に用いられ、P型ゲート電極を備える電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタ上に配置されている層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上であって前記P型ゲート電極の上方の近傍に配置され、水素を遮断する水素遮断金属膜と、
を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの側面によると、形成する膜を増やすことなく、水素による不具合の発生を抑制することができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1の実施形態における半導体装置のアナログ回路を示す回路図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態における半導体装置を示す概略平面図である。
図3図3は、図2におけるA-A線の断面を示す説明図である。
図4図4は、図2におけるB-B線の断面を示す説明図である。
図5A図5Aは、本発明の第1の実施形態における半導体装置を製造する方法を示す説明図である。
図5B図5Bは、本発明の第1の実施形態における半導体装置を製造する方法を示す説明図である。
図5C図5Cは、本発明の第1の実施形態における半導体装置を製造する方法を示す説明図である。
図6図6は、本発明の第1の実施形態の変形例を示す概略平面図である。
図7図7は、本発明の第2の実施形態における半導体装置の断面を示す説明図である。
図8図8は、本発明の第3の実施形態における半導体装置の断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態における半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に配置され、かつアナログ回路に用いられ、P型ゲート電極を備える電界効果トランジスタと、電界効果トランジスタ上に配置されている層間絶縁膜と、層間絶縁膜上であってP型ゲート電極の上方の近傍に配置され、水素を遮断する水素遮断金属膜と、を有する。
【0011】
本発明の一実施形態における半導体装置は、以下の知見に基づくものである。
アナログ用半導体装置に要求される特性は、2値の信号を扱うロジック用半導体装置とは大きく異なる。たとえば、リチウムイオン電池などの二次電池の充放電制御回路では、モバイル機器などで用いる二次電池の放電を極力低減するために、ここ数年においてμV単位の規格を求められる場合が多くなっている。この充放電制御回路に用いられる基準電圧発生回路においてもμV単位の信頼性が求められている。このため、基準電圧発生回路が備える電界効果トランジスタ(以下、「MOSトランジスタ」と称する)のしきい値電圧のばらつきや、長期信頼性試験で示し得る経時の変化を低減する必要がある。
【0012】
このMOSトランジスタを形成する際には、ボロン、リン、ヒ素などの不純物をポリシリコン膜に注入してゲート電極を形成する場合が多い。不純物として注入するボロンは、リンやヒ素よりもポリシリコン膜に拡散しやすく、ポリシリコン膜の下のゲート酸化膜まで拡散してしまう。すると、このゲート酸化膜は、リンやヒ素を注入した場合に比べて膜質が低下しやすくなり、水素のような微小な原子を通過させやすくなると考えられる。このとき、ゲート酸化膜とシリコン基板との界面に存在するダングリングボンド(非結合手)に、パッシベーション膜などから発生する水素が微量でも結合してしまうと、μV単位で調整が必要なアナログ用半導体装置においては、しきい値電圧が製造時にばらついたり経時で変化したりする場合がある。
【0013】
この点、特許文献1に記載の半導体装置では、P型ゲート電極の上に、水素遮へい用のシリコン窒化膜を配置するようにしているが、シリコン窒化膜を形成するための工程が増えるだけでなく、P型ゲート電極の近傍に配置されたシリコン窒化膜の応力によりしきい値電圧が変化してしまう場合がある。
【0014】
そこで、本発明の一実施形態における半導体装置は、MOSトランジスタの上に配置される金属配線層の面積を広げて水素遮断金属膜として用いる。すなわち、この半導体装置は、しきい値電圧が変化しやすいP型ゲート電極の上方の近傍に、金属配線層を兼ねた水素遮断金属膜を配置することで、パッシベーション膜などから発生する水素を遮断できるため、形成する膜を増やすことなく水素による不具合の発生を抑制することができる。
【0015】
次に、本発明の一実施形態における半導体装置の一例として、アナログ回路をED型基準電圧発生回路とした実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
なお、図面は模式的なものであり、膜厚と平面寸法との関係、各膜厚の比率などは図面で示したとおりではない。また、半導体基板において、半導体製造プロセスを用いて他の膜や層が積層される側の面を「上面」と称し、上面に対向する側の面を「下面」と称する。さらに、下記において、複数の膜やこれらを構造的に組み合わせて得られる半導体素子の数量、位置、形状、構造、大きさなどは、以下に示す実施形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数量、位置、形状、構造、大きさなどにすることができる。
【0017】
[第1の実施形態]
(半導体装置)
図1は、本発明の第1の実施形態における半導体装置のアナログ回路を示す回路図である。図1に示すように、本実施形態における半導体装置100は、アナログ回路であるED型基準電圧発生回路が備えられており、デプレッション型Nチャネル電界効果トランジスタ110と、エンハンスメント型Nチャネル電界効果トランジスタ120と、を有する。
なお、以下では「デプレッション型Nチャネル電界効果トランジスタ」を「D型NMOSトランジスタ」と称することがあり、「エンハンスメント型Nチャネル電界効果トランジスタ」を「E型NMOSトランジスタ」と称することがある。
【0018】
D型NMOSトランジスタ110は、電源端子100aと接続されているドレインに電源電圧VDDが印加されると、電源電圧VDDに依存しない定電流をソースからE型NMOSトランジスタ120に供給する定電流源として機能する。E型NMOSトランジスタ120は、D型NMOSトランジスタ110から供給される定電流に基づいて、基準電圧端子100cに基準電圧Vrefを発生させる。このように、ED型基準電圧発生回路は、D型NMOSトランジスタ110とE型NMOSトランジスタ120とを組み合わせることにより形成されている。
【0019】
D型NMOSトランジスタ110のソースには、D型NMOSトランジスタ110のゲート、バックゲート、基準電圧端子100c、並びにE型NMOSトランジスタ120のゲート及びドレインが接続されており、これらを同電位としている。また、E型NMOSトランジスタ120のソースには、バックゲート及び接地端子100bが接続されており、これらを同電位としている。
【0020】
ここで、D型NMOSトランジスタ110のドレイン電流Id1を求めると、非飽和動作時あるいは飽和動作時の相互コンダクタンスをgmDとすれば、以下の式(1)のように示すことができる。なお、上記のように、D型NMOSトランジスタ110のゲートとソースが接続されているので、下記の式(1)においてゲート・ソース間電圧Vg1は0Vとなる。このため、D型NMOSトランジスタ110の出力電流であるドレイン電流Id1は、しきい値電圧Vtdに依存するものとなる。
d1=1/2・gmD・(Vg1-Vtd
=1/2・gmD・(|Vtd|) ・・・(1)
【0021】
次に、E型NMOSトランジスタ120のドレイン電流Id2を求めると、飽和動作時の相互コンダクタンスをgmEとすれば、以下の式(2)のように示すことができる。なお、上述のように、E型NMOSトランジスタ120のゲートとドレインが接続され、更にこれらと基準電圧端子100cが接続されているので、下記の式(2)においてゲート・ソース間電圧Vg2は基準電圧Vrefとなる。このため、ドレイン電流Id2は、しきい値電圧Vte及び基準電圧Vrefに依存するものとなる。
d2=1/2・gmE・(Vg2-Vte
=1/2・gmE・(Vref-Vte ・・・(2)
【0022】
以上より、基準電圧Vrefは、上記の式(1)のId1が上記の式(2)のId2に等しくなることから、下記の式(3)のようになる。
ref≒Vte+(gmD/gmE)1/2・|Vtd| ・・・(3)
【0023】
図2は、本発明の第1の実施形態における半導体装置を示す概略平面図であり、半導体基板上に形成されているED型基準電圧発生回路を平面視した図である。図2では、半導体装置100の構造のうち、N型ゲート電極6と、P型ゲート電極7と、金属配線層の機能を兼ねる水素遮断金属膜10と、水素遮断金属膜10と接続されている金属配線9a~9fとを示す。また、図2中の破線は、D型NMOSトランジスタ110及びE型NMOSトランジスタ120のアクティブ領域をそれぞれ示す。
なお、平面視した図とは、半導体基板をその法線方向から上面を見たときの図(上面図)を意味する。
【0024】
半導体基板の上方(基板の法線方向)から平面視したときにおいて、E型NMOSトランジスタ120側の破線で示すアクティブ領域上の水素遮断金属膜10は、P型ゲート電極7の面積よりも広く、P型ゲート電極7を覆うように配置されている。
【0025】
ここで、D型NMOSトランジスタ110及びE型NMOSトランジスタ120の断面について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0026】
図3は、図2におけるA-A線の断面を示す説明図である。図4は、図2におけるB-B線の断面を示す説明図である。
図3及び図4に示すように、半導体基板1と、分離用酸化膜2と、ゲート酸化膜3と、P型ウェル領域4と、ソース・ドレイン領域5と、N型ゲート電極6と、P型ゲート電極7と、燐及びホウ素を添加したシリコン酸化膜(以下、「BPSG(Boro-Phospho Silicate Glass)膜」と称する)8と、金属配線9と、水素遮断金属膜10と、パッシベーション膜11と、を有する。D型NMOSトランジスタ110及びE型NMOSトランジスタ120は、半導体基板1上に、分離用酸化膜2と、ゲート酸化膜3と、P型ウェル領域4と、ソース・ドレイン領域5と、N型ゲート電極6と、P型ゲート電極7とを構造的に組み合わせることにより形成されている。
【0027】
半導体基板1は、ウエハ状のP型シリコン半導体基板である。
なお、本実施形態では、半導体基板1としてウエハ状のP型シリコン半導体基板としたが、これに限ることなく、半導体基板1の形状、構造、大きさ、材質、及び極性は、目的に応じて適宜選択することができる。
【0028】
分離用酸化膜2は、半導体基板1上に形成されているLOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)である。分離用酸化膜2は、D型NMOSトランジスタ110及びE型NMOSトランジスタ120を分離するために、各アクティブ領域の外縁に設けられている。
なお、本実施形態では、D型NMOSトランジスタ110及びE型NMOSトランジスタ120を分離するためにLOCOSを形成したが、これに限ることなく、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)などを形成して分離するようにしてもよい。
【0029】
D型NMOSトランジスタ110は、ゲート酸化膜3と、P型ウェル領域4と、ソース・ドレイン領域5と、ポリシリコン膜にリンを注入したN型ゲート電極6と、を有する。
【0030】
D型NMOSトランジスタ110は、P型ウェル領域4とN型ゲート電極6との仕事関数の差が大きくなるように不純物濃度が調整されていることから、P型の半導体基板1の表面に反転する向きの電界が印加されるため、低いしきい値電圧になる。さらに、N型のチャネルドープ領域によりしきい値電圧を低くすることができることから、N型ゲート電極6及びチャネルドープ領域への不純物注入は、D型NMOSトランジスタ110がデプレション型になるよう適宜制御され、しきい値電圧Vtdを0V以下にすることができる。これにより、ゲートの電位が0Vであってもドレイン電圧を印加することで、チャネルを介してドレイン電流を流すことができる。
また、バックゲートは、高濃度のP型不純物を含む領域(不図示)を介してP型ウェル領域4に接続されており、ソースに接続されている。
【0031】
E型NMOSトランジスタ120は、BFを注入して形成されたP型ゲート電極7を有しており、しきい値電圧Vteが0V以上になるように、P型ゲート電極7及びチャネルドープ領域の不純物濃度が調整されている。また、このP型ゲート電極7の上方に水素遮断金属膜10が配置されている。E型NMOSトランジスタ120は、これら以外は、D型NMOSトランジスタ110と同様である。
なお、P型ゲート電極7の形状、構造、大きさ、材質、並びに不純物の種類及び濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
D型NMOSトランジスタ110及びE型NMOSトランジスタ120の上面には、層間絶縁膜としてのBPSG膜8が表面を平坦化されて形成されている。このBPSG膜8には、ソース・ドレイン領域5まで貫通するようにそれぞれ形成されたコンタクトホールに金属配線9a~9dがそれぞれ埋め込まれており、ソース・ドレイン領域5からの導通経路が形成されている。
なお、本実施形態では、層間絶縁膜をBPSG膜8としたが、これに限ることなく、例えば、NSG(None-doped Silicate Glass)膜とBPSG膜の積層構造、TEOS(Tetra-Ethyl-Ortho-Silicate)膜とBPSG膜の積層構造などとしてもよい。
【0033】
金属配線9a~9dの上部と電気的に接続されている水素遮断金属膜10は、AlSiCuにより形成されている。この水素遮断金属膜10は、P型ゲート電極7の上方に存在することから、パッシベーション膜11などを発生源とする水素が上方からの移動を阻害し、P型ゲート電極7を有するE型NMOSトランジスタ120の近傍に侵入させないように遮断することができる。すなわち、本実施形態の半導体装置100は、P型ゲート電極7の上方に金属配線層の機能を兼ねる水素遮断金属膜10が存在することにより、形成する膜を増やすことなく、水素による不具合の発生を抑制することができる。
【0034】
水素遮断金属膜10の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水素遮断金属膜10が金属配線層を兼ねる点で、アルミニウム合金が好ましい。アルミニウム合金としては、例えば、AlSiCuのほか、AlNd、AlCu、AlSiなどが挙げられる。また、下地のチタンの上にタングステンが膜状に形成される態様にしてもよい。この下地のチタンの上にタングステンが膜状に形成される態様であると、タングステンにより水素の侵入を阻むとともに、下地のチタンにより水素を吸収できる点で有利である。
なお、本実施形態では、水素遮断金属膜10をP型ゲート電極7のアクティブ領域の面積よりも広くしたが、P型ゲート電極7のアクティブ領域に対して拡散する水素を遮断することができれば、これに限ることはなく、水素遮断金属膜10の面積がP型ゲート電極7のアクティブ領域よりも同等か狭くなってもよい。
【0035】
水素遮断金属膜10の厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水素を遮断可能な厚みを確保できる観点から300nm以上500nm以下が好ましい。
【0036】
水素遮断金属膜10の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平面視したときにアクティブ領域においてP型ゲート電極7よりも大きいことが好ましい。
【0037】
半導体装置100の最上面には、パッシベーション膜11が設けられている。
パッシベーション膜11としては、シリコン窒化膜が好ましい。シリコン窒化膜の形成方法としては、減圧CVD(Chemical Vaper Deposition)を用いると金属配線9a~9dが融解してしまう場合があるため、プラズマCVDを用いることが好ましい。
なお、本実施形態では、パッシベーション膜11をシリコン窒化膜の単層構造としたが、これに限ることなく、例えば、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との二層構造としてもよい。また、パッシベーション膜11の形状、構造、及び大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0038】
このように、本実施形態の半導体装置100は、半導体基板1上に、ED型基準電圧発生回路に用いられ、P型ゲート電極7を備えるE型NMOSトランジスタ120と、E型NMOSトランジスタ120上に配置されているBPSG膜8と、BPSG膜8上であってP型ゲート電極7の上方の近傍に配置され水素を遮断する水素遮断金属膜10とを有する。これにより、半導体装置100は、形成する膜を増やすことなく、水素による不具合の発生を抑制することができる。
【0039】
次に、本実施形態の半導体装置100の製造方法について、図5Aから図5Cを参照しながら説明する。
【0040】
まず、半導体基板1を用意してLOCOS形成処理を行い、半導体基板1上に分離用酸化膜2を形成する。
次に、図5Aに示すように、ゲート酸化膜形成処理、ソース・ドレイン領域形成処理、ポリシリコンによるゲート電極形成処理など、従来のMOSFET製造技術により、ゲート酸化膜3、P型ウェル領域4、ソース・ドレイン領域5、N型ゲート電極6、及びP型ゲート電極7を半導体基板1上に形成する。これにより、D型NMOSトランジスタ110及びE型NMOSトランジスタ120を形成する。
【0041】
具体的には、D型NMOSトランジスタ110を形成するには、まず各アクティブ領域の一部にボロンを注入してP型ウェル領域4を形成し、P型ウェル領域4の表面の一部にN型のチャネルドープ領域を形成する。次に、このチャネルドープ領域の上にゲート酸化膜3を形成した後、ゲート酸化膜3の上に形成したポリシリコン膜に5×1016以上1×1018/cm3以下の低濃度のリンを注入してN型ゲート電極6を形成する。そして、ゲート酸化膜3の下のチャネルドープ領域を挟み込む位置に、1×1019/cm3以上の高濃度のN型のソース・ドレイン領域5をP型ウェル領域4の表面に形成する。
なお、これらは必要な部分にフォトマスク処理を行うことにより形成する。
また、ポリシリコン膜の厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm以上500nm以下が好ましい。
【0042】
次に、図5Bに示すように、BPSG膜8を表面全域に形成して平坦化する。
BPSG膜8の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
BPSG膜8の平坦化方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リフロー法、エッチバック法、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法などが挙げられる。リフロー法は、具体的には、リン又はボロンを含む酸化膜を形成した後、850℃以上の熱処理で平坦化するようにしてもよい。
【0043】
次に、フォトリソグラフィ及びドライエッチングによりBPSG膜8にコンタクトホールを開口してチタンを下地としてタングステンを埋め込み、金属配線9a~9dを形成する。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングにより水素遮断金属膜10を形成する。この水素遮断金属膜10は、金属配線層を兼ねているため、金属配線9a~9dの上部に電気的に接続する箇所が存在する。
【0044】
次に、BPSG膜8を形成して平坦化した後、BPSG膜8及び水素遮断金属膜10の上に、プラズマCVDによりシリコン窒化膜であるパッシベーション膜11を形成する。
【0045】
このように、本実施形態の半導体装置100は、半導体基板1上に配置され、かつED型基準電圧発生回路に用いられ、P型ゲート電極7を備えるE型NMOSトランジスタ120を形成する工程と、E型NMOSトランジスタ120上に、BPSG膜8を形成する工程と、BPSG膜8上であってP型ゲート電極7の上方の近傍に、水素を遮断する水素遮断金属膜10を形成する工程と、を含む。これにより、製造された半導体装置100は、形成する膜を増やすことなく、水素による不具合の発生を抑制することができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、図6に示すように、E型NMOSトランジスタ120のソース端子と水素遮断金属膜10とを一体化するようにしてもよい。これにより、水素遮断金属膜10の面積を広くでき、またソース端子と水素遮断金属膜10との間に間隙がなくなるため、P型ゲート電極7を備えるE型NMOSトランジスタ120に対し、水素がより拡散しにくくなる点で好ましい。
【0047】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態における半導体装置の断面を示す説明図である。図7に示すように、第2の実施形態は、図3に示した第1の実施形態に加えて、水素遮断金属膜10の上にBPSG膜12を介して広域水素遮断金属膜13が配置されている。
広域水素遮断金属膜13は、水素遮断金属膜10と同様に、AlSiCuにより形成されている。この広域水素遮断金属膜13は、P型ゲート電極7及び水素遮断金属膜10の上方に存在することから、水素遮断金属膜10に加えて広域水素遮断金属膜13によりP型ゲート電極7を有するE型NMOSトランジスタ120に対して水素の侵入を遮断できるため、水素による不具合の発生を更に抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態の半導体装置100において複数の電界効果トランジスタを有する場合には、広域水素遮断金属膜13は、複数の電界効果トランジスタの全体を覆うように水素遮断金属膜10の上方に配置されることが好ましい。
【0049】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態における半導体装置の断面を示す説明図である。
図8に示すように、第3の実施形態は、図3に示した第1の実施形態に加えて、P型ゲート電極7の上部及びソース・ドレイン領域5の上部に、CoSiの金属シリサイド膜14、15が形成されている。これにより、本実施形態の半導体装置100は、水素遮断金属膜10に加えて金属シリサイド膜14、15によりP型ゲート電極7を有するE型NMOSトランジスタ120の近傍で水素の侵入を遮断できるため、水素による不具合の発生を更に抑制することができる。
なお、本実施形態では、金属シリサイド膜14、15をCoSiとしたが、これに限ることなく、例えば、WSi、TiSi、NiSiなどとすることができる。
【0050】
以上説明したように、本発明の一実施形態における半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に配置され、かつアナログ回路に用いられ、P型ゲート電極を備える電界効果トランジスタと、電界効果トランジスタ上に配置されている層間絶縁膜と、層間絶縁膜上であってP型ゲート電極の上方の近傍に配置され、水素を遮断する水素遮断金属膜と、を有する。
これにより、本発明の一実施形態における半導体装置は、形成する膜を増やすことなく、水素による不具合の発生を抑制することができる。
【0051】
なお、上記の各実施形態では、D型NMOSトランジスタ110がN型ゲート電極6を備え、E型NMOSトランジスタ120がP型ゲート電極を備えているとしたが、これに限ることはなく、D型NMOSトランジスタ110がP型ゲート電極を備えていてもよい。
また、本実施形態では、D型NMOSトランジスタ110及びE型NMOSトランジスタ120の両方をNMOSトランジスタとしたが、これに限ることなく、両方をPMOSトランジスタとしてもよい。
【0052】
なお、上記の各実施形態では、アナログ回路をED型基準電圧発生回路としたが、これに限ることはなく、例えば、ED型でない基準電圧発生回路、ED型又はED型でない基準電圧発生回路の出力がコンパレータの非反転入力端子及び反転入力端子の少なくともいずれかに接続されている回路、並びにカレントミラー回路などが挙げられる。
【符号の説明】
【0053】
1 半導体基板
2 分離用酸化膜
3 ゲート酸化膜
4 P型ウェル領域
5 ソース・ドレイン領域
6 N型ゲート電極
7 P型ゲート電極
8 BPSG膜(層間絶縁膜)
9 金属配線
10 水素遮断金属膜
11 パッシベーション膜
12 BPSG膜(層間絶縁膜)
13 広域水素遮断金属膜
14、15 金属シリサイド膜
100 半導体装置
110 デプレッション型NMOSトランジスタ
120 エンハンスメント型NMOSトランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8