IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 美津濃株式会社の特許一覧

特許7489877解析装置、システム、方法およびプログラム
<>
  • 特許-解析装置、システム、方法およびプログラム 図1
  • 特許-解析装置、システム、方法およびプログラム 図2
  • 特許-解析装置、システム、方法およびプログラム 図3
  • 特許-解析装置、システム、方法およびプログラム 図4
  • 特許-解析装置、システム、方法およびプログラム 図5
  • 特許-解析装置、システム、方法およびプログラム 図6
  • 特許-解析装置、システム、方法およびプログラム 図7
  • 特許-解析装置、システム、方法およびプログラム 図8
  • 特許-解析装置、システム、方法およびプログラム 図9
  • 特許-解析装置、システム、方法およびプログラム 図10
  • 特許-解析装置、システム、方法およびプログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】解析装置、システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20240517BHJP
   A63B 43/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A63B69/00 505G
A63B69/00 A
A63B43/00 E
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020151850
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022046026
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】島名 孝次
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 悠人
(72)【発明者】
【氏名】稲毛 正也
(72)【発明者】
【氏名】中田 真之
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-514279(JP,A)
【文献】特開2003-038698(JP,A)
【文献】特開2008-086524(JP,A)
【文献】特開2018-077200(JP,A)
【文献】特開2018-134153(JP,A)
【文献】特表2010-534316(JP,A)
【文献】特開2018-086288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00 - 69/40
A63B 37/00 - 47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールに内蔵されるセンサ機器、または、カメラから出力データを取得するための取得部と、
前記出力データから並進加速度を算出するための並進加速度算出部と、
並進加速度データに使用するフィルタを生成するフィルタ生成部と、
前記ボールにかかる指力を算出するための指力算出部と、
情報を出力するための出力部とを備え、
前記取得部は、前記センサ機器、または、前記カメラから前記出力データを取得し、
前記並進加速度算出部は、前記出力データに基づいて、前記ボールの前記並進加速度データを算出し、
前記フィルタ生成部は、前記フィルタにより、前記並進加速度データの高周波成分を抽出し、
前記指力算出部は、前記高周波成分および前記ボールの質量に基づいて、前記指力を算出し、
前記出力部は、前記指力に関する情報を出力する、解析装置。
【請求項2】
前記出力データは、前記センサ機器が出力する加速度のデータおよび角速度のデータ、または、前記カメラが出力する撮像データを含む、請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記フィルタ生成部は、
ハイパスフィルタを生成し、
前記並進加速度データを前記ハイパスフィルタにかけることで、前記高周波成分を抽出する、請求項1または2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記並進加速度算出部は、前記出力データが加速度データおよび角速度データを含むことに基づいて、前記加速度データから、前記ボールの遠心加速度データ、接線加速度データおよび重力加速度データを減ずることにより、前記並進加速度データを算出する、請求項2に記載の解析装置。
【請求項5】
前記遠心加速度データおよび前記接線加速度データは、前記センサ機器の中心から前記ボールの中心までの距離と、前記角速度データとに基づいて算出される、請求項4に記載の解析装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記センサ機器により時系列で検出された地磁気データをさらに受信し、
前記遠心加速度データおよび前記接線加速度データは、前記センサ機器の中心から前記ボールの中心までの距離と、前記角速度データと、前記地磁気データとに基づいて算出される、請求項4に記載の解析装置。
【請求項7】
前記並進加速度算出部は、前記出力データが前記撮像データであることに基づいて、前記撮像データを解析することで得られる前記ボールの中心の位置情報の微分処理により、前記並進加速度データを算出する、請求項2に記載の解析装置。
【請求項8】
前記ボールのリリース時刻を算出するリリース算出部をさらに備え、
前記並進加速度算出部は、前記リリース時刻付近の一定時間以内の前記出力データから前記並進加速度データを算出する、請求項1~7のいずれかに記載の解析装置。
【請求項9】
前記出力部は、さらに、前記指力に基づいて、投球を改善するための情報を出力する、請求項1~8のいずれかに記載の解析装置。
【請求項10】
前記投球を改善するための情報は、指によって前記ボールにかける力を変更するアドバイスを含む、請求項9に記載の解析装置。
【請求項11】
前記ボールの回転数を算出する回転数算出部をさらに備え、
前記投球を改善するための情報は、前記回転数および前記指力の履歴情報を含む、請求項9に記載の解析装置。
【請求項12】
前記履歴情報は、前記回転数と前記指力との相関関係を視覚的に表示するためのデータを含む、請求項11に記載の解析装置。
【請求項13】
前記履歴情報は、前記回転数を前記ボールの速度により除した結果と、前記指力と、の相関関係を視覚的に表示するためのデータを含む、請求項11に記載の解析装置。
【請求項14】
センサ機器が内蔵されたボールと、
解析装置とを備え、
前記センサ機器は、
加速度センサと、
前記解析装置と通信するための通信部と、
ジャイロセンサとを含み、
前記解析装置は、
前記センサ機器によって送信される加速度データおよび角速度データを受信するための取得部と、
前記加速度データから並進加速度データを算出するための並進加速度算出部と、
前記並進加速度データに使用するフィルタを生成するフィルタ生成部と、
前記ボールにかかる指力を算出するための指力算出部と、
情報を出力するための出力部とを含み、
前記センサ機器は、
前記ボールの投球時の前記加速度データおよび前記角速度データを含む計測データを記録し、
前記計測データを前記解析装置に送信し、
前記解析装置は、
前記取得部により、前記センサ機器により時系列で検出された前記加速度データおよび前記角速度データを取得し、
前記並進加速度算出部により、受信した前記加速度データおよび前記角速度データに基づいて、前記ボールの前記並進加速度データを算出し、
前記フィルタにより、前記並進加速度データの高周波成分を抽出し、
前記指力算出部により、前記高周波成分および前記ボールの質量に基づいて、前記指力を算出し、
前記出力部により、前記指力に関する情報を出力する、システム。
【請求項15】
ボールを撮像するカメラと、
解析装置とを備え、
前記解析装置は、
前記カメラから撮像データを受信するための取得部と、
前記撮像データに基づいて並進加速度データを算出するための並進加速度算出部と、
前記並進加速度データに使用するフィルタを生成するフィルタ生成部と、
前記ボールにかかる指力を算出するための指力算出部と、
情報を出力するための出力部とを含み、
前記カメラは、
投球された前記ボールを撮像し、
前記ボールの前記撮像データを前記解析装置に出力し、
前記解析装置は、
前記取得部により、前記撮像データを取得し、
前記並進加速度算出部により、前記撮像データを解析することで得られる前記ボールの中心の位置情報の微分処理により、前記ボールの前記並進加速度データを算出し、
前記フィルタにより、前記並進加速度データの高周波成分を抽出し、
前記指力算出部により、前記高周波成分および前記ボールの質量に基づいて、前記指力を算出し、
前記出力部により、前記指力に関する情報を出力する、システム。
【請求項16】
ボールにかかる指力を解析するためにコンピュータで実行される方法であって、
前記ボールに内蔵されたセンサ機器、または、前記ボールを撮像するカメラから出力データを取得するステップと、
前記出力データに基づいて、前記ボールの並進加速度データを算出するステップと、
フィルタにより、前記並進加速度データの高周波成分を抽出するステップと、
前記高周波成分および前記ボールの質量に基づいて、前記指力を算出するステップと、
前記指力に関する情報を出力するステップとを含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法をコンピューターに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボールにかかる指力の推定に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ボールに内蔵されたセンサからの情報を用いることで、投球時の野球ボールの移動軌跡、回転速度、回転軸の方向等の回転パラメータを計測する手法が知られている。例えば、特開2018-134153号公報(特許文献1)には、投球解析システムが開示されている。
【0003】
特許文献1に係る投球解析システムは、センサ部及び送信部が内蔵されたボールと、送信部から送信されたセンサ部の検出値を受信して解析する解析装置とを備える。センサ部は、基板と、基板に搭載された加速度センサ、地磁気センサ及びジャイロセンサとを含む。解析装置は、グローバル座標系における基板の初期方向を特定して記憶し、グローバル座標系における基板の逐次変化する方向を算出し、グローバル座標系におけるボールの逐次変化する加速度を算出し、グローバル座標系におけるボールの移動軌跡を算出する([要約]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-134153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術によると、ボールにかかる指力を推定することができない。したがって、ボールにかかる指力を推定する技術が必要とされている。
【0006】
本開示は、上記のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面における目的は、ボールにかかる指力を推定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施の形態に従う解析装置は、ボールに内蔵されるセンサ機器、または、カメラから出力データを取得するための取得部と、出力データから並進加速度を算出するための並進加速度算出部と、並進加速度データに使用するフィルタを生成するフィルタ生成部と、ボールにかかる指力を算出するための指力算出部と、情報を出力するための出力部とを備える。取得部は、センサ機器、または、カメラから出力データを取得する。並進加速度算出部は、出力データに基づいて、ボールの並進加速度データを算出する。フィルタ生成部は、フィルタにより、並進加速度データの高周波成分を抽出する。指力算出部は、高周波成分およびボールの質量に基づいて、指力を算出する。出力部は、指力に関する情報を出力する。
【0008】
他の実施の形態に従うと、ボールにかかる指力を推定するするシステムが提供される。このシステムは、センサ機器が内蔵されたボールと、解析装置とを備える。センサ機器は、加速度センサと、解析装置と通信するための通信部と、ジャイロセンサとを含む。解析装置は、センサ機器によって送信される加速度データおよび角速度データを受信するための取得部と、加速度データから並進加速度データを算出するための並進加速度算出部と、並進加速度データに使用するフィルタを生成するフィルタ生成部と、ボールにかかる指力を算出するための指力算出部と、情報を出力するための出力部とを含む。センサ機器は、ボールの投球時の加速度データおよび角速度データを含む計測データを記録し、計測データを解析装置に送信する。解析装置は、取得部により、センサ機器により時系列で検出された加速度データおよび角速度データを取得し、並進加速度算出部により、受信した加速度データおよび角速度データに基づいて、ボールの並進加速度データを算出し、フィルタにより、並進加速度データの高周波成分を抽出し、力算出部により、高周波成分およびボールの質量に基づいて、指力を算出し、出力部により、指力に関する情報を出力する。
【0009】
他の実施の形態に従うと、ボールにかかる指力を推定するする別のシステムが提供される。このシステムは、ボールを撮像するカメラと、解析装置とを備える。解析装置は、カメラから撮像データを受信するための取得部と、撮像データに基づいて並進加速度データを算出するための並進加速度算出部と、並進加速度データに使用するフィルタを生成するフィルタ生成部と、ボールにかかる指力を算出するための指力算出部と、情報を出力するための出力部とを含む。カメラは、投球されたボールを撮像し、ボールの撮像データを解析装置に出力する。解析装置は、取得部により、撮像データを取得し、並進加速度算出部により、撮像データを解析することで得られるボールの中心の位置情報の微分処理により、ボールの並進加速度データを算出し、フィルタにより、並進加速度データの高周波成分を抽出し、指力算出部により、高周波成分およびボールの質量に基づいて、指力を算出し、出力部により、指力に関する情報を出力する。
【0010】
他の実施の形態に従うと、ボールにかかる指力を解析するためにコンピュータで実行される方法が提供される、この方法は、ボールに内蔵されたセンサ機器、または、ボールを撮像するカメラから出力データを取得するステップと、出力データに基づいて、ボールの並進加速度データを算出するステップと、フィルタにより、並進加速度データの高周波成分を抽出するステップと、高周波成分およびボールの質量に基づいて、指力を算出するステップと、指力に関する情報を出力するステップとを含む。
【0011】
さらに他の実施の形態に従うと、上記の方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
ある実施の形態に従うと、ボールにかかる指力を推定することが可能である。
この開示内容の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本開示に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ある実施の形態に従う解析システム1000の全体構成の一例を示す図である。
図2】ある実施の形態に従うボール2の概略構成の一例を示す図である。
図3】ある実施の形態に従う解析装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】ある実施の形態に従うセンサ機器20のハードウェア構成の一例を示す図である。
図5】ボール2にかかる力の一例を示す図である。
図6】ボール2に内蔵されるセンサ機器20から得られるデータの解析結果600の一例を示す図である。
図7】異なる二人の投手の投球データの一例を示す図である。
図8】解析装置10による解析結果600の表示の第1の例を示す図である。
図9】解析装置10による解析結果600の表示の第2の例を示す図である。
図10】解析装置10が備える機能の構成を表わすブロック図の一例を示す。
図11】解析装置10の内部処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る技術思想の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0015】
<システムの全体構成>
図1は、本実施の形態に従う解析システム1000の全体構成の一例を示す図である。図1を参照して、解析システム1000は、投手5が投じた野球用のボール2の加速度および角速度を解析し、ボール2にかかる力を算出する。解析システム1000は、解析装置10と、センサ機器20が内蔵されたボール2とを含む。なお、図1では、センサ座標系における互いに直交する3つの軸をx軸、y軸、z軸で表わし、絶対座標系における互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸、Z軸で表わしている。
【0016】
解析装置10は、ボール2に内蔵されるセンサ機器から情報を取得し、当該取得した情報を解析する。ある局面において、解析装置10は、PC(Personal Computer)、タブレット端末、スマートフォン、クラウド環境上の仮想マシン、または、任意の情報処理装置であってもよい。
【0017】
解析装置10が解析する情報は、例えば、ボール2の加速度、角速度および/または地磁気である。解析装置10は、当該ボール2の加速度、角速度および/または地磁気を解析することにより、ボール2にかかる指力を算出する。ある局面において、解析装置10は、ボール2の加速度および角速度のみを用いてもよい。ここでの「指力」は、ボール2のリリースの瞬間に投手5の指からボール2に伝わる力である。さらに、ある局面において、解析装置10は、得られた解析結果(ボール2にかかる指力の値等)に基づいて、投球方法の改善のアドバイスおよび/またはトレーニング方法のアドバイスを出力し得る。
【0018】
解析装置10は、無線通信方式によりセンサ機器20と通信する。ある局面において、解析装置10が使用する無線通信方式は、BLE(Bluetooth(登録商標) low energy)であってもよい。他の局面において、解析装置10が使用する無線通信方式は、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(local area network)、または、その他の任意の無線通信方式であってもよい。
【0019】
センサ機器20は、例えば、野球のボール2に内蔵されて使用され得る。センサ機器20は、各種センサ、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサおよび/または地磁気センサを備える。センサ機器20は、これらの各種センサから得られた出力値を解析装置10に送信し得る。ある局面において、センサ機器20は、解析装置10の代わりに、各センサの出力値を解析する機能を備えていてもよい。その場合、センサ機器20は、解析の結果(ボール2にかかる指力の値等)を解析装置10に送信し得る。
【0020】
図2は、本実施の形態に従うボール2の概略構成の一例を示す図である。ボール2の外観は一般的な硬式球と同等である。ボール2は、革製の外皮を有し、縫い目を視認可能に構成されている。ボール2は、その中心部にボール2の挙動を検出するためのセンサ機器20を内蔵している。センサ機器20は、ポリカーボネート製のカプセル62およびシリコーンゲル64で固定されており、優れた耐衝撃性を有する。
【0021】
再び、図1を参照して、センサ機器20は、センサ座標系(すなわち、ローカル座標系)における加速度、角速度、および、地磁気(磁場または磁束密度)を検出し得る。より具体的には、センサ機器20は、低加速度用および高加速度用の2つの加速度センサと、ジャイロセンサと、地磁気センサとを含む。加速度センサは、互いに直交する3つの軸(x軸,y軸,z軸)方向の加速度を示す加速度データを検出する。ジャイロセンサは、互いに直交する3つの軸(x軸,y軸,z軸)方向の角速度を示す角速度データを検出する。地磁気センサは、互いに直交する3つの軸方向の磁場(磁束密度)を示す地磁気データを検出する。地磁気センサには、例えば、MR(Magnet resistive)素子、MI(Magnet impedance)素子、ホール素子等が用いられる。
【0022】
<ハードウェア構成>
(解析装置10)
図3は、本実施の形態に従う解析装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。図3を参照して、解析装置10は、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)102と、メモリ104と、タッチパネル106と、ボタン108と、ディスプレイ110と、無線通信部112と、通信アンテナ113と、メモリインターフェイス(I/F)114と、スピーカ116と、マイク118と、通信インターフェイス(I/F)120と、カメラ122とを含む。また、記録媒体115は、外部の記憶媒体である。
【0023】
CPU102は、メモリ104に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、解析装置10の各部の動作を制御する。より詳細にはCPU102は、当該プログラムを実行することによって、後述する解析装置10の処理(ステップ)の各々を実現する。
【0024】
メモリ104は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、フラッシュメモリ等によって実現される。メモリ104は、CPU102によって実行されるプログラム、またはCPU102によって用いられるデータ等を記憶する。
【0025】
タッチパネル106は、表示部としての機能を有するディスプレイ110上に設けられており、抵抗膜方式、静電容量方式等のいずれのタイプであってもよい。ボタン108は、解析装置10の表面に配置されており、ユーザからの指示を受け付けて、CPU102に当該指示を入力する。ディスプレイ110は、解析装置10の表面に配置されている。ある局面において、解析装置10に接続して使用されてもよい。その場合、解析装置10は、ディスプレイ110を接続するための出力インターフェイスを備える。他の局面において、ディスプレイ110は、ブラウン管ディスプレイ、液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の任意の出力装置であってもよい。
【0026】
無線通信部112は、通信アンテナ113を介して移動体通信網に接続し無線通信のための信号を送受信する。これにより、解析装置10は、例えば、LTE(Long Term Evolution)等の移動体通信網を介して所定の外部装置との通信が可能となる。
【0027】
メモリインターフェイス(I/F)114は、外部の記録媒体115からデータを読み出す。CPU102は、メモリインターフェイス114を介して外部の記録媒体115に格納されているデータを読み出して、当該データをメモリ104に格納する。CPU102は、メモリ104からデータを読み出して、メモリインターフェイス114を介して当該データを外部の記録媒体115に格納する。
【0028】
なお、記録媒体115としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカード、FD(Flexible Disk)、または、ハードディスク等の不揮発的にプログラムを格納する媒体が挙げられる。
【0029】
スピーカ116は、CPU102からの命令に基づいて音声を出力する。マイク118は、解析装置10に対する発話を受け付ける。通信インターフェイス(I/F)120は、例えば、解析装置10とセンサ機器20との間でデータを送受信するための通信インターフェイスであり、アダプタやコネクタ等によって実現される。通信方式としては、例えば、BLEまたは無線LAN等による無線通信である。
【0030】
カメラ122は、ボール2を撮影する。ある局面において、カメラ122は、解析装置10に内蔵されていてもよいし、解析装置10に接続されていてもよい。CPU102は、センサ機器20から取得する各センサの出力値に代えて、カメラ122の撮像データ(画像または映像)を用いて、ボール2の並進加速度を推定してもよい。その場合、ボール2は、センサ機器20を含んでいなくてもよい。一例として、CPU102は、カメラ122の撮像データから、ボール2の位置のデータ(画像内での位置座標等)を取得する。そして、CPU102は、ボール2の中心の位置座標を微分処理(2回微分)することで、ボール2の並進加速度を求め得る。
【0031】
(センサ機器20)
図4は、本実施の形態に従うセンサ機器20のハードウェア構成の一例を示す図である。図4を参照して、センサ機器20は、主たる構成要素として、各種処理を実行するためのCPU202と、CPU202によって実行されるプログラム、データ等を格納するためのメモリ204と、加速度センサ220と、互いに直交する3つの軸方向の磁場を検出する地磁気センサ208と、解析装置10と通信するための通信インターフェイス(I/F)210と、センサ機器20の各種構成要素に電力を供給する蓄電池212と、互いに直交する3つの軸方向の角速度を検出するジャイロセンサ214とを含む。
【0032】
加速度センサ220は、低加速度センサ205と、高加速度センサ206とを含む。低加速度センサ205は、低加速度範囲(例えば、24G未満)を検出するための加速度センサであり、互いに直交する3軸方向の加速度を検出する。高加速度センサ206は、低加速度センサで検出できない高加速度範囲(例えば、24G以上)を検出するための加速度センサであり、互いに直交する3軸方向の加速度を検出する。なお、高加速度センサ206は、低加速度範囲も検出可能であるが、低加速度範囲については高加速度センサ206よりも低加速度センサ205の方が、検出精度が高い。
【0033】
<解析データ>
次に、図5図9を参照して、解析システム1000による解析により得られる解析データの一例について説明する。なお、これ以降、解析データをリストまたはグラフ等を用いて説明するが、実際には、解析システム1000は、解析データに含まれる数値データを算出および出力するだけであってもよい。
【0034】
図5は、ボール2にかかる力の一例を示す図である。投手5の指からボール2にかかる力は、主に、第1の力510と、第2の力520とを含む。第1の力510は、投手5が投球動作を行なうときに、指がボール2を離さないための力である。投手5が投球動作を行なうとき、投手5の指はボール2から受ける力505に対抗するためにボール2に第1の力510を加える。第1の力510を発生させる指の力は、受動握力と呼ばれることもある。
【0035】
第1の力510に対して、第2の力520は、投手5がボール2をリリースするときに、指が第2の力520の矢印が示す方向にボール2に加える力である。第2の力520は、指力またはせん断力と呼ばれることもある。第2の力520の大きさと、ボール2の回転数との間には正の相関関係がある。第2の力520を発生させる指の力は、能動握力と呼ばれることもある。また、第2の力520をボールに加えることを「ボールを切る」または「ボールを潰す」と呼ぶこともある。
【0036】
上記の第1の力510および第2の力520は、ボール2の加速度センサ220の出力値の3軸の合成加速度から算出され得る。3軸の合成加速度は、x, y, z軸の加速度成分の合成値である。ボール2の合成加速度は、並進加速度、遠心加速度、接線加速度および重力加速度を含む。ある局面において、ボール2の加速度は、コリオリ成分を含む場合もある。並進加速度は、ボールの並進運動により発生する加速度である。遠心加速度および接線加速度は、ボールが回転運動により発生する加速度である。
【0037】
遠心加速度および接線加速度は、センサ機器20のボール2の中心からのずれに起因して発生する。ボール2の中心からずれた位置にあるセンサ機器20は、ボール2が回転することにより、回転運動による加速度を検出する。当該回転運動による加速度が、遠心加速度および接線加速度となり得る。
【0038】
まず、解析装置10は、センサ機器20から得られたボール2の各センサの出力値を取得する。次に、解析装置10は、加速度センサ220の出力値からボール2の合成加速度を算出する。次に、解析装置10は、センサ機器20の中心から回転の中心までの距離と、ボール2の角速度のデータとに基づいて、遠心加速度および接線加速度を算出し得る。
【0039】
次に、解析装置10は、ボール2の合成加速度から、遠心加速度、接線加速度および重力加速度を減ずることで、ボール2の並進加速度を算出する。ある局面において、解析装置10は、さらに、ボール2の合成加速度から、コリオリ成分を減じてもよい。また、他の局面において、解析装置10は、一例として、ジャイロセンサ214の出力値および地磁気センサ208の出力値の一部または全てを用いることで、遠心加速度および接線加速度を算出し得る。
【0040】
次に、解析装置10は、並進加速度から、第1の力510と、第2の力520とを算出する。ある局面において、解析装置10は、並進加速度のデータをハイパスフィルタにかけることで、並進加速度を第1の成分と、第2の成分とに分離し得る。第1の成分は、主に第1の力510により発生する加速度である。第2の成分は、主に第2の力520により発生する加速度である。一般に、第1の成分は、低周波成分であり、第2の成分は高周波成分である。解析装置10は、例えば、並進加速度のデータをある一定の周波数(例えば、40Hz)以上の高周波成分を通過させるハイパスフィルタにかけることで、第2の成分を並進加速度から抽出し得る。なお、ハイパスフィルタのパラメータは任意に設定されてもよい。
【0041】
解析装置10は、並進加速度から抽出された第1の成分および第2の成分の各々にボール2の質量を乗ずることで、第1の力510および第2の力520を算出し得る。
【0042】
図6は、ボール2に内蔵されるセンサ機器20から得られるデータの解析結果600の一例を示す図である。解析装置10は、センサ機器20から得られる各種センサの出力値に基づいて、解析結果600を算出し得る。
【0043】
解析結果600は、回転数601と、せん断力出現タイミング602と、能動成分603と、受動成分604と、合成値605と、能動成分の割合606と、SPV(Spin rate Per Velocity)607とを含む。なお、解析結果600は、上記の解析結果の要素以外にも、加速度センサ220と、地磁気センサ208と、ジャイロセンサ214とから算出され得る任意の項目を含んでいてもよい。
【0044】
回転数601は、ボール2の回転数である。ある局面において、回転数601は、ジャイロセンサ214が出力する角速度データに基づいて、算出されてもよい。他の局面において、回転数601は、地磁気センサ208が出力する地磁気データに基づいて、算出されてもよい。また、他の局面において、回転数601は、角速度データおよび地磁気データの両方に基づいて、算出されてもよい。
【0045】
せん断力出現タイミング602は、第2の力520が発生するタイミングである。せん断力出現タイミング602は、リリースタイミングの瞬間を基準として、例えば、リリースタイミングから何ミリ秒前かで表される。例えば、リリースタイミング「-6」は、リリースタイミングの6ミリ秒前にせん断力が発生したことを示す。ある局面において、せん断力出現タイミング602の単位は、マイクロ秒または秒等の任意の単位であってもよい。
【0046】
能動成分603は、ボール2にかかる第2の力520を示す。受動成分604は、ボール2にかかる第1の力510を示す。合成値605は、能動成分603のピーク値が発生した際の能動成分603と受動成分604の合成値になる。なお、各成分は力のベクトルの合成である。
【0047】
能動成分の割合606は、合成値605に占める能動成分603の割合を示す。SPV607は、ある単位スピード当たりの回転数を示す。ある局面において、スピードの単位は任意に設定され得る。
【0048】
例えば、投手5または投手5の指導者は、解析結果600を参照することで、ボールの回転数601と、能動成分603および受動成分604の各々とが、どのような相関関係を有するかを知ることができる。
【0049】
図7は、異なる二人の投手の投球データの一例を示す図である。図7を参照して、投球時のボール2の回転数が低い投手のデータと、投球時のボール2の回転数が高い投手のデータとの差異について説明する。図7の上側のグラフは、ボール2の回転数が低い投手5Aのグラフである。図7の下側のグラフは、ボールの回転数の高い投手5Bのグラフである。各グラフの横軸は時間軸を示し、縦軸はボール2にかかる力の大きさを示す。
【0050】
グラフ710A,710Bは、ボール2にかかる力の受動成分であり、受動成分604に相当する。グラフ720A,720Bは、ボール2にかかる力の能動成分であり、能動成分603に相当する。グラフ730A,730Bは、ボール2にかかる力の合成値であり、合成値605に相当する。各グラフの頂点部分は、ボール2のリリース直前のタイミングであり、最もボール2に力がかかるタイミングである。
【0051】
上下のグラフを比較すると、投手5Aが投げたボール2にかかる力の合成値(グラフ730A)と、投手5Bが投げたボール2にかかる力の合成値(グラフ730B)との間に明確な差はない。
【0052】
また、投手5Aが投げたボール2にかかる力の受動成分(グラフ710A)と、投手5Bが投げたボール2にかかる力の受動成分(グラフ710B)との間にも明確な差はない。
【0053】
しかし、投手5Aが投げたボール2にかかる力の能動成分(グラフ720A)と、投手5Bが投げたボール2にかかる力の能動成分(グラフ720B)とには、大きく差があることがわかる。このことから、ボール2にかかる力の能動成分(第2の力520)を向上させることで、ボール2の回転数も増加すると予測される。
【0054】
図8は、解析装置10による解析結果600の表示の第1の例を示す図である。図8の上側のグラフ810は、ボール2の回転数601と能動成分603(第2の力520)との間の相関関係を示す。グラフ810の横軸はボール2の回転数601であり、縦軸は能動成分603のピーク値である。能動成分603のピーク値とは、例えば、グラフ720A,720Bの頂点の値に相当する。
【0055】
グラフ810は、複数の投球の結果(各プロット)から回帰分析等により求められる。グラフ810を参照すると、ボール2の回転数601が増加すると、能動成分603のピーク値も増加している。このことから、ボール2の回転数601および能動成分603の間には正の相関関係があることがわかる。
【0056】
図8の下側のグラフ820は、ボール2の回転数601と受動成分604(第1の力510)との間の相関関係を示す。グラフ820の横軸はボール2の回転数601であり、縦軸は受動成分604のピーク値である。受動成分604のピーク値とは、例えば、グラフ710A,710Bの頂点の値に相当する。
【0057】
グラフ820は、複数の投球の結果(各プロット)から回帰分析等により求められる。グラフ820を参照すると、ボール2の回転数601が増加しても、受動成分604のピーク値はほとんど変化していない。このことから、ボール2の回転数601および受動成分604の間には相関関係がないことがわかる。
【0058】
図9は、解析装置10による解析結果600の表示の第2の例を示す図である。図9に示すグラフは、ボール2のSPV607と、能動成分603(第2の力520)または受動成分604(第1の力510)との関係を示している。
【0059】
図9の上側のグラフ910は、ボール2のSPV607と能動成分603(第2の力520)との間の相関関係を示す。ボール2のSPV607と能動成分603とを比較することで、球速の影響を排除したボール2の回転数601および能動成分603の間の相関関係が得られる。グラフ910の横軸はボール2のSPV607であり、縦軸は能動成分603のピーク値である。
【0060】
グラフ910は、複数の投球の結果(各プロット)から回帰分析等により求められる。グラフ910を参照すると、ボール2のSPV607が増加すると、能動成分603のピーク値も増加している。このことから、ボール2の球速の影響を排除したとしても、ボール2の回転数および能動成分603には正の相関関係があることがわかる。
【0061】
図9の下側のグラフ920は、ボール2のSPV607と受動成分604(第1の力510)との間の相関関係を示す。ボール2のSPV607と受動成分604とを比較することで、球速の影響を排除したボール2の回転数601および受動成分604の間の相関関係が得られる。グラフ920の横軸はボール2のSPV607であり、縦軸は受動成分604のピーク値である。
【0062】
グラフ920は、複数の投球の結果(各プロット)から回帰分析等により求められる。グラフ920を参照すると、ボール2のSPV607が増加しても、受動成分604のピーク値はほとんど変化していない。このことから、ボール2の球速の影響を排除したとしても、ボール2の回転数および受動成分604の間には相関関係がないことがわかる。
【0063】
上記のように、ボール2にかかる力の能動成分603(第2の力520)と、ボール2の回転数との間には相関関係がある。そのため、ボール2にかかる力の能動成分603(第2の力520)を計測し、当該能動成分603を出力することは、投手の現状の指力の把握、投球方法の改善、および、トレーニングについてのアドバイスの作成に役立つことが予測される。
【0064】
ある局面において、解析装置10は、上記の図5図9に示すような、センサ機器20から取得したデータ、または、当該データの解析結果のリストおよび/またはグラフを出力してもよい。ある局面において、解析装置10は、センサ機器20から取得したデータ、または、当該データの解析結果のリストおよび/またはグラフをディスプレイ110に出力してもよい。他の局面において、解析装置10は、センサ機器20から取得したデータ、または、当該データの解析結果のリストおよび/またはグラフを通信インターフェイス120から他の装置に送信してもよい。また、他の局面において、解析装置10は、センサ機器20から取得したデータ、または、当該データの解析結果のリストおよび/またはグラフをディスプレイ110および通信インターフェイス120の両方に出力してもよい。
【0065】
また、ある局面において、解析装置10は、センサ機器20から取得したデータの解析結果から、投球方法の改善のアドバイスおよび/またはトレーニング方法のアドバイスを生成し、当該アドバイスを出力してもよい。その場合、解析装置10は、当該アドバイスをディスプレイ110および/または通信インターフェイス120に出力し得る。
【0066】
<解析装置10の内部処理>
次に、図10および図11を参照して、解析装置10の内部処理およびデータの入出力について説明する。図10は、解析装置10が備える機能の構成を表わすブロック図の一例を示す。各機能は、ハードウェアまたはソフトウェアとして実現され得る。ある局面において、図10に示す機能ブロックは、ソフトウェアとして図3に示す解析装置10のハードウェア上で実行され得る。他の局面において、図10に示す機能ブロックの一部または全ては、ソフトウェアとして図4に示すセンサ機器20のハードウェア上で実行されてもよい。
【0067】
解析装置10は、情報入力部1005と、角速度設定部1010と、遠心・接線加速度算出部1015と、並進加速度算出部1020と、ハイパスフィルタ係数算出部1025と、順方向ハイパスフィルタ算出部1030と、逆方向ハイパスフィルタ算出部1035と、指力算出部1040と、アドバイス出力部1045とを備える。以下、図10を参照して、各構成のデータの入出力について説明する。
【0068】
ステップS1005において、情報入力部1005は、センサ機器20から、時系列の計測データ(加速度、角速度、および/または、地磁気)を取得する。ある局面において、情報入力部1005は、センサ機器20の中心から回転の中心までの距離のデータも受信してもよい。他の局面において、情報入力部1005は、センサ機器20の中心から回転の中心までの距離のデータを予め保持していてもよい。または、情報入力部1005は、カメラ122からボール2の撮像データを取得してもよい。その場合、情報入力部1005は、並進加速度算出部1020に、ボール2の撮像データから得られたボール2の位置のデータを送信する。ボール2の位置のデータが使用される場合、ステップS1020,S1025,S1035,S1040は実行されなくてもよい。
【0069】
また、ある局面において、情報入力部1005は、無線通信路を介して、センサ機器20から各種データを受信してもよい。他の局面において、情報入力部1005は、有線通信路を介して、センサ機器20から各種データを受信してもよい。
【0070】
ステップS1010において、情報入力部1005は、リリース算出部1050に、取得した時系列の計測データを送信する。情報入力部1005は、少なくとも、時系列の加速度のデータをリリース算出部1050に送信する。
【0071】
ステップS1015において、リリース算出部1050は、取得した時系列の計測データに基づいて、リリース時刻を推定する。ある局面において、リリース算出部1050は、加速度の変化量に基づいて、リリース時刻を推定し得る。加速度のデータは、時系列の離散値であり、リリース算出部1050は、例えば、隣接する離散値同士の差分を求めることで、加速度の変化量を算出することができる。リリース算出部1050は、角速度設定部1010~指力算出部1040に、推定したリリース時刻を送信する。
【0072】
ステップS1020において、情報入力部1005は、角速度設定部1010に、取得した時系列の計測データ(少なくとも時系列の角速度のデータ)を送信する。ステップS1025において、情報入力部1005は、遠心・接線加速度算出部1015に、取得した時系列の計測データおよびセンサ機器20の中心から回転の中心までの距離のデータを送信する。ステップS1030において、情報入力部1005は、並進加速度算出部1020に、取得した時系列の計測データ、または、時系列の3軸の合成加速度のデータを送信する。
【0073】
ステップS1035において、角速度設定部1010は、取得した計測データおよびリリース時刻に基づいて、時系列の角速度のデータからリリース時刻までの角速度のデータを算出する。ある局面において、角速度設定部1010は、ジャイロセンサ214の出力値を角速度として使用し得る。他の局面において、角速度設定部1010は、ジャイロセンサ214の出力値と、地磁気のデータから算出したボール2の回転数とから、ボール2の角速度の近似値を推定してもよい。角速度設定部1010は、遠心・接線加速度算出部1015に、当該リリース時刻までの角速度のデータを送信する。
【0074】
ステップS1040において、遠心・接線加速度算出部1015は、取得したリリース時刻までの角速度のデータ、センサ機器20の中心から回転の中心までの距離のデータ、および、リリース時刻に基づいて、遠心加速度および接線加速度を算出する。遠心・接線加速度算出部1015は、並進加速度算出部1020に、遠心加速度および接線加速度を送信する。
【0075】
ステップS1045において、並進加速度算出部1020は、取得した時系列の3軸の合成加速度のデータと、遠心加速度と、接線加速度と、リリース時刻とから、並進加速度を算出する。並進加速度算出部1020は、合成加速度から遠心加速度、接線加速度および重力加速度を減ずることで、ボール2の並進加速度を算出し得る。ある局面において、並進加速度算出部1020は、リリース時刻に基づいて、リリース時刻付近の一定時間以内に含まれる3軸の合成加速度のデータから、リリース時刻付近の並進加速度のデータを算出してもよい。または、並進加速度算出部1020は、ボール2の位置のデータに基づいて、ボール2の並進加速度を算出し得る。ある局面において、並進加速度算出部1020は、リリース時刻に基づいて、リリース時刻付近の一定時間以内に含まれるボール2の位置のデータから、リリース時刻付近の並進加速度のデータを算出してもよい。
【0076】
また、並進加速度算出部1020は、当該並進加速度のデータのサンプリング周波数およびカットオフ周波数を算出する。並進加速度算出部1020は、当該並進加速度のデータ、サンプリング周波数およびカットオフ周波数をハイパスフィルタ係数算出部1025に送信する。ある局面において、並進加速度算出部1020は、当該並進加速度のデータのみをハイパスフィルタ係数算出部1025に送信してもよい。その場合、ハイパスフィルタ係数算出部1025は、並進加速度のデータのサンプリング周波数およびカットオフ周波数を算出する。
【0077】
ステップS1050において、ハイパスフィルタ係数算出部1025は、サンプリング周波数およびカットオフ周波数に基づいて、ハイパスフィルタ係数を算出する。ハイパスフィルタ係数算出部1025は、当該並進加速度のデータおよびハイパスフィルタを順方向ハイパスフィルタ算出部1030に送信する。
【0078】
ステップS1055において、順方向ハイパスフィルタ算出部1030は、取得したハイパスフィルタ係数に基づいて、順方向ハイパスフィルタを生成する。また、順方向ハイパスフィルタ算出部1030は、並進加速度のデータを当該順方向ハイパスフィルタにかける。その後、順方向ハイパスフィルタ算出部1030は、順方向ハイパスフィルタを通過した並進加速度のデータと、ハイパスフィルタ係数とを逆方向ハイパスフィルタ算出部1035に送信する。ある局面において、順方向ハイパスフィルタ算出部1030は、リリース時刻に基づいて、リリース時刻周辺の並進加速度のデータのみを順方向ハイパスフィルタにかけてもよい。
【0079】
ステップS1060において、逆方向ハイパスフィルタ算出部1035は、取得したハイパスフィルタ係数に基づいて、逆方向ハイパスフィルタを生成する。また、逆方向ハイパスフィルタ算出部1035は、順方向ハイパスフィルタを通過した並進加速度のデータを当該逆方向ハイパスフィルタにかける。並進加速度のデータが順方向ハイパスフィルタおよび逆方向ハイパスフィルタの両方を通過することにより、並進加速度の高周波成分が抽出される。当該並進加速度の高周波成分は、図5を参照して説明した第2の成分に相当する。逆方向ハイパスフィルタ算出部1035は、並進加速度の高周波成分を指力算出部1040に送信する。ある局面において、逆方向ハイパスフィルタ算出部1035は、リリース時刻に基づいて、リリース時刻周辺の並進加速度のデータのみを逆方向ハイパスフィルタにかけてもよい。
【0080】
ステップS1065において、指力算出部1040は、取得したリリース時刻と、並進加速度の高周波成分とに基づいて、ボール2にかかる指力のピーク値を算出する。例えば、指力算出部1040は、ボール2の質量および並進加速度の高周波成分等に基づいてボール2にかかる指力を算出し得る。ボール2にかかる指力は、図5を参照して説明した第2の力520に相当する。ボール2にかかる指力のピーク値は、例えば、グラフ720A,720Bの頂点の値、またはその近似値である。
【0081】
ステップS1070において、アドバイス出力部1045は、取得した指力のピーク値に基づいて、アドバイス(投球を改善するための情報)を生成し、当該アドバイスを出力する。ある局面において、アドバイス出力部1045は、アドバイスをディスプレイ110に出力してもよい。他の局面において、アドバイス出力部1045は、通信インターフェイス120を介して、アドバイスを他の装置に送信してもよい。
【0082】
また、他の局面において、アドバイスは、ボール2にかける力(指力の能動成分603)を変更するアドバイスを含んでいてもよい。また、他の局面において、アドバイスは、指力の能動成分603を向上させるためのトレーニング方法を含んでいてもよい。さらに、他の局面において、アドバイス出力部1045は、投球ごとの指力およびボール2の回転数の履歴情報も出力してもよい。当該履歴情報は、任意のデータ(例えば、ボール2の回転数と指力との間の相関関係を示す情報等)を含んでもよく、例えば、図6図9に示したような、リストまたはグラフを視覚的に表示させるためのデータ等を含んでいてもよい。投手5または投手5の指導者は、これらの履歴情報を閲覧することで、投球が改善されているか否かを確認することができる。
【0083】
図11は、解析装置10の内部処理の一例を示す図である。ある局面において、CPU102は、図11の処理を行うためのプログラムを記録媒体115からメモリ104に読み込んで、当該プログラムを実行してもよい。他の局面において、当該処理の一部または全部は、当該処理を実行するように構成された回路素子の組み合わせとしても実現され得る。
【0084】
ステップS1105において、CPU102は、投手5の投球動作時にボール2に発生する加速度および角速度のデータを取得する。または、CPU102は、カメラ122からボール2の撮像データを取得し、当該撮像データからボール2の位置のデータを取得する。なお、CPU102は、ステップS1150にて撮像データからボール2の位置のデータを取得する処理を実行してもよい。ある局面において、角速度のデータは、ジャイロセンサ214の出力値であってもよい。他の局面において、角速度のデータは、地磁気センサ208の出力値およびジャイロセンサ214の出力値に基づいて、算出されてもよい。
【0085】
また、ある局面において、CPU102は、無線通信部112または通信インターフェイス120を介して、ボール2から加速度のデータおよび角速度のデータを取得し得る。また、他の局面において、CPU102は、さらに、ボール2から地磁気のデータも取得し得る。
【0086】
ステップS1110において、CPU102は、投球時の加速度のデータに含まれる時系列の加速度の各々を比較し、前後の加速度の差分値が予め定められた閾値を超えた時刻をリリース時刻に設定する。加速度のデータは、時系列の離散値を含む。CPU102は、隣接する離散値同士を比較し、当該隣接する離散値同士の差分値が予め定められた閾値を超えた時刻をリリース時刻に設定し得る。または、CPU102は、ボール2の位置情報に基づいて、ボール2の速度が最大となった時刻をリリース時刻に設定し得る。
【0087】
ステップS1115において、CPU102は、取得したデータが加速度・角速度のデータであるか否かを判定する。CPU102は、取得したデータがボール2の加速度・加速度のデータであると判定した場合(ステップS1115にてYES)、制御をステップS1120に移す。そうでない場合、すなわち、取得したデータがボール2の位置のデータであった場合(ステップS1115にてNO)、CPU102は、制御をステップS1150に移す。
【0088】
ステップS1120において、CPU102は、リリース時刻から200ミリ秒前を投球動作の開始時刻に設定する。ある局面において、CPU102は、リリース時刻から任意の秒数分遡った時刻を投球動作の開始時刻に設定し得る。他の局面において、CPU102は、加速度のデータの変化量に基づいて、投球動作の開始時刻を推定してもよい。
【0089】
ステップS1125において、CPU102は、時系列の地磁気のデータ内の隣接するデータ同士の差分を求める。地磁気のデータは、時系列の離散値を含む。CPU102は、隣接する離散値同士の差分を算出し得る。例えば、地磁気のデータが時系列のデータA~Cを含む場合、CPU102は、データAおよびデータBの差分と、データBおよびデータCの差分とを算出し得る。
【0090】
また、CPU102は、リリース時刻以降で、かつ、リリース時刻に最も近いタイムスタンプの地磁気のデータを選択する。例えば、データA~Cの中でデータBのタイムスタンプが、リリース時刻以降で、かつ、リリース時刻に最も近い場合、CPU102は、データBを選択する。
【0091】
さらに、CPU102は、選択したデータおよびその前後のデータの差分に基づいて、ボール2の回転数(rpm(rotations per minute))を算出する。CPU102は、差分値が地磁気のデータの出力値の0と交差する点(ゼロクロス点)をカウントし、所定カウント分(例えば、3カウント分)を1回転として算出する。CPU102は、単位期間内におけるゼロクロス点のカウント数からボール2の回転数を算出し得る。
【0092】
ステップS1130において、CPU102は、各時刻の角速度が閾値未満であるか否かを判定する。ある局面において、閾値は、予め定められた値であってもよい。CPU102は、各時刻の角速度が閾値未満であると判定した場合(ステップS1130にてYES)、制御をステップS1130に移す。そうでない場合(ステップS1130にてNO)、CPU102は、制御をステップS1135に移す。
【0093】
ステップS1135において、CPU102は、ジャイロセンサ214の出力値を角速度の値に設定する。ステップS1140において、CPU102は、閾値以上になる直前のジャイロセンサ214の出力値と、地磁気のデータから算出したリリース直後の回転数とから推定される線形近似値を角速度の値に設定する。
【0094】
ステップS1145において、CPU102は、角速度およびボール2の中心からセンサ機器20の中心までの距離を入力値として、ボール2の遠心加速度および接線加速度を算出する。
【0095】
ステップS1150において、CPU102は、加速度センサの3軸(x,y,z軸)の合成値(合成加速度)を算出し、当該合成加速度から遠心加速度、接線加速度および重力加速度を減ずることで、ボール2の並進加速度を算出する。ある局面において、CPU102は、さらに、合成加速度から、コリオリ成分を減じてもよい。または、CPU102は、ボール2の撮像データを解析してボール2の位置のデータを取得し、当該位置のデータ内のボール2の中心の位置座標を微分処理(2回微分)することで、ボール2の並進加速度を算出する。
【0096】
ステップS1155において、CPU102は、ハイパスフィルタにより、ボール2の時系列の並進加速度のデータから高周波成分を抽出する。当該ハイパスフィルタは、パラメータにより設定されたある周波数(例えば、40Hz)以上の周波数成分を通過させ得る。
【0097】
ステップS1160において、CPU102は、ボール2の並進加速度の高周波成分に、ボール2の質量を乗じることで、投手の指からボール2に作用する指力(図5を参照して説明した第2の力520に相当)を算出する。
【0098】
ステップS1165において、CPU102は、投球動作の開始時からボール2のリリースまでの区間における、指力の能動成分(第2の力520)のピーク値を算出する。例えば、指力の能動成分(第2の力520)は、時系列の離散値のデータであり、CPU102は、当該離散値のデータの中から、最大値(ピーク値)を選択し得る。
【0099】
ステップS1170において、CPU102は、算出された指力の能動成分(第2の力520)のピーク値と、ボール2のリリース後の回転数に対する指力の能動成分(第2の力520)のピーク値の平均値とを比較し、投手5および/または投手5の指導者に対するアドバイス(投球を改善するための情報)を出力する。
【0100】
例えば、今回の投球における指力の能動成分の値と、過去数回の投球における指力の能動成分の平均値とを比較することで、投手5は、自身の指力が向上しているか、または、投球方法が改善されているかを確認することができる。さらに、投手5は、得られたアドバイスに基づいて、自身の指力を向上させるためのトレーニング、または、投球方法を改善するためのトレーニングを行なうことができる。ある局面において、CPU102は、これらのアドバイスをディスプレイ110および/または通信インターフェイス120に出力し得る。
【0101】
<付記>
上述したような本実施の形態は、以下のような技術思想を含む。
【0102】
[構成1]ある実施の形態に従う解析装置は、ボールに内蔵されるセンサ機器、または、カメラから出力データを取得するための取得部と、上記出力データから並進加速度を算出するための並進加速度算出部と、並進加速度データに使用するフィルタを生成するフィルタ生成部と、上記ボールにかかる指力を算出するための指力算出部と、情報を出力するための出力部とを備える。上記取得部は、上記センサ機器、または、上記カメラから上記出力データを取得する。上記並進加速度算出部は、上記出力データに基づいて、上記ボールの上記並進加速度データを算出する。上記フィルタ生成部は、上記フィルタにより、上記並進加速度データの高周波成分を抽出する。上記指力算出部は、上記高周波成分および上記ボールの質量に基づいて、上記指力を算出する。上記出力部は、上記指力に関する情報を出力する。
【0103】
[構成2]ある局面において、上記出力データは、上記センサ機器が出力する加速度のデータおよび角速度のデータ、または、上記カメラが出力する撮像データを含む。
【0104】
[構成3]ある局面において、上記フィルタ生成部は、ハイパスフィルタを生成し、上記並進加速度データを上記ハイパスフィルタにかけることで、上記高周波成分を抽出する。
【0105】
[構成4]ある局面において、上記並進加速度算出部は、上記出力データが加速度データおよび角速度データを含むことに基づいて、上記加速度データから、上記ボールの遠心加速度データ、接線加速度データおよび重力加速度データを減ずることにより、上記並進加速度データを算出する。
【0106】
[構成5]ある局面において、上記遠心加速度データおよび上記接線加速度データは、上記センサ機器の中心から上記ボールの中心までの距離と、上記角速度データとに基づいて算出される。
【0107】
[構成6]ある局面において、上記取得部は、上記センサ機器により時系列で検出された地磁気データをさらに受信する。上記遠心加速度データおよび上記接線加速度データは、上記センサ機器の中心から上記ボールの中心までの距離と、上記角速度データと、上記地磁気データとに基づいて算出される。
【0108】
[構成7]ある局面において、上記並進加速度算出部は、上記出力データが上記撮像データであることに基づいて、上記撮像データを解析することで得られる上記ボールの中心の位置情報の微分処理により、上記並進加速度データを算出する。
【0109】
[構成8]ある局面において、上記解析装置は、上記ボールのリリース時刻を算出するリリース算出部をさらに備える。上記並進加速度算出部は、上記リリース時刻付近の一定時間以内の上記出力データから上記並進加速度データを算出する。
【0110】
[構成9]ある局面において、上記出力部は、さらに、上記指力に基づいて、投球を改善するための情報を出力する。
【0111】
[構成10]ある局面において、上記投球を改善するための情報は、指によって上記ボールにかける力を変更するアドバイスを含む。
【0112】
[構成11]ある局面において、上記解析装置は、上記ボールの回転数を算出する回転数算出部をさらに備える。上記投球を改善するための情報は、上記回転数および上記指力の履歴情報を含む。
【0113】
[構成12]ある局面において、上記履歴情報は、上記回転数と上記指力との相関関係を視覚的に表示するためのデータを含む。
【0114】
[構成13]ある局面において、上記履歴情報は、上記回転数を上記ボールの速度により除した結果と、上記指力と、の相関関係を視覚的に表示するためのデータを含む。
【0115】
[構成14]他の実施の形態に従うと、ボールの指力を解析するシステムが提供される。このシステムは、センサ機器が内蔵されたボールと、解析装置とを備える。上記センサ機器は、加速度センサと、上記解析装置と通信するための通信部と、ジャイロセンサとを含む。上記解析装置は、上記センサ機器によって送信される加速度データおよび角速度データを受信するための取得部と、上記加速度データから並進加速度データを算出するための並進加速度算出部と、上記並進加速度データに使用するフィルタを生成するフィルタ生成部と、上記ボールにかかる指力を算出するための指力算出部と、情報を出力するための出力部とを含む。上記センサ機器は、上記ボールの投球時の上記加速度データおよび上記角速度データを含む計測データを記録し、上記計測データを上記解析装置に送信する。上記解析装置は、上記取得部により、上記センサ機器により時系列で検出された上記加速度データおよび上記角速度データを取得し、上記並進加速度算出部により、受信した上記加速度データおよび上記角速度データに基づいて、上記ボールの上記並進加速度データを算出し、上記フィルタにより、上記並進加速度データの高周波成分を抽出し、上記指力算出部により、上記高周波成分および上記ボールの質量に基づいて、上記指力を算出し、上記出力部により、上記指力に関する情報を出力する。
【0116】
[構成15]他の実施の形態に従うと、ボールの指力を解析する別のシステムが提供される。このシステムは、ボールを撮像するカメラと、解析装置とを備える。上記解析装置は、上記カメラから撮像データを受信するための取得部と、上記撮像データに基づいて並進加速度データを算出するための並進加速度算出部と、上記並進加速度データに使用するフィルタを生成するフィルタ生成部と、上記ボールにかかる指力を算出するための指力算出部と、情報を出力するための出力部とを含む。上記カメラは、投球された上記ボールを撮像し、上記ボールの上記撮像データを上記解析装置に出力する。上記解析装置は、上記取得部により、上記撮像データを取得し、上記並進加速度算出部により、上記撮像データを解析することで得られる上記ボールの中心の位置情報の微分処理により、上記ボールの上記並進加速度データを算出し、上記フィルタにより、上記並進加速度データの高周波成分を抽出し、上記指力算出部により、上記高周波成分および上記ボールの質量に基づいて、上記指力を算出し、上記出力部により、上記指力に関する情報を出力する。
【0117】
[構成16]ある局面において、上記フィルタ生成部は、ハイパスフィルタを生成し、上記並進加速度データを上記ハイパスフィルタにかけることで、上記高周波成分を抽出する。
【0118】
[構成17]ある局面において、上記システムは、上記ボールのリリース時刻を算出するリリース算出部をさらに備える。上記並進加速度算出部は、上記リリース時刻付近の一定時間以内の上記並進加速度データを算出する。
【0119】
[構成18]ある局面において、上記出力部は、さらに、上記指力に基づいて、投球を改善するための情報を出力する。
【0120】
[構成19]ある局面において、上記投球を改善するための情報は、指によって上記ボールにかける力を変更するアドバイスを含む。
【0121】
[構成20]ある局面において、上記システムは、上記ボールの回転数を算出する回転数算出部をさらに備える。上記投球を改善するための情報は、上記回転数および上記指力の履歴情報を含む。
【0122】
[構成21]ある局面において、上記履歴情報は、上記回転数と上記指力との相関関係を視覚的に表示するためのデータを含む。
【0123】
[構成22]ある局面において、上記履歴情報は、上記回転数を上記ボールの速度により除した結果と、上記指力と、の相関関係を視覚的に表示するためのデータを含む。
【0124】
[構成23]他の実施の形態に従うと、ボールにかかる指力を解析するためにコンピュータで実行される方法が提供される。この方法は、上記ボールに内蔵されたセンサ機器、または、上記ボールを撮像するカメラから出力データを取得するステップと、上記出力データに基づいて、上記ボールの並進加速度データを算出するステップと、フィルタにより、上記並進加速度データの高周波成分を抽出するステップと、上記高周波成分および上記ボールの質量に基づいて、上記指力を算出するステップと、上記指力に関する情報を出力するステップとを含む。
【0125】
[構成24]ある局面において、上記出力データは、上記センサ機器が出力する加速度のデータおよび角速度のデータ、または、上記カメラが出力する撮像データを含む。
【0126】
[構成25]ある局面において、上記方法は、ハイパスフィルタを生成するステップと、上記並進加速度データを上記ハイパスフィルタにかけることで、上記高周波成分を抽出するステップとをさらに含む。
【0127】
[構成26]ある局面において、上記方法は、上記出力データが加速度データおよび角速度データを含むことに基づいて、上記加速度データから、上記ボールの遠心加速度データ、接線加速度データおよび重力加速度データを減ずることにより、上記並進加速度データを算出するステップをさらに含む。
【0128】
[構成27]ある局面において、上記遠心加速度データおよび上記接線加速度データは、上記センサ機器の中心から上記ボールの中心までの距離と、上記角速度データとに基づいて算出される。
【0129】
[構成28]ある局面において、上記方法は、上記センサ機器により時系列で検出された地磁気データを受信するステップをさらに含む。上記遠心加速度データおよび上記接線加速度データは、上記センサ機器の中心から上記ボールの中心までの距離と、上記角速度データと、上記地磁気データとに基づいて算出される。
【0130】
[構成29]ある局面において、上記方法は、上記出力データが上記撮像データであることに基づいて、上記撮像データを解析することで得られる上記ボールの中心の位置情報の微分処理により、上記並進加速度データを算出するステップをさらに含む。
【0131】
[構成30]ある局面において、上記方法は、上記ボールのリリース時刻付近の一定時間以内の上記出力データから上記並進加速度データを算出するステップをさらに含む。
【0132】
[構成31]ある局面において、上記方法は、上記指力に基づいて、投球を改善するための情報を出力するステップをさらに含む。
【0133】
[構成32]ある局面において、上記投球を改善するための情報は、指によって上記ボールにかける力を変更するアドバイスを含む。
【0134】
[構成33]ある局面において、上記方法は、上記ボールの回転数を算出するステップをさらに含む。上記投球を改善するための情報は、上記回転数および上記指力の履歴情報を含む。
【0135】
[構成34]ある局面において、上記履歴情報は、上記回転数と上記指力との相関関係を視覚的に表示するためのデータを含む。
【0136】
[構成35]ある局面において、上記履歴情報は、上記回転数を上記ボールの速度により除した結果と、上記指力との相関関係を視覚的に表示するためのデータを含む。
【0137】
[構成36]他の実施の形態に従うと、上記の方法をコンピューターに実行させるためのプログラムが提供される。
【0138】
以上説明した通り、本実施の形態に従う解析システム1000は、ボール2にかかる力の能動成分(第2の力520)を算出することができる。また、解析システム1000は、ボール2にかかる力の能動成分(第2の力520)と、ボール2の回転数とに基づいて、投手5に対するアドバイスおよび/または投手5の指導者に対する指導のアドバイスを出力する。これらの機能により、投手5は投球動作の改善のためのトレーニングを効果的に行なうことができる。
【0139】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された開示内容は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。
【符号の説明】
【0140】
2 ボール、5 投手、10 解析装置、20 センサ機器、62 カプセル、64 シリコーンゲル、102,202 CPU、104,204 メモリ、106 タッチパネル、108 ボタン、110 ディスプレイ、112 無線通信部、113 通信アンテナ、114 メモリインターフェイス、115 記録媒体、116 スピーカ、118 マイク、120 通信インターフェイス、122 カメラ、205 低加速度センサ、206 高加速度センサ、208 地磁気センサ、212 蓄電池、213,214 ジャイロセンサ、220 加速度センサ、505 ボール2から受ける力、510 第1の力、520 第2の力、600 解析結果、601 回転数、602 せん断力出現タイミング、603 能動成分、604 受動成分、605 合成値、606 能動成分の割合、607 SPV、710A,710B,720A,720B,730A,730B,810,820,910,920 グラフ、1000 解析システム、1005 情報入力部、1010 角速度設定部、1015 接線加速度算出部、1020 並進加速度算出部、1025 ハイパスフィルタ係数算出部、1030 順方向ハイパスフィルタ算出部、1035 逆方向ハイパスフィルタ算出部、1040 指力算出部、1045 アドバイス出力部、1050 リリース算出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11