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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】受信装置及び受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/61 20130101AFI20240517BHJP
【FI】
H04B10/61
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020168252
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2022060661
(43)【公開日】2022-04-15
【審査請求日】2023-06-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発/ディスアグリゲーション型次世代データセンタに適用する光電ハイブリッドスイッチを用いた高速低電力データ伝送システムの研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 良男
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊毅
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220567(JP,A)
【文献】特開2013-191943(JP,A)
【文献】特開平08-102717(JP,A)
【文献】特開2004-356742(JP,A)
【文献】特開2006-215815(JP,A)
【文献】特開2012-138726(JP,A)
【文献】特開2010-226685(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0207702(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バースト光信号をそれぞれ送信する複数の送信装置と、制御装置により前記バースト光信号の経路の切り替えが可能な伝送路を介して接続された受信装置において、
局発光を出力する光源と、
前記経路から間欠的に入力される前記バースト光信号を前記局発光により検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記バースト光信号を電気的なアナログ信号に変換する第1変換器と、
前記アナログ信号を利得に応じて増幅する増幅器と、
前記増幅器により増幅された前記アナログ信号をデジタル信号に変換する第2変換器と、
前記複数の送信装置のうち、前記経路から入力される前記バースト光信号の送信元の送信装置と通信回線を設定するとき、前記制御装置から指示された前記増幅器の利得及び前記局発光の波長を設定する設定処理部とを有し、
前記設定処理部は、前記通信回線の設定前に、前記制御装置による前記経路の切り替えに伴って順次に前記複数の送信装置の各々から送信される前記バースト光信号に従って、前記局発光の波長を切り替え、前記増幅器の利得を調整して前記制御装置に通知することを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記設定処理部は、前記制御装置が選択した前記複数の送信装置の各々から送信される前記バースト光信号の波長を前記制御装置から取得し、前記バースト光信号の波長に応じて前記局発光の波長を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記アナログ信号の振幅を測定する第1測定部を有し、
前記設定処理部は、前記第1測定部が測定した前記アナログ信号の振幅に基づき、前記増幅器の利得を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記デジタル信号のエラーレートを測定する第2測定部を有し、
前記設定処理部は、前記第2測定部が測定した前記デジタル信号のエラーレートに基づき、前記増幅器の利得を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の受信装置。
【請求項5】
前記バースト光信号のパワーを測定する第3測定部を有し、
前記設定処理部は、前記第3測定部が測定した前記バースト光信号のパワーに基づき、前記増幅器の利得を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の受信装置。
【請求項6】
前記設定処理部は、前記増幅器の利得を所定の範囲内で調整することができない場合、前記制御装置に異常を通知することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の受信装置。
【請求項7】
前記デジタル信号に対して信号品質の劣化の補償を行う補償部を有し、
前記設定処理部は、前記増幅器の利得の変更前に前記補償部の動作を停止制御し、所定時間待機した後、前記補償部に動作を開始させることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の受信装置。
【請求項8】
バースト光信号をそれぞれ送信する複数の送信装置の1つから、制御装置により前記バースト光信号の経路の切り替えが可能な伝送路を介して前記バースト光信号を受信する受信方法において、
光源から局発光を出力し、
前記経路から間欠的に入力される前記バースト光信号を前記局発光により検出し、
検出された前記バースト光信号を電気的なアナログ信号に変換し、
前記アナログ信号を利得に応じて増幅し、
増幅された前記アナログ信号をデジタル信号に変換し、
前記複数の送信装置のうち、前記経路から入力される前記バースト光信号の送信元の送信装置と通信回線を設定するとき、前記制御装置から指示された前記アナログ信号の増幅の利得及び前記局発光の波長を設定し、
前記通信回線の設定前に、前記制御装置による前記経路の切り替えに伴って順次に前記複数の送信装置の各々から送信される前記バースト光信号に従って、前記局発光の波長を切り替え、前記利得を調整して前記制御装置に通知することを特徴とする受信方法。
【請求項9】
前記通信回線の設定後、前記バースト光信号が入力の有無を判定し、
前記バースト光信号が入力されている場合、前記デジタル信号に対して信号品質の劣化の補償を行い、
前記バースト光信号が入力されていない場合、前記デジタル信号に対して信号品質の劣化の補償を行わないことを特徴とする請求項8に記載の受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、受信装置及び受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データセンタに設置されたラックには、例えば複数のサーバ及びToR(Top Of Rack)スイッチが搭載されている。ToRスイッチは、同じラック内のサーバから送信されたデータを、デジタルコヒーレント伝送方式に従って所定の波長の光信号に収容して他のラックのToRスイッチに伝送する。各ラックのToRスイッチは、マルチキャストスイッチ及び光スプリッタなどを介して相互に接続されており、他のラックの何れのToRスイッチとも通信することができる(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
ToRスイッチは、サーバ間のバーストトラフィックに合わせて間欠的に光信号を送受信する。この間欠的な光信号を、以下の説明では「バースト光信号」と表記する。デジタルコヒーレント伝送方式のバースト光信号に関し、例えば特許文献1には、デジタルコヒーレント伝送方式を用いたPON(Passive Optical Network)においてバースト光信号を受信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-230162号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Mungun-Erdene Ganbold et-al., “A Large-Scale Optical Circuit Switch Using Fast Wavelength-Tunable and Bandwidth-Variable Filters”, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL.30, NO.16, AUGUST 15, 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ToRスイッチは、バースト光信号をその波長と同一波長の局発光により検出し、光電気変換により電気的なアナログ信号に変換する。さらにToRスイッチは、アナログ信号をTIA(Trans Impedance Amplifier)により増幅してADコンバータ(Analog-to-Digital Converter)によりデジタル信号に変換し、例えば伝送路でバースト光信号に生じた劣化を補償する。
【0007】
ADコンバータは、増幅後のアナログ信号の振幅が不適切な値である場合、十分な分解能を発揮することができないため、例えば劣化補償処理、及び変調度の高い多値変調方式の復調処理において符号誤りが生ずるおそれがある。バースト光信号のパワーは、バースト光信号の波長及び伝送経路に応じて異なるため、ToRスイッチは、例えばAGC(Automatic Gain Control)によりTIAの利得をフィードバック制御することによって振幅を適切な値に制御する。
【0008】
しかし、フィードバック制御によると、バースト光信号間に存在する無信号区間において利得が増加してしまい、バースト光信号の入力中、利得が目標値に収束するまでに所定時間(例えば1(msec))を要する。したがって、ToRスイッチは、利得が収束するまでバースト光信号を正常に受信することができないため、その所要時間分だけバースト光信号の先頭に冗長なデータを付与する必要があり、伝送効率が低下する。
【0009】
これに対し、AGCなどのフィードバック制御を用いず、予めTIAの利得をバースト光信号の波長に応じた所定値に設定しておけば、冗長なデータを必要とせずに適切な値の振幅を得ることができる。
【0010】
しかし、バースト光信号の波長及び伝送経路は、バースト光信号の送信元のToRスイッチに応じて異なるため、TIAの利得を固定値に設定することは難しい。
【0011】
そこで本件は、バースト光信号の波長及び伝送経路によらず、バースト光信号の伝送効率の低下を抑制することができる受信装置及び受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの態様では、受信装置は、バースト光信号をそれぞれ送信する複数の送信装置と、制御装置により前記バースト光信号の経路の切り替えが可能な伝送路を介して接続された受信装置において、局発光を出力する光源と、前記経路から間欠的に入力される前記バースト光信号を前記局発光により検出する検出部と、前記検出部により検出された前記バースト光信号を電気的なアナログ信号に変換する第1変換器と、前記アナログ信号を利得に応じて増幅する増幅器と、前記増幅器により増幅された前記アナログ信号をデジタル信号に変換する第2変換器と、前記複数の送信装置のうち、前記経路から入力される前記バースト光信号の送信元の送信装置と通信回線を設定するとき、前記制御装置から指示された前記増幅器の利得及び前記局発光の波長を設定する設定処理部とを有し、前記設定処理部は、前記通信回線の設定前に、前記制御装置による前記経路の切り替えに伴って順次に前記複数の送信装置の各々から送信される前記バースト光信号に従って、前記局発光の波長を切り替え、前記増幅器の利得を調整して前記制御装置に通知する。
【0013】
1つの態様では、受信方法は、バースト光信号をそれぞれ送信する複数の送信装置の1つから、制御装置により前記バースト光信号の経路の切り替えが可能な伝送路を介して前記バースト光信号を受信する受信方法において、光源から局発光を出力し、前記経路から間欠的に入力される前記バースト光信号を前記局発光により検出し、検出された前記バースト光信号を電気的なアナログ信号に変換し、前記アナログ信号を利得に応じて増幅し、増幅された前記アナログ信号をデジタル信号に変換し、前記複数の送信装置のうち、前記経路から入力される前記バースト光信号の送信元の送信装置と通信回線を設定するとき、前記制御装置から指示された前記アナログ信号の増幅の利得及び前記局発光の波長を設定し、前記通信回線の設定前に、前記制御装置による前記経路の切り替えに伴って順次に前記複数の送信装置の各々から送信される前記バースト光信号に従って、前記局発光の波長を切り替え、前記利得を調整して前記制御装置に通知する。
【発明の効果】
【0014】
1つの側面として、バースト光信号の波長及び伝送経路によらず、バースト光信号の伝送効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】伝送システムの一例を示す構成図である。
図2】受信側のToRスイッチの一例を示す構成図である。
図3】ネットワーク制御装置の一例を示す構成図である。
図4】ネットワーク制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】調整モード設定処理の一例を示すシーケンス図である。
図6】調整モード設定処理の一例を示すシーケンス図である。
図7】比較例及び実施例におけるバースト光信号、利得、及びデータを示すタイムチャートである。
図8】利得の調整処理の一例を示すフローチャートである。
図9】振幅及びピーク電圧の対応関係の一例を示す図である。
図10】TIAの設定電圧値及び利得の対応関係の一例を示す図である。
図11】利得の調整処理の他の例を示すフローチャートである。
図12】利得の調整処理のさらに他の例を示すフローチャートである。
図13】バースト光信号の波長に対するパワー及び利得の対応関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(伝送システムの構成)
図1は、伝送システム8の一例を示す構成図である。伝送システム8には、複数の受信側のToRスイッチ1、複数の送信側のToRスイッチ2、伝送路80、及びネットワーク制御装置9が含まれる。送信側のToRスイッチ2は、伝送路80を介して受信側のToRスイッチ1に接続されている。また、ネットワーク制御装置9は、伝送システム8を監視制御する。
【0017】
送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1は、例えばデータセンタ内に設置されたラック#1~#m(m:正の整数)に設けられる。ここで、#1~#mはラックを識別するラックIDである。
【0018】
送信側のToRスイッチ2は、ToRスイッチ2と同一のラックに搭載されたサーバから入力されたデータから間欠的なバースト光信号を生成して送信する。ここで、バースト光信号には、ToRスイッチ2の送信光のX偏波成分及びY偏波成分が偏波多重されている。なお、送信側のToRスイッチ2は送信装置の一例である。
【0019】
受信側のToRスイッチ1は、送信側のToRスイッチ2から伝送路80を介してバースト光信号を受信して、受信側のToRスイッチ1と同一のラックに搭載されたサーバにデータを転送する。なお、送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1は、それぞれ独立した通信装置ではなく、一体化された通信装置であってもよい。
【0020】
ネットワーク制御装置9は、各ラック#1~#mの送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1にバースト光信号の波長を割り当てる。ネットワーク制御装置9は、例えばn台の送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1ごとに波長λ1~λnを割り当てる。
【0021】
伝送路80には、n台(n:正の整数、n<m)の送信側及び受信側のToRスイッチ2,1ごとに、光合波器3、光スプリッタ4、及びマルトキャストスイッチ5が設けられている。各光合波器3には、n台の送信側のToRスイッチ1からそれぞれ波長λ1~λnのバースト光信号が入力される。光合波器3は、波長λ1~λnのバースト光信号を合波して波長多重する。波長多重されたバースト光信号は光スプリッタ4に入力される。
【0022】
各光スプリッタ4は、波長多重されたバースト光信号を各マルチキャストスイッチ5に出力する。マルチキャストスイッチ5は、バースト光信号の入力側にn個の光スプリッタ50を有し、バースト光信号の出力側にn個の光セレクタスイッチ51を有する。マルチキャストスイッチ5において、バースト光信号は、各光スプリッタ50から全ての光セレクタスイッチ51に分岐する。
【0023】
光セレクタスイッチ51は、ネットワーク制御装置9からの指示に従って複数の光スプリッタ50から1つの光スプリッタ50を選択し、選択した光スプリッタ50から入力されたバースト光信号を受信側のToRスイッチ1に出力する。受信側のToRスイッチ1は、後述するように、波長多重されたバースト光信号から、局発光の波長に応じた波長のバースト光信号を受信する。
【0024】
このように、各送信側のToRスイッチ2から送信されるバースト光信号の伝送経路は、マルチキャストスイッチ5により切り替えられる。このため、各ラック#1~#mの送信側のToRスイッチ2は、他の何れのラック#1~#mの受信側のToRスイッチ1にもバースト光信号を送信することができる。
【0025】
(受信側のToRスイッチ)
図2は、受信側のToRスイッチ1の一例を示す構成図である。ToRスイッチ1は、バースト光信号を受信する受信装置の一例である。また、以下に述べるToRスイッチ1によるバースト光信号の受信処理は受信方法の一例である。ToRスイッチ1は、設定処理回路10、集積型受信器11、光源12、ADコンバータ(ADC)13a~13d、及び受信処理回路14を有する。
【0026】
集積型受信器11は、一例として、OIF(Optical Internetworking Forum)の規格に準拠するイントラダイン・コヒーレント・レシーバ(Intradyne Coherent Receiver)の回路としてToRスイッチ1に搭載される。集積型受信器11は、偏波ビームスプリッタ(PBS: Polarizing Beam Splitter)110,111、90度光ハイブリッド回路(90度光ハイブリッド)112,113、バランス型のフォトダイオード(PD: Photodiode)114a~114d、及びトランスインピーダンスアンプ(以下、「TIA」と表記)115a~115dを有する。さらに集積型受信器11は、ピーク検出器116a~116d、モニタ用フォトダイオード(PD)117、及び分波器118を有する。
【0027】
バースト光信号は、伝送路80から集積型受信器11に間欠的に入力される。バースト光信号は、分波器118に入力されてモニタ用PD117及びPBS110に分岐する。
【0028】
モニタ用PD117は、バースト光信号のパワーを検出する。モニタ用PD117は、バースト光信号のパワーを設定処理回路10に通知する。なお、モニタ用PD117は、バースト光信号のパワーを測定する第3測定部の一例である。
【0029】
PBS110は、バースト光信号をX偏波成分及びY偏波成分に分離して90度光ハイブリッド回路112,113にそれぞれ出力する。また、光源12は、例えばレーザダイオードなどから構成され、設定処理回路10により設定された中心波長の局発光LOをPBS111に出力する。PBS111は、局発光LOをX偏波成分及びY偏波成分に分離して90度光ハイブリッド回路112,113にそれぞれ出力する。
【0030】
90度光ハイブリッド回路112は、バースト光信号のX偏波成分及び局発光LOのX偏波成分を干渉させるための導波路を有し、バースト光信号のX偏波成分を検波する。90度光ハイブリッド回路112は、検波結果として、同相成分及び直交位相成分の振幅及び位相に応じた光成分をPD114a,114bにそれぞれ出力する。
【0031】
90度光ハイブリッド回路113は、バースト光信号のY偏波成分及び局発光LOのY偏波成分を干渉させるための導波路を有し、バースト光信号のX偏波成分を検波する。90度光ハイブリッド回路113は、検波結果として、同相成分及び直交成分の振幅及び位相に応じた光成分をPD114c,114dにそれぞれ出力する。
【0032】
このように、90度光ハイブリッド回路112,113は、バースト光信号を局発光LOにより検出する。このため、集積型受信器11は、局発光LOの中心波長に応じて、複数の波長λ1~λnが波長多重されたバースト光信号から、受信対象の波長のバースト光信号を検出して受信することができる。
【0033】
PD114a~114dは、90度光ハイブリッド回路112,113から入力された光成分を電気的なアナログ信号AXi,AXq,AYi,AYqに変換する。なお、PD114a~114dは第1変換器の一例である。PD114a~114dはアナログ信号AXi,AXq,AYi,AYqをそれぞれTIA115a~115dにそれぞれ出力する。
【0034】
TIA115a~115dは、アナログ信号AXi,AXq,AYi,AYqを利得に応じて増幅する。TIA115a~115dの利得は設定処理回路10によりそれぞれ設定される。なお、TIA115a~115dは増幅器の一例である。TIA115a~115dは、増幅したアナログ信号AXi,AXq,AYi,AYqをADC13a~13dにそれぞれ出力する。
【0035】
ピーク検出器116a~116dは、ADC13a~13dに出力されるアナログ信号AXi,AXq,AYi,AYqのピーク電圧をそれぞれ検出する。ピーク検出器116a~116dはピーク電圧を設定処理回路10に通知する。設定処理回路10はピーク電圧からアナログ信号AXi,AXq,AYi,AYqの振幅を算出する。なお、ピーク検出器116a~116dは、アナログ信号の振幅を測定する第1測定部の一例である。
【0036】
ADC13a~13dは、TIA115a~115dから入力されるアナログ信号AXi,AXq,AYi,AYqをデジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqにそれぞれ変換する。ADC13a~13dは、デジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqの振幅が適切な範囲内の値であれば、十分な分解能を発揮する。なお、ADC13a~13dは第2変換器の一例である。ADC13a~13dは、デジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqをそれぞれ受信処理回路14に出力する。
【0037】
受信処理回路14は、例えばDSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specified Integrated Circuit)などのハードウェアから構成される回路である。受信処理回路14は、補償部140、誤り訂正部141、復調部143、及びBER(Bit Error Rate)測定部142を有する。
【0038】
補償部140は、デジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqに対して伝送路80で生じた信号品質の劣化を補償する。例えば補償部140は、伝送路80上で発生する偏波モード分散、偏波依存性損失、及び偏波回転により生じたバースト光信号の波形歪みを動的なパラメータに基づいて補償する。また、補償部140は、設定処理回路10からの補償の開始指示及び停止指示に従ってデジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqに対する信号品質の劣化の補償を開始及び停止する。補償部140は、デジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqを誤り訂正部141に出力する。
【0039】
誤り訂正部141は、例えばFEC(Forward Error Correction)機能によりデジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqの誤り訂正を行う。誤り訂正部141は、デジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqのエラーの検出数をBER測定部142に通知する。BER測定部142は、誤り訂正部141から通知されたエラーの検出数に基づきデジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqのBERを測定する。なお、BER測定部142は第2測定部の一例である。誤り訂正部141は、誤り訂正したデジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqを復調部143に出力する。
【0040】
復調部143は、デジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqを復調処理してデータ信号を再生する。復調部143は、送信側のToRスイッチ2の変調方式に応じた復調方式を用いる。データ信号は、受信側のToRスイッチ1と同じラックに搭載されたサーバに出力される。
【0041】
設定処理回路10は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ及びメモリなどを含む回路であるが、これに限定されず、FPGA及びASICなどを含む回路であってもよい。設定処理回路10は、例えばLAN(Local Area Network)を介してネットワーク制御装置9と通信する。
【0042】
設定処理回路10は、送信側のToRスイッチ2の1つと通信回線を設定するとき、ネットワーク制御装置9から指示されたTIA115a~115dの利得及び局発光LOの波長を設定する。また、設定処理回路10は、通信回線の設定前に、ネットワーク制御装置9が複数の送信装置から順次に選択する各送信側のToRスイッチ2から送信されるバースト光信号に従って、局発光LOの波長を切り替え、TIA115a~115dの利得を調整してネットワーク制御装置9に通知する。
【0043】
これにより、ネットワーク制御装置9は、受信側のToRスイッチ1にTIA115a~115dの利得及び局発光LOの波長の設定を指示する前に、予め送信側の各ToRスイッチ2のバースト光信号の波長及び伝送経路に応じて調整されたTIA115a~115dの利得を取得することができる。
【0044】
また、設定処理回路10は、通信回線の設定後、ピーク検出器116a~116dまたはモニタ用PD117によりバースト光信号の入力の有無を検知する。設定処理回路10は、バースト光信号が入力されていない場合、補償部140の動作を停止し、バースト光信号が入力されている場合、補償部140を動作させる。
【0045】
このように、補償部140は、バースト光信号が入力されている場合、デジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqに対して信号品質の劣化の補償を行い、バースト光信号が入力されていない場合、デジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqに対して信号品質の劣化の補償を行わない。このため、バースト光信号が入力されていない場合、補償部140の補償処理において無信号によるエラーが検出されることが抑制される。
【0046】
(ネットワーク制御装置)
図3は、ネットワーク制御装置9の一例を示す構成図である。ネットワーク制御装置9は、CPU90、ROM(Read Only Memory)91、RAM(Random Access Memory)92、HDD(Hard Disk Drive)93、通信ポート94、及びユーザインターフェース部(ユーザIF)95を有する。CPU90は、互いに信号の入出力ができるように、ROM91、RAM92、HDD93、通信ポート94、及びユーザIF95と、バス99を介して接続されている。
【0047】
ROM91は、CPU90を駆動するプログラムが格納されている。RAM92は、CPU90のワーキングメモリとして機能する。通信ポート94は、例えば不図示のLAN(Local Area Network)を介してToRスイッチ1,2とCPU90の間の通信を処理する。ユーザIF95は、例えば伝送システム8の管理者の端末装置(不図示)に接続され、端末装置から入力された回線設定情報を、バス99を介してCPU90に出力する。なお、ユーザIF95は、例えばASICやFPGAなどにより構成される。
【0048】
HDD93には、設定テーブル(設定TBL)930が格納されている。なお、設定TBL930は、HDD93に代えて、不揮発性メモリに格納されてもよい。
【0049】
設定TBL930には、送信側のToRスイッチ2のラックID及びバースト光信号の波長と、受信側のToRスイッチ1のラックID、バースト光信号の波長、及びTIA115a~115dの利得とが登録される。CPU90は、通信ポート94を介して送信側の各ToRスイッチ2及び受信側の各ToRスイッチ1に順次に調整モード設定を指示する。
【0050】
送信側のToRスイッチ2は、調整モード設定の指示に従ってバースト光信号の波長を設定する。受信側のToRスイッチ1は、調整モード設定の指示に従ってバースト光信号の波長、つまり局発光の波長を設定し、TIA115a~115dの利得を設定してネットワーク制御装置9に通知する。
【0051】
これにより、CPU90は、各送信側のToRスイッチ2のバースト光信号の波長に対応する受信側のToRスイッチ1のTIA115a~115dの利得を、運用時の利得の設定に先立って設定TBL930に登録することができる。なお、調整モード設定時、送信側のToRスイッチ2はバースト光信号に代えて、連続光信号を送信してもよい。
【0052】
例えばラックID「#1」の送信側のToRスイッチ2のバースト光信号の波長がλ1である場合、ラックID「#2」の受信側のToRスイッチ1のTIA115a~115dの利得はG12-1であり、ラックID「#3」の受信側のToRスイッチ1のTIA115a~115dの利得はG13-1である。また、ラックID「#2」の送信側のToRスイッチ2のバースト光信号の波長がλ2である場合、ラックID「#1」の受信側のToRスイッチ1のTIA115a~115dの利得はG21-2であり、ラックID「#3」の受信側のToRスイッチ1のTIA115a~115dの利得はG23-2である。なお、X偏波及びY偏波の同相成分及び直交成分の各々について最適な利得が異なる場合、CPU90は、TIA115a~115dごとの利得G12-1-XI、G12-1-XQ、G12-1-YI、G12-1-YQをそれぞれ設定TBL130に登録することもできる。
【0053】
このように、設定TBL930には、送信側の各ToRスイッチ2に割り当てられたバースト光信号の波長に対応するTIA115a~115dの利得が、他の各ラックの受信側のToRスイッチ1ごとに登録される。このため、ネットワーク制御装置9は、送信側のToRスイッチ2と受信側のToRスイッチ1の組み合わせで決定されるバースト光信号の伝送経路及び波長に応じた利得の設定を受信側のToRスイッチ1に指示することができる。
【0054】
(ネットワーク制御装置の動作)
図4は、ネットワーク制御装置9の動作の一例を示すフローチャートである。CPU90は、送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1の組み合わせを選択する(ステップSt1)。
【0055】
次にCPU90は、送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1に調整モード設定処理を実行する(ステップSt2)。調整モード設定処理では、CPU90は、後述するように、送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1に同一の波長を設定し、受信側のToRスイッチ1から調整済みのTIA115a~115dの利得を取得して設定TBL930に登録する。
【0056】
次にCPU90は、未選択の送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1の組み合わせの有無を判定する(ステップSt3)。未選択の組み合わせが残っている場合(ステップSt3のYes)、再びステップSt1以降の各処理が実行される。
【0057】
また、CPU90は、未選択の組み合わせが残っていない場合(ステップSt3のNo)、ユーザIF95から回線設定の要求を受信したか否かを判定する(ステップSt4)。回線設定の要求には、通信回線を開通する送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1の組み合わせが例えばラックIDにより指定されている。
【0058】
CPU90は、回線設定の要求を受信した場合(ステップSt4のYes)、設定TBL930から、通信回線を開通する送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1の各々のラックIDを選択する(ステップSt5)。CPU90は、選択したラックIDに対応する送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1の回線設定処理を実行する(ステップSt6)。
【0059】
回線設定処理では、CPU90は、後述するように、設定TBL930に基づいて、送信側のToRスイッチ2にバースト光信号の波長の設定を指示し、受信側のToRスイッチ1にバースト光信号の波長(局発光LOの波長)及びTIA115a~115dの利得の設定を指示する。
【0060】
次にCPU90は、全ての回線設定が完了したか否かを判定する(ステップSt7)。また、回線設定の要求を受信していない場合(ステップSt4のNo)も、ステップSt7の処理が実行される。
【0061】
CPU90は、未設定の回線設定が残っている場合(ステップSt7のNo)、再びステップSt4の処理を実行する。また、CPU90は、全ての回線設定が完了している場合(ステップSt7のYes)、処理を終了する。このようにして、ネットワーク制御装置9は動作する。
【0062】
(調整モード設定処理)
図5は、調整モード設定処理の一例を示すシーケンス図である。ネットワーク制御装置9は、送信側のToRスイッチ2と受信側のToRスイッチ1の間の通信回線の設定を行う前に、バースト光信号の経路及び波長に応じたTIA115a~115dの利得を取得するために調整モード設定を実行する。ネットワーク制御装置9は、ステップSt1の処理で選択した送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1の組み合わせに対応する経路設定をマルチキャストスイッチ(MCスイッチ)5に指示する。
【0063】
マルチキャストスイッチ5は、経路設定の指示に従って光セレクタスイッチ51を設定する(符号Sq1)。これにより、送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1の間のバースト光信号の伝送経路が設定される。次にマルチキャストスイッチ5は、伝送経路の設定完了をネットワーク制御装置9に通知する。なお、設定完了の通知は省いてもよい。
【0064】
次にネットワーク制御装置9は、調整モード設定を送信側のToRスイッチ2に指示する。調整モード設定の指示には、バースト光信号の波長が指定されている。
【0065】
送信側のToRスイッチ2は、調整モード設定の指示に従ってバースト光信号の波長を設定する(符号Sq2)。このとき、送信側のToRスイッチ2は、例えば送信用の光源(不図示)の波長をバースト光信号の波長に設定する。次に送信側のToRスイッチ2は、調整用のバースト光信号を受信側のToRスイッチ1に送信し始める。調整用のバースト光信号には、受信側のToRスイッチ1が高精度に利得を調整できるように、例えばPRBS(Pseudo-Random Binary Sequence)のようなランダムパタンが挿入されている。
【0066】
次に送信側のToRスイッチ2は、調整モード設定の完了をネットワーク制御装置9に通知する。なお、設定完了の通知は省いてもよい。
【0067】
次にネットワーク制御装置9は、調整モード設定を受信側のToRスイッチ1に指示する。調整モード設定の指示には、送信側のToRスイッチ2と同じバースト光信号の波長が指定されている。
【0068】
受信側のToRスイッチ1は、調整モード設定の指示に従って局発光LOの波長を設定する(符号Sq3)。次にToRスイッチ1は、調整モード設定の指示に従ってTIA115a~115dの利得を調整する(符号Sq4)。なお、利得の調整方法については後述する。
【0069】
次に受信側のToRスイッチ1は、調整モード設定の完了をネットワーク制御装置9に通知する。調整モード設定の完了の通知には、調整済みの利得が含まれている。なお、ToRスイッチ1は、利得を調整に失敗した場合、調整モード設定の完了の通知により異常をネットワーク制御装置9に通知する。また、ToRスイッチ1は、調整モード設定の完了とともに、補償部140が信号品質の補償処理で用いる波長分散補償量などのパラメータをネットワーク制御装置9に通知してもよい。
【0070】
次にネットワーク制御装置9は、受信側のToRスイッチ1から受信した調整モード設定の完了の通知から調整済みの利得を取得して設定TBL930に登録する(符号Sq5)。
【0071】
次にネットワーク制御装置9は、調整モードの解除を送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1に指示する。送信側のToRスイッチ2は、調整モード設定の解除の指示に従って調整用のバースト光信号の送信を停止する(符号Sq6)。また、受信側のToRスイッチ1は、ネットワーク制御装置9からの新たな指示を待つ待機状態へと移行する(符号Sq7)。このようにして調整モード設定処理は実行される。
【0072】
ネットワーク制御装置9は、上記のステップSt1の処理を繰り返すことにより、受信側のToRスイッチ1にバースト光信号を送信する送信側のToRスイッチ2を順次に選択する。このため、受信側のToRスイッチ1の設定処理回路10は、送信側のToRスイッチ2の選択が切り替わるたびに、符号Sq3に示されるように局発光LOの波長を切り替える。
【0073】
このように、設定処理回路10は、ネットワーク制御装置9が順次に選択した送信側の各ToRスイッチ2のバースト光信号に従って局発光LOの波長を切り替え、TIA115a~115dの利得を調整してネットワーク制御装置9に通知する。このとき、設定処理回路10は、送信側の各ToRスイッチ2から送信されるバースト光信号の波長をネットワーク制御装置9から取得し、バースト光信号の波長に応じて局発光LOの波長を切り替える。このため、受信側のToRスイッチ1は、予め送信側のToRスイッチ2のバースト光信号の波長をメモリなどに格納しておく必要がない。
【0074】
(回線設定処理)
図6は、回線設定処理の一例を示すシーケンス図である。ネットワーク制御装置9は、ステップSt5の処理で選択した送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1の組み合わせに対応する波長(λ1~λn)及び利得(G12-1,・・・)を設定TBL930から検索する(符号Sq10)。
【0075】
次にネットワーク制御装置9は、送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチの経路設定をマルチキャストスイッチ5に指示する。マルチキャストスイッチ5は、経路設定の指示に従って光セレクタスイッチ51を設定する(符号Sq11)。これにより、送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1の間のバースト光信号の伝送経路が設定される。次にマルチキャストスイッチ5は、伝送経路の設定完了をネットワーク制御装置9に通知する。なお、設定完了の通知は省いてもよい。
【0076】
次にネットワーク制御装置9は、回線設定を受信側のToRスイッチ1に指示する。回線設定の指示には、設定TBL930から検索された受信側のToRスイッチ1の波長及び利得が指定されている。
【0077】
受信側のToRスイッチ1は、回線設定の指示に従って局発光LOの波長を設定し(符号Sq12)、TIA115a~115dの利得を設定する(符号Sq13)。次に受信側のToRスイッチ1は、回線設定の完了をネットワーク制御装置9に通知する。なお、設定完了の通知は省いてもよい。ここで、ネットワーク制御装置9からの回線設定の指示には、補償部140で用いられる分散補償量などの補償に関するパラメータが指定されていてもよい。補償部140は、回線設定の指示で指定されたパラメータにより所定の設定を行う。
【0078】
次にネットワーク制御装置9は、回線設定を送信側のToRスイッチ2に指示する。回線設定の指示には、設定TBL930から検索された送信側のToRスイッチ2の波長が指定されている。送信側のToRスイッチ2は、回線設定の指示に従ってバースト光信号の波長を設定する(符号Sq14)。なお、送信側のToRスイッチ2の波長が固定値である場合、波長設定の指示は省かれてもよい。この場合、送信側のToRスイッチ2は、予め調整済みの波長を用いる。
【0079】
次にネットワーク制御装置9は、同じラックのサーバから入力されるデータを含むバースト光信号を、受信側のToRスイッチ1に送信し始める。次に送信側のToRスイッチ2は、回線設定の完了をネットワーク制御装置9に通知する。なお、設定完了の通知は省いてもよい。
【0080】
このように、設定処理回路10は、送信側のToRスイッチ2の1つと通信回線を設定するとき、ネットワーク制御装置9から指示されたTIA115a~115dの利得及び局発光LOの波長を設定する。設定処理回路10は、回線設定処理の前に、上述した調整モード設定を行うことにより送信側の各ToRスイッチ2のバースト光信号に応じた利得をネットワーク制御装置9に通知する。
【0081】
したがって、ネットワーク制御装置9は、複数の送信側のToRスイッチ2のバースト光信号に従ってそれぞれ調整済みの利得を、通信回線の設定前に予め取得することができ、取得した利得のうち、通信回線の設定対象の送信側のToRスイッチ2及び受信側のToRスイッチ1に応じた利得の設定を設定処理回路10に指示することができる。
【0082】
このため、受信側のToRスイッチ1は、通信回線の設定対象となる送信側のToRスイッチのバースト光信号に応じた利得をTIA115a~115dに設定することができるため、アナログ信号AXi,AXq,AYi,AYqの振幅を適切な値とすることができる。したがって、以下に述べるように、バースト光信号は、無信号区間に対応する冗長データを必要としない。
【0083】
図7は、比較例及び実施例におけるバースト光信号、利得、及びデータを示すタイムチャートである。ここで、データは、バースト光信号に含まれるデータを表す。
【0084】
符号Haは比較例のタイムチャートを示す。比較例において、TIA115a~115dの利得はAGCによりフィードバック制御される。
【0085】
しかし、フィードバック制御によると、バースト光信号間に存在する無信号区間において利得が増加してしまい、バースト光信号の入力中、利得が目標値に収束するまでに所定時間(例えば1(msec))を要する。したがって、ToRスイッチは、利得が収束するまでバースト光信号を正常に受信することができないため、その所要時間分(「利得収束期間」参照)だけバースト光信号の先頭に、通常の信号データとは異なる冗長データを付与する必要があり、伝送効率が低下する。
【0086】
また、符号Hbは実施例のタイムチャートを示す。実施例において、利得は、上述した方法により適切な値に設定されるため、バースト光信号の先頭に冗長なデータを付与する必要はない。このため、バースト光信号に含まれる信号データの容量が増加して伝送効率が比較例より改善される。
【0087】
よって、ToRスイッチ1は、バースト光信号の波長及び伝送経路によらず、バースト光信号の伝送効率の低下を抑制することができる。
【0088】
(利得の調整処理)
次に図5の符号Sq4で示される利得の調整処理の例を述べる。
【0089】
図8は、利得の調整処理の一例を示すフローチャートである。ピーク検出器116a~116dは、アナログ信号AXi,AXq,AYi,AYqのピーク電圧を検出する(ステップSt10)。次に設定処理回路10は、アナログ信号AXi,AXq,AYi,AYqのピーク電圧からTIA115a~115dの利得をそれぞれ算出する(ステップSt11)。以下に利得の算出例を挙げる。
【0090】
図9は、振幅及びピーク電圧の対応関係の一例を示す図である。設定処理回路10は、例えばメモリなどの記憶回路に振幅(mVppd)及びピーク電圧(V)の対応関係を保持している。
【0091】
一例として、検出されたピーク電圧が0.9(V)である場合、設定処理回路10は、0.9(V)のピーク電圧に対応する振幅として300(mVppd)を得る(符号Pa)。例えばADC13a~13dに入力されるアナログ信号AXi,AXq,AYi,AYqの振幅の目標値が500(mVppd)であると仮定すると、設定処理回路10は、振幅の目標値に対応するピーク電圧を1.5(V)とする(符号Pb)。このため、設定処理回路10は、振幅を目標値とするには、現在のピーク電圧を1.7倍(=1.5/0.9)に増幅する必要があると算出する。
【0092】
図10は、TIA115a~115dの設定電圧値及び利得の対応関係の一例を示す図である。本例において、TIA115a~115dの利得は設定電圧値に応じて決定される。設定処理回路10は、例えばメモリなどの記憶回路に設定電圧値(V)及び利得の対応関係を保持している。
【0093】
一例として、調整モード設定における初期状態の設定電圧値が1.0(V)である場合、利得は11倍である(符号Pc)。したがって、設定処理回路10は、振幅を目標値とするための利得を19(=11×1.7)と算出する。これにより、設定処理回路10は、利得を19倍とする設定電圧値として1.8(V)をTIA115a~115dに設定すする(符号Pd)。
【0094】
再び図8を参照すると、設定処理回路10は、算出した利得が設定可能な範囲内であるか否かを判定する(ステップSt12)。設定処理回路10は、利得が設定可能な範囲外である場合(ステップSt12のNo)、ToRスイッチ1の異常を検出する(ステップSt18)。次に設定処理回路10は、ネットワーク制御装置9に異常を通知する(ステップSt19)。このとき、設定処理回路10は、例えば異常を示すエラーコード(例えば0x0000)を含む通知信号をネットワーク制御装置9に送信する。
【0095】
このように、設定処理回路10は、TIA115a~115dの利得を所定の範囲内で調整することができない場合、ネットワーク制御装置9に異常を通知する。このため、ネットワーク制御装置9は、伝送システム8の管理者にToRスイッチ1の異常を通知することができる。
【0096】
また、設定処理回路10は、利得が設定可能な範囲内である場合(ステップSt12のYes)、補償部140に対し信号品質の劣化の補償の停止を指示する(ステップSt13)。次に設定処理回路10は、TIA115a~115dに利得を設定する(ステップSt14)。利得は、例えば上記のように設定電圧値により設定される。
【0097】
このように、設定処理回路10は、ピーク検出器116a~116dが測定したアナログ信号AXi,AXq,AYi,AYqの振幅に基づき、TIA115a~115dの利得を調整する。このため、設定処理回路10は、振幅に基づき高精度に利得を調整することができる。ここで、ピーク検出器116a~116dは補償部140の前段に設けられるため、ピーク検出器116a~116dの使用中、補償部140は動作中及び停止中のいずれの状態であってもよい。なお、振幅の測定手段は、ピーク検出器116a~116dに限定されず、例えば受信処理回路14内に設けられた測定回路であってもよい。
【0098】
設定処理回路10は、所定時間待機して(ステップSt15)、補償部140に対し信号品質の劣化の補償の開始を指示する(ステップSt16)。
【0099】
このように、設定処理回路10は、TIA115a~115dの利得の変更前に補償部140の動作を停止制御し、所定時間待機した後、補償部140に動作を開始させる。このため、TIA115a~115dから出力されるアナログ信号AXi,AXq,AYi,AYqの振幅が利得の設定変更により変動しても、その収束を待ってから補償部140に信号品質の補償処理を開始させることができるため、補償処理でエラーが生ずることが抑制される。なお、所定の待機時間を必要としない場合、補償部140は待機処理を省いてもよい。
【0100】
次に設定処理回路10は、調整済みの利得をネットワーク制御装置9に通知する(ステップSt17)。このため、ネットワーク制御装置9は、通信回線の設定に先立って、送信側のToRスイッチ2ごとに調整された利得を取得することができる。このようにして利得の調整処理は行われる。
【0101】
本例において設定処理回路10は、振幅に基づき利得を調整したが、これに限定されない。
【0102】
図11は、利得の調整処理の他の例を示すフローチャートである。図11において、図8と共通する処理には同一の符号を付し、その説明は省略する。本例において設定処理回路10は、デジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqのBERに基づき利得を調整する。
【0103】
BER測定部142は、デジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqのBERを測定する(ステップSt10a)。次に設定処理回路10は、BER測定部142から通知されたBERに基づきTIA115a~115dの利得を算出する(ステップSt11a)。このため、設定処理回路10は、デジタル信号DXi,DXq,DYi,DYqのBERに基づき高精度に利得を調整することができる。なお、BERはエラーレートの一例である。
【0104】
図12は、利得の調整処理のさらに他の例を示すフローチャートである。図12において、図8と共通する処理には同一の符号を付し、その説明は省略する。本例において設定処理回路10は、バースト光信号のパワーに基づき利得を調整する。
【0105】
モニタ用PD117は、バースト光信号のパワーを測定する(ステップSt10b)。次に設定処理回路10は、モニタ用PD117から通知されたバースト光信号のパワーに基づきTIA115a~115dの利得を算出する(ステップSt11b)。このため、設定処理回路10は、バースト光信号のパワーに基づき高精度に利得を調整することができる。
【0106】
なお、ネットワーク制御装置9は、モニタ用PD117が測定するパワーに該当するパワーを、送信側のToRスイッチ2と受信側のToRスイッチ1の間のパスごとにデータベース化しておき、受信側のToRスイッチ1にパスに応じたパワーを通知してもよい。この場合、設定処理回路10は、モニタ用PD117が測定するパワーに代えて、ネットワーク制御装置9から通知されたパワーに基づき利得を算出することができる。
【0107】
(利得の算出)
ネットワーク制御装置9は、送信側のToRスイッチ2ごとに受信側のToRスイッチ1から調整済みの利得を取得するが、これに限定されない。ネットワーク制御装置9は、伝送路80内の波長に対するバースト光信号のパワーの特性に基づき、一部のToRスイッチ1に対応する利得を推測してもよい。
【0108】
図13は、バースト光信号の波長に対するパワー及び利得の対応関係の一例を示す図である。符号Hcは、伝送路80内のバースト光信号の波長に対するパワーの対応関係を示す。本例では、長波長側ほど、バースト光信号のパワーが減少する。ネットワーク制御装置9は、例えばHDD93などの記憶手段に、波長に対するパワーの対応関係を予め記憶しておく。
【0109】
符号Hdは、バースト光信号の波長に対する利得の対応関係を示す。ネットワーク制御装置9は、上記の方法に従って、波長λ1及びλnのバースト光信号に対応する利得を受信側のToRスイッチ1から取得する(黒丸参照)。ネットワーク制御装置9は、符号Hcで示される対応関係に基づき、波長λ1及びλnのバースト光信号の場合の利得から他の波長λ2~λn-1のバースト光信号に応じた利得を算出する(白丸参照)。本例では、長波長側ほど、バースト光信号の利得が増加する。
【0110】
本手法によると、ネットワーク制御装置9は、一部の送信側のToRスイッチ2のバースト光信号の波長λ1及びλnに対応する利得だけを受信側のToRスイッチ1から取得すればよいため、他の波長λ2~λn-1のバースト光信号に対応する利得の取得を省くことができる。
【0111】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能である。
【0112】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1) 局発光を出力する光源と、
間欠的に入力されるバースト光信号を前記局発光により検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記バースト光信号を電気的なアナログ信号に変換する第1変換器と、
前記アナログ信号を利得に応じて増幅する増幅器と、
前記増幅器により増幅された前記アナログ信号をデジタル信号に変換する第2変換器と、
前記バースト光信号をそれぞれ送信する複数の送信装置の1つと通信回線を設定するとき、制御装置から指示された前記増幅器の利得及び前記局発光の波長を設定する設定処理部とを有し、
前記設定処理部は、前記通信回線の設定前に、前記制御装置が順次に選択する前記複数の送信装置の各々から送信される前記バースト光信号に従って、前記局発光の波長を切り替え、前記増幅器の利得を調整して前記制御装置に通知することを特徴とする受信装置。
(付記2) 前記設定処理部は、前記制御装置が選択した前記複数の送信装置の各々から送信される前記バースト光信号の波長を前記制御装置から取得し、前記バースト光信号の波長に応じて前記局発光の波長を切り替えることを特徴とする付記1に記載の受信装置。
(付記3) 前記アナログ信号の振幅を測定する第1測定部を有し、
前記設定処理部は、前記第1測定部が測定した前記アナログ信号の振幅に基づき、前記増幅器の利得を調整することを特徴とする付記1または2に記載の受信装置。
(付記4) 前記デジタル信号のエラーレートを測定する第2測定部を有し、
前記設定処理部は、前記第2測定部が測定した前記デジタル信号のエラーレートに基づき、前記増幅器の利得を調整することを特徴とする付記1または2に記載の受信装置。
(付記5) 前記バースト光信号のパワーを測定する第3測定部を有し、
前記設定処理部は、前記第3測定部が測定した前記バースト光信号のパワーに基づき、前記増幅器の利得を調整することを特徴とする付記1または2に記載の受信装置。
(付記6) 前記設定処理部は、前記増幅器の利得を所定の範囲内で調整することができない場合、前記制御装置に異常を通知することを特徴とする付記1乃至5の何れかに記載の受信装置。
(付記7) 前記デジタル信号に対して信号品質の劣化の補償を行う補償部を有し、
前記設定処理部は、前記増幅器の利得の変更前に前記補償部の動作を停止制御し、所定時間待機した後、前記補償部に動作を開始させることを特徴とする付記1乃至6の何れかに記載の受信装置。
(付記8) 光源から局発光を出力し、
間欠的に入力されるバースト光信号を前記局発光により検出し、
検出された前記バースト光信号を電気的なアナログ信号に変換し、
増幅器により前記アナログ信号を利得に応じて増幅し、
増幅された前記アナログ信号をデジタル信号に変換し、
前記バースト光信号をそれぞれ送信する複数の送信装置の1つと通信回線を設定するとき、制御装置から指示された前記アナログ信号の増幅の利得及び前記局発光の波長を設定し、
前記通信回線の設定前に、前記制御装置が順次に選択する前記複数の送信装置の各々から送信される前記バースト光信号に従って、前記局発光の波長を切り替え、前記増幅器の利得を調整して前記制御装置に通知することを特徴とする受信方法。
(付記9) 前記制御装置が選択した前記複数の送信装置の各々から送信される前記バースト光信号の波長を前記制御装置から取得し、前記バースト光信号の波長に応じて前記局発光の波長を切り替えることを特徴とする付記8に記載の受信方法。
(付記10) 前記アナログ信号の振幅を測定し、
測定した前記アナログ信号の振幅に基づき、前記アナログ信号の増幅の利得を調整することを特徴とする付記8または9に記載の受信方法。
(付記11) 前記デジタル信号のエラーレートを測定し、
測定した前記デジタル信号のエラーレートに基づき、前記アナログ信号の増幅の利得を調整することを特徴とする付記8または9に記載の受信方法。
(付記12) 前記バースト光信号のパワーを測定し、
測定した前記バースト光信号のパワーに基づき、前記アナログ信号の増幅の利得を調整することを特徴とする付記8または9に記載の受信方法。
(付記13) 前記アナログ信号の増幅の利得を所定の範囲内で調整することができない場合、前記制御装置に異常を通知することを特徴とする付記8乃至12の何れかに記載の受信方法。
(付記14) 前記デジタル信号に対して信号品質の劣化の補償し、
前記アナログ信号の増幅の利得の変更後、所定時間、前記信号品質の補償動作を停止制御することを特徴とする付記8乃至13の何れかに記載の受信方法。
(付記15) 前記通信回線の設定後、前記バースト光信号が入力の有無を判定し、
前記バースト光信号が入力されている場合、前記デジタル信号に対して信号品質の劣化の補償を行い、
前記バースト光信号が入力されていない場合、前記デジタル信号に対して信号品質の劣化の補償を行わないことを特徴とする付記14に記載の受信方法。
【符号の説明】
【0113】
1 受信側のToRスイッチ
2 送信側のToRスイッチ
8 伝送システム
9 ネットワーク制御装置
10 設定処理回路
11 集積型受信器
12 光源
13a~13d ADC
14 受信処理回路
90 CPU
112,113 90度光ハイブリッド回路
114a~114d PD
115a~115d TIA
116a~116d ピーク検出器
140 補償部
142 BER測定部
930 設定テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13