IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 河村電器産業株式会社の特許一覧

特許7489890電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造
<>
  • 特許-電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造 図1
  • 特許-電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造 図2
  • 特許-電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造 図3
  • 特許-電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造 図4
  • 特許-電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造 図5
  • 特許-電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造 図6
  • 特許-電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造 図7
  • 特許-電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造 図8
  • 特許-電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/03 20060101AFI20240517BHJP
   F16C 11/10 20060101ALI20240517BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20240517BHJP
   H02B 1/44 20060101ALI20240517BHJP
   H02B 1/38 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H05K5/03 C
F16C11/10 Z
F16C11/04 F
H02B1/44
H02B1/38
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020172771
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022064183
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 隼人
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6730494(JP,B1)
【文献】特開2007-211490(JP,A)
【文献】特表2020-502397(JP,A)
【文献】特開2009-114660(JP,A)
【文献】特開2002-327569(JP,A)
【文献】実開平5-047277(JP,U)
【文献】実開平6-032659(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/03
F16C 11/10
F16C 11/04
H02B 1/44
H02B 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口を有する箱本体と、前記開口を開閉する扉体とを有する電気機器収納用箱体において、前記箱本体と前記扉体との間に介在され、前記扉体を前記箱本体に対して片開き自在とするための扉体の蝶番構造であって、
前記扉体に固定されるピン部材と、前記箱本体に固定されるピン受け部材とを備えており、
前記ピン部材が、本体と、先端が前記本体から所定方向へ突出しているとともに当該先端が前記本体に対して出没可能とされた蝶着ピンと、前記蝶着ピンを、その先端が突出する方向へ付勢する付勢部材とを備えている一方、
前記ピン受け部材が、前記箱本体に固定するための固定部と、前記蝶着ピンを差し込み可能なピン孔を有するピン受け部とを備えており、
さらに、前記蝶着ピンの基端に細頸部が設けられているとともに、前記ピン部材の前記本体に、前記蝶着ピンの前記細頸部が露出する凹部と、前記凹部を前記本体外に連通させるための開口とが設けられている一方、
基部と、前記基部から対向状に突出する一組の係止爪とを備えたピンロック部材が設けられており、
前記ピンロック部材の前記係止爪が突出する側を前記凹部内へ差し込むことにより、何れか一方の前記係止爪が前記細頸部に係止し、且つ、他方の前記係止爪が前記凹部の内面に当接した状態で前記ピンロック部材が前記ピン部材に取り付けられ、前記ピン部材が、前記蝶着ピンの先端を前記所定方向へ突出させた状態のままロックされることを特徴とする電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造。
【請求項2】
前記基部の前記係止爪同士の間となる箇所に、前記係止爪と同方向へ突出する保持片が設けられている一方、
前記凹部内に、前記ピンロック部材の前記ピン部材への取り付け状態において前記保持片が掛止可能な保持凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば分電盤や配電盤、制御盤等の各種電気機器を収納するための電気機器収納用箱体において、片開き自在に設けられている扉体の蝶番構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分電盤や配電盤等の各種電気機器を収納するための電気機器収納用箱体としては、前面に開口を有する箱本体の前面側に、その開口を開閉するための扉体を、左右何れか一方の側部を軸として片開き自在に蝶着したものが従来一般的に知られている。
そして、そのように扉体を片開き自在に蝶着する構造としては、ピン受け部を有し、箱本体側に固定される第1受け部材と、同様にピン受け部を有しており、扉体側に固定される第2受け部材と、両ピン受け部に挿通されるヒンジピンとを有する蝶番を用いる構造が一般的である。また、このような蝶番構造においては、ヒンジピンの不用意な脱落を防止するために、ヒンジピンを抜け止めするためのピンロック部材が取り付けられることもある(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-211490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の蝶番構造では、ヒンジピン(特にピンロック部材によるロック部分)が外部に露出しているため、取り付けられているピンロック部材が脱落したり、破損したりしやすいという問題があった。また、従来にない新たな蝶番構造を考案するにあたっては、ピンロック部材についても従来にないものを考案しなければならない。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、従来にないピンロック部材が取り付けられており、ピンロック部材が脱落したり、破損したりすることのない電気機器収納用箱体における扉体の蝶番構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、前面に開口を有する箱本体と、前記開口を開閉する扉体とを有する電気機器収納用箱体において、前記箱本体と前記扉体との間に介在され、前記扉体を前記箱本体に対して片開き自在とするための扉体の蝶番構造であって、前記扉体に固定されるピン部材と、前記箱本体に固定されるピン受け部材とを備えており、前記ピン部材が、本体と、先端が前記本体から所定方向へ突出しているとともに当該先端が前記本体に対して出没可能とされた蝶着ピンと、前記蝶着ピンを、その先端が突出する方向へ付勢する付勢部材とを備えている一方、前記ピン受け部材が、前記箱本体に固定するための固定部と、前記蝶着ピンを差し込み可能なピン孔を有するピン受け部とを備えており、さらに、前記蝶着ピンの基端に細頸部が設けられているとともに、前記ピン部材の前記本体に、前記蝶着ピンの前記細頸部が露出する凹部と、前記凹部を前記本体外に連通させるための開口とが設けられている一方、基部と、前記基部から対向状に突出する一組の係止爪とを備えたピンロック部材が設けられており、前記ピンロック部材の前記係止爪が突出する側を前記凹部内へ差し込むことにより、何れか一方の前記係止爪が前記細頸部に係止し、且つ、他方の前記係止爪が前記凹部の内面に当接した状態で前記ピンロック部材が前記ピン部材に取り付けられ、前記ピン部材が、前記蝶着ピンの先端を前記所定方向へ突出させた状態のままロックされることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記基部の前記係止爪同士の間となる箇所に、前記係止爪と同方向へ突出する保持片が設けられている一方、前記凹部内に、前記ピンロック部材の前記ピン部材への取り付け状態において前記保持片が掛止可能な保持凸部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、蝶着ピンの基端に細頸部を設けるとともに、ピン部材の本体に、蝶着ピンの細頸部が露出する凹部と、凹部を本体外に連通させるための開口とを設ける一方、基部と、基部から対向状に突出する一組の係止爪とを備えたピンロック部材を設け、ピンロック部材の係止爪が突出する側を凹部内へ差し込むことにより、何れか一方の係止爪が細頸部に係止し、且つ、他方の係止爪が凹部の内面に当接した状態でピンロック部材がピン部材に取り付けられ、ピン部材が、蝶着ピンの先端を所定方向へ突出させた状態のままロックされるようにした。したがって、本体から蝶着ピンの先端が所定方向へ出没自在とされているようなピン部材に関し、上述したような状態のまま確実にロックすることができる。また、ピン部材に設けられた凹部内へピンロック部材を差し込んで取り付けており、ピンロック部材と蝶着ピンとの干渉部分がピン部材の本体外に露出しないようになっているため、干渉部分が本体外に露出するようなものと比べると、ピンロック部材が不用意に脱落しにくい上、ロック状態においてピンロック部材が破損しづらい蝶番構造とすることができる。さらに、ピンロック部材のピン部材への取付姿勢を逆さとすることができ、使い勝手が良い。そのため、たとえば左開き用の蝶番に取り付ける場合と、右開き用の蝶番に取り付ける場合との両方に対応させることができ、汎用性の向上を図ることができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、基部の係止爪同士の間となる箇所に、係止爪と同方向へ突出する保持片を設けている一方、凹部内に、ピンロック部材のピン部材への取り付け状態において保持片が掛止可能な保持凸部を設けているため、ロック状態においてピンロック部材が一層破損しづらく、極めて確実なロックを実現可能な蝶番構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電気機器収納用箱体の外観を示した斜視説明図である。
図2】扉体が開放された状態にある電気機器収納用箱体を示した斜視説明図である。
図3】上側の蝶番を示した斜視説明図である。
図4】上側の蝶番を右側から示した説明図である。
図5】ピン受け部材を示した説明図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は下方から示した斜視説明図である。
図6】ピン部材を示した説明図であり、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は背面側を示した斜視説明図である。
図7】扉体の開放角度に応じた蝶番の状態を右側から示した説明図であり、(a)は扉体の開放角度が90度である場合、(b)は扉体の開放角度が180度である場合、(c)は扉体の開放角度が270度である場合を夫々示している。
図8】ピンロック部材を示した斜視説明図である。
図9】ピンロック部材によりピン部材をロックした状態を示した断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となる蝶番構造を備えた電気機器収納用箱体(以下、単に収納箱と称す)について、図面をもとに説明する。
【0010】
図1は、収納箱1の外観を示した斜視説明図である。図2は、扉体3が開放された状態にある収納箱1を示した斜視説明図である。図3は、上側の蝶番10を示した斜視説明図である。図4は、上側の蝶番10を右側から示した説明図である。図5は、ピン受け部材11を示した説明図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は下方から示した斜視説明図である。図6は、ピン部材12を示した説明図であり、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は背面側を示した斜視説明図である。図7は、扉体の開放角度に応じた蝶番10の状態を右側から示した説明図であり、(a)は扉体の開放角度が90度である場合、(b)は扉体の開放角度が180度である場合、(c)は扉体の開放角度が270度である場合を夫々示している。図8は、ピンロック部材40を示した斜視説明図である。図9は、ピンロック部材40によりピン部材12をロックした状態を示した断面説明図である。なお、図4における扉体の開放角度は0度である(すなわち、扉体は箱本体の前面開口を閉塞している)。また、図4及び図7では、扉体を省略している。
【0011】
収納箱1は、前面に開口を有する箱本体2と、箱本体の開口を開閉する扉体3とを備えてなる。箱本体2は、天板、左右両側板、背板、及び底板を有して前面を除く5面(上面、左右両側面、後面、及び下面)が閉塞された箱体であり、その内部空間に、分電盤等の各種電気機器を収納可能となっている。また、箱本体2の前面には、箱本体2の開口を開閉するための扉体3が取り付けられている。そして、箱本体2と扉体3との間には、それらの右側部の上部及び下部において夫々蝶番10が介在されており、扉体3は、箱本体2に対し右側部を軸として片開き自在となっている。
【0012】
ここで、本発明の要部となる蝶番10、10のうち、上側の蝶番10について詳述する。なお、下側の蝶番10は、上側の蝶番10を上下逆さにしたものと略同じ構成となり、後述する補強リブ24の位置のみが異なっている。
蝶番10は、箱本体2側に固定されるピン受け部材11と、扉体3側に固定されるピン部材12とを備えてなる。ピン受け部材11は、箱本体2の開口周縁に固定される固定部21、固定部21から前方へ所定距離だけ離れた位置に設けられたピン受け部22、固定部21とピン受け部22とを連結する連結部23、及びピン受け部22を補強するための補強リブ24を有する。固定部21は、前後方向が厚み方向となる板状で上下方向に長く形成されており、上部及び下部には自身を箱本体2にネジ止めするためのネジ孔25が夫々穿設されている。また、連結部23は、上下方向が厚み方向となる板状で、固定部21の上端から前方へ延びている。さらに、ピン受け部22は、連結部23の先端から下方へ延びる円筒状に形成されており、該ピン受け部22の先端には、ピン部材12の蝶着ピン32の先端を差し込み可能なピン孔26が開口している。
【0013】
また、ピン受け部22の後側には、連結部23からピン受け部22の後面に沿って延びる誘導リブ28が設けられている。一方、ピン受け部22の先端箇所(ピン孔26の開口部)では、ピン孔26の後部に切り欠き27が設けられている。そして、誘導リブ28の下端面(先端面)と、ピン孔26内におけるピン孔26の内面と切り欠き27とをつなぐ段面とによって、切り欠き27を介してピン孔26の内外にわたり前後方向に延設される一連の面が形成されており、当該面が蝶着ピンの先端をピン孔26外からピン孔26内へ誘導するための誘導面とされている。この誘導面のうち、ピン孔26外の誘導面(誘導リブ28の下端面)29Aは、切り欠き27から後方へ向かうにしたがって上昇するように傾斜している。また、ピン孔26内の誘導面(段面)29Bは、切り欠き27から前方へ向かうにしたがって上昇するように傾斜している。
【0014】
加えて、補強リブ24は、固定部21及び連結部23の右端に沿って前方へ立設されており、固定部21とピン受け部22とを一体化している。そして、補強リブ24には、前方(ピン部材12に近づく側)へ突出する規制突起30が設けられている。該規制突起30は、蝶番10を組み立てた際、ピン部材12の後側において、扉体3の開閉動作に伴うピン部材12の回転を阻害することはないものの、扉体3を特定の開放角度(ここでは270度)とした際に、ピン部材12の表面(特に後述するピン部材12の本体31表面)に近接するようになっている。
【0015】
一方、ピン部材12は、上下方向へ長い本体31と、本体31に保持され、先端が本体31に対して出没可能な蝶着ピン32と、蝶着ピン32の先端が本体31の上面から上方へ突出するように蝶着ピン32を付勢するコイルバネ33(図9に示す、図6及び図7では省略)とを有しており、本体31には、自身を扉体3の前面にネジ止めするためのネジ孔34、34が設けられている。また、本体31の下部には、蝶着ピン32の基端に設けられた細頸部32Aが突出する凹部36が設けられ、該凹部36は、本体31における扉体3への固定時に扉体3と対向する面(本体31の背面)に開設された開口35を介して本体31外に連通している。さらに、凹部36内の前面(開口35と対向する面)には、後方(開口35側)へ突出する保持突起37が設けられている。
【0016】
また、上記ピン部材12には、蝶着ピン32を、先端が本体31の上面から上方へ突出した状態のままロックするためのピンロック部材40を取付可能となっている。ピンロック部材40は、ブロック状の基部41と、基部41の上端から前方へ突出する係止爪42Aと、基部41の下端から係止爪42Aと対向するように前方へ突出する係止爪42Bと、基部41の前面であって上下方向で中央部分となる箇所から前方へ突出する保持片43と、基部41の後面から左側へ延設された摘まみ片44とを備えてなり、基部41の上下幅は、開口35及び凹部36の上下幅と略同じとなっている。
【0017】
そして、上側の蝶番10の組み立て、及び扉体3の箱本体2への取り付けは、ピン受け部材11を箱本体2側に、ピン部材12を扉体3側に夫々固定した上で、次のようにして組み立てられる。
まず蝶着ピン32の先端を、誘導リブ28と固定部21との間に位置させる。このとき、下側の蝶番10は、蝶着ピン32をピン孔26内へ差し込んで予め組み立てておく。それから、下側の蝶番10の組み立て状態を維持したまま、扉体3の上部を前方へ引き出すように扉体3を動かせばよい。すると、蝶着ピン32の先端が誘導面29Aに当接した後、蝶着ピン32が本体31内へ押し込まれながら、蝶着ピン32の先端が誘導面29A上を切り欠き27側へ移動する。さらに、蝶着ピン32の先端が、切り欠き27を介してピン孔26内へ移動し、誘導面29B上を前方へ移動することで、蝶着ピン32が再び上方へ突出し始める。最後に、蝶着ピン32の先端が誘導面29Bの前端を超え、蝶着ピン32が最大限突出した状態となって、上側の蝶番10の組み立て、ひいては扉体3の箱本体2への取り付けが完了となる。
【0018】
また、扉体3の箱本体2への取り付け後は、上下両側の蝶番10を以下のようにしてロック状態とすることで、扉体3の不用意な脱落を防止する。すなわち、ピンロック部材40を、開口35を介して凹部36内へ前側から差し込み、係止爪42Aを蝶着ピン32の細頸部32Aに係止させればよい。すると、係止爪42Aと蝶着ピン32との係止箇所の鉛直下方において係止爪42Bが凹部36の底面に当接するとともに、保持片43の先端が保持突起37上に掛止して、ピン部材12は、蝶着ピン32の先端を本体31の上面から上方へ突出させた状態のままロックされることになる。なお、扉体3におけるピン部材12、12の固定部には、開口35を露出させるための窓4、4(図2に示す)が開設されている。また、ピンロック部材40をピン部材に取り付けるにあたり、ピンロック部材40の姿勢を上下逆さとし、係止爪42Bを細頸部32Aに係止させるようにしてもよい。
【0019】
さらに、蝶番10の構造から考えると、扉体3の支持に係りピン部材12にかかる負荷であって、ピン部材12がピン受け部材11から抜け出す方向への負荷(すなわち後方への負荷)が最大となるのは、扉体の開放角度を270度とした場合である。しかしながら、蝶番10では、図7に示すように、扉体3の開放角度を270度とした際に規制突起30がピン部材12の本体31表面に近接し、ピン部材12の後方への移動、すなわちピン部材12が不用意にピン受け部材11から抜け出す事態を規制するようになっている。
【0020】
以上のような構成を有する収納箱1における扉体3の蝶番10によれば、蝶着ピン32の基端に細頸部32Aを設けるとともに、ピン部材12の本体31に、蝶着ピン32の細頸部32Aが露出する凹部36と、凹部36を本体31外に連通させるための開口35とが設けられている一方、基部41と、基部41の上下両端から対向状に突出する一組の係止爪42A、42Bとを備えたピンロック部材40が設けられており、ピンロック部材40の係止爪42A、42Bが突出する側を凹部36内へ差し込むことにより、係止爪42Aが細頸部32Aに係止し、且つ、係止爪42Aと蝶着ピン32との係止箇所の鉛直下方において係止爪42Bが凹部36の底面に当接した状態でピンロック部材40がピン部材12に取り付けられ、結果としてピン部材12が、蝶着ピン32の先端を上方へ突出させた状態のままロックされるようになっている。したがって、本体31から蝶着ピン32の先端が上方へ出没自在とされているようなピン部材12に関し、上述したような状態で確実にロックすることができる。また、ピン部材12に設けられた凹部36内へピンロック部材40を差し込んで取り付けており、ピンロック部材40と蝶着ピン32との干渉部分がピン部材12の本体31外に露出しないようになっているため、干渉部分が本体31外に露出するようなものと比べると、ピンロック部材40が不用意に脱落しにくい上、ロック状態においてピンロック部材40が破損しづらい蝶番構造とすることができる。加えて、基部41の上下両端から対向状に突出する一組の係止爪42A、42Bを設けているため、ピンロック部材40のピン部材12への取付姿勢を上下を逆さとしてもよく(つまり、係止爪42Bを細頸部32Aに係止させる等)、使い勝手が良いし、ひいては左開き用の蝶番に取り付ける場合と、右開き用の蝶番に取り付ける場合との両方に対応させることもでき、汎用性の向上を図ることができる。
【0021】
また、基部41の上下方向で係止爪42A、42B間となる箇所に、係止爪42A、42Bと同方向へ突出する保持片43を設けている一方、凹部36内に、ピンロック部材40のピン部材12への取り付け状態において保持片43が掛止可能な保持突起37を設けているため、ロック状態においてピンロック部材40が一層破損しづらく、極めて確実なロックを実現可能な蝶番構造とすることができる。
【0022】
さらに、ピン受け部材12の補強リブ24に、前方へ突出する規制突起30が設けられており、扉体を特定の開放角度とした際に、規制突起30がピン部材12の本体31表面に近接するようにしているため、当該開放角度において、扉体3の自重等に起因してピン部材12が後方へ移動し、ピン部材12が不用意にピン受け部材11から抜け出してしまう事態、すなわち扉体3が不用意に箱本体2から脱落してしまう事態を効果的に防止することができる。
【0023】
加えて、ピン部材12が、本体31と、先端が本体31から上方へ突出しているとともに当該先端が本体31に対して出没可能とされた蝶着ピン32と、蝶着ピン32を上方へ付勢するコイルバネ33とを有している一方、ピン受け部材12が、箱本体2に固定するための固定部21と、固定部21の前方へ所定距離だけ離れた位置に設けられたピン受け部22とを有しており、ピン受け部22が、上下方向に延びる筒状に形成され、蝶着ピン32を差し込み可能なピン孔26が下端面に開口したものとして構成されている。そして、ピン孔26の開口後部に切り欠き27が設けられ、切り欠き27を介してピン孔26の内外にわたり、蝶着ピン32の先端をピン孔26外からピン孔26内へ誘導するための誘導面29A、29Bが前後方向に延設されている。そのため、誘導面29A、29Bに蝶着ピン32の先端をあてがい、当該状態のまま扉体3ごとピン部材12を前方へ移動させることによって、蝶着ピン32がピン孔26内に差し込まれることになり、蝶番10の組み立て、ひいては扉体3の箱本体2への取り付けがなされるようになっている。したがって、従来よりも扉体3の箱本体2への取り付けを容易に行うことができる。
【0024】
また、誘導面のうち、ピン孔26外の誘導面29Aを、切り欠き27から後方へ向かうにしたがって上昇するように傾斜させている一方、ピン孔26内の誘導面29Bを、切り欠き27から前方へ向かうにしたがって上昇するように傾斜させている。したがって、ピン孔26の内外において、蝶着ピン32の先端をスムーズに誘導面29A(若しくは誘導面29B)上に導くことができ、扉体3の着脱作業の一層の容易化を図ることができる上、特に誘導面29Bの傾斜によって、ピン孔26内に差し込まれた状態にある蝶着ピン32が不用意にピン孔26から抜け出してしまう事態を効果的に防止することができる。
【0025】
なお、本発明の収納箱における扉体の蝶番構造に係る構成は、上記実施形態に記載の態様に何ら限定されるものではなく、箱本体、扉体、及び蝶番に係る構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0026】
たとえば、上記実施形態では、上側の蝶番と下側の蝶番との両方において、切り欠きや誘導面を形成しているが、上下何れか一方の蝶番にのみ、切り欠きや誘導面を設けるとしても何ら問題はない。
また、上記実施形態では、誘導面を傾斜面として構成しているが、誘導面を水平面としてもよく、ピン孔の外側の誘導面を水平面とし、ピン孔の内側の誘導面を上述したような傾斜面としたり、反対にピン孔の外側の誘導面を上述したような傾斜面とし、ピン孔の内側の誘導面を水平面とすることも可能であるし、ピン孔の外側の誘導面が水平面と傾斜面との組み合わせからなるように構成することも可能で、誘導面の具体的な形状は適宜設計変更することができる。なお、誘導面が延びる方向も上記実施例に記載の方向に何ら限定されることはない。
【0027】
さらに、扉体の蝶番構造として、上下方向での中央部に別タイプの蝶番(たとえば箱本体に第1のピン受け部材を、扉体に第2のピン受け部材を夫々固定するとともに、両ピン受け部材を貫通するようにピン部材を差し込んでなる従来周知の蝶番等)を設けることも当然可能である。
さらにまた、上記実施形態では、蝶着ピンの先端を突出させたまま保持する付勢部材としてコイルバネを採用しているが、たとえば板バネ等の他の部材を付勢部材として採用しても何ら問題はない。
【0028】
またさらに、ピン受け部材に設ける規制突起の位置や数についても適宜変更可能であり、補強リブではなく固定部から突出するように設けることも可能である。また、ピン受け部材ではなく、ピン部材にピン受け部材側へ突出する規制突起を設けてもよいし、両者に規制突起を夫々設けるという構成を採用することも可能である。さらに、上記実施形態では、扉体の開放角度を270度した場合に規制突起が機能するとしているが、誘導面が延びる方向等に応じて、どのような開放角度とした際に規制突起が機能するかについても適宜変更可能である。
【0029】
また、ピンロック部材に保持片を設けるかどうかは勿論、保持片の数や位置、形状等についても適宜設計変更可能であるし、そのような保持片の有無、数、位置、形状等に応じて、凹部内における保持凸部の構成についても適宜設計変更することができる。さらに、上記実施形態では、凹部内の前面に保持突起を設けているが、凹部内の左右両側面に保持片の左右両側部が掛止する保持突条を前後方向に延設するというような構成を採用することも考えられる。
加えて、上記実施形態では扉体を右開きに設けているが、本発明は、言うまでもなく左開きとされた扉体の蝶番構造や、左右方向を軸として片開きする扉体の蝶番構造としても好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1・・収納箱(電気機器収納用箱体)、2・・箱本体、3・・扉体、10・・蝶番、11・・ピン受け部材、12・・ピン部材、21・・固定部、22・・ピン受け部、26・・ピン孔、27・・切り欠き、28・・誘導リブ、29A、29B・・誘導面、30・・規制突起、31・・本体、32・・蝶着ピン、32A・・細頸部、33・・コイルバネ(付勢部材)、35・・開口、36・・凹部、37・・保持突起、41・・ピンロック部材、42A、42B・・係止爪、43・・保持片。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9