(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】基材レスシリコーン吸着シート、該シートを用いたウェーハ加工用積層体および該加工用積層体を用いたウェーハ加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240517BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240517BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240517BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20240517BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20240517BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H01L21/304 631
H01L21/68 N
C09J7/38
C09J183/07
C09J183/04
B32B27/00 101
(21)【出願番号】P 2020181540
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 教一
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 文明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 敏樹
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-26725(JP,A)
【文献】特開2019-65218(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193973(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/683
C09J 7/38
C09J 183/07
C09J 183/04
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の離型フィルム/シリコーン組成物から形成された第1のシリコーン吸着層A/シリコーン組成物から形成された第2のシリコーン吸着層B/第2の離型フィルムの構成よりなる基材レスシリコーン吸着シートにおいて、
前記第1および前記第2のシリコーン吸着層は、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなるシリコーン吸着層であって、前記第1の離型フィルムと前記第1のシリコーン吸着層A間の剥離力が、前記第2の離型フィルムと前記第2のシリコーン吸着層B間の剥離力より大きく、その剥離力の差が15mN/25mm以上で、かつ前記第1の離型フィルムと前記第1のシリコーン吸着層A間の剥離力が80mN/25mm以下であり、
前記第1および前記第2の離型フィルムを剥離後の前記第1のシリコーン吸着層Aの剥離力が、評価用としての表面粗さRaが0.08μmのガラス基板に対して、60mN/25mm以下、5mN/25mm以上であり、前記第2のシリコーン吸着層Bの剥離力が、前記ガラス基板に対して、100mN/25mm以上であることを特徴とする基材レスシリコーン吸着シート。
【請求項2】
請求項1に記載の基材レスシリコーン吸着シートにおいて、
前記第1のシリコーン吸着層Aは、M単位(R
3SiO
1/2:Rはメチル基、フェニル基などの1価の有機基)とQ単位(SiO
4/2)からなるMQレジンを前記第1のシリコーン吸着層Aの固形分中の0~13重量%含有し、前記第2のシリコーン吸着層Bは、前記MQレジンを前記第2のシリコーン吸着層Bの固形分中の20~30重量%含有することを特徴とする基材レスシリコーン吸着シート。
【請求項3】
請求項1~2記載の基材レスシリコーン吸着シートの前記第1のシリコーン吸着層Aと前記第2のシリコーン吸着層Bよりなるシリコーン吸着層を介在させて、仮支持体/前記第2のシリコーン吸着層B/前記第1のシリコーン吸着層A/回路形成されているウェーハ表面が積層されているウェーハの構成よりなるウェーハ加工用積層体であって、
前記回路形成されているウェーハ表面が、放射線ラジカル重合開始剤と数平均分子量が3,000以上である2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの総量が40重量%以上、および2官能(メタ)アクリルモノマーの総量が25重量%以上含む感放射線性樹脂組成物により、前記回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように、塗工法により設けられた後、放射線照射により硬化されている易剥離性接合層を有するウェーハであることを特徴とするウェーハ加工用積層体。
【請求項4】
請求項1~2記載の基材レスシリコーン吸着シートの前記第1のシリコーン吸着層Aと前記第2のシリコーン吸着層Bよりなるシリコーン吸着層を介在させて、仮支持体/前記第2のシリコーン吸着層B/前記第1のシリコーン吸着層A/回路形成されているウェーハ表面が積層されているウェーハの構成よりなるウェーハ加工用積層体であって、
前記回路形成されているウェーハ表面が、(A)少なくともカルボキシル基を有するラジカル重合性化合物に由来する構成単位を有するアルカリ可溶性を有する共重合体、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、および(C)放射線ラジカル重合開始剤、を含有する感放射線性樹脂組成物により、前記回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように、塗工法により設けられた後、放射線照射により硬化されている接合層を有するウェーハであって、前記硬化された接合層は、アルカリ溶液よりなる剥離液によって除去可能であることを特徴とするウェーハ加工用積層体。
【請求項5】
回路形成されているウェーハ表面に、請求項3または請求項4記載の感放射線性樹脂組成物を前記回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように塗工してなる接合層を形成後、前記ウェーハの接合層面と表面が平滑な透明離型性基材を貼り合せ、透明離型性基材側から放射線照射により前記接合層を硬化させた後、前記透明離型性基材を剥離し、該ウェーハの前記接合層面を、仮支持体上に設けられた、仮支持体/前記第2のシリコーン吸着層B/前記第1のシリコーン吸着層Aよりなる部材の前記第1のシリコーン吸着層A面とを貼り合せてなることを特徴とする請求項3または請求項4記載のウェーハ加工用積層体。
【請求項6】
請求項3に記載のウェーハ加工用積層体を用いて、前記仮支持体と接合した前記ウェーハの回路非形成面を研削後、薄型化したウェーハに、必要に応じて、様々な加工を施した後、前記研削済み積層体の研削加工面にダイシングテープを貼り付けた後、該ウェーハをダイシングテープごと、前記第1のシリコーン吸着層A面と前記接合層面間で剥離し、前記薄型化したウェーハをダイシングし個片化し、その後個片化チップの接合層を、粘着テープを用いて、前記接合層を回路形成されているウェーハ表面から剥離する薄型ウェーハ個片化の製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載のウェーハ加工用積層体を用いて、前記仮支持体と接合した前記ウェーハの回路非形成面を研削後、薄型化したウェーハに、必要に応じて、様々な加工を施した後、前記研削済み積層体の研削加工面にダイシングテープを貼り付けた後、該ウェーハをダイシングテープごと、前記第1のシリコーン吸着層A面と前記接合層面間で剥離し、下記(1)または(2)の工程によりダイシングすることを特徴とする薄型ウェーハ個片化の製造方法。
(1)アルカリ溶液よりなる剥離液によって、前記接合層を回路形成されているウェーハ表面から除去した後に、前記薄型化したウェーハをダイシングし個片化する工程
(2)前記接合層を有する薄型化したウェーハをダイシングし個片化した後に、アルカリ溶液よりなる剥離液によって、前記接合層を回路形成されている個片化ウェーハ表面から除去する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体関連部材の製造分野、電気・電子部品の製造分野、表示デバイスの製造分野などにおいては、2枚の部材(かかる部材として、ガラス基板、シリコンウエーハなどが例示される。)を粘着剤で貼り合わせ、得られた、部材/粘着剤/部材からなる積層体の一方の面に加工を施す場合がある。本発明は、かかる分野に使用される基材レスシリコーン吸着シート、該シートを用いたウェーハ加工用積層体および該加工用積層体を用いたウェーハ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体産業では、パッケージの薄型化や小型化によるチップ積層技術による高密度化への対応のために、半導体ウェーハの増々の薄型化が進められている。薄型化はパターン形成されたウェーハの表面(回路面)とは反対側の面を裏面研削する。従来、研削工程時には、前記ウェーハ表面とは剥離力が高く、一方、研削工程後には、光照射や熱処理等により、前記ウェーハの表面との剥離力が低減する粘着剤層を有する、いわゆるバックグラインド(以下BG)保護テープを貼付けた状態で前記ウェーハを保持し裏面研削後、ウェーハ裏面にダイシングテープと呼ばれる粘着保護テープを貼付けリングフレーム等に固定後、光照射や熱処理により、前記粘着層と前記ウェーハ間の剥離力を低減させ、BG保護テープを剥離して、ダイシングにより個片化チップが作製されてきた。
【0003】
しかしながら、高密度化にともない、フリップチップ実装等では、通常、半導体チップと基板の接合にはんだ等からなるバンプを回路面に搭載した半導体チップの実装技術が用いられている。そして、最近では、バンプが予め半導体ウェーハ回路面に高密度に接合されている方法が主流になりつつある。従って、前記ウェーハ表面の表面凹凸段差は数十μm、場合により100μmを超える場合がある。このようなバンプ付ウェーハの裏面を、従来のBG保護テープを用いて研削すると、粘着剤層が、表面のバンプの高低差に追従して埋め込まれず、研削時、バンプが存在する部分とバンプが存在しない部分との高低差に起因する圧力差がウェーハ裏面に直接影響し、ウェーハ裏面にディンプルと呼ばれる窪みやクラックが生じ、最終的に半導体ウェーハを破損させてしまう。
【0004】
この表面凹凸段差追従性の解決法として、BGテープの粘着剤層の厚みを厚くし、さらに粘着剤の流動性を高めることにより、粘着剤層とウェーハとを密着させ、粘着剤層のクッション性によりバンプの段差による圧力差を解消するようにした対処の方法がある。しかし、粘着剤層を厚くし、かつその流動性を高くすると、バンプの根本部分に粘着剤が回り込み易くなる。このため、バンプの根本部分に付着した粘着剤が、表面保護シートの剥離操作によって、凝集破壊を起こし、粘着剤の一部が回路面に残着することがある。回路面に残着した粘着剤は溶剤洗浄等によって除去しなければ、デバイス内の異物として残留し、完成したデバイスの信頼性を損なう。
【0005】
また、粘着剤層を厚くするのではなく、表面保護テープの基材フィルムと粘着剤層との間に、バンプの高低差を吸収、緩和するためのいわゆるクッション層機能を有する中間層を設けることが種々提案されている。(例えば、特許文献1)しかしながら、特許文献1に提案されている粘着シートをウェーハ表面に貼付して裏面研削を行うと、研削時に発生する熱によって中間層が軟化してしまい、研削精度が低下することがあった。さらに、粘着シートをロール状の巻き取り、運搬、保管等を行うと、特に夏季には高温に曝され、中間層や粘着剤層が軟化し、ロールの側部から樹脂成分が浸み出してしまうことがあった。
【0006】
更に、パッケージの薄型化や小型化によるチップ積層技術による高密度化への対応は、より一層の高密度、大容量化、高速化、低消費電力化を実現するために、例えば3次元の半導体実装が期待されている。3次元半導体実装技術とは、1つの半導体チップを薄型化し、更にこれをシリコン貫通電極(TSV)によって結線しながら多層に積層していく半導体作製技術である。これを実現するためには、半導体回路を形成した基板を非回路形成面(ウェーハ裏面)研削によって薄型化が必要であるが、研削後のウェーハ厚みは10μm~30μmと一段高い要求がされるようになってきている。
【0007】
3次元の半導体実装の場合であっても、前記フリップチップ実装と同じく、回路形成されているウェーハ表面は、通常バンプ等が形成されている場合が多いためにその表面の凹凸が大きく、表面保護層は表面凹凸段差追従性機能が要求される。又、研削時の保護テープ付きウェーハの反りや研削時の厚み均一性のためには仮支持体によるウェーハサポートシステムが要求されている。
【0008】
さらに、3次元の半導体実装の場合は、研削工程後にTSV形成工程や裏面での配線層形成工程が行われるが、この際には200℃以上の高温処理が入り、従来のBG保護テープに使用されている紫外線照射や熱処理により剥離力を低減させる粘着剤層では、耐熱性が不十分で剥離適性等に問題が生じている。また、高温処理加工での高度な位置精度を伴う3次元の半導体実装の場合は、シリコンウェーハやガラス等の仮支持体とBG保護テープの基材フィルムの熱膨張係数のバランスが取られていなければならない。この観点からも基材レスでの仮接着が望まれている。
【0009】
一般的に、粘着剤層を介しての割れやすい剛体部材間の剥離は難しい。例えば、特許文献2には、熱溶融性の炭化水素系化合物を基材レス仮接着剤に用い、加熱溶融状態で接合・剥離を行う技術が提案されている。この場合、加熱だけで制御するため簡便である反面、200℃を超える高温での熱安定性が不十分であり、更にこれらの仮接着剤では、高段差基板の均一な膜厚形成と、支持体への完全接着にも適さなかった。
【0010】
一方、特許文献3、特許文献4には、UV硬化型液体接着材料と光熱変換接着剤塗料を用いてなる、半導体ウェーハ(回路面)/剥離可能なUV硬化された接着剤層/光熱変換層/光透過性仮支持体を含む積層体よりなるウェーハサポートシステムが記載されており、このシステムを使用することにより、該回路面のUV硬化された接着剤層の凹凸吸収性が優れ、割れやすい剛体部材間の剥離も容易で、ウェーハ裏面の極薄研削が可能で、高温処理を伴う3次元実装にも対応可能である。
しかしながら、この場合、半導体ウェーハ(回路面)/剥離可能なUV硬化された接着剤層/光熱変換層/光透過性仮支持体の構成よりなるウェーハ加工用積層体において、該接着剤層付き半導体ウェーハをガラス等の仮支持体から剥離するためには、光吸収性物質を含む光熱変換層に高強度のレーザー光を照射し、接着剤層を熱分解することによって支持体から接着剤層を剥離することが必要で、高価なレーザー装置が必要であり、かつ基板1枚あたりの処理時間が長くなるなどの問題があった。
【0011】
特許文献3、特許文献4の問題点の解決手段として、特許文献5、特許文献6には、ウェーハの表面に剥離可能に接着可能な非シリコーン熱可塑性樹脂層(A)からなる第一仮接着層と、該第一仮接着層に積層された熱硬化性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層と、該第二仮接着層に積層され、仮支持体に剥離可能に接着可能な熱硬化性シロキサン変性重合体層(C)からなる第三仮接着層の3層構造を有する複合仮接着材層よりなるウェーハ加工用仮接着材、およびウェーハと仮支持体の接着方法が記載されている。
【0012】
しかしながら、特許文献5、特許文献6記載の方法は、前記ウェーハ加工用積層体作製に際して、該積層体作製者自らが、熱硬化性シロキサン重合体や熱硬化性シロキサン変性重合体液の取り扱いおよび熱硬化工程を行わなければならず煩雑である。さらに、半導体加工工程においては、他への悪影響の点から、該液の取り扱いは嫌われるのが一般的である。また、ウェーハを仮支持体から剥離する際に、どの層間で剥離されるかが明確に記載されてはいない。
【0013】
一方、特許文献7には、2枚の部材(かかる部材としては、ガラス基板、シリコンウエーハなどが例示される。)を粘着剤で貼り合わせ、得られた、部材/粘着剤/部材からなる積層体の一方の面に加工を施す場合に使用される、第1の剥離シート、シリコーン系粘着剤組成物から形成された粘着剤層、および第2の剥離シートがこの順で配置された積層体の構成を備える基材レスシリコーン両面テープにおいて、前記粘着剤層の2つの部材主面の粘着力の差は2mN/25mm以上、20mN/25mm以下であって、前記粘着剤層における粘着力が高い方の前記部材主面の粘着力は700mN/25mm以下である基材レスシリコーン両面テープが記載されている。
【0014】
特許文献3、4や特許文献5、6に記載の半導体ウェーハの回路面の凹凸吸収性に優れた剥離可能なUV硬化された接着剤層や、剥離可能に接着可能な非シリコーン熱可塑性樹脂層(以下、これらの層を接合層という)付き被研削部材と、ガラスやシリコン等の仮支持体を、予め用意されている基材レスシリコーン両面テープを用いて作製された基材レスシリコーン粘着剤層で仮固定ができ、前記ウェーハ裏面の研削後、前記高温処理加工が施された後においても、該接合層付き被研削部材が、該基材レスシリコーン粘着剤層と剥離可能であれば、ウェーハ加工用積層体の作製作業が非常に容易になると共に、シリコーン粘着剤層の高い耐熱性からも、より適したウェーハサポートシステムが期待できる。
【0015】
一方、前述のごとく、粘着剤層を介しての剛体と基材フィルム間の剥離に比べて、粘着剤層を介しての割れやすい剛体部材間の剥離は難しい。本発明者等は、例えば、表面粗さRaが0.08μm、厚さ5.0mmのガラス仮支持体に、塗工法により、密着層を設け、該密着層の上に、後述する架橋されたシリコーン吸着層を20μm設けた部材の該シリコーン吸着層面と、表面粗さRaが0.08μm、厚さ0.5mmのガラス被研削体を貼り合せ、該シリコーン吸着層の剥離力を変えた実験において、該シリコーン吸着層面と該ガラス被研削体間の剥離力が60mN/25mm以下、5mN/25mm以上であれば、剪断力も1N/cm2以上を維持し、該ガラス被研削体の研削工程において該ガラス被研削体が固定された状態で研削が可能であり、かつ研削後の該ガラス被研削体と該シリコーン吸着層間のスムーズな剥離が可能であることを見出した。
しかしながら、このように該剛体部材と該シリコーン吸着層界面の剥離力が低い範囲内の場合、基材レスシリコーン吸着シートを用いて達成することは容易では無い。例えば、特許文献7記載の基材レスシリコーン両面テープのシリコーン粘着剤層では、該仮支持体/該シリコーン粘着剤層間の剥離力と該被研削体/該シリコーン粘着剤層間の剥離力の差が小さすぎて、研削後の剛体のみを、確実に該シリコーン粘着剤層界面から剥離することが難しいという問題がある。その結果として、前記接合層面に前記シリコーン粘着剤層が残っている場合、後の接合層除去の工程で、シリコーン粘着剤層除去の工程も必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2001-203255号公報
【文献】特開2006-328104号公報
【文献】特開2004-064040号公報
【文献】特開2005-159155号公報
【文献】特開2015-179692号公報
【文献】特開2016-119438号公報
【文献】特開2014-198787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、第一の目的は、研削等の加工を行う部材の非加工面と仮支持体との仮接着が容易な基材レスシリコーン吸着シートであって、かつ該加工部材と該シリコーン吸着層間で確実に剥離可能な基材レスシリコーン吸着シートを提供することにある。
また、第二の目的は、該基材レスシリコーン吸着シートを用いて、高段差ウェーハ基板への前記接合層の凹凸追従性も良好で、TSV形成、ウェーハ裏面配線工程に対する工程適合性が高く、更には、CVD(化学的気相成長)といったウェーハ熱プロセス耐性に優れ、剥離も容易で、薄型ウェーハの生産性を高めることができるウェーハ加工用積層体および該加工用積層体を用いたウェーハ加工方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以下、本発明の、前記課題を達成するための手段を具体的に説明する。
【0019】
請求項1に係る発明は、第1の離型フィルム/シリコーン組成物から形成された第1のシリコーン吸着層A/シリコーン組成物から形成された第2のシリコーン吸着層B/第2の離型フィルムの構成よりなる基材レスシリコーン吸着シートにおいて、
前記第1および前記第2のシリコーン吸着層は、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなるシリコーン吸着層であって、
前記第1の離型フィルムと前記第1のシリコーン吸着層A間の剥離力が、前記第2の離型フィルムと前記第2のシリコーン吸着層B間の剥離力より大きく、その剥離力の差が15mN/25mm以上で、かつ前記第1の離型フィルムと前記第1のシリコーン吸着層A間の剥離力が80mN/25mm以下であり、
前記第1および前記第2の離型フィルムを剥離後の前記第1のシリコーン吸着層Aの剥離力が、評価用としての表面粗さRaが0.08μmのガラス基板に対して、60mN/25mm以下、5mN/25mm以上であり、前記第2のシリコーン吸着層Bの剥離力が、前記ガラス基板に対して、100mN/25mm以上であることを特徴とする基材レスシリコーン吸着シートである。
【0020】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の基材レスシリコーン吸着シートにおいて、前記第1のシリコーン吸着層Aは、M単位(R3SiO1/2:Rはメチル基、フェニル基などの1価の有機基)とQ単位(SiO4/2)からなるMQレジンを前記第1のシリコーン吸着層Aの固形分中の0~13重量%含有し、前記第2のシリコーン吸着層Bは、前記MQレジンを前記第2のシリコーン吸着層Bの固形分中の20~30重量%含有することを特徴とする基材レスシリコーン吸着シートである。
【0021】
請求項3に係る発明は、請求項1~2記載の基材レスシリコーン吸着シートの前記第1のシリコーン吸着層Aと前記第2のシリコーン吸着層Bよりなるシリコーン吸着層を介在させて、仮支持体/前記第2のシリコーン吸着層B/前記第1のシリコーン吸着層A/回路形成されているウェーハ表面が積層されているウェーハの構成よりなるウェーハ加工用積層体であって、
前記回路形成されているウェーハ表面が、放射線ラジカル重合開始剤と数平均分子量が3,000以上である2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの総量が40重量%以上、および2官能(メタ)アクリルモノマーの総量が25重量%以上含む感放射線性樹脂組成物により、前記回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように、塗工法により設けられた後、放射線照射により硬化されている易剥離性接合層を有するウェーハであることを特徴とするウェーハ加工用積層体である。
【0022】
請求項4に係る発明は、請求項1~2記載の基材レスシリコーン吸着シートの前記第1のシリコーン吸着層Aと前記第2のシリコーン吸着層Bよりなるシリコーン吸着層を介在させて、仮支持体/前記第2のシリコーン吸着層B/前記第1のシリコーン吸着層A/回路形成されているウェーハ表面が積層されているウェーハの構成よりなるウェーハ加工用積層体であって、
前記回路形成されているウェーハ表面が、(A)少なくともカルボキシル基を有するラジカル重合性化合物に由来する構成単位を有するアルカリ可溶性を有する共重合体、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、および(C)放射線ラジカル重合開始剤、を含有する感放射線性樹脂組成物により、前記回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように、塗工法により設けられた後、放射線照射により硬化されている接合層を有するウェーハであって、前記硬化された接合層は、アルカリ溶液よりなる剥離液によって除去可能であることを特徴とするウェーハ加工用積層体である。
【0023】
請求項5に係る発明は、回路形成されているウェーハ表面に、請求項3または請求項4記載の感放射線性樹脂組成物を前記回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように塗工してなる接合層を形成後、前記ウェーハの接合層面と表面が平滑な透明離型性基材を貼り合せ、透明離型性基材側から放射線照射により前記接合層を硬化させた後、前記透明離型性基材を剥離し、該ウェーハの前記接合層面を、仮支持体上に設けられた、仮支持体/前記第2のシリコーン吸着層B/前記第1のシリコーン吸着層Aよりなる部材の前記第1のシリコーン吸着層A面とを貼り合せてなることを特徴とする請求項3または請求項4記載のウェーハ加工用積層体である。
【0024】
請求項6に係る発明は、請求項3に記載のウェーハ加工用積層体を用いて、前記仮支持体と接合した前記ウェーハの回路非形成面を研削後、薄型化したウェーハに、必要に応じて、様々な加工を施した後、前記研削済み積層体の研削加工面にダイシングテープを貼り付けた後、該ウェーハをダイシングテープごと、前記第1のシリコーン吸着層A面と前記接合層面間で剥離し、前記薄型化したウェーハをダイシングし個片化し、その後個片化チップの接合層を、粘着テープを用いて、前記接合層を回路形成されているウェーハ表面から剥離する薄型ウェーハ個片化の製造方法である。
【0025】
請求項7に係る発明は、請求項4に記載のウェーハ加工用積層体を用いて、前記仮支持体と接合した前記ウェーハの回路非形成面を研削後、薄型化したウェーハに、必要に応じて、様々な加工を施した後、前記研削済み積層体の研削加工面にダイシングテープを貼り付けた後、該ウェーハをダイシングテープごと、前記第1のシリコーン吸着層A面と前記接合層面間で剥離し、下記(1)または(2)の工程によりダイシングすることを特徴とする薄型ウェーハ個片化の製造方法である。
(1)アルカリ溶液よりなる剥離液によって、前記接合層を回路形成されているウェーハ表面から除去した後に、前記薄型化したウェーハをダイシングし個片化する工程
(2)前記接合層を有する薄型化したウェーハをダイシングし個片化した後に、アルカリ溶液よりなる剥離液によって、前記接合層を回路形成されている個片化ウェーハ表面から除去する工程
【発明の効果】
【0026】
本発明の基材レスシリコーン吸着シートによれば、より簡便な作業性で、薄型ウェーハ研削時にウェーハの反り等が発生することなく、30μm以下の薄型ウェーハの研削が可能であり、さらに、200℃以上の加熱処理又は発熱を伴う処理を施す工程を行った後でも薄型化された半導体ウェーハが仮支持体からスムーズに剥離でき、かつ前記接合層が前記ウェーハから、残渣なく、簡単に剥離または除去可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明のウェーハ加工用積層体の層構成の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、半導体関連部材の製造分野、電気・電子部品の製造分野、表示デバイスの製造分野などにおいて使用される基材レスシリコーン吸着シート、該シートを用いたウェーハ加工用積層体および該加工用積層体を用いたウェーハ加工方法に関する。以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0029】
<シリコーン吸着層>
本発明における両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなるシリコーン吸着層は、従来周知のごとく、シリコーン吸着層面と被着体とを貼り合せたものを、貼り合せた面と平行にずらす力(以下剪断力と呼ぶ)は、通常1.0N/cm2以上の高い値であるにもかかわらず、シリコーン吸着層を被着体から剥がす時の力は(以下剥離力と呼ぶ)小さいことが知られている。従って、従来のBGテープ等に使用されているアクリル系粘着剤のように、被着体に対して高い固定化力を有し、光照射等により剥離力を下げる系とは異なる物性を持つものである。
【0030】
前記シリコーン吸着層の被着体に対する高い剪断力は、非常に近接した相対する固体分子間におけるファンデルワールス力に起因する力であるところからきている(「摩擦の科学」裳華房発行、56~65頁や「接着の基礎理論」高分子刊行会発刊、116~120頁)。したがって、本発明の係るシリコーンよりなる吸着層の被着体に対する高い剪断力は、前記シリコーン吸着層及び被着体面が密接に接合している場合に効果を発揮するものである。
【0031】
<基材レスシリコーン吸着シート>
本発明の基材レスシリコーン吸着シートは、第1の離型フィルム/シリコーン組成物から形成された第1のシリコーン吸着層A/シリコーン組成物から形成された第2のシリコーン吸着層B/第2の離型フィルムの構成よりなる基材レスシリコーン吸着シートにおいて、
前記第1および前記第2のシリコーン吸着層は、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなるシリコーン吸着層であって、
前記第1の離型フィルムと前記第1のシリコーン吸着層A間の剥離力が前記第2の離型フィルムと前記第2のシリコーン吸着層B間の剥離力より大きく、その剥離力の差が15mN/25mm以上で、かつ前記第1の離型フィルムと前記第1のシリコーン吸着層A間の剥離力が80mN/25mm以下であり、
前記第1および前記第2の離型フィルムを剥離後の前記第1のシリコーン吸着層Aの剥離力が、評価用としての表面粗さRaが0.08μmのガラス基板に対して、60mN/25mm以下、5mN/25mm以上であり、前記第2のシリコーン吸着層Bの剥離力が、前記ガラス基板に対して、100mN/25mm以上であることを特徴とする基材レスシリコーン吸着シートである。
【0032】
本発明に係るシリコーンの1形態としての、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンとは下記一般式(化1)で表せられる化合物である。
【0033】
【化1】
(式中Rは下記有機基、mは整数を表す)
このビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(R)は異種でも同種でもよいが、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、などのアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した同種または異種の非置換または置換の脂肪族不飽和基を除く1価炭化水素基で好ましくはその少なくとも50モル%がメチル基であるものなどが挙げられるが、このジオルガノポリシロキサンは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0034】
本発明に係るもう1つのシリコーンの形態としての、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとは、上記一般式(化1)中のRの一部がビニル基である化合物である。
【0035】
また、本発明に係るシリコーンの形態としては、剥離剤として特開平10-120992に開示されている、少なくとも両末端に炭素数が4以上のアルケニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンも入るものである。
【0036】
架橋反応に用いる架橋剤は公知のものでよい。架橋剤の例として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するものであるが、実用上からは分子中に2個の≡SiH結合を有するものをその全量の50重量%までとし、残余を分子中に少なくとも3個の≡SiH結合を含むものとすることがよい。また、架橋促進剤を加えてもよい。架橋促進剤としては、例えば、3-メチル-1-ブテン-3-オールが好ましい。
【0037】
架橋反応に用いる白金系触媒としては、塩化第一白金酸、塩化第二白金酸などの塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物あるいは塩化白金酸と各種オレフィンとの鎖塩などがあげられる。架橋反応して得たポリオルガノシロキサン系シリコーン樹脂は、シリコーンゲルのような柔軟性を持ったものとなり、この柔軟性が被着体である剛体基材との吸着を容易にさせる。
【0038】
前記両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなるシリコーン吸着層を用いて、第1の離型フィルム/シリコーン吸着層/第2の離型フィルムの構成よりなる基材レスシリコーン吸着シートを用いて、該シリコーン吸着層を介在させて、2つの割れやすい剛体基板よりなる仮支持体と加工用部材を積層させ、該加工部材の裏面加工後、該加工用部材と該シリコーン吸着層間でスムーズに剥離できるためには、該加工用部材と該シリコーン吸着層間の剥離力が、該仮支持体と該シリコーン吸着層間の剥離力より十分に小さくなければならない。
更に、後述するように、前記積層体を積層するためには、前記第1の離型フィルムと前記シリコーン吸着層間の剥離力と前記第2の離型フィルムと前記シリコーン吸着層間の剥離力も考慮しなければならない。
【0039】
通常、前記シリコーン吸着層を介してのガラス等の剛体と柔軟性のあるフィルム等との剥離の場合と異なり、前記シリコーン吸着層を介しての割れやすいガラス基板よりなる仮支持体と研削された接合層付きウェーハ等の剛体/ガラス等の剛体間同士のスムーズな剥離は難しい。本発明者等は、先ず予備実験として、例えば、表面粗さ(Ra)が0.08μm、厚さ5.0mmのガラス仮支持体に、塗工法により、密着層を設け、該密着層の上に、後述する架橋されたシリコーン吸着層を20μm設けた部材の該シリコーン吸着層面と、表面粗さ(Ra)が0.08μm、厚さ0.5mmのガラス被研削体を貼り合せ、該シリコーン吸着層の剥離力を変えた実験において、該シリコーン吸着層面と該ガラス被研削体間の剥離力が60mN/25mm以下、5mN/25mm以上であれば、剪断力も1N/cm2以上を維持し、該ガラス被研削体の研削工程において該ガラス被研削体が固定された状態で研削が可能であり、かつ研削後の該ガラス被研削体と該シリコーン吸着層間のスムーズな剥離が可能であることを見出した。
【0040】
しかしながら、前記シリコーン吸着層が一層の場合、架橋されてなるシリコーン吸着層自体の表裏の剥離力は、大きく変わるものではない。従来技術により、仮支持体と該シリコーン吸着層間の剥離力を、該加工用部材と該シリコーン吸着層間の剥離力より、若干大きくできたとしても、該加工用部材と該シリコーン吸着層間で剥離しようとする際に、前記仮支持体と前記シリコーン吸着層界面で剥離されてしまう場合があるという問題が生じる。このための解決方法として、仮支持体表面に、該シリコーン吸着層に対しての剥離力向上層を設けることが考えられるが、本発明は作業性の観点から、剥離力向上層を設けることなく、解決することを課題としている。
【0041】
前記仮支持体と前記シリコーン吸着層界面で剥離されることなく、前記接合層付きウェーハの接合層面と前記シリコーン吸着層面間で確実な剥離を実現するために、本発明者等の鋭意検討の結果、前記シリコーン吸着層を第1のシリコーン吸着層Aと第2のシリコーン吸着層Bの2層構造とし、前記第1のシリコーン吸着層の剥離力が、評価用として、表面粗さRaが0.08μmのガラス基板に対して、60mN/25mm以下、5mN/25mm以上であり、前記第2のシリコーン吸着層Bの剥離力が、前記ガラス基板に対して、100mN/25mm以上であれば、前記接合層付きウェーハの接合層面と前記シリコーン吸着層A面間でスムーズな剥離が可能であることを見出した。
言い換えると、前記第2のシリコーン吸着層B面と前記仮支持体の剥離力と、前記第1のシリコーン吸着層A面と前記接合層付きウェーハの接合層面の剥離力の差が40mN/25mm以上あることが必要である。また、前記積層体の取り扱い時に、前記加工部材が前記シリコーン吸着層から脱落しないように、前記第1のシリコーン吸着層Aと前記ガラス基板間の剥離力は5mN/25mm以上であることが好ましい。なお、前記第2のシリコーン吸着層の前記ガラス基板に対しての上限は、特に限定されるものではないが、仮支持体の再利用の観点から、500mN/25mm以下が好ましい。
【0042】
前記第1のシリコーン吸着層Aと第2のシリコーン吸着層Bの剥離力を前記範囲内に収める技術的手段としては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなる前記第1のシリコーン吸着層Aと前記第2のシリコーン吸着層Bの固形分に対して、MQレジン量をそれぞれ調整することにより達成可能である。
【0043】
MQレジンとは、一般式M単位(R3SiO1/2:Rはメチル基、フェニル基などの1価の有機基)と一般式Q単位(SiO4/2)からなる、トルエン等の溶剤に可溶な3次元構造をもつシリコーン系樹脂として特徴付けられる。付加反応型シリコーンに混ぜ合わせて硬化することによって、剥離力を調整することが可能となる。
剥離力調整用MQレジンとしては、前記MQレジンのR3SiO1/2単位/SiO4/2単位のモル比が0.6~1.8であるもの、数平均分子量(Mn)が5,000~300,000であるものが市販されており、好ましく使用される。
【0044】
前記MQレジンの添加量としては、前記第1のシリコーン吸着層Aに関しては、MQレジンを前記第1のシリコーン吸着層Aの固形分中の0~13重量%含有し、前記第2のシリコーン吸着層Bに関しては、MQレジンを前記第2のシリコーン吸着層Bの固形分中の20~30重量%含有することにより、前記第1のシリコーン吸着層Aの剥離力が、表面粗さRaが0.08μmのガラス基板に対して、60mN/25mm以下、5mN/25mm以上であり、前記第2のシリコーン吸着層Bの剥離力が、前記ガラス基板に対して、100mN/25mm以上の要件および、前記第2のシリコーン吸着層Bと接している前記ガラス基板の再利用を考慮する際の500mN/25mm以下の要件も達成することができる。
なお、前記第2のシリコーン吸着層Bにおける前記MQレジンの添加量が前記範囲未満であると、剥離力不足し、一方前記範囲を超えると、シリコーン吸着層が塑性変形しやすくなり、異物混入に起因する気泡が発生しやすくなる。尚、第1のシリコーン吸着層Aおよび第2のシリコーン吸着層Bを構成する、前記ビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサン、架橋剤、触媒、MQレジンは同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
本発明に係るシリコーン組成物の市販品の形状は、無溶剤型、溶剤型、エマルション型があるが、いずれの型も使用できる。なかでも、無溶剤型は、溶剤を使用しないため、安全性、衛生性、大気汚染の面で非常に利点があるが、無溶剤型においても、所望の膜厚を得るための粘度調節として、必要に応じてトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶剤、またはこれらの混合溶剤などが使用される。
【0046】
前述のごとく、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなるシリコーン吸着層の剪断力は高く、通常、1.0N/cm2以上であるが、この剪断力を満たすためには、前記第1のシリコーン吸着層Aと前記第2のシリコーン吸着層Bの総膜厚は、10~100μmのものが好適である。10μm未満であると被着体に対する剪断力が確保できず、100μmを超える場合はコスト的に無駄である。
前記第1のシリコーン吸着層Aと前記第2のシリコーン吸着層Bの総膜厚の範囲における、前記第1のシリコーン吸着層Aと第2のシリコーン吸着層Bの膜厚の比は、前記段落0039記載の剥離力の関係を満たす範囲内で調整することができる。
【0047】
本発明に係るシリコーン組成物の塗工方法としては、3本オフセットグラビアコーターや5本ロールコーターに代表される多段ロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター等が適宜使用される。
【0048】
<第1の離型フィルムと第1のシリコーン吸着層A間の剥離力と、第2の離型フィルムと第2のシリコーン吸着層B間の剥離力の関係>
一方、前記加工用積層体を作製するためには、前記ガラス基板と低剥離力の第1のシリコーン吸着層Aと、前記ガラス基板と高剥離力の第2のシリコーン吸着層Bの関係を満たした上で、第1の離型フィルムと前記第1のシリコーン吸着層A間の剥離力および第2の離型フィルムと前記第2のシリコーン吸着層B間の剥離力の関係を考慮しなければならない。
本発明者等によれば、第1の離型フィルム/第1のシリコーン吸着層A/第2のシリコーン吸着層B/第2の離型フィルムの構成よりなる基材レスシリコーン吸着シートにおいて、該吸着シートから、いずれか一方の離型フィルムのみを安定に剥がすためには、「第1の離型フィルムと第1のシリコーン吸着層A間の剥離力」と「第2の離型フィルムと第2のシリコーン吸着層B間の剥離力」の差が15mN/25mm以上必要である。
【0049】
このことから、本発明者等は、鋭意検討の結果、第1の離型フィルム/シリコーン組成物から形成された第1のシリコーン吸着層A/シリコーン組成物から形成された第2のシリコーン吸着層B/第2の離型フィルムの構成よりなる基材レスシリコーン吸着シートにおいて、
前記第1および前記第2のシリコーン吸着層は、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなるシリコーン吸着層であって、
前記第1および前記第2の離型フィルムを剥離後の前記第1のシリコーン吸着層Aの剥離力が、評価用としての表面粗さRaが0.08μmのガラス基板に対して、60mN/25mm以下、5mN/25mm以上であり、前記第2のシリコーン吸着層Bの剥離力が、前記ガラス基板に対して、100mN/25mm以上であり、
かつ前記、第1の離型フィルムと低剥離力の第1のシリコーン吸着層A間の剥離力が、第2の離型フィルムと高剥離力の第2のシリコーン吸着層B間の剥離力より大きく、その剥離力の差が15mN/25mm以上で、かつ第1の離型フィルムと第1のシリコーン吸着層間の剥離力が80mN/25mm以下であることを特徴とする基材レスシリコーン吸着シートにより、
該基材レスシリコーン吸着シートから、該第2の離型フィルムのみをスムーズに剥離でき、その後、該吸着シートの第2のシリコーン吸着層B面を仮支持体面と貼り合せた後、該第1の離型フィルムのみをスムーズに剥離でき、その後、前記第1のシリコーン吸着層A面を前記接合層付きウェーハの接合層面と貼り合せ、裏面研削後、研削ウェーハ面に、ダイシングテープを貼り、研削ウェーハを、前記第1のシリコーン吸着層面と前記接合層面間でスムーズ剥離することができることを見出した。
【0050】
前記第1の離型フィルムと低剥離力の第1のシリコーン吸着層A間の剥離力が、第2の離型フィルムと高剥離力の第2のシリコーン吸着層B間の剥離力より大きく、その剥離力の差が15mN/25mm以上で、かつ第1の離型フィルムと第1のシリコーン吸着層A間の剥離力が80mN/25mm以下の範囲内に収める技術的手段としては、従来公知の離型フィルムに使用されている基材フィルム、離型剤の選択、および前記第1のシリコーン吸着層と前記第2のシリコーン吸着層の積層方法により達成可能である。
一例をあげれば、ポリエステルフィルムの片面に離型性に優れたフッ素系離型剤層を設け、該離型剤層面上に、剥離力が高い前記第2のシリコーン吸着層Bを塗工して設け、更に、該第2のシリコーン吸着層B上に、剥離力が低い前記第1のシリコーン吸着層Aを塗工して設け、その後、未処理のポリエステルフィルムを貼り合せる方法等があげられるが、これに限定されるものではない。
【0051】
前記第1、2の離型フィルムの基材フィルムとしては、従来公知のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリアラミドフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、フッ素樹脂フィルムが挙げられ、これらの積層フィルムであってもよい。
基材フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、10~100μm程度が好ましく、先に剥離する前記第2の離型フィルムの厚みが、前記第1の離型フィルムの厚みより薄い方が、好ましい。
【0052】
本発明の離型フィルムに離型層を設ける場合の離型剤としては、従来公知の離型剤を使用できるが、特に、フッ素系離型剤から形成された離型層が好ましく、フッ素系離型剤の塗布量は、通常、0.02~2.0g/m2程度であり、また、塗布方法は特に限定されず、公知の塗布方法を採用すればよい。塗布方法の具体例として、グラビアコート法、メイヤーバーコート法、キスコート法などが挙げられる。
【0053】
前記離型フィルムの表面粗さRaは0.2μm以下とすることが好ましい。前記表面粗さが0.2μmより大きくなると、セパレータ表面の凹凸がシリコーン吸着層面に転写し、被着体との十分な剪断力が得られない場合がある。また、前記吸着層を被着体に貼り付ける際に気泡の混入が発生しやすくなる。
【0054】
次に、本発明の基材レスシリコーン吸着シートを用いて、仮支持体/前記第2のシリコーン吸着層B/前記第1のシリコーン吸着層A/回路形成されたウェーハ表面の凸部が覆われるように、塗工法により設けられた前記接合層付きウェーハの構成よりなるウェーハ加工用積層体について説明する。
【0055】
本発明において用いられる、前記接合層付きウェーハの接合層の第1の形態は、前記ウェーハ加工用積層体のウェーハ裏面を研削、必要に応じて高温加工された後に、該接合層付きウェーハの研削面にダイシングテープ等を貼り合わせ、その後、前記接合層付きウェーハの接合層面と前記第1のシリコーン吸着層A間で剥離した後、粘着テープ等により、該接合層を回路形成されたウェーハ表面から剥離が可能な光硬化されている樹脂層をいう。
該接合層としては、前記特許文献4、5に記載されている、非シリコーン熱可塑性樹脂層であってもよいが、耐熱性の観点から、特に、前記特許文献4の段落0040から0046に記載されている光硬化型接着剤が光硬化されたものよりなる、回路形成されたウェーハ表面から剥離可能な接合層を援用することが可能であり、例えば、(1)ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート又はポリエステルアクリレートなどの重合性ビニル基を有するオリゴマー及び/又は(2)アクリルもしくはメタクリルモノマーに光重合開始剤、及び、場合により、添加剤を添加したUV硬化型接着剤が好適に使用される。添加剤としては、増粘剤、可塑剤、分散剤、フィラー、難燃剤及び熱老化防止剤などが挙げられる。特に、数平均分子量が3,000以上である2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの総量が40重量%以上、および2官能(メタ)アクリルモノマーの総量が25重量%以上である接着剤が好適に用いられるが、必要特性(接着力、機能的性質)を示す接着剤であれば、特に限定されることはない。該光硬化型接着剤の具体的処方としては、前記特許文献4の実施例である段落0052の表1、段落0059の表3、段落0061の表4の記載例を本発明に使用することができる。
【0056】
本発明において用いられる、前記接合層付きウェーハの接合層の第2の形態は、前記ウェーハ加工用積層体のウェーハ裏面を研削、必要に応じて高温加工された後に、該接合層付きウェーハの研削面にダイシングテープ等を貼り合わせ、その後、前記接合層付きウェーハの接合層面と前記第1の吸着層A間で剥離した後、該接合層が、回路形成されたウェーハ表面から剥離液によって除去可能な光硬化されている接合層であり、該接合層が、(A)少なくともカルボキシル基を有するラジカル重合性化合物に由来する構成単位を有するアルカリ可溶性を有する共重合体、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、および(C)放射線ラジカル重合開始剤、を含有する感放射線性樹脂組成物よりなる光硬化された接合層であって、かつ該硬化された接合層は、アルカリ溶液よりなる剥離液によって除去可能である接合層である。
【0057】
本発明に使用される第2の形態の前記接合層用感放射線性樹脂組成物としては、プリント基板回路形成分野において、メッキ用やエッチング用ドライフィルムレジストに使用される従来公知のアルカリ現像/アルカリ溶液による硬化レジストの剥離可能な感放射線性樹脂組成物、あるいは、半導体加工分野において、バンプ形成用レジストとして使用される従来公知のアルカリ現像/アルカリ溶液による硬化レジストの剥離可能な感放射線性樹脂組成物の使用が可能である。
【0058】
前記プリント基板回路形成分野において使用される感放射線性樹脂組成物よりなる塗工液としては、例えば、特開昭60-258539号公報、特開2005-309097号公報記載を援用することができる。
【0059】
本発明に使用される第2の形態の前記接合層用感放射線性樹脂組成物として、より好ましい接合層用感放射線性樹脂組成物は、バンプ形成用感放射線性樹脂組成物よりなるレジスト塗工液である。
通常、シリコンウェーハの研削・研磨工程において前記ウェーハ加工用積層体が、200℃以上の高温に長時間さらされる場合は殆ど無い。また、フリップチップ実装の場合、ダイシング工程においても、前記ウェーハ加工用積層体が該高温長時間に晒される場合は殆ど無い。
しかしながら、前述のごとく、3次元の半導体実装の場合、極薄化研削工程後にTSV形成工程や裏面での配線層形成工程が行われるが、この際には200℃以上の高温処理が入り得る。この場合、前記プリント基板用レジストの場合には、光硬化された接合層が、さらに熱架橋反応を起こし、剥離液による剥離が困難になる場合がある。
一方、バンプ形成用光重合型レジストの場合は、通常バンプ形成時の高温処理に対する耐熱性が必要な観点から、光硬化された膜の高温処理後の剥離液による剥離良好性が考慮された設計がなされている。また、該レジスト塗工液は、その目的上、一回の塗工で厚膜形成が可能および半導体回路形成面の密着性が得られるように設計されている。(JSR TECHNICAL REVIEW No.111/2004参照)
したがって、フリップチップ実装の場合のみならず、高温処理を伴う3次元の半導体実装にも使用可能という点で、バンプ形成用感放射線性樹脂組成物よりなるレジスト塗工液を用いることが、より好ましい。塗工液としては、例えば、特開2000-39709号公報記載を援用でき、また、市販塗工液としては、JSR(株)製;THBシリーズ(例えば、THB-151N)等が使用可能である。このようなバンプ形成用感放射線性樹脂組成物としては、特開2000-039709号公報の記載を援用することができる。
【0060】
前記接合層は、前記第1形態の接合層であれ、前記第2形態の接合層であれ、ウェーハ回路面に形成されたバンプ等による表面凹凸段差追従性を満足するために、スプレー塗工、スピン塗工、フロー塗工、スクリーン印刷、インクジェット、ディスペンサ等の従来公知の塗工方法によりウェーハ回路面の凸部が覆われるように形成される。
これにより、表面のバンプの高低差に追従して埋め込まれない場合の、研削時、バンプが存在する部分とバンプが存在しない部分との高低差に起因する圧力差が、ウェーハ裏面に直接影響しウェーハ裏面にディンプルと呼ばれる窪みやクラックが生じ、最終的に半導体ウェーハを破損することが防止される。
【0061】
<半導体ウェーハ及び回路形成面>
回路形成面及び回路非形成面を有するウェーハは、一方の面が回路形成面であり、他方の面が回路非形成面のウェーハである。本発明が適用できるウェーハは、通常、半導体ウェーハである。該半導体ウェーハの例としては、シリコンウェーハのみならず、Geウェーハや化合物半導体(ZnSe,GaAs,GaN,InP,InGaAlP,InGaN,SiC,SiGe等)ウェーハ等挙げられる。該ウェーハの厚さは、特に制限はないが、典型的には600~800μm、より典型的には625~775μmである。
フリップチップ実装等においては、回路形成後のウェーハ回路形成面に、通常、アンダーバンプメタル(UBM)形成をし、はんだや金や銅バンプが形成される。この際、ウェーハ回路形成面は、表面凹凸段差が数十μm、場合により100μmを超える場合がある。
【0062】
<仮支持体>
仮支持体としては、ガラス板、シリコンウェーハ、SUS板、アクリル板等、前記第2のシリコーン吸着層B面と貼り合わされる面が平滑であれば、何ら制約はないが、前述のごとく、3次元の半導体実装のように高温処理が入る場合には、シリコン半導体との熱膨張係数の観点から、シリコンウェーハやガラス板、石英等の基板が好ましい。
【0063】
<ウェーハ加工用積層体の積層方法>
本発明において使用されるシリコーン吸着層の被着体に対する高い剪断力は、前述のように、該シリコーン吸着層と被着体面が密接に接合している場合に効果を発揮する。
本発明の基材レスシリコーン吸着シートを用いて、仮支持体/前記第2のシリコーン吸着層B/前記第1のシリコーン吸着層Aよりなる積層体の該第1のシリコーン吸着層A面と回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように、塗工法により設けられた光硬化接合層面とを密接に接合させた状態で貼り合せたウェーハ加工用積層体の積層方法は、前記第1形態あるいは前記第2形態の接合層付きウェーハの接合層の場合であっても、下記工程(a)~(b)のいずれかの工程を含む。
尚、本発明のシリコーン吸着層は被着体との貼り合わせに際して、空気抜けが良好であるが、下記工程に際して、真空引きをしながら貼り合わせることが、より好ましい。
又、下記(a)工程および(b)工程のいずれも可能であるが、前記ウェーハ加工用積層体の前記第1のシリコーン吸着層A面と前記接合層が回路形成されているウェーハ表面に設けられた未硬化の接合層付きウェーハの該接合層面との安定な剥離性の観点からは、下記(a)工程による積層方法が好ましい。
(a)該ウェーハの未硬化接合層面と表面が平滑な透明離型性基材を貼り合せ、透明離型性基材側から放射線照射により接合層を硬化させた後、該透明離型性基材を剥離し、硬化させた該接合層付きウェーハ面と、本発明の基材レスシリコーン吸着シートを用いて、仮支持体/前記第2のシリコーン吸着層B/前記第1のシリコーン吸着層Aよりなる積層体の該第1のシリコーン吸着層A面とを貼り合わせ積層させる工程
(b)仮支持体が透明である場合であって、本発明の基材レスシリコーン吸着シートを用いて、仮支持
体/前記第2のシリコーン吸着層B/前記第1のシリコーン吸着層Aよりなる積層体の該第1のシリコーン吸着層A面と、前記接合層が回路形成されているウェーハ表面に設けられた未硬化の接合層付きウェーハの該接合層面を貼り合わせた後、前記仮支持体側から放射線照射により該接合層を硬化させる工程
【0064】
前記(a)工程で使用される平滑な透明離型性基材としては、シリコーン処理やフッ素処理されたガラス板、アクリル板、188μmポリエステルフィルム等が使用可能であり、該透明離型性基材の該貼り合わせ面の表面粗さRaは0.2μm以下が好ましい。
【0065】
<仮支持体と接合したウェーハの回路非形成面を研削する工程>
本発明の基材レスシリコーン吸着シートを用いてなる、仮支持体と回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように、塗工法により設けられた光硬化接合層面を有する半導体ウェーハよりなる半導体加工用積層体のウェーハ裏面側を研削して、該ウェーハの厚みを薄くしていく研削加工の方式には、前記第1形態あるいは前記第2形態であれ、特に制限はなく、公知の研削方式が採用される。研削は、通常ウェーハと砥石(ダイヤモンド等)に水をかけて冷却しながら行うことが好ましい。また研削後、ストレスリリーフの観点からドライ研磨やCMP研磨してもよい。
【0066】
<3D実装の場合の裏面研削後のウェーハの回路非形成面に加工を施す工程>
また、3D実装の場合には、裏面研削によって薄型化されたウェーハ加工体の回路非形成面に、従来公知の方法により、TSVや電極等を形成させる工程が行われる。
【0067】
<接合層を有する研削済みウェーハを仮支持体から剥離およびウェーハ個片化する工程>
本工程は、薄型化したウェーハに、必要に応じて、様々な加工を施した後、ダイシングする前にウェーハ加工用積層体の仮支持体から、接合層を有する研削済みウェーハを剥離およびウェーハ個片化する工程である。
【0068】
<前記第1形態の接合層の場合>
前記第1形態の接合層を有するウェーハ加工用積層体を用いて、前記仮支持体と接合した前記ウェーハの回路非形成面を研削後、薄型化したウェーハに、必要に応じて、様々な加工を施した後、前記研削済み積層体の研削加工面にダイシングテープを貼り付けた後、該ウェーハをダイシングテープごと、前記第1のシリコーン吸着層A面と前記接合層面間で剥離し、前記薄型化したウェーハをダイシングし個片化し、その後個片化チップの接合層を、粘着テープを用いて、前記接合層を回路形成されているウェーハ面から剥離する薄型ウェーハ個片化の製造方法である。
【0069】
<前記第2形態の接合層の場合>
前記第2形態の接合層を有するウェーハ加工用積層体を用いて、前記仮支持体と接合した前記ウェーハの回路非形成面を研削後、薄型化したウェーハに、必要に応じて、様々な加工を施した後、前記研削済み積層体の研削加工面にダイシングテープを貼り付けた後、該ウェーハをダイシングテープごと、前記第1のシリコーン吸着層A面と前記接合層面間で剥離し、下記(1)または(2)の工程によりダイシングする薄型ウェーハ個片化の製造方法である。
(1)アルカリ溶液よりなる剥離液によって、前記接合層を回路形成されているウェーハ表面から除去した後に、前記薄型化したウェーハをダイシングし個片化する工程
(2)前記接合層を有する薄型化したウェーハをダイシングし個片化した後に、アルカリ溶液よりなる剥離液によって、前記接合層を回路形成されている個片化ウェーハ表面から除去する工程
【0070】
前記第2形態の接合層の工程で使用される、アルカリ溶液よりなる剥離液のアルカリ成分は、半導体への汚染防止の観点から、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン系やテトラ(置換)アルキルアンモニウムヒドロキシド等が好ましい、また溶液としては、水単独または、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の極性溶媒と水の混合液が好ましく、特開2003-337433号公報、特開2004-93678号公報、特開2004-117889号公報、特開平10-239865を援用することができる。また、バンプ形成用レジストの光硬化層の剥離液として、JSR社製剥離液THB-Sシリーズ(例えば、THB-S1)が使用できる。
【0071】
物性値の測定方法は、下記の通りである。
【0072】
<表面粗さ>
表面平均粗さ(Ra)は、JIS-B0601-1994に基づき、表面粗さ測定器(株式会社小坂研究所製サーフコーダーSE3500)を用いて測定した。測定器の触針の半径は、2.0μm、荷重は0.3mN、カットOFF値は2.5mm、測定長さは12.5mm、送り速度は0.5m/minである。
【0073】
<剥離力の測定方法>
1.第1の離型フィルムと第1のシリコーン吸着層A間および第2の離型フィルムと第2のシリコーン吸着層B間の剥離力
基材レスシリコーン吸着シートを25mm幅にカットして、離型フィルムを180度方向に1,200mm/分の速度で引き剥がした際の剥離力を測定した。
2.評価用ガラス基板と第1のシリコーン吸着層A間および評価用ガラス基板と第2のシリコーン吸着層B間の剥離力
密着層を有するポリエステルフィルム上に、後述するシリコーン吸着層を厚み20μmとなるよう塗布乾燥して設けて評価用吸着シートサンプルを作成し、該評価用吸着シートサンプルを25mm幅にカットして、該シリコーン吸着層表面を表面粗さRaが0.08μm、厚さ0.5mmのガラス基板に貼り合せ、30分間常温放置した後に180度方向に1,200mm/分の速度で引き剥がした際の剥離力を測定した。
【0074】
<剪断力の測定方法および評価>
基材レスシリコーン吸着シートを25mm×25mm角の大きさにカットする。
該基材レスシリコーン吸着シートの第1の離型フィルムを剥がして、第1のシリコーン吸着層B面を表面粗さRaが0.08μm、厚さ5.0mm、幅50mm、長さ50mmのガラス基板1の上の中央部分に置く。該基材レスシリコーン吸着シートの上から、JIS K 0237で規定する2Kgfのロールで、速度3m/minで1往復させて該ガラス基板1と該第1のシリコーン吸着層Bを貼り付ける。
貼り付けた該基材レスシリコーン吸着シートの第2の離型フィルムを剥がして、第2のシリコーン吸着層A面の上に表面粗さRaが0.08μm、厚さ5.0mm、幅50mm、長さ100mmのガラス基板2を、前記ガラス基板1の角を合わせて置く。該ガラス基板2の上から、JIS K 0237で規定する2Kgfのロールで、速度3m/minで1往復させて該ガラス基板2を該第2のシリコーン吸着層A面を貼り付けてガラス基板積層体を作製する。
該ガラス基板積層体の前記ガラス基板1の前記シリコーン吸着層Bを貼り付けていない面に、固定用の両面接着テープを貼り付けて、動かないように固定されている測定台の上に該両面接着テープ面が接するように該ガラス基板積層体を置く。該ガラス基板積層体の前記ガラス基板2の上から、JIS K 0237で規定する2Kgfのロールで、速度3m/minで1往復させて、該ガラス基板積層体を測定台に固定する。
該ガラス基板積層体の該ガラス基板2の、該ガラス基板1と重なっていない端部に棒テンションゲージを接着テープで固定し、該棒テンションゲージを300mm/minの速度で水平方向に引っ張り最大値を読み取る。
読み取った値を1平方センチメートル当りの値に換算し、次の基準に従って評価した。
◎:5N/cm2 以上
○:1N/cm2 以上、5N/cm2 未満
×:1N/cm2 未満
【実施例】
【0075】
以下本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。各実施例中「部」は特に断らない限り、「重量部」を示すものである。
【0076】
<シリコーン吸着層Aおよびシリコーン吸着層B塗工液の準備>
下記表1に、シリコーン吸着層Aの塗工液A-1、A-2および、シリコーン吸着層Bの塗工液B-1の処方を示す
【0077】
【0078】
<離型フィルムの準備>
第1の離型フィルム1;ポリエチレンテレフタレートフィルム(50μm)
第1の離型フィルム2;ポリメチルペンテンフィルム(50μm)
第2の離型フィルム1;ポリエチレンテレフタレートフィルム(25μm)の片面に、フルオロシリコーンと白金触媒を含有する塗工液を、23℃50%RHの環境下でグラビアコーターにて塗工した後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、厚み0.2μmの離型層を形成して第2の離型フィルム1を作製した。
【0079】
<基材レスシリコーン吸着シートの作製>
<実施例1>
前記第2の離型フィルム1の離型層面に、前記シリコーン吸着層Bの塗工液B-1を23℃50%RHの環境下でダイコーターにて塗工して設けた後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、乾燥膜厚20μmのシリコーン吸着層Bを形成した。ついで、該シリコーン吸着層Bの表面に、前記シリコーン吸着層Aの塗工液A-2を23℃50%RHの環境下でダイコーターにて塗工して設けた後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、乾燥膜厚20μmのシリコーン吸着層Aを形成した。さらに、該シリコーン吸着層Aの表面に、前記第1の離型フィルム1を貼り合わせて、23℃50%RHの環境下で96時間静置させて、基材レスシリコーン吸着シートを作製した。
【0080】
<実施例2>
前記第1の離型フィルム2の片面に、前記シリコーン吸着層Aの塗工液A-1を23℃50%RHの環境下でダイコーターにて塗工して設けた後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、乾燥膜厚20μmのシリコーン吸着層Aを形成した。次いで、該シリコーン吸着層Aの表面に、前記シリコーン吸着層Bの塗工液B-1を23℃50%RHの環境下でダイコーターにて塗工して設けた後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、乾燥膜厚20μmのシリコーン吸着層Bを形成した。さらに、該シリコーン吸着層Bの表面に、前記第2の離型フィルム1の離型層面を貼り合わせて、23℃50%RHの環境下で96時間静置させて、基材レスシリコーン吸着シートを作製した。
【0081】
<実施例3>
実施例1において、前記シリコーン吸着層Bの乾燥膜厚を10μmとした以外は、実施例1と同様に基材レスシリコーン吸着シートを作製した。
【0082】
<実施例4>
実施例2において、前記シリコーン吸着層Aの塗工液A-1に代えて、前記シリコーン吸着層Aの塗工液A-2を使用して、基材レスシリコーン吸着シートを作製した。
【0083】
<実施例5>
実施例1において、前記シリコーン吸着層Aの塗工液A-2に代えて、前記シリコーン吸着層A塗工液A-1を使用して、基材レスシリコーン吸着シートを作製した。
【0084】
<参考例1>
前記第1の離型フィルム1の片面に、前記シリコーン吸着層Aの塗工液A-2を23℃50%RHの環境下でダイコーターにて塗工して設けた後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、乾燥膜厚20μmのシリコーン吸着層Aを形成した。ついで、該シリコーン吸着層Aの表面に、前記シリコーン吸着層Bの塗工液B-1を23℃50%RHの環境下でダイコーターにて塗工して設けた後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、乾燥膜厚20μmのシリコーン吸着層Bを形成した。さらに、該シリコーン吸着層Bの表面に、前記第2の離型フィルム1の離型層面を貼り合わせて、基材レスシリコーン吸着シートを作製した。
【0085】
<基材レスシリコーン吸着シートの評価1>
実施例1~5および参考例1の基材レスシリコーン吸着シートの各物性評価を表2に示す。
尚、参考例1の基材レスシリコーン吸着シートは、第1の離型フィルム/吸着層Aの剥離力が600
mN/25mmで、且つシリコーン吸着層Aの一部が第1の離型フィルム上に残存し、本発明には使用出来なかった。
【0086】
【0087】
<基材レスシリコーン吸着シートの評価2>
実施例1~5の基材レスシリコーン吸着シートを用いて、第2の離型フィルムを剥離後、シリコーン吸着層B面を、表面粗さRaが0.08μm、厚さ5.0mmのガラス仮支持体に貼り合せ、次に、第1の離型フィルムを剥離し、シリコーン吸着層A面を表面粗さRaが0.08μm、厚さ0.5mmのガラス被研削体と、真空引きをしながら貼り合せ、該ガラス被研削体の裏面を、50μmになるまで研削後、該裏面にダイシングテープを貼付け、ダイシングテープごと研削後のガラスを仮支持体から剥離したが、該ガラス被研削体の研削工程において該ガラス被研削体が固定された状態で研削が可能であり、かつ研削後の該ガラス被研削体と該シリコーン吸着層A間のスムーズな剥離が可能であった。
【0088】
次に、本発明の基材レスシリコーン吸着シートを用いたウェーハ加工用積層体と該ウェーハ加工用積層体を用いたウェーハ加工方法について実施例によってさらに具体的に説明する。
【0089】
<第1形態の接合層用塗工液1の準備>
第1形態の接合層用塗工液1として、下記塗工液を準備した。
ウレタンアクリレート
(日本合成化学工業(株)製商品名;UV7000B) :28.6重量部
ウレタンアクリレート
(日本合成化学工業(株)製商品名;UV6100B) :28.6重量部
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート :38.0重量部
光重合開始剤
(IGM Resins B.V.製商品名;Omnirad369): 4.8重量部
合計100.0重量部
【0090】
<第2形態の接合層塗工液2の準備>
前記(A)少なくともカルボキシル基を有するラジカル重合性化合物に由来する構成単位を有するアルカリ可溶性を有する共重合体、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、および(C)放射線ラジカル重合開始剤、を含有する感放射線性樹脂組成物塗工液として、JSR(株)製商品名THB-151N(固形分濃度;51.9%、粘度;3,923mPa)を接合層用塗工液2として準備した。
【0091】
<評価用ウェーハの作製>
直径8インチのSiウェーハ上に、突起電極(Cu)をサイズφ80μm、高さ50μm、ピッチ200μmに設けた表面段差を有する評価用ウェーハを作製した。
【0092】
<評価用ウェーハ上への光硬化接合層の作製>
<第1の形態の接合層付きウェーハの作製>
前記接合層用塗工液1を、スプレーコーターにより、評価用ウェーハの突起電極が形成されている面の凸部が覆われるように乾燥膜厚が65μmになるように塗工した。その後、厚み188μmで片面にシリコーン離型層が設けられた透明離型層付きポリエステルフィルム(表面粗さRa:0.05μm、Ry:0.12μm)と真空引きをしながら貼り合わせ、該透明離型層付きポリエステルフィルム側から高圧水銀灯により、1,500mj/cm2の紫外線エネルギーで該接合層を硬化させた後、該透明離型層付きポリエステルフィルムを剥離し、硬化接合層付きウェーハを作製した。
【0093】
<第2の形態の接合層付きウェーハの作製>
前記接合層用塗工液2を、スプレーコーターにより、評価用ウェーハの突起電極が形成されている面の凸部が覆われるように乾燥膜厚が65μmになるように塗工した。その後、厚み188μmで片面にシリコーン離型層が設けられた透明離型層付きポリエステルフィルム(表面粗さRa:0.05μm、Ry:0.12μm)と真空引きをしながら貼り合わせ、該透明離型層付きポリエステルフィルム側から高圧水銀灯により 、1,000mj/cm2の紫外線エネルギーで該接合層を硬化させた後、該透明離型層付きポリエステルフィルムを剥離し、硬化接合層付きウェーハを作製した。
【0094】
<実施例6>
<基材レスシリコーン吸着シートを介在させた仮支持体/シリコーン吸着層B/シリコーン吸着層A/第2の形態の接合層付きウェーハの構成よりなるウェーハ加工用積層体、および該積層体を用いたウェーハ加工方法>
実施例5の基材レスシリコーン吸着シートの第2の離型フィルムを剥離し、第2のシリコーン吸着層B面を、仮支持体として平滑な厚さ5mmのガラス板(表面粗さRa:0.0032μm、Ry:0.014μm)に貼付けた。該貼付け後、第1の離型フィルムを剥離し、仮支持体/シリコーン吸着層B/シリコーン吸着層Aよりなる該シリコーン吸着層A面を、前記第2の形態の接合層付きウェーハの該接合層面と、真空引きをしながら貼り合せ第2の形態の接合層付きウェーハ加工用積層体を作製した。
【0095】
該ウェーハ加工用積層体のウェーハ裏面を、ポリッシャDGP8761HC(DISCO社製)を用いて、#320と#2,000の砥石により研削を行った後、ストレスリリーフのためのドライポリッシングを行い、ウェーハ厚み30μmの研削・研磨後、ダイシングテープを貼付け、該第2の形態の接合層付きウェーハをダイシングテープごと該接合層面と該第1のシリコーン吸着層A間でスムーズな剥離が可能で、作業中ウェーハの反りや欠け等は認められなかった。次に、JSR社製剥離液THB-S1を用いて、該接合層を残渣なく除去できた。その後ダイシングにより個片化チップを作製した。
【0096】
<実施例7>
<基材レス基材レスシリコーン吸着シートを介在させた仮支持体/シリコーン吸着層B/シリコーン吸着層A/第1の形態の接合層付きウェーハの構成よりなるウェーハ加工用積層体、および該積層体を用いたウェーハ加工方法>
第1の形態の接合層付きウェーハ加工用積層体の作製方法に関しては、実施例5の第2の形態の接合層付きウェーハを、第1の形態の接合層付きウェーハに代えた以外は同様である。
また、該第1の形態の接合層付きウェーハ加工用積層体のウェーハ裏面をポリッシャDGP8761HC(DISCO社製)を用いて、#320と#2,000の砥石により研削を行った後、ストレスリリーフのためのドライポリッシングを行い、ウェーハ厚み25μmの研削・研磨後、ダイシングテープを貼付け、該第1の形態の接合層付きウェーハをダイシングテープごと該接合層面と該第1のシリコーン吸着層A間でスムーズな剥離が可能で、作業中ウェーハの反りや欠け等は認められなかった。その後、ダイシングにより個片化チップを作製し、該チップ接合層面に粘着テープ(Scotch粘着テープ#3305、3M社製)を貼り付け、180°の方向に該粘着テープを剥離することにより、チップを損傷させることなく該接合層を除去することができた。
【符号の説明】
【0097】
1:基材レスシリコーン吸着フィルム
1-1:シリコーン吸着層B
1-2:シリコーン吸着層A
2:接合層
3:半導体ウェーハ
4:回路電極
5:仮支持体
6:ウェーハ加工用積層体