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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】描画装置および描画方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
G03F7/20 505
G03F7/20 521
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020214782
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100674
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】田中 尚武
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-233638(JP,A)
【文献】特開2006-309021(JP,A)
【文献】特開2018-163261(JP,A)
【文献】国際公開第2007/000921(WO,A1)
【文献】特開2002-344793(JP,A)
【文献】特開2014-212375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射してパターンの描画を行う描画装置であって、
基板を保持する基板保持部が設けられたステージと、
前記基板に変調された光を照射する描画ヘッドと、
前記基板の上面に平行な主走査方向に、前記ステージを前記描画ヘッドに対して相対的に移動する主走査機構と、
前記ステージ上に設けられて前記主走査方向において前記基板保持部に隣接する目盛部と、
前記描画ヘッドから前記目盛部に照射された所定のキャリブレーションパターンを撮像する撮像部と、
前記撮像部により取得された前記目盛部および前記キャリブレーションパターンを含む検査画像に基づいて、前記目盛部上における前記描画ヘッドからの光の照射位置である測定位置を求める位置検出部と、
前記位置検出部により求められた前記測定位置に基づいて、前記描画ヘッドからの光の前記基板上における照射位置の補正に用いられる補正情報を求める補正情報演算部と、
描画データおよび前記補正情報に基づいて前記描画ヘッドおよび前記主走査機構を制御することにより、前記描画ヘッドに対して前記基板を前記主走査方向に相対移動させつつ前記描画ヘッドに前記基板に対する描画を実行させる描画制御部と、
を備え、
前記撮像部による前記キャリブレーションパターンの撮像が、前記主走査機構による前記ステージの前記主走査方向への相対移動中に行われることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の描画装置であって、
前記撮像部による前記検査画像の撮像時における前記ステージの前記主走査方向への移動と、前記基板に対する描画時における前記ステージの前記主走査方向への移動とが、連続して行われることを特徴とする描画装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記撮像部は、露出時間が2マイクロ秒以下のカメラを備えることを特徴とする描画装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記描画ヘッドは、互いに異なる波長の光を出射する複数の光源を備え、
前記基板に対する描画時に、前記複数の光源のうち2以上の光源が使用され、
前記目盛部への前記キャリブレーションパターンの照射時に、前記複数の光源のうち1つの光源のみが使用されることを特徴とする描画装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記撮像部は、前記基板に対する描画時に前記描画ヘッドから出射される光の強度に合わせて撮像パラメータが設定されたカメラを備えることを特徴とする描画装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記主走査機構を制御することにより、前記ステージの前記主走査方向における移動速度を、前記基板に対する描画時における第1速度と、前記撮像部による前記検査画像の撮像時における第2速度との間で切り替える速度切替部をさらに備え、
前記第2速度は前記第1速度よりも高速であることを特徴とする描画装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記撮像部による前記検査画像の撮像が、前記描画ヘッドによる1枚の基板に対する描画の開始直前および終了直後のうち少なくとも一方において行われることを特徴とする描画装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記基板の前記上面に平行かつ前記主走査方向に垂直な副走査方向に、前記ステージを前記描画ヘッドに対して相対的に移動する副走査機構をさらに備え、
前記基板に対する描画時に、前記描画ヘッドから前記基板に光を照射しつつ前記基板が前記主走査方向の一方側へと移動された後、前記基板が前記副走査方向へと移動され、さらに、前記描画ヘッドから前記基板に光を照射しつつ前記基板が前記主走査方向の他方側へと移動され、
前記主走査方向の前記一方側および前記他方側へのそれぞれの前記基板の移動中に、前記撮像部による前記検査画像の撮像が行われることを特徴とする描画装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記目盛部は、前記ステージの上面に配置された透光性目盛部材であり、
前記撮像部は、前記透光性目盛部材の下方にて前記ステージに取り付けられるカメラを備え、
前記カメラは、前記透光性目盛部材を透過した前記キャリブレーションパターンを撮像することを特徴とする描画装置。
【請求項10】
基板に光を照射してパターンの描画を行う描画方法であって、
a)基板を保持する基板保持部と、前記基板の上面に平行な主走査方向において前記基板保持部に隣接する目盛部とが設けられたステージを、描画ヘッドに対して前記主走査方向に相対移動しつつ、前記描画ヘッドから前記目盛部に照射された所定のキャリブレーションパターンを撮像する工程と、
b)前記a)工程において取得された前記目盛部および前記キャリブレーションパターンを含む検査画像に基づいて、前記目盛部上における前記描画ヘッドからの光の照射位置である測定位置を求める工程と、
c)前記b)工程において求められた前記測定位置に基づいて、前記描画ヘッドからの光の前記基板上における照射位置の補正に用いられる補正情報を求める工程と、
d)前記描画ヘッドに対して前記主走査方向に相対移動する前記基板に、描画データおよび前記補正情報に基づいて前記描画ヘッドから変調された光を照射して前記基板に対する描画を行う工程と、
を備えることを特徴とする描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に光を照射してパターンの描画を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板や半導体基板等(以下、「基板」という。)に対するパターンの描画において、基板上に形成された感光材料に変調された光を照射し、当該光の照射領域を走査することによりパターンを直接的に描画する描画装置が利用されている。
【0003】
このような描画装置では、描画開始からの時間経過に伴う描画ヘッドの温度上昇や装置周辺の温度変化等により、描画ヘッドからの光の基板上における照射位置が変動し、基板上に描画されるパターンの位置ずれが生じることがある。そこで、特許文献1では、温度変化による上記照射位置の変動データを予め取得しておき、測定された温度に合わせて当該照射位置を補正するキャリブレーション方法が提案されている。また、特許文献1のように照射位置の変動を温度から間接的に求める場合と異なり、描画ヘッドからの光をカメラで観察して照射位置の変動を直接的に求めるキャリブレーション方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-197136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、描画ヘッドからの光をカメラで観察して照射位置の変動を直接的に求める場合、まず、基板に対する描画を停止し、描画ヘッドを基板に対して相対的に移動して、カメラの直上にて停止させる。続いて、描画ヘッド内の空間光変調器(例えば、DMD等)の制御ソフトウェアを描画用からキャリブレーション用に切り替え、空間光変調器から照射する光のパターンをキャリブレーションパターンへと変更する。その後、カメラにより当該キャリブレーションパターンを撮像し、撮像結果から照射位置のずれを求めて当該照射位置の補正が行われる。このため、キャリブレーションを1回行う毎に比較的長い時間が必要となる。また、キャリブレーション後に基板に対する描画を行うためには、上述の動作と逆の動作が必要となるため、描画装置におけるタクトタイムが増大するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、タクトタイム増大を抑制しつつ描画ヘッドのキャリブレーションを行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、基板に光を照射してパターンの描画を行う描画装置であって、基板を保持する基板保持部が設けられたステージと、前記基板に変調された光を照射する描画ヘッドと、前記基板の上面に平行な主走査方向に、前記ステージを前記描画ヘッドに対して相対的に移動する主走査機構と、前記ステージ上に設けられて前記主走査方向において前記基板保持部に隣接する目盛部と、前記描画ヘッドから前記目盛部に照射された所定のキャリブレーションパターンを撮像する撮像部と、前記撮像部により取得された前記目盛部および前記キャリブレーションパターンを含む検査画像に基づいて、前記目盛部上における前記描画ヘッドからの光の照射位置である測定位置を求める位置検出部と、前記位置検出部により求められた前記測定位置に基づいて、前記描画ヘッドからの光の前記基板上における照射位置の補正に用いられる補正情報を求める補正情報演算部と、描画データおよび前記補正情報に基づいて前記描画ヘッドおよび前記主走査機構を制御することにより、前記描画ヘッドに対して前記基板を前記主走査方向に相対移動させつつ前記描画ヘッドに前記基板に対する描画を実行させる描画制御部とを備え、前記撮像部による前記キャリブレーションパターンの撮像が、前記主走査機構による前記ステージの前記主走査方向への相対移動中に行われる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の描画装置であって、前記撮像部による前記検査画像の撮像時における前記ステージの前記主走査方向への移動と、前記基板に対する描画時における前記ステージの前記主走査方向への移動とが、連続して行われる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の描画装置であって、前記撮像部は、露出時間が2マイクロ秒以下のカメラを備える。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記描画ヘッドは、互いに異なる波長の光を出射する複数の光源を備え、前記基板に対する描画時に、前記複数の光源のうち2以上の光源が使用され、前記目盛部への前記キャリブレーションパターンの照射時に、前記複数の光源のうち1つの光源のみが使用される。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記撮像部は、前記基板に対する描画時に前記描画ヘッドから出射される光の強度に合わせて撮像パラメータが設定されたカメラを備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記主走査機構を制御することにより、前記ステージの前記主走査方向における移動速度を、前記基板に対する描画時における第1速度と、前記撮像部による前記検査画像の撮像時における第2速度との間で切り替える速度切替部をさらに備え、前記第2速度は前記第1速度よりも高速である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記撮像部による前記検査画像の撮像が、前記描画ヘッドによる1枚の基板に対する描画の開始直前および終了直後のうち少なくとも一方において行われる。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記基板の前記上面に平行かつ前記主走査方向に垂直な副走査方向に、前記ステージを前記描画ヘッドに対して相対的に移動する副走査機構をさらに備え、前記基板に対する描画時に、前記描画ヘッドから前記基板に光を照射しつつ前記基板が前記主走査方向の一方側へと移動された後、前記基板が前記副走査方向へと移動され、さらに、前記描画ヘッドから前記基板に光を照射しつつ前記基板が前記主走査方向の他方側へと移動され、前記主走査方向の前記一方側および前記他方側へのそれぞれの前記基板の移動中に、前記撮像部による前記検査画像の撮像が行われる。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記目盛部は、前記ステージの上面に配置された透光性目盛部材であり、前記撮像部は、前記透光性目盛部材の下方にて前記ステージに取り付けられるカメラを備え、前記カメラは、前記透光性目盛部材を透過した前記キャリブレーションパターンを撮像する。
【0016】
請求項10に記載の発明は、基板に光を照射してパターンの描画を行う描画方法であって、a)基板を保持する基板保持部と、前記基板の上面に平行な主走査方向において前記基板保持部に隣接する目盛部とが設けられたステージを、描画ヘッドに対して前記主走査方向に相対移動しつつ、前記描画ヘッドから前記目盛部に照射された所定のキャリブレーションパターンを撮像する工程と、b)前記a)工程において取得された前記目盛部および前記キャリブレーションパターンを含む検査画像に基づいて、前記目盛部上における前記描画ヘッドからの光の照射位置である測定位置を求める工程と、c)前記b)工程において求められた前記測定位置に基づいて、前記描画ヘッドからの光の前記基板上における照射位置の補正に用いられる補正情報を求める工程と、d)前記描画ヘッドに対して前記主走査方向に相対移動する前記基板に、描画データおよび前記補正情報に基づいて前記描画ヘッドから変調された光を照射して前記基板に対する描画を行う工程とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、タクトタイム増大を抑制しつつ描画ヘッドのキャリブレーションを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一の実施の形態に係る描画装置を示す斜視図である。
図2】キャリブレーション部近傍を拡大して示す平面図である。
図3】キャリブレーション部および描画ヘッドの内部の構成を示す図である。
図4】制御部が備えるコンピュータの構成を示す図である。
図5】制御部の機能を示すブロック図である。
図6】パターン描画の流れを示す図である。
図7A】描画装置の主要な構成を模式的に示す正面図である。
図7B】描画装置の主要な構成を模式的に示す正面図である。
図7C】描画装置の主要な構成を模式的に示す正面図である。
図7D】描画装置の主要な構成を模式的に示す正面図である。
図7E】描画装置の主要な構成を模式的に示す正面図である。
図7F】描画装置の主要な構成を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る描画装置1を示す斜視図である。描画装置1は、空間変調された略ビーム状の光を基板9上の感光材料に照射し、当該光の照射領域を基板9上にて走査することによりパターンの描画を行う直接描画装置である。図1では、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向として矢印にて示している。図1に示す例では、X方向およびY方向は互いに垂直な水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。他の図においても同様である。
【0020】
基板9は、例えば、略矩形平板状のプリント基板である。基板9の(+Z)側の主面(以下、「上面91」とも呼ぶ。)では、感光材料により形成されたレジスト膜が銅層上に設けられる。描画装置1では、基板9の当該レジスト膜に回路パターンが描画(すなわち、形成)される。なお、基板9の種類および形状等は様々に変更されてよい。
【0021】
図1に示すように、描画装置1は、ステージ21と、ステージ移動機構22と、アライメント部3と、描画部4と、キャリブレーション部5と、制御部10とを備える。制御部10は、ステージ移動機構22、アライメント部3、描画部4およびキャリブレーション部5等を制御する。
【0022】
ステージ21は、アライメント部3および描画部4の下方(すなわち、(-Z)側)に配置された略矩形平板状の部材である。ステージ21は、水平状態の基板9を下側から保持する基板保持部25を備える。基板保持部25は、例えば、基板9の下面を吸着して保持するバキュームチャックである。基板保持部25は、バキュームチャック以外の構造(例えば、メカニカルチャック)を有していてもよい。基板保持部25上に載置された基板9の上面91は、Z方向に対して略垂直であり、X方向およびY方向に略平行である。
【0023】
ステージ移動機構22は、ステージ21をアライメント部3および描画部4に対して水平方向(すなわち、基板9の上面91に略平行な方向)に相対的に移動する移動機構である。ステージ移動機構22は、第1移動機構23と、第2移動機構24とを備える。第2移動機構24は、ステージ21をガイドレールに沿ってX方向に直線移動する。第1移動機構23は、ステージ21を第2移動機構24と共にガイドレールに沿ってY方向に直線移動する。第1移動機構23および第2移動機構24の駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。第1移動機構23および第2移動機構24の構造は、様々に変更されてよい。
【0024】
描画装置1では、Z方向に延びる回転軸を中心としてステージ21を回転するステージ回転機構が設けられてもよい。また、ステージ21をZ方向に移動するステージ昇降機構が描画装置1に設けられてもよい。ステージ回転機構として、例えば、サーボモータが利用可能である。ステージ昇降機構として、例えば、リニアサーボモータが利用可能である。ステージ回転機構およびステージ昇降機構の構造は、様々に変更されてよい。
【0025】
アライメント部3は、X方向に配列される複数(図1に示す例では、2つ)のアライメントヘッド31を備える。各アライメントヘッド31は、ステージ21およびステージ移動機構22を跨いで設けられるヘッド支持部30により、ステージ21およびステージ移動機構22の上方にて支持される。2つのアライメントヘッド31のうち、一方のアライメントヘッド31はヘッド支持部30に固定されており、他方のアライメントヘッド31はヘッド支持部30上においてX方向に移動可能である。これにより、2つのアライメントヘッド31間のX方向の距離を変更することができる。なお、アライメント部3のアライメントヘッド31の数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0026】
各アライメントヘッド31は、図示省略のアライメントカメラおよび光学系を備える。当該アライメントカメラは、例えば、2次元の画像を取得するエリアカメラである。各アライメントヘッド31では、図示省略の照明光源から基板9の上面91へと導かれた照明光の反射光が、光学系を介してアライメントカメラへと導かれる。アライメントカメラは、基板9の上面91からの反射光を受光し、略矩形状の撮像領域の画像を取得する。アライメントカメラは、基板9の上面91に予め設けられているアライメントマーク(図示省略)を撮像する。上記照明光源としては、LED(Light Emitting Diode)等の様々な光源が利用可能である。なお、アライメントカメラは、ラインカメラ等、他の種類のカメラであってもよい。
【0027】
描画部4は、X方向に配列される複数(図1に示す例では、5つ)の描画ヘッド41を備える。複数の描画ヘッド41は、略同じ構造を有する。各描画ヘッド41は、変調された(すなわち、空間変調された)光を下方に向けて照射する空間光変調器を備える。各描画ヘッド41は、ステージ21およびステージ移動機構22を跨いで設けられるヘッド支持部40により、ステージ21およびステージ移動機構22の上方にて支持される。ヘッド支持部40は、アライメント部3のヘッド支持部30よりも(+Y)側に配置されている。なお、描画部4の描画ヘッド41の数は1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0028】
描画装置1では、基板9に対するパターン描画は、いわゆるマルチパス方式で行われる。具体的には、描画部4の複数の描画ヘッド41から変調された光を基板9の上面91上に照射しつつ、ステージ移動機構22の第1移動機構23により基板9をY方向に移動して描画ヘッド41の下方を通過させる。これにより、複数の描画ヘッド41からの光の照射領域が基板9上にてY方向に走査され、基板9に対する描画が行われる。続いて、第2移動機構24により、基板9をX方向に所定距離だけステップ移動させる。そして、第1移動機構23による基板9のY方向への移動、および、当該移動と並行した描画ヘッド41から基板9への光の照射が再度行われ、基板9に対する描画が行われる。描画装置1では、Y方向に移動する基板9への光の照射と、X方向への基板9のステップ移動とが交互に行われることにより、基板9に対するパターンの描画が行われる。
【0029】
以下の説明では、Y方向を「主走査方向」とも呼び、X方向を「副走査方向」とも呼ぶ。ステージ移動機構22では、第1移動機構23は、ステージ21を描画ヘッド41に対して主走査方向に相対的に移動する主走査機構である。また、第2移動機構24は、ステージ21を描画ヘッド41に対して副走査方向に相対的に移動する副走査機構である。なお、描画装置1では、基板9を描画ヘッド41に対してY方向に1回のみ相対移動することにより基板9上へのパターンの描画が完了するシングルパス方式(ワンパス方式とも呼ばれる。)により、基板9に対する描画が行われてもよい。この場合、パターンの描画時には、第2移動機構24による基板9の副走査(すなわち、X方向へのステップ移動)は行われない。
【0030】
キャリブレーション部5は、ステージ21上において基板保持部25の(+Y)側に設けられる。キャリブレーション部5は、描画ヘッド41のキャリブレーション(すなわち、描画ヘッド41からの光の照射位置の測定および補正)に用いられる。
【0031】
図2は、描画装置1のキャリブレーション部5近傍を拡大して示す平面図である。図3は、キャリブレーション部5および描画ヘッド41の構成を示す正面図である。図3では、キャリブレーション部5の鉛直上方に描画ヘッド41が位置する状態を示す。図3では、ステージ21の内部の構成、および、1つの描画ヘッド41の内部の構成を図示している。他の描画ヘッド41の構造は、当該1つの描画ヘッド41の構造と略同じである。
【0032】
図3に示すように、描画ヘッド41は、光源部42と、照明光学系43と、空間光変調器44(以下、単に「光変調器44」とも呼ぶ。)と、投影光学系45とを備える。光源部42から出射された光は、照明光学系43により光変調器44へと導かれ、光変調器44にて変調された後、投影光学系45により描画ヘッド41の下方(すなわち、(-Z)方向)へと導かれる。
【0033】
光源部42は、互いに異なる波長の光を出射する複数の光源を備える。図3に示す例では、光源部42は、3つの光源421~423を備える。光源421~423としては、LD(Laser Diode)等の様々な光源が利用可能である。基板9に対するパターンの描画時には、基板9上の感光材料の種類等に合わせて、例えば、光源421~423のうち2つ以上の光源が使用される。なお、光源部42に設けられる光源の数は、1つまたは2つであってもよく、4つ以上であってもよい。光源部42に設けられる光源は、LDには限定されず、様々な種類のものが利用可能である。
【0034】
照明光学系43および投影光学系45はそれぞれ、図示省略の複数のレンズ等の光学素子を備える。光変調器44としては、DMD(Digital Micro Mirror Device)やGLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サニーベール、カリフォルニア)の登録商標)等の様々な光変調器が利用可能である。光変調器44は、上記例には限定されず、様々な種類のものが利用可能である。
【0035】
キャリブレーション部5は、撮像部51と、目盛部52とを備える。目盛部52は、ステージ21上に設けられる略平板状の部材である。目盛部52は、ステージ21の上面に配置され、基板保持部25の(+Y)側に隣接する(すなわち、近接して配置される)。図2に示す例では、目盛部52は、X方向に略平行に延びる略矩形帯状の部材であり、透光性を有する。目盛部52の(+Z)側の主面には、当該主面上におけるX方向の位置を示す多数の目盛が設けられている。換言すれば、目盛部52は、透光性目盛部材であり、例えば、略透明なガラススケールである。目盛部52の当該目盛は、例えば、クロスパターンまたは他の形状のパターンである。なお、目盛部52は、半透明の部材であってもよい。
【0036】
撮像部51は、目盛部52の下方にてステージ21の内部に取り付けられる。撮像部51は、カメラ53と、カメラ移動機構54とを備える。カメラ53は、目盛部52の鉛直下方において、上方を向けて配置される。カメラ53は、例えば、CCD(Charged Coupled Devices)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を撮像素子として有するデジタルカメラである。カメラ53は、好ましくは、露出時間(すなわち、シャッター速度)が2マイクロ秒(μs)以下の高速シャッターカメラである。なお、カメラ53の種類や性能は、様々に変更されてよい。
【0037】
カメラ移動機構54は、ステージ21の内部において、カメラ53をガイドレールに沿ってX方向に直線移動する移動機構である。カメラ移動機構54の駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。カメラ移動機構54の構造は、様々に変更されてよい。
【0038】
描画装置1では、複数の描画ヘッド41がキャリブレーション部5の鉛直上方に位置する状態で、カメラ移動機構54によりカメラ53が移動され、キャリブレーション対象である1つの描画ヘッド41の鉛直下方にカメラ53が配置される。当該1つの描画ヘッド41からは、所定のキャリブレーションパターン(すなわち、描画ヘッド41のキャリブレーションに利用されるパターン)が目盛部52に向けて出射される。キャリブレーションパターンは、例えば、十字型のパターンである。キャリブレーションパターンの形状は、重心位置を算出可能な形状であれば様々に変更されてよい。
【0039】
カメラ53は、目盛部52上における描画ヘッド41からの光の照射領域(すなわち、キャリブレーションパターン)を、目盛部52上に予め形成されている上記目盛と共に、下方から目盛部52を介して撮像する。換言すれば、カメラ53は、目盛部52を透過したキャリブレーションパターンを目盛と共に撮像する。カメラ53により取得された画像(以下、「検査画像」とも呼ぶ。)は、図1に示す制御部10に送られる。制御部10では、検査画像に基づいて上記1つの描画ヘッド41のキャリブレーションが行われる。また、他の描画ヘッド41のキャリブレーションが行われる場合、カメラ移動機構54によりカメラ53がX方向へと移動し、当該他の描画ヘッド41の鉛直下方に位置した後、同様の手順にてキャリブレーションが行われる。
【0040】
図4は、制御部10が備えるコンピュータ100の構成を示す図である。コンピュータ100は、プロセッサ101と、メモリ102と、入出力部103と、バス104とを備える通常のコンピュータである。バス104は、プロセッサ101、メモリ102および入出力部103を接続する信号回路である。メモリ102は、プログラムおよび各種情報を記憶する。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されるプログラム等に従って、メモリ102等を利用しつつ様々な処理(例えば、数値計算や画像処理)を実行する。入出力部103は、操作者からの入力を受け付けるキーボード105およびマウス106、並びに、プロセッサ101からの出力等を表示するディスプレイ107を備える。なお、制御部10は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)や回路基板等であってもよく、これらと1つ以上のコンピュータとの組み合わせであってもよい。
【0041】
図5は、コンピュータ100により実現される制御部10の機能を示すブロック図である。図5では、制御部10以外の構成も併せて示す。制御部10は、記憶部111と、撮像制御部112と、位置検出部113と、補正情報演算部114と、描画制御部115と、速度切替部116とを備える。記憶部111は、主にメモリ102により実現され、基板9に描画される予定のパターンのデータ(すなわち、描画データ)等の各種情報を予め記憶する。撮像制御部112、位置検出部113、補正情報演算部114、描画制御部115および速度切替部116は、主にプロセッサ101により実現される。
【0042】
撮像制御部112は、描画ヘッド41、撮像部51およびステージ移動機構22を制御することにより、記憶部111に予め格納されているキャリブレーションパターンを描画ヘッド41から目盛部52(図2および図3参照)に照射させ、上述のキャリブレーション用の検査画像を撮像部51に取得させる。当該検査画像は、撮像部51から制御部10へと送られて、記憶部111に格納される。
【0043】
位置検出部113は、目盛部52およびキャリブレーションパターンの画像を含む当該検査画像に基づいて、目盛部52上における描画ヘッド41からの光の照射位置(以下、「測定位置」とも呼ぶ。)を求める。上述のように、目盛部52はステージ21上に固定されているため、目盛部52の基板保持部25に対する相対位置も固定されている。したがって、目盛部52の上記多数の目盛上におけるキャリブレーションパターンの照射位置を検出することにより、描画ヘッド41から照射される光の照射位置の基板保持部25に対する相対的な位置が求められる。
【0044】
補正情報演算部114は、位置検出部113により求められた上記測定位置に基づいて、描画ヘッド41からの光の基板9上における照射位置の補正に用いられる補正情報を求める。具体的には、上記測定位置と、描画ヘッド41から照射されるキャリブレーションパターンの目盛部52上における設計上の照射位置(以下、「設計位置」とも呼ぶ。)とが比較され、測定位置と設計位置との間のX方向における距離(すなわち、設計位置からのずれ量)が求められる。補正情報演算部114は、当該ずれ量に基づいて、描画ヘッド41からの光の照射位置が設計位置に一致するように補正するための補正情報を求める。当該補正情報は、例えば、基板9上に描画されるパターンの描画データを上記ずれ量に合わせて補正するための情報である。あるいは、当該補正情報は、基板9に対するパターンの描画の際に、ステージ移動機構22による基板9の移動を補正するための情報であってもよい。
【0045】
描画制御部115は、記憶部111に記憶されている描画データ、および、補正情報演算部114により求められた補正情報に基づいて、描画ヘッド41およびステージ移動機構22を制御することにより、描画ヘッド41に対して基板9を相対的に移動させつつ、描画ヘッド41に基板9への描画を実行させる。
【0046】
速度切替部116は、ステージ移動機構22の第1移動機構23(図1参照)を制御することにより、ステージ21のY方向における移動速度を、基板9に対する描画時における第1速度と、描画時以外(例えば、基板9を搬出入位置から移動する際)における第2速度との間で切り替える。第2速度は、第1速度よりも高速である。これにより、基板9に対する高精度な描画を実現しつつ、タクトタイムを低減することができる。第1速度は、例えば、30mm/sec~500mm/secである。第2速度は、例えば、700mm/sec~800mm/secである。
【0047】
次に、描画装置1によるパターンの描画について、図6および図7A図7Fを参照しつつ説明する。図6は、基板9に対するパターン描画の流れの一例を示す図である。図7A図7Fは、描画装置1の動作を説明するために、描画装置1の主要な構成を模式的に示す正面図である。図7A図7Fでは、ステージ21の内部の構成も実線にて示す。
【0048】
基板9に対する描画の際には、まず、ステージ21が図7Aに示す搬出入位置に位置する状態で、基板9が描画装置1に搬入され、基板保持部25により保持される(ステップS11)。当該搬出入位置は、アライメント部3のアライメントヘッド31および描画部4の描画ヘッド41よりも(-Y)側の位置である。
【0049】
続いて、ステージ移動機構22の第1移動機構23により、ステージ21が(+Y)方向へと移動される。ステージ21は、図7Bに示すように、アライメントヘッド31の下方を通過し、図7Cに示す待機位置へと移動して停止する。ステージ21が搬出入位置から待機位置へと移動する際のステージ21の速度は、移動開始直後の加速時および停止直前の減速時を除き、上述の第2速度にて一定に維持される。
【0050】
図7Bに示すように、ステージ21がアライメントヘッド31の下方を通過する際には、基板保持部25上の基板9に予め設けられているアライメントマーク(図示省略)が、アライメントヘッド31のアライメントカメラにより撮像される。アライメントマークの撮像時には、アライメントヘッド31の上記照明光源から、パルス状の照明光(すなわち、閃光)がアライメントカメラの撮像領域へと照射される。これにより、第2速度にて移動中の基板9上のアライメントマークを、高速シャッターカメラ等を用いることなく精度良く撮像することができる。
【0051】
アライメントカメラにより取得されたアライメントマークの画像は、制御部10(図1参照)へと送られ、基板保持部25上における基板9の位置が求められる。そして、基板9の当該位置に基づいてアライメント処理が行われる(ステップS12)。アライメント処理では、基板9の位置を所定の設計位置に一致させるために、例えば、ステージ21のX方向およびY方向へのシフト(すなわち、微小距離の移動)や回転、あるいは、基板9上に描画されるパターンの描画データの補正等が行われる。
【0052】
図7Cに示すように、ステージ21が待機位置に位置する状態では、キャリブレーション部5のカメラ53、および、基板保持部25上の基板9は、アライメントヘッド31よりも(+Y)側、かつ、描画ヘッド41よりも(-Y)側に位置している。
【0053】
上述のアライメント処理が終了すると、ステージ21が待機位置から(+Y)方向へと第2速度にて移動され、図7Dに示すように、キャリブレーション部5が描画ヘッド41の下方を通過する。以下、図7Dに示すステージ21の位置をキャリブレーション位置とも呼ぶ。上述の待機位置からキャリブレーション位置への移動する際のステージ21の速度、および、キャリブレーション位置を通過する際のステージ21の速度は、上述の第2速度にて一定に維持される。
【0054】
キャリブレーション部5が描画ヘッド41の下方を通過する際には、キャリブレーション対象である1つの描画ヘッド41の光源部42および光変調器44(図3参照)等が制御部10によって制御されることにより、当該描画ヘッド41から上述のキャリブレーションパターンに対応する光が下方へと出射される。光源部42では、キャリブレーションパターンの照射時には、上述の光源421~423(図3参照)のうち、予め決められている1つの光源のみが使用される。これにより、目盛部52上のキャリブレーションパターンが、単一の波長の光により形成される。
【0055】
キャリブレーション部5のカメラ53は、当該描画ヘッド41の下方を通過しつつ、目盛部52に照射されたキャリブレーションパターンを、目盛部52の目盛と共に撮像して検査画像を取得する(ステップS13)。すなわち、検査画像の取得は、ステージ21のY方向への移動中に行われる。上述のように、カメラ53は露出時間2マイクロ秒以下の高速シャッターカメラであるため、ステージ21が比較的高速な第2速度にて移動している状態であっても、キャリブレーションパターンを精度良く撮像することができる。また、描画装置1では、描画ヘッド41から出射される光の強度等は、基板9に対するパターンの描画に適した状態に設定されている。カメラ53の撮像パラメータ(例えば、シャッター速度やゲイン等)は、当該光の強度等に合わせて予め設定されている。なお、ステップS13では、ステップS12にて使用されたパルス状の照明光を撮像領域に照射する照明光源は、撮像対象であるキャリブレーションパターンが光であるため利用できない。検査画像は、制御部10へと送られて記憶部111(図5参照)に格納される。
【0056】
ステージ21は、検査画像が取得された後も(+Y)方向へ移動を続け、図7Eに示す描画開始位置まで第2速度にて移動する。ステージ21が描画開始位置に位置する状態では、基板9の(+Y)側の端部が、描画ヘッド41の鉛直下方に位置している。なお、後述するように、ステージ21は描画開始位置にて停止されることなく、(+Y)方向へ移動し続ける。
【0057】
描画装置1では、ステージ21のキャリブレーション位置から描画開始位置への移動の間に、目盛部52上における描画ヘッド41からの光の照射位置である測定位置(すなわち、キャリブレーションパターンの測定位置)が、検査画像に基づいて位置検出部113(図5参照)により求められる(ステップS14)。そして、補正情報演算部114により、キャリブレーション対象である上述の1つの描画ヘッド41に関する補正情報が、当該測定位置に基づいて求められる(ステップS15)。
【0058】
ステージ21が上述の描画開始位置に位置すると、速度切替部116によりステージ移動機構22の第1移動機構23が制御され、ステージ21の移動速度が、上述の第2速度から第1速度に切り替えられる(ステップS16)。詳細には、ステージ21が描画開始位置に到達する直前に、第2速度にて移動するステージ21の減速が開始され、ステージ21が描画開始位置に到達した時点では、ステージ21の移動速度は第1速度となっている。
【0059】
そして、描画制御部115により、上述の描画データおよび補正情報に基づいて描画ヘッド41およびステージ移動機構22が制御されることにより、図7Fに示すように、描画ヘッド41の下方において第1速度にてY方向に移動するステージ21上の基板9に、描画ヘッド41から変調された光が照射されてパターンが描画される(ステップS17)。
【0060】
描画装置1では、基板9に対するパターン描画の開始直前に、キャリブレーション部5の撮像部51により検査画像が撮像され、当該検査画像の撮像に連続して、ステージ21のY方向への移動を停止することなく、基板9に対するパターンの描画が行われる。換言すれば、撮像部51による検査画像の撮像時におけるステージ21のY方向への移動と、基板9に対するパターンの描画時におけるステージ21のY方向への移動とは、その間でステージ21を停止することなく連続して行われる。
【0061】
したがって、検査画像の撮像から基板9に対するパターンの描画開始までの時間が短い。そこで、描画装置1では、キャリブレーション用の光変調器44(図3参照)の制御と、パターン描画用の光変調器44の制御とを、1つの制御ソフトウェアとして構築することにより、ステップS15とステップS17との間で制御ソフトウェアの切り替えを不要とし、検査画像の撮像からパターン描画への移行を迅速に行うことを可能としている。また、光変調器44の出力用メモリに、キャリブレーション用の光変調器44の制御データ(すなわち、キャリブレーションパターンの出射用データ)を常在させておくことにより、当該制御データをキャリブレーション開始時に読み出す場合に比べて、検査画像の撮像を迅速に行うことを可能としている。
【0062】
基板9に対するパターンの描画が終了すると、速度切替部116(図5参照)によりステージ移動機構22の第1移動機構23が制御され、ステージ21の移動速度が、上述の第1速度から第2速度に切り替えられて、ステージ21が図7Aに示す搬出入位置へと移動される(ステップS18)。そして、ステージ21上からパターン描画済みの基板9が搬出される(ステップS19)。その後、次の基板9(すなわち、次にパターンが描画される予定の基板9)が描画装置1に搬入され、ステップS11~S19が繰り返される。
【0063】
描画装置1では、アライメントマークの撮像結果に基づくアライメント処理(ステップS12)は、基板9に対するパターンの描画が開始されるよりも前に行われるのであれば、ステップS13~S16と並行して行われてもよい。
【0064】
また、上記例では、ステップS12において、ステージ21が待機位置にて一旦停止するが、必ずしも停止する必要はない。例えば、ステージ21は、搬出入位置(図7A)から描画開始位置(図7E)まで第2速度にて停止することなく連続的に移動し、当該移動の間に、上述のアライメントマークの撮像およびアライメント処理が行われてもよい。この場合、上述のアライメント処理、描画ヘッド41のキャリブレーション、および、基板9に対するパターン描画は、その間でステージ21を停止することなく、連続的に行われる。
【0065】
描画装置1では、ステップS14における測定位置の検出、および、ステップS15における補正情報の算出にある程度の時間がかかり、ステップS14およびステップS15が、ステップS17における基板9に対するパターン描画の開始までに終了していない場合、ステップS14~S15は、ステップS16~S19と並行して行われてもよい。この場合、ステップS15において補正情報演算部114により求められた補正情報は、次の基板9以降に対するパターンの描画時に利用される。
【0066】
描画ヘッド41のキャリブレーション(ステップS13~S15)は、必ずしも、基板9に対するパターン描画(ステップS17)の開始直前に行われる必要はなく、例えば、1枚の基板9に対するパターン描画の終了直後に、ステージ21が搬出入位置へと移動する間に(すなわち、ステップS18とステップS19との間に)行われてもよい。この場合、得られた補正情報は、次の基板9に対するパターンの描画時に利用される。
【0067】
上記例では、1枚の基板9に対するパターン描画毎に1つの描画ヘッド41のキャリブレーションが行われる。したがって、描画部4の5つの描画ヘッド41に対するキャリブレーションは、5枚の基板9に対してパターンが順次描画される際に、順次行われる。あるいは、1枚の基板9に対するパターン描画の開始直前に1つの描画ヘッド41のキャリブレーションが行われ、当該パターン描画の終了直後に他の1つの描画ヘッド41のキャリブレーションが行われてもよい。描画部4の全ての描画ヘッド41に対するキャリブレーションが完了すると、次の基板9に対するパターン描画の際には、例えば、1枚目の基板9に対するパターン描画の際にキャリブレーションが行われた描画ヘッド41に対して、再度キャリブレーションが行われる。あるいは、全ての描画ヘッド41に対するキャリブレーションが完了した後は、所定枚数の基板9に対するパターンの描画が終了するまで、描画ヘッド41のキャリブレーションは行われなくてもよい。
【0068】
上述のように、基板9に対するパターン描画がマルチパス方式で行われる場合、描画部4からの光の基板9上における1往復の主走査(すなわち、ステージ21の(+Y)方向および(-Y)方向への1回ずつの移動)毎に、1つの描画ヘッド41のキャリブレーションが行われてもよい。具体的には、上述のステップS13~S15のように、基板9に対するパターン描画の開始直前に1つの描画ヘッド41に対するキャリブレーションが行われる。そして、基板9が描画部4の下方にてY方向に1往復(すなわち、(+Y)方向および(-Y)方向に)移動した後に、ステージ21がさらに(-Y)方向へと移動し、キャリブレーション部5が描画部4の下方を通過する際に、他の描画ヘッド41に対するキャリブレーション(ステップS13~S15)が行われる。その後、ステージ21が(+Y)方向へと移動し、基板9に対するパターンの描画が続行される。
【0069】
このように、基板9に対するパターン描画の途中において、基板9のY方向への2回の移動の間に(すなわち、(-Y)方向に基板9を移動させつつ行われる描画と、(+Y)方向に基板9を移動させつつ行われる描画との間に)、ステップS13~S15のキャリブレーションが行われることにより、複数の描画ヘッド41に対するキャリブレーションを迅速に行うことができる。なお、上述のように、ステップS14およびステップS15にある程度時間がかかる場合等、上述の基板9のY方向への2回の移動の間に、少なくともステップS13(すなわち、検査画像の撮像)が行われる。
【0070】
以上に説明したように、基板9に光を照射してパターンの描画を行う描画装置1は、ステージ21と、描画ヘッド41と、主走査機構(すなわち、第1移動機構23)と、目盛部52と、撮像部51と、位置検出部113と、補正情報演算部114と、描画制御部115とを備える。ステージ21には、基板9を保持する基板保持部25が設けられる。描画ヘッド41は、基板9に変調された光を照射する。第1移動機構23は、基板9の上面91に平行な主走査方向(すなわち、Y方向)に、ステージ21を描画ヘッド41に対して相対的に移動する。目盛部52は、ステージ21上に設けられ、主走査方向において基板保持部25に隣接する。撮像部51は、描画ヘッド41から目盛部52に照射された所定のキャリブレーションパターンを撮像する。位置検出部113は、撮像部51により取得された目盛部52およびキャリブレーションパターンを含む検査画像に基づいて、目盛部52上における描画ヘッド41からの光の照射位置である測定位置を求める。補正情報演算部114は、位置検出部113により求められた当該測定位置に基づいて、描画ヘッド41からの光の基板9上における照射位置の補正に用いられる補正情報を求める。描画制御部115は、描画データおよび当該補正情報に基づいて描画ヘッド41および第1移動機構23を制御することにより、描画ヘッド41に対して基板9を主走査方向に相対移動させつつ描画ヘッド41に基板9に対する描画を実行させる。撮像部51によるキャリブレーションパターンの撮像は、第1移動機構23によるステージ21の主走査方向への相対移動中に行われる。
【0071】
これにより、ステージ21を描画ヘッド41の下方にて停止してキャリブレーションパターンの撮像を行う場合に比べて、描画装置1におけるタクトタイムの増大を抑制しつつ描画ヘッド41のキャリブレーションを行うことができる。その結果、基板9に対するパターンの描画精度を高い状態で維持しつつ、描画装置1の生産効率を向上することができる。
【0072】
上述のように、撮像部51による検査画像の撮像時におけるステージ21の主走査方向への移動と、基板9に対する描画時におけるステージ21の主走査方向への移動とは、連続して行われることが好ましい。このように、キャリブレーションパターンの撮像と、基板9に対するパターン描画との間において、ステージ21の停止および移動再開を省略することにより、タクトタイムをさらに低減することができる。
【0073】
上述のように、撮像部51は、露出時間が2マイクロ秒以下のカメラ53を備えることが好ましい。これにより、主走査方向に移動中の目盛部52上に照射されたキャリブレーションパターンを精度良く撮像することができる。
【0074】
上述のように、描画ヘッド41は、互いに異なる波長の光を出射する複数の光源421~423を備えることが好ましい。また、好ましくは、基板9に対する描画時には、複数の光源421~423のうち2以上の光源が使用され、目盛部52へのキャリブレーションパターンの照射時には、複数の光源421~423のうち1つの光源のみが使用される。これにより、基板9上の感光材料の種類等に合わせて好適なパターン描画を行うことができる。また、撮像部51のカメラ53の撮像パラメータを、上記1つの光源からの光の波長に合わせて設定することにより、キャリブレーションパターンを精度良く撮像することができる。その結果、描画ヘッド41のキャリブレーションを精度良く行うことができる。
【0075】
上述のように、撮像部51は、基板9に対する描画時に描画ヘッド41から出射される光の強度に合わせて撮像パラメータが設定されたカメラ53を備えることが好ましい。これにより、検査画像の撮像(すなわち、キャリブレーションパターンの撮像)と、基板9に対するパターン描画との間において、描画ヘッド41から出射される光の強度を変更する必要がないため、タクトタイムの増大をさらに抑制しつつ、キャリブレーションを精度良く行うことができる。
【0076】
上述のように、描画装置1は、第1移動機構23を制御することにより、ステージ21の主走査方向における移動速度を、基板9に対する描画時における第1速度と、撮像部51による検査画像の撮像時における第2速度との間で切り替える速度切替部116をさらに備えることが好ましい。なお、第2速度は第1速度よりも高速である。これにより、検査画像の撮像を迅速に行い、タクトタイムをさらに低減することができる。
【0077】
上述のように、撮像部51による検査画像の撮像は、描画ヘッド41による1枚の基板9に対する描画の開始直前および終了直後のうち少なくとも一方において行われることが好ましい。これにより、キャリブレーションのためのステージ21の移動量を低減することができるため、タクトタイムをさらに低減することができる。
【0078】
上述のように、描画装置1は、基板9の上面91に平行かつ主走査方向に垂直な副走査方向に、ステージ21を描画ヘッド41に対して相対的に移動する副走査機構(すなわち、第2移動機構24)をさらに備えることが好ましい。また、好ましくは、基板9に対する描画時に、描画ヘッド41から基板9に光を照射しつつ基板9が主走査方向へと移動された後、基板9が副走査方向へと移動され、さらに、描画ヘッド41から基板9に光を照射しつつ基板9が主走査方向へと移動され、基板9の主走査方向への2回の移動の間に、撮像部51による検査画像の撮像が行われる。これにより、タクトタイムの増大を抑制しつつ、基板9に対するパターンの描画中に検査画像を取得してキャリブレーションを行うことができる。その結果、基板9に対するパターンの描画精度をさらに向上することができる。また、複数の描画ヘッド41に対するキャリブレーションに要する時間を低減することができる。
【0079】
上述のように、好ましくは、目盛部52は、ステージ21の上面に配置された透光性目盛部材である。また、撮像部51は、当該透光性目盛部材の下方にてステージ21に取り付けられるカメラ53を備え、カメラ53は、当該透光性目盛部材を透過したキャリブレーションパターンを撮像することが好ましい。これにより、カメラ53がステージ21の外部に配置される場合に比べて、描画装置1を小型化することができる。
【0080】
上述の描画方法は、基板9を保持する基板保持部25と、基板9の上面に平行な主走査方向(すなわち、Y方向)において基板保持部25に隣接する目盛部52とが設けられたステージ21を、描画ヘッド41に対して主走査方向に相対移動しつつ、描画ヘッド41から目盛部52に照射された所定のキャリブレーションパターンを撮像する工程(ステップS13)と、ステップS13において取得された目盛部52およびキャリブレーションパターンを含む検査画像に基づいて、目盛部52上における描画ヘッド41からの光の照射位置である測定位置を求める工程(ステップS14)と、ステップS14において求められた当該測定位置に基づいて、描画ヘッド41からの光の基板9上における照射位置の補正に用いられる補正情報を求める工程(ステップS15)と、描画ヘッド41に対して主走査方向に相対移動する基板9に、描画データおよび当該補正情報に基づいて描画ヘッド41から変調された光を照射して基板9に対する描画を行う工程(ステップS17)と、を備える。これにより、上記と同様に、タクトタイムの増大を抑制しつつ描画ヘッド41のキャリブレーションを行うことができる。
【0081】
上述の描画装置1および描画方法では、様々な変更が可能である。
【0082】
例えば、上述のように、撮像部51による検査画像の撮像は、必ずしも1枚の基板9に対するパターン描画の開始直前または終了直後に行われる必要はなく、様々なタイミングで行われてよい。
【0083】
検査画像の撮像時におけるステージ21の移動速度は、必ずしも、基板9に対するパターン描画時におけるステージ21の移動速度よりも高速である必要はなく、例えば、略同じであってもよい。
【0084】
検査画像の撮像時におけるステージ21の移動と、基板9に対するパターン描画時におけるステージ21の移動とは、必ずしも連続して行われる必要はなく、これらの移動の間においてステージ21が停止されてもよい。
【0085】
描画ヘッド41の光源部42では、検査画像の撮像時に2つ以上の光源から光が出射されていてもよい。
【0086】
キャリブレーション部5のカメラ53の撮像パラメータは、必ずしも、基板9に対するパターン描画時に描画ヘッド41から出射される光の強度に合わせて設定される必要はない。例えば、描画ヘッド41から出射される光の強度が、パターン描画時用の強度から検査画像の撮像時用の強度に切り替えられる場合、上記撮像パラメータは、検査画像の撮像時用の当該強度に合わせて設定されてもよい。
【0087】
カメラ53の露出時間は、2マイクロ秒よりも長くてもよい。カメラ53は、高速シャッターカメラ以外のカメラであってもよい。
【0088】
描画装置1では、検査画像の撮像時において、描画ヘッド41から出射される光(すなわち、キャリブレーションパターン)が、ステージ21の移動速度と同速度にてステージ21の移動方向と同じ向きに移動するように光変調器44が制御されてもよい。これにより、目盛部52に照射されるキャリブレーションパターンの目盛部52上における位置は、キャリブレーション部5が描画ヘッド41の下方を通過する間、同一の位置に維持される。したがって、比較的露出時間が長いカメラを利用する場合であっても、検査画像を好適に撮像することができる。
【0089】
目盛部52は、必ずしも透光性を有する必要はなく、カメラ53も、必ずしもステージ21に取り付けられる必要はない。例えば、目盛部52は、描画ヘッド41から照射される光を所定の方向に反射する反射板であってもよい。カメラ53は、例えば、ステージ21から離間した位置にて描画装置1のフレーム等に固定され、描画ヘッド41の下方を通過する目盛部52からの反射光を受光することにより、目盛部52上に照射されたキャリブレーションパターンおよび目盛部52上の目盛を含む検査画像を撮像してもよい。
【0090】
描画装置1では、キャリブレーション部5の撮像部51において、複数の描画ヘッド41にそれぞれ対応する複数(すなわち、描画ヘッド41と同数)のカメラ53が、目盛部52の鉛直下方においてX方向に配列され、複数の描画ヘッド41のキャリブレーションが略同時に行われてもよい。
【0091】
ステージ21は、第1移動機構23により描画ヘッド41に対して主走査方向に相対的に移動すればよい。したがって、例えば、ステージ21が固定されており、ステージ21の上方において描画ヘッド41が第1移動機構23により主走査方向に移動されてもよい。同様に、描画ヘッド41が第2移動機構24により副走査方向に移動されてもよい。
【0092】
上述の基板9は、必ずしもプリント基板には限定されない。描画装置1では、例えば、半導体基板、半導体パッケージ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置等のフラットパネル表示装置用のガラス基板、フォトマスク用のガラス基板、太陽電池パネル用の基板等に対するパターンの描画が行われてもよい。
【0093】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0094】
1 描画装置
9 基板
21 ステージ
22 ステージ移動機構
23 第1移動機構
24 第2移動機構
25 基板保持部
41 描画ヘッド
42 光源部
51 撮像部
52 目盛部
53 カメラ
91 (基板の)上面
113 位置検出部
114 補正情報演算部
115 描画制御部
116 速度切替部
421~423 光源
S11~S19 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F