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特許7489917ヘキサヒドロフロフラノール誘導体の調製方法、その中間体、およびその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ヘキサヒドロフロフラノール誘導体の調製方法、その中間体、およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/33 20060101AFI20240517BHJP
   C07H 7/02 20060101ALI20240517BHJP
   C12P 17/04 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C07D307/33 CSP
C07H7/02
C12P17/04 ZNA
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020549549
(86)(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 CN2018097733
(87)【国際公開番号】W WO2019174176
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】201810220506.1
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520079728
【氏名又は名称】江蘇瑞科医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高照波
(72)【発明者】
【氏名】陳建華
(72)【発明者】
【氏名】万志東
(72)【発明者】
【氏名】何大偉
(72)【発明者】
【氏名】周増楽
(72)【発明者】
【氏名】馬曉東
(72)【発明者】
【氏名】向韋
(72)【発明者】
【氏名】林荊▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】梅義将
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】赤澤 高之
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2634180(EP,A1)
【文献】特開2004-107315(JP,A)
【文献】特開2016-210815(JP,A)
【文献】特表2016-509601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
REGISTRY/CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キラルが式の化合物または式B-2の化合物から酵素還元反応によって構築される、(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの中間体Cまたは中間体C2の調製方法であって、
【化1】

式中、Rは、水素または水酸基の保護基であり;
上記酵素は、アルデヒド/ケトンレダクターゼであり、そのアミノ酸配列は、配列番号1に示されるタンパク質であり、上記アルデヒド/ケトンレダクターゼ遺伝子の塩基配列は、配列番号2である、調製方法。
【請求項2】
式Bまたは式B-2の化合物の酵素還元反応によって構築され、さらに水酸基は保護基によって保護される、(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの中間体Cpまたは中間体Cp-2の調製方法であって、
【化2】

式中、Rの定義は請求項1と同じであり、Rは水酸基の保護基であり、酵素は請求項1のものと同じである、調製方法。
【請求項3】
は、C2-11の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、ベンゾイル基、またはベンゼン環上の一置換もしくは多置換ベンゾイル基であり、当該一置換基もしくは多置換基はアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、またはシアノ基である、請求項1または請求項2に記載の調製方法。
【請求項4】
請求項1に記載の調製方法によって中間体Cを調製し、前記中間体Cがさらなる還元および閉環反応によって調製されることを特徴とする(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法。
【化3】

(式中、Rの定義は請求項1と同じである。)
【請求項5】
請求項1に記載の調製方法によって中間体C-2を調製し、前記中間体C-2が閉環反応によって調製されることを特徴とする(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法。
【化4】

(式中、Rの定義は請求項1と同じである。)
【請求項6】
請求項2に記載の調製方法によって中間体Cpを調製し、前記中間体Cpがさらなる還元および閉環反応によって調製されることを特徴とする(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法。
【化5】

(式中、RおよびRの定義は請求項2と同じである。)
【請求項7】
請求項2に記載の調製方法によって中間体Cp-2を調製し、前記中間体Cp-2が閉環反応によって調製されることを特徴とする(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法。
【化6】

(式中、RおよびRの定義は請求項2と同じである。)
【請求項8】
請求項1または2に記載の調製方法によって中間体C-2またはCp-2を調製し、前記中間体C-2またはCp-2がさらなる閉環反応によって調製されることを特徴とする(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法。
【請求項9】
上記式Bの化合物が、式A2の化合物の、以下に示すアシル化反応によって調製されることを特徴とする請求項1または2に記載の調製方法。
【化7】

(式中、Xは、ハロゲンであり、Rは、C2-11の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、ベンゾイル基、またはベンゼン環上の一置換もしくは多置換ベンゾイル基であり、当該一置換基もしくは多置換基はアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、またはシアノ基である。)
【請求項10】
上記式A2の化合物が、式A1の化合物の、以下に示すハロゲン化反応によって調製されることを特徴とする請求項9に記載の調製方法。
【化8】
【請求項11】
ハロゲン化反応、アシル化反応、酵素還元反応、さらなる還元および閉環反応によって調製されることを特徴とする(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法であり、
【化9】

式中、Xは、ハロゲンであり、Rの定義は請求項1と同じであり、酵素の定義は請求項1と同じである、調製方法。
【請求項12】
ハロゲン化反応、アシル化反応、酵素還元反応、保護反応、さらなる還元および閉環反応によって調製されることを特徴とする(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法であり、
【化10】

式中、Xは、ハロゲンであり、Rの定義は請求項1と同じであり、Rの定義は請求項2と同じであり、酵素の定義は請求項1と同じである、調製方法。
【請求項13】
ハロゲン化反応、酵素還元反応、アシル化反応、還元および閉環反応によって調製されることを特徴とする(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法。
【化11】

(式中、Xは、ハロゲンであり、Rの定義は請求項1と同じであり、酵素の定義は請求項1と同じである。)
【請求項14】
上記アルデヒド/ケトンレダクターゼは、遺伝子操作された細菌の全細胞、破砕酵素液、凍結乾燥粉末、または固定化酵素もしくは固定化細胞であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項15】
上記反応系における上記アルデヒド/ケトンレダクターゼである遺伝子操作された細菌の総細胞投入量が10~100g/Lであり、転化温度が25~37℃であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項16】
上記反応は、溶媒の存在下で行われることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項17】
上記溶媒は、水または緩衝液と有機溶媒とからなる混合溶媒であることを特徴とする請求項16に記載の調製方法。
【請求項18】
上記緩衝液は、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、Tri-HCl緩衝液、クエン酸緩衝液またはMOPS緩衝液のうちの1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項17に記載の調製方法。
【請求項19】
上記有機溶媒は、DMSO、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロパノール、DMF、TBME、ジクロロメタンおよび酢酸ビニルのうちの1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項17に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2018年3月16日に中国特許庁に提出された、出願番号201810220506.1、「ヘキサヒドロフロフラノール誘導体の調製方法、その中間体、およびその調製方法」と題する中国特許出願の優先権を主張するものである。その内容の全ては、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
<技術分野>
本発明は、医薬工業における有機合成の分野に関し、特にヘキサヒドロフロフラノール誘導体の調製方法およびそれらの中間体に関する。
【0003】
<背景技術>
下記のZ構造を有する化合物の化学名は、(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールである。
【0004】
【化1】
これは、ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フランの誘導体の1つである一方で、抗HIV薬としてのダルナビルの中間体である。
【0005】
ティボテック・ファーマシューティカルズ株式会社(Tibotec Pharmaceuticals Co., Ltd.)の、出願番号02817639.1(出願日:2002年9月6日)および200580010400.Xの中国特許は、(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法を提供した。原料は、下記式(3)の化合物である。
【0006】
【化2】
式(3)の化合物は式(1)の出発原料から調製された。
【0007】
【化3】
住友化学株式会社の出願番号200380109926.4の中国特許は、上記(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法を提供した。原料は、下記式(VIII)の化合物である。
【0008】
【化4】
住友化学株式会社は、キラル触媒を用いてキラリティを発生させた。しかし、この戦略は商業規模での生産には適用できなかった。
【0009】
ロンザ・リミテッド(Lonza Ltd.)による欧州特許出願EP2634180A1(出願日:2012年1月3日)は、カルボニルレダクターゼによるカルボニル基の水酸基への還元を開示した。この特許は、多数の商業的に入手可能な酵素、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(saccharomyces cerevisiae)由来のYNL331Cを列挙している。また、式Iaに示す化合物が適切な立体配置であると言及した。
【0010】
【化5】
(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールがダルナビルの調製において重要な中間体であることを考慮すると、この重要な中間体の調製のためのより有益な方法を開発しなければならない。この方法は、高い収率および高いde値を有する重要な中間体を得ることができるだけでなく、低コストで穏やかな反応条件を有し、工業化に適している。
【0011】
<発明内容>
本発明の(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法は、出発物質の選択およびキラル構成の構築から始まる。重要な中間体のキラリティを構築するための出発物質および酵素法は、すべての先行技術と比較して新規であり、工業化に適した低コストで穏やかな反応条件を有する。
【0012】
本発明の技術的目的を達成するために、本発明は、以下の技術的スキームを提供する。
【0013】
まず、本発明は、(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの中間体の調製方法を提供する。キラルは、式(B)の化合物または式(b-2)の化合物から酵素還元反応によって構築した。
【0014】
【化6】
ここで、Rは、水素または水酸基の保護基である。
【0015】
酵素は、サッカロマイセス・クドリアヴゼヴィイ(Saccharomyces kudriavzevii)株に由来するアルデヒド/ケトンレダクターゼなどの生物学的酵素である。タンパク質は、そのアミノ酸配列が配列番号1に示されるタンパク質、または配列番号1による1つ以上のアミノ酸残基の置換、欠失もしくは付加後のアルデヒド/ケトン還元酵素活性を有するタンパク質、または配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するアルデヒド/ケトン還元酵素活性と80%を超える相同性を有するタンパク質である。その塩基配列を配列表に配列番号2で示す。アルデヒド/ケトンレダクターゼは、遺伝子操作された細菌の全細胞、酵素破壊液、凍結乾燥粉末、または固定化酵素もしくは固定化細胞に由来し得る。
【0016】
酵素の供給量は50~100g/L、反応温度は25~37℃である。
【0017】
NADP+またはNADPHである補酵素は、酵素還元反応に選択的に添加され得る。
【0018】
グルコースデヒドロゲナーゼは、酵素還元反応に選択的に添加され得る。
【0019】
酵素還元反応は、水または緩衝液と有機溶媒とからなる混合溶媒である溶媒の存在下で起きる。
【0020】
緩衝液は、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、Tri-HCl緩衝液、クエン酸緩衝液またはMOPS緩衝液のうちの1つまたは複数から選択される。
【0021】
有機溶媒は、DMSO、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロパノール、DMF、TBME、ジクロロメタンおよび酢酸ビニルのうちの1つまたは複数から選択される。
【0022】
基質が完全に利用されるまで本発明の酵素還元反応の生物変換処理をモニターするため、Hplc-MsおよびHPLCが用いられる。
【0023】
さらに、(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの中間体の調製方法は、式Bの化合物の酵素還元反応によって構築され、さらに水酸基は保護基によって保護される。
【0024】
【化7】
ここで、Rの定義は上記と同じであり、Rは水酸基の保護基であり、酵素の定義は上記と同じである。
【0025】
上記調製方法において、R基は、C2-11の直鎖もしくは分岐鎖のアシルベンゾイル基、またはベンゼン環上の一置換もしくは多置換ベンゾイル基であることが好ましく、当該一置換基もしくは多置換基はアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、またはシアノ基である。
【0026】
一方、本発明は、中間体化合物Cのさらなる還元および閉環反応によって調製される(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法を提供する。
【0027】
【化8】
ここで、Rの定義は上記と同じである。
【0028】
本発明は、中間体化合物Cpのさらなる還元および閉環反応によって調製され得る(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法を提供する。
【0029】
【化9】
ここで、RとRの定義は上記と同じである。
【0030】
本発明は、化合物の式C-2または式Cp-2の調製した化合物を選択的に分離した後に閉環反応によって調製され得る(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法を提供する。
【0031】
式Bの化合物は、式A2の化合物のアシル化によって調製され、その反応は以下のように示される。
【0032】
【化10】
ここで、Rは、C2-11の直鎖もしくは分岐鎖のアシルベンゾイル基、またはベンゼン環上の一置換もしくは多置換ベンゾイル基であり、当該一置換もしくは多置換基は、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、またはシアノ基である。
【0033】
本発明の化合物A2は、化合物A1のハロゲン化により調製され、その反応は以下のように示される。
【0034】
【化11】
ここで、Xはハロゲンである。
【0035】
本発明は、(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法を開示し、好ましい実施形態は、ハロゲン化反応,アシル化反応,酵素還元反応、さらなる還元および閉環反応による調製である。
【0036】
【化12】
ここで、Xはハロゲンであり、Rおよび酵素の定義は上記と同じである。
【0037】
本発明は、(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法を開示し、別の好ましい実施形態は、ハロゲン化反応、アシル化反応、酵素還元反応、水酸基の保護反応、さらなる還元および閉環反応による調製である。
【0038】
【化13】
ここで、Xはハロゲンであり、Rの定義は請求項1の定義と同じであり、Rの定義は請求項2の定義と同じである。また、酵素の定義は上記と同じである。
【0039】
本発明において、酵素法により構築されたキラル中心を有する化合物を保護して、以下の構造式を有する(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの中間体化合物を提供する。
【0040】
【化14】
ここで、RとRは水素またはヒドロキシル保護基であり、Rはヒドロキシル保護基である。ヒドロキシル保護基は、アルキル、シリル、C2-11のアシル、C4-9の環アルケニル、アリール、アラルキル、アロイル、フェニル、および置換フェニルである。シリルは、テトラメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリルおよびtert-ブチルジメチルシリルである。アルキルはC~Cのアルキルである。芳香族基は、フェニル、フラン、チオフェニル、またはインドール基である。置換フェニル基は、アルキル置換フェニル基、アルコキシアルキル置換フェニル基、ニトロアルキル置換フェニル基、またはハロゲン置換フェニル基である。アルキル置換フェニルは、ベンジル、ジフェニルメチル、およびトリフェニルメチル基であり、アルコキシアルキル基で置換されたフェニルは、p-メトキシベンジルであり、ニトロアルキル基の置換フェニル基はp-ニトロベンジル基であり、ハロゲンで置換されたフェニルはp-クロロフェニル基である。
【0041】
ヒドロキシル保護基は、ベンゾイル、ベンゼン環上の一置換もしくは多置換ベンゾイル、ベンゾイル、tert-ブチル、またはベンジルであることが好ましい。
【0042】
上記還元反応は、別のカルボニル基をヘミケタール生成物に還元する方法に関し、その反応を以下に示す。
【0043】
【化15】
上記の2つの反応は、次のように直接表すことができる。
【0044】
【化16】
はRまたは水素である。RとRの定義は上記と同じである。
【0045】
ヘミケタール生成物は分離することも、または分離せずに次の反応にさらに適用することもできる。例えば、(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの閉環反応による調製は、
【0046】
【化17】
であり、RはRまたは水素である。RとRの定義は上記と同じである。
【0047】
ヘミアセタールへの還元反応に使用される還元剤は、ホウ素還元剤、アルミニウム還元剤、またはリチウムケイ素還元剤であってもよい。例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、リチウムテトラヒドロアルミニウム、Red-Al、水素化アルミニウムリチウム、水酸化ジイソブチルアルミニウム、リチウムジイソプロピルアミド、およびリチウムヘキサメチルジシラジドである。
【0048】
閉環反応のための試薬は、当該分野では一般的な酸または塩基である。
【0049】
本発明の好ましい実施形態は、最初にキラル中心を構築し、次に水酸基を選択的に保護し、次にそれをヘミケタール生成物に還元し、閉環反応を行って、(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールを調製することである。
【0050】
【化18】
はRまたは水素である。RとRの定義は上記と同じである。
【0051】
しかしながら、本発明の実施形態は、最初にヘミケタール生成物に還元することもでき、次いで、キラル中心を構築することができる。選択的に分離した後、閉環反応を行って、(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールを調製することができる。
【0052】
【化19】
はRまたは水素である。RとRの定義は上記と同じである。
【0053】
本発明の上記のアシル化反応では、
【0054】
【化20】
基は、好ましくは、C2-11の直鎖もしくは分岐鎖のアシルベンゾイル基、またはベンゼン環上の一置換もしくは多置換ベンゾイル基である。
【0055】
アシル化試薬は、置換安息香酸化合物またはその塩であり、置換安息香酸化合物の置換基は、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、またはシアノ基などであってもよい。置換は、単置換または多置換であってもよい。
【0056】
アシル化反応は、トリエチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムなどの有機塩基または無機塩基であり得る塩基の付加を含み得る。
【0057】
は、tert-ブチル基などの別の置換基を有する。これは式A3の化合物によって、または式A2の化合物がtert-ブチル酸と反応することによって変換することができ、式A3の化合物は、式A2の化合物によって調製された。
【0058】
【化21】
上記式A2の化合物は、化合物A1のハロゲン化により調製され、その反応式を以下に示す。
【0059】
【化22】
ここで、Xはハロゲンである。
【0060】
本発明において、ハロゲン化反応に用いられる試薬は、ハロゲン化水素酸等である。
【0061】
本発明の(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法は、還元後にハロゲン化反応、酵素還元反応、アシル化反応、閉環反応によって調製することもでき、反応を以下に示す。
【0062】
【化23】
Xは水素であり、Rの定義は上記と同じである。
【0063】
本発明により提供される(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法は、キラリティを構築するために酵素法を採用し、これにより、高い収率および高い光学純度を有する生成物を生成することができる。上述の欧州特許出願のような従来の方法は、カルボニルレダクターゼポリペプチドまたはカルボニルレダクターゼポリペプチドを含む微生物がカルボニル基の水酸基への還元を実現することを開示しているが、本発明で使用される酵素はより重要な利点を有し、これはより高い光学純度およびより好適な反応条件下での生成物の調製に反映される。本発明の(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オールの調製方法は、工業生産に適している。
【0064】
<実施例>
本発明をさらに理解するために、以下は、本発明によって提供される(3R,3aS,6aR)-ヘキサヒドロフロ[2,3-b]フラン-3-オール誘導体の調製方法、中間体および調製方法の詳細な記載である。これらの実施形態の説明は、本発明の特性をさらに特定することのみを意図しており、本発明の範囲または請求項の範囲を本発明に限定することを意図していないことを理解されたい。
【0065】
(実施例1)
【0066】
【化24】
化合物A1、ジクロロメタンを反応瓶に加え、冷却した。臭化物を秤量し、ジクロロメタンで希釈した。希釈した臭化物を滴下ホッパーに移し、内部温度を制御するためにゆっくりと添加した。滴下後、内部反応温度を一定に保つ。水を添加し、温度を制御し、分離する。有機相を別の反応瓶に入れ、水を添加し、液体を抽出分離する。有機相を別の反応瓶に入れ、5%NaHCO水溶液を加えて、液体を抽出分離した。有機相を別の反応瓶に入れ、上層の水相を合わせてジクロロメタンを加え、抽出分離した。廃棄した水相は有機相と組み合わされ、水を添加し、抽出し、分離し、廃棄した水相および下層の有機相は溶媒が排出されなくなるまでロータリーエバポレーター中で濃縮され、収率は90~95%である。
【0067】
(実施例2)
【0068】
【化25】
アセトン、化合物A2(Xは臭素)、安息香酸を反応瓶に加え、撹拌し、冷却した。滴下タンクにトリエチルアミンを添加し、内部温度の制御をゆっくりと開始した。滴下後、室温まで加熱し、反応物を撹拌した。反応後、濾過を行った。濾過後、濾液を真空蒸留のために蒸留瓶に移した。蒸留瓶に固体ペーストが見えるまで温度を50~60℃に制御した。蒸留フラスコに酢酸エチルを供給し、よく撹拌して溶解させ、ボトル内での原料液反応の蒸留をシフトさせ、ボトル内で洗って飽和食塩水と反応させ、静置し、液体、水層を混合させ、酢酸エチル抽出物を加え、静置し、層状にし、水層を捨て、有機層を混合し、無水硫酸ナトリウムを有機層に加えて撹拌し、乾燥させ、吸引フィルターにかけた。濾液を真空蒸留用反応瓶に移し、反応液が固体ペーストになるまで50~60℃で温度制御した。次いで、酢酸エチルの一部を添加し、撹拌して還流させて溶解させた。温度は50~60℃で制御した。n-ヘプタンを添加タンクに添加した。ゆっくりと冷却した後、撹拌を続け、濾過し、目的の固体粗生成物を乾燥させ、収率は70~75%であった。
【0069】
(実施例3)
アルデヒド/ケトンレダクターゼ遺伝子の全細胞調製-遺伝子操作された細菌
組み換えアルデヒド/ケトンレダクターゼが遺伝子操作された細菌の調製方法は、Saccharomyces kudriavzevii由来のアルデヒド/ケトンレダクターゼ遺伝子の配列を人工設計のために選択した。人工的に設計した配列を全遺伝子合成(ジェンスクリプト株式会社(GenScript Co., Ltd.)により委託)により合成し、発現ベクターpET28aのNde IおよびXho I切断部位にクローニングして宿主細菌である大腸菌(E.coli)BL21(DE3)株のコンピテント細胞を形質転換した。ポジティブインバーターを選択し、配列決定によって同定した後、組み換え発現を得た。組み換え型発現ベクターを大腸菌(E.coli)BL21(DE3)株に移入し、組み換え型アルデヒド/ケトンレダクターゼの発現を誘導できる組み換え型アルデヒド/ケトンレダクターゼが遺伝子操作された細菌を得た。
【0070】
組み換え型アルデヒド/ケトンレダクターゼが遺伝子操作された細菌を、カナマイシンを含有するLB培地に接種し、37℃で一晩培養して種培養用培地を得た。種培地に、カナマイシンを含有する培地の体積の1%で接種した。その後、37℃で2~5時間培養し、無菌IPTGで誘導し、IPTGの最終濃度は0.1mMに達した。次に、それを25℃で20時間インキュベートした。最後に、Saccharomyces kudriavzeviiアルデヒド/ケトンレダクターゼ遺伝子の全細胞を高速遠心分離により得た。遺伝子操作された細菌の全細胞を超音波法で破壊し、遺伝子操作された細菌の全細胞の酵素溶液をSaccharomyces kudriavzeviiから得た。アルデヒド/ケトンレダクターゼは、アミノ酸配列が配列番号1であるタンパク質であり、アルドステロンレダクターゼ遺伝子の塩基配列を配列表の「配列番号2」に示す。
【0071】
誘導後、45kDaに明らかなタンパク質バンドが存在し、これは、アルデヒド/ケトンレダクターゼが組み換え細菌において高度に発現されたことを示す。Tris-hcl、NADPH(pH8.0、2mmol/L)、0.1mmol/L基質
【0072】
【化26】
、および適切な酵素を含む0.25mlの反応系でアルデヒド/ケトンレダクターゼの純タンパク質の酵素活性を測定した。340nmにおける吸光度の低下を測定した。酵素活性単位(U)は、上記条件下で1分間当たり1umolのNADPHの酸化を触媒するのに必要な酵素と定義した。
【0073】
結果は、組み換え遺伝子操作されたアルデヒド/ケトンレダクターゼのアルデヒド/ケトン還元酵素活性が欧州特許(EP2634180A1)の配列のそれと比較して20%を超えて増加し、非変異アルデヒド/ケトンレダクターゼ配列のそれと比較して50%を超えて増加したことを示した。
【0074】
本発明の実施形態で使用されるアルデヒド/ケトンレダクターゼの遺伝子操作された細菌は、この方法によって調製される。
【0075】
本発明の実施形態および対照実験において使用されるグルコースデヒドロゲナーゼは、シグマ-アルドリッチから購入した市販の酵素である。
【0076】
ee値のアルゴリズム:
ee(syn)=([R,R]-[S,S])/([R,R]+[S,S])
ee(anti)=([R,S]-[S,R])/([R,S]+[S,R])
de={([R,S]+[S,R])-([R,R]+[S,S])}/{([R,S]+[S,R])+([R,R]+[S,S])}
酵素還元反応:
【0077】
【化27】
工程1:1Lフラスコ中で反応を行い、反応系を300mLに制御し、滅菌リン酸カリウム緩衝液260mLを用いて、フラスコ中のアルデヒド/ケトンレダクターゼが遺伝子操作された細菌の全細胞破砕用酵素液を懸濁した。グルコースデヒドロゲナーゼを入れ、細胞を超音波により50分間破壊した。次いで、25gのグルコース、0.42gのNADP+を添加し、次いで、8gの反応物を秤量し、そしてそれを40mLのDMSOに溶解する。基質を有する脱脂DMSO溶液を振盪ボトルにゆっくり注ぎ、2時間反応させた後、12gのグルコースを溶液に添加した。アルデヒド/ケトンが遺伝子操作された細菌の全細胞容積は75g/Lであり、グルコースデヒドロゲナーゼの投入量は25mg/Lであった。温度は37℃であり、転化反応は回転速度を200rpmに制御した振盪機中で実施し、転化時間は12時間であった。目的生成物の転化率は97.8%であった。
【0078】
工程2:工程1で得られた目的生成物の変換液を精製した。反応系に一定量の酢酸エチルを加え、37℃で15分間抽出した後、3回繰り返し、遠心分離により酢酸エチル層を分取し、分取した酢酸エチル層に5%無水硫酸マグネシウムを添加し、15分間振り混ぜた後、ろ過して硫酸マグネシウムを除去した。次に、脱水した酢酸エチル層を高温減圧下で濃縮したところ、目的生成物は7.41gであり、de値は96.2%、ee(anti)値は99.5%であった。
【0079】
(実施例4)
【0080】
【化28】
固形の化合物B(Rはベンゾイル)(20.00g)を500mlの乾燥させた清潔な四つ口丸瓶に添加し、次いでトルエンを添加し、反応物を撹拌した。窒素保護下で真空置換し、窒素保護下で冷却する。トルエンを窒素保護下で定圧滴下漏斗に添加した。70%赤色-Al溶液(26.50g、26.00ml)を、窒素保護下で定圧滴下漏斗に添加した。反応液を-15~-10℃に冷却したら、赤色-Al溶液を滴下し、温度を調節し、滴下後、温度を保つ。純水と酢酸エチルを1000mlの四つ口丸瓶に順次加える。攪拌状態の1000mlの4つ口丸瓶に硫酸を添加し、それらを冷まして、温かいままにしておく。反応液を硫酸溶液に滴下する。0~10℃で溶液を調整した後、滴下して酢酸エチルを加えて撹拌する。10%重炭酸ナトリウム溶液を清浄な1000ml四つ口丸瓶に添加し、冷却し、撹拌を停止し、反応液を静置して層状にし、上部の有機層を撹拌のために10%重炭酸ナトリウム溶液に移した。下部の水層に酢酸エチルを加えて抽出し、層状にした後、水層を捨てた。水溶液中の10%重炭酸ナトリウム中への二次酢酸エチル層を一緒に混合した。次いで、撹拌し、温度を制御し、層状にした。アルカリ性水層に酢酸エチルを加えて抽出し、撹拌し、温度を制御した。純水の苛性洗浄有機層を洗浄撹拌しながら処理し、温度を制御し、層状にした。酢酸エチルで水層を抽出し続け、層状にし、水層を捨て、有機相を合わせる。硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、吸引濾過し、酢酸エチルを蒸発させ、生成物17g、収率84.33%を得た。
【0081】
(実施例5)
【0082】
【化29】
メタノール(10.00ml)および化合物C(Rはベンゾイル)(1.00g)を順番に反応瓶に加えた。反応液を-15~-5℃に冷却し、水酸化ナトリウム溶液(10.00ml)を滴下した。添加後、混合物を一定温度に保ち、反応が完了するまで撹拌した。次に、10%硫酸溶液(4.00g)を添加した。滴下後、反応を続けて温度を保ち、次に飽和炭酸ナトリウム溶液を加えてpHを調整した。反応液を加熱し、減圧蒸留してメタノールを除去した後、メチルtert-ブチルエーテルを加えて有機層を抽出した後、塩化ナトリウムを加えた。次に、水層をジクロロメタンで抽出した。回収のため水層を分離し、真空蒸留により有機層を還元してジクロロメタンを除去した。0.38gの生成物が得られ、収率は73.77%であった。
【0083】
(実施例6)
【0084】
【化30】
酵素の調製は実施例3と同じである。
【0085】
工程1:5Lフラスコ中で反応を行い、反応系を2Lに制御し、滅菌リン酸カリウム緩衝液1.7Lを用いて、フラスコ中のアルデヒド/ケトンレダクターゼが遺伝子操作された細菌の全細胞を懸濁した。グルコースデヒドロゲナーゼを入れ、細胞を超音波により50分間破壊した。次いで、25gのグルコース、0.42gのNADP+を添加し、次いで、80gの反応物を秤量し、そしてそれを300mLのDMSOに溶解する。基質を有する脱脂DMSO溶液を振盪ボトルにゆっくり注ぎ、2時間反応させた後、12gのグルコースを溶液に添加した。アルデヒド/ケトンが遺伝子操作された細菌の全細胞容積は75g/Lであり、グルコースデヒドロゲナーゼの投入量は25mg/Lであった。温度は37℃であり、転化反応は回転速度を200rpmに制御した振盪機中で実施し、転化時間は12時間であった。目的生成物の転化率は97.8%であった。
【0086】
工程2:式VIIIの中間体化合物を含有する工程1からの生成物の精製。精製工程は実施例3を参照されたい。目的生成物は77.1gであり、de値は95.3%、ee(anti)値は99.6%であった。
【0087】
(実施例7)
【0088】
【化31】
工程1:1Lフラスコ中で反応を行い、反応系を300mLに制御し、脱イオン水250mLを用いて、フラスコ中のアルデヒド/ケトンレダクターゼが遺伝子操作された細菌の全細胞を懸濁した。グルコースデヒドロゲナーゼを入れて、次いで、10mlのグルコース(2.5mol/L)、0.26gのNADP+を添加し、次いで、10gの反応物を秤量し、そしてそれを30mLの酢酸ブチルに溶解した。基質を有する酢酸ブチル溶液を振盪ボトルにゆっくり注ぎ、1時間反応させた後、10mLのグルコース(2.5mol/L)を溶液に添加した。アルデヒド/ケトンが遺伝子操作された細菌の全細胞容積は75g/Lであり、グルコースデヒドロゲナーゼの投入量は25mg/Lであった。温度は37℃であり、転化反応は回転速度を200rpmに制御した振盪機中で実施し、転化時間は12時間であった。目的生成物の転化率は97.8%であった。
【0089】
工程2:工程1で得られた目的生成物の変換液を精製した。反応系に一定量の酢酸エチルを加え、37℃で15分間抽出した後、3回繰り返し、遠心分離により酢酸エチル層を分取し、分取した酢酸エチル層に5%無水硫酸マグネシウムを添加し、15分間振り混ぜた後、ろ過して硫酸マグネシウムを除去した。次に、脱水した酢酸エチル層を高温減圧下で濃縮したところ、目的生成物は9.55gであり、de値は99.1%、ee(anti)値は99.7%であった。
【0090】
1H NMR(600MHz、CDCl) δ 2.269~2.301(m、1H、J=6Hz)、2.367~2.404(m、1H)、2.954~2.993(m、1H、J=6Hz)、3.438~3.466(m、1H)、3.520~3.549(m、1H)、4.227~4.269(m、1H)、4.298~4.326(m、1H)、4.391~4.420(m、1H)。MS(ESI):m/z210.03[M+H]
【0091】
(実施例8)
【0092】
【化32】
工程1:5Lフラスコ中で反応を行い、反応系を2Lに制御し、脱イオン水1.5Lを用いて、フラスコ中のアルデヒド/ケトンレダクターゼが遺伝子操作された細菌の全細胞を懸濁した。グルコースデヒドロゲナーゼを入れて、次いで、10mlのグルコース(2.5mol/L)、3gのNADP+を添加し、次いで、100gの反応物を秤量し、そしてそれを300mLの酢酸ブチルに溶解した。基質を有する酢酸ブチル溶液を振盪ボトルにゆっくり注ぎ、1時間反応させた後、100mLのグルコース(2.5mol/L)を溶液に添加した。アルデヒド/ケトンが遺伝子操作された細菌の全細胞容積は100g/Lであり、グルコースデヒドロゲナーゼの投入量は25mg/Lであった。温度は28℃であり、転化反応は回転速度を200rpmに制御した振盪機中で実施し、転化時間は12時間であった。目的生成物の転化率は97.8%であった。
【0093】
工程2:式VIIIの中間体化合物を含有する工程1からの生成物の精製。精製工程は実施例3を参照されたい。目的生成物は9.42gであり、de値は96.9%、ee(anti)値は99.4%であった。
【0094】
(実施例9)
【0095】
【化33】
工程1:1Lフラスコ中で反応を行い、反応系を300mLに制御し、脱イオン水250mLを用いて、フラスコ中のアルデヒド/ケトンレダクターゼが遺伝子操作された細菌の全細胞を懸濁した。グルコースデヒドロゲナーゼを入れて、次いで、10mlのグルコース(2.5mol/L)、0.26gのNADP+を添加し、次いで、10gの反応物を秤量し、そしてそれを30mLの酢酸ブチルに溶解した。基質を有する酢酸ブチル溶液を振盪ボトルにゆっくり注ぎ、1時間反応させた後、10mLのグルコース(2.5mol/L)を溶液に添加した。アルデヒド/ケトンが遺伝子操作された細菌の全細胞容積は75g/Lであり、グルコースデヒドロゲナーゼの投入量は25mg/Lであった。温度は37℃であり、転化反応は回転速度を200rpmに制御した振盪機中で実施し、転化時間は12時間であった。目的生成物の転化率は97.8%であった。
【0096】
工程2:式VIIIの中間体化合物を含有する工程1からの生成物の精製。精製工程は実施例3を参照されたい。目的生成物は9.37gであり、de値は97.1%、ee(anti)値は99.5%であった。
【0097】
(実施例10)
【0098】
【化34】
工程1:5Lフラスコ中で反応を行い、反応系を2Lに制御し、脱イオン水1.6Lを用いて、フラスコ中のアルデヒド/ケトンレダクターゼが遺伝子操作された細菌の全細胞を懸濁した。グルコースデヒドロゲナーゼを入れて、次いで、100mlのグルコース(2.5mol/L)、0.25gのNADP+を添加し、次いで、100gの反応物を秤量し、そしてそれを200mLの酢酸ブチルに溶解した。基質を有する酢酸ブチル溶液を振盪ボトルにゆっくり注ぎ、1時間反応させた後、100mLのグルコース(2.5mol/L)を溶液に添加した。アルデヒド/ケトンが遺伝子操作された細菌の全細胞容積は50g/Lであり、グルコースデヒドロゲナーゼの投入量は25mg/Lであった。温度は25℃であり、転化反応は回転速度を200rpmに制御した振盪機中で実施し、転化時間は12時間であった。目的生成物の転化率は97.8%であった。
【0099】
工程2:式VIIIの中間体化合物を含有する工程1からの生成物の精製。精製工程は実施例3を参照されたい。目的生成物は93.1gであり、de値は95.6%、ee(anti)値は99.6%であった。
【0100】
(実施例11:対照実験)
【0101】
【化35】
工程1:1Lフラスコ中で反応を行い、反応系を300mLに制御し、脱イオン水250mLを用いて、フラスコ中のアルデヒド/ケトンレダクターゼが遺伝子操作された細菌の全細胞を懸濁した。操作された細菌の細胞全体で使用されるアルデヒド/ケトンレダクターゼ遺伝子のコード配列は、欧州特許EP2634180(特許EP2634180の配列番号12)に公開されている配列に示されている通りである。配列は、全遺伝子合成(ジェンスクリプト株式会社(GenScript Co., Ltd.)により委託)により合成した。調製工程は実施例3を参照されたい。グルコースデヒドロゲナーゼを入れて、次いで、10mlのグルコース(2.5mol/L)、0.26gのNADP+を添加し、次いで、10gの反応物を秤量し、そしてそれを30mLの酢酸ブチルに溶解した。基質を有する酢酸ブチル溶液を振盪ボトルにゆっくり注ぎ、1時間反応させた後、10mLのグルコース(2.5mol/L)を溶液に添加した。アルデヒド/ケトンが遺伝子操作された細菌の全細胞容積は75g/Lであり、グルコースデヒドロゲナーゼの投入量は25mg/Lであった。温度は37℃であり、転化反応は回転速度を200rpmに制御した振盪機中で実施し、転化時間は12時間であった。
【0102】
工程2:精製工程は実施例3を参照されたい。目的生成物は8.11gであり、de値は85.1%、ee(anti)値は93.3%であった。
【0103】
(実施例12:対照実験)
【0104】
【化36】
工程1:1Lフラスコ中で反応を行い、反応系を300mLに制御し、脱イオン水250mLを用いて、フラスコ中のアルデヒド/ケトンレダクターゼが遺伝子操作された細菌のサッカロマイセス・クドリアヴゼヴィイ(Saccharomyces kudriavzevii)の全細胞を懸濁した。操作された細菌の細胞全体で使用されるアルデヒド/ケトンレダクターゼ遺伝子のコード配列は、配列番号3に公開されている配列に示されている通りである(アルデヒド/ケトンレダクターゼ遺伝子のコード配列は人工的に設計されていない)。配列は、全遺伝子合成(ジェンスクリプト株式会社(GenScript Co., Ltd.)により委託)により合成した。調製工程は実施例3を参照されたい。グルコースデヒドロゲナーゼを入れて、次いで、10mlのグルコース(2.5mol/L)、0.26gのNADP+を添加し、次いで、10gの反応物を秤量し、そしてそれを30mLの酢酸ブチルに溶解した。基質を有する酢酸ブチル溶液を振盪ボトルにゆっくり注ぎ、1時間反応させた後、10mLのグルコース(2.5mol/L)を溶液に添加した。アルデヒド/ケトンが遺伝子操作された細菌の全細胞容積は75g/Lであり、グルコースデヒドロゲナーゼの投入量は25mg/Lであった。温度は37℃であり、転化反応は回転速度を200rpmに制御した振盪機中で実施し、転化時間は12時間であった。
【0105】
工程2:精製工程は実施例3を参照されたい。目的生成物は7.73gであり、de値は79.6%、ee(anti)値は88.7%であった。
【配列表】
0007489917000001.app