(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】乳化化粧料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20240517BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240517BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240517BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240517BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/06
A61Q5/00
A61Q17/04
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020553971
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2019042537
(87)【国際公開番号】W WO2020090874
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2018206251
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大谷 紘平
(72)【発明者】
【氏名】小原 妙
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-067939(JP,A)
【文献】特開2011-032249(JP,A)
【文献】特開2010-083802(JP,A)
【文献】特開2018-131411(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0305169(US,A1)
【文献】特開2004-307434(JP,A)
【文献】特開2005-220117(JP,A)
【文献】特開2004-083585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/81
A61K 8/06
A61Q 5/00
A61Q 17/04
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水溶性カチオン性ポリマーを含む油相と、(b)水溶性アニオン性ポリマーを含む水相とを含有する
乳化化粧料であって、
(a)水溶性カチオン性ポリマーが、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、及び塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガムからなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、
(b)水溶性アニオン性ポリマーが、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体及びアクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル(20E.O.)共重合体からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、乳化化粧料。
【請求項2】
(c)金属酸化物又は板状粉体の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の乳化化粧料。
【請求項3】
(d)イヌリン脂肪酸エステルを含む、請求項1又は2に記載の乳化化粧料。
【請求項4】
含有質量割合(a)/(b)が0.05~20である、請求項1~3のいずれか一項に記載の乳化化粧料。
【請求項5】
(a)の含有量が、乳化化粧料に対して0.001~3質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の乳化化粧料。
【請求項6】
(b)の含有量が、乳化化粧料に対して0.001~2質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の乳化化粧料。
【請求項7】
水中油型乳化化粧料である、請求項1~6のいずれか一項に記載の乳化化粧料。
【請求項8】
(e)ジメチコジエチルベンザルマロネートを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の乳化化粧料。
【請求項9】
(a)水溶性カチオン性ポリマーを含む油相と、(b)水溶性アニオン性ポリマーを含む水相とを含有する
乳化化粧料の製造方法であって、
(a)水溶性カチオン性ポリマーが、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、及び塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガムからなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、
(b)水溶性アニオン性ポリマーが、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体及びアクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル(20E.O.)共重合体からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、乳化化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化化粧料に関し、さらに詳細には、水溶性カチオン性ポリマーを含む油相と、水溶性アニオン性ポリマーを含む水相とを含有する乳化化粧料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能性化粧料の需要は高まっており、使用目的に応じて様々な機能性化粧料が開発されてきた。例えば湿度が高いとうねりが生じてしまうような毛髪に対し、それを日中予防するような機能を付与したものや、ファンデーションや日焼け止め料ではUVA(波長320~400nmの長波長紫外線)、UVB(波長290~320nmの中波長紫外線)から肌を守るような高い紫外線防御能を有する化粧料等、肌や毛髪に塗布膜を形成することによって機能性を具現化しているものが多い。
【0003】
しかしながら、化粧料を塗布した際に形成された塗布膜は、時間の経過とともに脱落し、機能性が低下していくことが知られていた。特に物理的な摩擦を受けた場合、汗をかいた場合、プールや海などの水浴びをする場合などは、さらに塗布膜の脱落が顕著であった為、機能性が低下しにくい化粧料の開発が求められていた。
【0004】
そこで、疎水化処理された微粒子酸化亜鉛と油溶性紫外線吸収剤を含む油性成分を塗布膜として固化させるために、ゲル化剤として無水ケイ酸を選択することで、高い耐水性を付与する技術(例えば特開2018-76313号公報)や、特定の化合物により表面を被覆された微粒子金属酸化物を、特定の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合体、ポリヒドロキシステアリン酸と共に油相に分散し、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)共重合体と組み合わせて、水中油型乳化化粧料とすることにより、柔軟で均一な化粧膜を形成させることで耐水性を付与する技術(例えば特開2017-137300号公報)、特定の組み合わせのカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとから形成されるポリイオンコンプレックスを乳化剤とすることにより安定な水中油型乳化組成物が得られ、種々の油分を配合することができ、かつ得られた水中油型乳化物が優れた耐水性を示す技術(例えば特開2011-32249号公報)などが開発されてきた。
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記技術では、化粧料としての感触の悪さや、耐水性や耐摩擦性が十分ではないという課題があった。
【0006】
従って本発明では、耐水性及び耐摩擦性に優れた塗布膜を形成し、さらに製剤安定性と良好な使用性を有する乳化化粧料を提供することを課題とする。
【0007】
かかる実情に鑑み、本発明者らはカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーを同一相に配合することを試みた。そして、本発明者らはカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーを同一相に配合すると、凝集が生じて製剤として成り立たないという問題を見出した。鋭意検討した結果、水溶性カチオン性ポリマーを油相に、水溶性アニオン性ポリマーを水相に含有させることにより、製剤としての安定性を有し、さらに塗布時に水溶性カチオン性ポリマーと水溶性アニオン性ポリマーが凝集して強固な塗布膜が形成することにより、塗布膜の耐水性、耐摩擦性が向上し、かつ良好な使用感を有するという知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)(a)水溶性カチオン性ポリマーを含む油相と、(b)水溶性アニオン性ポリマーを含む水相とを含有する乳化化粧料である。
【0009】
(2)(c)金属酸化物又は板状粉体の少なくとも一方を含む、(1)に記載の乳化化粧料である。
【0010】
(3)(d)ステアリン酸イヌリンを含む、(1)又は(2)に記載の乳化化粧料である。
【0011】
(4)含有質量割合(a)/(b)が0.05~20である、(1)~(3)のいずれか一に記載の乳化化粧料である。
【0012】
(5)(a)水溶性カチオン性ポリマーが、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、及び塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガムからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、(1)~(4)のいずれか一に記載の乳化化粧料である。
【0013】
(6)(b)水溶性アニオン性ポリマーが、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、及びアクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、(1)~(5)のいずれか一に記載の乳化化粧料である。
【0014】
(7)水中油型乳化化粧料である、(1)~(6)のいずれか一に記載の乳化化粧料である。
【0015】
(8)(e)ジメチコジエチルベンザルマロネートを含む、(1)~(7)のいずれか一に記載の乳化化粧料である。
【0016】
(9)(a)水溶性カチオン性ポリマーを含む油相と、(b)水溶性アニオン性ポリマーを含む水相とを含有する乳化化粧料の製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0018】
本発明の乳化化粧料は、油相に水溶性カチオン性ポリマーおよび水相に水溶性アニオン性ポリマーを含有することにより、耐水性が高く、さらに摩擦に強く(耐摩擦性が高い)、使用感(例えば、べたべた感、ぬるつき感が無く、みずみずしい感触を有する)に優れ、安定性に優れる乳化化粧料を提供することができる。
【0019】
(乳化化粧料)
本発明における乳化化粧料とは、成分(a)水溶性カチオン性ポリマーを含有する油相と、成分(b)水溶性アニオン性ポリマーを含有する水相のいずれか片方が乳化滴として存在する乳化化粧料であり、本発明の効果を損なわない範囲において、他成分を含有していてもよい。
【0020】
本発明に用いられる成分(a)水溶性カチオン性ポリマー(以下、単に成分(a)とも称する)は、分子中にカチオン性基を有するポリマーである。成分(a)水溶性カチオン性ポリマーは、通常化粧料に使用されるものであれば特に限定されることはないが、水溶性アニオン性ポリマーとの塗布膜を形成した際の感触および耐水性に優れる点から、ポリマー鎖に結合したアミノ基またはアンモニウム基を含むか、またはジメチルジアリルアンモニウムハライドを構成単位として含むものが好ましい。
【0021】
成分(a)としては、特に限定はされないが、例えば、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、塩化O-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピルグァーガム、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシー3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体、塩化O-(2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル)ローカストビーンガム、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン、ビニルピロリドン・メタクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル・アクリル酸ステアリル・ジアクリル酸トリプロピレングリコール共重合体、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。これらの中でも、生成する塗布膜の耐水性・耐摩擦性の観点から、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガムが特に好ましく、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体が最も好ましい。
【0022】
本発明における成分(a)の市販例としては、例えば、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースとして、ポリクオタニウムー10である、レオガードGP(ライオン社製)やカチナールHC-100(東邦化学工業社製)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体として、ポリクオタニウムー7の水溶液である、リポフローMN(ライオン社製)やMERQUAT 550PR、MERQUAT 740 POLYMER(以上、日本ルーブリゾール社製)、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体として、ポリクオタニウム-39の水溶液である、MERQUAT3331PR(日本ルーブリゾール社製)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体として、ポリクオタニウム-22の水溶液である、MERQUAT295Polymer(日本ルーブリゾール社製)、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガムとしてJAGUAR C-14S(C)(SOLVAY社製)、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプンの水溶液である、SENSOMER CI50(日本ルーブリゾール社製)、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウムである、ヒアロベールP(キユーピー社製)等が挙げられる。
【0023】
本発明における成分(a)の含有量は、特に限定されないが、乳化化粧料中の0.001~3質量%(以下単に「%」と略す)が配合でき、0.001~1%が好ましく、0.01~1%がより好ましく、0.01~0.5%がさらにより好ましく、0.1~0.3%が特に好ましい。この範囲であると、安定性に優れ、良好な使用感を維持しながらも耐水性、耐摩擦性を付与することができる。
【0024】
製造過程において、油相に成分(a)を溶解、分散することによって、油相に成分(a)を含有させることができる。
【0025】
本発明に用いられる成分(b)水溶性アニオン性ポリマー(以下、成分(b)とも称する)は、分子中にアニオン性基を有するポリマーである。成分(b)水溶性アニオン性ポリマーは、通常化粧料に使用されるものであれば特に限定はされないが、水溶性カチオン性ポリマーとの塗布膜を形成した際の感触および耐水性、耐摩擦性に優れる点から、例えば、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル(20E.O.)共重合体などのアクリル酸系水溶性ポリマー、アニオン性多糖類、アニオン性ポリアミノ酸等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。これらの中でも生成する塗布膜の耐水性・耐摩擦性の観点から、成分(b)水溶性アニオン性ポリマーは、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、及びアクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、アクリル酸系水溶性ポリマーが好ましく、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(好ましくは、アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-C30)クロスポリマー)、アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体がより好ましい。更には、耐水性、耐摩擦性に優れる点から、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体とアクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体とを併用することが特に好ましい。アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体とアクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体とを併用する場合の含有質量比は、耐水性、耐摩擦性に優れる点から、例えば、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体:アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体=1:0.1~50であり、1:5~40であることが好ましい。
【0026】
成分(b)の市販品としては、例えば、CARBOPOL940、941、980、981(カルボマー;Lubrizol Advanced Materials Inc.社製)、PEMULEN TR-1、TR-2、CARBOPOL POLYMER、1342 POLYMER、1382 POLYMER(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-C30))クロスポリマー;Lubrizol Advanced Materials Inc.社製)、SIMULGEL EG(アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体;SEPPIC社製)、ACULYN 22(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス-20コポリマー、ROHM GMBH社製)等などが挙げられる。
【0027】
本発明における成分(b)の含有量は、特に限定されないが、乳化化粧料中の0.001~2%が好ましく、0.001~1%がより好ましく、0.01~0.8%であることがさらに好ましく、0.01~0.5%が特に好ましい。この範囲であると、安定性に優れ、良好な使用感を維持しながらも耐水性、耐摩擦性を付与することができる。
【0028】
製造過程において、水相に成分(b)を溶解、分散することによって、水相に成分(b)を含有させることができる。
【0029】
本発明における成分(a)と成分(b)の含有質量割合(a)/(b)は、特に限定されないが、0.05~20であることが好ましく、0.1~10であることがより好ましい。この範囲であると製剤の安定性や生成する塗布膜の耐水性・耐摩擦性がより良好となる。
【0030】
本発明においては、さらに成分(c)金属酸化物及び/又は板状粉体(以下、単に成分(c)とも称する)を含むことが好ましい。成分(c)金属酸化物及び/又は板状粉体を配合することで、耐水性、耐摩擦性、製剤安定性が一層向上する。成分(c)は、水相、油相どちらにも配合できるが、油相に配合することが特に好ましい。油層に配合することで、成分(a)を油相内に安定に配合することができ、製剤安定性が一層向上するためである。
【0031】
本発明に用いられる成分(c)金属酸化物は、通常化粧料に用いられる金属酸化物であれば球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、いずれのものも使用できる。成分(c)の金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を併用して用いることができ、更に複合化してもよいが、耐水性、耐摩擦性向上の観点から、酸化亜鉛または酸化チタンが好ましく、酸化亜鉛が特に好ましい。また、金属酸化物の粒子径は特に限定されないが、成分(a)の油相における安定性の観点から、平均一次粒子径が1~100nmの範囲のものが好ましい。なお、本発明において平均粒子径とは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用い、水中分散状態で測定された粉体の幅と長さの装置上の平均値(積算体積50%の平均粒径値)をいう。また、必要に応じて、シリコーン化合物、フッ素化合物、金属石鹸、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、レシチン、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤、トリアルコキシシラン等を用いて、公知の方法により表面処理を施したり、更にこれらを複合化したものを用いても良い。
【0032】
本発明に用いられる成分(c)板状粉体は、水相、油相どちらにも配合できるが、油相に配合することが特に好ましい。化粧料に通常使用される板状粉体であれば、特に限定されず、例えば、マイカ、セリサイト、窒化ホウ素、合成金雲母、合成セリサイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、劈開タルク、板状無水ケイ酸、板状カオリン、板状窒化硼素、板状セルロース等の体質粉体、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、成分(a)を油相に配合した際の乳化安定性の観点から、セリサイト、窒化ホウ素を用いることが、好ましく、セリサイトを用いることがより好ましい。本発明に用いられる成分(c)板状粉体の平均粒子径は、特に限定されないが、1~100μmのものを用いることが好ましく、1~50μmのものを用いることがより好ましい。また、アスペクト比は、5~500であることが好ましく、10~100であることがより好ましい。なお、本発明において平均粒子径とは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用い、水中分散状態で測定された粉体の幅と長さの装置上の平均値(積算体積50%の平均粒径値)をいう。なお、これらの板状粉体は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤、トリアルコキシシラン等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0033】
成分(c)の表面処理に用いられるシリコーン系化合物としては、例えば、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状シリコーン類、シリコーンリン酸トリエステル、アモジメチコン等のアミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン等の変性シリコーン類、トリメチルシロキシケイ酸やアクリレートシリコーン等のシリコーン樹脂類、シリコーンゴム類、部分又は全架橋オルガノポリシロキサン類、各種シリル化剤類などが挙げられる。
【0034】
トリアルコキシアルキルシラン処理におけるトリアルコキシアルキルシランは、ケイ素原子に三つのアルコキシ基と一つのアルキル基が結合した化合物であり、該アルコキシ基が粉体表面の水酸基等と反応することにより、粉体表面を化学的に被覆する化合物である。該トリアルコキシアルキルシランにおける、アルコキシ基は、炭素数1~3であるメトキシ、エトキシ、プロポキシ等が好ましい。また、該トリアルコキシアルキルシランにおける、アルキル基は、炭素数6~18のアルキル基であるヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等が好ましい。このようなトリアルコキシアルキルシランは、例えば、トリメトキシヘキシルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリメトキシオクタデシルシラン、トリエトキシヘキシルシラン、トリエトキシオクチルシラン(トリエトキシカプリリルシラン)、トリエトキシデシルシラン、トリエトキシオクタデシルシランなどが挙げられる。
【0035】
表面処理量は粉体に対して0.5~30質量%が好ましく、より好ましくは1~20質量%である。
【0036】
本発明に用いられる成分(c)は金属酸化物と板状粉体のうち一種又は二種を併用して用いることができるが、成分(a)の油相における乳化安定性の観点から、二種を併用して用いることが好ましく、金属酸化物および板状粉体を組み合わせて用いることがより好ましい。金属酸化物および板状粉体を組み合わせて用いる場合、両者の混合比は特に限定されるものではないが、例えば、金属酸化物:板状粉体=1:0.1~10(質量比)である。特に好ましい組み合わせは、表面処理されてもよい酸化亜鉛および表面処理されてもよいセリサイトであり、表面処理酸化亜鉛および表面処理セリサイトである。二種を併用して用いる場合、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆合成金雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、二酸化チタン被覆ガラス末等のように、複合化したものを用いてもよい。
【0037】
本発明における成分(c)の含有量は、特に限定されないが、乳化化粧料中の1~30%が好ましく、5~20%が特に好ましい。この範囲であると、耐水性、耐摩擦性、安定性に優れた製剤を提供することができる。
【0038】
本発明においては、さらに成分(d)イヌリン脂肪酸エステル(以下、単に成分(d)とも称する)を含むことが好ましい。イヌリン脂肪酸エステルを含むことで、肌への密着性が向上することにより、耐水性、耐摩擦性、使用性(特にぬるつきのなさ)、製剤安定性が一層向上する。成分(d)は、水相、油相どちらにも配合できるが、油相に配合することが特に好ましい。油層に配合することで、油相の増粘作用により、耐水性、耐摩擦性、使用性(特にぬるつきのなさ)、製剤安定性が一層向上する。
【0039】
本発明に用いられる成分(d)イヌリン脂肪酸エステルは炭素数8~32の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和脂肪酸とイヌリンとのエステル化合物であり、油相に含有される。通常化粧料に配合されるものであれば特に限定はされないが、イヌリンは、β-1、2結合したフラノイドフルクトース単位の鎖から成り、還元末端において蔗糖結合したα-D-グルコースを有する構造のもので、フラノイドフルクトース単位が2~60程度のものが好ましい。また、加水分解イヌリンを用いても構わない。成分(d)としては、ステアリン酸イヌリンであることが好ましい。市販品としては、ステアリン酸イヌリンであるレオパールISK2、レオパールISL2(いずれも千葉製粉社製)が挙げられる。
【0040】
本発明における成分(d)の含有量は、特に限定されないが、乳化化粧料中の0.1~10%が好ましく、1~5%が特に好ましい。この範囲であると、油相において(a)の分散性を向上させ、また粉体(例えば成分(c))を配合した場合には、粉体の分散性を向上させ、耐水性、耐摩擦性、安定性に優れた製剤を提供することができる。
【0041】
本発明においては、さらに成分(e)ジメチコジエチルベンザルマロネートを含むことが好ましい。本発明に用いられる成分(e)ジメチコジエチルベンザルマロネートは、INCI(INTERNATIONAL NOMENCLATURE of COSMETIC INGREDIENTS)名がポリシリコーン-15で示され、鎖長約60のジメチコンのうち約7.5%が2種の置換基で置換されたシリコーン誘導体であり、それ自体が高い紫外線防御能を持ちながら、他の紫外線防御剤との相乗効果によりSPAやPAの数値を向上させること(ブースター効果)が知られている。本発明においては、成分(e)は、好ましくは、油相に含有され、塗布膜の耐水性や耐摩擦性を向上させる成分としても機能し、化粧料の安定性に寄与する。市販品としては、PARSOL SLX(DSM Nutritional Products社製)が例示できる。
【0042】
本発明における成分(e)の含有量は、特に限定されないが、乳化化粧料中の0.1~10%が好ましく、特に好ましくは1~5%である。この範囲であると、高い紫外線防御効果を得られるだけでなく、製剤安定性も良好となるため好ましい。
【0043】
本発明の乳化化粧料には、上記の成分以外に、通常の化粧料に使用される成分、例えば、成分(e)以外の油性成分、紫外線吸収剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤、水、成分(a)、成分(b)以外の水溶性高分子、多価アルコール、低級アルコール等の水性成分、抗菌剤、防腐剤、pH調整剤、清涼剤、成分(c)以外の粉体、ビタミン類、アミノ酸類等の美容成分、香料等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。
【0044】
本発明の乳化化粧料は、例えば液状、乳液状、クリーム状、固形状、ゲル状、ペースト状等、種々な形態にて実施することができる。また、本発明の化粧料は、油中水型乳化系、水中油型乳化系等、その剤型は特に制限されないが、みずみずしい使用性の観点、より耐水性が低いとされる水中油型乳化型において耐水性向上が求められていることから、水中油型乳化系であることが好ましい。すなわち、本発明の好適な実施形態は、水中油型乳化化粧料である。乳液、クリーム、美容液、リップクリーム、日焼け止め料などのスキンケア化粧料、ファンデーション、メイクアップ下地、ほほ紅、アイシャドウ、口紅、リップグロス等のメイクアップ化粧料、ヘアリンス、ヘアクリーム、整髪料等の頭皮又は毛髪用の化粧料等、種々の化粧料にて実施することができる。
【0045】
また、本発明の一形態は、乳化日焼け止め化粧料である。また、本発明の他の形態は、さらに、紫外線吸収剤を含む。化粧料塗布膜の耐水性や耐摩擦性が向上することで、汗や水により紫外線吸収剤が落ちにくくなり、紫外線防御能の高い日焼け止めとすることができる。紫外線吸収剤は、通常日焼け止め化粧料に用いられるものであれば、特に制限されず使用することができる。紫外線吸収剤としては、例えば、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、パラアミノ安息香酸エチル、ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-9、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、ジオクチルブタミドトリアゾン、4-tert-ブチル-4’-メトキシ-ジベンゾイルメタン、2,4-ビス{[4-(2-エチル-ヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-(1,3,5)-トリアジン、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、ポリシリコーン-15等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。中でもメトキシケイヒ酸エチルヘキシル、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、4-tert-ブチル-4’-メトキシ-ジベンゾイルメタン、2,4-ビス{[4-(2-エチル-ヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-(1,3,5)-トリアジン、ポリシリコーン-15が好ましく、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、2,4-ビス{[4-(2-エチル-ヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-(1,3,5)-トリアジンがより好ましい。紫外線吸収剤の含有量としては、乳化化粧料中、例えば、1~10%である。
【0046】
また、本発明の乳化化粧料の使用方法は、手や指、コットンで使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法、噴霧剤、エアゾール剤として使用する方法等が挙げられる。
【0047】
本発明はまた、(a)水溶性カチオン性ポリマーを含む油相と、(b)水溶性アニオン性ポリマーを含む水相とを含有する乳化化粧料の製造方法をも提供する。乳化方法については当該分野における周知の方法を適宜参酌することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例、試験例等を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0049】
[実施例1(本発明品1~14)及び比較例1~4:乳化化粧料]
表1に示す組成および下記製造方法にて乳化化粧料を調製した。得られた乳化化粧料について、耐水性、耐摩擦性、官能評価を下記の方法により評価し、結果と併せて表1~3に示した。
【0050】
【0051】
(注1)SIMULGEL EG(SEPPIC社製)(アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体37.5%混合物。処方中の含有量は化合物純分の量を示す)
(注2)PEMULENE TR-1(Lubrizol Advanced Materials Inc.社製)
(注3)ACULYN22(ROHM GMBH社製)(アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル(20E.O.)共重合体30%水溶液。処方中の含有量は化合物純分の量を示す)
(注4)CARBOPOL 980(Lubrizol Advanced Materials Inc.社製)
(注5)MERQUAT 740 POLYMER(日本ルーブリゾール社製。塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、43%水溶液。処方中の含有量は化合物純分の量を示す)
(注6)レオパールISK2(千葉製粉社製)
(注7)TINOSORB S(BASF社製)
(注8)ユビナールA PLUS GRANULAR(BASF社製)
(注9)PARSOL SLX(DSM NUTRITIONAL PRODUCTS社製)
(注10)NIKKOL HCO-40(日本サーファクタント工業社製)
(注11)カチナールHC-100(東邦化学社製)
(注12)JAGUAR C-14S(C)(SOLVAY社製)
【0052】
【0053】
【0054】
(製造方法)
A:成分1~3を70℃で均一に分散する。
B:成分10~15を70℃で均一に溶解する。
C:成分16~22を混合・分散する。
D:CをBに入れ、均一に分散する。
E:DをAに入れ、70℃で乳化する。
F:Eを室温に冷却する。
G:Fに成分4~9を混合し、水中油型乳化化粧料を得た。
【0055】
(評価方法:(a)耐水性評価)
前記の各試料を、PMMA板(Labsphere社製 HELIOPLATE HD6)に2mg/cm2塗布後、20分静置したサンプルについて、SPFアナライザー(Labsphere社製 UV-2000S)を用いたSPF測定を行い、水浴前SPF値を測定した。次に水浴を行った。水浴条件は、35℃、2Lの水を貯めた容器側面にサンプルを貼り付け、容器中の水をパドルミキサを用いて300rpmで5分間、攪拌する条件で行った。水浴完了後、20分間の静置乾燥させた後に、前記SPFアナライザーを用いて、水浴後SPF値を測定した。得られた水浴前後でのSPF値を元に、耐水性を下記(a)評価基準にて4段階評価し判定した。
(a)4段階評価基準
(評価) :(判定)
(水浴後SPF測定値)/(水浴前SPF測定値)=0.7以上: ◎
(水浴後SPF測定値)/(水浴前SPF測定値)=0.5以上: ○
(水浴後SPF測定値)/(水浴前SPF測定値)=0.3以上: △
(水浴後SPF測定値)/(水浴前SPF測定値)=0.3未満: ×。
【0056】
(評価方法:(b)耐摩擦性評価)
前記の各試料を、PMMA板に2mg/cm2塗布後、20分静置したサンプルについて、SPFアナライザー(Labsphere社製 UV-2000S)を用いたSPF測定を行い、摩擦前SPF値を測定した。次に摩擦を行った。摩擦条件はテクスチャーアナライザー TA.XT PLUS(英弘精機社製)を用いて、治具の先端にタオル生地を固定化し、一定の荷重をかけて往復で5回左右に動かした。摩擦完了後、前記SPFアナライザーを用いて、摩擦後SPF値を測定した。得られた摩擦前後でのSPF値を元に、耐摩擦性を下記(b)評価基準にて4段階評価し判定した。
(b)4段階評価基準
(評価) :(判定)
(摩擦後SPF測定値)/(摩擦前SPF測定値)=0.7以上: ◎
(摩擦後SPF測定値)/(摩擦前SPF測定値)=0.5以上: ○
(摩擦後SPF測定値)/(摩擦前SPF測定値)=0.3以上: △
(摩擦後SPF測定値)/(摩擦前SPF測定値)=0.3未満: ×。
【0057】
(評価方法:(c)べたつきの無さ)
専門評価パネル20名に、前記の各試料を前腕に塗布してもらい、使用時のべたつきについて、下記(c)評価基準にて4段階評価し判定した。
(c)4段階評価基準
(評価) :(判定)
べたつきが全く無い :4点
べたつきがほとんど無い :3点
べたつきがある :2点
べたつきが非常にある :1点
上記評価基準にて、評価した評点の平均値から、以下の判定基準に基づいて判定した。
<判定基準>:
[評点の平均点] :[判定]
3.25以上 : ◎
2.5以上3.25未満 : ○
1.75以上2.5未満 : △
1.75未満 : ×。
【0058】
(評価方法:(d)ぬるつきの無さ)
専門評価パネル20名に、前記の各試料を前腕に塗布してもらい、使用時のぬるつきについて、下記(d)評価基準にて4段階評価し判定した。
(d)4段階評価基準
(評価) :(判定)
ぬるつきが全く無い :4点
ぬるつきがほとんど無い :3点
ぬるつきがある :2点
ぬるつきが非常にある :1点
上記評価基準にて、評価した評点の平均値から、以下の判定基準に基づいて判定した。
<判定基準>:
[評点の平均点] :[判定]
3.25以上 : ◎
2.5以上3.25未満 : ○
1.75以上2.5未満 : △
1.75未満 : ×。
【0059】
(評価方法:(e)みずみずしさ)
専門評価パネル20名に、前記の各試料を前腕に塗布してもらい、使用時のみずみずしさについて、下記(e)評価基準にて4段階評価し判定した。
(e)4段階評価基準
(評価) :(判定)
みずみずしさが非常にある :4点
みずみずしさがややある :3点
みずみずしさがやや無い :2点
みずみずしさが全く無い :1点
上記評価基準にて、評価した評点の平均値から、以下の判定基準に基づいて判定した。
<判定基準>:
[評点の平均点] :[判定]
3.25以上 : ◎
2.5以上3.25未満 : ○
1.75以上2.5未満 : △
1.75未満 : ×。
【0060】
(評価方法:(f)製剤安定性)
前記各試料をガラス製の規格びんに入れ、50℃の恒温槽に1ヶ月間保管し、1ヵ月後の状態を観察し、下記(f)4段階判定基準を用いて判定した。
(f)4段階判定基準
(評価) :(判定)
外観の変化は全くみられない :◎
外観の変化はほとんどみられない:○
若干の分離、ブツがみられる :△
分離、ブツがみられる :×。
【0061】
表1~3の結果からも明らかなように、本発明品1~14の乳化化粧料は、水溶性アニオン性ポリマーと水溶性カチオン性ポリマーを別々の相に配合することで高い耐水性と耐摩擦性を有し、着手のみずみずしさ、後肌のべたつき及びぬるつきの無さにも優れる乳化化粧料であった。さらに、本発明品1~14の乳化化粧料は、製剤安定性にも優れるものであった。なお、本発明品7~10は、本発明品1から成分(a)、(b)の含有質量割合(a)/(b)を変化させたものであり、本発明品11は本発明品1から成分(a)、(b)の配合量を変更した処方である。一方、成分(a)、(b)を配合しない比較例1、2、3は、耐水性や耐摩擦性が無く、べたつきやぬるつきを感じる感触になってしまう結果となった。油相に水溶性アニオン性ポリマー、水相に水溶性カチオン性ポリマーを配合した比較例4は製剤中で水溶性カチオン性ポリマーが水溶性アニオン性ポリマーと凝集体を作ってしまい、製剤安定性に劣るものであった。
【0062】
実施例2:クリーム(水中油型)
(成分) (%)
1.N-ステアロイルーN-メチルタウリンナトリウム 0.1
2.リン脂質・コレステロール混合物 2.2
3.グリセリン 6.5
4.マイカ(板状粉体、平均粒子径5~12μm) 3.0
5.ポリヒドロキシステアリン酸 0.5
6.塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体
(注13) 0.045
7.ジカプリン酸プロピレングリコール 5.0
8.1,3-ブチレングリコール 5.0
9.ジグリセリン 1.0
10.ステアリン酸イヌリン(注6) 2.0
11.エチルヘキサン酸セチル 3.0
12.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 5.0
13.ジメチコジエチルベンザルマロネート(注9) 2.0
14.2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルエステル(注8)
1.0
15.コメ胚芽油 0.02
16.トコフェロール 0.01
17.精製水 残量
18.キサンタンガム 0.1
19.カルボマー(注4) 0.3
20.水酸化ナトリウム 適量
21.エタノール 6.5
22.防腐剤 適量
23.トレハロース 0.05
24.海藻エキス 0.01
25.クエン酸 0.02
26.リン酸一水素ナトリウム 0.15
27.ヒドロキシプロリン 0.05
28.カワラヨモギエキス 0.05
(注13)MERQUAT 550PR(日本ルーブリゾール社製。塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、9%水溶液。処方中の含有量は化合物純分の量を示す。)
(製造方法)
A:成分(1)~(3)および(17)を70℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(4)~(16)を80℃に加熱し、均一に混合する。
C:AにBを加え撹拌する。
D:Cに、70℃に加熱した成分(18)~(28)を加え乳化する。
E:Dを室温まで撹拌しながら冷却し、クリームを得た。
【0063】
実施例2のクリームは、耐水性や耐摩擦性に優れ、使用感に優れ、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の有する紫外線防御機能を十分に発揮させることが可能であり、また乳化安定性に優れる化粧料であった。
【0064】
実施例3:シェーキング型日焼け止め料(油中水型)
(成分) (%)
1.2,4-ビス-[{4-(2-エチルヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(注7)
1.5
2.パラメトキシケイ皮酸エチルエステル(パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル)
7.5
3.ステアリン酸イヌリン(注6) 1.5
4.2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル(注8)
3.0
5.コハク酸ジエチルヘキシル 3.5
6.ジメチコジエチルベンザルマロネート(注9) 3.0
7.メチルポリシロキサン(注14) 0.5
8.サフラワー油 0.1
9.シリル化処理無水ケイ酸 4.0
10・酸化亜鉛 7.0
11.マイカ(板状粉体、平均粒子径5~12μm) 2.0
12.ポリヒドロキシステアリン酸 1.0
13.塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(注5)
0.1
14.シクロメチコン 4.0
15.軽質イソパラフィン 4.0
16.エタノール 7.0
17.防腐剤 適量
18.香料 適量
19.精製水 残量
20.アクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体(注2) 0.05
21.加水分解ヒアルロン酸 0.01
22.加水分解コラーゲン 0.01
(注14)KF-96-10CS(信越化学工業社製)
下記の製法により、日焼け止め剤(シェーキング)を調製した。
(製造方法)
A:成分(1)~(8)を80℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(9)~(15)を、均一にローラー混合する。
C:AにBを加え、均一に混合する。
D:Cに成分(16)~(18)を加え、均一に混合する。
E:Dに(19)~(22)を加え、乳化する。
F:Eを室温に冷却することで、シェーキング型日焼け止め料(油中水型)を得た。
【0065】
実施例3の日焼け止め剤(シェーキング)は、耐水性や耐摩擦性に優れ、使用感に優れ、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の有する紫外線防御機能を十分に発揮させることが可能であり、また乳化安定性に優れる化粧料であった。
【0066】
実施例4:日焼け止め剤(クリーム)(油中水型)
(成分) (%)
1.酸化亜鉛 15
2.酸化チタン 2
3.PEG-9 ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(注15)
0.5
4.塩化O-[2-ヒドロキシ-3(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム(注12)
0.1
5.シクロメチコン 6.0
6.ジステアルジモニウムヘクトライト 1.0
7.パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル 5.0
8.ステアリン酸イヌリン(注6) 1.0
9.2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル(注8)
2.0
10.軽質パラフィン 4.0
11.イソノナン酸イソトリデシル 2.0
12.エチルヘキサン酸セチル 1.0
13.トコフェロール 0.05
14.アンズ核油 0.01
15.シクロメチコン 残量
16.PEG-9 ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(注15)
0.5
17.ジメチコジエチルベンザルマロネート(注9) 3.0
18.メチルシロキサン網状重合体(注16) 3.0
19.香料 適量
20.エデト酸二ナトリウム 適量
21.精製水 14
22.アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル(20E.O.)共重合体(注3)
0.5
23.サンザシエキス 0.01
24.ブドウ葉エキス 0.01
25.濃グリセリン 1.0
26.エタノール 15
(注15)KF-6028P(信越化学工業社製)
(注16)TOSPEARL 3000A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)
下記の製法により、日焼け止め剤(クリーム)を調製した。
(製造方法)
A:成分(1)~(6)を均一にローラー混合する。
B:成分(7)~(19)を、80℃まで加熱し、均一に混合する。
C:AにBを加え、均一に混合する。
D:成分(20)~(26)を加え、均一に混合する。
E:CにDを加え、乳化する。
F:Eを室温に戻し、日焼け止め剤(クリーム)を得た。
【0067】
実施例4の日焼け止め剤(クリーム)は、耐水性や耐摩擦性に優れ、使用感に優れ、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の有する紫外線防御機能を十分に発揮させることが可能であり、また乳化安定性に優れる化粧料であった。
【0068】
実施例5:化粧用下地(油中水型)
(成分) (%)
1.酸化亜鉛 15
2.シリコン処理群青 0.04
3.シリコン・タルク・黄酸化鉄混合物 0.03
4.ナイロン 1.0
5.(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー(注17)
0.3
6.塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(注18)
0.3
7.シクロメチコン 6.0
8.パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル 3.0
9.2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル(注8)
2.0
10.軽質パラフィン 4.0
11.ステアリン酸イヌリン(注6) 1.0
12.コハク酸ジエチルヘキシル 3.0
13.シクロメチコン 残量
14.PEG-9 ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(注15)
0.5
15.ジメチコジエチルベンザルマロネート(注9) 3.0
16.メチルシロキサン網状重合体(注16) 3.0
17.香料 適量
18.メチルフェニルポリシロキサン 0.5
19.エデト酸二ナトリウム 適量
20.精製水 14
21.アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体(注1)
0.8
22.メチルグルセス-10 0.5
23.ジラウロイルグルタミン酸リシンNa 0.2
24.腐植土抽出物 1.0
25.濃グリセリン 1.0
26.エタノール 15
(注17)KP-578P(信越化学工業社製)
(注18)カチナールHC-200(東邦化学社製)
下記の製法により、化粧用下地を調製した。
(製造方法)
A:成分(1)~(7)を均一にローラー混合する。
B:成分(8)~(18)を、80℃まで加熱し、均一に混合する。
C:AにBを加え、均一に混合する。
D:成分(18)~(26)を加え、均一に混合する。
E:CにDを加え、乳化する。
F:Eを室温に戻し、化粧用下地を得た。
【0069】
実施例5の化粧用下地は、耐水性や耐摩擦性に優れ、使用感に優れ、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の有する紫外線防御機能を十分に発揮させることが可能であり、また乳化安定性に優れる化粧料であった。
【0070】
実施例6:エアゾール型日焼け止め剤(水中油型)
(成分) (%)
1.ジカプリン酸プロピレングリコール 12
2.ステアリン酸イヌリン(注6) 1.0
3.イソステアリン酸デキストリン(注19) 0.5
4.酸化亜鉛 6.0
5.ポリヒドロキシステアリン酸 0.3
6.塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(注11)
0.2
7.パラメトキシケイ皮酸エチルエステル(パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル)
7.0
8.2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル(注8)
3.0
9.2,4-ビス-[{4-(2-エチルヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(注7)
1.0
10.ジメチコジエチルベンザルマロネート(注9) 1.0
11.ジカプリン酸プロピレングリコール 8.0
12.安息香酸アルキル(C12~C15) 1.0
13.メチルシロキサン網状重合体(注16) 8.5
14.PEG-9 ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(注15)
0.5
15.塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(注20)
0.3
16.塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(注5)
0.3
17.マイカ(板状粉体、平均粒子径5~12μm) 4.0
18.天然ビタミンE 0.05
19.ジプロピレングリコール 1.0
20.エタノール 25
21.精製水 残量
22.アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体
0.8
23.香料 適量
(注19)ユニフィルマHVY(千葉製粉社製)
(注29)カチナールLC-100(東邦化学社製)
下記の製法により、エアゾール型日焼け止め剤を調製した。
(製造方法)
A:成分(1)~(6)を3本ローラーにて分散する。
B:成分(7)~(17)を、70℃で均一に溶解する。
C:AにBを加え、均一に混合する。
D:Cに(18)~(23)を加え、乳化する。
E:Dで得られた原液6gをアルミ製耐圧容器に充填した後にバルブを固着し、バルブを通じて噴射剤(LPG0.15:14g)を耐圧容器に充填することで、エアゾール型日焼け止め剤を得た。
【0071】
実施例6のエアゾール型日焼け止め製剤は、耐水性や耐摩擦性に優れ、使用感に優れ、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の有する紫外線防御機能を十分に発揮させることが可能であり、また乳化安定性に優れる化粧料であった。
【0072】
実施例7:毛髪化粧料(水中油型)
(成分) (%)
1.精製水 残量
2.PG 2.0
3.グリセリン 1.0
4.エデト酸ナトリウム 0.01
5.アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体(注1)
0.5
6.メチルポリシロキサン(注21) 10.0
7.軽質流動パラフィン 5.0
8.イソステアリン酸デキストリン(注19) 1.0
9.オレイン酸エチル 1.0
10.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(注10) 1.0
11.香料 0.5
12.マイカ(板状粉体、平均粒子径5~12μm) 4.0
13.塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(注11)
0.2
14.水酸化ナトリウム 0.05
15.精製水 2.0
16.エタノール 10
17.精製水 5.0
18.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(注2) 0.3
19.L-セリン 0.05
20.グリシルグリシン 0.05
(注21)KF-96-6CS(信越化学工業社製)
下記の製法により、毛髪化粧料を調製した。
(製造方法)
A:成分(1)~(5)を均一に混合する。
B:成分(6)~(13)を、均一に溶解する。
C:AにBを加え、乳化する。
D:Cに(14)~(15)を加え、混合する。
E:Dに(16)~(20)を加え、混合する。
F:Eをディスペンサー容器に充填することで、毛髪化粧料を得た。
【0073】
実施例7の毛髪化粧料は、耐水性や耐摩擦性に優れ、感触も良好であり、乳化安定性に優れる化粧料であった。
【0074】
以上詳述したように、水溶性カチオン性ポリマーを油相、水溶性アニオン性ポリマーを水相という異なる相に含有させることにより、塗布膜の耐水性、耐摩擦性が向上し、かつ良好な使用感を有する乳化化粧料を提供する。
【0075】
本出願は、2018年11月1日に出願された日本特許出願番号2018-206251号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。