(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ベーキングに使用するための固形酵素物品
(51)【国際特許分類】
A21D 2/26 20060101AFI20240517BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20240517BHJP
【FI】
A21D2/26
A21D13/00
(21)【出願番号】P 2020567505
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2019064524
(87)【国際公開番号】W WO2019234042
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-05-09
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500586299
【氏名又は名称】ノボザイムス アクティーゼルスカブ
(73)【特許権者】
【識別番号】505090469
【氏名又は名称】プラトス ナームローズ フェノートサップ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】オーレ、シモンセン
(72)【発明者】
【氏名】カタリーナ、ラーソン
(72)【発明者】
【氏名】イアスティ、スロト、ハンスン
(72)【発明者】
【氏名】カリーナ、ロンベア
(72)【発明者】
【氏名】ティム、バンカエランベルグ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル、バンフエーレ
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01537193(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0207881(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01008309(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/26 - 13/00
A23G 1/00 - 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベーキングに使用するための成形形態の固形酵素物品を製造するための方法であって、
(a)以下:
(i)0.5~10w/w%の水;
(ii)0.01~20w/w%の活性酵素タンパク質;
(iii)少なくとも10w/w%の、塩、糖、デンプン、アスコルビン酸、およびそれらの組合せからなる群から選択される生地成分;
(iv)少なくとも1w/w%の、糖および糖アルコールから選択される結合剤;ならびに
(v)35w/w%未満の穀粉
を含んでなる湿潤粉末を調製すること;
(b)前記湿潤粉末に10~100000kPaの圧力を加えることによって前記固形酵素物品を形成すること;ならびに
(c)前記湿潤粉末中の少なくとも30%の水を除去するために前記固形酵素物品を乾燥させること;
を含んでなり、
ここで、前記固形酵素物品は、1~100グラムの重量であり、かつ、0.01~20w/w%の活性酵素タンパク質を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記固形酵素物品は1~20gの重量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記湿潤粉末が、少なくとも20w/w%の、塩、糖、デンプン、アスコルビン酸、およびそれらの組合せからなる群から選択される粒状生地成分を含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記生地成分が1以上の酸化剤および/または還元剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1以上の酸化剤および/または還元剤がシステインを含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生地成分が塩および/または糖である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記塩が塩化ナトリウムおよび/または塩化カリウムである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(iii)および(iv)の糖が、1~10個の単糖単
位からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(iii)および(iv)の糖が、1~5個の単糖単位からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(iii)および(iv)の糖が、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、フルクトオリゴ糖、イヌリン、デキストリン、マルトデキストリン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記湿潤粉末が、少なくとも5w/w%の前記結合剤を含有する、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記湿潤粉末が、0.5~10w/w%活性酵素タンパク質を含有する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記酵素が、アミラーゼ、リパーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ、トランスグルタミナーゼ、およびオキシドレダクターゼからなる群から選択される1以上の酵素である、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記湿潤粉末が、0.5~10w/w%の添加水を含んでなる、請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記固形酵素物品の摩損度が15%未満である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか一項に記載の方法によって得られる、ベーキングに使用するための成形形態の固形酵素物品。
【請求項17】
生地を調製するための方法であって、水、穀粉、および請求項
16に記載の固形酵素物品を混合することを含んでなる、方法。
【請求項18】
ベークド製品を製造するための方法であって、
(a)水、穀粉、および請求項
16に記載の固形酵素物品を混合することにより生地を調製すること;ならびに
(b)前記生地を焼くこと
を含んでなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地またはバッターの調製中に崩壊/溶解することができる固形酵素単位量ベーキング物品を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素は、ベーキング業界で長年使用されている。酵素は、一般には、ベーキング工程で穀粉および他の成分(酵母など)と一緒に添加されることを目的とした粉末状/顆粒状製品として、例えば、ベーキングプレミックスとしてまたは改良剤として供給されてきた。ベーキングでは、生地もしくはバッター耐性、またはベークド製品の体積および/もしくは鮮度などの種々の特性のために改良剤が広く使用される。通常、これらの改良剤配合物は粉末組成物として製造され、これは秤量によって(手動または自動で)事前計量しなければならず、結果として、生地の混合工程中に添加しなければならない。
【0003】
焼き菓子チェーン全体に利便性と製品の安全性に対するニーズが強く高まっている。ベーキング工程および製品構成の簡素化により複雑さを軽減することは、時間の損失および流出を減らすための鍵である。今日、顆粒状酵素製品は、通常、粉末状改良剤の一部として、工業用ベーキング工程で一般的に使用されており、(半)自動計量装置を使用することによりベーキング工程に実装することができる。しかしながら、半工業的な職人によるベーカリーでは、自動化程度は低く、好ましくはミキサーに加える前の事前計量または事前処理工程のない、より便利で柔軟な酵素または改良剤送達システムが望まれている。
【0004】
さらに、国家(間)規制当局は、ベーカリーチェーン全体でのベーカリー成分からの浮遊粉塵の安全衛生リスク(鼻炎)に焦点を当てており、これは主に、穀粉および濃縮ベーカリー成分(改良剤)に存在する真菌アミラーゼの存在に関係している。一般的に、ベーカリーでの穀粉および酵素粉塵への曝露を減らすと、作業に関連する呼吸器系症状の可能性が減少する。粉塵を発生させる可能性のある穀粉および酵素を取り扱う行為は、曝露のリスクを最小限に抑えるために防止する必要がある。
【0005】
上述の理由から、ベーキング改良剤として使用するためには、利便性、柔軟性、信頼性および安全性の側面を兼ね備えた製品構成が依然として必要とされている。機能性ベーカリー成分を含有する事前計量された固形品を生成することにより、(ミキサーに加える前の)粉末改良剤の事前秤量工程が減り、従って、粉塵形成および濃縮ベーカリー成分の流出が大幅に減少する。本発明は、これらの基準を満たす固形酵素単位量送達構成の製造および適用に関する。
【0006】
従来の錠剤の形態での単位量送達構成は、自由流動性の圧縮性粉末を錠剤型に添加し、ピストンで高圧を加えることにより錠剤を製造することによって作出される。そのような錠剤はベーキングで知られており、通常低い摩損度を示すが、生地の調製中に添加する場合は完全溶解するのが難しい。従って、それらは一般には水に事前溶解される。医薬品の錠剤では100~200MPaの圧縮圧力が一般的であるが、栄養補助食品の錠剤の場合、200MPaより高い圧力が一般的である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、第1の側面において、ベーキングに使用するための、1~100グラムの重量の固形酵素物品を製造するための方法であって、
(a)以下:
(i)0.5~10w/w%の水;
(ii)0.01~20w/w%の活性酵素タンパク質;
(iii)少なくとも10w/w%の、塩、糖、デンプン、アスコルビン酸、およびそれらの組合せからなる群から選択される生地成分;ならびに
(iv)少なくとも1w/w%の、糖および糖アルコールから選択される結合剤;
を含んでなる湿潤粉末を調製すること;
(b)前記湿潤粉末に1~200000kPaの圧力を加えることによって前記固形物品を形成すること;ならびに
(c)前記湿潤粉末中の少なくとも30%の水を除去するために前記固形物品を乾燥させること;
を含んでなり、
ここで、前記固形酵素物品は、1~100グラムの重量であり、かつ、0.01~20w/w%の活性酵素タンパク質を含んでなる、方法を提供する。
【0008】
別の側面において、本発明は、ベーキングに使用するための固形物品を提供し、これは本発明の第1の側面に従って製造される。
【0009】
さらに他の側面において、本発明はまた、生地またはバッターおよびベークド製品を製造するための方法を提供する。
【0010】
本発明の他の側面および実施態様は、説明および実施例から明らかである。
【発明の具体的説明】
【0011】
本発明者らは、生地の調製またはバッターの混合中に酵素および他の生地成分を放出することができる、ベーキング工程用の生地の調製に使用するための固形酵素物品を製造することが可能であることを見出している。混合中に固形物品から酵素および他の成分を放出させることは、水濃度が低く、混合中に加えられる剪断力がかなり制限されるため、特に困難である。
【0012】
本発明者らは、粉末に少量の水を加えることによって湿潤粉末にし、その湿潤粉末を単位量物品にプレスし(この場合、必要な圧力は従来の打錠工程よりもはるかに低い)、続いて、その物品を乾燥させることにより単位量物品を製造すると、摩損度が低く、事前溶解工程なく生地調製中に崩壊し得る単位量になることを見出した。
【0013】
固形酵素物品の配合は、固形酵素物品が、生地調製中に(事前溶解工程なく)適切な時に崩壊および/または溶解するのに十分に脆いだけでなく、酵素粉塵を放出することなく取り扱い(包装の取り扱いおよび輸送など)に耐えるのに十分に強靭でなければならないため微妙なバランスを保つものであり、つまり、固形酵素物品は摩損度が低い必要がある。酵素粉塵は、アレルギーを引き起こすため、作業環境では極めて低いレベルに保つ必要がある。
【0014】
本発明者らは、酵素、増量剤および結合剤を含んでなる湿潤粉末組成物を圧縮して、粉末粒子が結合剤によって一緒に接着された、上述の取り扱い特性および放出特性、すなわち、低摩損度および迅速放出性を有する、「角砂糖」のような物品を製造することができることを見出している。
【0015】
この工程は、ホットドリンクまたは医薬錠剤用の普通の角砂糖を製造するために使用される工程と多少似ているが、対照的に、室温で生地中に溶解することができる「キューブ」を作出する。理論に縛られるものではないが、「キューブ」中に結合剤が部分的に溶解することによってもたらされる弱い結合力は、従来の乾式打錠工程における高圧圧縮によってもたらされる強い結合力と比較して、一般に水分量が少ない生地でより簡単に破壊/再分解すると思われる。
【0016】
固形単位量物品はベーキング用に開発されたが、乳製品や、他の食物または飼料用途の酵素送達ビヒクルとしても同じように好適である。そのような用途の例には、例えば、インスタントコーヒー、ポテトチップス、およびグリセロールのような液体の非食品配合成分が望ましくない他の用途が含まれる。
【0017】
固形酵素物品
本発明による固形酵素物品は、ベーキングに使用するための固形酵素計量形態であり、これは生地を調製するための十分な酵素を(場合により他の機能性成分とともに)提供する。従って、この固形酵素物品はまた、単位量物品と呼ばれることもある。これは、1以上の酵素と1以上の生地成分を含んでなる。
【0018】
固形酵素物品は、成形された物理的形態で存在するが、正確な物理的形態は機能にとって重要ではない。この物品は、混合中に生地で崩壊および溶解することができる。混合後、酵素は生地全体に均一に分散される。本発明の単位量物品は、少なくとも2kgの生地に酵素を適用するのに好適であり得る。
【0019】
これらの特性は、湿潤粉末からこの物品を形成することにより達成され、湿潤粉末は、1~200000kPa;好ましくは2~100000kPa、より好ましくは5~50000kPa、いっそうより好ましくは5~10000kPa、最も好ましくは5~5000kPa、または10~1000kPaの圧力を加えることによって圧縮される。この圧縮は、型内で、または湿潤粉末をダイから押し出し、乾燥する前に固形物品を所望のサイズに切断することにより行うことができる。好ましくは、圧縮は、型内で湿潤粉末を圧縮するためにピストンを使用して、成形された物理的形態を提供する型(剛性フレーム)内で行われる。
【0020】
湿潤粉末に含まれる水分量が低い場合、圧縮に必要な圧力は高く;湿潤粉末に含まれる水分量が高い場合、圧縮に必要な圧力は低い。
【0021】
湿潤粉末の圧縮後、固形物品は、湿潤粉末から少なくとも30w/w%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%の水を除去するために乾燥させる。
【0022】
得られた固形物品の摩損度は、以下の試験方法Bを使用して決定されるとおり、15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満であり得る。
【0023】
本発明の最終固形酵素物品の重量は、1~100グラムであり得る。一つの実施態様では、この固形物品の重量は、1~50グラム、好ましくは1~30グラム、より好ましくは1~20グラム、最も好ましくは1~10グラムである。重量の下限はまた、3グラム、6グラム、または9グラムで始まり得、これにより、本発明の最終固形酵素物品の重量は、3~100グラム、6~100グラム、9~100グラム、好ましくは、3~50グラム、6~50グラム、または9~50グラムなどの範囲となる。
【0024】
本発明の最終固形酵素物品の体積は、1~100mL(またはcm3)であり得る。一つの実施態様では、この固形物品の体積は、1~50mL、好ましくは1~30mL、より好ましくは1~20mL、最も好ましくは1~10mLである。体積の下限はまた、3mL、6mL、または9mLで始まり得、これにより、本発明の最終固形酵素物品の体積は、3~100mL、6~100mL、9~100mL、好ましくは、3~50mL、6~50mL、または9~50mLなどの範囲となる。
【0025】
固形酵素物品を製造するための工程
固形酵素物品は、当技術分野で周知の方法により製造することができる。乾燥成分と水は、固液混合用の様々なタイプの混合装置を使用して混合される。これらの物品を製造するための湿潤粉末は、例えば、James C. P. Chen and Chung Chi ChouによるCane Sugar Handbook: A Manual for Cane Sugar Manufacturers and Their Chemists、第12版(1993)またはMosen AsadiによるBeet-Sugar Handbook(2007)に記載されている打錠機、押出機、ハーシードラム(Hersey drums)、シャンボン法(Chambon process)、エルバ法(Elba process)およびビブロ法(Vibro process)を使用することを含むさまざまな装置または方法を使用してプレスまたは成形することができる。形成された湿潤物品は、続いて、単純な炉乾燥、熱風対流乾燥(例えば、熱風トンネル)、真空乾燥、誘電乾燥(例えば、マイクロ波の使用)または周囲条件と平衡化するための物品の単純な放置を含む当技術分野で周知の方法(または方法の組合せ)を使用して乾燥させる(最終的には冷却する)。これらの方法のいくつかは上記の文献にも記載されている。
【0026】
湿潤粉末
水
湿潤粉末は、0.5~10w/w%の水を含有し、これが、酵素、生地成分、および結合剤と混合され、湿潤粉末を形成する。水含量は、直接添加されるか、または湿潤粉末の他の成分に存在するためにそれらに由来する水の総量である。一つの実施態様では、湿潤粉末は、0.5~8w/w%、または1~10w/w%、好ましくは1~8w/w%、の水を含有する。
【0027】
好ましい実施態様では、湿潤粉末は、0.5~10w/w%の添加水、つまり、湿潤粉末の調製中に特定の成分として(例えば、水道水として)直接添加される水を含有する。好ましくは、湿潤粉末は、0.5~8w/w%の添加水、または1~10w/w%の添加水、より好ましくは1~8w/w%の添加水を含有する。
【0028】
酵素
湿潤粉末を調製するために使用される酵素は、以下に記載されている。湿潤粉末の酵素含量は、0.01~20w/w%の活性酵素タンパク質である。一つの実施態様では、この酵素含量は、0.1~20w/w%の活性酵素タンパク質、好ましくは0.1~15w/w%の活性酵素タンパク質、より好ましくは0.5~15w/w%の活性酵素タンパク質、最も好ましくは0.5~10w/w%の活性酵素タンパク質である。穀粉のような一部のベーキング成分は、微量の酵素を含有する場合があるが、必要な量の活性酵素タンパク質を得るために、酵素をさらに添加する。
【0029】
生地成分
生地成分は、塩、糖、デンプン、アスコルビン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。湿潤粉末は、生地成分を少なくとも10w/w%の総量で含んでなる。特定の実施態様では、湿潤粉末は、生地成分を少なくとも20w/w%、好ましくは少なくとも30w/w%、より好ましくは、少なくとも40w/w%(at 40% w/w)、最も好ましくは少なくとも50w/w%の総量で含んでなる。
【0030】
湿潤粉末は、他の生地成分、例えば、限定されるものではないが、システインなどの他の酸化剤および/または還元剤、タンパク質、繊維などの不溶性炭水化物を含み得る。
【0031】
生地成分の塩、糖、およびデンプンは、ベーキングおよびベークド製品と適合するいずれもの塩、糖、およびデンプンであり、従って、それらはまた、食用であり得る、つまり、食物に使用するのに好適である。特に好ましい塩は、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムである。糖は、以下に定義される糖の中から選択され得る。さらに、糖は、生地成分と湿潤粉末の「結合剤」の両方であるという二重の役割を果たし得る(以下参照)。特に好ましい実施態様では、デンプンが穀粉として湿潤粉末に添加される。湿潤粉末は、35w/w%未満の穀粉、例えば、30w/w%未満の穀粉を含んでなり得る。
【0032】
結合剤
生地成分に加えて、結合剤が少なくとも1w/w%、好ましくは(preferable)少なくとも2w/w%、より好ましくは少なくとも5w/w%の量で湿潤粉末に添加される。結合剤は、糖および糖アルコールから選択される。結合剤の目的は、湿潤粉末の粒子を一緒に結合することによって、固形物品の摩損度を低減することである。湿潤粉末中の水含量が低いことから少量の結合剤しか溶解しないことは確実であるため結合剤の量の上限はなく、より多く存在する場合は、粒状形態で溶解しないままとなる。
【0033】
湿潤粉末中に含まれる結合剤は、20℃で100mlの水あたり少なくとも0.1gの溶解度を有し得る。
【0034】
結合剤および生地成分の糖は、1~20個の単糖単位からなり得る。これには、単糖ならびに二糖および三糖などのオリゴ糖が含まれる。単糖は、グルコース、マンノース、ガラクトース、およびフルクトースであり得る。二糖は、スクロース、マルトース、トレハロース、イソマルトース、セルビオース(cellubiose)、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、ゲンチオビオース、およびラクトースであり得る。三糖は、マルトトリオースおよびラフィノースであり得る。他のオリゴ糖は、フルクトオリゴ糖またはイヌリンを含み得る。
【0035】
糖は、例えば、平均2~20個のモノマーグルコース単位を有する、加水分解によって生成されるデンプン加水分解物、例えば、デキストリンまたはマルトデキストリンであり得る。糖は、6~52のDEを有するマルトデキストリンであり得る。DEが20を超えるマルトデキストリンは、グルコースシロップと呼ばれることが多い。
【0036】
糖アルコールは、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、またはソルビトールなどの単量体糖アルコールであり得る。好ましくは、糖アルコールは、ソルビトールである。
【0037】
湿潤粉末は水(水分)を含有するが、粉末の性質を保持する。水含量が粉末を懸濁液に変えず、それはまた、ゲルではない。
【0038】
湿潤粉末の安息角は、水を添加しない粉末の安息角よりも大きい。
【0039】
酵素
本発明で使用される酵素は、触媒タンパク質であり、「活性酵素タンパク質」という用語は、本明細書において酵素活性を示す触媒タンパク質の量と定義される。これは、活性に基づく分析酵素アッセイを使用して決定することができる。このようなアッセイでは、酵素は、一般には、着色された化合物を生成する反応を触媒する。着色された化合物の量を測定し、活性酵素タンパク質の濃度と相関させることができる、この技術は、当技術分野で周知である。活性酵素タンパク質は、真菌または細菌の酵素であり得る。
【0040】
本発明による固形物品の調製において、および本発明による固形物品の成分として使用される酵素は、ベーキングに使用するのに好適ないずれもの酵素である。具体的には、酵素は、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、α-アミラーゼ、マルトース生成α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、脂肪分解酵素、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、ガラクタナーゼ、グルカン1、4-α-マルトテトラヒドロラーゼ、グルカナーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ヘミセルラーゼ、ハロペルオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、マンナナーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
本発明で使用するためのグルコアミラーゼには、黒麹菌(Aspergillus niger)G1またはG2グルコアミラーゼ(Boel et al. (1984), EMBO J. 3 (5), p. 1097-1102)、WO 84/02921で開示されている泡盛黒麹菌(A. awamori)グルコアミラーゼ、または黄麹菌(A. oryzae)グルコアミラーゼ(Agric. Biol. Chem. (1991), 55 (4), p. 941-949)のアミノ酸配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%配列同一性を有するグルコアミラーゼが含まれる。
【0042】
このアミラーゼは、真菌または細菌のもの、例えば、バチルス・ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)由来のマルトース生成α-アミラーゼまたはバチルス属(Bacillus)、例えば、バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)もしくはバチルス・アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)由来のα-アミラーゼ、β-アミラーゼ、例えば、植物(例えば、大豆)由来もしくは微生物起源(例えば、バチルス属)由来のもの、あるいは真菌のα-アミラーゼ、例えば、黄麹菌由来のものであり得る。
【0043】
マルトース生成α-アミラーゼはまた、例えば、WO1999/043794;WO2006/032281;またはWO2008/148845で開示されているようなマルトース生成α-アミラーゼであり得る。
【0044】
好適な市販のマルトース生成α-アミラーゼには、ノバミル、オプティケーキ50 BG、およびオプティケーキ3D(Novozymes A/Sから入手可能)が挙げられる。好適な市販の真菌α-アミラーゼ組成物には、例えば、ベイクザイムP 300(DSMから入手可能)およびファンガミル2500 SG、ファンガミル 4000 BG、ファンガミル800 L、ファンガミルウルトラBGおよびファンガミルウルトラSG(Novozymes A/Sから入手可能)が挙げられる。
【0045】
老化防止アミラーゼはまた、例えば、シュードモナス属(Pseudomonas)由来のアミラーゼ(グルカン1、4-α-マルトテトラヒドロラーゼ(EC 3.2.1.60))、例えば、WO1999/050399、WO2004/111217、またはWO2005/003339で開示されているアミラーゼのいずれかであり得る。
【0046】
グルコースオキシダーゼは、真菌グルコースオキシダーゼ、特に、黒麹菌グルコースオキシダーゼ(例えば、グルザイム(登録商標)、Novozymes A/Sから入手可能)であり得る。
【0047】
脂肪分解酵素は、リパーゼ、ホスホリパーゼおよび/またはガラクトリパーゼ活性を有する酵素(EC 3.1.1);特にリパーゼおよびホスホリパーゼ活性を有する酵素である。
【0048】
リパーゼは、トリアシルグリセロールリパーゼ活性(EC 3.1.1.3)、すなわち、トリグリセリド、例えば、トリブチリン中のカルボン酸エステル結合に対する加水分解活性を示す。
【0049】
ホスホリパーゼは、ホスホリパーゼ活性(A1またはA2、EC 3.1.1.32または3.1.1.4)、すなわち、レシチンなどのリン脂質中の一方または両方のカルボン酸エステル結合に対する加水分解活性を示す。
【0050】
ガラクトリパーゼは、ガラクトリパーゼ活性(EC 3.1.1.26)、すなわち、DGDG(ジガラクトシルジグリセリド)などのガラクト脂質中のカルボン酸エステル結合に対する加水分解活性を示す。
【0051】
ヘミセルラーゼは、ペントサナーゼ、例えば、微生物起源のもの、例えば、バチルス属株、特に、枯草菌(B. subtilis)株、もしくはシュードアルテロモナス属(Pseudoalteromonas)株、特に、P.ハロプランクティス(P. haloplanktis)などの細菌由来、またはアスペルギルス属(Aspergillus)、特に、A.アクレアツス(A. aculeatus)、黒麹菌、泡盛黒麹菌、もしくはA.ツビゲンシス(A. tubigensis)の株、トリコデルマ属(Trichoderma)、例えば、T.リーゼイ(T. reesei)の株、もしくはフミコラ属(Humicola)、例えば、H.インソレンス(H. insolens)の株などの真菌由来であり得るキシラナーゼであり得る。
【0052】
本発明で使用するのに好適な市販のキシラナーゼ調製物には、PANZEA BG、ペントパン MONO BGおよびペントパン500 BG(Novozymes A/Sから入手可能)、GRINDAMYL POWERBAKE(DuPontから入手可能)、およびベイクザイムBXP 5000およびベイクザイムBXP 5001(DSMから入手可能)が挙げられる。
【0053】
プロテアーゼは、バチルス属由来、例えば、バチルス・アミロリケファシエンス由来またはテルムス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)由来であり得る。
【0054】
生地
一つの側面において、本発明は、生地またはその生地から調製されるベークド製品を製造するための方法を開示し、この方法は、本発明による固形酵素物品を生地に組み込むことを含んでなる。
【0055】
本発明はまた、生地またはベークド製品を製造するための方法であって、固形酵素物品が組み込まれていない生地またはベークド製品と比較して、生地または生地から得られるベークド製品の1以上の特性を改善する有効量の本発明の固形酵素物品を生地に組み込むことを含んでなる方法に関する。
【0056】
「生地に組み込むこと」という語句は、本明細書において、本発明による固形酵素物品を生地に、生地が作られるいずれもの成分に、および/または生地が作られる生地成分のいずれもの混合物に追加することと定義される。言い換えれば、本発明の固形物品は、生地調製のいずれもの段階で添加してよく、一段階、二段階またはそれ以上の段階で添加してよい。固形物品は、当技術分野で周知の方法を使用してベークド製品を作るために、混練または混合され、焼かれ得る生地の成分に添加される。
【0057】
「有効量」という用語は、本明細書において、生地および/またはベークド製品の対象となる少なくとも1つの特性に測定可能な効果を与えるのに十分な本発明による固形酵素物品の量と定義される。有効量にはまた、1生地および/またはベークド製品あたり固形酵素物品の一部または2つ以上の固形酵素物品も含まれる。
【0058】
対象となる特性の限定されない例は、生地耐性、レオロジー(粘着性、弾力性、伸展性) 機械加工性、ベークド製品の体積、柔らかさ、復元力、凝集性、弾力性、クラスト色、スライス性、および/またはショートバイト(short bite)である。
【0059】
「生地」という用語は、本明細書において、混練しまたは丸めるのに十分に固い穀粉と他の成分の混合物と定義される。本発明の文脈において、バッターは、「生地」という用語に包含される。
【0060】
本発明の方法の生地は、小麦、エンマー小麦、スペルト小麦、ヒトツブ小麦、大麦、ライ麦、オート麦、トウモロコシ、ソルガム、米、キビ、アマランス、キノア、およびキャッサバを含むいずれもの穀物または他の起源に由来する穀粉を含んでなり得る。
【0061】
生地はまた、他の従来の生地成分、例えば、粉乳、グルテン、および大豆などのタンパク質;卵(全卵、卵黄、もしくは卵白のいずれか);アスコルビン酸、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカルボンアミド(ADA)もしくは過硫酸アンモニウムなどの酸化剤;L-システインなどのアミノ酸;糖;塩化ナトリウム、酢酸カルシウム、硫酸ナトリウム、もしくは硫酸カルシウムなどの塩、ガム、繊維、防腐剤、ならびに/または乳化剤を含んでなり得る。
【0062】
生地は、1以上の脂質材料(例えば、マーガリン、バター、オイル、ショートニングなど)を、最終的には粒状形態で含んでなり得る。
【0063】
生地は、グルテンフリーの生地であり得る。
【0064】
本発明の方法の生地は、生であってもよく、冷凍してもよく、または半焼成(予備焼成)し)(par-baked(pre-baked))してもよい。
【0065】
本発明の方法の生地は、膨らませていない生地、膨らませた生地または膨らませる生地である。
【0066】
生地は、化学膨張剤、例えば、ベーキングパウダー、重炭酸ナトリウムを添加することによるか、またはパン種(生地を発酵させる)を添加することによるなどさまざまな方法で膨らませ得るが、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(パン酵母)、例えば、市販のS.セレビシエ株の培養物などの好適な酵母培養物を添加することにより生地を膨らませることが好ましい。
【0067】
乳化剤
一部の用途では、乳化剤は必要でないが;一部の用途では、乳化剤が必要な場合がある。
【0068】
本発明で使用するのに好適な乳化剤は、好ましくは、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM)、ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)、ステアロイル乳酸カルシウム(CSL)、エトキシル化モノグリセリドおよびジグリセリド(EMG)、蒸留モノグリセリド(DMG)、ポリソルベート(PS)、スクシニル化モノグリセリド(SMG)、プロピレングリコールモノエステル、ソルビタン乳化剤、ポリグリセロールエステル、スクロースエステルおよびレシチンからなる群から選択される乳化剤である。
【0069】
一部の用途では、本発明による脂肪分解酵素は、生地レシピに通常存在する乳化剤の一部または総ての代わりに使用される。
【0070】
ベークド製品
本発明の工程は、生地から調製されるいずれの種類のベークド製品にも、特には(particular)、白色、淡色または濃色タイプのいずれかの柔らかい性質のものに使用し得る。限定されない例は、パン(特に、精白パン、全粒パンまたはライ麦パン)、一般にはローフまたはロール形態のもの、ソフトロール、ベーグル、ドーナツ、デニッシュペストリー、パフペストリー、積層ベークド製品、蒸しパン、ハンバーガーロール、ピザ、ピタパン、チャバタ、スポンジケーキ、クリームケーキ、パウンドケーキ、マフィン、カップケーキ、蒸しケーキ、ワッフル、ブラウニー、ケーキドーナツ、酵母発酵ドーナツ、バゲット、ロール、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイクラスト、ラスクおよび他のベークド製品である。
【0071】
本発明のさらなる実施態様には以下が含まれる:
実施態様1 ベーキングに使用するための、1~100グラムの重量の成形形態の固形酵素物品を製造するための方法であって、
(a)以下:
(i)0.5~10w/w%の水;
(ii)0.01~20w/w%の活性酵素タンパク質;
(iii)少なくとも10w/w%の、塩、糖、デンプン、アスコルビン酸、およびそれらの組合せからなる群から選択される生地成分;ならびに
(iv)少なくとも1w/w%の、糖および糖アルコールから選択される結合剤;
を含んでなる湿潤粉末を調製すること;
(b)前記湿潤粉末に1~200000kPaの圧力を加えることによって前記固形物品を形成すること;ならびに
(c)前記湿潤粉末中の少なくとも30%の水を除去するために前記固形物品を乾燥させること;
を含んでなり、
ここで、前記固形酵素物品は、1~100グラムの重量であり、かつ、0.01~20w/w%の活性酵素タンパク質を含んでなる、方法。
実施態様2 前記固形物品が1~50gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様3 前記固形物品が1~30gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様4 前記固形物品が1~20gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様5 前記固形物品が1~10gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様6 前記固形物品が3~100gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様7 前記固形物品が3~50gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様8 前記固形物品が3~30gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様9 前記固形物品が3~20gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様10 前記固形物品が6~100gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様11 前記固形物品が6~50gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様12 前記固形物品が6~30gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様13 前記固形物品が9~100gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様14 前記固形物品が9~50gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様15 前記固形物品が9~30gの重量である、実施態様1に記載の方法。
実施態様16 前記固形物品の量が1~100mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様17 前記固形物品の量が1~50mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様18 前記固形物品の量が1~30mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様19 前記固形物品の量が1~20mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様20 前記固形物品の量が1~10mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様21 前記固形物品の量が3~100mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様22 前記固形物品の量が3~50mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様23 前記固形物品の量が3~30mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様24 前記固形物品の量が3~20mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様25 前記固形物品の量が6~100mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様26 前記固形物品の量が6~50mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様27 前記固形物品の量が6~30mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様28 前記固形物品の量が9~100mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様29 前記固形物品の量が9~50mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様30 前記固形物品の量が9~30mLである、実施態様1に記載の方法。
実施態様31 前記湿潤粉末が0.5~8w/w%の水を含んでなる、実施態様1~30のいずれか一項に記載の方法。
実施態様32 前記湿潤粉末が1~10w/w%の水を含んでなる、実施態様1~31のいずれか一項に記載の方法。
実施態様33 前記湿潤粉末が1~8w/w%の水を含んでなる、実施態様1~32のいずれか一項に記載の方法。
実施態様34 前記湿潤粉末が少なくとも20w/w%の、塩、糖、デンプン、アスコルビン酸、およびそれらの組合せからなる群から選択される生地成分を含んでなる、実施態様1~33のいずれか一項に記載の方法。
実施態様35 前記湿潤粉末が少なくとも30w/w%の、塩、糖、デンプン、アスコルビン酸、およびそれらの組合せからなる群から選択される生地成分を含んでなる、実施態様1~34のいずれか一項に記載の方法。
実施態様36 前記湿潤粉末が少なくとも40w/w%の、塩、糖、デンプン、アスコルビン酸、およびそれらの組合せからなる群から選択される生地成分を含んでなる、実施態様1~35のいずれか一項に記載の方法。
実施態様37 前記湿潤粉末が少なくとも50w/w%の、塩、糖、デンプン、アスコルビン酸、およびそれらの組合せからなる群から選択される生地成分を含んでなる、実施態様1~36のいずれか一項に記載の方法。
実施態様38 前記生地成分が塩、糖、デンプン、アスコルビン酸、酸化剤および/または還元剤、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、実施態様1~37のいずれか一項に記載の方法。
実施態様39 前記生地成分が塩、糖、デンプン、アスコルビン酸、システイン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施態様1~38のいずれか一項に記載の方法。
実施態様40 前記生地成分が塩および/または糖である、実施態様1~39のいずれか一項に記載の方法。
実施態様41 前記塩、糖、およびデンプンが食用である、つまり、食物に使用するのに好適である、実施態様1~40のいずれか一項に記載の方法。
実施態様42 前記塩が塩化ナトリウムおよび/または塩化カリウムである、実施態様1~41のいずれか一項に記載の方法。
実施態様43 前記デンプンが穀粉として前記湿潤粉末に添加される、実施態様1~42のいずれか一項に記載の方法。
実施態様44 前記湿潤粉末に含まれる穀粉が35%未満である、実施態様1~43のいずれか一項に記載の方法。
実施態様45 前記湿潤粉末に含まれる穀粉が30%未満である、実施態様1~44のいずれか一項に記載の方法。
実施態様46 前記湿潤粉末が少なくとも2w/w%の結合剤を含んでなる、実施態様1~45のいずれか一項に記載の方法。
実施態様47 前記湿潤粉末が少なくとも5w/w%の結合剤を含んでなる、実施態様1~46のいずれか一項に記載の方法。
実施態様48 前記結合剤および前記生地成分の糖が1~20個の単糖単位からなる、実施態様1~47のいずれか一項に記載の方法。
実施態様49 前記結合剤および前記生地成分の糖が1~10個の単糖単位からなる、実施態様1~48のいずれか一項に記載の方法。
実施態様50 前記結合剤および前記生地成分の糖が1~5個の単糖単位からなる、実施態様1~49のいずれか一項に記載の方法。
実施態様51 前記結合剤および前記生地成分の糖が、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、デキストリン、マルトデキストリン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施態様1~50のいずれか一項に記載の方法。
実施態様52 前記結合剤および前記生地成分の糖が、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施態様1~51のいずれか一項に記載の方法。
実施態様53 前記結合剤および前記生地成分の糖が、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、イソマルトース、セルビオース(cellubiose)、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、ゲンチオビオース、ラクトース、マルトトリオース、ラフィノース、フルクトオリゴ糖およびイヌリンからなる群から選択される、実施態様1~52のいずれか一項に記載の方法。
実施態様54 前記結合剤および前記生地成分の糖が、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、イソマルトース、およびラクトースからなる群から選択される、実施態様1~53のいずれか一項に記載の方法。
実施態様55 前記結合剤および前記生地成分の糖が、グルコース、フルクトース、スクロース、および/またはラクトースであり、かつ、前記塩が塩化ナトリウムおよび/または塩化カリウムである、実施態様1~54のいずれか一項に記載の方法。
実施態様56 前記糖アルコールが単量体糖アルコールである、実施態様1~55のいずれか一項に記載の方法。
実施態様57 前記糖アルコールがエリトリトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、およびソルビトールからなる群から選択される、実施態様1~56のいずれか一項に記載の方法。
実施態様58 前記糖アルコールがソルビトールである、実施態様1~57のいずれか一項に記載の方法。
実施態様59 前記湿潤粉末が0.1~15w/w%活性酵素タンパク質を含有する、実施態様1~58のいずれか一項に記載の方法。
実施態様60 前記湿潤粉末が0.5~15w/w%活性酵素タンパク質を含有する、実施態様1~59のいずれか一項に記載の方法。
実施態様61 前記湿潤粉末が0.5~10w/w%活性酵素タンパク質を含有する、実施態様1~60のいずれか一項に記載の方法。
実施態様62 前記酵素がアミラーゼ、リパーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ、トランスグルタミナーゼ、およびオキシドレダクターゼからなる群から選択される1以上の酵素である、実施態様1~61のいずれか一項に記載の方法。
実施態様63 前記酵素がアミラーゼ、リパーゼ、およびヘミセルラーゼからなる群から選択される1以上の酵素である、実施態様1~62のいずれか一項に記載の方法。
実施態様64 前記湿潤粉末に1~200000kPaの圧力を加えることによって前記固形物品が形成される、実施態様1~63のいずれか一項に記載の方法。
実施態様65 前記湿潤粉末に2~100000kPaの圧力を加えることによって前記固形物品が形成される、実施態様1~64のいずれか一項に記載の方法。
実施態様66 前記湿潤粉末に5~50000kPaの圧力を加えることによって前記固形物品が形成される、実施態様1~65のいずれか一項に記載の方法。
実施態様67 前記湿潤粉末に5~10000kPaの圧力を加えることによって前記固形物品が形成される、実施態様1~66のいずれか一項に記載の方法。
実施態様68 前記湿潤粉末に5~5000kPaの圧力を加えることによって前記固形物品が形成される、実施態様1~67のいずれか一項に記載の方法。
実施態様69 前記湿潤粉末に10~1000kPaの圧力を加えることによって前記固形物品が形成される、実施態様1~68のいずれか一項に記載の方法。
実施態様70 前記湿潤粉末から少なくとも30%の水を除去するために前記固形物品を乾燥させる、実施態様1~69のいずれか一項に記載の方法。
実施態様71 前記湿潤粉末から少なくとも40%の水を除去するために前記固形物品を乾燥させる、実施態様1~70のいずれか一項に記載の方法。
実施態様72 前記湿潤粉末から少なくとも50%の水を除去するために前記固形物品を乾燥させる、実施態様1~71のいずれか一項に記載の方法。
実施態様73 前記固形物品の摩損度が15%未満である、実施態様1~72のいずれか一項に記載の方法。
実施態様74 前記固形物品の摩損度が10%未満である、実施態様1~73のいずれか一項に記載の方法。
実施態様75 前記固形物品の摩損度が5%未満である、実施態様1~74のいずれか一項に記載の方法。
実施態様76 前記湿潤粉末が0.5~10w/w%の添加水を含んでなる、実施態様1~75のいずれか一項に記載の方法。
実施態様77 前記湿潤粉末が0.5~8w/w%の添加水を含んでなる、実施態様1~76のいずれか一項に記載の方法。
実施態様78 前記湿潤粉末が1~10w/w%の添加水を含んでなる、実施態様1~77のいずれか一項に記載の方法。
実施態様79 前記湿潤粉末が1~8w/w%の添加水を含んでなる、実施態様1~78のいずれか一項に記載の方法。
実施態様80 実施態様1~79のいずれか一項に記載の方法により得られる、ベーキングに使用するための成形形態の固形物品。
実施態様81 生地を調製するための方法であって、水、穀粉、および実施態様80に記載の固形物品を混合することを含んでなる、方法。
実施態様82 ベークド製品を製造するための方法であって、
(a)水、穀粉、および実施態様80に記載の固形物品を混合することにより生地を調製すること;ならびに
(b)前記生地を焼くこと
を含んでなる、方法。
【0072】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0073】
化学薬品は、少なくとも試薬用の市販の製品であった。白糖は、EUグレード2であった。
【0074】
摩損度
摩損度は、圧縮および/または摩擦後に錠剤が欠け、砕けまたは壊れる傾向である。この傾向は、通常、取り扱い中またはその後の貯蔵中にコーティングされていない錠剤および表面に限定される。例えば、摩損度試験は、輸送中の錠剤の耐久性を試験するために、製薬業界で使用されている。
【0075】
試験方法A:欧州薬局方第2.9.7.章に示される通り
【0076】
試験方法B:2つの錠剤を50mlのNuncチューブ(5g未満の錠剤の場合)または250mlのNuncチューブ(5gを超える錠剤の場合)に入れ、続いて、250mm カルーセル/ローテーター-例えば、Stuart SB2ローテーターで100回転させる。回転の前および後(残った2つの最大部分の重量を量る)に2つの物品の重量を量り、重量損失(初期重量のパーセントとして)が摩損度である。
【0077】
実施例1
ベーキング物品の製造
ビーカーでスプーンを使用して以下の成分を混合することにより湿潤粉末を調製した:
・18.0グラムの淡色マスコバド糖(Dansukker)-約1%水を含有する
・39.4グラムの塩化ナトリウム(Suprasel Fine Salt、Akzo Nobel)
・1.0グラムの酵素混合物A(αアミラーゼおよびキシラナーゼを含有し、総活性酵素含量約6w/w%で、小麦粉を主担体とする粒状酵素製品)
・1.6グラムのL-アスコルビン酸(Sigma W210901)
・1.8グラムの水道水
【0078】
得られた湿潤粉末は、約5w/w%水を含有し;糖、塩およびアスコルビン酸の含量は約98w/w%であった。固形酵素物品は、この湿潤粉末から、3.10グラムの湿潤粉末を直径20mmの円筒形の金属製型枠に加えることによって製造した。続いて、湿潤粉末を型枠内で金属ピストンおよび圧力24kPaを使用して5分間圧縮した。続いて、この湿潤品を軽真空下、デシケーター内で一晩乾燥させた。乾燥後、重量は3.02グラムであった(寸法 直径20mmおよび高さおよそ10mm)。これは、湿潤粉末中の50%を超える水が除去されたことに相当する。この手順を用いて、いくつかの固形酵素物品(ベーキング物品とも呼ぶ)を製造した。固形物品の摩損度は、試験方法Bを使用して決定した場合、2.6%であった。
【0079】
実施例2
ベーキング物品の完全崩壊試験
表1に示されるように、固形酵素ベーキング物品を含むベーキング成分を混合することにより生地を調製した。
【0080】
【0081】
工程
Diosna SP24で総ての成分(表1)を低速で2分間および高速で6分間混合する。最終生地温度は約26℃である。
【0082】
ベーキング物品崩壊評価方法および判定基準
a)得られた生地を各50gの部分に分ける。
b)各単一部分を最大限に伸ばす
c)各単一部分を、1/生地にまたは生地内側に付着しているベーキング物品の残片および2/生地部分表面の生地色と異なる色のスポットに関して視覚的に制御する。
d)場合により、伸ばした生地部分を見通せるように、より好都合には、ベーキング物品の残片を識別するために、光源(従来のUVランプ)を使用してよい。
【0083】
実施例3
ベーキングトライアル
3つの異なる生地(A、B、C)を、表2に示すベーキング成分を混合することにより調製した。生地Aは、酵素なしで調製し、生地Bは、従来の粉末状ベーキング酵素製品および粉末状アスコルビン酸を用いて調製し、生地Cは、実施例1のベーキング物品を用いて調製する。
【0084】
【0085】
工程
a)Diosna SP24で総ての成分を低速で2分間、次に、高速で6分間混合する。最終生地温度は約26℃であった。生地中または上にベーキング物品の残片は見られなかった。
b)室温(21℃)で5分間バルク発酵を行う。
c)500gの生地を量る。
d)パンを手作業で成形する。
e)室温(21℃)で20分間の中間発酵を行う。
f)Jac UnicにおいてR5.5およびL16で成形し、生地を焼き型に入れる。
g)Koma発酵室において35℃および95%RHで80分間発酵させる。
h)生地の50%で衝撃試験を行う(生地が入っている焼き型を5.5cmの高さから棚の上に落とす)。
i)Miwe Condoオーブンにおいて230℃で35分間生地を焼くことによりパンを製造する。
j)パン室温で冷却させる。
【0086】
パンの体積は、一般的に使用されている菜種置換法を使用して測定した。結果を表3に示す。
【0087】
【0088】
結果は、本発明の固形酵素ベーキング物品の使用が、従来の粉末状ベーキング酵素の使用と同様の性能を与えることを示している。
【0089】
実施例4
摩損度の低いベーキング物品の製造
3つのベーキング物品(I、II、およびIII)を、実施例1に記載のとおりに、表4に示す成分を使用して製造した(この場合、小麦粉(水含量15%未満のMeneba Kolibri)を使用して、酵素含量を表す)。摩損度は、乾燥(実施例1の場合のように50%を超える水が除去された)後、方法Bを使用して測定した。
【0090】
【0091】
低い摩損度を得るには、一定量の結合剤(例えば、糖)が必要であると明確に結論付けることができる。
【0092】
実施例5
摩損度および崩壊に対する水添加の効果
ベーキング物品(IV)を、実施例1の方法を使用することにより(直径23mmの円筒形の金属製型枠を使用)、表5に示されるような配合物および圧縮パラメーターを使用して製造した。活性酵素タンパク質含量約30%の、2種のα-アミラーゼ、キシラナーゼおよびリパーゼを含む粒状酵素混合物(酵素混合物B)を使用した。乾燥工程(真空下30℃、一晩)の終わりには、50%を超える添加水が除去された。摩損度は、方法Bを使用して測定した。崩壊は、実施例2の場合のように試験した。結果は、表5に示す。
【0093】
【0094】
添加水を多く含むこの実施例では、観察された生地の崩壊は不十分であった。
【0095】
実施例6
他の組成物
4つの固形酵素ベーキング物品(V、VI、VII、VIII)を、実施例1で論じたような方法を使用し、表6に示されるような配合物および圧縮パラメーターを使用して製造した。物品V、VIIを、25×25mmの立方形の金属製型枠を使用して製造し、VI、VIIIを、直径23mmの円筒形の金属製型枠を使用して製造した。ベーキング物品Vでは、活性酵素タンパク質含量約6%で、小麦粉を主担体とする粒状酵素混合物(酵素混合物C)を使用した。乾燥工程(V 40℃で一晩インキュベートすることによる;VI、VIIおよびVIII 真空下30℃、一晩)の終わりには、50%を超える添加水が除去された。摩損度は、方法Bを使用して測定した。崩壊は、実施例2の場合のように試験した。結果は、表6に示す。
【0096】
【0097】
結果は、本発明の固形酵素ベーキング物品を製造するための結合剤、生地成分、活性酵素タンパク質および水の異なる組合せの使用が、生地系において結果として生じる摩損度および崩壊に関して同様の性能を与えることを示している。
【0098】
実施例7
摩損度および崩壊に対する圧力の効果
1つの固形酵素ベーキング物品(IX)を、実施例1の方法を使用することにより(25×25mmの四角形の型枠の使用)、表7に示されるような配合物および圧縮パラメーターを使用して製造した。活性酵素タンパク質含量約50%の粒状α-アミラーゼ酵素混合物を使用した。乾燥工程(40℃のオーブンで2時間)の終わりには、50%を超える添加水が除去された。摩損度は、方法Bを使用して測定した。崩壊は、実施例2の場合のように試験した。結果は、表7に示す。
【0099】
【0100】
結果は、固形酵素ベーキング物品の製造中に高圧を使用することにより、優れた摩損度および崩壊特性を有する製品を得ることができることを示している。
【0101】
実施例8
摩損度および崩壊に対する穀粉の効果
3つのベーキング物品(X、XI、XII)を、実施例1の方法を使用することにより(25×25mmの四角形の型枠(X)または直径23mmの円形の型枠(XIおよびXII)を使用)、表8に示されるような配合物および圧縮パラメーターを使用して製造した。使用した小麦粉はMeneba Kolibriであった。活性酵素タンパク質含量約50%の粒状α-アミラーゼ酵素混合物を使用した。乾燥工程(40℃のオーブンで2時間)の終わりには、50%を超える添加水が除去された。摩損度は、方法Bを使用して測定した。崩壊は、実施例2の場合のように試験した。結果は、表8に示す。
【0102】
【0103】
結果は、最大30%の穀粉(水添加前の乾燥成分の合計のパーセンテージは湿潤粉末の28.6パーセントに相当する)を含有する良好な性能を有する固形酵素ベーキング物品を得ることが可能であることを示している。
【0104】
実施例9
摩損度および崩壊に対する水含量およびを乾燥条件の効果
4つのベーキング物品(XIII、XIV、XV、XVI)を、実施例1の方法を使用することにより(25×25mmの四角形の型枠の使用)、表9に示されるような配合物および工程パラメーターを使用して製造した。活性酵素タンパク質含量約6%で、小麦粉を主担体とする粒状酵素混合物(酵素混合物C)を使用した。摩損度は、方法Bを使用して測定した。崩壊は、実施例2の場合のように試験した。結果は、表9に示す。
【0105】
【0106】
結果は、乾燥条件および水の量が、良好な性能を有する固形酵素ベーキング物品を得るための重要なパラメーターであることを示している。