(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】洗浄機及び洗浄システム
(51)【国際特許分類】
A47L 15/42 20060101AFI20240517BHJP
A47L 15/24 20060101ALI20240517BHJP
A47L 15/46 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A47L15/42 D
A47L15/24
A47L15/42 G
A47L15/46 A
(21)【出願番号】P 2021019814
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠治
(72)【発明者】
【氏名】為石 芳正
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛一
(72)【発明者】
【氏名】細木 忠治
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-51094(JP,A)
【文献】特開2011-177423(JP,A)
【文献】特開2013-223813(JP,A)
【文献】特開2020-130543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 15/00 - 15/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水タンクに貯留された水を洗浄室内に噴射する洗浄工程の実行と、濯ぎ水タンクに貯留された水を前記洗浄室内に噴射する濯ぎ工程の実行とを一サイクルに含む洗浄運転において、前記濯ぎ工程において前記洗浄室内に噴射することで供給される所定水量の水を前記洗浄水タンクに回収して次サイクルの前記洗浄工程において使用すると共に、前記洗浄水タンクに貯留されている水の一部を前記一サイクルの洗浄運転で入れ替える、洗浄機であって、
前記洗浄水タンクに所定水位を越えて供給される水が前記洗浄水タンクから流れ出る流出部と、
前記流出部よりも低い位置に設けられた排水部から前記洗浄水タンクに貯留された水を排水させる排水装置と、
前記排水装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記一サイクルにおいて、前記排水部から排水させる水量が前記所定水量よりも少ない第一水量となるように前記排水装置を制御することによって、前記所定水量の残りの水量である第二水量を前記流出部から流出させる、洗浄機。
【請求項2】
前記制御部は、前記一サイクルの洗浄運転において、前記濯ぎ工程が開始されるまでに前記第一水量の水を前記排水部から排水させる、請求項1記載の洗浄機。
【請求項3】
前記所定水量を設定する第一設定部と、
前記第一水量を設定する第二設定部と、を更に備える、請求項1又は2記載の洗浄機。
【請求項4】
前記制御部は、指定サイクルの洗浄運転時に、前記濯ぎ工程において前記洗浄室内に噴射することで供給される水の量を、通常サイクルの洗浄運転時よりも増量させる増量制御を実行する、請求項1~3の何れか一項記載の洗浄機。
【請求項5】
予備洗浄機として設けられる、請求項1~4の何れか一項記載の洗浄機と、
前記予備洗浄機において洗浄された被洗浄物を洗浄する本洗浄機と、を備え、
前記予備洗浄機は、前記被洗浄物が収容される位置よりも下方に配置され、前記洗浄室内に噴射される水と共に落下してくる、前記被洗浄物に付着していた残菜を回収する、残菜回収フィルタを有する、洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄機及び洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄水タンクに貯留された水を洗浄室内に噴射して被洗浄物を洗浄する洗浄工程の実行と、濯ぎ水タンクに貯留された水を洗浄室内に噴射して被洗浄物を濯ぐ濯ぎ工程の実行とを一サイクルとする洗浄運転を行い、濯ぎ工程において洗浄室内に供給される水を洗浄水タンクに回収して次のサイクルの洗浄工程において使用する洗浄機が知られている。例えば、特許文献1に開示された洗浄機には、洗浄運転時に洗浄水タンクにおいて所定水位を超えて供給される水を排水するオーバーフロー管が、洗浄水タンクの底面に設けられた排水口に挿し込まれた状態で設けられている。
【0003】
上記特許文献1の洗浄機では、上記のオーバーフロー管を排水口から引き抜くことで、洗浄水タンクに貯留された全ての水を排水させることができるものの、洗浄運転時には洗浄水タンクの上方の水をオーバーフロー管の上端からしか水を排水できない。このため、洗浄水タンクの下部には残菜等が溜まり、洗浄水タンクに貯留される水が汚れ易い傾向にあった。また、被洗浄物の洗浄力を維持するためには、定期的に洗浄水タンクの水を入れ替える必要があり、洗浄水タンクの水の入れ替えの間は洗浄運転を実行することができないので使い勝手に劣る場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平6-62970号公報
【文献】特開2020-130543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1の洗浄機に対し、特許文献2には、オーバーフロー管に加え、洗浄水タンクの底面に形成された排水口に接続される排水管に排水弁が設けられた構成の洗浄機が開示されている。この洗浄機では、排水弁を開放することで、洗浄水タンクに貯留された水を全排水することができる。しかしながら、特許文献2の構成の洗浄機であっても、洗浄水タンクの水を全排水する場合にしか排水弁は開放されず、特許文献1の洗浄機と同様に洗浄運転中はオーバーフロー管からしか水を排水できない。このため、特許文献1に記載の洗浄機と同様の課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、洗浄水タンクに貯留される水の汚濁を抑制して、洗浄水タンクにおける水の入替頻度を少なくできる洗浄機及び洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る洗浄機は、洗浄水タンクに貯留された水を洗浄室内に噴射する洗浄工程の実行と、濯ぎ水タンクに貯留された水を洗浄室内に噴射する濯ぎ工程の実行とを一サイクルに含む洗浄運転において、濯ぎ工程において洗浄室内に噴射することで供給される所定水量の水を洗浄水タンクに回収して次サイクルの洗浄工程において使用すると共に、洗浄水タンクに貯留されている水の一部を一サイクルの洗浄運転で入れ替える、洗浄機であって、洗浄水タンクに所定水位を越えて供給される水が洗浄水タンクから流れ出る流出部と、流出部よりも低い位置に設けられた排水部から洗浄水タンクに貯留された水を排水させる排水装置と、排水装置を制御する制御部と、を備え、制御部は、一サイクルにおいて、排水部から排水させる水量が所定水量よりも少ない第一水量となるように排水装置を制御することによって、所定水量の残りの水量である第二水量を流出部から流出させる。
【0008】
この構成の洗浄機では、洗浄水タンクに貯留される水は、上記一サイクルにおいて排水部から排水されるだけでなく流出部からも排水される。すなわち、洗浄水タンクに貯留される水は、一サイクルの洗浄運転において洗浄水タンクの上方からの排水に加え、洗浄水タンクの下方からも排水される。これにより、水の表面に集まる油分や浮遊物等の汚れと、洗浄水タンクの底面に集まる残菜や沈殿物等の汚れとの両方を排出することができるので、水の汚濁の原因となる汚れを効果的に洗浄水タンクから排水することができる。この結果、洗浄水タンクに貯留される水の汚濁を抑制して、洗浄水タンクにおける水の入替頻度を少なくできる。
【0009】
本発明に係る洗浄機では、制御部は、一サイクルの洗浄運転において、濯ぎ工程が開始されるまでに第一水量の水を排水部から排水させてもよい。この構成では、第一水量の水が一サイクルの洗浄運転に含まれる濯ぎ工程が開始されるまでに排水されるので、濯ぎ工程において洗浄室内に供給され、洗浄室内に回収される比較的きれいな水を洗浄水タンクに残すことができる。これにより、洗浄水タンクの汚濁を効果的に抑制することができる。
【0010】
本発明に係る洗浄機は、所定水量を設定する第一設定部と、第一水量を設定する第二設定部と、を更に備えてもよい。この構成では、洗浄水タンクにおける水の入替量を調整したり、洗浄水タンクの上部又は下部から排水させる水量の配分を調整したりすることができる。これにより、被洗浄物の汚れの状態に応じた最適な水の入れ替えが可能となる。
【0011】
本発明に係る洗浄機では、制御部は、指定サイクルの洗浄運転時に、濯ぎ工程において洗浄室内に噴射することで供給される水の量を、通常サイクルの洗浄運転時よりも増量させる増量制御を実行してもよい。この構成では、例えば一定サイクル毎又は所定のサイクル時に、洗浄室内に供給する水の量を増やして、洗浄水タンクにおける水の入替水量を増やすことができる。これにより、洗浄水タンクに貯留される水の汚濁をより効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明に係る洗浄システムでは、予備洗浄機として設けられる上記の洗浄機と、予備洗浄機において洗浄された被洗浄物を洗浄する本洗浄機と、を備え、予備洗浄機は、被洗浄物が収容される位置よりも下方に配置され、洗浄室内に噴射される水と共に落下してくる、被洗浄物に付着していた残菜を回収する、残菜回収フィルタを有してもよい。
【0013】
このような予備洗浄機は、被洗浄物に付着した残菜等を取り除くことを主目的に設置されるので、洗浄水タンクの汚濁の進み具合が早くなる。この洗浄システムでは、洗浄水タンクの汚濁の進み具合が早い予備洗浄機の洗浄水タンクに貯留される水の汚濁を抑制して、洗浄水タンクにおける水の入替頻度を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、洗浄水タンクに貯留される水の汚濁を抑制して、洗浄水タンクにおける水の入替頻度を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る洗浄システムの斜視図である。
【
図2】
図2は、予備洗浄機及び本洗浄機の斜視図である。
【
図3】
図3は、予備洗浄機の概略構成を示す図である。
【
図4】
図4は、予備洗浄機の概略構成を示す斜視断面図である。
【
図5】
図5は、洗浄システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本洗浄機の概略構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本洗浄機の概略構成を示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。以下の説明においては、
図2~
図4、
図6及び
図7で規定する方向(上下方向、前後方向、左右方向)を説明に用いる。
【0017】
図1に示されるように、洗浄システム200は、予備浸漬タンク203と、第一搬送部204と、予備洗浄機1と、本洗浄機101と、第二搬送部205と、を備えている。予備浸漬タンク203と、第一搬送部204と、予備洗浄機1と、本洗浄機101と、第二搬送部205とは、平面視したときにL字型に配置されている。
【0018】
予備浸漬タンク203は、水を貯留するタンクである。予備浸漬タンク203では、食器(被洗浄物)Dに付着するひどい汚れ等の除去が行われてもよい。第一搬送部204は、予備浸漬タンク203の隣りに配置されている。第一搬送部204は、食器ラックRを予備洗浄機1の洗浄室3に搬入する。食器ラックRは、皿や茶碗等の食器Dが並べられる格子状の部材である。第一搬送部204は、第一搬送部204の基台204aに食器ラックRが載置されたことが検知されると、アーム部材204bが移動して食器ラックRを予備洗浄機1の洗浄室3へ押し出す。
【0019】
予備洗浄機1は、本洗浄機101における食器Dの洗浄に先だち、食器Dの表面に付着した残菜等を洗い流すために設けられる洗浄機である。すなわち、予備洗浄機1は、予備浸漬タンク203において人手を介して行われていた食器Dの予備洗浄を実施する洗浄機である。
【0020】
図2に示されるように、予備洗浄機1は、ステンレス製のパネルで覆われた洗浄機本体2を有している。洗浄機本体2は、洗浄室3が形成された上側部分2Aと、機械室4が形成された下側部分2Bとに仕切られている。洗浄機本体2の背面側におけるコーナ部には、上側部分2Aと下側部分2Bとに渡って上下方向に延びる支柱6が配置され、支柱6,6間には背面パネル5が配置されている。
【0021】
洗浄機本体2の上側部分2Aには、洗浄室3の開閉を行うための箱型のドア7が設けられている。このドア7は、ステンレス製の一対の支柱6,6により上下動自在に案内されると共に、前方において水平方向に延在するハンドル8Aによって上下動する。ドア7は、第一搬送部204の搬送に連動して自動で開閉が行われる。また、ドア7は、食器Dの洗浄運転の終了に連動して自動で開閉が行われる。
【0022】
ハンドル8Aの両端には左右一対の回動アーム8B,8Bの先端が固定され、回動アーム8B,8Bはドア7の側面7Aに沿って斜めに配置されている。回動アーム8B,8Bには、ドア7の側面7Aに沿って配置されたリンク部8Cの一端が回動自在に連結され、リンク部8Cの他端は、軸ピン8Dを介してドア7に連結されており、ハンドル8Aの回動運動に対してドア7が上下運動可能となっている。洗浄機本体2の底面の四隅には脚部9が取り付けられている。
【0023】
図3及び
図4に示されるように、洗浄室3内には、ラックレール11が着脱自在に配置されており、このラックレール11上に、飲食後の皿や茶碗等の食器Dが並べられた格子状の食器ラックRが載置される。洗浄室3の上部には、放射状に延びる三本のアームからなる上側洗浄ノズル12Aと、二本のアームからなる上側濯ぎノズル13Aとがそれぞれ回転自在に配置されている。同様に、洗浄室3の下部には、放射状に延びる三本のアームからなる下側洗浄ノズル12Bと、二本のアームからなる下側濯ぎノズル13Bとがそれぞれ回転自在に配置されている。食器ラックRに並べられた食器Dは、上側洗浄ノズル12A及び下側洗浄ノズル12Bによって上下から洗浄水が噴射され、上側濯ぎノズル13A及び下側濯ぎノズル13Bによって上下から濯ぎ水が噴射される。
【0024】
洗浄水タンク15の前面には、洗浄水吸込口を介して洗浄ポンプ23が接続されている。洗浄ポンプ23の吐出口には洗浄水吐出管21が接続されている。洗浄ポンプ23は、コントローラ35によって制御される。洗浄水吐出管21は、第一洗浄水吐出管21Aと第二洗浄水吐出管21Bとに分岐して、第一洗浄水吐出管21Aは上側洗浄ノズル12Aに接続され、第二洗浄水吐出管21Bは下側洗浄ノズル12Bに接続されている。洗浄水タンク15内には、洗浄能力及び殺菌能力を向上させるために洗浄水を加熱する洗浄水ヒータ16が設けられている。
【0025】
洗浄水タンク15の上部開口部には、板状の仕切板18が配置されている。仕切板18には、二つの開口部18a(
図4において、もう一つの開口部18aは断面手前側に配置されているので図示を省略している。)が設けられており、開口部18aのそれぞれの下方には残菜回収フィルタ19が設けられている。なお、
図3及び
図6においては、説明の便宜上、残菜回収フィルタ19の図示を省略している。残菜回収フィルタ19は、かご状に形成されており、その側面及び底面はメッシュ部材によって形成されている。残菜回収フィルタ19に流れ込んだ残菜はメッシュ部材によって受け止められ、残菜回収フィルタ19に流れ込んだ水はメッシュ部材を通過して洗浄水タンク15に流れ込む。すなわち、上側洗浄ノズル12A及び下側洗浄ノズル12Bから噴射された水は、洗浄水タンク15に回収される。
【0026】
洗浄水タンク15の底面15aには、第一排水管(排水部)33が接続される排水口15cが形成されている。排水口15cは、後述する排水口15dの下方、すなわち、第一排水管33の開口端部は、第二排水管(流出部)17の開口端部の下方に設けられている。底面15aは、排水口15cに向かって傾斜している。第一排水管33は、排水口15cに接続されている。第一排水管33には、排水バルブ(排水装置)34が設けられている。排水バルブ34は、いわゆるボールバルブタイプのバルブであり、第一排水管33における水の流路に配置された弁体であるボールがモータの駆動で回動されることによって、第一排水管33の水の流れを止めたり流したりする。排水バルブ34は、コントローラ35によって制御され、排水バルブ34の弁体が開かれることによって洗浄水タンク15に貯留された水を排水する。
【0027】
洗浄水タンク15の前面に位置する側面15bには、第二排水管17が接続される排水口15dが形成されている。第二排水管17は、洗浄水タンク15において所定水位Hを超えて供給される水を排水するオーバーフロー管として機能するだけでなく、洗浄水タンク15に貯留される水面近くに集まる汚れ(例えば油分や浮遊物等)を排出する機能、排水バルブ34の開弁不良による溢水を防止する機能も有している。残菜回収フィルタ19は、残菜回収フィルタ19の底面19aが所定水位Hよりも上方H1に位置するように配置されている。第二排水管17が接続される排水口15dは、洗浄水タンク15の前面に形成されるので清掃性に優れている。
【0028】
機械室4内には、外部から給水管25Aを介して濯ぎ水が供給される濯ぎ水タンク25が配置されている。濯ぎ水タンク25には、濯ぎ水吸込管29を介して濯ぎポンプ27が接続されている。濯ぎポンプ27の吐出口には濯ぎ水吐出管31が接続されている。濯ぎポンプ27は、コントローラ35によって制御される。濯ぎ水吐出管31は、第一濯ぎ水吐出管31Aと第二濯ぎ水吐出管31Bとに分岐して、第一濯ぎ水吐出管31Aは上側濯ぎノズル13Aに接続され、第二濯ぎ水吐出管31Bは下側濯ぎノズル13Bに接続されている。
【0029】
洗浄機本体2の側方には、予備洗浄機1の各種状態を表示すると共に作業者が各種設定を入力するための操作パネル10が設けられている。
【0030】
機械室4内には、予備洗浄機1の動作全般を制御するコントローラ35が内蔵された電装ボックス(図示せず)等が収容されている。コントローラ35は、予備洗浄機1において、洗浄水タンク15に貯留された水を洗浄室3内に噴射する洗浄工程の実行と、濯ぎ水タンク25に貯留された水を洗浄室3内に噴射する濯ぎ工程の実行とを一サイクルとする洗浄運転を実行する予備洗浄機1における各種動作を制御する。更に詳細には、コントローラ35は、濯ぎ工程において洗浄室3内に供給される所定水量(例えば2.0L)の水を洗浄水タンクに回収して次サイクルの洗浄工程において使用すると共に、洗浄水タンク15に貯留されている水の一部を一サイクルの洗浄運転で入れ替える予備洗浄機1における各種動作を制御する。
【0031】
コントローラ35は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等、相互に接続されている。
図5に示されるように、コントローラ35は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されることにより、予備洗浄機1における各種制御処理を実行する第一設定部61と、第二設定部62と、第三設定部63と、動作制御部(制御部)64と、が形成される。
【0032】
第一設定部61は、一サイクルの濯ぎ工程において洗浄室3内に供給される水量(以下、「供給水量V0」とも称する。)を設定する部分である。より詳細には、第一設定部61は、出荷時に設定される初期設定値(例えば2.0L)又は作業者によって入力される設定値に基づいて供給水量V0を設定する。上記初期設定値及び設定値の例には、供給水量V0そのもの及び濯ぎポンプ27の作動時間等が含まれる。作業者等は、例えば操作パネル10を介して設定値を入力することができる。第一設定部61は、作業者によって操作パネル10を介して入力される設定値を受け付け、受け付けた設定値を供給水量V0として記憶する。
【0033】
第二設定部62は、一サイクルの洗浄運転において第一排水管33から排水させる水量(以下、「第一水量V1とも称する。)を設定する部分である。より詳細には、第二設定部62は、出荷時に設定される初期設定値(例えば1.7L)又は作業者によって入力される設定値に基づいて第一水量V1を設定する。上記初期設定値及び設定値の例には、第一水量V1そのもの及び排水バルブ34の開時間等が含まれる。作業者等は、例えば操作パネル10を介して設定値を入力することができる。第二設定部62は、作業者によって操作パネル10を介して入力される設定値を受け付け、受け付けた設定値を第一水量V1として記憶する。
【0034】
第一設定部61及び第二設定部62は、第一水量V1の初期設定値が、供給水量V0の初期設定値よりも小さな値(V0>V1)となるように構成され、作業者によって操作パネル10を介して入力される第一水量V1の設定値が、供給水量V0の設定値以下の値しか受け付けないように構成されている。また、第二設定部62は、作業者によって供給水量V0が入力(変更)されたとき、入力された値に連動して第一水量V1の値を変更するように構成されてもよい。より詳細には、第二設定部62は、供給水量V0が現設定よりも増量されると第一水量V1も供給水量V0の増量分に応じて増量され、供給水量V0が現設定よりも減量されると第一水量V1も供給水量V0の減量分に応じて減量されるように構成されてもよい。この場合も、第二設定部62は、第一水量V1の変更値が、供給水量V0の変更値よりも小さな値(V0>V1)となるように構成されている。第二設定部62は、このような連動の有無を作業者から操作パネル10を介して受け付けるように構成されてもよい。
【0035】
動作制御部64は、第一設定部61において設定された供給水量V0に基づいて、濯ぎポンプ27の動作を制御する。より詳細には、動作制御部64は、第一排水管33から排水させる水量(第一水量V1)が濯ぎ工程において供給される水量(供給水量V0)(例えば2.0L)よりも少なくなるように(例えば1.7L)、排水バルブ34を制御する。動作制御部64は、排水バルブ34の開放時間及び開度の少なくとも一方を制御することによって(又は/加えて、流量センサによって第一排水管33を流れる水量を計測することによって)、第一水量V1が供給水量V0よりも少ない水量となるように制御する。これにより、濯ぎ工程において供給された水量のうち第一排水管33から排水されなかった残りの水量(以下、「第二水量V2」とも称する。)(例えば0.3L)分だけ所定水位Hを超えることになるので排水口15dを介して第二排水管17から排水される。
【0036】
本実施形態の動作制御部64は、一サイクルの洗浄運転において、濯ぎ工程が開始されるまでに第一水量V1(例えば1.7L)の水が第一排水管33から排水されるように、排水バルブ34を制御する。動作制御部64は、濯ぎ工程が開始されるまでに排水バルブ34を閉じるように制御するので、濯ぎ工程において所定水位Hを超えて供給される第二水量V2(例えば0.3L)の水は排水口15dを介して第二排水管17から排水される。
【0037】
本実施形態の洗浄システム200の予備洗浄機1では、電源が投入された後、洗浄工程、一時休止及び濯ぎ工程の実行を一サイクルとする洗浄運転が繰り返し行われる。予備洗浄機1では、電源投入後の洗浄運転のサイクル数をカウントし、電源が切られるとそのカウント数をリセットするように構成されている。このような予備洗浄機1の動作制御部64は、指定サイクルの洗浄運転時又は所定サイクルごとの洗浄運転時に、濯ぎ工程において洗浄室3内に噴射する水の量を、通常サイクルの洗浄運転時よりも増量させる増量制御を実行する。上記でいう指定サイクル又は所定サイクルごとの設定は、第三設定部63において行われる。
【0038】
第三設定部63は、操作パネル10を介して、例えば、電源投入後n回目(nは自然数)(例えば、10回目、100回目等)のサイクルの洗浄運転時に増量制御を実行することを設定したり、m回のサイクルごと(mは自然数)(例えば、10サイクルごと等)に増量制御を実行することを設定する部分である。より詳細には、出荷時に設定される初期設定値又は作業者によって入力される設定値を記憶する部分である。作業者等は、例えば操作パネル10を介して設定値を入力することができる。第三設定部63は、作業者によって操作パネル10を介して入力される設定値を受け付け、受け付けた設定値を上記n又はmとして記憶する。
【0039】
上記の増量制御が実行されたときに第一排水管33から排出される水量を増やすことが第一設定部61において設定されている場合、動作制御部64は、濯ぎ水の増量に伴って第一排水管33から排水させる水の量を増やす。動作制御部64は、排水バルブ34の作動時間を延長することによって第一排水管33から排水させる水の量を増やす場合、排水バルブ34の弁体を開くタイミング(例えば、洗浄工程終了の1秒前)は、通常制御(増量制御をしない制御)の設定そのままとし、濯ぎ工程が開始される前に第一排水管33を介した排水を終わらせるために、洗浄工程から濯ぎ工程に移行する間の休止時間を延長して、この時間に排水バルブ34の作動時間を割り当ててもよいし、洗浄工程において排水バルブ34の弁体を開くタイミングを通常制御と比べて前倒ししてもよい。上記の増量制御が実行されたときに第一排水管33から排出される水量を増やすことが第一設定部61において設定されていない場合、動作制御部64は、予め設定されている第一水量V1の水を第一排水管33から排水させるように排水バルブ34を制御する。
【0040】
次に、本洗浄機101について説明する。本洗浄機101は、予備洗浄機1において予備洗浄された食器Dを洗浄する。本洗浄機101は、予備洗浄機1に備わる第二排水管17、第一排水管33及び排水バルブ34(
図4参照)に代えて、
図7に示されるような第三排水管133及びオーバーフロー管134を備えている点を除き、予備洗浄機1の構成と一致している。すなわち、
図6及び
図7において、予備洗浄機1を構成する構成物品と同じ参照符号で示される本洗浄機101の構成部品は、予備洗浄機1を構成する構成物品と同じ機能を有する。なお、説明の便宜のため、「洗浄水タンク115」、「底面115a」、「排水口115c」については、機能は同じでも異なる参照符号を用いることにする。ここでは、第三排水管133及びオーバーフロー管134についてのみ説明する。
【0041】
本洗浄機101の洗浄水タンク115の底面115aには、第三排水管133が接続される排水口115cが形成されている。第三排水管133には、予備洗浄機1とは異なり排水バルブ34が設けられていない。したがって、第三排水管133に流れ込む水は、第三排水管133の途中でせき止められることはなく、そのまま下流方向に流れる。洗浄水タンク115の排水口115cには第三排水管133が接続されると共に、鉛直方向上方に延在するオーバーフロー管134が挿し込まれている。オーバーフロー管134の開口上端は、本洗浄機101の所定水位Hに位置している。濯ぎ工程において、洗浄水タンク115の所定水位Hを越えて供給される水は、オーバーフロー管134を介して第三排水管133から排出される。オーバーフロー管134は、排水口115cに抜き差し(着脱)可能に設けられており、作業者によって排水口115cから引き抜かれることで、洗浄水タンク115に貯留された水を全排水することができる。
【0042】
続いて、洗浄システム200の動作について説明する。予備洗浄機1の電源スイッチがONされると、予備洗浄機1の濯ぎ水タンク25内の温水を濯ぎポンプ27によって上側濯ぎノズル13A及び下側濯ぎノズル13Bを介して洗浄室3へ噴射することにより、洗浄水タンク15内へ温水が供給され、洗浄水タンク15には所定水位Hの水が貯留される。また、本洗浄機101の電源スイッチがONされると、本洗浄機101の濯ぎ水タンク25内の温水を濯ぎポンプ27によって上側濯ぎノズル13A及び下側濯ぎノズル13Bを介して洗浄室3へ噴射することにより、洗浄水タンク115内へ温水が供給され、洗浄水タンク115には所定水位Hの水が貯留される。
【0043】
予備洗浄機1及び本洗浄機101の濯ぎ水タンク25内の温水の温度は、例えば、80℃前後に設定されている。これにより、本洗浄機101及び予備洗浄機1において初期給湯が完了する。そして、初期給湯量に合った量の洗剤が洗浄水タンク115内に供給されて、洗浄水タンク115内の洗浄水の洗剤濃度が所定濃度となる。
【0044】
なお、予備洗浄機1及び本洗浄機101においては、上側濯ぎノズル13A及び下側濯ぎノズル13Bを介して洗浄室3に水を供給する構成に代えて、専用の給湯配管を設けて供給する構成としてもよい。
【0045】
初期給湯後、ユーザが食器ラックRを第一搬送部204の基台204aに載置すると、第一搬送部204は食器ラックRが基台204aに載置されたことを検知して、アーム部材204bによる食器ラックRの予備洗浄機1への押し出しを開始する。食器ラックRが予備洗浄機1の洗浄室3に搬入され、ドア7が閉められたことが検知されると、運転開始信号がコントローラ35へ入力される。運転開始信号がコントローラ35へ入力されると、予備洗浄機1での食器Dの洗浄運転、すなわち洗浄工程及び濯ぎ工程を一サイクルに含む洗浄運転が開始される。食器Dの洗浄工程は、洗浄水タンク15内の洗浄水を洗浄室3内の食器Dに向けて噴射することにより行われる。洗浄水タンク15内の洗浄水の温度は、例えば、60℃~70℃となるように設定されている。
【0046】
洗浄水タンク15内に貯留された洗浄水は、洗浄ポンプ23が始動することにより、洗浄水吐出管24等を介して上側洗浄ノズル12A及び下側洗浄ノズル12Bに圧送されて、上側洗浄ノズル12A及び下側洗浄ノズル12Bから洗浄室3内の食器に向けて噴射される。上側洗浄ノズル12A及び下側洗浄ノズル12Bから洗浄室3内に噴射された洗浄水は、食器から残菜及び汚れ(以下、「残菜等」とも示す。)を剥がし落とし、洗浄水と共に開口部18aに流れ込み、かご状の残菜回収フィルタ19に回収される。洗浄水タンク15内に回収された洗浄水は、洗浄ポンプ23により再び洗浄室3内に循環供給される。予め定められた洗浄時間(例えば41秒間)が経過すると洗浄工程が終了し、一時的な休止後(例えば5秒間)に濯ぎ工程が開始される。
【0047】
排水バルブ34は、洗浄工程が終了する1秒前に作動を開始し、濯ぎ工程の開始直前に作動を停止する。より詳細には、洗浄工程終了間際の1秒に休止時間5秒を加えた6秒間において、最初の3秒間で弁体(ボール)を開き、最後の3秒間で弁体を閉じる。このような排水バルブ34の動作によって、第一設定部61において設定された供給水量V0(例えば、2.0L)、すなわち濯ぎ工程において洗浄室3内に噴射される水の量よりも少ない量(第一水量V1)(例えば、1.7L)の水が第一排水管33を介して排水される。このような濯ぎ工程が開始されるまでの第一排水管33を介した排水によって、主に洗浄水タンク15の下方に貯留されている水が排出される。
【0048】
なお、洗浄工程終了後に休止時間を設けることなく濯ぎ工程を開始すると、洗浄工程において上側洗浄ノズル12Aや洗浄室3の上面に付着した洗浄水の後だれが、濯ぎ水に混ざったり食器Dに付着したりするので濯ぎ性能が低下する。上述した休止時間(5秒)は、上記のような後だれが落ち着いた後に濯ぎ工程を開始させることを目的として設けられる。本実施形態では、このような目的で設けられる休止時間を利用して第一排水管33を介した排水が行われるので、上述した排水動作が実施されたとしても一サイクルの洗浄運転に要するトータルの時間が長くなることはない。
【0049】
食器Dの濯ぎ工程は、濯ぎ水タンク25内の濯ぎ水を洗浄室3内の食器Dに向けて噴射することにより行われる。濯ぎ水タンク25内に貯留された濯ぎ水は、予備洗浄機1における濯ぎポンプ27が始動することにより、濯ぎ水吐出管31等を介して上側濯ぎノズル13A及び下側濯ぎノズル13Bに圧送されて、上側濯ぎノズル13A及び下側濯ぎノズル13Bから食器に向けて噴射される。濯ぎ水タンク25から圧送される濯ぎ水の温度は、例えば、80℃前後に設定されている。
【0050】
濯ぎ工程においては、洗浄水タンク15に回収された濯ぎ水は洗浄水と混ざり合い、次回の洗浄工程における洗浄水として使用される。濯ぎ工程においては、排水バルブ34は作動せず、第一排水管33を介して排出される水はない。このような状態で、洗浄水タンク15の所定水位Hを越えて上側濯ぎノズル13A及び下側濯ぎノズル13Bから噴射される水は、排水口15dから第二排水管17を介して排水される。
【0051】
より詳細には、洗浄工程において第一排水管33を介して排水された水と同量(第一水量V1)の水が、濯ぎ工程において上側濯ぎノズル13A及び下側濯ぎノズル13Bから噴射されると、洗浄水タンク15の水は所定水位Hとなり、上側濯ぎノズル13A及び下側濯ぎノズル13Bから噴射される第二水量V2(すなわち、供給水量V0から第一水量V1を引いた水量)の水が、排水口15dから第二排水管17を介して排水される。濯ぎ工程では、主に洗浄水タンク15に貯留されている水の表面から排出される。予め定められた濯ぎ時間(例えば5秒間)が経過すると濯ぎ工程が終了し、一時的な休止後(例えば1秒間)に予備洗浄機1における一サイクルの洗浄運転が終了する。
【0052】
予備洗浄機1の洗浄運転は、後述する本洗浄機101における洗浄運転と同期・連動させることを考慮して、洗浄工程(例えば41秒)、休止時間(例えば5秒)、濯ぎ工程(例えば6秒)及び休止時間(例えば1秒)に要するトータル時間(例えば53秒)が、後述する本洗浄機101における洗浄工程、休止時間、濯ぎ工程及び休止時間に要するトータル時間と一致するように設定されてもよい。
【0053】
予備洗浄機1における一サイクルの洗浄運転が終了すると、予備洗浄機1におけるドア7が開き、第一搬送部204が次の食器ラックRを予備洗浄機1の洗浄室3に押し出す動作によって、玉突き的に洗浄が完了した食器ラックRを本洗浄機101に押し出す。この結果、予備洗浄機1において洗浄された食器ラックRが本洗浄機101の洗浄室3に搬入される。食器ラックRが本洗浄機101の洗浄室3に搬入されると、本洗浄機101のドア7が閉められる。本洗浄機101のドア7が閉められると、運転開始信号がコントローラ35へ入力される。運転開始信号がコントローラ35へ入力されると、本洗浄機101における食器Dの洗浄運転が開始される。食器Dの洗浄は、洗浄水タンク115内の洗浄水を洗浄室3内の食器に向けて噴射することにより行われる。洗浄水タンク115内の洗浄水の温度は、例えば、60℃~70℃となるように設定されている。
【0054】
洗浄ポンプ23が始動することにより、洗浄水タンク115内に貯留された洗浄水は、洗浄水吐出管24等を介して上側洗浄ノズル12A及び下側洗浄ノズル12Bに圧送されて、上側洗浄ノズル12A及び下側洗浄ノズル12Bから洗浄室3内の食器に向けて噴射される。洗浄室3内に噴射された洗浄水は、洗浄水タンク115内に回収される。本洗浄機101において洗浄される食器Dは、予備洗浄機1において残菜等がほぼ取り除かれた状態となっている。このため、洗浄水タンク115内に回収される洗浄水は、比較的にきれいな状態の水である。洗浄水タンク115内に回収された洗浄水は、洗浄ポンプ23により再び洗浄室3内に循環供給される。洗浄水による食器の洗浄が所定時間行われると、洗浄ポンプ23の動作を停止する。これにより、本洗浄機101の動作が一時的に休止する。
【0055】
次に、濯ぎポンプ27が始動することにより、濯ぎ水タンク25内に貯留された濯ぎ水は、濯ぎ水吐出管31等を介して上側濯ぎノズル13A及び下側濯ぎノズル13Bに圧送されて、上側濯ぎノズル13A及び下側濯ぎノズル13Bから食器に向けて噴射される。濯ぎ水タンク25から圧送される濯ぎ水の温度は、例えば、80℃前後に設定されている。濯ぎ工程においては、洗浄水タンク115に回収された濯ぎ水は洗浄水と混ざり合い、次回の洗浄工程における洗浄水として使用されると共に、洗浄水タンク115の所定水位Hを越えて洗浄室3内に供給される水は、オーバーフロー管134を介して洗浄水タンク115から排出される。予め定められた濯ぎ時間が経過すると濯ぎ工程が終了し、一時的な休止後に本洗浄機101における一サイクルの洗浄運転が終了する。そして、第一搬送部204が食器ラックRが基台204aに載置されたことが検知されるまで又は洗浄開始ボタンが押下されるまで待機状態となる。
【0056】
例えば、一日の営業を終えるとき等、予備洗浄機1では、作業者による操作パネル10の操作によって排水バルブ34の弁体が開かれることによって洗浄水タンク15に貯留された水が第一排水管33を介して全排水され、本洗浄機101では、作業者が排水口115cからオーバーフロー管134を引き抜くことによって洗浄水タンク115に貯留された水が第三排水管133を介して全排水される。
【0057】
続いて、本実施形態の洗浄システム200の作用効果について説明する。上記実施形態の洗浄システム200に用いられる予備洗浄機1では、洗浄水タンク15に貯留される水は、一サイクルの洗浄運転において第一排水管33から排水されるだけでなく第二排水管17からも排水される。すなわち、洗浄水タンク15に貯留される水は、一サイクルの洗浄運転において洗浄水タンク15の上方からの排水に加え、洗浄水タンク15の下方からも排水される。これにより、水の表面に集まる汚れ(例えば油分や浮遊物等)と、洗浄水タンク15の底面15aに集まる汚れ(残菜や沈殿物等)とを排出することができるので、水の汚濁の原因となる汚れを効果的に洗浄水タンク15から排水することができる。この結果、洗浄水タンク15に貯留される水の汚濁を抑制して、洗浄水タンク15における水の入替頻度を少なくできる。
【0058】
上記実施形態の予備洗浄機1では、一サイクルの洗浄運転において、濯ぎ工程が開始されるまでに一サイクルの洗浄運転において排出すべき第一水量の水が洗浄水タンク15から排水されるので、濯ぎ工程において洗浄室3内に供給され、洗浄室3内に回収される比較的きれいな水を洗浄水タンク15に残すことができる。これにより、洗浄水タンク15の汚濁を効果的に抑制することができる。
【0059】
上記実施形態の予備洗浄機1では、濯ぎ工程において洗浄室3内に供給する水量(所定水量)の増量の有無を設定する第一設定部61を備えるので、洗浄水タンク15における水の入替量を調整することができる。また、上記実施形態の予備洗浄機1では、濯ぎ工程において洗浄室3内に供給する水量を増量したときに、第一排水管33から排水させる水量(第一水量V1)の増量の有無を設定する第二設定部62を備えるので、洗浄水タンク15の上部又は下部から排水させる水量の配分を調整したりすることができる。例えば、第一排水管33から排水させる水量を増量させたときには、洗浄水タンク15の底面に集まる汚れを効果的に排出することができ、第一排水管33から排水させる水量を増量させなかったときには、洗浄水タンク15の水面に集まる汚れを効果的に排出することができる。これにより、食器D等の汚れの状態に応じた最適な水の入れ替えが可能となる。
【0060】
上記実施形態の予備洗浄機1では、指定サイクルの洗浄運転時に、濯ぎ工程において洗浄室3内に噴射する水の量を、通常サイクルの洗浄運転時よりも増量させる増量制御を実行することができるので、例えば一定サイクル毎又は所定のサイクル時に、洗浄室3内に供給する水の量を増やして、洗浄水タンク15から多くの水を排出させることができる。すなわち、例えば一定サイクル毎又は所定のサイクル時に、洗浄水タンク15に貯留された水を、通常サイクルよりも多く排出することができる。これにより、洗浄水タンク15に貯留される水の汚濁をより効果的に抑制することができる。
【0061】
例えば、第一設定部61及び第三設定部63の設定により、洗浄運転サイクル10回につき1回だけ通常の倍の4.0Lの水量を洗浄水タンク15に供給し、第二設定部62の設定により、第一排水管33から排出させる水量を通常どおりの1.7Lとした場合、洗浄水タンク15の水面に集まる汚れを効果的かつ定期的に排出することができる。
【0062】
予備洗浄機1と本洗浄機101とを備える洗浄システム200では、予備洗浄機1は、食器D等に付着した残菜等を取り除くことを主目的に設置されるので、洗浄水タンク15の汚濁の進み具合が早くなるところ、上記実施形態の洗浄システム200の予備洗浄機1は、洗浄水タンク15に貯留される水の汚濁が抑制されるので、洗浄水タンク15における水の入替頻度を少なくすることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0064】
上記実施形態の洗浄システム200の予備洗浄機1では、所定水位Hよりも低い位置に設けられた第一排水管33から洗浄水タンク15に貯留された水を排水させる排水装置として排水バルブ34を適用する例を挙げて説明したが、排水バルブ34に代えて、例えば排水ポンプを設けてもよい。また、上記の予備洗浄機1の第二排水管17は、洗浄水タンク15の側面15bに接続されている例を挙げて説明したが、例えば、洗浄水タンク15の底面15aから鉛直方向に延在すると共に、その上端が所定水位Hに位置するように設けられる直管であってもよい。
【0065】
上記実施形態の洗浄システム200では、本洗浄機101の構成を予備洗浄機1と異ならせる例を挙げて説明したが、本洗浄機101の構成は、予備洗浄機1の構成と同じとしてもよい。この場合、本洗浄機101における排水制御は、予備洗浄機1と同様の排水制御(第一排水管33から排出させる水量が濯ぎ工程において供給される水量よりも少なくなるように排水バルブ34を制御)がなされてもよいし、予備洗浄機1とは異なる排水制御がなされてもよい。
【0066】
上記実施形態の洗浄システム200では、一サイクルの洗浄運転において、濯ぎ工程が開始されるまでに、一サイクルの洗浄運転において排出すべき第一水量V1の水が洗浄工程で全て排水される例を挙げて説明したが、上記第一水量V1の水は、濯ぎ工程のみで排水してもよいし、洗浄工程と濯ぎ工程とに跨がって排水してもよい。
【0067】
上記実施形態の洗浄システム200では、繰り返し実行される全ての運転サイクルで、第一排水管33から排水させる水量を濯ぎ工程において供給される水量よりも少ない水量となるように排水バルブ34を制御(以下、「強制排水制御」と称する。)する例を挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、n運転サイクル(nは自然数、例えばn=2)ごとに強制排水制御を実行し、残りの運転サイクルでは、に強制排水制御を実行しなくてもよい(すなわち、第二排水管17からのみ排出させる)。このように制御すれば、例えば、洗浄水タンク15の水面に集まる汚れ(例えば油分や浮遊物等)が多い店舗に配置する場合、このような汚れを効果的に洗浄水タンクから排水させることができる。
【0068】
上記実施形態では、予備洗浄機1及び本洗浄機101のそれぞれに操作パネル10が設けられている例を挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、予備洗浄機1及び本洗浄機101をまとめて操作する統括操作パネルが予備洗浄機1の側面に設けられてもよいし、第一搬送部204又は第二搬送部205に設けられてもよい。また、上述した操作パネルに代えて、又は加えて、同様の機能を有するタブレット及びスマートフォンのような端末装置が設けられてもよい。
【0069】
上記実施形態及び変形例の予備洗浄機1及び本洗浄機101では、仕切板18の開口部18aの下方に残菜回収フィルタ19が設けられている例を挙げて説明したがこれに限定されない。残菜回収フィルタは、例えば、洗浄機本体2の下側部分2Bにおいて、下側部分2Bの前面に配置される収容部に設けられていてもよい。収容部は、残菜回収フィルタを収容する収容空間を有している。この構成では、残菜回収フィルタは、食器Dが収容される位置よりも下方に配置され、洗浄室3内に噴射される水と共に落下して、例えば案内部材によって残菜回収フィルタに案内(誘導)される残菜を回収する。
【0070】
上記実施形態及び変形例の洗浄システム200では、予備浸漬タンク203と、第一搬送部204と、予備洗浄機1と、本洗浄機101と、第二搬送部205とは、平面視したときにL字型に配置されている例を挙げて説明したが、直線状に配置されていてもよい。
【0071】
上記実施形態及び変形例の洗浄システム200では、第一搬送部204によって予備洗浄機1への食器ラックRの移動、及び予備洗浄機1から本洗浄機101への食器ラックRの移動が行われ、第二搬送部205によって本洗浄機101から食器ラックRの移動が行われる例を挙げて説明したが、上記のそれぞれの移動は、作業者によって行われてもよい。
【0072】
上記実施形態及び変形例の予備洗浄機1及び本洗浄機101は、ドア7が上下方向に可動自在に設けられたタイプの洗浄機を例に挙げて説明したが、例えば、オーブンのように洗浄機本体2の前面側にドア7が設けられたタイプの食器洗浄機等にも適用することができる。
【0073】
上記実施形態及び変形例では、食器Dに対して予備洗浄を実施する予備洗浄機1と、本洗浄を実施する、予備洗浄機1とは別体の本洗浄機101とが並べて配置された洗浄システム200を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、筐体は一つであるが、予備洗浄を実施する予備洗浄室と、本洗浄を実施する本洗浄室とが形成され、予備洗浄室から本洗浄室への食器Dの移動をコンベヤ等で行うタイプの洗浄機に本願発明を適用してもよい。すなわち、予備洗浄室として
図4で示されるような構成の第一排水管33、第二排水管17及び排水バルブ34を配置し、本洗浄室として
図7で示されるような構成の第三排水管133及びオーバーフロー管134を配置してもよい。
【0074】
上記実施形態及び変形例として説明した予備洗浄機1は、洗浄システム200において用いられる例を挙げて説明したが、単独の洗浄機として用いられてもよい。この場合であっても、洗浄水タンクに貯留される水の汚濁を抑制して、洗浄水タンクにおける水の入替頻度を少なくできる。
【0075】
本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態、上記変形例及びその他の変形例として記載の内容を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…予備洗浄機(洗浄機)、3…洗浄室、10…操作パネル、15…洗浄水タンク、17…第二排水管(流出部)、19…残菜回収フィルタ、23…洗浄ポンプ、25…濯ぎ水タンク、27…濯ぎポンプ、33…第一排水管(排水部)、34…排水バルブ(排水装置)、35…コントローラ、61…第一設定部、62…第二設定部、63…第三設定部、64…動作制御部、101…本洗浄機、115…洗浄水タンク、133…第三排水管、134…オーバーフロー管、200…洗浄システム、D…食器(被洗浄物)。