(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】一体化されたプランジャ位置検知部を有する液体送達システムのためのカバー、および対応する方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20240517BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20240517BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20240517BHJP
G01D 5/26 20060101ALI20240517BHJP
G01F 11/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61M5/168 514C
A61M5/31 520
A61M5/315 550L
G01D5/26
G01F11/00 A
(21)【出願番号】P 2021120094
(22)【出願日】2021-07-21
(62)【分割の表示】P 2018502158の分割
【原出願日】2016-06-08
【審査請求日】2021-08-17
(32)【優先日】2016-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518010315
【氏名又は名称】ペイシェンツ ペンディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シェカリム アブラハム
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06113578(US,A)
【文献】特表2015-518747(JP,A)
【文献】特開2001-170176(JP,A)
【文献】国際公開第2013/177135(WO,A1)
【文献】米国特許第06585698(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0207385(US,A1)
【文献】特表2013-505433(JP,A)
【文献】国際公開第2011/032960(WO,A1)
【文献】特開2009-050709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/31
A61M 5/315
G01D 5/26
G01F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1位置から第2位置までシリンダに沿って軸と平行に摺動可能になるようにシリンダと摺動係合するよう構成されたスライドカバーであって、前記スライドカバーは、突出した針を有するペン注射器の端部を受容するための中央内腔を備えたキャップとして実装され、クレードルが前記中央内腔内に摺動的に搭載され、前記クレードルは前記ペン注射器の端部を受容するために構成され、前記クレードルは、前記スライドカバーが前記第1位置にある際に前記ペン注射器の端部と係合するために終端位置に向けてバネ付勢され、かつ前記スライドカバーが前記第2位置まで摺動するにつれて前記ペン注射器の端部と共に移動するように後退可能であり、クレードルバネが、前記終端位置に向けて前記クレードルを付勢するために配置され、前記クレードルの端面は、拡散反射面として実装される、前記スライドカバー;
(b)前記スライドカバーと共に移動するように前記スライドカバーに収容された一連のセンサであって、前記一連のセンサは、少なくとも第1センサと第2センサとを含み、前記第1センサは、信号を生成するプランジャセンサであり、前記プランジャセンサは、第1の信号の変動が前記スライドカバーに沿った規定された位置を通過するプランジャを表すように、前記スライドカバーが透明なシリンダと係合して摺動するにつれてプランジャの少なくとも一部を非接触検知するよう構成され、前記プランジャセンサは、放射エネルギーを放出するための光学エミッタと、光学レシーバによって受容される前記放射エネルギーの量を表す第1出力を生成するための光学レシーバとを有する、光学センサであり、前記光学センサは、前記スライドカバーが透明なシリンダと係合して摺動する際に前記光学センサが前記プランジャを通過するにつれて第1出力が変化するように内向配置で配置されており、前記第2センサは、前記中央内腔の閉鎖端内に搭載され、かつ前記クレードルの前記拡散反射面の方に向いたエミッタおよびレシーバを含み、前記第2センサは、前記プランジャセンサとは無関係に動作し、かつ、前記第1位置と前記第2位置との間の前記スライドカバーの現在の位置を表す第2出力を生成するために配置された位置センサであり、前記位置センサは、プランジャセンサがプランジャに到達した時に、前記拡散反射面からの反射後に前記レシーバに到達する前記エミッタからの発光の強度に基づいて前記拡散反射面と前記中央内腔との間の距離を決定し、これにより前記シリンダに対する前記スライドカバーの位置を決定するように構成され、前記位置センサは、前記位置センサの前記第2出力が前記中央内腔内の前記クレードルの現在の位置を表すように、前記クレードルと関連付けられている、前記一連のセンサ;ならびに
(c)前記一連のセンサの出力を受容するように前記一連のセンサと関連付けられた処理システムであって、前記処理システムは、前記プランジャが前記スライドカバーに沿った規定された位置を通過する際に、前記プランジャセンサの出力の変動を特定するように構成され、前記処理システムは、前記シリンダに沿った前記プランジャの位置を導出するために前記出力を処理するようにさらに構成された、処理システム
を含む、
液体を収容するための透明なシリンダと吐出口を通じて液体を吐出するためにシリンダの軸に沿って移動可能なプランジャとを含む液体送達システムと共に使用するための、器具。
【請求項2】
前記プランジャは、少なくとも部分的に不透明であり、
前記処理システムは、前記プランジャに到達する前記光学センサを表す第1出力の変動に応答して、前記第2出力によって表される前記スライドカバーの対応する現在の位置を決定し、これによって前記シリンダに沿った前記プランジャの位置を決定するように構成されている、
請求項1記載の器具。
【請求項3】
透明なシリンダに沿って軸に平行に延在する光学的障害物を有するペン注射器と共に用いられた際に少なくとも一対の光学エミッタおよび光学レシーバが遮られないように、中央内腔の周りに間隔を置いて配置された複数の光学エミッタと中央内腔の周りに間隔を置いて配置された対応する複数の光学レシーバとを用いて前記光学センサが実装される、請求項1記載の器具。
【請求項4】
前記処理システムが、
(a)プランジャの前縁およびプランジャの後縁を前記光学センサが通過することを表す変動を検出するために前記第1出力を処理する;
(b)シリンダに沿ったプランジャの前縁の位置を決定する;ならびに
(c)固定された光学的障害物にプランジャの前縁が接近していることを検出すると、プランジャの後縁の位置を決定する
ように構成されている、
透明のシリンダに沿って間隔を置いて配置された複数の固定された光学的障害物を有するペン注射器と共に使用するための、請求項1記載の器具。
【請求項5】
透明なシリンダの壁を通ってプランジャの表面に向けて斜角に放射エネルギーを放出するための光学エミッタと、光学レシーバによって受容された斜角の放射エネルギーの量を表す補助出力を生成するための光学レシーバとを有する補助光学センサを、前記一連のセンサがさらに含む、
不透明な筐体内に入り込んだ当初プランジャ位置を有するペン注射器と共に使用するための、請求項1記載の器具。
【請求項6】
前記第2出力が中央内腔内のクレードルの現在の位置を表すように、前記位置センサがクレードルと関連付けられている、請求項1記載の器具。
【請求項7】
前記第2センサが、反射光の強度に基づいて前記スライドカバーの現在の位置を表す前記第2出力を生成するように構成されている、請求項1記載の器具。
【請求項8】
前記器具と液体送達システムとの係合時に動作するように前記スライドカバーに対して配置されたマイクロスイッチをさらに含み、該器具の少なくとも一部が、低電力スリープ状態を有し、かつマイクロスイッチの動作時に選択的に起動される、請求項2記載の器具。
【請求項9】
前記処理システムに関連付けられた不揮発性データ記憶コンポーネントをさらに含み、該処理システムが、プランジャの以前の位置を記憶し、プランジャの現在の位置を以前の位置と比較し、液体が分注されたかどうかを決定し、分注された液体の分量を算出するように構成されている、請求項2記載の器具。
【請求項10】
前記スライドカバーと一体化された表示部をさらに含み、前記処理システムが、送達された投薬量に関するデータを表示するようにさらに構成されている、請求項9記載の器具。
【請求項11】
測定された用量の液体薬剤を針を介して送達するために構成されたペン注射器をさらに含み、前記スライドカバーが、針を含む該ペン注射器の端部を受容するための中央内腔を備えたキャップとして実装されている、請求項2記載の器具。
【請求項12】
(A)第1位置から第2位置までシリンダに沿って軸と平行に摺動可能になるようにシリンダと摺動係合するよう構成されたスライドカバーであって、プランジャの少なくとも一部を非接触検知するよう構成されたプランジャセンサが設けられた、スライドカバーを準備する工程であって、前記スライドカバーは、突出した針を有するペン注射器の端部を受容するための中央内腔を備えたキャップとして実装され、クレードルが前記中央内腔内に摺動的に搭載され、前記クレードルは前記ペン注射器の端部を受容するために構成され、前記クレードルは、前記スライドカバーが前記第1位置にある際に前記ペン注射器の端部と係合するために終端位置に向けてバネ付勢され、かつ前記スライドカバーが前記第2位置まで摺動するにつれて前記ペン注射器の端部と共に移動するように後退可能であり、クレードルバネが、前記終端位置に向けて前記クレードルを付勢するために配置され、前記クレードルの端面は、拡散反射面として実装され、前記プランジャセンサは、放射エネルギーを放出するための光学エミッタと、光学レシーバによって受容される前記放射エネルギーの量を表す第1出力を生成するための光学レシーバとを有する、光学センサであり、前記光学センサは、前記スライドカバーが透明なシリンダと係合して摺動する際に前記光学センサが前記プランジャを通過するにつれて第1出力が変化するように内向配置で配置されており、前記スライドカバーは、前記中央内腔の閉鎖端内に搭載され、かつ前記クレードルの前記拡散反射面の方に向いたエミッタおよびレシーバを含む第2センサを含む、前記工程;
(B)シリンダに沿って前記スライドカバーを摺動させ、プランジャに到達するプランジャセンサに対応する第1出力の変動を検知する工程;および
(C)前記プランジャセンサとは無関係に動作し、かつ、前記第1位置と前記第2位置との間の前記スライドカバーの現在の位置を表す第2出力を生成するために配置された位置センサであり、かつ、プランジャセンサがプランジャに到達した時に、前記拡散反射面からの反射後に前記レシーバに到達する前記エミッタからの発光の強度に基づいて前記拡散反射面と前記中央内腔との間の距離を決定し、これにより前記シリンダに対する前記スライドカバーの位置を決定するように構成された前記第2センサであって、前記位置センサの前記第2出力が前記中央内腔内の前記クレードルの現在の位置を表すように、前記クレードルと関連付けられている、前記第2センサを利用し、これによってプランジャの位置を決定する、工程
を含む、薬剤送達投与量の算出のために請求項1記載の器具の透明なシリンダ内のプランジャの位置を測定するための、前記器具を使用する方法
。
【請求項13】
(A)第1位置から第2位置までシリンダに沿って軸と平行に摺動可能になるようにシリンダと摺動係合するよう構成されたスライドカバーであって、プランジャの少なくとも一部を非接触検知するよう構成されたプランジャセンサが設けられた、スライドカバーを準備する工程であって、前記スライドカバーは、突出した針を有するペン注射器の端部を受容するための中央内腔を備えたキャップとして実装され、クレードルが前記中央内腔内に摺動的に搭載され、前記クレードルは前記ペン注射器の端部を受容するために構成され、前記クレードルは、前記スライドカバーが前記第1位置にある際に前記ペン注射器の端部と係合するために終端位置に向けてバネ付勢され、かつ前記スライドカバーが前記第2位置まで摺動するにつれて前記ペン注射器の端部と共に移動するように後退可能であり、クレードルバネが、前記終端位置に向けて前記クレードルを付勢するために配置され、前記クレードルの端面は、拡散反射面として実装され、前記プランジャセンサは、放射エネルギーを放出するための光学エミッタと、光学レシーバによって受容される前記放射エネルギーの量を表す第1出力を生成するための光学レシーバとを有する、第1光学センサであり、前記第1光学センサは、前記スライドカバーが透明なシリンダと係合して摺動する際に前記第1光学センサが前記プランジャを通過するにつれて第1出力が変化するように内向配置で配置されており、前記スライドカバーは、前記中央内腔の閉鎖端内に搭載され、かつ前記クレードルの前記拡散反射面の方に向いたエミッタおよびレシーバを含む第2センサを含む、前記工程;
(B)シリンダに沿って前記スライドカバーを摺動させ、プランジャに到達するプランジャセンサに対応する第1出力の変動を検知する工程;および
(C)前記プランジャセンサとは無関係に動作し、かつ、前記第1位置と前記第2位置との間の前記スライドカバーの現在の位置を表す第2出力を生成するために配置された位置センサであり、かつ、プランジャセンサがプランジャに到達した時に、前記拡散反射面からの反射後に前記レシーバに到達する前記エミッタからの発光の強度に基づいて前記拡散反射面と前記中央内腔との間の距離を決定し、これにより前記シリンダに対する前記スライドカバーの位置を決定するように構成された前記第2センサであって、前記位置センサの前記第2出力が前記中央内腔内の前記クレードルの現在の位置を表すように、前記クレードルと関連付けられている、前記第2センサを利用し、これによってプランジャの位置を決定する、工程
を含む、薬剤送達投与量の算出のために請求項1記載の器具の透明なシリンダ内のプランジャの位置を測定するための、前記器具を使用する方法であって、
前記プランジャセンサが、放射エネルギーを放出するための光学エミッタと光学レシーバによって受容された該放射エネルギーの量を表す第1出力を生成するための光学レシーバとを有する第1光学センサである、前記方法。
【請求項14】
前記スライドカバーが、放射エネルギーを放出するための光学エミッタと該放射エネルギーを受容するための光学レシーバとを含む第3光学センサを含み、前記第3光学センサは、第1光学センサから軸方向に間隔を置いて配置され、
方法が、
(a)プランジャに到達する前記第3光学センサに対応する前記第3光学センサの出力の変動を検知する工程;および
(b)前記第1および第3光学センサからの出力における特徴間の時間差から、プランジャの位置を決定するために用いられる摺動運動の速度を導出する工程
をさらに含む、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野および背景
本発明は液体送達システムに関し、特に、ペン注射器型薬剤送達装置によって送達される用量のタイミングおよび分量を測定するための、および/または装置に残る薬剤の分量をモニタリングするための器具および方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
液体送達装置、特にペン注射器の分野では、既に投与した液体薬剤の用量についての確実な情報をユーザに提供する必要がある。
【0003】
スマートキャップを設けることによってペン注射器に機能を追加する様々な試みがなされてきた。例としては、本発明と譲受人が同一の米国特許第8743662号は、ペン注射器の前回の使用から経過した時間をモニタリングするペン注射器のためのスマートキャップを開示している。
【0004】
別のスマートキャップ装置は、分注した薬剤投与量の分量の測定を試みてきた。そのような装置の一例は、米国特許第8817258号である。この装置は、キャップに沿って延在する光学センサの広範囲のアレイを必要とする。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、センサが液体送達システムのスライドカバーと一体化されており、かつカバーを外すかまたは再び装着する間に液体送達システムのプランジャの位置を測定する、器具である。
【0006】
本発明の態様の教示によれば、液体を収容するための透明なシリンダと吐出口を通じて液体を吐出するためにシリンダの軸に沿って移動可能な少なくとも部分的に不透明なプランジャとを含む液体送達システムと共に使用するための器具であって、(a)第1位置から第2位置までシリンダに沿って軸と平行に摺動可能になるようにシリンダと摺動係合するよう構成されたスライドカバー;(b)(i)放射エネルギーを放出するための光学エミッタと、光学レシーバによって受容される放射エネルギーの量を表す第1出力を生成するための光学レシーバとを有する光学センサであって、スライドカバーが透明なシリンダと係合して摺動する際に、光学センサがプランジャを通過するにつれて第1出力が変化するように内向配置で配置された光学センサと、(ii)第1位置と第2位置との間のスライドカバーの現在の位置を表す第2出力を生成するために配置された位置センサとを含み、スライドカバーと共に移動するようにスライドカバーに収容された一連のセンサ;ならびに(c)プランジャに到達する光学センサを表す第1出力の変動に応答して、第2出力によって表されるスライドカバーの対応する現在の位置を決定し、これによってシリンダに沿ったプランジャの位置を決定するように構成された、少なくとも第1出力および第2出力を受容するように一連のセンサと関連付けられた処理システムを含む、器具が提供される。
【0007】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、スライドカバーは、突出した針を有するペン注射器の端部を受容するための中央内腔を備えたキャップとして実装される。
【0008】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、軸に平行な透明なシリンダに沿って延在する光学的障害物を有するペン注射器と共に用いられた際に少なくとも一対の光学エミッタと光学レシーバとが遮られないように、中央内腔の周りに間隔を置いて配置された複数の光学エミッタと中央内腔の周りに間隔を置いて配置された対応する複数の光学レシーバとを用いて光学センサが実装される。
【0009】
透明のシリンダに沿って間隔を置いて配置された多数の固定された光学的障害物を有するペン注射器のための本発明の態様のさらなる特徴によれば、処理システムは、(a)第1出力を処理して、第1光学センサがプランジャの前縁およびプランジャの後縁を通過することを表す変動を検出する;(b)シリンダに沿ったプランジャの前縁の位置を決定する;ならびに(c)固定された光学的障害物にプランジャの前縁が接近していることを検出すると、プランジャの後縁の位置を決定する、ように構成されている。
【0010】
不透明な筐体内に入り込んだ当初プランジャ位置を有するペン注射器と共に使用するため本発明の態様のさらなる特徴によれば、一連のセンサは、プランジャの表面に向けて透明なシリンダの壁を通って斜角に放射エネルギーを放出するための光学エミッタを有する補助光学センサと、光学レシーバによって受容された斜角の放射エネルギーの量を表す補助出力を生成するための光学レシーバとをさらに含む。
【0011】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、中央内腔内に摺動的に搭載され、ペン注射器の端部を受容するために構成されたクレードルであって、スライドカバーが第1位置にある際にペン注射器の端部と係合するために終端位置に向けてバネ付勢され、スライドカバーが第2位置まで摺動するにつれてペン注射器の端部と共に移動するように後退可能である、クレードルも提供される。
【0012】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、第2出力が中央内腔内のクレードルの現在の位置を表すように、位置センサがクレードルと関連付けられている。
【0013】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、終端位置に向けてクレードルを付勢するために配置されたクレードルバネも提供され、位置センサは、クレードルバネにおける圧縮力を測定するために配置されたロードセルを含む。
【0014】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、クレードルに作用する付勢力がクレードルバネからの力と力調整バネからの力との組み合わせに対応するようにスライドカバー内に配置された力調整バネも提供され、ロードセルは、クレードルバネのみにおける圧縮力を測定するために配置される。
【0015】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、位置センサは、エミッタとレシーバとを含む第2光学センサである。
【0016】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、第2光学センサは、反射光の強度に基づいてスライドカバーの現在の位置を表す第2出力を生成するように構成される。
【0017】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、位置センサは、オーバーラップが可変である2つの電気部品間のキャパシタンスまたはインダクタンスの変動の関数として第2出力を生成する電気センサである。
【0018】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、液体送達システムと器具との係合時に動作するようにスライドカバーに対して配置されたマイクロスイッチも提供され、器具の少なくとも一部は、低電力スリープ状態を有し、マイクロスイッチの動作時に選択的に起動される。
【0019】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、処理システムに関連付けられた不揮発性データ記憶コンポーネントも提供され、処理システムは、プランジャの以前の位置を記憶し、プランジャの現在の位置を以前の位置と比較し、液体が分注されたかどうかを決定し、分注された液体の分量を算出するように構成される。
【0020】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、スライドカバーと一体化された表示部も提供され、処理システムは、送達された投薬量に関するデータを表示するようにさらに構成される。
【0021】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、処理システムと関連付けられ、データを外部装置に送信するために構成された無線通信サブシステムも提供される。
【0022】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、測定された用量の液体薬剤を針を介して送達するために構成されたペン注射器も提供され、スライドカバーは、針を含むペン注射器の端部を受容するための中央内腔を備えたキャップとして実装される。
【0023】
本発明の態様の教示によれば、液体を収容するための透明なシリンダと吐出口を通じて液体を吐出するためにシリンダの軸に沿って移動可能なプランジャとを含む液体送達システムと共に使用するための器具であって、(a)第1位置から第2位置までシリンダに沿って軸と平行に摺動可能になるようにシリンダと摺動係合するよう構成されたスライドカバー;(b)少なくとも第1センサと第2センサとを含む、スライドカバーと共に移動するようにスライドカバーに収容された一連のセンサであって、第1センサが、信号を生成するプランジャセンサであり、第1信号の変動がスライドカバーに沿った規定された位置を通過するプランジャを表すように、プランジャセンサが、スライドカバーが透明シリンダと係合して摺動するにつれてプランジャの少なくとも一部を非接触検知するよう構成されている、一連のセンサ;および(c)センサの出力を受容するように一連のセンサと関連付けられ、プランジャがプランジャを通過する際にプランジャセンサの出力の変動を特定するように構成され、シリンダに沿ったプランジャの位置を導出するために出力を処理するようにさらに構成された処理システムを含む、器具も提供される。
【0024】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、第2センサは、第1位置と第2位置との間のスライドカバーの現在の位置を表す第2出力を生成するために配置された位置センサである。
【0025】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、第1および第2センサは、軸に沿って間隔を置いて配置された一対の類似のセンサである。
【0026】
本発明の態様の教示によれば、薬剤送達投与量の算出のために薬剤送達装置の透明なシリンダ内のプランジャの位置を測定するための方法であって、以下の工程を含む方法も提供される:(a)第1位置から第2位置までシリンダに沿って軸の軸と平行に摺動可能になるようにシリンダと摺動係合するよう構成されたスライドカバーであって、プランジャの少なくとも一部を非接触検知するよう構成されたプランジャセンサが設けられたスライドカバーを準備する工程;(b)シリンダに沿ってカバーを摺動させ、かつプランジャに到達するプランジャセンサに対応する第1出力の変動を検知する工程;および(c)少なくとも1つの追加のセンサの出力を利用して、プランジャセンサがプランジャに到達したときのシリンダに対するカバーの位置を決定し、これによってプランジャの位置を決定する工程。
【0027】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、少なくとも1つの追加のセンサは、スライドカバーの一部と薬剤送達装置の一部との間の軸方向距離を測定するために配置された距離センサである。
【0028】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、プランジャセンサは、放射エネルギーを放出するための光学エミッタと、光学レシーバによって受容された放射エネルギーの量を表す第1出力を生成するための光学レシーバとを有する光学センサである。
【0029】
本発明の態様のさらなる特徴によれば、少なくとも1つの追加のセンサは、放射エネルギーを放出するための光学エミッタと放射エネルギーを受容するための光学レシーバとを含む、第1光学センサから軸方向に間隔を置いて配置された第2光学センサであり、方法は、(a)プランジャに到達する第2光学センサに対応する第2光学センサの出力の変動を検知する工程;および(b)2つの光学センサからの出力における特徴間の時間差から、プランジャの位置を決定するために用いられる摺動運動の速度を導出する工程をさらに含む。
[本発明1001]
(a)第1位置から第2位置までシリンダに沿って軸と平行に摺動可能になるようにシリンダと摺動係合するよう構成されたスライドカバー;
(b)(i)放射エネルギーを放出するための光学エミッタと、光学レシーバによって受容される該放射エネルギーの量を表す第1出力を生成するための光学レシーバとを有し、前記スライドカバーが透明なシリンダと係合して摺動する際に光学センサがプランジャを通過するにつれて第1出力が変化するように内向配置で配置された、光学センサ、および
(ii)前記第1位置と前記第2位置との間の前記スライドカバーの現在の位置を表す第2出力を生成するために配置された位置センサ
を含む、前記スライドカバーと共に移動するように前記スライドカバーに収容された一連のセンサ;ならびに
(c)前記プランジャに到達する前記光学センサを表す第1出力の変動に応答して、前記第2出力によって表される前記スライドカバーの対応する現在の位置を決定し、これによって前記シリンダに沿った前記プランジャの位置を決定するように構成された、少なくとも前記第1出力および前記第2出力を受容するように前記一連のセンサと関連付けられた処理システム
を含む、
液体を収容するための透明なシリンダと吐出口を通じて液体を吐出するためにシリンダの軸に沿って移動可能な少なくとも部分的に不透明なプランジャとを含む液体送達システムと共に使用するための、器具。
[本発明1002]
前記スライドカバーが、突出した針を有するペン注射器の端部を受容するための中央内腔を備えたキャップとして実装される、本発明1001の器具。
[本発明1003]
透明なシリンダに沿って軸に平行に延在する光学的障害物を有するペン注射器と共に用いられた際に少なくとも一対の光学エミッタおよび光学レシーバが遮られないように、中央内腔の周りに間隔を置いて配置された複数の光学エミッタと中央内腔の周りに間隔を置いて配置された対応する複数の光学レシーバとを用いて前記光学センサが実装される、本発明1002の器具。
[本発明1004]
前記処理システムが、
(a)プランジャの前縁およびプランジャの後縁を前記第1光学センサが通過することを表す変動を検出するために前記第1出力を処理する;
(b)シリンダに沿ったプランジャの前縁の位置を決定する;ならびに
(c)固定された光学的障害物にプランジャの前縁が接近していることを検出すると、プランジャの後縁の位置を決定する
ように構成されている、
透明のシリンダに沿って間隔を置いて配置された複数の固定された光学的障害物を有するペン注射器と共に使用するための、本発明1002の器具。
[本発明1005]
透明なシリンダの壁を通ってプランジャの表面に向けて斜角に放射エネルギーを放出するための光学エミッタと、光学レシーバによって受容された斜角の放射エネルギーの量を表す補助出力を生成するための光学レシーバとを有する補助光学センサを、前記一連のセンサがさらに含む、
不透明な筐体内に入り込んだ当初プランジャ位置を有するペン注射器と共に使用するための、本発明1002の器具。
[本発明1006]
中央内腔内に摺動的に搭載され、ペン注射器の端部を受容するために構成されているクレードルであって、前記スライドカバーが前記第1位置にある際にペン注射器の端部と係合するために終端位置に向けてバネ付勢され、前記スライドカバーが前記第2位置まで摺動するにつれてペン注射器の端部と共に移動するように後退可能である、クレードル
をさらに含む、本発明1002の器具。
[本発明1007]
前記第2出力が中央内腔内のクレードルの現在の位置を表すように、前記位置センサがクレードルと関連付けられている、本発明1006の器具。
[本発明1008]
終端位置に向けてクレードルを付勢するために配置されたクレードルバネをさらに含み、前記位置センサが、該クレードルバネにおける圧縮力を測定するために配置されたロードセルを含む、本発明1006の器具。
[本発明1009]
クレードルに作用する付勢力が前記クレードルバネからの力と力調整バネからの力との組み合わせに対応するように前記スライドカバー内に配置された力調整バネをさらに含み、前記クレードルバネのみにおける圧縮力を測定するためにロードセルが配置されている、本発明1008の器具。
[本発明1010]
前記位置センサが、エミッタとレシーバとを含む第2光学センサである、本発明1001~1007のいずれかの器具。
[本発明1011]
前記第2光学センサが、反射光の強度に基づいて前記スライドカバーの現在の位置を表す前記第2出力を生成するように構成されている、本発明1010の器具。
[本発明1012]
前記位置センサが、オーバーラップが可変である2つの電気部品間のキャパシタンスまたはインダクタンスの変動の関数として前記第2出力を生成する電気センサである、本発明1001~1007のいずれかの器具。
[本発明1013]
前記器具と液体送達システムとの係合時に動作するように前記スライドカバーに対して配置されたマイクロスイッチをさらに含み、該器具の少なくとも一部が、低電力スリープ状態を有し、かつマイクロスイッチの動作時に選択的に起動される、本発明1001の器具。
[本発明1014]
前記処理システムに関連付けられた不揮発性データ記憶コンポーネントをさらに含み、該処理システムが、プランジャの以前の位置を記憶し、プランジャの現在の位置を以前の位置と比較し、液体が分注されたかどうかを決定し、分注された液体の分量を算出するように構成されている、本発明1001の器具。
[本発明1015]
前記スライドカバーと一体化された表示部をさらに含み、前記処理システムが、送達された投薬量に関するデータを表示するようにさらに構成されている、本発明1014の器具。
[本発明1016]
前記処理システムと関連付けられかつデータを外部装置に送信するために構成された無線通信サブシステムをさらに含む、本発明1001の器具。
[本発明1017]
測定された用量の液体薬剤を針を介して送達するために構成されたペン注射器をさらに含み、前記スライドカバーが、針を含む該ペン注射器の端部を受容するための中央内腔を備えたキャップとして実装されている、本発明1001の器具。
[本発明1018]
(a)第1位置から第2位置までシリンダに沿って軸と平行に摺動可能になるようにシリンダと摺動係合するよう構成されたスライドカバー;
(b)少なくとも第1センサと第2センサとを含む、前記スライドカバーと共に移動するように前記スライドカバーに収容された一連のセンサであって、該第1センサが、信号を生成するプランジャセンサであり、第1信号の変動が、前記スライドカバーに沿った規定された位置を通過するプランジャを表すように、該プランジャセンサが、前記スライドカバーが透明シリンダと係合して摺動するときのプランジャの少なくとも一部を非接触検知するよう構成されている、一連のセンサ;および
(c)前記センサの出力を受容するように前記一連のセンサと関連付けられ、プランジャがプランジャを通過する際に前記プランジャセンサの出力の変動を特定するように構成され、シリンダに沿ったプランジャの位置を導出するために該出力を処理するようにさらに構成された、処理システム
を含む、
液体を収容するための透明なシリンダと吐出口を通じて液体を吐出するためにシリンダの軸に沿って移動可能なプランジャとを含む液体送達システムと共に使用するための、器具。
[本発明1019]
前記第2センサが、前記第1位置と前記第2位置との間の前記スライドカバーの現在の位置を表す第2出力を生成するために配置された位置センサである、本発明1018の器具。
[本発明1020]
前記第1および第2センサが、前記軸に沿って間隔を置いて配置された一対の類似のセンサである、本発明1018の器具。
[本発明1021]
(a)第1位置から第2位置までシリンダに沿って軸の軸と平行に摺動可能になるようにシリンダと摺動係合するよう構成されたスライドカバーであって、プランジャの少なくとも一部を非接触検知するよう構成されたプランジャセンサが設けられた、スライドカバー
を準備する工程;
(b)シリンダに沿って前記カバーを摺動させ、プランジャに到達するプランジャセンサに対応する第1出力の変動を検知する工程;および
(c)プランジャセンサがプランジャに到達したときのシリンダに対する前記カバーの位置を決定するために少なくとも1つの追加のセンサの出力を利用し、これによってプランジャの位置を決定する、工程
を含む、薬剤送達投与量の算出のために薬剤送達装置の透明なシリンダ内のプランジャの位置を測定するための方法。
[本発明1022]
前記少なくとも1つの追加のセンサが、前記スライドカバーの一部と前記薬剤送達装置の一部との間の軸方向距離を測定するために配置された距離センサである、本発明1021の方法。
[本発明1023]
前記プランジャセンサが、放射エネルギーを放出するための光学エミッタと光学レシーバによって受容された該放射エネルギーの量を表す第1出力を生成するための光学レシーバとを有する光学センサである、本発明1021の方法。
[本発明1024]
前記少なくとも1つの追加のセンサが、放射エネルギーを放出するための光学エミッタと該放射エネルギーを受容するための光学レシーバとを含みかつ第1光学センサから軸方向に間隔を置いて配置された第2光学センサであり、
方法が、
(a)プランジャに到達する前記第2光学センサに対応する前記第2光学センサの出力の変動を検知する工程;および
(b)前記2つの光学センサからの出力における特徴間の時間差から、プランジャの位置を決定するために用いられる摺動運動の速度を導出する工程
をさらに含む、本発明1023の方法。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明は、添付の図面を参照して例としてのみ本明細書において記載される。
【0031】
【
図1】ペン注射器にキャップをするために使用される、本発明の態様によって作製され作動するキャップの概略図である。
【
図2A】ペン注射器がキャップに対して外側にある、
図1のキャップおよびペン注射器の概略等角図である。
【
図2B】ペン注射器がキャップに部分的に挿入された、
図1のキャップおよびペン注射器の概略等角図である。
【
図2C】ペン注射器がキャップに完全に挿入された、
図1のキャップおよびペン注射器の概略等角図である。
【
図3A】
図2Bから得られた、キャップの中心軸に沿った概略断面図である。
【
図3B】
図2Cから得られた、キャップの中心軸に沿った概略断面図である。
【
図4】
図4Aは、ペン注射器リザーバの例示的な形状の概略横断面図であり;
図4Bおよび4Cは、
図4Aのペン注射器リザーバの2つの異なる向きでの挿入を図示した、
図3Aの光学センサから得られた横断面図である。
【
図5】
図5A~5Dは、4つの連続した位置にあるプランジャを示す例示的なペン注射器の概略側面図である。
【
図6】
図6A~6Dは、それぞれ、
図5A~5Dのプランジャ位置に対応するキャップへのペン注射器の挿入距離の関数としての、
図4Bおよび4Cの光学センサの出力の特徴を図示した概略的なグラフである。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、それぞれ、追加の光学センサの実施形態を図示した、
図3Aおよび3Bと類似の図である。
【
図8】
図8Aおよび8Bは、位置センサの異なる実施形態を示す、
図3Aおよび3Bと類似の図である。
【
図9A】ペン注射器のキャップの取り外しの間の連続的な位置で示される、本発明のさらなる異なる態様の動作原理を図示した概略的な軸方向断面図である。
【
図9B】ペン注射器のキャップの取り外しの間の連続的な位置で示される、本発明のさらなる異なる態様の動作原理を図示した概略的な軸方向断面図である。
【
図9C】ペン注射器のキャップの取り外しの間の連続的な位置で示される、本発明のさらなる異なる態様の動作原理を図示した概略的な軸方向断面図である。
【
図9D】ペン注射器のキャップの取り外しの間の連続的な位置で示される、本発明のさらなる異なる態様の動作原理を図示した概略的な軸方向断面図である。
【
図9E】ペン注射器のキャップの取り外しの間の連続的な位置で示される、本発明のさらなる異なる態様の動作原理を図示した概略的な軸方向断面図である。
【
図10】
図10Aは、
図9A~9Eの原理による本発明の実施形態をより詳細に図示した概略的な軸方向断面図であり;
図10B~10Dは、それぞれ、
図9A~9Cの位置に対応する状態で示された、Xと記した
図10Aの領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好ましい態様の説明
本発明は、センサが液体送達システムのスライドカバーと一体化されており、かつカバーを外すかまたは再び装着する間に液体送達システムのプランジャの位置を測定する、器具、および対応する方法である。
【0033】
本発明による器具の原理および動作は、図面および付随の記載を参照して一層よく理解される場合がある。
【0034】
はじめに大まかに言うと、本発明は、キャップの取り外しおよび/または取り付け動作の間に作動して液体送達装置のプランジャに光学センサが到達するにつれて変化する信号を生成する第1光学センサを含む一連のセンサを組み込んだ、ペン注射器のためのキャップなどのスライドカバーを利用する。この信号は次いで、少なくとも1つの追加のセンサの出力と共に用いられて、液体送達装置のシリンダに沿ったプランジャの位置を決定する。プランジャ位置の変化をモニタリングすることにより、液体送達装置によって送達された投薬の分量を、決定する、表示する、記憶する、および/またはさらなるデータ処理もしくは記憶のために外部装置に送信することができる。
【0035】
本発明の実施形態は、いずれも共通する発明の概念を共有する2つのサブグループに大別することができる。
図1~8Bを参照して本明細書において記載される第1のサブグループは、第1光学センサと共に位置センサを利用して、第1光学センサがプランジャに到達する際のカバーに対する液体送達装置の相対位置を測定する。
図9A~10Dを参照して例示される実施形態の第2のサブグループは、少なくとも1つの追加の光学センサを利用して、液体送達装置に対するカバーの移動速度を決定し、それによってプランジャと遭遇する位置を導出する。
【0036】
ここで図面を参照すると、
図1~7Bは、注射ペン(「ペン注射器」)200のためのキャップとして本発明の態様により作製され動作する概して100と記す第1の器具の特徴を図示しており、ペン注射器200は、液体を収容するための透明な壁211を備えたシリンダ210の形態である概して透明なリザーバと、取り替え可能な注射針230に関連する隔壁として典型的に実装される、吐出口を通じて液体を吐出するためにシリンダ210の軸に沿って移動可能な少なくとも部分的に不透明なプランジャ220(本明細書においては互換的に「ピストン」220と呼ばれる)とを有する。
【0037】
器具100は、キャップの再取り付けの開始時に第1位置(
図2Bおよび3A)から、キャップがペン注射器200と完全に係合した第2位置(
図2Cおよび3B)まで軸に平行にシリンダに沿って摺動可能になるようにシリンダ210と摺動係合するよう構成されたスライドカバー、ここではキャップ100として、形成される。
【0038】
スライドカバーと共に移動するように一連のセンサがスライドカバーに収容されている。一連のセンサは、放射エネルギーを放出するための光学エミッタ111と光学レシーバによって受容された放射エネルギーの量を表す第1出力を生成するための光学レシーバ112とを有する光学センサ110を含む。光学センサ110は、スライドカバーが透明なシリンダ210と係合して摺動する際に、光学センサ110がプランジャ220を通過するにつれて第1出力が変化するように、内向配置で配置される。
【0039】
ペン注射器200に対する第1位置と第2位置との間のスライドカバー100の現在の位置を表す第2出力を生成するために配置された位置センサ120も一連のセンサに含まれる。少なくとも1つのプロセッサ124を含む処理システム122は、センサの出力を受容するように一連のセンサと関連付けられている。処理システム122は、光学センサがプランジャ220に到達したことを表す光学センサ110からの出力の変動に応答するように構成されており、位置センサ120の出力によって表されるカバー100の対応する現在の位置を決定し、これによってシリンダ210に沿ったプランジャ220の位置を決定する。
【0040】
よって、本発明の特定の態様は、シリンダ210に沿って摺動運動しているセンサを用いてプランジャ位置の検出が達成されるという特徴的な動作様式を提供する。測定プロセスにおいてカバーとリザーバとの間の相対移動を活用することによって、少数のセンサで正確な測定を好適に達成することができる。
【0041】
ここでより詳細な本発明の態様の特徴を見ると、光学センサ110は、典型的には、カバーの摺動運動の間に液体送達装置と相互作用するように対向したエミッタ/レシーバ対111、112として実装される。ペン注射器の端部を受容するための中央内腔101を備えたキャップの好ましい例では、センサ110は、典型的には、エミッタ111およびレシーバ112が中央内腔を横切って、最も典型的にはほぼ径に沿って、対向する関係にある透過センサとして実装されるので、受容した光の強度は、2つの要素間に挿入されたペン注射器の部分によって影響を受けることになる。測定精度を最も高めるために、特定の特に好ましい態様では、エミッタ111は、軸に平行な方向への広がりが最小限である細いビームを生成するように構成される。これは、指向性LEDまたはレーザダイオードなどの光源の適切な選択によって、および/または内腔の軸に直角に配列した平行スリットの使用によって達成されてもよい。内腔の軸に直角な平面内のある程度の広がりが有利なことがあるが、典型的には必須ではない。光源は、任意の所望の波長の可視または不可視光で動作させてもよい。複数の光学センサが用いられる下に説明する様々な態様では、センサ間のクロストークは、各センサ毎の個別の波長の使用(例えばバンドパスフィルタの付加によって、レシーバも波長特異的になる)によるか、または各センサがサイクルの個別の期間内で発光のパルスを放出しかつ検知する時分割多重化によるかのいずれかで回避されることがある。サンプリングレートは、好ましくは少なくとも100Hzであり、典型的には1000Hzを越える。
【0042】
光学的障害物がない透明な円筒形のリザーバを備えたペン注射器の場合、光学センサ110は、実質的には、単一のエミッタ/レシーバ対111、112として実装することができる。特定の場合では、しかしながら、市販のペン注射器は、透明のシリンダの表面を部分的に不透明にする様々な構造的な支持および/または保護構造を有する。よって、本発明の特定の対応する好ましい実施形態では、これから説明するように、このような障害物に対処するための解決策を提供する。
【0043】
図4Aは、シリンダ壁211の2つの対向する領域が、シリンダに沿ってその軸と平行に延在するプラスチック支持構造212によって覆われているシリンダ210から得られた概略断面図である。この場合、単一のエミッタ/レシーバ対光学センサでは、ペン注射器がキャップに挿入される向きによってはプランジャを検知しない危険性がある。1つの選択肢(図示せず)によれば、ペン注射器200の非対称的な支持構造の特徴に相補的な、キャップ100に形成された特徴により、ペン注射器に対するキャップの向きが、支持構造212によって遮られることなくエミッタ/レシーバ対が透明な壁211の露出した領域と一直線に並ぶ向きの1つになることが保証される場合がある。
【0044】
代替的な任意の解決策によれば、光学センサ110は、
図4Bおよび4Cに図示するように、2つ以上の光学エミッタ111が中央内腔の周りに間隔をあけて、かつ対応する複数の光学レシーバ112が中央内腔の周りに間隔をあけて、実装される。その結果、ペン注射器がどのような向きでキャップに挿入されても、少なくとも一対の光学エミッタおよび光学レシーバは遮られない。よって、例えば、
図4Bは、示したような左右方向のエミッタ/レシーバは支持構造212によって遮られているが上下のエミッタ/レシーバ対は動作している場合を図示し、一方で、
図4Cは、その逆が真となるペン注射器の向きを図示している。
【0045】
この場合、複数のエミッタ/レシーバ対は、中央内腔に沿った単一の軸位置に好ましくは設置され、単一の出力を生成するために用いられる単一のセンサとして扱われる。1つの特に好ましい選択肢によれば、処理システム122によって実行される前処理工程を通じて単一の出力が生成され、これによれば、その出力においてダイナミックレンジが最大のエミッタ/レシーバ対がセンサの「アクティブ」部分として選択され、ダイナミックレンジがより小さい対は無視される。センサの出力を合計するなどの他の選択肢も効果的な結果をもたらす場合があるが、ダイナミックレンジが最大である出力の選択的な使用よりも感度が低いと考えられる。
【0046】
特定の市販のペン注射器では、
図5A~5Dに図示するように、さらなるタイプの光学的障害物が存在する。この場合、ペン注射器200は、長手方向支持構造212に加えて、透明なシリンダに沿って間隔を置いて配置された複数の固定された光学的障害物を形成するようにリザーバへの窓を細分する複数の架橋リブ213も特徴とする。プランジャ220の先端面221の位置は、5A、5Bおよび5Dに示すようにリブ213間の「窓」の反対側にあるときには光学的に検知することができるが、
図5Cにおいてなど特定の位置では、先端面221は一方または他方のリブ213によって視界から隠れている。
【0047】
本発明の態様の一局面によれば、プランジャ位置測定の連続性は、そのような場合にはプランジャの先端/前面221と後端/後面222との検知を切り替えることによって達成される。具体的には、処理システム122は、この場合では、プランジャの前縁およびプランジャの後縁の両方を通過する光学センサ110を表す変動を検出するために光学センサ110の出力を処理するように構成される(側面から見た先端および後端面は「縁」として観察される)。初期の動作の間、プロセッサ122は、シリンダに沿ったプランジャ22の前縁221の位置を決定する。プロセッサ122が、固定された光学的障害物213の1つに前縁221が近づいていると判断すると、プロセッサは、プランジャの後縁222の検出に基づいてプランジャの位置を決定することに切り替える。プランジャが一定の既知の長さ(これは、
図5Bでのようにプランジャの両側が露出している間の測定時に決定することもできる)を有することを考えれば、先端面221の位置は、視界から隠れている間であっても正確に決定することができる。一旦前縁221が障害物の後ろから現れれば、
図5Dでのように、処理システム122は、典型的には、もう一度プランジャの前面の位置を直接的に決定することに切り替わる。任意で、プランジャの前および後縁両方の位置が検出される場合、精度を向上すべくかつ/またはエラーチェックのために両方の測定値を用いてもよい。前または後縁のいずれかの位置が障害物に近接するたび、処理システムは、隠れていない縁のみの使用に切り替わる。
【0048】
図6A~6Dは、それぞれ、
図5A~5Dの状態に対応する、キャップ100へのペン注射器200の挿入距離dの関数としての光学センサ110の発光強度出力Iの概略図を示す。ここでは、リブ213の形態の光学的障害物を含む
図5A~5Dの比較的より複雑な場合について、例示的な信号が示されていることに留意されたい。このような障害物のないより単純な場合の動作は、これらの図面および付随する記載から類推することによって明確に理解される。
【0049】
図6Aおよび6Cに記されるように、図示したグラフは、光学センサ110を通過するペン注射器200の異なる部分に対応する領域に細分することができる。したがって、領域Aは、ペン注射器の本体がセンサに到達する前のレベルI
1の概して減衰されていない信号に対応するが、これは、場合によっては示されたような針カバー231も備える突出した針の存在によってわずかに影響され得る。内部摺動クレードル160が用いられる場合(後述するように)、ペン注射器のすぐ前のこの領域は、典型的には不透明になり、よってその光学特性は針およびカバーの有無とは無関係になり、これは検出プロセスをさらに簡素化する。領域Bはペン注射器の中実端部の通過に対応し、これは光学的障害物および対応するレベルI
4への出力信号の強い減衰をもたらす。ペン注射器200およびキャップ100の相対運動が継続してオーバーラップが増加するにつれて、光学センサ110の少なくとも1つのエミッタ/レシーバ対がシリンダ210を通じて窓と一列に並び、よってレベルI
2の比較的高い信号が生成される。信号I
2は、典型的には、シリンダ壁211でおよび/または液体内で起こる散乱および/または吸収によりI
1よりわずかに小さい。この例では、領域Cは、障害物213を原因とする局所的な信号の低下Dによって遮られ、この後、信号はさらなる窓の部分である領域CではレベルI
2まで戻る。次いで、プランジャ220の前縁221が光学センサ110に到達する際は、信号はプランジャ全体が通過するまで(領域P)再びI
4まで低下するか、または
図5Aおよび6Aの場合は、運動の残りの部分にわたって隠れたままになる。
【0050】
プランジャの前(または後)端の位置は、好ましくは、対応する信号の変化に関わる急峻な線の勾配の開始によって特定されるが、信号のハーフハイトなどの他の測定点も用いられ、一貫して用いられた際には良好な結果が得られる場合がある。
【0051】
図6Cは、前縁221が光学信号出力からは直接的には見出すことはできず、その代わりに上に説明したように後縁222の測定に基づいて位置が算出される
図5Cの状態に対応する信号を図示する。
【0052】
本明細書においては透過モードを参照して光学センサ110が例示されているが、エミッタおよびレシーバが内腔の同じ側に配置される反射モードを用いてもよいことに留意されたい。得られる信号の形は異なることになるが、本明細書において記載する処理のすべての局面は、当業者には自明である様式に容易に適合させることができる。
【0053】
特定の市販のペン注射器では、移動の初期の段階の間のプランジャの位置は、ペン注射器筐体の不透明領域内に入り込んでおり、暫く使用した後にようやくリザーバの露出した透明部分に到達する。
図7Aおよび7Bは、一連のセンサが、プランジャの表面221に向けて透明なシリンダの壁211を通って斜角に放射エネルギーを放出するための光学エミッタ113と光学レシーバによって受容された斜角の放射エネルギーの量を表す補助出力を生成するための光学レシーバ114とを有する補助光学センサをさらに含む、キャップ100の改変型を示す。この場合、プランジャの位置は、典型的には、所与のタイプのペン注射器毎の事前較正に基づいて強度測定から導出される。この測定法は、プランジャの移動範囲の初期における小範囲の位置にわたってのみ用いられるため、測定は、キャップへのペン注射器の完全な挿入後静止状態で実施することができ、単一の補助センサを用いて(任意で
図4A~4Cを参照して上に説明したような複数のエミッタ/レシーバ対と共に)十分な精度を典型的には達成することができる。
【0054】
場合によっては、本発明の様々な光学センサについて、可視光を通さない装置の様々なプラスチック部分を通過する発光の波長を見出すことが可能な場合があることに留意されたい。したがって、例えば、850nmの固体レーザのビームは、比較的妨げられずに様々なペン注射器のプラスチック支持構造を通過するが、装置のシリコーンプランジャによって強く減衰されることが見出された。そのような場合のための適切な光学エミッタの1つの非限定例は、OPTEK Technology Inc.(米国)から市販されている垂直共振器面発光レーザOPV382である。そのような波長の使用が、
図4B~7Bを参照して上に記載した解決策のいくつかまたはすべての必要性を排除する場合がある。
【0055】
ここで本発明の特定の好ましい態様の追加の特徴を見てみると、器具100は、有利には、ペン注射器200の端部を受容するために構成された中央内腔101内に摺動的に搭載された摺動「クレードル」160が設けられてもよい。ここで用いられる「クレードル」という用語は、本明細書において「スライダ」とも呼ばれる滑り子を指し、これはペン注射器の端部を受容するように成形され、ペン注射器が、針カバーの有無にかかわらず現在針アダプタに接続されているか、またはその隔壁接触面が露出した無針状態であるかどうかと無関係に、明確に規定された位置にその端部を好適に収容する。これは、好ましくは、リザーバの前端の外周と係合する係合機構を針アダプタの装着領域から径方向外方に設けることによって達成される。クレードル160は、キャップの再取り付けの開始またはキャップの取り外し終了時であるキャップ100が第1位置にある際に、ペン注射器の端部と係合するために終端位置に向けてバネ170によって好ましくはバネ付勢され(
図3A)、キャップ100およびペン注射器200が第2完全係合位置まで摺動するにつれてペン注射器200の端部と共に移動するためにバネ170に抗して後退可能である。クレードル160の設置は、移動の間のペン注射器200とキャップ100との正確な一直線の整列を維持するのに役立ち、キャップ内でのペン注射器の円滑かつ予測可能な移動が確実になり、これによって光学センサ110による測定の精度が向上しやすくなる。
【0056】
ここで位置センサ210を見ると、これは多くの異なるやり方で実装されてもよく、広範な異なる技術を用いたその非限定例をこれから記載する。場合によっては、クレードル160の存在は、位置センサの実装に有利に用いられることがある。例えば、位置センサ120は、有利には、位置センサの出力が中央内腔101内のクレードル160の現在の位置を表すようにクレードル160に関連付けられてもよい。ペン注射器200の端部とクレードル160との係合は明確に規定されているので、およびクレードル160はペン注射器200との係合を維持するためにバネ付勢されかつペン注射器200と共に移動するので、クレードル160の位置はペン注射器200の位置の直接的な指標として用いることができる。
【0057】
図3Aおよび3Bに図示する位置センサ120の1つの特に好ましい非限定例は、バネ170における圧縮力を測定するために配置されたロードセル171を利用する。バネ170に対する圧縮力はフックの法則に従ってバネの変位量に比例するので、ロードセルに対する力の測定は、単純にクレードル160の、ひいてはペン注射器200の位置に変換することができる。処理システム122は、ロードセルの出力を読み取りその出力をペン注射器の位置に変換するようにロードセル171に接続される。光学センサ110からの信号を処理してプランジャの前(または後)面が内腔101に沿った事前に規定した位置にいつくるかを判断することによって、およびその瞬間のペン注射器200の対応する位置を決定することによって、シリンダ210内のプランジャ220の位置を導出することができる。既知のシリンダ内径とプランジャの連続的な位置の差異とから、リザーバから送達された液体製剤の計算上の体積が得られる。
【0058】
フックの法則に基づいた計算の利用は、バネの運動の間に起きるいかなる動的な影響も無視できる程度であることを前提としている。バネ特性(主に質量およびバネ定数)が、バネのいかなる内部振動もバネの圧縮または伸張が起きる時間に比べて比較的高い周波数で起きるようなものである限り、この前提は、典型的には良好な前提である。バネ震動の既知の特性周波数を有する何らかの振動が出力信号において検出された場合には、これらはプロセッサ122によって除外することができる。
【0059】
バネ170の強度は、好ましくは、ロードセルがその最も高感度な範囲でおよび/またはそれが線形の出力応答を提供する範囲で確実に作動するように選択される。場合によっては、この力は、クレードル160に対する付勢力全体として所望されるものより大きくてペン注射器がキャップから意図せずに放り出される危険性につながることがあるか、またはキャップを取り外す間にペン注射器200の先端とクレードル160との係合を確実に維持するには小さすぎることがある。そのような場合は、ロードセル171がクレードルバネ170のみにおける圧縮力を測定するために配置される一方で、クレードルに作用する付勢力がクレードルバネ170からの力と力調整バネからの力との組み合わせに対応するように、器具100は、キャップ内に配置された力調整バネ(図示せず)を含んでもよい。
【0060】
投薬サイクル毎に一回投薬量読み取り値を取得するように器具100は自動的に作動するが、使用していないときには低電力の「スリープ」状態になることが本発明の特定の態様の特に好ましい特徴である。自動的な作動を達成するために複数の選択肢が用いられてもよい。
図3Cに図示する第1の選択肢によれば、装置を起動するためにマイクロスイッチ180などの機械的なスイッチが設けられる。スイッチ180の状態は、好ましくは、クレードル160(ペン注射器200と共に移動する)がスイッチボタン181を通過するときに変更される。処理システム122は、スイッチ180の状態の変化に応答し、すべてのセンサが測定のための通常の様式で作動される測定モードまで装置を起動させる。ここに示すようなスイッチ180の位置決めは、キャップの取り付けプロセスの間に、すなわちペン注射器がキャップに挿入される(または、本願の目的のためには同等のことである、キャップがペン注射器に装着される)ときに測定を行うために構成されたシステムに特に適している。
図9A~10Dを参照して下に記載する代替的な態様では、キャップを取り外す動作の開始時にシステムを作動させるためにキャップ100の遠位端にマイクロスイッチが配置される。いずれの場合も、装置は、好ましくは、典型的には数秒以内であるキャップの取り付けまたはキャップの取り外し動作を完了するのに十分な所与の時間後に低電力スリープモードに戻るように構成される。任意で、センサが移動および関連する測定を完了するのに十分なわずかな時間で停止されるのに伴い、一部の構成要素がそれらの機能に応じて異なる時間で停止されてもよい一方で、処理および表示構成要素は、すべての必要な計算を完了するためおよび事前に規定した時間の間結果を表示するためにより長い間起動したままであってもよい。ボタン131は、典型的には、最新の投薬量データを表示するために必要に応じて表示部130を再び起動させるために設けられる。
【0061】
機械的マイクロスイッチを伴わずにスリープ状態からの復帰を達成するための代替的な実施形態では、動作の開始を検知するための作動センサとしてロードセル171自体を低電力モードで用いてもよい。典型的な場合では、ロードセルは入力電圧によって動作し、現在の負荷に応じて入力電圧のうちの様々な割合である出力を提供する。通常の動作の間は、ロードセル171には、出力信号において最大分解能を提供するために、典型的には電源128からの入力電力供給電圧、例えば、5Vにほぼ対応する動作電圧が供給される。本発明の局面のこの特徴によれば、スリープモードでは、ロードセル171は1V未満、例えば0.5Vなどの減電圧によって作動されてもよく、出力電圧は、出力電圧の小さな変化を処理システム122への作動信号に変換する低電力回路によってモニタリングされ、次いでそれがすべての関連する構成要素を再び起動させる。
【0062】
図1に図示した残りの構成要素を簡単に参照すると、処理システム122は、少なくとも1つのプロセッサ124およびデータ記憶装置126や、好ましくは通信サブシステム140を含むことが認識される。処理システム122は、ソフトウェアまたはファームウェアによって、または専用ハードウェア、またはこれらの任意の組み合わせの使用によって適切に構成された標準的なプロセッサチップを、いずれも様々なセンサおよびシステムの他の構成要素からの出力を送るおよび受容するために必要な適切な入力および出力インタフェースと組み合わせて用いて、様々なやり方で実装されてもよいことが認識される。表示部130は、典型的には、限定的な桁数または英数字情報の表示部であり、これは、典型的には、最後に送達された投薬量およびその投薬量が送達された時間を表示する。より広範な情報、過去の記録の表示および/または薬剤送達パターンの分析のために、データは、好ましくは、ブルートゥースなどの任意の所望の規格による無線通信サブシステムまたはマイクロUSBコネクタなどの有線接続インタフェースであってもよい通信サブシステム140を介して外部電子装置へアップロードされる。外部装置は、パーソナルコンピュータ(PC)もしくは移動通信装置(スマートフォン)などのユーザ装置、またはインスリンポンプおよび/もしくはグルコースモニタリング装置であってもよい。装置は、糖尿病管理ソフトウェア(例えば、APP)を実行してもよい。付加的または代替的には、データは、医療提供者のネットワーク接続されたシステムに転送されてもよい。それが、直接的または外部装置を介してのいずれかで、所定の期間の注射の履歴を含む追加の情報、および空のカートリッジ、空に近いカートリッジ、注射の予定時刻などについての警告表示を提供してもよい。
【0063】
器具全体は、使い捨てまたは再充電可能な電池であってもよいボタン電池などの典型的には複数の小型電池であってもよい電源128によって電力供給される。
【0064】
上に記載したロードセルに基づく位置測定は、位置センサ120を実装するための数々の可能な技術のうちの1つに過ぎないことに留意されたい。
図8Aおよび8Bに図示するさらなる例は、キャップ100の内腔101の閉鎖端内に搭載したエミッタ121およびレシーバ122を利用する光学センサとして、クレードル160の方に向いた位置センサ120を実装している。最も好ましくは、クレードル160の端面161は、白い素材のシートなどの拡散反射面として実装される。端面161からの反射後にエミッタ121からレシーバ122に到達する発光の強度は、内腔101の端部からの表面161の距離の目安を提供する。キャップは好ましくは周辺光を透過させない閉鎖構造であるため、クレードル160の最も端にある既知の2つの静止位置の一方または両方に基づいて任意で間欠的に自己再校正された、事前に規定したルックアップ表または事前に規定した式を用いて、比較的高精度の距離測定を達成することができる。
【0065】
ペン注射器200は、既知の空間関係でクレードル160と係合しているので、クレードル位置160の測定はペン注射器の位置の測定ももたらす。前述と同様に、内腔101に沿った事前に規定した位置に到達するプランジャに対応する測定値が特定され、次いでリザーバシリンダに沿ったプランジャの位置が決定される。他のすべての点では、
図8Aおよび8Bの器具の構造および機能は、
図2A~7Bの器具と構造的および機能的に類似しており、同等の要素は同様に標識付けされており、これらに対する類推によって理解される。
【0066】
位置センサ120は、代替的には、距離計の技術分野において周知であるような三角測量技術および飛行時間測距技術を非限定的に含む他の光学センサ技術を用いて実装されてもよい。
【0067】
位置センサ120の上記の実施形態に加えて、種々の他の近接検知およびリニアエンコーダ技術を用いてセンサ110(これはより一般的には「プランジャセンサ」と規定されることがある)および位置センサ120の一方または両方の機能を実装してもよい。位置センサ120のための他の適切な検知技術は、オーバーラップが可変である2つの電気部品間のキャパシタンス(例えば、摺動する導体の可変オーバーラップ)またはインダクション(例えば、コイルの摺動オーバーラップ)の変動の関数として出力を生成する電気センサ、および超音波飛行時間型または強度に基づいた距離センサを非限定的に含む。
【0068】
プランジャ220(それ自体またはそのロッド)に金属製の要素を埋め込むことができるか、またはロッド全体が金属からなる場合には、光学センサ110に置き換えて線形可変差動変圧器(LVDT)センサを用いて、内腔101に沿った事前に規定した位置でのプランジャ220の通過を検出することができる。さらなる金属製の参照要素がリザーバの前部付近に組み込まれていれば、LVDTセンサは、センサ110および120両方の機能を果たすことができる。
【0069】
ここで
図9A~10Dを見ると、キャップに対するペン注射器の位置の直接的な測定が速度に基づいた計算によって置き換えられた、ペン注射器200のためのスマートキャップとしての器具100のさらなる実施形態が図示されている。具体的には、ペン注射器からキャップを取り外すプロセスの間に、ユーザはキャップとペン注射器との確実な係合を解除するために必要な閾値力より大きな力を加え、これはペン注射器およびキャップが離間するにつれ速い不随意運動をもたらす。この運動は、約5センチメートルの関連範囲にわたる等速度運動に非常に近似する。この等速度は、これから記載するようにプランジャ位置の測定を行うために活用することができる。
【0070】
図9A~9Eの概略図を参照すると、器具100はここでは、内部内腔101の近位端付近に位置した第1光学センサ110aと、内腔101に沿った他の場所に位置した第2光学センサ110bとを含む。各光学センサは、センサ110に関連して上に記載した特徴のいずれかまたはすべてにしたがって実装される。装置は、好ましくは、ペン注射器がキャップと完全に係合する際にペン注射器200の一部によって作動され(この場合は開く)、その完全に係合した位置からのペン注射器200の初動(
図9Aから
図9Bへ)によって切り替えられる(この場合は閉じる)ように配置されたマイクロスイッチ180も含む。
【0071】
光学センサ110bは、ペン注射器の何らかの光学的に弁別的な特徴がそれを通過するにつれて出力の変動を生じるように位置決めされている。ここに図示した場合では、その特徴は、
図9Bの状態から
図9Cの状態への位置の移行として検出されるペン注射器の遠位端である。このイベントは、時間t
0と関連付けられるか、またはタイマーを開始することとみなすことができる。
【0072】
光学センサ110aは、センサ110に関連して上に詳細に記載したようにプランジャの通過に対応する出力の変動を生じるように器具100内の近位位置に配置される。これは、
図9Cおよび9Dの状態間の移行においてここに図示するように起こり、時間t
1と記される。器具100およびペン注射器200の離間につれて、センサ110bによって認識された光学的に弁別的な特徴も
図9Eに図示されるようにセンサ110aを通過し、これは時間t
2と記される。
【0073】
プロセッサ122は、これらの出力を処理して前記の時間を導出し、次いでプランジャの位置を決定する。キャップとペン注射器との相対運動の速度は、2つの光学センサ間の距離Lを(t2-t0)で除算したものに基づいて規定することができる。時間(t2-t1)を速度で乗算したものから、プランジャとペン注射器の光学的に弁別的な特徴との間の距離が得られる。
【0074】
図10A~10Dは、
図9A~9Eを参照して記載した原理を実施する構造をより詳細に図示しており、マイクロスイッチ180および光学センサ110bのエミッタの配置を示す。
図10B~10Dは、それぞれ、
図9A~9Cの状態に対応する連続的な位置を図示している。
【0075】
付随する針および針カバーの有無にかかわらずユーザがペン注射器にキャップを再び取り付けるスペースを残すことが望ましい特定の場合では、当業者には明らかであるように、マイクロスイッチ180および光学センサ110bは、有利には、針アダプタおよび/またはカバーの有無によって影響を受けないペン注射器の領域と協働するように再配置されてもよい。
【0076】
先の態様の文脈で述べたように、ペン注射器のプランジャ/ロッドアセンブリ内および遠位領域での両方においてペン注射器構造内に適切な導電性(金属)部品が組み込まれている場合には、
図9A~10Dのものと機能的に同等な発明の実施形態が、2つの間隔を置いて配置された線形可変差動変圧器(LVDT)センサに対応するコイル配列を用いて実装されて、t
0、t
1およびt
2を決定してもよい。
【0077】
現段階で、本発明の様々な態様の動作、および本発明による対応する方法が明らかであると考えられる。具体的には、様々な実施形態が、ペン注射器にキャップを取り付けるかまたは取り外す間の相対運動時にサンプリングされる信号に基づいてプランジャ位置を検出する。現在のプランジャ位置は以前に測定したプランジャ位置と比較されて、薬剤が投与されたかどうか、もしそうであればどれほどの投与量であるかが決定される。キャップは次いで、典型的には表示パネル130上に、画面を表示し、これは最後に送達された薬剤の時間および分量を表す。
【0078】
本発明はペン注射器の文脈で例示されているが、薬剤または他の液体がシリンジ型装置によって送達される任意の文脈において、送達された投薬量および/または残りの分量を決定するために本発明の異なる実施形態を用いてもよい。
【0079】
上の記載は例としての役割を果たすことのみを意図すること、および添付の請求項に規定する本発明の範囲内で多くの別の態様が可能であることが認識される。