(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置、その制御方法、および、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
A61B5/055 370
A61B5/055 390
(21)【出願番号】P 2021150455
(22)【出願日】2021-09-15
【審査請求日】2023-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八尾 武
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和之
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-183510(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0208981(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影領域に静磁場を印加する静磁場発生装置と、
前記撮影領域に配置された被検体に高周波磁場パルスと傾斜磁場パルスを印加し、前記被検体から発生される核磁気共鳴信号を取得する撮影部と、
撮影パルスシーケンスに従って、前記高周波磁場パルスと前記傾斜磁場パルスの印加および核磁気共鳴信号の取得を所定のタイミングで繰り返し前記撮影部に実行させ、画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を前記撮影部に取得させる制御部と、
前記撮影部
が前記撮影パルスシーケンスを実行している間、前記撮影領域に配置された被検体を連続して光学的に撮影するカメラとを有し、
前記制御部は、
操作者が設定した撮像条件を受け付け、前記撮像条件を用いて前記画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を前記撮影部に取得させる前記撮影パルスシーケンスを生成し、
前記撮影パルスシーケンスを
予め定められたフレームレートに対応する時間幅の小シーケンスに分割
し、
前記カメラの撮影した画像を
前記フレームレートで取り込み
、
一つの前記小シーケンスを前記撮影部に実行させる前に、前記フレームレートで取り込んだ直近のフレームの前記画像から前記被検体の予め定めた基準位置に対する変位または前記被検体の動きの速度を検出し、前記検出結果が予め定めた許容範囲以内である場合、前記小シーケンスを
前記撮影部
に受け渡して実行させ、前記検出結果が許容範囲を超えている場合、
前記小シーケンスを実行させず、前記フレームレートに従って次のフレームが取り込まれるまで待つ、という動作を繰り返すことにより、
すべての前記小シーケンス
を前記撮影部に実行させ、
前記画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を前記撮影部に取得させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、操作者から操作を受け付ける操作部をさらに有し、
前記制御部は、前記フレームレートを前記操作部を介して操作者から受け付けることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
撮影領域に静磁場を印加する静磁場発生装置と、
前記撮影領域に配置された被検体に高周波磁場パルスと傾斜磁場パルスを印加し、前記被検体から発生される核磁気共鳴信号を取得する撮影部と、
予め定められた撮影パルスシーケンスに従って、前記高周波磁場パルスと前記傾斜磁場パルスの印加および核磁気共鳴信号の取得を所定のタイミングで繰り返し前記撮影部に実行させ、画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を前記撮影部に取得させる制御部と、
前記撮影部が前記撮影パルスシーケンスを実行している間、前記撮影領域に配置された被検体を連続して光学的に撮影するカメラとを有し、
前記制御部は、前記カメラの撮影した画像を予め定められたフレームレートで取り込み、
前記撮影パルスシーケンスは、前記フレームレートに対応する時間幅の小シーケンスに分割されており、
前記制御部は、一つの前記小シーケンスを前記撮影部に実行させる前に、前
記フレームレートで取り込んだ直近のフレームの前記画像から前記被検体の予め定めた基準位置に対する変位を少なくとも検出し、検出した
前記変位が、予め定めた被検体の周期的な移動による所定の変位に到達しているかどうか判定し、前記検出結果が予め定めた許容範囲以内であって、かつ、前記被検体の変位が前記予め定めた周期的な移動による所定の変位に到達している場合、前記小シーケンスを撮影部に実行させ
、前記検出結果が許容範囲を超えている場合、または、前記被検体の変位が前記予め定めた周期的な移動による所定の変位に到達していない場合、前記小シーケンスを実行させず、前記フレームレートに従って次のフレームが取り込まれるまで待つ、という動作を繰り返すことを特徴とすることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
撮影領域に静磁場を印加する静磁場発生装置と、
前記撮影領域に配置された被検体に高周波磁場パルスと傾斜磁場パルスを印加し、前記被検体から発生される核磁気共鳴信号を取得する撮影部と、
予め定められた撮影パルスシーケンスに従って、前記高周波磁場パルスと前記傾斜磁場パルスの印加および核磁気共鳴信号の取得を所定のタイミングで繰り返し前記撮影部に実行させ、画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を前記撮影部に取得させる制御部と、
前記撮影部が前記撮影パルスシーケンスを実行している間、前記撮影領域に配置された被検体を連続して光学的に撮影するカメラとを有し、
前記制御部は、前記カメラの撮影した画像を予め定められたフレームレートで取り込み、
前記撮影パルスシーケンスは、前記フレームレートに対応する時間幅の小シーケンスに分割されており、
前記制御部は、前
記フレームレートで取り込んだ複数の
フレームの前記画像から前記被検体の周期的な変位を検出し、検出した変位の周期に基づいて核磁気共鳴信号を取得可能な時間幅を求め、前記時間幅以内に収まるように、複数の前記小シーケンスを纏めて中シーケンスを生成し、
その後、前記制御部は、前
記フレームレートで取り込んだ直近のフレームの前記画像から前記被検体の予め定めた基準位置に対する変位を検出し、
検出した前記変位が、前記被検体の前記周期的な変位における予め定めた所定の変位に到達しているかどうか判定し、前記所定の変位に到達している場合、前記中シーケンスを撮影部に実行させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
撮影領域に静磁場を印加する静磁場発生装置と、
前記撮影領域に配置された被検体に高周波磁場パルスと傾斜磁場パルスを印加し、前記被検体から発生される核磁気共鳴信号を取得する撮影部と、
予め定められた撮影パルスシーケンスに従って、前記高周波磁場パルスと前記傾斜磁場パルスの印加および核磁気共鳴信号の取得を所定のタイミングで繰り返し前記撮影部に実行させ、画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を前記撮影部に取得させる制御部と、
前記撮影部
が前記撮影パルスシーケンスを実行している間、前記撮影領域に配置された被検体を連続して光学的に撮影するカメラとを有し、
前記制御部は、前記カメラの撮影した画像を
予め定められたフレームレートで取り込み、
前記撮影パルスシーケンスは、前記フレームレートに対応する時間幅の小シーケンスに分割されており、
前記制御部は、一つの前記小シーケンスを前記撮影部に実行させる前に、前記フレームレートで取り込んだ直近のフレームの前記画像から前記被検体の変位を検出し、検出した変位が、予め定めた前記被検体の周期的な移動による所定の変位に到達しているかどうか判定し、前記小シーケンスを撮影部に実行させ、前記所定の変位に到達していない場合、小シーケンスを実行させず、前記フレームレートに従って次のフレームが取り込まれるまで待つ、という動作を繰り返すことにより、前記小シーケンスを順次前記撮影部に実行させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
撮影領域に静磁場を印加する静磁場発生装置と、
前記撮影領域に配置された被検体に高周波磁場パルスと傾斜磁場パルスを印加し、前記被検体から発生される核磁気共鳴信号を取得する撮影部と、
撮影パルスシーケンスに従って、前記高周波磁場パルスと前記傾斜磁場パルスの印加および核磁気共鳴信号の取得を所定のタイミングで繰り返し前記撮影部に実行させ、画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を前記撮影部に取得させる制御部と、
前記制御部は、
操作者が設定した撮像条件を受け付け、前記撮像条件を用いて前記画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を前記撮影部に取得させる前記撮影パルスシーケンスを生成し、
前記撮影パルスシーケンスを
予め定められたフレームレートに対応する時間幅の小シーケンスに分割
し、
接続されているカメラから、
前記撮影パルスシーケンスを実行している間、前記フレームレートで
前記被検体の画像を取り込み、
一つの前記小シーケンスを前記撮影部に実行させる前に、前記フレームレートで取り込んだ直近のフレームの前記画像から前記被検体の予め定めた基準位置に対する変位または前記被検体の動きの速度を検出し、前記検出結果が予め定めた許容範囲以内である場合、前記小シーケンスを
前記撮影部
に受け渡して実行させ、前記検出結果が許容範囲を超えている場合、
前記小シーケンスを実行させず、前記フレームレートに従って次のフレームが取り込まれるまで待つ、という動作を繰り返すことにより、
すべての前記小シーケンスを前記撮影部に実行させ、
前記画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を前記撮影部に取得させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
撮影領域に配置された被検体に高周波磁場パルスと傾斜磁場パルス
を撮影パルスシーケンスにしたがったタイミングで印加し、前記被検体から発生される核磁気共鳴信号を取得する磁気共鳴イメージング装置の制御方法であって、
操作者が設定した撮像条件を受け付け、前記撮像条件を用いて画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を前記磁気共鳴イメージング装置に取得させる前記撮影パルスシーケンスを生成し、
前記撮影パルスシーケンスを予め定められたフレームレートに対応する時間幅の小シーケンスに分割し、
接続されているカメラから、
前記撮影パルスシーケンスを実行している間、前記被検体の画像を前記フレームレート
で取り込み、
前記フレームレートで取り込んだ直近のフレームの前記画像から前記被検体の予め定めた基準位置に対する変位または前記被検体の動きの速度を検出し、
前記検出結果が予め定めた許容範囲以内である場合、
前記小シーケンスを、前記磁気共鳴イメージング装置に実行させ、前記検出結果が許容範囲を超えている場合、前記小シーケンスを実行させず、前記フレームレートに従って次のフレームが取り込まれるまで待つ、という動作を繰り返すことにより、
すべての前記小シーケンスを
前記磁気共鳴イメージング装置に実行させ、
前記画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を前記磁気共鳴イメージング装置に取得させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の制御方法。
【請求項8】
撮影領域に配置された被検体に高周波磁場パルスと傾斜磁場パルスを
撮影パルスシーケンスにしたがったタイミングで印加し、前記被検体から発生される核磁気共鳴信号を取得する磁気共鳴イメージング装置の制御プログラムであって、
操作者が設定した撮像条件を受け付け、前記撮像条件を用いて画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を前記磁気共鳴イメージング装置に取得させる前記撮影パルスシーケンスを生成するステップと、
前記撮影パルスシーケンスを予め定められたフレームレートに対応する時間幅の小シーケンスに分割するステップと、
接続されているカメラから
前記撮影パルスシーケンスを実行している間、前記被検体の画像を前記フレームレートで取り込むステップと、
前記フレームレートで取り込んだ直近のフレームの前記画像から前記被検体の予め定めた基準位置に対する変位または前記被検体の動きの速度を検出
するステップと、
前記検出結果が予め定めた許容範囲以内である場合、
前記小シーケンスを、前記磁気共鳴イメージング装置に実行させ、前記検出結果が許容範囲を超えている場合、前記小シーケンスを実行させず、前記フレームレートに従って次のフレームが取り込まれるまで待つ
、という動作を繰り返すことにより、すべての前記小シーケンスを前記磁気共鳴イメージング装置に実行させ、前記画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を前記磁気共鳴イメージング装置に取得させるステップとを、コンピュータに実行させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、「NMR」という)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)装置において、被検体の動きを観察する機能を備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮影においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
MRI装置の撮影は、数十分から1時間程度を要し、この間に被検体が動いた場合、画像にアーチファクトが生じる。
【0004】
そのため、特許文献1には、ビデオカメラにより、MRI撮影開始前と、MRI撮影途中の被検体の静止画像を取得し、両者の相関関数を求めることにより体動の有無を判定する発明が開示されている。体動があった場合、MRI撮影を最初からやり直す。
【0005】
また、特許文献2には、MRI撮影中に、被検体の映像をTVカメラで撮影し、被検体が許容範囲以上に動いていた場合、動いた時点のMRデータを削除するか、撮り直しをするか、または、補正する。もしくは、RFパルスや勾配磁場を最適化して、被検体の動きの影響を打ち消す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-346235号公報
【文献】特開平9-28689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の発明において、MRI撮影中に被検体の体動を検出して、体動があった場合には、MRI撮影を最初からやり直すと、撮影に必要な時間が長くなってしまう。
【0008】
また、特許文献2において、撮影中の体動があった場合、その間に取得したMRデータを削除したり、撮り直しをするためには、体動があった期間に取得したMRデータを特定しなければならない。MRI撮影では、所定の位相エンコードを印加して取得した1本のエコー信号(MRデータ)を取得する動作を、位相エンコードを変化させながら、256回または512回繰り返す。1本のエコー信号の取得に要する時間は、1~2msと非常に短く、体動があった時刻にどのエコー信号を取得したかを正確に特定して、削除したり撮り直しをするのは、TVカメラとMRI装置とを同期させる必要があり、容易ではない。
【0009】
本発明の目的は、撮影時間を長引かせず、体動の影響を受けにくいMRI撮影を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明では、以下のMRI装置を提供する。すなわち、本発明のMRI装置は、撮影領域に静磁場を印加する静磁場発生装置と、撮影領域に配置された被検体に高周波磁場パルスと傾斜磁場パルスを印加し、被検体から発生される核磁気共鳴信号を取得する撮影部と、予め定められた撮影パルスシーケンスに従って、高周波磁場パルスと傾斜磁場パルスの印加および核磁気共鳴信号の取得を所定のタイミングで繰り返し撮影部に実行させ、画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号を撮影部に取得させる制御部と、撮影部の動作中に、撮影領域に配置された被検体を連続して光学的に撮影するカメラとを有する。
【0011】
制御部は、カメラの撮影した画像を所定のフレームレートで取り込む。撮影パルスシーケンスは、カメラのフレームレートに対応する時間幅の小シーケンスに分割されている。
【0012】
制御部は、一つの小シーケンスを撮影部に実行させる前に、直近のフレームの画像から被検体の予め定めた基準位置に対する変位または被検体の動きの速度を検出し、検出結果が予め定めた許容範囲以内である場合、小シーケンスを撮影部に実行させ、検出結果が許容範囲を超えている場合、小シーケンスを実行させず、フレームレートに従って次のフレームの画像が取り込まれるまで待つ、という動作を繰り返すことにより、小シーケンスをフレームレートに対応した時間間隔で撮影部に順次実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カメラのフレームレートに対応する時間幅の小シーケンスに撮影パルスシーケンスを分割して、小シーケンスの実行の前に被検体の変位や動きの速度を検出して、検出結果が許容範囲を超えている場合、小シーケンスの実行させずに次のタイミングまで待機するため、撮影後にNMR信号データを削除したり、撮り直しをしたりする必要がなく、被検体の体動の影響が抑制されたMRI撮影を、撮影時間を長引かせることなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態のMRI装置の全体構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態のMRI装置のカメラの配置の一例を示す説明図。
【
図3】第1の実施形態のMRI装置の中央処理装置110の動作を示すフローチャート。
【
図4】第1の実施形態の被検体の変位と動き、MRI装置の中央処理装置110のカメラ画像の取り込みタイミングと、撮影部300の撮影期間を示すタイムチャート。
【
図5】第2の実施形態のMRI装置の中央処理装置110の動作を示すフローチャート。
【
図6】第2の実施形態の被検体の変位と動き、MRI装置の中央処理装置110のカメラ画像の取り込みタイミングと、撮影部300の撮影期間を示すタイムチャート。
【
図7】第2の実施形態のMRI装置の中央処理装置110の動作を示すフローチャート。
【
図8】第2の実施形態の被検体の変位と動き、MRI装置の中央処理装置110のカメラ画像の取り込みタイミングと、撮影部300の撮影期間を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0016】
<<<第1の実施形態>>>
第1の実施形態のMRI装置について
図1~
図4を用いて説明する。本実施形態のMRI装置では、撮影領域に配置された被検体を連続して光学的に撮影するカメラを備えている。制御部は、カメラの撮影した画像を所定のフレームレートで取り込む。撮影パルスシーケンスは、フレームレートに対応する時間幅の小シーケンスに分割されている。制御部は、一つの小シーケンスを撮影部に実行させる前に、直近のフレームの画像から被検体の予め定めた基準位置に対する変位または動きの速度を検出する。検出結果が予め定めた許容範囲以内である場合、制御部は、小シーケンスを撮影部に実行させ、検出結果が許容範囲を超えている場合、小シーケンスを実行させず、次のフレームの画像が取り込まれるまで待つ、という動作を繰り返す。
【0017】
すなわち、制御部は、画像を取り込むフレームレートに同期したタイミングで、被検体に許容範囲を超える位置ずれや体動があるかどうかを判定し、次のフレームの画像取り込みまでの期間に小シーケンスを実行するかどうかを決定する構成である。
【0018】
これにより、被検体の位置ずれや体動が許容範囲を超えている場合、その直後の期間には小シーケンスが実行されず、次のフレームの画像取り込みまで待機するため、NMR信号データは、被検体に位置ずれや体動が生じている期間には取得されない。よって、撮影後にNMR信号データを削除したり、撮り直しをしたりする必要がなく、被検体の体動の影響が抑制されたMRI撮影を、撮影時間を長引かせることなく行うことができる。
【0019】
(MRI装置の構成)
次に本実施形態のMRI装置100の構成について
図1を用いて説明する。
【0020】
MRI装置100は、静磁場発生装置130と、傾斜磁場パルスを被検体10に印加する傾斜磁場発生装置132と、高周波磁場パルス(以下RFパルスと記す)を被検体10に照射するRF信号照射装置140と、被検体10からNMR信号であるエコー信号を受信する受信装置150と、中央処理装置(以下CPUと記す)110を備える処理装置160と、シーケンサ120と、データの入力や撮影等に関係する色々な操作を行うための操作装置170と、寝台30と、カメラ200と、を備えて構成される。
【0021】
静磁場発生装置130は、撮影領域20にきわめて均一な磁場を印加する。
【0022】
寝台は、被検体10を搭載し、撮影領域20に、被検体10の少なくとも撮影対象である部位を配置する。
【0023】
傾斜磁場発生装置132と、RF信号照射装置140と、受信装置150は、撮影部300を構成する。撮影部300は、撮影領域20に配置された被検体10にRFパルスと傾斜磁場パルスを印加し、被検体から発生されるNMR信号を取得する。
【0024】
中央処理装置110は、制御部として機能し、予め定められた撮影パルスシーケンスに従って、高周波磁場パルスと傾斜磁場パルスの印加および核磁気共鳴信号の取得を所定のタイミングで繰り返し撮影部300に実行させるようにシーケンサ120を制御する。また、中央処理装置110は、画像再構成部としても機能し、撮影部300が取得した画像再構成に必要な数のNMR信号を処理して、被検体10の断層画像を生成する。
【0025】
カメラ200は、撮影部300の動作中に、撮影領域20に配置された被検体10を連続して光学的に撮影する。中央処理装置110は、カメラが撮影した画像を所定のフレームレートで順次取り込む。
【0026】
さらに、各部の詳細について説明する。静磁場発生装置130は、その具体的な構成の記載を省略するが、垂直磁場方式であれば、被検体10の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、体軸方向に、極めて均一な静磁場を発生させる。静磁場発生装置130は、上記静磁場を発生させるために、被検体10の周りに配置されて永久磁石、常電導磁石あるいは超電導磁石を静磁場発生源として有している。
【0027】
傾斜磁場発生装置132は、MRI装置100の座標系、例えば静止座標系、であるX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル134と、それぞれの傾斜磁場コイルに傾斜磁場を発生するための駆動電流を供給する傾斜磁場電源136を有している。シーケンサ120からの命令に従って傾斜磁場電源136は動作し、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向の傾斜磁場コイル134に駆動電流を供給する。これにより、傾斜磁場コイル134は、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを発生する。発生した傾斜磁場Gx、Gy、Gzは、撮影領域20内の被検体10に印加される。例えば、撮影時には、撮影パルスシーケンスに従って、撮影断面であるスライス面に直交する方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)が印加され、被検体10に対するスライス面が設定される。そのスライス面に直交し、且つ、互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gf)が印加されて、エコー信号であるNMR信号にそれぞれの方向の位置情報がエンコードされる。
【0028】
RF信号照射装置140は、被検体10にRFパルスを照射し、被検体10の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせる。例えば、RF信号照射装置140は、高周波発振器142、変調器144、高周波増幅器146、および、送信コイルとして動作する送信側の高周波コイル148を備えている。高周波発振器142から出力された高周波パルスは、シーケンサ120からの指示されたタイミングで変調器144により振幅変調され、この振幅変調された高周波パルスは、高周波増幅器146で増幅される。増幅された高周波パルスは、被検体10に近接して配置された高周波コイル148に供給される。これにより、高周波コイル148は、RFパルスを被検体10に照射する。RFパルスを照射された被検体10の生体組織では、生体組織を構成する原子核スピンが核磁気共鳴を生じ、エコー信号であるNMR信号を放出する。
【0029】
受信装置150は、放出されたNMR信号を検出して処理する。受信装置150は、受信コイルとして動作する受信側の高周波コイル152と、受信したNMR信号を増幅する信号増幅器154と、直交位相検波器156と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器158を有している。高周波コイル152は、被検体が放出したNMR信号を検出し、信号増幅器154は、検出されたNMR信号を増幅する。直交位相検波器156は、シーケンサ120からの指示されたタイミングで、NMR信号を直交する二系統の信号に分割する。分割された二系統の信号は、A/D変換器158においてそれぞれデジタル量に変換されて、中央処理装置110に送られる。
【0030】
送信側の高周波コイル148と傾斜磁場コイル134は、被検体10が配置される静磁場発生装置130の静磁場空間内に配置される。その向きは、垂直磁場方式であれば被検体10に対向して配置され、水平磁場方式であれば被検体10を取り囲むようにして設置されている。また、受信側の高周波コイル152は、被検体10に対向して、或いは取り囲むように設置されている。
【0031】
シーケンサ120は、中央処理装置110の制御下で、RF信号照射装置140、傾斜磁場発生装置132、および、受信装置150に制御信号(指令)を所定のタイミングで出力する。これにより、予め定められた撮影パルスシーケンスに従ったタイミングで、RFパルスと傾斜磁場パルスを被検体に印加させ、NMR信号の取得を位相エンコード量を変化させながら撮影部300に繰り返し実行させる。
【0032】
処理装置160は、中央処理装置110の他に、情報を記憶するための光ディスク162や磁気ディスク164等の外部記憶装置と、必要なデータや処理のためのプログラムを記憶するROM166と、処理のための一時記憶を行うRAM168と、CRT等などのディスプレイ169を有する。これにより、処理装置160は、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等を行う。例えば、受信装置150で受信されて処理された処理結果が、受信装置150から処理装置160に入力されると、処理装置160の中央処理装置110で信号処理や画像再構成等の処理が行われる。その結果である被検体10の断層画像は、ディスプレイ169に表示されると共に、必要に応じて外部記憶装置の光ディスク162や磁気ディスク164等に記録される。また図示しないが、印刷されたり他のシステムに送信したりすることも可能である。
【0033】
操作装置170は、トラックボール又はマウスなどのポインティングデバイス174やキーボード176を有する。操作者は、MRI装置100の各種制御情報や、処理装置160で行う処理の制御情報を操作装置170を介して入力する。操作装置170は、ディスプレイ169に近接して配置され、操作者は、ディスプレイ169の表示を見ながら操作装置170を通してインタラクティブに操作を行うことができる。なお、操作装置170はこれに限られるものではなく、例えはディスプレイ169の表示面に設けられたタッチパネルを含んでいても良い。操作装置170は、MRI装置100の本体から離れた操作室に設けられている。操作装置170の一部は、さらにMRI装置100の本体や寝台30にも設けられている。これにより、被検体10の近くで操作者が必要な操作を行えるように構成されている。
【0034】
MRI装置100の被検体10の撮影対象核種は、例えば臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核すなわちプロトンである。MRI装置100は、プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化する。これにより、MRI装置100は、被検体10の、例えば頭部、あるいは腹部、あるいは四肢等の形態または、機能を、2次元もしくは3次元的に撮影し、再構成した画像をディスプレイ169に表示することができる。再構成した画像は、必要に応じで光ディスク162や磁気ディスク164に記憶される。また、画像は、操作に基づいて印刷され、あるいは他の必要なシステムへ送信される。
【0035】
(カメラ200の構成)
図2に、MRI装置100のカメラ200の配置を図示する。カメラ200は、寝台30に載せられて、撮影領域20に配置された被検体10を撮影することが可能な位置に備えられている。
【0036】
カメラ200は、MRI装置100の撮影部300を内蔵するガントリー310の一部として配置されても良いし、ガントリー310の外から被検体10を撮影するように配置されていてもよい。
【0037】
カメラ200は、予め定めたフレームレート以上のフレームレートで連続した画像を光学的に撮影するものを用いる。例えば、毎秒30枚以上の画像を撮影することができることが望ましい。中央処理装置110は、予め定めたフレームレートでカメラ200から画像を取り込む。カメラ200が撮影するフレームレートは、中央処理装置110が画像を取り込むフレームレートと同期していてもよいし、カメラのフレームレートの方が中央処理装置110が画像を取り込むフレームレートより大きければ同期していなくてもよい。操作者は、操作装置170を介して、中央処理装置110が画像を取り込むフレームレートを設定する。カメラ200が撮影するフレームレートと、中央処理装置110が画像を取り込むフレームレートとを同期させる場合、操作者が設定したフレームレートを、中央処理装置110がカメラ200に対して設定する。
【0038】
また、カメラ200が発生する電磁ノイズにより、撮影部300がノイズを発生しないように、カメラ200には電磁ノイズを遮蔽する構造を備えている。
【0039】
さらには、カメラ200は、静磁場発生装置130が発生する強い磁界や、傾斜磁場コイル134によって印加される時間的変化の大きい磁場、さらには、高周波コイル148から照射されるRFパルスを受けた場合でも、カメラ200として機能するように、外部からの大きな磁場や時間変化の大きい磁場や高周波を遮蔽する構造を備えている。
【0040】
なお、MRI装置100に配置されるカメラ200は一つに限られない。被検体10のあらゆる配置に対して、その位置や動きを撮影するためには、被検体10の前方と後方に2つのカメラ200を配置することがより望ましい。
【0041】
また、MRI装置のガントリー310は、円筒形状または平行平板形状をしているため、撮影領域20に光が差し込みにくい。そのため、光学的なカメラ200の画像のSN比を向上させるために、撮影領域20に光を照射する照明装置を配置することが望ましい。
【0042】
カメラ200にて撮影されたデジタル画像は、中央処理装置110に所定のフレームレートで取り込まれる。中央処理装置110は、カメラ200が撮影した画像を用いて下記のように撮影部300を制御することにより、操作者が選択した撮影方法を実現する撮影パルスシーケンスを撮影部300に実行させる。撮影パルスシーケンスにしたがって、撮影部300は、画像再構成に必要な256本または512本のエコー信号を位相エンコード量を変更しながら取得する。
【0043】
撮影パルスシーケンスは、中央処理装置110に内蔵されたメモリまたは磁気ディスク164やROM166等に予め複数の撮影方法ごとに格納されている。操作者は、操作装置170を介して撮影方法を選択し、さらに撮影条件(繰り返し時間TR等)を入力する。これにより、中央処理装置110は、設定された撮影条件に応じた撮影パルスシーケンスを生成する。
【0044】
ここでは、中央処理装置110は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサー(コンピュータ)であり、予めROM166に格納されているプログラムを読み込んで実行することにより、ソフトウエアにより
図3にフローで示す処理を実現する。なお、
図3の処理の一部または全部をハードウエアにより実現することも可能である。例えば、中央処理装置110の一部または全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて構成し、プログラマブルICを
図3の処理を行うように回路設計すればよい。
【0045】
【0046】
被検体10は、寝台30に搭載され、撮影領域20に予め配置されているものとする。
【0047】
(ステップ301)
中央処理装置110は、操作装置170を介して操作者から、カメラ200から画像を取り込むフレームレート、および、撮影パルスシーケンスの撮影条件(撮影方法、繰り返し時間TR、TE等)を受け付ける。ここで設定する画像取り込みのフレームレートは、カメラ200が撮影可能な最大フレームレート以内であればよい。ここでは、一例として、フレームレート33枚/秒、すなわち、30msの時間間隔で、中央処理装置110が画像をカメラ200から取り込む例について説明する。なお、カメラ200から画像を取り込むフレームレートは、操作者から受け付けず、予め定めておいた値を用いてもよい。
【0048】
(ステップ302)
中央処理装置110は、ステップ301で操作者から受け付けた撮影条件を用いて、予めROM166等に格納されている撮影方法ごとの基準の撮影パルスシーケンスを調整し、撮影条件で、画像再構成に必要な256または512本のNMR信号(エコー信号)を取得するための撮影パルスシーケンスを生成する。
【0049】
中央処理装置110は、生成した撮影パルスシーケンスをステップ301で設定されたフレームレートに対応する時間幅の小シーケンスに分割する。ここでは、設定されたフレームレートが33枚/秒であるので、中央処理装置110は、30msごとに撮影パルスシーケンスを分割する。一般的に、1本のNMR信号の取得に必要な時間(TR)は、1~2msであるので、1つの小シーケンス(30ms)は、15~30本のエコー信号が取得されるシーケンスになる。
【0050】
(ステップ303)
中央処理装置110は、操作装置170を介して操作者から撮影開始を指示された場合、ステップ304に進む。
【0051】
(ステップ304)
中央処理装置110は、カメラ200に被検体10の撮影の開始を指示し、ステップ301で設定されたフレームレートでフレームn(n=1)の画像を取り込む。
【0052】
(ステップ305)
中央処理装置110は、ステップ304で取り込んだフレームn(n=1)の画像から被検体の位置を検出する。
【0053】
または、フレームnの画像と、そのひとつ前のフレーム(n-1)の画像との差分を算出し、速度(変位ベクトル)を算出する。これにより、被検体10の動きを算出することができる。
【0054】
なお、中央処理装置110は、基準とするフレーム(n=0)の画像を選択し、その基準フレーム(n=0)の画像と、ステップ304で取り込んだフレームnの画像との差分を、基準位置に対する変位として算出してもよい。
【0055】
もしくは、撮影開始からこれまでの速度(変位ベクトル)の積算したものを変位として算出してもよい。
【0056】
基準フレーム(n=0)は、どのようなタイミングの画像であってもよいが、例えば、ステップ304よりも前の予め定めたタイミングのフレームや、最初のステップ304で取得したフレームn(n=1)の画像を用いることができる。ステップ304よりも前の予め定めたタイミングのフレームとしては、具体的には、被検体10が撮影領域20に配置された時点のフレームも良いし、被検体10が撮影領域20に配置された後、撮影室の扉が閉められた時点のフレームでもよい。もしくは、操作装置170によって撮影開始が指示された時点のフレームでもよい。
【0057】
位置や基準位置に対する変位や動き(速度)の検出精度を上げるために、被検体10や高周波コイル(受信コイル)152にマーカーを取り付けておいてもよい。例えば、格子状に並べられた四角形の非磁性物体をマーカーとして被検体10の衣服や受信コイル等に貼り付けることができる。非磁性物体は、角のエッジが立っているものが好ましい。
【0058】
(ステップ306、307、308)
中央処理装置110は、ステップ305で算出した位置(変位)、または、動き(速度)が、予め定めておいたそれぞれの許容範囲以内かどうかを判定する。
【0059】
位置(変位)または動き(速度)が、許容範囲以内の場合、中央処理装置110は、撮影可能と判定し、ステップ308に進み、撮影パルスシーケンスの最初の小シーケンスm(m=1)をシーケンサ120に受け渡し、実行を指示する。これにより、シーケンサ120は、小シーケンスm(m=1)を撮影部300の各部に実行させ、エコー信号m(m=1)を取得する。なお、小シーケンスのシーケンサ120への受け渡しは、一つずつでなくてもよく、いくつかの小シーケンスをまとめて受け渡してもよい。
【0060】
一方、ステップ306において、位置(変位)または動き(速度)が許容範囲を超えている場合、中央処理装置110は、撮影不可と判定し、小シーケンスを撮影部300に実行させず、ステップ304に戻って、フレームレートに従って次のフレーム(n+1)の画像をカメラ200から取り込むまで待つ。
【0061】
中央処理装置110は、フレーム(n+1)で得られた画像について、ステップ304~306を繰り返す。具体的には、中央処理装置110は、フレーム(n+1)の画像について、被検体10の位置を検出するか、または、フレームnとの差を求めて動き(速度)を算出するか、もしくは、基準フレーム(n=0)の画像との差を求めて変位を算出する。中央処理装置110は、算出した位置(変位)または動き(速度))が、許容範囲以内であった場合、小シーケンスmをシーケンサ120に実行させる。
(ステップ308)。
【0062】
(ステップ309、310)
上記ステップ307においてエコー信号m(m=1)を取得した後、中央処理装置110は、ステップ309に進み、画像再構成に必要な予め定めた数(m=256または512)のエコー信号mがすべて取得されたかどうかを判定する。すべてのエコー信号mが取得されていない場合、中央処理装置110は、ステップ304に戻り、ステップ304~307を繰り返す。
【0063】
このように、本実施形態のMRI装置は、所定のフレームレートでカメラ200から画像を取得し、その画像から被検体10の位置(変位)または動き(速度)を求め、位置(変位)または動き(速度)が許容範囲以内であった場合には、小シーケンスmを実行してエコー信号mを取得し、位置(変位)または動き(速度)が許容範囲を超えている場合は、小シーケンスmを実行せず、次の画像取得まで待機する、という動作を繰り返すことができる。これにより、小シーケンスm(m=1~256または512)を順次実行して、すべてのエコー信号m(m=1~256または512)を取得することができる。
【0064】
(ステップ311)
中央処理装置110は、得られたすべてのエコー信号m(m=1~256または512)を用いて、予め定めた画像再構成処理を行うことにより、被検体10の断層画像等を再構成し、ディスプレイ169に表示する。また、必要に応じて、磁気ディスク164等に再構成した画像を格納する。
【0065】
上述してきたように、本実施の形態では、被検体10の位置(変位)または動き(速度)が許容範囲以内の場合のみ、直後に小シーケンスを実行してエコー信号を取得しているため、取得されたエコー信号は被検体10の動きまたは変位の影響を受けにくい。よって、突発的な人の動きが生じていない、つまりは被検体が安定している状態の被検体10の断層画像を生成することが可能である。
【0066】
したがって、MRI撮影中に被検体の体動があっても、MRI撮影を最初からやり直したり、体動の期間に取得したエコー信号を削除したり、撮影しなおしたりする必要がなく、撮影を長引かせずに終わらせることができる。これにより、本実施形態のMRI装置は、撮影時間を長引かせず、体動の影響を受けにくいMRI撮影を行うことができる。
【0067】
<<<第2の実施形態>>>
第2の実施形態のMRI装置について説明する。
【0068】
被検体10の動きは、a)背景ノイズとして捉えられる常に存在しているランダムな動き、b)ヒトの呼吸動、心拍に同期している周期的な動き、c)突発的なヒトの動き、の3種に分類される。
【0069】
第1の実施形態では、c)の突発的なヒトの動きを避けて小パルスシーケンスを実行する構成であったが、第2の実施形態では、b)の周期的な動きを用いて撮影の制御を実施する。例えば、被検体10の呼吸動による変位に同期させて小パルスシーケンスを実行し、NMRデータを取得する。これにより、従来、被検体10に呼吸動センサーを装着して、呼吸同期撮影をしたのと同様の効果を呼吸動センサー無しで実行することができる。
【0070】
第2の実施形態のMRI装置を
図5のフローおよび
図6を用いて具体的に説明する。第2の実施形態のMRI装置のハードウエア構成は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0071】
(ステップ301~306)
第2の実施形態のMRI装置の中央処理装置110は、ステップ301~305を第1の実施形態と同様に行って、撮影パルスシーケンスをフレームレートに対応した小シーケンスに分割し、カメラ200の画像から被検体の動きおよび変位を算出する。
【0072】
第1の実施形態と異なる点は、中央処理装置110が、ステップ305において被検体10の変位と動きの両方を算出し、ステップ306において、ステップ305で算出した動きに基づいて、被検体10の突発的な動きの有無を判定する。動きが許容範囲以内である場合、ステップ501に進む。動きが許容範囲を超えている場合、第1の実施形態と同様にステップ304に戻る。
【0073】
(ステップ501、307)
中央処理装置110は、ステップ305において算出した被検体10の変位が、予め呼吸の周期の所定の位置に達したかどうかを判定する。
【0074】
具体的には、呼吸動の所定の同期位置が、例えば、吸気の途中の所定の変位位置である場合、中央処理装置110は、ステップ305において算出した動きが正で、かつ、変位が予め定めておいた同期位置に達している場合、ステップ307に進み、小シーケンスの実行をシーケンサ120に指示する。
【0075】
(ステップ307~311)
中央処理装置110は、ステップ307~311を第1の実施形態と同様に行うことにより、小シーケンスm(m=1~256または512)を順次実行して、すべてのエコー信号m(m=1~256または512)を取得する。中央処理装置110は、得られたすべてのエコー信号を用いて画像再構成処理を行い、断層画像等を再構成する。
【0076】
第2の実施形態では、
図6から明らかなように、被検体10の動きが許容範囲以内で、かつ、被検体の呼吸動による変位が所定の同期位置に到達した場合のみ、直後に小シーケンスを実行してエコー信号を取得する。よって、取得されたエコー信号は、被検体10の突発的な動きの影響を受けず、かつ、呼吸動による変位が所定の同期位置にある状態の被検体10の断層画像を生成することが可能である。
【0077】
なお、上述してきた第2の実施形態では、被検体に突発的な動きがあるかどうかを、中央処理装置110は、被検体の動き(速度)に基づいて判定しているが、第1の実施形態でも説明したように、被検体の変位に基づいて判定してもよい。
【0078】
また、第2の実施形態では、突発的な動きの有無の判定と、呼吸動同期とを両方行っているが、呼吸動同期のみを行って撮影することももちろん可能である。その場合、
図5のステップ306を実施せず、他のステップのみを行うことにより、呼吸動同期の撮影を実現することができる。
【0079】
上述してきた第2の実施形態では、呼吸動による変位が所定の同期位置にあるかどうかを判定したが、呼吸動に限らず、被検体の周期的な変位であれば、同様に本実施の形態を適用することができる。例えば、心拍による胸の周期的な変位や、脈動による頸部等の周期的な変位に同期させて撮影を行うことができる。
【0080】
<<<第3の実施形態>>>
第3の実施形態のMRI装置について説明する。
【0081】
第3の実施形態は、第2の実施形態と同様に、呼吸動の周期により、被検体10の変位が所定の呼吸動位置に達した場合、撮影を行う実施形態である。第2の実施形態では、1呼吸周期において一つの小シーケンスを撮影する構成であったが、第3の実施形態では、被検体10の呼吸動の周期を検出し、その周期に応じて、小シーケンスをいくつかまとめた中シーケンスを設定するか、もしくは、操作者に提案し、1呼吸周期ごとに中シーケンスを撮影可能にする。これにより、1周期に中シーケンス分のNMRデータを取得することができる。
【0082】
以下、
図7のフローおよび
図8を用いて説明する。
図7のフローにおいて、第2の実施形態の
図5のフローと同じステップについては同じ符号を付している。
【0083】
(ステップ301,302)
中央処理装置110は、ステップ301、302を行って、撮影パルスシーケンスをフレームレートに対応した小シーケンスに分割する。
【0084】
(ステップ701、702)
つぎに、中央処理装置110は、カメラ200の画像を取り込んで、画像から基準位置に対する被検体の変位を算出する。
【0085】
(ステップ703)
中央処理装置110は、算出した変位から被検体10の周期的動きを検知し、その周期を求め、適切な撮影を実行することができる時間の長さtを決定する。
【0086】
例えば、
図8のように吸気の所定の期間を撮影を実行できる期間として、その長さtを求める。
【0087】
(ステップ704)
中央処理装置110は、この長さt内に収まるように、ステップ302で分割した小パルスシーケンスを複数個まとめ、中パルスシーケンスを設定する。もしくは、中パルスシーケンスを操作者に提案する。また、中央処理装置110は、他の撮影パラメータを変更したり、変更を操作者に提案してもよい。
【0088】
(ステップ303~305、501)
その後、撮影開始の指示が操作者からあったならば、中央処理装置110は、第1および第2の実施形態と同様にカメラ画像を取り込んで、取り込んだフレームn(n=1)の画像から被検体の変位を算出する(ステップ303~305)。中央処理装置110は、ステップ305において算出した被検体10の変位が、予め定めた呼吸の周期の所定の位置に達したかどうかを判定する(ステップ501)。
【0089】
中央処理装置110は、算出した変位が予め定めた呼吸の周期の所定の位置に達した場合、ステップ705に進み、中シーケンスの実行をシーケンサ120に指示する。ステップ705の実行中は一連の中シーケンスが実行されるのみなので、ステップ304、305、501の処理は中断してもよい。中断することにより中央処理装置の負荷を低減することが出来る。もしくは、ステップ304,305,501を連続して実施して、ステップ705の実行中に起こる被検体10の突発的な動きを検出してもよい。
【0090】
(ステップ309)
中央処理装置110は、ステップ304、305、501、705を繰り返すことにより、中シーケンスを順次実行して、すべてのエコー信号を取得する。中央処理装置110は、得られたすべてのエコー信号を用いて画像再構成処理を行い、断層画像等を再構成する。
【0091】
このように、第3の実施形態のMRI装置では、被検体10の呼吸の周期に合わせて小シーケンスを纏めて、中シーケンスを設定し、これを呼吸に同期して実行する構成であるため、第2の実施形態では途切れることなく逐次画像処理をしないとデータを取得出来なかったが、この第3の実施形態ではリアルタイムな画像処理が必要なのは中シーケンスの実行開始のトリガーを取得するまでのみなので、撮影シーケンスを実行している間は逐次画像処理を省略することが出来、演算処理装置の計算能力が不足する場合でも処理が可能である。
【0092】
なお、第3の実施形態においても、ステップ305において、変位のみならず被検体10の動きを算出し、動きが閾値を超えた場合には、中シーケンスで得たNMRデータのうち、動きが閾値を超えた時間帯のデータのみ、または、中シーケンスで得たデータ全体を破棄し、その後、再度その中パルスシーケンスを実行してNMR信号を取得しても良い。
【符号の説明】
【0093】
10 被検体
20 撮影領域
30 寝台
100 MRI装置
110 中央処理装置
120 シーケンサ
130 静磁場発生装置
132 傾斜磁場発生装置
134 傾斜磁場コイル
136 傾斜磁場電源
140 RF信号照射装置
142 高周波発振器
144 変調器
146 高周波増幅器
148 高周波コイル
150 受信装置
152 高周波コイル
154 信号増幅器
156 直交位相検波器
158 変換器
160 処理装置
162 光ディスク
164 磁気ディスク
169 ディスプレイ
170 操作装置
174 ポインティングデバイス
176 キーボード
200 カメラ
300 撮影部
310 ガントリー