(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】受光装置、及び受光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
G01S7/481 A
(21)【出願番号】P 2021503630
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2020009242
(87)【国際公開番号】W WO2020179839
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2019039344
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】久米 真紀夫
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-007615(JP,A)
【文献】特表2018-531374(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069227(WO,A1)
【文献】特開2016-157901(JP,A)
【文献】国際公開第2018/137950(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0225812(US,A1)
【文献】特開2016-058435(JP,A)
【文献】特開2019-012138(JP,A)
【文献】特開昭60-060756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光部が設けられた受光素子と、
第1表面、及び前記第1表面とは反対側の第2表面を有し、前記第2表面が前記受光素子と向かい合うように前記受光素子上に固定されたガラスカバーと、
前記受光素子が配置された内側表面、及び前記内側表面とは反対側の外側表面、並びに、前記内側表面及び前記外側表面に開口する貫通孔を有し、前記受光素子を収容するパッケージを前記ガラスカバーと共に構成する基板と、
前記貫通孔の内面に設けられた金属膜と、
前記貫通孔内に配置された金属ボールと、
前記貫通孔内において前記金属膜と前記金属ボールとの間に配置され、前記貫通孔内に前記金属ボールを固定する半田部材と、を備え、
前記ガラスカバーは、前記第1表面及び内部の少なくとも一方に設けられた複数の回折格子を含み、
前記複数の回折格子のそれぞれは、前記ガラスカバーの前記第1表面に入射する測距用レーザ光を前記複数の受光部のそれぞれに集光するように構成されて
おり、
前記貫通孔は、前記内側表面に位置する内側開口部、前記外側表面に位置する外側開口部、及び前記内側表面と前記外側表面との間に位置する中間開口部を含み、
前記外側開口部は、前記金属ボールが通過可能な形状を呈しており、
前記中間開口部は、前記金属ボールが通過不可能な形状を呈しており、
前記金属膜は、前記貫通孔の前記内面のうち前記外側開口部と前記中間開口部との間に位置する側面に設けられた筒部を有し、
前記金属ボールは、前記筒部に包囲されるように前記貫通孔内に配置されており、
前記半田部材は、前記金属ボールから前記筒部に渡った状態で、前記筒部と前記金属ボールとの間の領域を封止しており、
前記中間開口部は、長尺形状を呈している、受光装置。
【請求項2】
前記ガラスカバーは、前記受光素子から離間した状態で前記受光素子上に固定されている、請求項1に記載の受光装置。
【請求項3】
前記ガラスカバーは、前記受光素子に接触した状態で前記受光素子上に固定されている、請求項1に記載の受光装置。
【請求項4】
前記測距用レーザ光を出射する光源を更に備え、
前記複数の回折格子のそれぞれは、前記光源から出射されて対象物で反射された前記測距用レーザ光を前記複数の受光部のそれぞれに集光するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の受光装置。
【請求項5】
前記ガラスカバーは、ガラス基板と、前記ガラス基板における前記第1表面側の表面に設けられた第1膜と、を含み、
前記複数の回折格子は、前記第1膜に形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の受光装置。
【請求項6】
前記ガラスカバーは、ガラス基板を含み、
前記複数の回折格子は、前記ガラス基板における前記第1表面側の表面に形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の受光装置。
【請求項7】
前記ガラスカバーは、前記複数の回折格子に対して前記受光素子とは反対側に配置されたフィルタを更に含み、
前記フィルタは、前記測距用レーザ光に対して透過性を有し、前記測距用レーザ光の波長以外の波長を有する光に対して遮光性を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の受光装置。
【請求項8】
前記貫通孔は、前記内側表面から前記外側表面に向かって広がるテーパ孔である、請求項
1~7のいずれか一項に記載の受光装置。
【請求項9】
前記貫通孔は、前記外側表面側において拡幅された段付き孔である、請求項
1~7のいずれか一項に記載の受光装置。
【請求項10】
前記金属膜は、前記外側開口部の外縁に沿って延在するように前記外側表面に設けられた鍔部を更に有し、
前記筒部は、前記鍔部に接続されている、請求項
1~
9のいずれか一項に記載の受光装置。
【請求項11】
前記半田部材における前記外側開口部側の表面は、前記筒部と前記金属ボールとの間の前記領域において、前記内側開口部側に凹の曲面となっている、請求項
1~1
0のいずれか一項に記載の受光装置。
【請求項12】
複数の受光部が設けられた受光素子、並びに、第1表面、及び前記第1表面とは反対側の第2表面を有するガラスカバーを用意する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記第2表面が前記受光素子と向かい合うように前記受光素子上に前記ガラスカバーを配置する第2工程と、
前記第2工程の後に、前記ガラスカバーに加工用レーザ光を照射することにより、複数の集光要素を前記ガラスカバーに形成する第3工程と、を備え、
前記第3工程においては、前記ガラスカバーの前記第1表面に入射する測距用レーザ光を前記複数の集光要素のそれぞれが前記複数の受光部のそれぞれに集光するように前記複数の集光要素を形成する、受光装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2工程においては、前記ガラスカバーが前記受光素子から離れるように前記受光素子上に前記ガラスカバーを固定する、請求項1
2に記載の受光装置の製造方法。
【請求項14】
前記第2工程においては、前記ガラスカバーが前記受光素子に接触するように前記受光素子上に前記ガラスカバーを固定する、請求項1
2に記載の受光装置の製造方法。
【請求項15】
前記ガラスカバーは、ガラス基板と、前記ガラス基板における前記第1表面側の表面に設けられた第1膜と、を含み、
前記第3工程においては、前記第1膜に前記複数の集光要素を形成する、請求項1
2~1
4のいずれか一項に記載の受光装置の製造方法。
【請求項16】
前記複数の集光要素は、複数の回折格子である、請求項1
5に記載の受光装置の製造方法。
【請求項17】
前記ガラスカバーは、ガラス基板を含み、
前記第3工程においては、前記ガラス基板に前記複数の集光要素を形成する、請求項1
2~1
4のいずれか一項に記載の受光装置の製造方法。
【請求項18】
前記第3工程においては、前記ガラス基板における前記第1表面側の表面に前記複数の集光要素を形成する、請求項1
7に記載の受光装置の製造方法。
【請求項19】
前記複数の集光要素は、複数の回折格子である、請求項
18に記載の受光装置の製造方法。
【請求項20】
前記第3工程においては、前記ガラス基板の内部に前記複数の集光要素を形成する、請求項1
7に記載の受光装置の製造方法。
【請求項21】
前記複数の集光要素は、複数の回折格子、複数のレンズ面又は複数の導光部である、請求項2
0に記載の受光装置の製造方法。
【請求項22】
前記ガラスカバーは、ガラス基板と、前記ガラス基板における前記第2表面側の表面に設けられた第2膜と、を含み、
前記第2膜は、前記測距用レーザ光に対して透過性を有し、前記加工用レーザ光に対して遮光性を有する、請求項1
2~2
1のいずれか一項に記載の受光装置の製造方法。
【請求項23】
前記ガラスカバーは、ガラス基板を含み、
前記ガラス基板は、前記測距用レーザ光に対して透過性を有し、前記加工用レーザ光に対して遮光性を有する、請求項1
2~2
1のいずれか一項に記載の受光装置の製造方法。
【請求項24】
前記第1工程においては、前記受光素子となる部分を複数含む半導体ウェハ、及び前記ガラスカバーとなる部分を複数含むガラスウェハを用意し、
前記第2工程においては、前記半導体ウェハ上に前記ガラスウェハを固定し、
前記第3工程においては、前記ガラスウェハに前記加工用レーザ光を照射することにより、前記受光素子となる部分ごとに前記複数の集光要素を形成する、請求項1
2~2
3のいずれか一項に記載の受光装置の製造方法。
【請求項25】
前記第3工程の後に、前記半導体ウェハ及び前記ガラスウェハを前記受光素子となる部分ごとに切断する第4工程を更に備える、請求項2
4に記載の受光装置の製造方法。
【請求項26】
請求項
1~1
1のいずれか一項に記載の受光装置の製造方法であって、
前記貫通孔の前記内面に前記金属膜が設けられた前記基板の前記内側表面に、前記受光素子を配置し、前記受光素子を収容する前記パッケージを前記ガラスカバー及び基板によって構成する第5工程と、
前記第5工程の後に、前記金属ボール、及び前記金属ボールを被覆する半田層を有する半田ボールを、前記外側開口部から前記貫通孔内に配置し、前記半田層を溶融させることで前記半田部材を形成する第6工程と、を備える、受光装置の製造方法。
【請求項27】
前記第6工程においては、前記半田ボールにレーザ光を照射することで、前記半田層を溶融させる、請求項2
6に記載の受光装置の製造方法。
【請求項28】
前記第6工程においては、前記貫通孔を介して前記パッケージ内の脱気を実施しながら、前記半田層を溶融させる、請求項2
6又は2
7に記載の受光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受光装置、及び受光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TOF(Time of Flight)方式を利用して対象物までの距離を測定する技術として、LiDAR(Light Detection and Ranging)システムが注目されている。そのため、LiDARシステムに用いられる受光装置についても、様々な技術開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LiDARシステムでは、光源から出射されて対象物で反射された測距用レーザ光を、受光装置において如何に精度良く受光し得るかが重要となる。その一方で、測距用レーザ光を精度良く受光するために受光装置の厚さが増加することは望ましくない。
【0005】
本開示は、測距用レーザ光を精度良く受光することができ、且つ装置の薄型化を図ることができる受光装置、及びそのような受光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面の受光装置は、複数の受光部が設けられた受光素子と、第1表面、及び第1表面とは反対側の第2表面を有し、第2表面が受光素子と向かい合うように受光素子上に固定されたガラスカバーと、を備え、ガラスカバーは、第1表面及び内部の少なくとも一方に設けられた複数の回折格子を含み、複数の回折格子のそれぞれは、ガラスカバーの第1表面に入射する測距用レーザ光を複数の受光部のそれぞれに集光するように構成されている。
【0007】
この受光装置では、ガラスカバーが複数の回折格子を含み、複数の回折格子のそれぞれが、ガラスカバーに入射する測距用レーザ光を複数の受光部のそれぞれに集光するように構成されている。これにより、隣り合う受光部間でのクロストークの低減、及び複数の受光部のそれぞれにおける感度の向上を図ることができる。しかも、複数の回折格子がガラスカバーの第1表面及び内部の少なくとも一方に設けられている。これにより、受光素子とガラスカバーとの間に別部材として集光要素を設けることが不要となる。また、複数の回折格子がガラスカバーの第2表面に設けられている場合に比べ、受光素子から複数の回折格子までの距離が大きくなるため、受光素子にガラスカバーをより近接させた状態で、受光素子上にガラスカバーを固定することができる。よって、この受光装置によれば、測距用レーザ光を精度良く受光することができ、且つ装置の薄型化を図ることができる。
【0008】
本開示の一側面の受光装置では、ガラスカバーは、受光素子から離間した状態で受光素子上に固定されていてもよい。これにより、受光素子から複数の回折格子までの距離を適切な距離とすることができ、ガラスカバーに入射する測距用レーザ光を複数の受光部のそれぞれに確実に集光させることができる。
【0009】
本開示の一側面の受光装置では、ガラスカバーは、受光素子に接触した状態で受光素子上に固定されていてもよい。これにより、より一層の装置の薄型化を図ることができる。
【0010】
本開示の一側面の受光装置は、測距用レーザ光を出射する光源を更に備え、複数の回折格子のそれぞれは、光源から出射されて対象物で反射された測距用レーザ光を複数の受光部のそれぞれに集光するように構成されていてもよい。これにより、対象物までの距離を精度良く測定することができる。
【0011】
本開示の一側面の受光装置では、ガラスカバーは、ガラス基板と、ガラス基板における第1表面側の表面に設けられた第1膜と、を含み、複数の回折格子は、第1膜に形成されていてもよい。これにより、受光素子から複数の回折格子までの距離を適切な距離とすることができ、ガラスカバーに入射する測距用レーザ光を複数の受光部のそれぞれに確実に集光させることができる。
【0012】
本開示の一側面の受光装置では、ガラスカバーは、ガラス基板を含み、複数の回折格子は、ガラス基板における第1表面側の表面に形成されていてもよい。これにより、受光素子から複数の回折格子までの距離を適切な距離とすることができ、ガラスカバーに入射する測距用レーザ光を複数の受光部のそれぞれに確実に集光させることができる。
【0013】
本開示の一側面の受光装置では、ガラスカバーは、複数の回折格子に対して受光素子とは反対側に配置されたフィルタを更に含み、フィルタは、測距用レーザ光に対して透過性を有し、測距用レーザ光の波長以外の波長を有する光に対して遮光性を有してもよい。このように、複数の回折格子の前段にフィルタが設けられることで、測距用レーザ光の波長以外の波長を有する光を確実にカットすることができるので、受光素子においてSN比を向上させることができる。
【0014】
本開示の一側面の受光装置は、受光素子が配置された内側表面、及び内側表面とは反対側の外側表面、並びに、内側表面及び外側表面に開口する貫通孔を有し、受光素子を収容するパッケージをガラスカバーと共に構成する基板と、貫通孔の内面に設けられた金属膜と、貫通孔内に配置された金属ボールと、貫通孔内において金属膜と金属ボールとの間に配置され、貫通孔内に金属ボールを固定する半田部材と、を更に備え、貫通孔は、内側表面に位置する内側開口部、外側表面に位置する外側開口部、及び内側表面と外側表面との間に位置する中間開口部を含み、外側開口部は、金属ボールが通過可能な形状を呈しており、中間開口部は、金属ボールが通過不可能な形状を呈しており、金属膜は、貫通孔の内面のうち外側開口部と中間開口部との間に位置する側面に設けられた筒部を有し、金属ボールは、筒部に包囲されるように貫通孔内に配置されており、半田部材は、金属ボールから筒部に渡った状態で、筒部と金属ボールとの間の領域を封止していてもよい。これにより、受光装置の製造時に、例えば貫通孔を介してパッケージ内の脱気を実施しながら、半田部材によって貫通孔内に金属ボールを固定すると共に、半田部材によって金属膜の筒部と金属ボールとの間の領域を封止することができる。このとき、貫通孔の中間開口部の少なくとも一部が金属ボールによって塞がれる状態になるため、溶融した半田部材がパッケージ内に侵入するのを抑制することができる。更に、貫通孔の中間開口部が、金属ボールが通過不可能な形状を呈しており、半田部材が、金属ボールから金属膜の筒部に渡った状態で、金属膜の筒部と金属ボールとの間の領域を封止している。これにより、製造された受光装置では、金属ボールの固定状態が安定化するため、貫通孔の封止状態を確実に維持することができる。
【0015】
本開示の一側面の受光装置では、中間開口部は、長尺形状を呈していてもよい。これにより、受光装置の製造時において、半田部材によって貫通孔内に金属ボールを固定する際に、貫通孔の中間開口部の一部が金属ボールによって塞がれない状態になるため、貫通孔を介してパッケージ内の脱気を確実に実施することができる。
【0016】
本開示の一側面の受光装置では、貫通孔は、内側表面から外側表面に向かって広がるテーパ孔であってもよい。これにより、金属ボールが通過可能な形状を呈する外側開口部、及び金属ボールが通過不可能な形状を呈する中間開口部を含む貫通孔を容易且つ確実に得ることができる。
【0017】
本開示の一側面の受光装置では、貫通孔は、外側表面側において拡幅された段付き孔であってもよい。これにより、金属ボールが通過可能な形状を呈する外側開口部、及び金属ボールが通過不可能な形状を呈する中間開口部を含む貫通孔を容易且つ確実に得ることができる。
【0018】
本開示の一側面の受光装置では、金属膜は、外側開口部の外縁に沿って延在するように外側表面に設けられた鍔部を更に有し、筒部は、鍔部に接続されていてもよい。これにより、受光装置を実装する実装基板に、貫通孔の外側開口部及び金属膜の鍔部に対応する金属パターンを設けておき、金属膜の鍔部を当該金属パターンに接合することで、当該接合時に金属ボールが当該金属パターン上に落下したとしても、実装後の受光装置において貫通孔の封止状態を確実に維持することができる。
【0019】
本開示の一側面の受光装置では、半田部材における外側開口部側の表面は、筒部と金属ボールとの間の領域において、内側開口部側に凹の曲面となっていてもよい。これにより、半田部材において局所的な応力の集中が起こるのを抑制することができ、貫通孔の封止状態をより確実に維持することができる。
【0020】
本開示の一側面の受光装置の製造方法は、複数の受光部が設けられた受光素子、並びに、第1表面、及び第1表面とは反対側の第2表面を有するガラスカバーを用意する第1工程と、第1工程の後に、第2表面が受光素子と向かい合うように受光素子上にガラスカバーを配置する第2工程と、第2工程の後に、ガラスカバーに加工用レーザ光を照射することにより、複数の集光要素をガラスカバーに形成する第3工程と、を備え、第3工程においては、ガラスカバーの第1表面に入射する測距用レーザ光を複数の集光要素のそれぞれが複数の受光部のそれぞれに集光するように複数の集光要素を形成する。
【0021】
この受光装置の製造方法では、受光素子上にガラスカバーを配置した後に、ガラスカバーに加工用レーザ光を照射することにより、複数の集光要素をガラスカバーに形成する。これにより、複数の集光要素のそれぞれが複数の受光部のそれぞれに対して精度良く位置決めされた受光装置を効率良く得ることができる。よって、この受光装置の製造方法によれば、上述したような受光装置を適切に製造することができる。
【0022】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、第2工程においては、ガラスカバーが受光素子から離れるように受光素子上にガラスカバーを固定してもよい。これにより、製造された受光装置において、受光素子から複数の集光要素までの距離を適切な距離とすることができ、ガラスカバーに入射する測距用レーザ光を複数の受光部のそれぞれに確実に集光させることができる。
【0023】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、第2工程においては、ガラスカバーが受光素子に接触するように受光素子上にガラスカバーを固定してもよい。これにより、製造された受光装置において、より一層の装置の薄型化を図ることができる。
【0024】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、ガラスカバーは、ガラス基板と、ガラス基板における第1表面側の表面に設けられた第1膜と、を含み、第3工程においては、第1膜に複数の集光要素を形成してもよい。これにより、加工用レーザ光の照射による影響が受光素子に及ぶのを抑制することができる。
【0025】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、複数の集光要素は、複数の回折格子であってもよい。これにより、加工用レーザ光の照射によって複数の集光要素をガラスカバーに容易に設けることができる。
【0026】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、ガラスカバーは、ガラス基板を含み、第3工程においては、ガラス基板に複数の集光要素を形成してもよい。これにより、加工用レーザ光の照射によって様々な集光要素をガラスカバーに設けることができる。
【0027】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、第3工程においては、ガラス基板における第1表面側の表面に複数の集光要素を形成してもよい。これにより、加工用レーザ光の照射による影響が受光素子に及ぶのを抑制することができる。
【0028】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、複数の集光要素は、複数の回折格子であってもよい。これにより、加工用レーザ光の照射によって複数の集光要素をガラスカバーに容易に設けることができる。
【0029】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、第3工程においては、ガラス基板の内部に複数の集光要素を形成してもよい。これにより、加工用レーザ光の照射による影響が受光素子に及ぶのを抑制することができる。
【0030】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、複数の集光要素は、複数の回折格子、複数のレンズ面又は複数の導光部であってもよい。これにより、用途に応じた適切な集光要素をガラスカバーに設けることができる。
【0031】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、ガラスカバーは、ガラス基板と、ガラス基板における第2表面側の表面に設けられた第2膜と、を含み、第2膜は、測距用レーザ光に対して透過性を有し、加工用レーザ光に対して遮光性を有してもよい。これにより、加工用レーザ光の照射による影響が受光素子に及ぶのをより確実に抑制することができる。
【0032】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、ガラスカバーは、ガラス基板を含み、ガラス基板は、測距用レーザ光に対して透過性を有し、加工用レーザ光に対して遮光性を有してもよい。これにより、加工用レーザ光の照射による影響が受光素子に及ぶのをより確実に抑制することができる。
【0033】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、第1工程においては、受光素子となる部分を複数含む半導体ウェハ、及びガラスカバーとなる部分を複数含むガラスウェハを用意し、第2工程においては、半導体ウェハ上にガラスウェハを固定し、第3工程においては、ガラスウェハに加工用レーザ光を照射することにより、受光素子となる部分ごとに複数の集光要素を形成してもよい。これにより、加工用レーザ光の照射によって複数の集光要素を効率良く形成することができる。
【0034】
本開示の一側面の受光装置の製造方法は、第3工程の後に、半導体ウェハ及びガラスウェハを受光素子となる部分ごとに切断する第4工程を更に備えてもよい。これにより、複数の受光装置を効率良く製造することができる。
【0035】
本開示の一側面の受光装置の製造方法は、上述した受光装置の製造方法であって、貫通孔の内面に金属膜が設けられた基板の内側表面に、受光素子を配置し、受光素子を収容するパッケージをガラスカバー及び基板によって構成する第5工程と、第5工程の後に、金属ボール、及び金属ボールを被覆する半田層を有する半田ボールを、外側開口部から貫通孔内に配置し、半田層を溶融させることで半田部材を形成する第6工程と、を備える。
【0036】
この受光装置の製造方法によれば、溶融した半田層がパッケージ内に侵入するのを抑制しつつ、貫通孔を確実に封止することができる。
【0037】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、第6工程においては、半田ボールにレーザ光を照射することで、半田層を溶融させてもよい。これにより、半田層を局所的に加熱することができるため、受光装置等に熱的な影響が及ぶのを抑制することができる。
【0038】
本開示の一側面の受光装置の製造方法では、第6工程においては、貫通孔を介してパッケージ内の脱気を実施しながら、半田層を溶融させてもよい。これにより、溶融した半田層がパッケージ内に侵入するのを抑制しつつ、貫通孔を介してパッケージ内の脱気を確実に実施することができる。
【発明の効果】
【0039】
本開示によれば、測距用レーザ光を精度良く受光することができ、且つ装置の薄型化を図ることができる受光装置、及びそのような受光装置の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、第1実施形態の受光装置を備える測距システムの構成図である。
【
図4】
図4は、
図2に示される受光装置の製造方法の一工程を示す図である。
【
図5】
図5は、
図2に示される受光装置の製造方法の一工程を示す図である。
【
図6】
図6は、
図2に示される受光装置の製造方法の一工程を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の受光装置の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示される受光装置の製造方法の一工程を示す図である。
【
図9】
図9は、
図7に示される受光装置の製造方法の一工程を示す図である。
【
図19】
図19は、第1変形例のガラスカバーの拡大図である。
【
図20】
図20は、第2変形例のガラスカバーの拡大図である。
【
図21】
図21は、第3変形例のガラスカバーの拡大図である。
【
図22】
図22は、第4変形例のガラスカバーの拡大図である。
【
図23】
図23は、第5変形例のガラスカバー及び第6変形例のガラスカバーの断面図である。
【
図24】
図24は、変形例の受光装置のプリント配線基板の一部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する部分を省略する。
[第1実施形態]
【0042】
図1に示されるように、測距システム100は、光源10と、受光装置1Aと、を備えている。光源10は、対象物Aに向けて測距用レーザ光L1を出射する。光源10は、例えば、発光ダイオード、半導体レーザ等の発光素子によって構成されている。受光装置1Aは、光源10から出射されて対象物Aで反射された測距用レーザ光L1を受光する。測距システム100は、TOF(Time of Flight)方式を利用して対象物Aまでの距離を測定するLiDAR(Light Detection and Ranging)システムである。
【0043】
図2に示されるように、受光装置1Aは、プリント配線基板2と、受光素子3と、フレーム4と、ガラスカバー5と、を備えている。以下の説明では、受光装置1Aに測距用レーザ光L1が入射する方向をZ軸方向といい、Z軸方向に垂直な一方向をX軸方向といい、Z軸方向及びX軸方向に垂直な方向をY軸方向という。なお、測距システム100では、受光装置1Aから対象物Aまでの距離が受光装置1Aのサイズに比べて非常に大きくなるため、測距用レーザ光L1は、Z軸方向に平行に受光装置1Aに入射するとみなすことができる。
【0044】
プリント配線基板2は、例えば、矩形板状に形成されている。一例として、X軸方向におけるプリント配線基板2の長さは20mm程度であり、Y軸方向におけるプリント配線基板2の長さは10mm程度であり、プリント配線基板2の厚さは1mm程度である。
【0045】
受光素子3は、プリント配線基板2における光入射側(測距用レーザ光L1の入射側)の内側表面2aに実装されている。受光素子3には、複数の受光部3aが設けられている。本実施形態では、受光素子3は、X軸方向に沿って1次元に配列された複数の受光部3aを有する表面入射型のリニアセンサである。各受光部3aは、例えば、アバランシェ・フォトダイオードとして構成されており、画素として機能する。各受光部3aは、例えば、矩形状に形成されている。一例として、X軸方向における各受光部3aの長さは0.45mmであり、Y軸方向における各受光部3aの長さは0.46mmであり、隣り合う受光部3aの中心間距離(ピッチ)は0.55mmである。なお、プリント配線基板2の内側表面2aには、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の電子部品6も実装されている。
【0046】
フレーム4は、Z軸方向から見た場合に受光素子3及び電子部品6を包囲した状態で、プリント配線基板2の内側表面2aに固定されている。フレーム4は、例えば、樹脂製のシートによってプリント配線基板2の内側表面2aに固定されている。フレーム4は、プリント配線基板2の外縁に沿って延在する枠状の支持部材である。フレーム4における光入射側の表面4aの高さ(プリント配線基板2の内側表面2aからの距離)は、受光素子3の高さ及び電子部品6の高さよりも大きい。フレーム4は、例えば、ガラスエポキシ材料によって矩形枠状に形成されている。一例として、X軸方向におけるフレーム4の長さは20mm程度であり、Y軸方向におけるフレーム4の長さは10mm程度であり、フレーム4の厚さは1mm程度である。
【0047】
ガラスカバー5は、ガラス基板50によって構成されている。ガラス基板50は、測距用レーザ光L1に対して透過性を有するガラス材料によって、例えば、矩形板状に形成されている。一例として、X軸方向におけるガラス基板50の長さは20mm程度であり、Y軸方向におけるガラス基板50の長さは10mm程度であり、ガラス基板50の厚さは0.5mm程度である。
【0048】
ガラスカバー5は、第1表面5a及び第2表面5bを有している。第1表面5aは、ガラスカバー5における光入射側の表面であり、第2表面5bは、ガラスカバー5における第1表面5aとは反対側の表面である。本実施形態では、第1表面5aは、ガラス基板50における光入射側の表面50aであり、第2表面5bは、ガラス基板50における第1表面5aとは反対側の表面50bである。
【0049】
ガラスカバー5は、第2表面5bが受光素子3と向かい合うように受光素子3上に固定されている。ガラスカバー5は、受光素子3から離間した状態で受光素子3上に固定されている。より具体的には、ガラスカバー5は、フレーム4における光入射側の開口を塞いだ状態で、ガラスカバー5の第2表面5bがフレーム4の表面4aに固定されることにより、受光素子3上に固定されている。ガラスカバー5は、例えば、樹脂系の接着剤によってフレーム4の表面4aに固定されている。一例として、受光素子3とガラスカバー5との間には、例えば、0.5mm程度の隙間が設けられている。
【0050】
受光装置1Aでは、プリント配線基板2、フレーム4及びガラスカバー5によって、受光素子3及び電子部品6を収容するパッケージが構成されている。当該パッケージは、受光素子3及び電子部品6が配置された空間を画定している。
【0051】
ガラスカバー5は、複数の回折格子51を含んでいる。複数の回折格子51は、ガラスカバー5の第1表面5aに設けられている。本実施形態では、複数の回折格子51は、ガラス基板50の表面50aに形成されている。複数の回折格子51は、複数の受光部3aと1対1で対応している。対応する回折格子51及び受光部3aにおいては、Z軸方向から見た場合にそれらの少なくとも一部同士が重なっている。各回折格子51は、Z軸方向に平行にガラスカバー5の第1表面5aに入射する測距用レーザ光L1(本実施形態では、光源10から出射されて対象物Aで反射された測距用レーザ光L1)を各受光部3aに集光するように構成されている。つまり、各回折格子51は、測距用レーザ光L1の波長に対応する波長を有する光を各受光部3aに集光するように構成されている。
【0052】
図3に示されるように、回折格子51は、例えば、矩形状に形成されている。本実施形態では、回折格子51は、ガラス基板50の表面50aにおいて周囲の領域と屈折率が変化した複数の屈折率変化領域51aによって構成されている。屈折率変化領域51aにおける測距用レーザ光L1の透過率は、ガラス基板50の表面50aのうちの屈折率変化領域51a以外の領域における測距用レーザ光L1の透過率よりも低い。一例として、各屈折率変化領域51aは、Y軸方向に沿って延在しており、隣り合う屈折率変化領域51a間の距離は、X軸方向において中央から両側に行くほど小さくなっている。これにより、回折格子51は、Z軸方向に平行に入射した測距用レーザ光L1を、Y軸方向に垂直な面内のみおいて集光する。したがって、回折格子51によって集光された測距用レーザ光L1は、対応する受光部3a上において、Y軸方向を長手方向とする照射領域R1を有することになる。一例として、X軸方向おける照射領域R1の幅は、X軸方向における受光部3aの幅よりも小さく、Y軸方向おける照射領域R1の幅は、Y軸方向における受光部3aの幅よりも大きい。
【0053】
以上説明したように、受光装置1Aでは、ガラスカバー5が複数の回折格子51を含み、各回折格子51が、ガラスカバー5に入射する測距用レーザ光L1を各受光部3aに集光するように構成されている。これにより、隣り合う受光部3a間でのクロストークの低減、及び各受光部3aにおける感度の向上を図ることができる。しかも、複数の回折格子51がガラスカバー5の第1表面5aに設けられている。これにより、受光素子3とガラスカバー5との間に別部材として集光要素を設けることが不要となる。また、複数の回折格子51がガラスカバー5の第2表面5bに設けられている場合に比べ、受光素子3から複数の回折格子51までの距離が大きくなるため、受光素子3にガラスカバー5をより近接させた状態で、受光素子3上にガラスカバー5を固定することができる。よって、受光装置1Aによれば、測距用レーザ光L1を精度良く受光することができ、且つ装置の薄型化(Z軸方向における薄型化)を図ることができる。
【0054】
特に、受光装置1Aでは、測距用レーザ光L1がZ軸方向に平行にガラスカバー5の第1表面5aに入射するとみなすことができるため、互いに同一のパターンを有する複数の回折格子51を複数の集光要素として採用することが可能となっている。つまり、受光装置1Aでは、測距用レーザ光L1の波長に対応する波長を有し且つZ軸方向に平行にガラスカバー5の第1表面5aに入射する光を各受光部3aに効果的に集光することができればよいので、複数の回折格子51を互いに同一のパターンで容易に且つ精度良く形成することができる。
【0055】
なお、受光装置1Aは、測距システム100が車載用として使用される等、温度変化の大きな環境下で使用される場合がある。そのような場合、複数の集光要素として複数の回折格子51をガラスカバー5に設けることは極めて有効である。それは、ガラス材料の熱膨張率が、樹脂材料に比べ、受光素子3を構成する半導体材料の熱膨張率に近く、また、ガラス材料が、樹脂材料に比べ、耐環境性が高いからである。複数の集光要素として複数の回折格子51をガラスカバー5に設けることにより、温度変化の大きな環境下においても、ガラスカバー5に入射する測距用レーザ光L1を各受光部3aに確実に集光させることができる。
【0056】
また、受光装置1Aでは、ガラスカバー5が、受光素子3から離間した状態で受光素子3上に固定されている。また、受光装置1Aでは、複数の回折格子51が、ガラスカバー5を構成するガラス基板50の表面50aに形成されている。これらにより、受光素子3から複数の回折格子51までの距離を適切な距離とすることができ、ガラスカバー5に入射する測距用レーザ光L1を各受光部3aに確実に集光させることができる。
【0057】
次に、受光装置1Aの製造方法について説明する。まず、
図4に示されるように、プリント配線基板2に受光素子3及び電子部品6が実装され且つプリント配線基板2にフレーム4が固定された状態で、受光素子3を用意する(第1工程)。その一方で、ガラスカバー5を用意する(第1工程)。続いて、
図5に示されるように、フレーム4にガラスカバー5を固定することにより、ガラスカバー5が受光素子3から離れるように受光素子3上にガラスカバー5を固定する(第2工程)。
【0058】
続いて、
図6に示されるように、ガラスカバー5に加工用レーザ光L2を照射することにより、複数の回折格子51をガラスカバー5に形成する(第3工程)。本実施形態では、ガラスカバー5に入射する測距用レーザ光L1を各回折格子51が各受光部3aに集光するように、複数の回折格子51をガラス基板50の表面50aに形成する。加工用レーザ光L2は、ガラス基板50の表面50aに集光点が合わされた状態で、Z軸方向に沿って受光素子3とは反対側からガラス基板50の表面50aに照射される。加工用レーザ光L2の集光点は、例えば、受光部3aを基準として、ガラス基板50の表面50aにおいて走査される。加工用レーザ光L2は、例えば、フェムト秒レーザ光である。以上により、受光装置1Aを得る。
【0059】
以上説明したように、受光装置1Aの製造方法では、受光素子3上にガラスカバー5を固定した後に、ガラスカバー5に加工用レーザ光L2を照射することにより、複数の回折格子51をガラスカバー5に形成する。これにより、各回折格子51が各受光部3aに対して精度良く位置決めされた受光装置1Aを効率良く得ることができる。よって、受光装置1Aの製造方法によれば、受光装置1Aを適切に製造することができる。
【0060】
また、受光装置1Aの製造方法では、ガラスカバー5が受光素子3から離れるように受光素子3上にガラスカバー5を固定する。これにより、製造された受光装置1Aにおいて、受光素子3から複数の回折格子51までの距離を適切な距離とすることができ、ガラスカバー5に入射する測距用レーザ光L1を各受光部3aに確実に集光させることができる。
【0061】
また、受光装置1Aの製造方法では、ガラス基板50の表面50aに複数の回折格子51を形成する。これにより、加工用レーザ光L2の照射による影響が受光素子3に及ぶのを抑制することができる。
【0062】
また、受光装置1Aの製造方法では、複数の集光要素として複数の回折格子51を形成する。これにより、加工用レーザ光L2の照射によって複数の集光要素をガラスカバー5に容易に設けることができる。
[第2実施形態]
【0063】
図7に示されるように、受光装置1Bは、受光素子3に接触した状態でガラスカバー5が受光素子3上に固定されている点で、上述した受光装置1Aと主に相違している。受光装置1Bでは、ガラスカバー5は、例えば、透過性を有する樹脂又はフィルム構造を有する樹脂製シート(接着層)によって受光素子3上に固定されている。本実施形態では、ガラスカバー5は、Z軸方向から見た場合にガラスカバー5の外縁が受光素子3の外縁と一致する長尺状に形成されている。受光装置1Bにおいても、複数の回折格子51は、ガラスカバー5の第1表面5aに設けられており、各回折格子51は、Z軸方向に平行にガラスカバー5の第1表面5aに入射する測距用レーザ光L1を各受光部3aに集光するように構成されている。なお、受光素子3とガラスカバー5との間に接着層のみが存在する構成は、受光素子3に接触した状態でガラスカバー5が受光素子3上に固定されている構成に該当する。
【0064】
以上の受光装置1Bによれば、上述した受光装置1Aと同様の作用及び効果が奏されることに加え、より一層の装置の薄型化(Z軸方向における薄型化)を図ることができる。特に、受光装置1Bでは、受光素子3に接触した状態でガラスカバー5が受光素子3上に固定されているため、例えば他の部材を介してガラスカバー5が受光素子3上に固定されている場合に比べ、受光素子3から複数の回折格子51までの距離を正確に規定することができる。なお、受光素子3に接触した状態でガラスカバー5が受光素子3上に固定されている構成では、複数の回折格子51を含むカバーがガラス基板50によって構成されていることは、より重要である。ガラスの熱膨張率は、樹脂の熱膨張率よりも、受光素子3を構成する半導体材料の熱膨張率に近いことが一般的であり、温度変化の大きな環境(例えば、自動車の車内等)においても、対応する回折格子51及び受光部3aの間に位置ずれが生じ難いからである。
【0065】
次に、受光装置1Bの製造方法について説明する。まず、
図8に示されるように、受光素子3となる部分を複数含む半導体ウェハ3W、及びガラスカバー5となる部分(図示省略)を複数含むガラスウェハ5Wを用意する(第1工程)。半導体ウェハ3Wにおいては、複数の受光素子3となる複数の部分が2次元に配列されている。ガラスウェハ5Wは、複数の受光素子3となる複数の部分を覆う大きさを有している。続いて、
図9に示されるように、例えば、透過性を有する樹脂又はフィルム構造を有する樹脂製シートによって、半導体ウェハ3W上にガラスウェハ5Wを固定する(第2工程)。これは、ガラスカバー5が受光素子3に接触するように受光素子3上にガラスカバー5を固定することに相当する。
【0066】
続いて、
図10に示されるように、ガラスウェハ5Wに加工用レーザ光L2を照射することにより、受光素子3となる部分ごとに複数の回折格子51を形成する(第3工程)。本実施形態では、ガラスカバー5に入射する測距用レーザ光L1を各回折格子51が各受光部3aに集光するように、複数の回折格子51をガラスウェハ5Wの表面5Waに形成する。これは、複数の回折格子51をガラス基板50の表面50aに形成することに相当する。表面5Waは、ガラスウェハ5Wにおける半導体ウェハ3Wとは反対側の表面である。加工用レーザ光L2は、ガラスウェハ5Wの表面5Waに集光点が合わされた状態で、Z軸方向に沿って半導体ウェハ2Wとは反対側からガラスウェハ5Wの表面5Waに照射される。加工用レーザ光L2の集光点は、例えば、受光素子3となる部分ごとに受光部3aを基準として、ガラスウェハ5Wの表面5Waにおいて走査される。加工用レーザ光L2は、例えば、フェムト秒レーザ光である。続いて、
図11に示されるように、半導体ウェハ3W及びガラスウェハ5Wを受光素子3となる部分ごとに切断する(第4工程)。以上により、複数の受光装置1Bを得る。
【0067】
以上の受光装置1Bの製造方法によれば、上述した受光装置1Aの製造方法と同様の作用及び効果が奏されることに加え、次のような作用効果が奏される。すなわち、受光装置1Bの製造方法によれば、製造された受光装置1Bにおいて、より一層の装置の薄型化を図ることができる。また、受光装置1Bの製造方法は、ウェハレベルで実施されるため、加工用レーザ光L2の照射によって複数の回折格子51を効率良く形成することができ、結果として、複数の受光装置1Bを効率良く製造することができる。
[第3実施形態]
【0068】
図12に示されるように、第3実施形態の受光装置1Cは、プリント配線基板2に貫通孔20が形成されている点で、上述した受光装置1Aと主に相違している。受光装置1Cでは、プリント配線基板(基板)2、フレーム4及びガラスカバー5によって、受光素子3を収容するパッケージPが構成されている。つまり、プリント配線基板2は、受光素子3を収容するパッケージPをガラスカバー5と共に構成している。
【0069】
図13の(a)は、プリント配線基板2のうち貫通孔20を含む部分のY軸方向に平行な断面図であり、
図13の(b)は、プリント配線基板2のうち貫通孔20を含む部分のX軸方向に平行な断面図である。
図13の(a)及び(b)に示されるように、貫通孔20は、プリント配線基板2が有する内側表面2a及び外側表面2bに開口している。内側表面2aは、受光素子3(
図12参照)が配置された表面であり、外側表面2bは、内側表面2aとは反対側の表面である。貫通孔20は、内側表面2aから外側表面2bに向かって広がるテーパ孔である。貫通孔20は、内側開口部21、外側開口部22及び中間開口部23を含んでいる。内側開口部21は、内側表面2aに位置している。外側開口部22は、外側表面2bに位置している。中間開口部23は、内側表面2aと外側表面2bとの間に位置している。
【0070】
図14に示されるように、外側開口部22は、後述する金属ボール8が通過可能な形状を呈している。つまり、Z軸方向から見た場合に、外側開口部22は、いずれかの位置において金属ボール8の全体を含み得る形状を呈している。中間開口部23は、金属ボール8が通過不可能な形状を呈している。つまり、Z軸方向から見た場合に、中間開口部23は、いずれの位置においても金属ボール8の全体を含み得ない形状を呈している。本実施形態では、中間開口部23は、一方向を長手方向とする長尺形状(すなわち、一方向における幅が、当該一方向に垂直な方向における幅よりも大きい形状)を呈しており、Z軸方向から見た場合に、長手方向における中間開口部23の両端部が金属ボール8と重なっていない。内側開口部21の形状は任意である。なお、Z軸方向は、内側表面2a及び外側表面2bが対向する方向である。
【0071】
一例として、内側開口部21は、円形状を呈しており、外側開口部22及び中間開口部23のそれぞれは、X軸方向を長手方向とする長円形状を呈している。Z軸方向から見た場合に、内側開口部21は、中間開口部23の内側に位置しており、中間開口部23は、外側開口部22の内側に位置している。なお、
図14では、後述する金属膜7及び半田部材9の図示が省略されている。
【0072】
図13の(a)及び(b)に示されるように、貫通孔20の内面20aには、金属膜7が設けられている。金属膜7は、筒部71と、鍔部72と、を有している。筒部71は、貫通孔20の内面20aのうち外側開口部22と中間開口部23との間に位置する側面20bに設けられている。鍔部72は、外側開口部22の外縁に沿って延在するようにプリント配線基板2の外側表面2bに設けられている。筒部71は、鍔部72に接続されている。本実施形態では、金属膜7は、内側開口部21に至っている。金属膜7は、例えば、Cu、Auのメッキによって形成されている。
【0073】
貫通孔20内には、金属ボール8が配置されている。金属ボール8は、金属膜7の筒部71に包囲されるように貫通孔20内に配置されている。より具体的には、金属ボール8のうちの外側開口部22側の部分が金属膜7の筒部71に包囲されている。金属ボール8は、球形状を呈している。金属ボール8の中心は、外側開口部22と中間開口部23との間に位置している。本実施形態では、金属ボール8は、中間開口部23の一部(長手方向における中間開口部23の両端部の間の部分)を塞いでいる。金属ボール8は、例えば、銅によって形成されている。
【0074】
貫通孔20内には、半田部材9が配置されている。半田部材9は、貫通孔20内において金属膜7と金属ボール8との間に配置されており、貫通孔20内に金属ボール8を固定している。より具体的には、半田部材9は、金属ボール8から金属膜7の筒部71に渡った状態で、金属膜7の筒部71と金属ボール8との間の領域を封止している。半田部材9は、Z軸方向から見た場合に、金属膜7の筒部71と金属ボール8との間の領域において環状に延在している。半田部材9における外側開口部22側の表面9aは、金属膜7の筒部71と金属ボール8との間の領域において、内側開口部21側に凹の曲面となっている(すなわち、フィレット形状を呈している)。本実施形態では、半田部材9は、内側開口部21に至っており、外側開口部22に至っていない。半田部材9は、例えば、SnAgCu、AuSnによって形成されている。
【0075】
以上のように構成された受光装置1Cの製造方法について説明する。なお、
図15の(a)は、プリント配線基板2のうち貫通孔20を含む部分のY軸方向に平行な断面図であり、
図15の(b)は、プリント配線基板2のうち貫通孔20を含む部分のX軸方向に平行な断面図である。また、
図16の(a)は、プリント配線基板2のうち貫通孔20を含む部分のY軸方向に平行な断面図であり、
図16の(b)は、プリント配線基板2のうち貫通孔20を含む部分のX軸方向に平行な断面図である。
【0076】
まず、上述した受光装置1Aの製造方法における第1工程及び第2工程を実施することで、プリント配線基板2の内側表面2aに受光素子3等を配置し、プリント配線基板(基板)2、フレーム4及びガラスカバー5によってパッケージPを構成する(第5工程)。プリント配線基板2の内側表面2aに受光素子3等を配置する前に、プリント配線基板2には貫通孔20が形成されており、貫通孔20の内面20aには金属膜7が設けられている。
【0077】
続いて、
図15の(a)及び(b)に示されるように、内側表面2aに対して外側表面2bが上側に位置するようにパッケージP(
図12参照)を配置し、半田ボールSを外側開口部22から貫通孔20内に配置する(第6工程)。半田ボールSは、金属ボール8、及び金属ボール8を被覆する半田層90を有するコア付き半田ボールである。金属ボール8の融点は、半田層90の融点よりも高い。続いて、
図16の(a)及び(b)に示されるように、半田層90を溶融させることで半田部材9を形成する(第6工程)。本実施形態では、
図15の(a)及び(b)に示されるように、貫通孔20を介してパッケージP内の脱気を実施しながら(
図15の(b)における破線の矢印参照)、半田ボールSにレーザ光Lを照射することで半田層90を溶融させる。
【0078】
続いて、上述した受光装置1Aの製造方法における第3工程を実施することで、受光装置1Cを得る。なお、上述した受光装置1Aの製造方法における第3工程を実施した後に、上述した第6工程を実施してもよい。
【0079】
以上のように製造された受光装置1Cの実装方法について説明する。なお、
図17の(a)は、プリント配線基板2のうち貫通孔20を含む部分のY軸方向に平行な断面図であり、
図17の(b)は、プリント配線基板2のうち貫通孔20を含む部分のX軸方向に平行な断面図である。また、
図18の(a)は、プリント配線基板2のうち貫通孔20を含む部分のY軸方向に平行な断面図であり、
図18の(b)は、プリント配線基板2のうち貫通孔20を含む部分のX軸方向に平行な断面図である。
【0080】
まず、
図17の(a)及び(b)に示されるように、受光装置1Cを実装する実装基板200を用意する。実装基板200には、受光装置1Cにおける貫通孔20の外側開口部22及び金属膜7の鍔部72に対応する金属パターン201が設けられており、金属パターン201上には、半田層202が設けられている。続いて、半田層202を介して金属パターン201上に外側開口部22及び鍔部72が位置するように、実装基板200上にプリント配線基板2を配置する。
【0081】
続いて、
図18の(a)及び(b)に示されるように、例えば加熱炉内において半田層202を溶融させることで、金属膜7の鍔部72を金属パターン201に接合する。このとき、半田部材9(
図17の(a)及び(b)参照)が溶融したとしても、溶融した半田部材9は、鍔部72と金属パターン201との接合に寄与する。また、半田部材9が溶融することで、金属ボール8が金属パターン201上に落下したとしても、半田層202及び半田部材9によって金属ボール8が金属パターン201上に固定される。
【0082】
以上説明したように、受光装置1Cによれば、受光装置1Cの製造時に、例えば貫通孔20を介してパッケージP内の脱気を実施しながら、半田部材9によって貫通孔20内に金属ボール8を固定すると共に、半田部材9によって金属膜7の筒部71と金属ボール8との間の領域を封止することができる。このとき、貫通孔20の中間開口部23の少なくとも一部が金属ボール8によって塞がれる状態になるため、溶融した半田部材9がパッケージP内に侵入するのを抑制することができる。更に、貫通孔20の中間開口部23が、金属ボール8が通過不可能な形状を呈しており、半田部材9が、金属ボール8から金属膜7の筒部71に渡った状態で、金属膜7の筒部71と金属ボール8との間の領域を封止している。これにより、製造された受光装置1Cでは、金属ボール8の固定状態が安定化するため、貫通孔20の封止状態を確実に維持することができる。
【0083】
また、受光装置1Cでは、貫通孔20の中間開口部23が長尺形状を呈している。これにより、受光装置1Cの製造時において、半田部材9によって貫通孔20内に金属ボール8を固定する際に、貫通孔20の中間開口部23の一部(本実施形態では、長手方向における中間開口部23の両端部)が金属ボール8によって塞がれない状態になるため、貫通孔20を介してパッケージP内の脱気を確実に実施することができる。
【0084】
また、受光装置1Cでは、貫通孔20が、内側表面2aから外側表面2bに向かって広がるテーパ孔である。これにより、金属ボール8が通過可能な形状を呈する外側開口部22、及び金属ボール8が通過不可能な形状を呈する中間開口部23を含む貫通孔20を容易且つ確実に得ることができる。
【0085】
また、受光装置1Cでは、金属膜7が筒部71及び鍔部72を有しており、筒部71が鍔部72に接続されている。これにより、例えば、金属膜7の鍔部72を実装基板200の金属パターン201に接合する際に、金属ボール8が金属パターン201上に落下したとしても、実装後の受光装置1Cにおいて貫通孔20の封止状態を確実に維持することができる。
【0086】
また、受光装置1Cでは、半田部材9の表面9aが、金属膜7の筒部71と金属ボール8との間の領域において、内側開口部21側に凹の曲面となっている。これにより、半田部材9において局所的な応力の集中が起こるのを抑制することができ、貫通孔20の封止状態をより確実に維持することができる。
【0087】
また、受光装置1Cの製造方法によれば、溶融した半田層90がパッケージP内に侵入するのを抑制しつつ、貫通孔20を確実に封止することができる。
【0088】
また、受光装置1Cの製造方法では、半田ボールSにレーザ光Lを照射することで、半田層90を溶融させる。これにより、半田層90を局所的に加熱することができるため、受光装置1C等に熱的な影響が及ぶのを抑制することができる。
【0089】
また、受光装置1Cの製造方法では、貫通孔20を介してパッケージP内の脱気を実施しながら、半田層90を溶融させる。これにより、溶融した半田層90がパッケージ内に侵入するのを抑制しつつ、貫通孔20を介してパッケージP内の脱気を確実に実施することができる。
[変形例]
【0090】
本開示は、上述した第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態に限定されない。例えば、ガラス基板50は、表面50a及び表面50bが互いに平行となるように配置されたものに限定されず、表面50bに対して表面50aが傾斜するように配置されたものであってもよい。各受光装置1A,1B,1Cでは、複数の回折格子51がガラス基板50の内部に形成されていてもよい。この場合にも、加工用レーザ光L2の照射による影響が受光素子3に及ぶのを抑制することができる。また、各受光装置1A,1B,1Cでは、
図19に示されるように、ガラスカバー5が、ガラス基板50と、ガラス基板50の表面50aに設けられた第1膜52と、を含み、複数の回折格子51が、第1膜52に形成されていてもよい。これにより、受光素子3から複数の回折格子51までの距離を適切な距離とすることができ、ガラスカバー5に入射する測距用レーザ光L1を複数の受光部3aのそれぞれに確実に集光させることができる。
図19に示される例では、第1膜52に形成された複数のスリットによって、各回折格子51が構成されている。この場合、各回折格子51において、各スリット内の領域は、第1膜52において周囲の領域と屈折率が変化した屈折率変化領域に相当する。つまり、
図19に示される例では、測距用レーザ光L1の透過率が第1膜52よりも高い屈折率変化領域によって、回折格子51が構成されている。第1膜52は、例えば、SiN膜である。
【0091】
また、各受光装置1A,1B,1Cでは、受光素子3が、2次元に配列された複数の受光部3aを有するエリアセンサであってもよい。
【0092】
一例として、X軸方向を行方向とし且つY軸方向を列方向として複数の受光部3aがマトリックス状に配列されている場合、各回折格子51は、X軸方向に沿って延在する複数の屈折率変化領域51aを含む第1層と、Y軸方向に沿って延在する複数の屈折率変化領域51aを含む第2層と、を有していてもよい。第1層において、隣り合う屈折率変化領域51a間の距離がY軸方向において中央から両側に行くほど小さくなるように複数の屈折率変化領域51aが形成されていれば、Z軸方向に平行に入射した測距用レーザ光L1を、X軸方向に垂直な面内において集光させることができる。Z軸方向から見た場合に第1層と重なる第2層において、隣り合う屈折率変化領域51a間の距離がX軸方向において中央から両側に行くほど小さくなるように複数の屈折率変化領域51aが形成されていれば、Z軸方向に平行に入射した測距用レーザ光L1を、Y軸方向に垂直な面内おいて集光させることができる。したがって、マトリックス状に配列された複数の受光部3aのそれぞれに測距用レーザ光L1を確実に集光させることができる。
【0093】
また、一例として、X軸方向を行方向とし且つY軸方向を列方向として複数の受光部3aがマトリックス状に配列されている場合、各回折格子51は、同心円状に形成された複数の屈折率変化領域51aによって構成されていてもよい。隣り合う屈折率変化領域51a間の距離が中心から外側に行くほど小さくなるように複数の屈折率変化領域51aが形成されていれば、マトリックス状に配列された複数の受光部3aのそれぞれに測距用レーザ光L1を確実に集光させることができる。
【0094】
また、受光装置1Bでは、ガラスカバー5がダイレクトボンディングによって受光素子3上に固定されてもよい。この場合、受光装置1Bの製造方法では、第2工程において、ガラスウェハ5Wがダイレクトボンディングによって半導体ウェハ3W上に固定される。ダイレクトボンディングは、例えば、プラズマ活性化接合(Plasma Activation Bonding)、表面活性化接合(SAB:Surface-activated Room-temperature Bonding)、原子拡散接合(ADB:Atomic Diffusion Bonding)、陽極接合(Anodic Bonding)、フュージョンボンディング(Fusion Bonding)、親水化接合(Hydrophilic Bonding)等である。
【0095】
また、各受光装置1A,1B,1Cは、測距用レーザ光L1を出射する光源10を備えていてもよい。これにより、対象物Aまでの距離を精度良く測定することができる。
【0096】
また、各受光装置1A,1B,1Cの製造方法では、
図19に示されるように、ガラスカバー5が、ガラス基板50と、ガラス基板50の表面50aに設けられた第1膜52と、を含む場合、ガラスカバー5に加工用レーザ光L2を照射することにより、複数の回折格子51を第1膜52に形成してもよい。これにより、加工用レーザ光L2の照射による影響が受光装置1A,1B,1Cに及ぶのを抑制しつつ、加工用レーザ光L2の照射によって複数の集光要素をガラスカバー5に容易に設けることができる。
【0097】
また、各受光装置1A,1B,1Cでは、
図20に示されるように、ガラスカバー5が、複数の回折格子51に対して受光素子3とは反対側に配置されたフィルタ54を更に含み、フィルタ54が、測距用レーザ光L1に対して透過性を有し、測距用レーザ光L1の波長以外の波長を有する光に対して遮光性を有してもよい。フィルタ54において、測距用レーザ光L1の透過率は、測距用レーザ光L1の波長以外の波長を有する光の透過率よりも高い。このように、複数の回折格子51の前段にフィルタ54が設けられることで、測距用レーザ光L1の波長以外の波長を有する光を確実にカットすることができ、受光素子3においてSN比を向上させることができる。一例として、フィルタ54は、測距用レーザ光L1に対して透過性を有し、測距用レーザ光L1の波長以外の波長を有する光に対して遮光性を有するバンドパスフィルタである。
【0098】
また、各受光装置1A,1B,1Cの製造方法では、ガラスカバー5に加工用レーザ光L2を照射することにより、ガラス基板50の内部に複数の回折格子(集光要素)51を形成してもよい。また、複数の回折格子51に替えて、
図21に示されるように、複数のレンズ面(集光要素)53を形成してもよい。
図21に示される例では、各レンズ面53は、Z軸方向に平行に入射した測距用レーザ光L1を、Y軸方向に垂直な面内のみおいて集光するシリンドリカルレンズ面である。また、複数の回折格子51に替えて、
図22に示されるように、複数の導光部(集光要素)55を形成してもよい。
図22に示される例では、各導光部55は、X軸方向において向かい合い且つ受光部3aに近付くほど間隔が小さくなるように形成された1対の導光領域55aによって構成されている。このように、各受光装置1A,1B,1Cの製造方法では、用途に応じた適切な集光要素をガラスカバー5に設けてよい。なお、上述した各集光要素は、ガラス基板50の内部において周囲の領域と屈折率が変化した屈折率変化領域によって構成されている。
【0099】
また、各受光装置1A,1B,1Cの製造方法では、
図23の(a)及び(b)に示されるように、ガラスカバー5が、ガラス基板50と、ガラス基板50の表面50bに設けられた第2膜56と、を含み、第2膜56が、測距用レーザ光L1に対して透過性を有し、加工用レーザ光L2に対して遮光性を有していてもよい。第2膜56において、測距用レーザ光L1の透過率は、加工用レーザ光L2の透過率よりも高い。これにより、加工用レーザ光L2の照射による影響が受光素子3に及ぶのをより確実に抑制することができる。なお、第2膜56は、加工用レーザ光L2を吸収する膜であってもよいし、加工用レーザ光L2を反射する膜であってもよい。一例として、第2膜56は、測距用レーザ光L1に対して透過性を有し、加工用レーザ光L2に対して遮光性を有するバンドパスフィルタである。
【0100】
また、各受光装置1A,1B,1Cの製造方法では、ガラスカバー5が、ガラス基板50を含み、ガラス基板50が、測距用レーザ光L1に対して透過性を有し、加工用レーザ光L2に対して遮光性を有していてもよい。この場合、ガラス基板50における測距用レーザ光L1の透過率は、ガラス基板50における加工用レーザ光L2の透過率よりも高い。これにより、加工用レーザ光L2の照射による影響が受光素子3に及ぶのをより確実に抑制することができる。一例として、ガラス基板50は、測距用レーザ光L1よりも加工用レーザ光L2に対して高い吸収性を有する顔料を含むガラス基板である。
【0101】
また、各受光装置1A,1B,1Cの製造方法では、受光素子3上にガラスカバー5を配置した状態で、ガラスカバー5に加工用レーザ光L2を照射することにより、複数の集光要素をガラスカバー5に形成し、その後に、受光素子3上にガラスカバー5を固定してもよい。
【0102】
また、受光装置1Cでは、
図24の(a)及び(b)に示されるように、プリント配線基板2に形成された貫通孔20が、外側表面2b側において拡幅された段付き孔であってもよい。なお、
図24の(a)は、プリント配線基板2のうち貫通孔20を含む部分のY軸方向に平行な断面図であり、
図24の(b)は、プリント配線基板2のうち貫通孔20を含む部分のX軸方向に平行な断面図である。
【0103】
図24の(a)及び(b)に示される例(以下、「変形例の受光装置1C」という)では、外側表面2bに形成された凹部24、及び凹部24の底面24aに形成された孔部25によって、貫通孔20が構成されている。変形例の受光装置1Cでは、内側表面2aに位置する孔部25の開口部が貫通孔20の内側開口部21に相当し、外側表面2bに位置する凹部24の開口部が貫通孔20の外側開口部22に相当し、凹部24の底面24aに位置する孔部25の開口部が貫通孔20の中間開口部23に相当する。
【0104】
このように、貫通孔20が段付き孔である場合にも、金属ボール8が通過可能な形状を呈する外側開口部22、及び金属ボール8が通過不可能な形状を呈する中間開口部23を含む貫通孔20を容易且つ確実に得ることができる。
【0105】
変形例の受光装置1Cについて、より詳細に説明する。
図25に示されるように、外側開口部22は、金属ボール8が通過可能な形状を呈している。中間開口部23は、金属ボール8が通過不可能な形状を呈している。変形例の受光装置1Cでは、中間開口部23は、一方向を長手方向とする長尺形状を呈しており、Z軸方向から見た場合に、長手方向における中間開口部23の両端部が金属ボール8と重なっていない。内側開口部21の形状は任意である。
【0106】
一例として、内側開口部21及び中間開口部23のそれぞれは、X軸方向を長手方向とする長円形状を呈しており、外側開口部22は、円形状を呈している。変形例の受光装置1Cでは、内側開口部21及び中間開口部23は、同一の形状を呈している。Z軸方向から見た場合に、内側開口部21及び中間開口部23は、外側開口部22の内側に位置している。なお、
図25では、金属膜7及び半田部材9の図示が省略されている。
【0107】
図24の(a)及び(b)に示されるように、貫通孔20の内面20aには、金属膜7が設けられている。金属膜7は、筒部71と、鍔部72と、を有している。筒部71は、貫通孔20の内面20aのうち外側開口部22と中間開口部23との間に位置する側面20b(すなわち、凹部24の側面24b)に設けられている。鍔部72は、外側開口部22の外縁に沿って延在するようにプリント配線基板2の外側表面2bに設けられている。筒部71は、鍔部72に接続されている。変形例の受光装置1Cでは、金属膜7は、内側開口部21に至っている。
【0108】
貫通孔20内には、金属ボール8が配置されている。金属ボール8は、金属膜7の筒部71に包囲されるように貫通孔20内に配置されている。より具体的には、金属ボール8のうちの外側開口部22側の部分が金属膜7の筒部71に包囲されている。金属ボール8は、球形状を呈している。金属ボール8の中心は、外側開口部22と中間開口部23との間に位置している。変形例の受光装置1Cでは、金属ボール8は、中間開口部23の一部(長手方向における中間開口部23の両端部の間の部分)を塞いでいる。
【0109】
貫通孔20内には、半田部材9が配置されている。半田部材9は、貫通孔20内において金属膜7と金属ボール8との間に配置されており、貫通孔20内に金属ボール8を固定している。より具体的には、半田部材9は、金属ボール8から金属膜7の筒部71に渡った状態で、金属膜7の筒部71と金属ボール8との間の領域を封止している。半田部材9は、Z軸方向から見た場合に、金属膜7の筒部71と金属ボール8との間の領域において環状に延在している。半田部材9における外側開口部22側の表面9aは、金属膜7の筒部71と金属ボール8との間の領域において、内側開口部21側に凹の曲面となっている。変形例の受光装置1Cでは、半田部材9は、内側開口部21及び外側開口部22のそれぞれに至っていない。ただし、半田部材9の一部は、孔部25内にも配置されている。
【0110】
変形例の受光装置1Cによっても、上述した第3実施形態の受光装置1Cと同様の作用及び効果が奏される。
【0111】
なお、第3実施形態の受光装置1C及び変形例の受光装置1Cでは、受光素子3が配置される基板は、例えば、セラミック、プラスチック等によって形成された基板等、プリント配線基板2以外の基板であってもよい。また、第3実施形態の受光装置1C及び変形例の受光装置1Cでは、受光素子3が配置される基板は、フレーム4に相当する部分を有していてもよい。
【0112】
また、第3実施形態の受光装置1C及び変形例の受光装置1Cでは、中間開口部23が長尺形状を呈する場合、中間開口部23の形状は、長円形状に限定されず、楕円形状、長方形状等であってもよい。また、第3実施形態の受光装置1C及び変形例の受光装置1Cでは、中間開口部23は、金属ボール8が通過不可能な形状を呈していれば、長尺形状を呈していなくてもよい。また、第3実施形態の受光装置1C及び変形例の受光装置1Cでは、貫通孔20は、テーパ孔及び段付き孔以外の孔であってもよい。
【0113】
また、第3実施形態の受光装置1C及び変形例の受光装置1Cでは、金属膜7は、鍔部72を有していなくてもよい。また、第3実施形態の受光装置1C及び変形例の受光装置1Cでは、金属膜7は、内側開口部21に至っていなくてもよい。
【0114】
また、第3実施形態の受光装置1C及び変形例の受光装置1Cでは、半田部材9は、金属ボール8のうちの外側開口部22側の部分を覆っていなくてもよいし、或いは、当該部分を覆っていてもよい。また、第3実施形態の受光装置1C及び変形例の受光装置1Cでは、金属ボール8と中間開口部23との間に半田部材9の一部が存在していてもよいし、或いは、金属ボール8が中間開口部23に接触していてもよい。
【0115】
また、第3実施形態の受光装置1C及び変形例の受光装置1Cのそれぞれの製造方法では、半田層90を溶融させる際に、貫通孔20を介してパッケージP内の脱気を実施しなくてもよい。その場合には、パッケージPを形成する際に、パッケージP内のガスが膨張することに起因してパッケージPが破損するのを抑制することができる。また、第3実施形態の受光装置1C及び変形例の受光装置1Cのそれぞれの製造方法では、加熱炉内において半田層90を溶融させてもよい。
【0116】
参考として、貫通孔20に関する構成は、受光素子及び発光素子の少なくとも1つを収容するパッケージのうち、受光素子及び発光素子の少なくとも1つが配置される基板に適用可能である。その場合、光デバイスは、受光素子及び発光素子の少なくとも1つと、受光素子及び発光素子の少なくとも1つが配置された内側表面、及び内側表面とは反対側の外側表面、並びに、内側表面及び外側表面に開口する貫通孔を有する基板を含み、受光素子及び発光素子の少なくとも1つを収容するパッケージと、貫通孔の内面に設けられた金属膜と、貫通孔内に配置された金属ボールと、貫通孔内において金属膜と金属ボールとの間に配置され、貫通孔内に金属ボールを固定する半田部材と、を備える。当該光デバイスでは、貫通孔は、内側表面に位置する内側開口部、外側表面に位置する外側開口部、及び内側表面と外側表面との間に位置する中間開口部を含み、外側開口部は、金属ボールが通過可能な形状を呈しており、中間開口部は、金属ボールが通過不可能な形状を呈しており、金属膜は、貫通孔の内面のうち外側開口部と中間開口部との間に位置する側面に設けられた筒部を有し、金属ボールは、筒部に包囲されるように貫通孔内に配置されており、半田部材は、金属ボールから筒部に渡った状態で、筒部と金属ボールとの間の領域を封止している。
【符号の説明】
【0117】
1A,1B,1C…受光装置、2…プリント配線基板(基板)、2a…内側表面、2b…外側表面、3…受光素子、3a…受光部、3W…半導体ウェハ、5…ガラスカバー、5a…第1表面、5b…第2表面、5W…ガラスウェハ、7…金属膜、8…金属ボール、9…半田部材、9a…表面、10…光源、20…貫通孔、20a…内面、20b…側面、21…内側開口部、22…外側開口部、23…中間開口部、50…ガラス基板、50a…表面、50b…表面、51…回折格子(集光要素)、52…第1膜、53…レンズ面(集光要素)、54…フィルタ、55…導光部(集光要素)、56…第2膜、71…筒部、72…鍔部、90…半田層、A…対象物、L1…測距用レーザ光、L2…加工用レーザ光、L…レーザ光、P…パッケージ、S…半田ボール。