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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】捺染用インクセット及び繊維の捺染方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/40 20140101AFI20240517BHJP
   C09D 11/328 20140101ALI20240517BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240517BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240517BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20240517BHJP
   D06P 5/26 20060101ALI20240517BHJP
   C09B 1/28 20060101ALN20240517BHJP
   C09B 5/24 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
C09D11/40
C09D11/328
B41M5/00 120
B41M5/00 114
B41M5/00 132
B41J2/01 501
D06P5/30
D06P5/26
C09B1/28
C09B5/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021504955
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2020008942
(87)【国際公開番号】W WO2020184302
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2019043937
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤沼 里麻
(72)【発明者】
【氏名】寺西 諒
(72)【発明者】
【氏名】米田 孝
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-001871(JP,A)
【文献】特開2019-001870(JP,A)
【文献】特開2018-178039(JP,A)
【文献】特開2018-178038(JP,A)
【文献】特開2018-178037(JP,A)
【文献】特開2015-093956(JP,A)
【文献】特開2015-093957(JP,A)
【文献】特開2018-059046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
B41M 5/00-5/52
B41J 2/01-2/215
D06P 1/00-7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、水不溶性の着色剤及び水を含有する、シアンインク及びバイオレットインクを含むインクセットであって、該シアンインクが、下記式(1)で表される化合物を水不溶性の着色剤として少なくとも含み、該バイオレットインクが、C.I.ディスパースバイオレット 27、C.I.ディスパースバイオレット 28からなる群から選択されるいずれか少なくとも1種を水不溶性の着色剤として含み、C.I.ディスパースイエロー 54を少なくとも含むイエローインク1種と、C.I.ディスパースレッド 60を少なくとも含むマゼンタインク1種とをさらに含む、昇華転写用又はダイレクト昇華プリント用のインクセット。
【化1】
[式(1)中、R及びRはエチル基を表し、Rは水素原子を表し、Xは酸素原子を表わす。]
【請求項2】
さらに第2のシアンインク1種を少なくとも含む請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
上記第2のシアンインクが、C.I.ディスパースブルー 359を少なくとも含む請求項2に記載のインクセット。
【請求項4】
さらにオレンジインク1種を少なくとも含む請求項1~3のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項5】
上記オレンジインクが、C.I.ディスパースオレンジ 25を少なくとも含む請求項4に記載のインクセット。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のインクセットを用い、捺染した繊維。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のインクセットを用い、インク液滴を、インクジェットプリンタにより疎水性繊維に付着させる工程Aと、工程Aにより付着させた前記インク液滴中の着色剤を熱により繊維に固着させる工程Bと、繊維中に残存する未固着の着色剤を洗浄する工程Cと、を含む疎水性繊維の捺染方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のインクセットを用い、インク液滴を、インクジェットプリンタにより中間記録媒体に付着させて記録画像を得た後、該中間記録媒体における、前記インク液滴の付着面に疎水性繊維を接触させ、熱処理することにより該記録画像を疎水性繊維に転写する、疎水性繊維の捺染方法。
【請求項9】
1種類以上の糊剤、アルカリ性物質、還元防止剤及びヒドロトロピー剤を少なくとも含む水溶液を、インクを付着させる前の繊維に付与する、繊維の前処理工程をさらに含む請求項又はに記載の疎水性繊維の捺染方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捺染用インクセット及びそれを用いた繊維の捺染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットによる無製版印刷を行なう記録方法が提案され、布等を含めた繊維の捺染においてもインクジェット捺染が行われている。従来のスクリーン印刷等の捺染方法と比較して、インクジェット印刷による捺染は、無製版であること、省資源であること、省エネルギーであること、及び高精細表現が容易であること、等、様々な利点がある。ここでポリエステル繊維等の疎水性繊維布は、一般に水不溶性の着色材により染色される。従って、インクジェット記録方法により疎水性繊維を捺染するための水性インクとしては、一般に水不溶性の着色材を水中に分散し、分散安定性等の性能が良好な分散インクを用いる必要がある。
【0003】
ポリエステル繊維を代表とする疎水性繊維へのインクジェット捺染方式は、大きく分けると以下2つの方法に大別される。すなわち、繊維へ直接インクを付与(プリント)した後、高温スチーミング等の熱処理によりインク中の染料を繊維に染着させるダイレクトプリント法と、中間記録媒体(専用の転写紙等)にインクを付与(プリント)した後、中間記録媒体のインク付与面と疎水性繊維を重ね合わせた後、熱により染料を中間記録媒体から繊維側へ転写させる昇華転写法である。
【0004】
上記昇華転写法は、のぼり旗やスポーツウェア等の捺染加工に主に用いられ、インク中には熱処理によるポリエステルへの転写適性に優れた易昇華型の染料が用いられる。加工工程としては、(1)プリント工程:インクジェットプリンタにより染料インクを中間記録媒体に付与する、(2)転写工程:熱処理により染料を中間記録媒体から繊維中に転写・染着させる、の2工程が主にあり、市販の転写紙が広く使用できる為、繊維の前処理は必要とせず、また洗浄工程も省略されている。
【0005】
上記昇華転写法で使用される水不溶性の着色剤に求められる性能としては、昇華性が良く、疎水性繊維上で高発色であり、かつ各種堅牢度に優れたものである必要がある。そのため、市場で広く使用されている色素は限られており、各社同様の色再現域となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-001871号公報
【文献】特開2019-178038号公報
【文献】特開2019-001870号公報
【文献】特開2019-178039号公報
【文献】特開2014-080539号公報
【文献】特開2014-080539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、色再現域が良好な、捺染用インクセット及びそれを用いた繊維の捺染方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、それぞれ、水不溶性の着色剤及び水を含有する、シアンインク及びバイオレットインクを含むインクセットであって、該シアンインクが、下記式(1)で表される化合物を水不溶性の着色剤として少なくとも含み、該バイオレットインクが、C.I.ディスパースバイオレット 27、C.I.ディスパースバイオレット 28からなる群から選択されるいずれか少なくとも1種を水不溶性の着色剤として含むインクセットが、上記の課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)~15)に関する。
【0009】
1)
それぞれ、水不溶性の着色剤及び水を含有する、シアンインク及びバイオレットインクを含むインクセットであって、該シアンインクが、下記式(1)で表される化合物を水不溶性の着色剤として少なくとも含み、該バイオレットインクが、C.I.ディスパースバイオレット 27、C.I.ディスパースバイオレット 28からなる群から選択されるいずれか少なくとも1種を水不溶性の着色剤として含むインクセット。
【化1】
[式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又はC1-C4アルキル基を表し、R、R及びRの少なくとも2つがC1-C4アルキル基であり、R、R及びRの炭素数の合計は4~12であり、Xは酸素原子、又はイミノ基を表わす。]
【0010】
2)
さらにイエローインク1種を少なくとも含む1)に記載のインクセット。
3)
上記イエローインクが、C.I.ディスパースイエロー 54を少なくとも含む2)に記載のインクセット。
4)
さらにマゼンタインク1種を少なくとも含む1)~3)のいずれか一項に記載のインクセット。
5)
上記マゼンタインクが、C.I.ディスパースレッド 60を少なくとも含む4)に記載のインクセット。
6)
さらに第2のシアンインク1種を少なくとも含む1)~5)のいずれか一項に記載のインクセット。
7)
上記第2のシアンインクが、C.I.ディスパースブルー 359を少なくとも含む6)に記載のインクセット。
8)
さらにオレンジインク1種を少なくとも含む1)~7)のいずれか一項に記載のインクセット。
9)
上記オレンジインクが、C.I.ディスパースオレンジ 25を少なくとも含む8)に記載のインクセット。
10)
上記式(1)におけるR、R及びRのいずれか2つがC1-C4アルキル基であり、他の1つが水素原子である、1)~9)のいずれか一項に記載のインクセット。
11)
上記式(1)におけるR、R及びRのいずれか2つがエチル基であり、他の1つが水素原子である、1)~10)のいずれか一項に記載のインクセット。
12)
1)~11)のいずれか一項に記載のインクセットを用い、捺染した繊維。
13)
1)~11)のいずれか一項に記載のインクセットを用い、インク液滴を、インクジェットプリンタにより疎水性繊維に付着させる工程Aと、工程Aにより付着させた前記インク液滴中の着色剤を熱により繊維に固着させる工程Bと、繊維中に残存する未固着の着色剤を洗浄する工程Cと、を含む疎水性繊維の捺染方法。
14)
1)~11)のいずれか一項に記載のインクセットを用い、インク液滴を、インクジェットプリンタにより中間記録媒体に付着させて記録画像を得た後、該中間記録媒体における、前記インク液滴の付着面に疎水性繊維を接触させ、熱処理することにより該記録画像を疎水性繊維に転写する、疎水性繊維の捺染方法。
15)
1種類以上の糊剤、アルカリ性物質、還元防止剤及びヒドロトロピー剤を少なくとも含む水溶液を、インクを付着させる前の繊維に付与する、繊維の前処理工程をさらに含む13)又は14)に記載の疎水性繊維の捺染方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の捺染用インクセット及びそれを用いた繊維の捺染方法により、色再現域が良好な捺染用のインクセットを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】各実施例で得られた各パッチを用い、疎水性繊維上に転写された染色物を測色して得られたa*b*を、XY座標にプロットし、隣り合うデータ同士を結んだ図である。
図2】各比較例で得られた各パッチを用い、疎水性繊維上に転写された染色物を測色して得られたa*b*を、XY座標にプロットし、隣り合うデータ同士を結んだ図である。
図3図1及び図2のデータのうち、各実施例と比較例1のデータをそれぞれ重ね合わせた図である。それぞれの実施例を実線で示し、比較例1を破線で示した。
図4図1及び図2のデータのうち、各実施例と比較例2のデータをそれぞれ重ね合わせた図である。それぞれの実施例を実線で示し、比較例2を破線で示した。
図5図1及び図2のデータのうち、各実施例と比較例3のデータをそれぞれ重ね合わせた図である。それぞれの実施例を実線で示し、比較例3を破線で示した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「C.I.」とは、「カラーインデックス」を表わす。また、特に断りのない限り、実施例等を含めて「%」及び「部」については、いずれも質量基準で記載する。
【0014】
本願発明は、それぞれ、水不溶性の着色剤及び水を含有する、シアンインク及びバイオレットインクを含むインクセットであって、該シアンインクが、上記式(1)で表される化合物を水不溶性の着色剤として少なくとも含み、該バイオレットインクが、C.I.ディスパースバイオレット 27、C.I.ディスパースバイオレット 28からなる群から選択されるいずれか少なくとも1種を水不溶性の着色剤として含むインクセットに関する。
なお、各インクにおいて、水不溶性の着色剤(染料)の含有量は2~11質量%の範囲が好ましく、3~8質量%の範囲がさらに好ましい。
【0015】
上記シアンインクは、上記式(1)で表される化合物を水不溶性の着色剤として少なくとも含む。上記式(1)で表される化合物において、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又はC1-C4アルキル基を表し、R、R及びRの少なくとも2つがC1-C4アルキル基であり、R、R及びRの炭素数の合計は4~12であり、Xは酸素原子、又はイミノ基を表わす。上記式(1)で表される化合物におけるR、R及びRのいずれか2つがC1-C4アルキル基であり、他の1つが水素原子であることが好ましく、上記式(1)で表される化合物におけるR、R及びRのいずれか2つがエチル基であり、他の1つが水素原子であることがさらに好ましい。
【0016】
上記C1-C4アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、iso-ブチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基等が挙げられる。上記イミノ基としては、-NH-、-N(CH)-、等が挙げられる。
【0017】
上記バイオレットインクは、C.I.ディスパースバイオレット 27、C.I.ディスパースバイオレット 28からなる群から選択されるいずれか少なくとも1種を水不溶性の着色剤として含み、それぞれ単独又は複数を混合して用いても良く、C.I.ディスパースバイオレット 27、C.I.ディスパースバイオレット 28をそれぞれ単独で着色剤として含むことが好ましい。
【0018】
上記インクセットは、さらにイエローインク1種を少なくとも含むことが可能である。
イエローインクに含まれる染料としては、例えば、C.I.ディスパースイエロー、C.I.ディスパースオレンジ、C.I.ソルベントイエロー、及び、C.I.ソルベントオレンジから選択される染料が好ましい。その具体例としては、例えば、C.I.ディスパースイエロー 1~10、11:1、12~17、19~28、31~35、38、39、42~44、47、49~51、54、56~184、184:1、185~232、234~243、245~256;C.I.ソルベントイエロー 1~3、3:1、4~24、25:1、25~30、30:1、31~43、44:1、44~52、55~62、64、65、68~74、76~82、83:1、83~91、93~126、128~141、143~160、160:1、161~165、167~196、199;C.I.ディスパースオレンジ1、1:1、2、3、3:1、5~24、25:1、25、27~41、41:1、42~58、60~91、93、94、96~98、100~143、145~151、153~158;C.I.ソルベントオレンジ 1~6、7:1、7~36、37:1、37~40、40:1、41、43~66、68~77、79~87、90~99、101~116が挙げられ、C.I.ディスパースイエロー 54を含むことが好ましい。
【0019】
上記インクセットは、さらにマゼンタインク1種を少なくとも含むことが可能である。
マゼンタインクに含まれる染料としては、例えば、C.I.ディスパースレッド、C.I.ソルベントレッド、及びC.I.バットレッドから選択される染料が好ましい。その具体例としては、例えば、C.I.ディスパースレッド 1~5、5:1、6~13、15~29、30:1、30~36、38、40、41、43、43:1、46、48、50、52~54、54:1、55:1、55、56、58~61、63~65、69、70、72~74、74:1、75~78、80~82、84~86、86:1、87、88、90~94、96~98、100、102~111、113、115~118、120~123、125~146、148~167、167:1、168~190、190:1、191、191:1、192~211、214~222、224~272、274~302、302:1、303~336、338~350、352~354、356~364、366~386、388、391、392;C.I.ソルベントレッド 1~24、24:1、25~27、29~36、36:1、37~49、49:1、50~83、83:1、84:1、84~87、89、90:1、90~92、96~100、102、103、105、106、108~119、122~142、144~146、148~151、153~157、160、161、163、164、164:1、164:2、165~191、194~237、241~252、254;C.I.バットレッド 1、2、4~6、8~26、28~56、60、61等が挙げられ、C.I.ディスパースレッド 60を含むことが好ましい。
【0020】
上記インクセットは、さらに第2のシアンインク1種を少なくとも含むことが可能である。第2のシアンインクに含まれる染料としては、上記シアンインクに含まれる式(1)以外の染料であり、例えば、C.I.ディスパースブルー、C.I.ソルベントブルーから選択される染料が好ましい。その具体例としては、例えば、C.I.ディスパースブルー 1、1:1、2、3、3:1、4~6、7、8、9:1、9~13、13:1、14、15~18、19、20、21、22、23、24、26、26:1、27、28~30、31、32~34、35、36、38、40、42~45、47~49、51、52、53、54、55、56、58、60:1、60~62、64:1、64、65、68、70、72:1、72、73、75、76、77、79、79:1、79:2、79:3、80、81:1、81~83、84、85:1、85、86、87:1、87、88~93、94、95、96~98、100、101、102、103~105、106、106:1、107、108、109、111~117、118、119、121~123、124、125~128、130、131、132、133、134、136~144、145、146、147、148~150、151~156、158、159~164、165:1、165:2、165:3、166~171、173~177、179、180、180:1、181、182、183:1、183、184~190、191~194、196~256、257~270、271、272~279、280、280:1、281、282、283、284、285~290、291、292、293、294、295~298、299~314、315~321、322、323~333、334、335、336、337、338、339、340~343、344、345、346、347、349~352、353、354、355、356、358、359、360~363、364~366、367~371、372、373、374、375~383、385~387;C.I.ソルベントブルー 1、2、3~7、8~10、11、12、13~15、16、17、18、19~24、25、26、27、28、30、31、32、33、34~38、39、40~45、46、48、49、50、51、52~55、56~59、59:1、63、64、65、66、67~70、71、72、74~76、78、79、80、81、82~87、88~93、94、95、96、97~102、103、104~115、116、117、118、119、120、121、122~124、125~127、128、129、130~133、134~136、137、138、139、141、142、143~145、146、147、148、266等が挙げられ、C.I.ディスパースブルー 359を含むことが好ましい。
【0021】
上記インクセットは、さらにオレンジインク1種を少なくとも含むことが可能である。
オレンジインクに含まれる染料としては、上記イエローインクに含まれる染料として挙げた、C.I.ディスパースオレンジ、及びC.I.ソルベントオレンジと同じものが挙げられ、C.I.ディスパースオレンジ 25を含むことが好ましい。
【0022】
上記インクセットは、上記インクに各々対応する低濃度インクの一部あるいは全部を、さらに含んでいても良い。該低濃度インク中における染料含有量は、対応する上記各インクより低く設定される。
【0023】
上記インクセットは、上記各インク以外に、さらに他のインクをセットとして追加することも可能である。
【0024】
上記各インクは、それぞれ、水と、必要に応じて有機溶剤と、を含有する水系インクとすることも、あるいは実質的に水を含有しないインク、すなわち溶剤インクとすることもできる。本明細書において、「実質的に水を含有しないインク」とは、意図的に水を加えないインクを表わす。
なお、各インクにおいて、水の含有量は、40~70質量%の範囲が好ましい。
【0025】
上記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1-C4アルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン又は1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の複素環式ケトン;アセトン、メチルエチルケトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール等のC2-C6アルキレン単位を有するジ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のポリオール(好ましくはトリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1-C4モノアルキルエーテル;γ-ブチロラクトン;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。また、水に対して高い溶解性を示す水溶性有機溶剤として、ジオール、C2-C6アルキレン単位を有するジ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール、及び複素環式ケトンから選択される有機溶剤が挙げられる。それらの中ではアルコール性水酸基を2つ~3つ有するC2-C6アルコール;ジ又はトリC2-C3アルキレングリコール;及び、繰り返し単位が4以上で、分子量20,000程度以下のポリC2-C3アルキレングリコール(好ましくは液状のポリアルキレングリコール)等が好ましい。それらの具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン等のアルコール性水酸基を2つ~3つ有するC2-C6アルコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ又はトリC2-C3アルキレングリコール;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等の複素環式ケトンが挙げられる。
また、水に溶解して湿潤剤としての役割をする化合物等も、便宜上本発明では水溶性有機溶剤に含めるものとし、例えば尿素、エチレン尿素及び糖類等が挙げられる。
【0026】
上記各インクが、水系インクである場合、インクの総質量に対する有機溶剤の含有量は、通常0%~60%、好ましくは5%~50%である。
一方、上記各インクが溶剤インクである場合、上記水不溶性の着色剤、及び、必要に応じてインク中に添加する、後述するインク調製剤以外の残部は有機溶剤である。上記インクセットに含まれるインクは、水系インクであることが好ましい。
【0027】
上記水系インクは、さらに分散剤を含むことが好ましい。また、その場合に用いる有機溶剤は、上記水溶性有機溶剤であることが好ましい。上記分散剤は、1種類を使用することも、2種類以上を併用することもできる。また、上記シアンインクに含まれる、式(1)で表される化合物、上記バイオレットインクに含まれる、C.I.ディスパースバイオレット 27、C.I.ディスパースバイオレット 28、及び、上記インクセットに含んでも良い上記各インクに含まれる、各染料の一部又は全てを分散剤で被覆することもできる。
【0028】
上記分散剤としては、例えば、ノニオン分散剤、アニオン分散剤、高分子分散剤等が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。分散剤の使用量は、固形分換算で、式(1)で表される化合物の総質量に対して通常1%~100%、好ましくは5%~90%、より好ましくは10%~80%で設定可能である。
【0029】
上記ノニオン分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン-β-ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0030】
上記アニオン分散剤としては、例えば、高分子スルホン酸、好ましくは芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、若しくはそれらの混合物(以下、特に断りの無い限り「スルホン酸のホルマリン縮合物」と記載したときは、「その塩、若しくはそれらの混合物」も含む意味を有する)等が好ましい。「その塩」としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等の塩が挙げられる。上記芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物としては、例えば、クレオソート油スルホン酸;クレゾールスルホン酸;フェノールスルホン酸;β-ナフタレンスルホン酸;β-ナフトールスルホン酸;β-ナフタリンスルホン酸とβ-ナフトールスルホン酸;ベンゼンスルホン酸;クレゾールスルホン酸と2-ナフトール-6-スルホン酸;リグニンスルホン酸;等のホルマリン縮合物が挙げられる。これらの中では、クレオソート油スルホン酸;β-ナフタレンスルホン酸;リグニンスルホン酸の、各ホルマリン縮合物が好ましい。該アニオン分散剤は、例えば、デモール N、デモール C、デモールSN-B(花王株式会社製);ラベリン Wシリーズ、ラベリン ANシリーズ(第一工業製薬株式会社製);バニレックス N、バニレックス RN、バニレックス G、パールレックス DP(日本製紙株式会社製)等として入手することができる。
【0031】
上記高分子分散剤としては、例えば、スチレン及びその誘導体(好ましくはスチレン及びα-メチルスチレンから選択される単量体);ビニルナフタレン及びその誘導体;α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等;(メタ)アクリル酸及びその誘導体;マレイン酸及びその誘導体;イタコン酸及びその誘導体;フマール酸及びその誘導体;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体よりなる群等の単量体から選択される、少なくとも2つの単量体(好ましくは、このうち少なくとも1つが親水性の単量体)からなる共重合体、及び/又はそれらの塩等が挙げられる。共重合体としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体等が挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸及びアクリル酸の両方を表わす。これらの中では、スチレン及びその誘導体、及び(メタ)アクリル酸及びその誘導体から選択される、少なくとも2つの単量体からなる共重合体が好ましい。該高分子分散剤の具体例としては、例えば、BASF社製のジョンクリルシリーズが好ましく、例えば、ジョンクリル 67、68、586、611、678、680、682、683、690等が挙げられ、ジョンクリル 68、678、682、683、690が特に好ましい。
【0032】
上記各インクは、それぞれ、さらにインク調製剤を含んでいても良い。インク調製剤としては、例えば、界面活性剤、防腐防黴剤、及びpH調整剤等が挙げられる。該インク調製剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で添加することができ、インク調製剤の含有量は合計で、インクの総質量に対して通常0~25%、好ましくは0.01~20%である。
【0033】
上記界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0034】
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N-アシル-N-メチルグリシン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。該アニオン界面活性剤は、株式会社アデカ製のアデカコールシリーズ(EC-8600等)、第一工業製薬株式会社製のハイテノールシリーズ(NE-15等)、花王株式会社製のペレックスシリーズ(OT-P等)等として入手できる。
【0035】
上記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。該ノニオン界面活性剤は、三洋化成工業株式会社製のニューポールシリーズ(PE-62等)、日信化学工業株式会社製のオルフィンシリーズ(E1004、E1010等)、エアープロダクツジャパン株式会社製のサーフィノールシリーズ(420、440、465等)、株式会社日本触媒製のソフタノールシリーズ(EP5035等)、花王株式会社製のエマルゲンシリーズ(911、A-60等)等として入手できる。
【0036】
上記カチオン界面活性剤としては、例えば、2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0037】
上記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0038】
上記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン-1-オキサイド、ジンクピリジンチオン-1-オキサイド、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、1-ベンズイソチアゾリン-3-オンのアミン塩、アーチケミカルズ社製またはロンザ社製のプロキセル GXL、TROY社のMERGAL K-20、ダウ社のDOW ROCIMA 640等が挙げられる。
【0039】
上記pH調整剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ類;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の3級アミン類等が挙げられる。
【0040】
上記各インクは、各々染料を含む分散液を作製し、該分散液を用いてインクを作製することができる。
【0041】
上記式(1)で表される化合物を水不溶性の着色剤として少なくとも含むシアンインクを得る目的で作製する分散液(好ましくは水性分散液)の調製方法としては、公知の方法が使用できる。その一例としては、式(1)で表される化合物と分散剤を混合し、サンドミル(ビーズミルともいう)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いて分散処理を行う方法が挙げられる。これらの中ではサンドミルが好ましい。サンドミルを用いた分散液の調製は、0.01mm~1mm径程度のビーズを使用するのが好ましい。また、分散液の調製において、ビーズの充填率を大きくすること等により、分散の効率を高めることができる。分散処理を行った後に、濾過及び/又は遠心分離等により、ビーズ及び夾雑物等の除去を行う。このとき、目的とする平均粒径よりも巨大な粒子を除去することも好ましく行われる。このような粒子を除去することにより、得られるシアンインクのプリンタヘッド目詰まりを防止することができる。また、分散液の調製中に泡立ちが生じるときは、公知のシリコーン系、アセチレングリコール系等の消泡剤を極微量加えることができる。消泡剤としては、例えば、日信化学工業株式会社製のオルフィンシリーズ(SK-14等);エアープロダクツジャパン株式会社製のサーフィノールシリーズ(104、DF-110D等)等が挙げられる。
【0042】
上記各インクを調製する方法としては、例えば、上記の水性分散液、水溶性有機溶剤、及び必要に応じてインク調製剤を加えて混合する方法等が挙げられる。これらを混合する順番は特に制限されない。
【0043】
上記各インクの25℃における粘度は、E型粘度計にて測定した場合、2~20mPa・s程度が好ましい。また表面張力は、プレート法にて測定した場合、20~45mN/m程度が好ましく、該設定のインクとすることにより、例えば、産業用インクジェットプリンタを用いる等の高速記録時の、吐出応答性を良好とすることができる。
【0044】
上記各インクは、必要に応じてメンブランフィルター、ガラス濾紙等を用いて精密濾過し、夾雑物等を除去することができる。精密濾過を行う場合、フィルター等の孔径は通常0.5μm~20μm、好ましくは0.5μm~10μm程度である。また、上記の分散処理を行った後の濾過も、これらの濾過と同様に行うことができる。
【0045】
上記インクセットを用い、捺染した繊維も本願発明に含まれる。
【0046】
上記疎水性繊維としては、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維、ポリアミド繊維、及びこれらの繊維を2種類以上用いた混紡繊維等が挙げられる。また、これらとレーヨン等の再生繊維、木綿、絹、羊毛等の天然繊維との混紡繊維も、それらの混紡繊維が疎水性繊維を含有する限り、本明細書においては疎水性繊維に含まれる。該疎水性繊維としては、インク受容層(滲み防止層)を有するものも知られており、本明細書における疎水性繊維に含まれる。上記インク受容層の形成方法は公知であり、インク受容層を有する繊維も市販品として入手できる。インク受容層の材質や構造等は、特に限定されず、目的等に応じて適宜選択することができる。
【0047】
上記インクセットを用い、インク液滴を、インクジェットプリンタにより疎水性繊維に付着させる工程Aと、工程Aにより付着させたインク液滴中の着色剤を熱により繊維に固着させる公知のスチーミング又はベーキングの工程Bと、繊維中に残存する未固着の着色剤を洗浄する工程Cと、を含む疎水性繊維の捺染方法も本願発明に含まれる。スチーミングとしては、例えば、高温スチーマーで通常170~180℃で10分程度;また、高圧スチーマーで通常120~130℃で20分程度の各条件で繊維を処理する方法が挙げられる。ベーキング(サーモゾル)としては、例えば通常190℃~210℃で60秒~120秒程度の条件で繊維を処理する方法が挙げられる。上記のようにして得られる捺染された繊維は、温水、及び必要に応じて水で洗浄し、固着していない染料を除去することができる。洗浄に使用する温水や水は、界面活性剤を含んでもよい。洗浄後の繊維を、通常50~120℃で、5~30分乾燥することも好ましく行われる。
【0048】
上記インクセットを用い、インク液滴を、インクジェットプリンタにより中間記録媒体に付着させて記録画像を得た後、該中間記録媒体における、前記インク液滴の付着面に疎水性繊維を接触させ、通常170~220℃の範囲で熱処理することにより該記録画像を疎水性繊維に転写する、疎水性繊維の捺染方法も本願発明に含まれる。
【0049】
上記中間記録媒体としては、中間記録媒体に付着したインク中の着色剤が、その表面で凝集せず、且つ記録メディアへ記録画像の転写を行う際、着色剤の昇華を妨害しないものが好ましい。該中間記録媒体の一例としては、インク受容層を有する紙が挙げられ、例えば、インクジェット専用紙等を用いることができる。
【0050】
上記疎水性繊維の捺染方法において、1種類以上の糊剤、アルカリ性物質、還元防止剤及びヒドロトロピー剤を少なくとも含む水溶液を、インクを付着させる前の繊維に付与する、繊維の前処理工程をさらに含む方法も本願発明に含まれる。糊剤としては、グアー、ローカストビーン等の天然ガム類、澱粉類、アルギン酸ソーダ、ふのり等の海藻類、ペクチン酸等の植物皮類、メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体、カルボキシメチル澱粉等の加工澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊等が挙げられる。アルカリ性物質としては、例えば無機酸又は有機酸のアルカリ金属塩;アルカリ土類金属の塩;及び、加熱した際にアルカリを遊離する化合物から選択される物質が挙げられる。その具体例としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム等の無機化合物のアルカリ金属塩;蟻酸ナトリウム、トリクロル酢酸ナトリウム等の有機化合物のアルカリ金属塩等が挙げられる。還元防止剤としては、メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。上記ヒドロトロピー剤としては、尿素、ジメチル尿素等の尿素類等が挙げられる。上記の糊剤、アルカリ性物質、還元防止剤、及びヒドロトロピー剤は、いずれも単一の化合物を使用することができる。また、それぞれ複数の化合物を併用することもできる。前処理液の総質量に対する前処理剤の含有量は、例えば、糊剤が0.5%~5%、アルカリ性物質が0.5%~5%、還元防止剤が0%~5%、ヒドロトロピー剤が1%~20%、残部が水である。前処理は、糊剤、アルカリ性物質、還元防止剤、及びヒドロトロピー剤等の前処理剤を含有する液を前処理液とし、繊維に含浸、塗布、及びインクジェット記録等から選択される方法で付与するのが好ましい。具体例としては、例えば、パディング法が挙げられる。パディングの絞り率は40~90%程度が好ましく、より好ましくは60~80%程度である。
【0051】
本発明により、色糊等を用いる従来の捺染方法のように染料の種類や数を無制限に使用せずとも、色再現範囲を拡大することができる。また、本発明のインクセットは発色性に優れる。更には、耐光性、耐擦性、耐ガス性、耐塩素性、耐汗性、洗濯堅牢度等の、各種の堅牢性にも優れ、特に耐光性については従来のインクジェットインクのインクセットよりも優れる。
【実施例
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例により限定されるものではない。実施例中で使用した「水」は、特に断りのない限り「イオン交換水」である。
【0053】
[合成例1]
[下記式(1-1)で表される化合物の合成]
スルホラン75部中に、1,4-ジアミノ-2,3-アンスラキノンジカルボキシイミド 3部、3-アミノペンタン 25部を加えて液を得た。得られた液をオートクレーブ中で140℃に加熱し、6時間反応させた後、室温まで冷却して液を得た。得られた液から析出した固体を濾過分離し、メタノール100部、水200部で洗浄した後、乾燥することにより、下記式(1-1)で表される化合物3.1部を得た。
【0054】
【化2】
【0055】
[合成例2]
[下記式(1-2)で表される化合物の合成]
スルホラン75部中に、1,4-ジアミノ-2,3-アンスラキノンジカルボキシイミド 3.0部、2-アミノペンタン 25部を加えて液を得た。得られた液をオートクレーブ中で140℃に加熱し、6時間反応させた後、室温まで冷却して液を得た。得られた液から析出した固体を濾過分離し、メタノール100部、水200部で洗浄した後、乾燥することにより、下記式(1-2)で表される化合物2.9部を得た。
【0056】
【化3】
【0057】
[エマルション液の調製]
[調製例1]
48%水酸化ナトリウム 3.2部、イオン交換水 56.8部、プロピレングリコール 20部へJoncryl 678(BASF社製) 20部を投入し、90-120℃に昇温して5時間撹拌することにより、Joncryl 678のエマルション液を得た。
【0058】
[水性分散液の調製]
[調製例2]
昇華性染料としてC.I.ディスパースイエロー 54 30部、上記Joncryl 678のエマルション液 60部、プロキセルGXL 0.2部(ロンザ社製)、サーフィノール 104PG50 0.4部(エアープロダクツジャパン株式会社社製)、イオン交換水 24部からなる混合物を、0.2mm径ガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散化処理を行った。得られた液にイオン交換水 60部、Joncryl 678のエマルション液 30部を加えて染料含有量を15%に調整した後、ガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径 0.5μm)で濾過することにより水性分散液1を得た。
【0059】
[調製例3]
昇華性染料としてC.I.ディスパースレッド 60 30部、上記Joncryl 678のエマルション液 60部、プロキセルGXL 0.2部(ロンザ社製)、サーフィノール 104PG50 0.4部(エアープロダクツジャパン株式会社社製)、イオン交換水 24部からなる混合物を、0.2mm径ガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散化処理を行った。得られた液にイオン交換水 60部、Joncryl 678のエマルション液 30部を加えて染料含有量を15%に調整した後、ガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径0.5μm)で濾過することにより水性分散液2を得た。
【0060】
[調製例4]
昇華性染料としてC.I.ディスパースバイオレット 27 30部、上記Joncryl 678のエマルション液 60部、プロキセルGXL 0.2部(ロンザ社製)、サーフィノール 104PG50 0.4部(エアープロダクツジャパン株式会社社製)、イオン交換水 24部からなる混合物を、0.2mm径ガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散化処理を行った。得られた液にイオン交換水 60部、Joncryl 678のエマルション液 30部を加えて染料含有量を15%に調整した後、ガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径0.5μm)で濾過することにより水性分散液3を得た。
【0061】
[調製例5]
昇華性染料としてC.I.ディスパースブルー 359 30部、上記Joncryl 678のエマルション液 60部、プロキセルGXL 0.2部(ロンザ社製)、サーフィノール 104PG50 0.4部(エアープロダクツジャパン株式会社社製)、イオン交換水 24部からなる混合物を、0.2mm径ガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散化処理を行った。得られた液にイオン交換水 60部、Joncryl 678のエマルション液 30部を加えて染料含有量を15%に調整した後、ガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径0.5μm)で濾過することにより水性分散液4を得た。
【0062】
[調製例6]
昇華性染料として式(1-1)化合物 30部、上記Joncryl 678のエマルション液 60部、プロキセルGXL 0.2部(ロンザ社製)、サーフィノール 104PG50 0.4部(エアープロダクツジャパン株式会社社製)、イオン交換水 24部からなる混合物を、0.2mm径ガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散化処理を行った。得られた液にイオン交換水 60部、Joncryl 678のエマルション液 30部を加えて染料含有量を15%に調整した後、ガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径0.5μm)で濾過することにより水性分散液5を得た。
【0063】
[調製例7]
昇華性染料としてC.I.ディスパースオレンジ 25 30部、上記Joncryl 678のエマルション液 60部、プロキセルGXL 0.2部(ロンザ社製)、サーフィノール 104PG50 0.4部(エアープロダクツジャパン株式会社社製)、イオン交換水 24部からなる混合物を、0.2mm径ガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散化処理を行った。得られた液にイオン交換水 60部、Joncryl 678のエマルション液 30部を加えて染料含有量を15%に調整した後、ガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径0.5μm)で濾過することにより水性分散液6を得た。
【0064】
[調製例8]
昇華性染料としてC.I.ディスパースバイオレット 28 30部、上記Joncryl 678のエマルション液 60部、プロキセルGXL 0.2部(ロンザ社製)、サーフィノール 104PG50 0.4部(エアープロダクツジャパン株式会社社製)、イオン交換水 24部からなる混合物を、0.2mm径ガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散化処理を行った。得られた液にイオン交換水 60部、Joncryl 678のエマルション液 30部を加えて染料含有量を15%に調整した後、ガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径0.5μm)で濾過することにより水性分散液7を得た。
【0065】
[水性インクの調製]
[調製例9]
上記水性分散液1 40部、グリセリン 15部、プロピレングリコール 5部及びプロキセルGXL(ロンザ社製)、サーフィノール 465(日信化学工業社製)、TEA-80(純正化学株式会社製)、イオン交換水の混合液を、それぞれインクとして表1の組成となるように加えて撹拌した後、5μmのフィルターにより濾過して、水性インク1を得た。
【0066】
[調製例10]
上記水性分散液2 40部、グリセリン 15部、プロピレングリコール 5部及びプロキセルGXL(ロンザ社製)、サーフィノール 465(日信化学工業社製)、TEA-80(純正化学株式会社製)、イオン交換水の混合液を、それぞれインクとして表1の組成となるように加えて撹拌した後、5μmのフィルターにより濾過して、水性インク2を得た。
【0067】
[調製例11]
上記水性分散液3 40部、グリセリン 15部、プロピレングリコール 5部及びプロキセルGXL(ロンザ社製)、サーフィノール 465(日信化学工業社製)、TEA-80(純正化学株式会社製)、イオン交換水の混合液を、それぞれインクとして表1の組成となるように加えて撹拌した後、5μmのフィルターにより濾過して、水性インク3を得た。
【0068】
[調製例12]
上記水性分散液4 40部、グリセリン 15部、プロピレングリコール 5部及びプロキセルGXL(ロンザ社製)、サーフィノール 465(日信化学工業社製)、TEA-80(純正化学株式会社製)、イオン交換水の混合液を、それぞれインクとして表1の組成となるように加えて撹拌した後、5μmのフィルターにより濾過して、水性インク4を得た。
【0069】
[調製例13]
上記水性分散液5 40部、グリセリン 15部、プロピレングリコール 5部及びプロキセルGXL(ロンザ社製)、サーフィノール 465(日信化学工業社製)、TEA-80(純正化学株式会社製)、イオン交換水の混合液を、それぞれインクとして表1の組成となるように加えて撹拌した後、5μmのフィルターにより濾過して、水性インク5を得た。
【0070】
[調製例14]
上記水性分散液6 40部、グリセリン 15部、プロピレングリコール 5部及びプロキセルGXL(ロンザ社製)、サーフィノール 465(日信化学工業社製)、TEA-80(純正化学株式会社製)、イオン交換水の混合液を、それぞれインクとして表1の組成となるように加えて撹拌した後、5μmのフィルターにより濾過して、水性インク6を得た。
【0071】
[調製例15]
上記水性分散液7 40部、グリセリン 15部、プロピレングリコール 5部及びプロキセルGXL(ロンザ社製)、サーフィノール 465(日信化学工業社製)、TEA-80(純正化学株式会社製)、イオン交換水の混合液を、それぞれインクとして表1の組成となるように加えて撹拌した後、5μmのフィルターにより濾過して、水性インク7を得た。
【0072】
[調製例16]
上記水性分散液3 20部、上記水性分散液7 20部、グリセリン 15部、プロピレングリコール 5部及びプロキセルGXL(ロンザ社製)、サーフィノール 465(日信化学工業社製)、TEA-80(純正化学株式会社製)、イオン交換水の混合液を、それぞれインクとして表1の組成となるように加えて撹拌した後、5μmのフィルターにより濾過して、水性インク8を得た。
【0073】
上記調製例9~16について、組成分を下記表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
[染布の調製]
上記各水性インクを下記表3のとおりに組み合わせ、実施例1~7及び比較例1~3のインクセットとした。
【0076】
[実施例1]
上記調製例で得た各水性インクのうち、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク2をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA1-1]、
水性インク2をマゼンタカートリッジ、水性インク3をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA1-2]、
水性インク3をマゼンタカートリッジ、水性インク5をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA1-3]、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク5をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA1-4]、
の各2色のインクセット組み合せを用い、各々インクセットによる階調(印字濃度)パターン同士を組み合わせたマトリックスとなるように、中間記録媒体である昇華転写紙(転写紙IJ-SPF62、三菱製紙株式会社製)に対して、インクジェットプリンタPX-205(セイコーエプソン社製)にて印字し、得られた転写紙のインクの付与面をポリエステル布(トロピカル、帝人株式会社製)と重ね合わせた。上記4つの組み合せにおいて、各々2種の水性インクをそれぞれ、100/0、100/10、100/20、100/30、100/40、100/50、100/60、100/70、100/80、100/90、100/100、90/100、80/100、70/100、60/100、50/100、40/100、30/100、20/100、10/100、0/100の諧調パターンとなるような、合計21パッチを作製し、該パッチの色域評価を行った。例えば、水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク2をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ(上記[組み合せA1-1])の場合の各パッチと、水性インク1と水性インク2の諧調パターンの関係を下記表2のとおりとなる。
【0077】
【表2】
【0078】
上記[組み合せA1-1]と同様に、[組み合せA1-2]~[組み合せA1-4]についても各々パッチを作製、色域評価することにより、合計4色のインクセットの評価とし、図1に記載のデータを得た。各々印字を行ったパッチ(転写紙)/ポリエステル布を、熱プレス機(AF-65TEN、アサヒ繊維機械株式会社製)を用いて200℃×30秒の条件にて熱処理することにより、転写紙からポリエステル布へ昇華転写を行い、染色された各染布を得た。得られた各染布を試験染布とし、下記する評価試験を行った。
【0079】
[実施例2]
上記調製例で得た各水性インクのうち、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク6をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA2-1]、
水性インク2をマゼンタカートリッジ、水性インク3をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA2-2]、
水性インク3をマゼンタカートリッジ、水性インク5をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA2-3]、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク5をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA2-4]、
水性インク6をイエローカートリッジ、水性インク2をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA2-5]、
各2色のセット組み合せを用い、合計5色のインクセットとしたこと以外は、実施例1と同様にし、下記する評価試験を行った。
【0080】
[実施例3]
上記調製例で得た各水性インクのうち、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク2をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA3-1]、
水性インク2をマゼンタカートリッジ、水性インク7をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA3-2]、
水性インク5をシアンカートリッジ、水性インク7をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA3-3]、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク5をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA3-4]、
各2色のセット組み合せを用い、合計4色のインクセットとしたこと以外は、実施例1と同様にし、下記する評価試験を行った。
【0081】
[実施例4]
上記調製例で得た各水性インクのうち、
水性インク2をマゼンタカートリッジ、水性インク7をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA4-1]、
水性インク5をシアンカートリッジ、水性インク7をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA4-2]、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク5をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA4-3]、
水性インク2をマゼンタカートリッジ、水性インク6をイエローカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA4-4]、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク6をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA4-5]、
各2色のセット組み合せを用い、合計5色のインクセットとしたこと以外は、実施例1と同様にし、下記する評価試験を行った。
【0082】
[実施例5]
上記調製例で得た各水性インクのうち、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク2をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA5-1]、
水性インク2をマゼンタカートリッジ、水性インク8をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA5-2]、
水性インク5をシアンカートリッジ、水性インク8をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA5-3]、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク5をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA5-4]、
各2色のセット組み合せを用い、合計4色のインクセットとしたこと以外は、実施例1と同様にし、下記する評価試験を行った。
【0083】
[実施例6]
上記調製例で得た各水性インクのうち、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク2をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA6-1]、
水性インク2をマゼンタカートリッジ、水性インク7をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA6-2]、
水性インク4をシアンカートリッジ、水性インク7をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA6-3]、
水性インク4をシアンカートリッジ、水性インク5をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA6-4]、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク5をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA6-5]、
各2色のセット組み合せを用い、合計5色のインクセットとしたこと以外は、実施例1と同様にし、下記する評価試験を行った。
【0084】
[実施例7]
上記調製例で得た各水性インクのうち、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク2をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA7-1]、
水性インク2をマゼンタカートリッジ、水性インク7をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA7-2]、
水性インク3をシアンカートリッジ、水性インク7をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA7-3]、
水性インク3をマゼンタカートリッジ、水性インク5をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA7-4]、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク5をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せA7-5]、
各2色のセット組み合せを用い、合計5色のインクセットとしたこと以外は、実施例1と同様にし、下記する評価試験を行った。
【0085】
[比較例1]
上記調製例で得た各水性インクのうち、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク2をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せB1-1]、
水性インク2をマゼンタカートリッジ、水性インク4をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せB1-2]、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク4をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せB1-3]、
各2色のセット組み合せを用い、合計3色のインクセットとしたこと以外は、実施例1と同様にし、下記する評価試験を行った。
【0086】
[比較例2]
上記調製例で得た各水性インクのうち、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク2をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せB2-1]、
水性インク2をマゼンタカートリッジ、水性インク3をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せB2-2]、
水性インク3をマゼンタカートリッジ、水性インク4をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せB2-3]、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク4をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せB2-4]、
各2色のセット組み合せを用い、合計4色のインクセットとしたこと以外は、実施例1と同様にし、下記する評価試験を行った。
【0087】
[比較例3]
上記調製例で得た各水性インクのうち、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク2をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せB3-1]、
水性インク2をマゼンタカートリッジ、水性インク7をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せB3-2]、
水性インク4をシアンカートリッジ、水性インク7をマゼンタカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せB3-3]、
水性インク1をイエローカートリッジ、水性インク4をシアンカートリッジにセットした組み合わせ[組み合せB3-4]、
各2色のセット組み合せを用い、合計4色のインクセットとしたこと以外は、実施例1と同様にし、下記する評価試験を行った。
【0088】
【表3】
【0089】
[染色濃度の評価]
上記実施例及び比較例で各々得られた各染色物の染色部分を、分光光度計「eXact(X-rite社製)」を用いて測色し、a*b*を測定した。測色はD65光源、視野角2°、ステータスIの条件で行った。得られた結果をa*b*座標にプロットし、直線で結んだものを下記図1及び図2に示す。直線で結んだ円の大きさが大きいほど、色の再現域すなわち色域が広いことを表わしている。
【0090】
図3より、実施例1~7は、比較例1と比較し、データを結んだ線により囲まれた線の範囲が広いことが明らかであり、より色域が拡大している。
【0091】
図4より、実施例1~7は、比較例2と比較し、データを結んだ線により囲まれた線の範囲が広いことが明らかであり、より色域が拡大している。
【0092】
図5より、実施例1~7は、比較例3と比較し、データを結んだ線により囲まれた線の範囲が広いことが明らかであり、より色域が拡大している。
【0093】
図3図5より明らかなように、実施例のインクセットであると、ターコイズ領域、バイオレット領域、グリーン領域、オレンジ領域、さらにはブルー領域の色域の拡大も確認された。また、比較例で用いている水性インク4を使用せずに、ブルー領域をカバーすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のインクセットでは、色域の拡大が可能である。したがって、各種の機材、好ましくは繊維、より好ましくはポリエステル繊維、またはポリエステル繊維を含有する混紡繊維の染色に用いるインクセットとして極めて有用である。
図1
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図2
図2-1】
図2-2】
図3
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図4
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図4-6】
図5
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】