(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】オレキシン-2受容体アンタゴニストの調製において有用な方法及び化合物、及び不純物の少ないLemborexant
(51)【国際特許分類】
C07C 67/14 20060101AFI20240517BHJP
C07C 69/635 20060101ALI20240517BHJP
C07C 303/28 20060101ALI20240517BHJP
C07C 309/73 20060101ALI20240517BHJP
C07D 239/34 20060101ALI20240517BHJP
C07D 401/12 20060101ALI20240517BHJP
A61K 31/506 20060101ALN20240517BHJP
A61P 25/20 20060101ALN20240517BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240517BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
C07C67/14
C07C69/635
C07C303/28
C07C309/73
C07D239/34
C07D401/12
A61K31/506
A61P25/20
A61P43/00 111
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021519446
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2020019037
(87)【国際公開番号】W WO2020230800
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2019092254
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019238904
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】阿部 太一
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 一洋
(72)【発明者】
【氏名】渡部 雄造
(72)【発明者】
【氏名】三浦 武史
(72)【発明者】
【氏名】綾田 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】安田 吉徳
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509939(JP,A)
【文献】国際公開第2012/039371(WO,A1)
【文献】J. Med. Chem.,2015年,Vol.58,pp.4648-4664
【文献】Greene's Protective Groups in Organic Synthesis,Fifth Edition,2014年,pp.271-283
【文献】一般合成における保護基―水酸基の保護,有機合成化学,1978年,Vol.36, No.9,pp.715-722
【文献】Tetrahedron Letters,2001年,Vol.42,pp.2357-2360
【文献】Tetrahedron,Vol.61,2005年,pp.4769-4777
【文献】J. Org. Chem.,2008年,Vol.73,pp.7028-7036,Supporting Information S-1-S-16
【文献】Tetrahedron Letters,Vol.31, No.32,1990年,pp.4593-4596
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C C07D
A61K A61P
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIIの化合物
【化1】
を製造する方法であって、
a)式IIの化合物
【化2】
と、トルエン及びテトラヒドロフランを含む混合物に、グリニャール試薬を添加する工程と、
b)アセチルクロリドと酢酸エチルを含む混合物に、前記
a)の工程で得られた混合物を添加する工程
を含む方法。
【請求項2】
グリニャール試薬が、シクロヘキシルマグネシウムクロリドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式Iの化合物
【化3】
と、トルエン、テトラヒドロフラン、水素化ホウ素ナトリウムを含む混合物に、メタノールを添加する工程を含む方法により、式IIの化合物
【化4】
を製造する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式IVの化合物
【化5】
を製造する方法であって、
a)請求項1~3のいずれか一項に記載の方法で式IIIの化合物
【化6】
を製造する工程と、
b)i)式IIIの化合物
【化7】
、トルエン、トリエチルアミン及び1-メチルイミダゾールを含む組成物に、ii)p-トルエンスルホニルクロリド、トルエン及びアセトニトリルの混合物を加える工程を含む、方法。
【請求項5】
式Vの化合物
【化8】
を製造する方法であって、
a)i)式VIの化合物、
【化9】
ii)N-メチルピロリドン及び
iii)アセトニトリル
の混合物にカリウム tert-ブトキシドを加えて40~70℃の温度で撹拌する工程と
b)請求項4に記載の方法で式IVの化合物
【化10】
を製造する工程と、
c)前記a)の工程で得られた混合物に
i)式IVの化合物
【化11】
を加えた混合物を40~70℃の温度で撹拌する工程と、を含む方法。
【請求項6】
式VIIの化合物
【化12】
を製造する方法であって、
a)請求項5に記載の方法で式Vの化合物
【化13】
を製造する工程と、
b)式Vの化合物
【化14】
に水酸化ナトリウム水溶液を添加して30~50℃の温度で撹拌する工程を含む方法。
【請求項7】
式IXの化合物
【化15】
を製造する方法であって、
a)請求項6に記載の方法で式VIIの化合物
【化16】
を製造する工程と、
b)式VIIの化合物
【化17】
を酸化剤と反応させる工程を含む方法。
【請求項8】
酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムと亜塩素酸ナトリウムを順次加えることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式IXの化合物
【化18】
を製造する方法であって、
a)請求項6に記載の方法で式VIIの化合物
【化19】
を製造する工程と、
b)式VIIの化合物
【化20】
をb1)次亜塩素酸ナトリウムで酸化して、式VIIIのアルデヒド
【化21】
を製造する工程と、
b2)該アルデヒドを亜塩素酸ナトリウムで酸化する工程とを含む方法。
【請求項10】
工程b1)の前記酸化が、有効量の2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)で触媒される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式XIの化合物
【化22】
を製造する方法であって、
a)請求項7~10のいずれか一項に記載の方法で式IXの化合物
【化23】
を製造する工程と、
b)i)式IXの化合物
【化24】
ii)式Xの化合物
【化25】
iii)酢酸エチル
iv)N,N-ジイソプロピルエチルアミン及び
v)1-プロパンホスホン酸
の混合物を、60~80℃の温度で撹拌する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレキシン-2受容体アンタゴニストとして有用なLemborexantの調製に有用である化合物及び方法に関する。さらに、本発明は、不純物の少ないLemborexantに関する。
【背景技術】
【0002】
オレキシン受容体は、脳内で支配的に見られるGタンパク質共役受容体である。それらの内在性リガンド、オレキシン-A及びオレキシン-Bは、視床下部に局在化するニューロンによって発現される。オレキシン-Aは33個のアミノ酸のペプチドであり;オレキシン-Bは28個のアミノ酸からなる(Sakurai T.ら、Cell、1998年、92巻、573~585頁)。オレキシン受容体には2つのサブタイプ、OX1及びOX2が存在し;OX1はオレキシン-Aと優先的に結合するが、OX2はオレキシン-Aとオレキシン-Bの両方と結合する。オレキシンはラットにおいて食物消費を刺激し、オレキシンシグナル伝達は摂食行動を調節するための中心的なフィードバック機序において役割を果たすことができると示唆されている(Sakuraiら、上記)。オレキシンが覚醒-睡眠状態を制御することも観察されている(Chemelli R.M.ら、Cell、1999年、98巻、437~451頁)。オレキシンは、オピオイド及びニコチン依存症(S.L.Borglandら、Neuron、2006年、49巻、598~601頁;C.J.Winrowら、Neuropharmacology、2010年、58巻、185~194頁)ならびにエタノール依存症(J.R.Shoblockら、Psychopharmacology、2011年、215巻、191~203頁)に付随する脳変化において役割を果たすこともできる。さらにオレキシンは一部のストレス反応において役割を果たすことが示唆されている(T.Idaら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、2000年、270巻、318~323頁)。
【0003】
(1R,2S)-2-(((2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ)メチル)-2-(3-フルオロフェニル)-N-(5-フルオロピリジン-2-イル)シクロプロパンカルボキサミド(Lemborexant)などの化合物は強力なオレキシン受容体アンタゴニストであることが分かっており、これらは不眠症などの睡眠障害の処置ならびに他の治療用途に有用である。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/039371号
【文献】国際公開第2013/123240号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Sakurai T.ら、Cell、1998年、92巻、573~585頁
【文献】Chemelli R.M.ら、Cell、1999年、98巻、437~451頁
【文献】S.L.Borglandら、Neuron、2006年、49巻、598~601頁
【文献】C.J.Winrowら、Neuropharmacology、2010年、58巻、185~194頁
【文献】J.R.Shoblockら、Psychopharmacology、2011年、215巻、191~203頁
【文献】T.Idaら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、2000年、270巻、318~323頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Lemborexantの製造方法として、特許文献1に記載された方法が知られているが、特許文献1では製造例14の化合物Prep14-2から化合物Prep14-3を経て合成されている。
【化2】
この製造法においては、低収率であることから、上記製造方法を工業的な生産に用いるには課題が残されている。
【0007】
Lemborexantの製造方法として、特許文献2に記載された方法が知られているが、特許文献2では酵素を用いたアセチル化により化合物5から化合物6を経て合成されている。
【化3】
この製造法においては、設備洗浄において酵素の残留を考慮しなければならないことから、上記製造方法を工業的な生産に用いるには課題が残されている。
【0008】
また、Lemborexantの製造において、式VI、式IX、式X、式XII、式XIII、式XIV及び式XVの化合物が不純物として含有されることを、本発明者らは見出した。
【化4】
【0009】
医薬品として有用な、Lemborexantの調製において有用な合成方法及び中間体に対するニーズがある。したがって、本出願の目的は、そうした合成方法及び中間体を提供することである。また、医薬品として有用な、不純物の少ないLemborexantに対するニーズがある。したがって、本出願の目的は、不純物の少ないLemborexantを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書では、オレキシン-2受容体アンタゴニストとして有用なLemborexantの調製に有用である化合物及び方法を提供する。さらに、不純物の少ないLemborexantを提供する。
【0011】
式IIIの化合物
【化5】
を製造する方法であって、
a)式IIの化合物
【化6】
と、トルエン及びテトラヒドロフランを含む混合物に、グリニャール試薬を添加する工程と、
b)アセチルクロリドと酢酸エチルを含む混合物に、前記混合物を添加する工程を含む方法を提供する。
【0012】
一実施形態では、前記グリニャール試薬が、シクロヘキシルマグネシウムクロリドである。
【0013】
式XIの化合物
【化7】
を製造する方法であって、
前記記載の式IIIの化合物の製造工程を含む方法を提供する。
【0014】
前記記載の式XIの化合物を製造する方法であって、
i)式IXの化合物
【化8】
ii)式Xの化合物
【化9】
iii)酢酸エチル
iv)N,N-ジイソプロピルエチルアミン及び
v)1-プロパンホスホン酸
の混合物を、60~80℃の温度で撹拌する工程を含む方法を提供する。
【0015】
前記記載の式IXの化合物
【化10】
を製造する方法であって、
前記記載の式IIIの化合物を製造する工程を含む方法を提供する。
【0016】
前記記載の式IXの化合物
【化11】
を製造する方法であって、
式VIIの化合物
【化12】
を酸化剤と反応させる工程を含む方法を提供する。
【0017】
一実施形態では、前記酸化剤と反応させる工程が、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムと亜塩素酸ナトリウムを順次加えて実施する。
【0018】
前記記載の式IXの化合物
【化13】
を製造する方法であって、
式VIIの化合物
【化14】
をa)次亜塩素酸ナトリウムで酸化して、式VIIIのアルデヒド
【化15】
を製造する工程と、
b)該アルデヒドを亜塩素酸ナトリウムで酸化する工程とを含む方法を提供する。
【0019】
一実施形態では、工程a)の前記酸化が、有効量の2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)で触媒される。
【0020】
式VIIの化合物
【化16】
を製造する方法であって、
前記記載の式IIIの化合物の製造工程を含み、
式Vの化合物
【化17】
に水酸化ナトリウム水溶液を添加して30~50℃の温度で撹拌する工程を含む方法を提供する。
【0021】
前記記載の式Vの化合物
【化18】
を製造する方法であって、
a)i)式VIの化合物、
【化19】
ii)N-メチルピロリドン及び
iii)アセトニトリル
の混合物にカリウム tert-ブトキシドを加えて40~70℃の温度で撹拌する工程と
b)前記混合物に
i)式IVの化合物
【化20】
を加えた混合物を40~70℃の温度で撹拌する工程とを含む方法を提供する。
【0022】
前記記載の式IVの化合物
【化21】
を製造する方法であって、
i)前記記載の方法で製造した式IIIの化合物
【化22】
と、トルエン、トリエチルアミン及び1-メチルイミダゾールを含む組成物に、
ii)p-トルエンスルホニルクロリド、トルエン及びアセトニトリルの混合物を加えることを含む方法を提供する。
【0023】
前記記載の式IIの化合物
【化23】
を製造する方法であって、式Iの化合物
【化24】
と、トルエン、テトラヒドロフラン、水素化ホウ素ナトリウムを含む組成物に、メタノールを添加することを含む方法を提供する。
【0024】
式XIIの化合物の含有量が0.10質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化25】
【0025】
式XIIの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0026】
式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV及び式XVの化合物を含む総類縁物質の含有量が1.0質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化26】
【0027】
式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV及び式XVの化合物を含む総類縁物質の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0028】
式XIIの化合物の含有量が0.10質量%以下であり、かつ、式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV及び式XVの化合物を含む総類縁物質の含有量が1.0質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化27】
【0029】
式XIIの化合物、並びに、式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV及び式XVの化合物を含む総類縁物質の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0030】
式VIの化合物の含有量が0.05質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化28】
【0031】
式VIの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0032】
式IXの化合物の含有量が0.05質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化29】
【0033】
式IXの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0034】
式Xの化合物の含有量が0.05質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化30】
【0035】
式Xの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する
【0036】
式XIIIの化合物の含有量が0.05質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化31】
【0037】
式XIIIの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0038】
式XIVの化合物の含有量が0.05質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化32】
【0039】
式XIVの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0040】
式XVの化合物の含有量が0.05質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化33】
【0041】
式XVの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0042】
上記式XIの化合物の含有量が97.0質量%以上である、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0043】
式XIの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0044】
式XIの化合物及び式XIIの化合物を含む化合物であって、式XIの化合物の含有量が97.0質量%以上であり、かつ、式XIIの化合物の含有量が0.10質量%以下である、化合物を提供する。
【化34】
【0045】
式XIの化合物及び式XIIの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の化合物を提供する。
【0046】
式XIの化合物、式XIIの化合物及び式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV及び式XVの化合物を含む総類縁物質を含む化合物であって、式XIの化合物の含有量が97.0質量%以上であり、式XIIの化合物の含有量が0.10質量%以下であり、かつ、式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV及び式XVの化合物を含む総類縁物質の含有量が1.0質量%以下である、化合物を提供する。
【化35】
【0047】
式XIの化合物、式XIIの化合物、並びに、式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV及び式XVの化合物を含む総類縁物質の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の化合物を提供する。
【0048】
式XIの化合物及び式VIの化合物を含む化合物であって、式XIの化合物の含有量が97.0質量%以上であり、かつ、式VIの化合物の含有量が0.05質量%以下である、化合物を提供する。
【化36】
【0049】
式XIの化合物及び式VIの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の化合物を提供する。
【0050】
式XIの化合物及び式IXの化合物を含む化合物であって、式XIの化合物の含有量が97.0質量%以上であり、かつ、式IXの化合物の含有量が0.05質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化37】
【0051】
式XIの化合物及び式IXの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の化合物を提供する。
【0052】
式XIの化合物及び式Xの化合物を含む化合物であって、式XIの化合物の含有量が97.0質量%以上であり、かつ、式Xの化合物の含有量が0.05質量%以下である、化合物を提供する。
【化38】
【0053】
式XIの化合物及び式Xの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の化合物を提供する
【0054】
式XIの化合物及び式XIIIの化合物を含む化合物であって、式XIの化合物の含有量が97.0質量%以上であり、かつ、式XIIIの化合物の含有量が0.05質量%以下である、化合物を提供する。
【化39】
【0055】
式XIの化合物及び式XIIIの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の化合物を提供する。
【0056】
式XIの化合物及び式XIVの化合物を含む化合物であって、式XIの化合物の含有量が97.0質量%以上であり、かつ、XIVの化合物の含有量が0.05質量%以下である、化合物を提供する。
【化40】
【0057】
式XIの化合物及び式XIVの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の化合物を提供する。
【0058】
式XIの化合物及び式XVの化合物を含む化合物であって、式XIの化合物の含有量が97.0質量%以上であり、かつ、式XVの化合物の含有量が0.05質量%以下である、化合物を提供する。
【化41】
【0059】
式XIの化合物及び式XVの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の化合物を提供する。
【発明の効果】
【0060】
本発明は、オレキシン-2受容体アンタゴニストの調製において有用な合成方法及び中間体を提供できる。さらに、本発明は、不純物の少ないLemborexantを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下に、本明細書において記載する記号、用語等の意義を説明し、本明細書を詳細に説明する。
【0062】
本明細書中においては、化合物の構造式が便宜上の式の記載に限定されるものではなく、塩を形成していてもよい。さらに結晶多形が存在することもあるが同様に限定されず、いずれかの単一結晶形又はそれらの混合物であってもよく、無水物以外に水和物や溶媒和物であってもよく、いずれも本発明に包含される。
【0063】
本明細書中において、塩としては、特にことわりが無い限り、具体的には、例えば、ハロゲン化水素酸塩(例えばフッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩など)、無機酸塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩など)などが挙げられる。
【0064】
一実施形態では、本明細書で説明する化合物は塩、例えば薬学的に許容される塩として提供することができる。「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持するが、望ましくない毒物学的作用を付与しない塩である。薬学的に許容される塩の具体的な例には、無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩及びヨウ化水素酸塩など)、有機カルボン酸塩(酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩及びクエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩及びカンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩など)及びアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩及びカルシウム塩など)が含まれる。
【0065】
本発明には、明細書に記載の化合物の同位体標識された化合物及びそれを用いた製造方法も含まれる。同位体標識された化合物は1つ又はそれ以上の原子が自然界に通常見出される原子質量か質量数と異なった原子質量か質量数を有する原子で置き換えられていること以外、明細書に記載の化合物と同一である。本発明の化合物に組み入れることができる同位元素は、例えば、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、塩素、リン、硫黄及びヨウ素の同位元素であり、2H、3H、11C、14C、13N、15O、18F、32P、35S、123I、及び125I等が含まれる。これらの同位元素及び/又は他の同位元素を含む本発明の化合物とその薬剤学的に許容される誘導体(例えば、塩)も本特許請求の範囲に含まれる。
【0066】
本発明の同位体標識化合物、例えば、3H及び/又は14Cなどの放射性同位元素が組み入れられた化合物は医薬及び/又は基質の組織分布アッセイに有用であろう。3Hと14Cはそれらの調製と検出の容易さのため有用と考えられている。同位元素11C及び18FはPET(陽電子放射断層撮影)で有用と考えられており、同位元素125IはSPECT(単光子放出コンピュータ断層撮影)で有用と考えられており、これらの同位元素は脳イメージングですべて有用である。2Hなどのより重い同位元素による置換は、より高い代謝的安定性による生体内半減期を増加又は必要用量の減少等のある種の治療上の利点を生じさせ、それ故に、ある状況下では有用と考えられている。
【0067】
本明細書で表される構造は、その構造のすべての鏡像異性体的、ジアステレオマー的及び幾何学的(又は立体配座的)形態;例えば、各不斉中心についてのR型及びS型配置、(Z)型及び(E)型二重結合異性体ならびに(Z)型及び(E)型配座異性体も含むことを意味する。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学的な異性体ならびに鏡像異性体、ジアステレオマー及び幾何(又は立体配座)混合物は本発明の範囲内である。別段の記述のない限り、本発明の化合物の互変異性形態はすべて本発明の範囲内である。
【0068】
本明細書において「化合物」とは、その化合物を90質量%以上含有し、その製造工程における出発物質又は生じ得る副生物を類縁物質として含み得る化合物をいう。例えば、「式XIの化合物」とは、式XIの化合物を90質量%以上含有し、かつ式VIの化合物、式IXの化合物、式Xの化合物、式XIIの化合物、式XIIIの化合物、式XIVの化合物、式XVの化合物などの各製造工程における出発物質又は生じうる副生物などを含有し得る。したがって、本明細書における「化合物」とは、副生物などを不純物として含み得るものであることから、「組成物」という一面も有する。ここで、式VIの化合物、式IXの化合物、式Xの化合物、式XIIの化合物、式XIIIの化合物、式XIVの化合物、式XVの化合物等の不純物の含量を表す場合には、式XIの化合物の全質量を基準とする。
【0069】
本明細書において「総類縁物質の含量」とは、式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV又は式XVを含む類縁物質の総量(質量%)をいう。
【化42】
【0070】
本明細書では、強力なオレキシン受容体アンタゴニストであることが分かっており、不眠症などの睡眠障害の処置ならびに他の治療上の使用に有用である、(1R,2S)-2-(((2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ)メチル)-2-(3-フルオロフェニル)-N-(5-フルオロピリジン-2-イル)シクロプロパンカルボキサミド(Lemborexant)の調製のために有用な化合物(例えば、中間体化合物)及びその製造方法を提供する。さらに、本明細書では、不純物の少ないLemborexantを提供する。
【化43】
【0071】
式IIIの化合物
【化44】
を製造する方法であって、
a)式IIの化合物
【化45】
と、トルエン及びテトラヒドロフランを含む混合物に、グリニャール試薬を添加する工程と、
b)アセチルクロリドと酢酸エチルを含む混合物に、前記混合物を添加する工程を含む方法を提供する。
【0072】
上記方法において、工程a)は60℃以下で行ってよく、工程b)は20℃以下で行ってよい。
【0073】
一実施形態では、前記グリニャール試薬が、シクロヘキシルマグネシウムクロリドである。
【0074】
式XIの化合物
【化46】
を製造する方法であって、
前記記載の式IIIの化合物の製造工程を含む方法を提供する。
【0075】
前記記載の式XIの化合物を製造する方法であって、
i)式IXの化合物
【化47】
ii)式Xの化合物
【化48】
iii)酢酸エチル
iv)N,N-ジイソプロピルエチルアミン及び
v)1-プロパンホスホン酸
の混合物を、60~80℃の温度で撹拌する工程を含む方法を提供する。
【0076】
上記方法において、反応溶媒は酢酸エチルであってよく、上記混合物を撹拌する工程の温度は70℃であってよい。
【0077】
前記記載の式IXの化合物
【化49】
を製造する方法であって、
前記記載の式IIIの化合物を製造する工程を含む方法を提供する。
【0078】
前記記載の式IXの化合物
【化50】
を製造する方法であって、
式VIIの化合物
【化51】
を酸化剤と反応させる工程を含む方法を提供する。
【0079】
上記方法において、反応溶媒はトルエン及び水の混液であってよく、反応温度は35℃以下であってよい。
【0080】
一実施形態では、前記酸化剤と反応させる工程が、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムと亜塩素酸ナトリウムを順次加えて実施する。
【0081】
前記記載の式IXの化合物
【化52】
を製造する方法であって、
式VIIの化合物
【化53】
をa)次亜塩素酸ナトリウムで酸化して、式VIIIのアルデヒド
【化54】
を製造する工程と、
b)該アルデヒドを亜塩素酸ナトリウムで酸化する工程とを含む方法を提供する。
【0082】
上記方法において、a)工程及びb)工程における反応溶媒はトルエン及び水の混液であってよく、反応温度は25℃以下であってよい。
【0083】
一実施形態では、工程a)の前記酸化が、有効量の2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)で触媒される。
【0084】
式VIIの化合物
【化55】
を製造する方法であって、
前記記載の式IIIの化合物の製造工程を含み、
式Vの化合物
【化56】
に水酸化ナトリウム水溶液を添加して30~50℃の温度で撹拌する工程を含む方法を提供する。
【0085】
上記方法において、反応溶媒は、トルエン、N-メチルピロリドン、アセトニトリル及び水の混液であってよく、反応温度は40℃であってよい。
【0086】
前記記載の式Vの化合物
【化57】
を製造する方法であって、
a)i)式VIの化合物、
【化58】
ii)N-メチルピロリドン
iii)アセトニトリル
の混合物にカリウム tert-ブトキシドを加えて40~70℃の温度で撹拌する工程と
b)前記混合物に
i)式IVの化合物
【化59】
を加えた混合物を40~70℃の温度で撹拌する工程とを含む方法を提供する。
【0087】
上記方法において、a)工程における反応溶媒は、N-メチルピロリドン及びアセトニトリルの混液であってよく、反応温度は50℃であってよく、b)工程における反応溶媒は、トルエン、N-メチルピロリドン及びアセトニトリルの混液であってよく、反応温度は50℃であってよい。
【0088】
前記記載の式IVの化合物
【化60】
を製造する方法であって、
i)前記記載の方法で製造した式IIIの化合物
【化61】
と、トルエン、トリエチルアミン及び1-メチルイミダゾールを含む組成物に、
ii)p-トルエンスルホニルクロリド、トルエン及びアセトニトリルの混合物を加えることを含む方法を提供する。
【0089】
上記方法において、反応溶媒は、トルエン及びアセトニトリルの混液であってよく、反応温度は8℃であってよい。
【0090】
前記記載の式IIの化合物
【化62】
を製造する方法であって、式Iの化合物
【化63】
と、トルエン、テトラヒドロフラン、水素化ホウ素ナトリウムを含む組成物に、メタノールを添加することを含む方法を提供する。
【0091】
上記方法において、反応溶媒は、トルエン、テトラヒドロフラン及びメタノールの混液であってよく、反応温度は50℃以下であってよい。
【0092】
式XIIの化合物の含有量が0.10質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化64】
【0093】
式XIIの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0094】
式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV及び式XVの化合物を含む総類縁物質の含有量が1.0質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化65】
【0095】
式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV及び式XVの化合物を含む総類縁物質の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0096】
式XIIの化合物の含有量が0.10質量%以下であり、式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV及び式XVの化合物を含む総類縁物質の含有量が1.0質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化66】
【0097】
式XIIの化合物、及び、式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV及び式XVの化合物を含む総類縁物質の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0098】
式VIの化合物の含有量が0.05質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化67】
【0099】
式VIの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0100】
式IXの化合物の含有量が0.05質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化68】
【0101】
式IXの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0102】
式Xの化合物の含有量が0.05質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化69】
【0103】
式Xの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0104】
式XIIIの化合物の含有量が0.05質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化70】
【0105】
式XIIIの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0106】
式XIVの化合物の含有量が0.05質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化71】
【0107】
式XIV表される化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0108】
式XVの化合物の含有量が0.05質量%以下である、式XIの化合物を提供する。
【化72】
【0109】
式XVの化合物の含有量が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される、前記記載の式XIの化合物を提供する。
【0110】
上記に挙げられ、本明細書で開示する方法で使用される化合物のいずれも、立体化学的に純粋な形態で提供することができ、これらは本開示に包含されることを理解すべきである。一実施形態では、立体化学的に純粋な化合物は、化合物の1つの立体異性体を約75重量%超及びその化合物の他の立体異性体を約25重量%未満、化合物の1つの立体異性体を約80重量%超及びその化合物の他の立体異性体を約20重量%未満、又は化合物の1つの立体異性体を約85重量%超及びその化合物の他の立体異性体を約15重量%未満、又は化合物の1つの立体異性体を約90重量%超及びその化合物の他の立体異性体を約10重量%未満、又は化合物の1つの立体異性体を約95重量%超及びその化合物の他の立体異性体を約5重量%未満、又は化合物の1つの立体異性体を約97重量%超及びその化合物の他の立体異性体を約3重量%未満、又は化合物の1つの立体異性体を約98重量%超及びその化合物の他の立体異性体を約2重量%未満、有する。一実施形態では、立体化学的に純粋な化合物は化合物の1つの立体異性体を99重量%超及びその化合物の他の立体異性体を1重量%未満、有する。
【0111】
上記したように、一実施形態では、本明細書で説明する化合物は塩、例えば薬学的に許容される塩として提供することができる。
【0112】
ある実施態様により、式XIIの化合物の含量が0.10質量%以下であり、式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV又は式XVの化合物の各含量が0.05%以下であり、式VI、式IX、式X、式XIII、式XIV及び式XVの化合物を含む総類縁物質の含量が1.0質量%以下である、式XIの化合物を製造することができる。
【0113】
ある実施態様により、式XIの化合物の含量は97.0質量%以上、98.0質量%以上又は98.5質量%以上であり、かつ、102.0質量%以下、100.0質量%以下、99.9質量%以下、99.0質量%以下又は98.9質量%以下である、式XIの化合物を製造することができる。ここで、式XIの化合物の含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定される。より具体的には、下記実施例の純度試験の項に記載された条件にてHPLCを行い、クロマトグラム上の式XIの化合物の標準品のピーク面積で検体の式XIの化合物のピーク面積を除した数値で表される。
【0114】
本発明の他の実施形態は、式XIの化合物又はその結晶、及び薬剤学的に許容される添加物を含有する医薬組成物である。医薬組成物は、薬剤学的に許容される添加物を式XIの化合物又はその結晶と混和することにより製造することができる。本発明に係る医薬組成物は例えば第十七改正日本薬局方の製剤総則に記載の方法など既知の方法に従って製造することができる。
【実施例】
【0115】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。しかし、本発明はこれらに限定されることはない。また、以下において使用される略語は当業者に周知の慣用的な略語であり、いくつかの略語は以下に示す。
【0116】
プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルの化学シフトは、テトラメチルシランに対するδ単位(ppm)で記録、カップリング定数はヘルツ(Hz)で記録されている。パターンは、s;シングレット、d;ダブレット、br;ブロード、m;マルチプレットを意味する。
【0117】
1H-NMRスペクトル及び13C-NMRスペクトルは、Varian400か又は500MHz分光計、もしくは日本電子株式会社 JNM-AL400型 核磁気共鳴装置(400MHz)を使用して測定した。
【0118】
以下の実施例中、「室温」は通常約10℃から約35℃を示す。%は特記しない限り重量パーセントを示す
【0119】
(A) (1S,5R)-1-(3-フルオロフェニル)-3-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-オン(式Iの化合物)の製造
【化73】
【0120】
(A-1) (1S,2R)-1-(3-フルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1-カルボニトリル(式Ibの化合物)の合成
【化74】
(3-フルオロフェニル)アセトニトリル(120kg,888mol,1.0equiv.)とテトラヒドロフラン(9.0kg)を混合した溶液を,ナトリウムtert-ブトキシド(188kg,1954mol,2.2equiv.)とテトラヒドロフラン(890kg)を混合した溶液に-10~0℃で滴下した。1時間以上撹拌後、(2R)-2-(クロロメチル)オキシラン(94.5kg,1021mol,1.15equiv.)を-12~18℃で滴下した。高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」という。)分析で反応終了を確認した後,水(50kg)を加え撹拌した。減圧下で溶媒を留去し,(1S,2R)-1-(3-フルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1-カルボニトリル溶液を得て、そのまま次工程に用いた。
【0121】
上記反応を確認するためのHPLC条件:
試薬及び移動相:
・精製水
・アセトニトリル(関東化学カタログ番号01031-2B高速液体クロマトグラフ用,又は同等品)
・過塩素酸(70%)(和光純薬工業カタログ番号162-00695試薬特級,又は同等品)
・移動相A液:水/アセトニトリル/過塩素酸(70%)混液(950:50:1,v/v/v)
・移動相B液:水/アセトニトリル/過塩素酸(70%)混液(100:900:1,v/v/v)
・溶解液:水/アセトニトリル混液(50:50,v/v)
・HPLC装置ニードルリンス液:水/アセトニトリル混液(50:50,v/v)
・(3-フルオロフェニル)アセトニトリル標品
HPLC条件:
検出器:Shimadzu SPD-20A 紫外吸光光度計(測定波長:262nm)又は同等物
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に、2.7μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したもの
例:Meteoric Core C18(YMC)、(USPパッキングタイプL1に相当)
カラム温度:30℃付近の一定温度
移動相:
A液:水/アセトニトリル/過塩素酸(70%)混液(950:50:1,v/v/v)
B液:水/アセトニトリル/過塩素酸(70%)混液(100:900:1,v/v/v)
流量:0.9mL/min
グラジエント条件:
時間(分) 移動相B液の割合(%)
0 20
30 20>Linear gradient
40 100
45 100
45.01 20
55 20
注入量:10μL
サンプルラック温度: 5℃付近の一定温度
面積測定範囲:30分
【0122】
(A-2) (1S,5R)-1-(3-フルオロフェニル)-3-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-オン(式Iの化合物)の合成
【化75】
(A-2-1) 種結晶の製造
(3-フルオロフェニル)アセトニトリル(20g,0.15mol,1.00equiv.)とテトラヒドロフラン(150mL)を混合した溶液に,ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(テトラヒドロフラン溶液)(150mL,0.30mol,2.00equiv.)を0~7℃で滴下した。0.5時間撹拌後、(2R)-2-(クロロメチル)オキシラン(11.8mL,0.15mol,1.00equiv.)を17℃以下で滴下した。5℃で2時間撹拌し、室温で3日間撹拌した後,水(10mL)を加え撹拌した。減圧下で溶媒を留去し,(1S,2R)-1-(3-フルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1-カルボニトリルを得て、そのまま次工程に用いた。
得られた(1S,2R)-1-(3-フルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1-カルボニトリルにエタノール(150mL)及び2M水酸化カリウム水溶液(148mL,0.30mol,2.00equiv.)を加え80℃で4時間撹拌した後、水(66mL)及び濃塩酸(47.5mL,0.57mol,3.80equiv.)を加えた。60℃で1時間撹拌し,さらに室温で45時間撹拌した。析出した固体を濾取し,pH=5を確認するまで水で洗浄後、窒素気流下乾燥し(1S,5R)-1-(3-フルオロフェニル)-3-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-オン(23g)を収率81%((3-フルオロフェニル)アセトニトリルからの総収率)で得た。
【0123】
(A-2-2) (1S,5R)-1-(3-フルオロフェニル)-3-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-オン(式Iの化合物)の合成
(A-2-2-工程1)
(1S,2R)-1-(3-フルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1-カルボニトリル溶液に、エタノール(237kg),水(237kg)及び25%水酸化ナトリウム水溶液(220kg,1376mol,1.55equiv.)を加え内温77~87℃で撹拌した。HPLC分析で反応終了を確認した後,減圧下で溶媒を留去し,トルエン(624kg)及び水(60kg)を加え撹拌後,静置した。有機層を排出した後,水層にトルエン(624kg)を加え撹拌後,静置した。有機層を排出し、そのまま次工程に用いた。
【0124】
上記反応を確認するためのHPLC条件:
試薬及び移動相:
・精製水、アセトニトリル、過塩素酸(70%)、移動相A液、移動相B液、溶解液、及びHPLC装置ニードルリンス液は、(A-1)と同様である。
・(1S,2R)-1-(3-フルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1-カルボニトリル標品
HPLC条件:
(A-1)と同様である。
【0125】
(A-2-2-工程2)
(A-2-2-工程1)で得られた溶液に、トルエン(409kg)及び35%塩酸(287kg,2753mol,3.10equiv.)を加えた。内温55~65℃で撹拌し,HPLC分析で反応終了を確認した。内温35℃以下を確認後,静置し水層を排出した後,有機層にトルエン(172kg)及び7%炭酸水素ナトリウム水溶液(482kg)を加え撹拌後,静置した。水層を排出した後,有機層に水(480kg)を加え撹拌後,静置した。水層を排出し,有機層中の(1S,5R)-1-(3-フルオロフェニル)-3-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-オン含有量を算出した。減圧下で溶媒を留去後,エタノール(614kg)を投入した。減圧下で溶媒を留去後,総容量が(1S,5R)-1-(3-フルオロフェニル)-3-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-オン含有量の2倍量となるようエタノールを投入した。
内温60~65℃で撹拌下加熱溶解し、(1S,5R)-1-(3-フルオロフェニル)-3-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-オン含有量の0.8倍量の水を加えた。冷却後,内温40~50℃で種結晶60gを添加し結晶析出を確認した。内温40~50℃で1時間以上撹拌後-10℃~-20℃/Hで-5~5℃以下に冷却し析出した固体を濾取し,エタノールで洗浄した。得られた固体を外温45℃以下で減圧乾燥し(1S,5R)-1-(3-フルオロフェニル)-3-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-オン(103kg)を収率60%((3-フルオロフェニル)アセトニトリルからの総収率)で得た。
【0126】
上記反応を確認するためのHPLC条件:
試薬及び移動相:
・精製水、アセトニトリル、過塩素酸(70%)、移動相A液、移動相B液、溶解液、及びHPLC装置ニードルリンス液は、(A-1)と同様である。
・(1S,2R)-1-(3-フルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1-カルボン酸溶液(濃度約0.5mg/mL)
HPLC条件:
検出器、カラム、カラム温度、移動相、流量、注入量、サンプルラック温度は(A-1)と同様である。
グラジエント条件:
時間(分) 移動相B液の割合(%)
0 15
15 15>Linear gradient
35 40>Linear gradient
40 100
45 100
45.01 15
55 15
面積測定範囲:40分
【0127】
NMRデータ
(1S,5R)-1-(3-フルオロフェニル)-3-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-オン:
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 7.43-7.36 (m, 1H), 7.35-7.31 (m, 1H), 7.31-7.28 (m, 1H), 7.14-7.08 (m, 1H), 4.46 (dd, J = 9.1, 4.6 Hz,1H), 4.25 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 2.80 (dt, J = 8.0, 4.6 Hz, 1H), 1.72 (dd, J = 7.9, 4.8 Hz, 1H), 1.37 (t, J = 4.8 Hz, 1H);
13C NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ 175.35, 161.98 (d, JCF = 243.1 Hz), 137.67 (d, JCF = 8.2 Hz), 130.15 (d, JCF = 8.6 Hz), 124.19 (d, JCF = 2.8 Hz), 115.01 (d, JCF = 22.4 Hz), 113.95 (d, JCF = 20.9 Hz), 67.93, 30.70 (d, JCF = 2.4 Hz), 25.57, 19.99.
【0128】
(B) 2,4-ジメチルピリミジン-5-オール(式VIの化合物)の製造
【化76】
【0129】
(B-1) 1-(4-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オン(式VIaの化合物)の製造
【化77】
4-ニトロフェノール(305.0kg、2192.5mmol)、炭酸カリウム(318.2kg、2302.1mmol)とアセトニトリル(1678kg)の混合物を60℃で30分間攪拌した。反応混合物に60℃でクロロアセトン(net 213.0kg、2302.1mmol)を滴下して加え、得られた混合物を60℃(外温)で7時間撹拌した。反応混合物を氷浴にて冷却後、反応混合物に同温度でトルエン(1847kg)、水(1830kg)を加えた。得られた反応混合物を室温で撹拌後、有機層を分離し、食塩水(水1525kg、食塩170.8kg)で洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をトルエン(1319kg)に55℃(内温)で溶解後、内温5℃に冷却し、析出した固体を濾取した。得られた固体を適量のトルエンで洗浄し、標記化合物の湿体(dry換算収率343.9kg、収率80%)を得た。
1H-NMR (CD
3Cl) δ (ppm): 2.31 (3H, s), 4.67 (2H, s), 6.95 (2H, d, J=9.3Hz), 8.22 (2H, d, J=9.3Hz).
【0130】
(B-2) (Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(4-ニトロフェノキシ)ブト-3-エン-2-オン(式VIbの化合物)の製造
【化78】
1-(4-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オン(dry換算343.9kg、1762.1mmol)にトルエン(1785kg)を加え一部濃縮後、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(231.0kg、1938.3mmol)を添加し78℃(内温)で20時間撹拌した。同温度で反応混合物にトルエン(595kg)を加え、内温55℃でメタノール(163kg)を加えて30分熟成後、5℃まで冷却した。析出した固体を濾取した。得られた固体を適量のトルエンで洗浄後、標記化合物湿体(dry換算収率159.0kg、収率36%)を得た。
1H-NMR (CD
3Cl) δ (ppm): 2.00 (3H, brs), 3.01 (6H, s), 6.90-7.16 (2H, brm), 7.16-7.46 (1H, brs), 8.22 (2H, d, J=8.8Hz).
【0131】
また、式VIbの化合物については以下のような方法でも製造することができる。
(B-2-a) (Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(4-ニトロフェノキシ)ブト-3-エン-2-オン(式VIbの化合物)の製造
【化79】
1-(4-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オン(15.0g、76.9mmol)と4-ニトロフェノール(802mg、5.76mmol)にアセトニトリル(15mL)を加え、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(15.4mL、115mmol)を添加し78℃(外温)で19時間撹拌した。50℃(外温)で反応混合物にトルエン(300mL)を加え、5℃(外温)まで冷却し、析出した固体を濾取した。得られた固体を適量のトルエンで洗浄後、減圧下50℃で乾燥し標記化合物(12.4g、収率64%)を得た。
【0132】
(B-2-b) (Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(4-ニトロフェノキシ)ブト-3-エン-2-オン(式VIbの化合物)の製造
【化80】
4-ニトロフェノール(50.0g、359mmol)、炭酸カリウム(52.2g、377mmol)とアセトニトリル(350mL)の混合物を60℃(外温)で1時間攪拌した。反応混合物に同温度でクロロアセトン(31.5mL、377mmol)を滴下して加え、得られた混合物を同温度で25時間撹拌した。反応混合物を氷冷水下で攪拌し、反応混合物に13℃(内温)でトルエン(350mL)、水(300mL)を加えた。得られた反応混合物を室温で撹拌後、有機層を分離し、食塩水(水250mL、食塩27.8g)で洗浄した。この有機層168.5gを減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣(1-(4-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オン(式VIaの化合物);net 16.7g、85.6mmol)にアセトニトリル(60mL)を加えて減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣にアセトニトリル(60mL)を加えて減圧下で溶媒を留去した後、アセトニトリル(16.7mL)を加え溶解後、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(17.2mL、128mmol)を添加し78℃(外温)で19.5時間撹拌した。同温度で反応混合物にトルエン(200mL)を加え、6℃(外温)まで冷却し、析出した固体を濾取した。得られた固体を適量のトルエンで洗浄後、減圧下50℃で乾燥し標記化合物(12.3g、収率58%)を得た。
【0133】
(B-2-c) (Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(4-ニトロフェノキシ)ブト-3-エン-2-オン(式VIbの化合物)の製造
【化81】
4-ニトロフェノール(5.57g、40.1mmol)とアセトニトリル(17mL)の混合物に18℃(内温)でトリエチルアミン(5.3mL、38.2mmol)とクロロアセトン(3.0mL、36.4mmol)を加え、55℃(外温)で69時間攪拌した。反応混合物に30℃(外温)でN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(7.3mL、54.6mmol)を添加し80℃(外温)で43時間撹拌した。36℃(内温)で反応混合物にN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(7.3mL、54.6mmol)を添加し、80℃(外温)で18.5時間撹拌した。内温を45℃以下に冷却した後、トルエン(40mL)を加え、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣にトルエン(111mL)とアセトニトリル(5.6mL)を加え80℃(外温)で攪拌してメタノール(4.4mL)を加えたのちに6℃(外温)まで冷却し、析出した固体を濾取した。得られた固体を適量のトルエンで洗浄後、減圧下50℃で乾燥し標記化合物(3.97g、収率44%)を得た。
【0134】
(B-2-d) (Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(4-ニトロフェノキシ)ブト-3-エン-2-オン(式VIbの化合物)の製造
【化82】
4-ニトロフェノール(50.0g、359mmol)、炭酸カリウム(49.6g、359mmol)とアセトニトリル(350mL)の混合物を室温で25分間撹拌した。混合物に同温度でクロロアセトン(33.3g、359mmol)を滴下して加え、その混合物を60℃(外温)で14時間撹拌した。得られた反応混合物(1-(4-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オン(式VIaの化合物)と4-ニトロフェノールの混合物(97:3))に室温でトルエン(350mL)、水(300mL)を加えて撹拌した。有機層を分離し、水(250mL)で洗浄した。その有機層の溶媒を減圧下で留去し、得られた残渣(284g)にトルエン(500mL)を加え、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣(149g)にトルエン(103g)とN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(52.9mL、395mmol)を加え、80℃(外温)で15時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却して3時間熟成した後、5℃(外温)まで冷却して2時間熟成した。析出した固体を濾取し、適量のトルエンで洗浄した。その固体を減圧下50℃で乾燥し、標記化合物(55.7g、収率62%)を得た。
【0135】
(B-3) 2,4-ジメチル-5-(4-ニトロフェノキシ)ピリミジン(式VIcの化合物)の製造
【化83】
ナトリウムエトキシド20%エタノール溶液(518.8kg、1524.9mol)、エタノール(213kg)、アセトアミジン塩酸塩(net144.2kg、1524.9mmol)を加え25℃(内温)で94分撹拌した。(Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(4-ニトロフェノキシ)ブト-3-エン-2-オン(dry換算159.0kg、635.4mmol)を仕込み、混合物を60℃(内温)で5時間撹拌した。反応混合物を5℃(内温)に冷却後、水(2385kg)を加え、析出した固体を濾取した。得られた固体を適量の水で洗浄後、標記化合物の湿体(dry換算収率146.1kg、収率94%)を得た。
1H-NMR (CD
3Cl) δ (ppm): 2.40 (3H, s), 2.75 (3H, s), 6.96 (2H, d, J=9.0Hz), 8.24 (2H, d, J=9.0Hz), 8.32 (1H,s).
【0136】
(B-4) 2,4-ジメチルピリミジン-5-オール(式VIの化合物)の製造
【化84】
2,4-ジメチル-5-(4-ニトロフェノキシ)ピリミジン(dry換算146.1kg、595.8mmol)、メタノール(579kg)と水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム71.5kg、水77.5kg、1787.3mmol)の混合物を60℃(内温)で13時間撹拌した。反応混合物に、トルエン(1264kg)と水(584kg)を加えて撹拌・静置後、水層を分離し、水層を減圧下で濃縮した。得られた濃縮液を8℃(内温)に冷却後トルエン(316kg)を投入し、濃塩酸(310.3kg、2978.8mmol)を内温0-15℃で加えた。酢酸エチル(328kg)を加えて分液した。水層を分離し、トルエン-酢酸エチル(316kg-328kg)で洗浄した。得られた水層に酢酸エチル(1311kg)を加えた後、5℃(内温)に冷却し5mol/l水酸化ナトリウム水溶液を反応混合物のpHが6.5になるまで加えた。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(1311kg)で再抽出した。得られた有機層を合わせた後、水(44kg)で洗浄し、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣にトルエン(379kg)を加えて、50℃(内温)で2時間懸濁撹拌した。混合物を10℃(内温)以下まで冷却し、2時間撹拌後、ろ過した。得られた固体をトルエン適量で洗浄後、減圧下45℃で乾燥し、標記化合物(63.7kg、86%)を得た。
1H-NMR (CD
3Cl) δ (ppm): 2.51 (3H, s), 2.65 (3H, s), 8.02 (1H, s), 10.01 (1H, brs).
【0137】
(C) (1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(式IXの化合物)の製造
【化85】
【0138】
(C-1) [(1S,2R)-1-(3-フルオロフェニル)シクロプロパン-1,2-ジイル]ジメタノール(式IIの化合物)の製造
【化86】
(1S,5R)-1-(3-フルオロフェニル)-3-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-オン(70kg,364mol,1.00equiv.),トルエン(350L),テトラヒドロフラン(350L),水素化ホウ素ナトリウム(13.8kg,364mol,1.00equiv.)の混合物にメタノール(58.3kg,1821mol,5.00equiv.)を50℃以下で加え撹拌した。HPLC分析で反応終了を確認し,20%クエン酸水溶液(350kg)に反応液及びトルエン(140L)を加え撹拌後,静置した。水層を排出し,有機層に5%炭酸水素ナトリウム水溶液(140kg)を加え撹拌後,静置した。水層を排出し,有機層に5%塩化ナトリウム水溶液(140kg)を加え撹拌後,静置した。水層を排出し,減圧下で溶媒を留去し,[(1S,2R)-1-(3-フルオロフェニル)シクロプロパン-1,2-ジイル]ジメタノール(67.2kg相当、収率94%)トルエン溶液を得てそのまま次工程に用いた。
【0139】
上記反応を確認するためのHPLC条件:
試薬及び移動相:
・精製水
・アセトニトリル(関東化学カタログ番号01031-2B高速液体クロマトグラフ用,又は同等品)
・トリフルオロ酢酸(和光純薬工業カタログ番号208-02741試薬特級,又は同等のもの)
・移動相A液:水/トリフルオロ酢酸混液(1000/1,v/v)
・移動相B液:アセトニトリル/トリフルオロ酢酸混液(1000/1,v/v)
・溶解液:水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸混液(500/500/1,v/v/v)
・HPLC装置ニードルリンス液:水/アセトニトリル混液(100/900,v/v)
・(1S,5R)-1-(3-フルオロフェニル)-3-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-オン標品
HPLC条件:
検出器:Shimadzu SPD-20A 紫外吸光光度計(測定波長:220nm)又は同等物
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に3.5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したもの
例:SunFire C18(Waters)(USP packing L1に相当)
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:
A液:水/トリフルオロ酢酸混液(1000/1,v/v)
B液:アセトニトリル/トリフルオロ酢酸混液(1000/1,v/v)
流量:約1.0mL/分の一定流量
グラジエント条件:
時間(分) 移動相B液の割合(%)
0 5>Linear gradient
7 30
20 30>Linear gradient
34 100
39 100
39.01 5
50 Stop
注入量:5μL
サンプルラック温度: 10℃付近の一定温度
ニードルリンス液:水/アセトニトリル混液(10/90,v/v)
面積測定対象範囲:~34分
【0140】
(C-2) [(1R,2S)-2-(3-フルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)シクロプロピル]メチル=アセテート(式IIIの化合物)の製造
【化87】
[(1S,2R)-1-(3-フルオロフェニル)シクロプロパン-1,2-ジイル)ジメタノール トルエン溶液([(1S,2R)-1-(3-フルオロフェニル)シクロプロパン-1,2-ジイル]ジメタノール67.2kg相当,342mol,1.00equiv.)とテトラヒドロフラン(269L)の混合物に,60℃以下でシクロヘキシルマグネシウムクロリド(1mol/kgテトラヒドロフラン溶液)(349kg,349mol,1.02equiv.)を加え撹拌した。得られた溶液を酢酸エチル(336L),アセチルクロリド(29.6kg,377mol,1.10equiv.)の混合物に20℃以下で加え撹拌した。HPLC分析で反応終了を確認し,水(202L)を加え撹拌後,静置した。水層を排出した後,有機層に6%炭酸水素ナトリウム水溶液(215kg)を加え撹拌後,静置した。水層を排出した後,有機層に4%塩化ナトリウム水溶液(175kg)を加え撹拌後,静置した。水層を排出し,減圧下で溶媒を留去後,トルエン(134L)を加えた。減圧下で溶媒を留去し,[(1R,2S)-2-(3-フルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)シクロプロピル]メチル=アセテート トルエン溶液を得てそのまま次工程に用いた。
【0141】
反応を確認するためのHPLC条件:
試薬及び移動相:
・精製水、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸、移動相A液、移動相B液及びHPLC装置ニードルリンス液は(C-1)と同様である。
・溶解液:水/アセトニトリル(500/500,v/v)
・[(1S,2R)-1-(3-フルオロフェニル)シクロプロパン-1,2-ジイル]ジメタノール溶液(濃度約0.5mg/mL)
HPLC条件
検出器、カラム、カラム温度、移動相、流量、注入量、サンプルラック温度は(C-1)と同様である。
グラジエント条件:
時間(分) 移動相B液の割合(%)
0 5>Linear gradient
7 30
30 30>Linear gradient
44 100
49 100
49.01 5
60 Stop
面積測定対象範囲:~44分
【0142】
(C-3) [(1R,2S)-2-(3-フルオロフェニル)-2-({[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}メチル)シクロプロピル]メチル=アセテート(式IVの化合物)の製造
【化88】
[(1R,2S)-2-(3-フルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)シクロプロピル]メチル=アセテート トルエン溶液([(1R,2S)-2-(3-フルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)シクロプロピル]メチル=アセテート 81.6kg相当,342mol,1.00equiv.),トルエン(294L)(トルエン溶液中のトルエン量も含む),トリエチルアミン(69.3kg,685mol,2.00equiv.)及び1-メチルイミダゾール(1.41kg,17mol,0.05equiv.)の混合物に,p-トルエンスルホニルクロリド(71.8kg,377mol,1.10equiv.)のトルエン(34L),アセトニトリル(69L)溶液を30℃以下で加えた後,外温8℃で撹拌した。HPLC分析で反応終了を確認した後,アセトニトリル(34L)を加え撹拌した。トリエチルアミン塩酸塩をろ過で除去し,トルエン(51L)とアセトニトリル(51L)の混合液でろ取物を洗浄し混合することで,[(1R,2S)-2-(3-フルオロフェニル)-2-({[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}メチル)シクロプロピル]メチル=アセテート 溶液を得て次工程にそのまま用いた。
【0143】
上記反応を確認するためのHPLC条件:
試薬及び移動相:
・精製水、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸、移動相A液、移動相B液及びHPLC装置ニードルリンス液は(C-1)と同様である。
・溶解液:アセトニトリル
・[(1R,2S)-2-(3-フルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)シクロプロピル]メチル=アセテート トルエン溶液(前工程の最終物)
HPLC条件
(C-1)と同様である。
【0144】
(C-4) [(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロピル]メチル=アセテート(式Vの化合物)の製造
【化89】
2,4-ジメチルピリミジン-5-オール(51.0kg,411mol,1.20equiv.),N-メチルピロリドン(273L),アセトニトリル(85L)の混合物にカリウム tert-ブトキシド(46.1kg,411mol,1.20equiv.)を加え,外温50℃で撹拌した。得られた溶液に[(1R,2S)-2-(3-フルオロフェニル)-2-({[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}メチル)シクロプロピル]メチル=アセテート溶液を加え外温50℃で撹拌した。HPLC分析で反応終了を確認した後,30℃以下で水(547L)を加え撹拌後,静置した。分液後有機層を保管し,水層にトルエン(220L)を加え撹拌後,静置した。水層を排出し,有機層を混合し[(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロピル]メチル=アセテート溶液を得てそのまま次工程に用いた。
【0145】
上記反応を確認するためのHPLC条件:
試薬及び移動相:
・精製水、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸、移動相A液、移動相B液及びHPLC装置ニードルリンス液は(C-1)と同様である。
・溶解液:アセトニトリル
・[(1R,2S)-2-(3-フルオロフェニル)-2-({[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}メチル)シクロプロピル]メチル=アセテート 溶液(濃度約1mg/mL)
HPLC条件
(C-1)と同様である。
【0146】
(C-5) [(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロピル]メタノール(式VIIの化合物)の製造
【化90】
[(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロピル]メチル=アセテート溶液に水(734L),25%水酸化ナトリウム水溶液(107L,856mol,2.50equiv.)を加え,外温40℃で撹拌した。HPLC分析で反応終了を確認した後,冷却し静置する。水層を排出した後,有機層にリン酸2水素ナトリウム水溶液(リン酸2水素ナトリウム41.1kg及び水255L)を加え撹拌後,静置した。水層を排出した後,有機層に水(204L)を加え撹拌後,静置した。水層を排出しトルエン(86L)を加え,[(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロピル]メタノール トルエン溶液を得てそのまま次工程に用いた。
【0147】
上記反応を確認するためのHPLC条件:
試薬及び移動相:
・精製水、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸、移動相A液、移動相B液及びHPLC装置ニードルリンス液は(C-1)と同様である。
・溶解液:水/アセトニトリル混液(1/1,v/v)
・[(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロピル]メチル=アセテート溶液(濃度約1mg/mL)
HPLC条件
検出器の測定波長が283nmである点以外は、(C-1)と同様である。
【0148】
(C-6) (1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(式IXの化合物)の製造
【化91】
(1)種結晶の製造
[(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロピル]メタノール)トルエン溶液([(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロピル]メタノール46.48kg相当,154mol,1.00equiv.),2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(0.48kg,3.1mol,0.02equiv.),トルエン(186L),リン酸2水素ナトリウム水溶液(リン酸2水素ナトリウム6.1kg,51mol,0.33equiv.及び水56kg)の混合物を外温7℃で冷却し,12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(9.1kg,15.4mol,0.10equiv.)を加え撹拌した。25℃以下で25%亜塩素酸ナトリウム水溶液(61.2kg,169mol,1.10equiv.)を加えた。HPLC分析で反応終了を確認した後,亜硫酸ナトリウム水溶液(亜硫酸ナトリウム9.7kg及び水93L)を加え撹拌した。25%水酸化ナトリウム水溶液(39L)を加え,外温70℃で1時間撹拌し、50℃以下に冷却し静置した。水層を保管し,有機層に水(23L)を加え撹拌後,静置した。有機層を排出し,水層を混合し,トルエン(139L)及び5N塩酸水溶液を加えpH 2.5-4.0に調製し,静置した。水層を排出した後,有機層に水(93L)を加え撹拌後,静置した。水層を排出し,得られた有機層を減圧下で溶媒を留去した。アセトニトリル(232L)を加え,減圧下で溶媒を留去することを1回以上行った。アセトニトリル(232L)を加え,(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸溶液を得た後,減圧下で溶媒を一部留去した。(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸 47.7kg相当を含む濃縮残渣にアセトニトリルを加えて総容量を232Lとした。この混合物を外温65℃で撹拌下溶解した。冷却後,結晶析出を確認した。内温40℃以上に加熱後,-20℃/Hで内温-15℃以下に冷却し析出した固体を濾取し,アセトニトリルで洗浄した。得られた固体を外温50℃で減圧乾燥し(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸43.5kgを得た。
(2) (1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(式IXの化合物)の製造
[(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロピル]メタノール)トルエン溶液([(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロピル]メタノール82.8kg相当,274mol,1.00equiv.),2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(0.856kg,5.48mol,0.02equiv.),トルエン(25L),リン酸2水素ナトリウム水溶液(リン酸2水素ナトリウム10.8kg,90mol,0.33equiv.及び水82.8kg)の混合物を外温8℃で冷却し,12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(48.5kg,82mol,0.30equiv.)を35℃以下で加え撹拌した。HPLC分析で反応進行を確認した後,静置し,水層を排出した。有機層とリン酸2水素ナトリウム水溶液(リン酸2水素ナトリウム16.4kg,137mol,0.50equiv.及び水82.8kg)の混合物に,35℃以下で25%亜塩素酸ナトリウム水溶液(119kg,329mol,1.20equiv.)を加えた。HPLC分析で反応終了を確認した後,亜硫酸ナトリウム水溶液(亜硫酸ナトリウム17.3kg及び水166L)を加え撹拌した。25%水酸化ナトリウム水溶液(85.9L)を加え,外温70℃で加熱し撹拌し、50℃以下に冷却し静置した。水層を保管し,有機層に水(41L)を加え撹拌後,静置した。有機層を排出し,水層を混合し,トルエン(248L)及び5N塩酸水溶液を加えpH2.5-4.0に調整し,静置した。水層を排出した後,有機層に水(166L)を加え撹拌後,静置した。水層を排出し,得られた有機層を減圧下で溶媒を留去した。アセトニトリル(414L)を加え,減圧下で溶媒を留去することを1回以上行った。アセトニトリル(414L)を加え,(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸溶液を得た後,減圧下で溶媒を一部留去した。(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸84.9kg相当を含む濃縮残渣にアセトニトリルを加えて総容量を497Lとした。この混合物を外温65℃で撹拌下溶解した。冷却後,種結晶83gを添加し結晶析出を確認した。内温40℃以上に加熱後,-20℃/Hで10℃以下に冷却し析出した固体を濾取し,アセトニトリルで洗浄した。得られた固体を外温60℃以下で減圧乾燥し(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸62kgを収率54%((1S,5R)-1-(3-フルオロフェニル)-3-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-オンからの総収率)で得た。
【0149】
上記反応を確認するためのHPLC条件:
試薬及び移動相:
・精製水、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸、移動相A液、移動相B液及びHPLC装置ニードルリンス液は(C-1)と同様である。
・溶解液:水/アセトニトリル混液(1/1,v/v)
・[(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロピル]メタノール)溶液(濃度約1mg/mL)
HPLC条件
検出器の測定波長が283nmである点以外は、(C-1)と同様である。
【0150】
NMRデータ
(1R,2S)-2-(((2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ)メチル)-2-(3-フルオロフェニル)-シクロプロパンカルボン酸:
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 12.47 (s, 1H), 8.17 (s, 1H), 7.39 (td, J = 8.0, 6.4 Hz, 1H), 7.29 (d, J= 7.9 Hz, 1H), 7.27-7.22 (m, 1H), 7.10 (td, J = 8.3, 2.1 Hz, 1H), 4.63 (d, J= 10.2 Hz, 1H), 4.30 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 2.46 (s, 3H), 2.26 (s, 3H), 2.13 (dd,J = 7.7, 6.6 Hz, 1H), 1.63-1.54 (m, 2H);
13C NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ 172.65, 162.48 (d, JCF= 243.6 Hz), 159.08, 156.24, 149.45, 145.15 (d, JCF = 7.5 Hz), 139.60, 130.71 (d, JCF = 8.5 Hz), 124.79 (d, JCF = 2.6 Hz), 115.60 (d, JCF = 21.8Hz), 114.32 (d, JCF = 20.8 Hz), 71.15, 33.92 (d, JCF = 2.0 Hz), 26.46, 24.96, 19.72, 18.70.
【0151】
(D) (1R,2S)-2-(((2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ)メチル)-2-(3-フルオロフェニル)-N-(5-フルオロピリジン-2-イル)シクロプロパンカルボキサミド(Lemborexant:式XIの化合物)の製造
【化92】
(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(62.4kg,197mol,1.00equiv.),5-フルオロピリジン-2-アミン(24.3kg,217mol,1.10equiv.),酢酸エチル(499L),N,N-ジイソプロピルエチルアミン(53.5kg,414mol,2.10equiv.),1-プロパンホスホン酸無水物(50%酢酸エチル溶液)(188kg,296mol,1.50equiv.)の混合物を外温70℃で加熱し,HPLC分析で反応終了を確認した。反応液を冷却後,精製水312Lを加え撹拌後,静置した。水層を排出した後,有機層に炭酸ナトリウム水溶液(炭酸ナトリウム68.9kg及び精製水312L)を加え撹拌後,静置した。水層を排出した後,有機層に精製水(187L)を加え撹拌後,静置した。水層を排出し,有機層に精製水(187L)を加え撹拌後,静置した。水層を排出し,有機層を濾過した。酢酸エチルで清澄濾過ラインをリンス後,減圧下で溶媒を一部留去した。濃縮残渣(lemborexant 75.3kg相当を含む)を総容量256Lになるように酢酸エチルを加えて調製した混合物を外温60℃で撹拌下加熱溶解後,n-へプタン(12.8kg)を加えて45℃以下に冷却した。酢酸エチル(31L)を添加し,35℃以下に冷却後,n-へプタン(670kg)を加えた。その後懸濁液を10℃以下に冷却し,混合物中の固体を濾取し,酢酸エチル及びn-へプタンの混合液で洗浄した。得られた固体を外温60℃以下で減圧乾燥しlemborexant(70kg)を収率87%で得た。
【0152】
上記反応を確認するためのHPLC条件:
試薬及び移動相:
・精製水、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸、移動相A液、移動相B液及びHPLC装置ニードルリンス液は(C-1)と同様である。
・溶解液:水/アセトニトリル混液(1/1,v/v)
・(1R,2S)-2-{[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}-2-(3-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸)標品
HPLC条件
検出器の測定波長が283nmである点以外は、(C-1)と同様である。
【0153】
NMRデータ
(1R,2S)-2-(((2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシ)メチル)-2-(3-フルオロフェニル)-N-(5-フルオロピリジン-2-イル)シクロプロパンカルボキサミド:
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 11.19 (s, 1H), 8.31 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 8.12 (s, 1H), 7.94-7.85 (m, 1H), 7.62 (tt, J = 8.7, 3.1 Hz, 1H), 7.44 (dd, J = 10.6, 1.5 Hz, 1H), 7.41-7.40 (m, 1H), 7.39 (s, 1H), 7.14-7.06 (m, 1H), 4.67 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 4.29 (t, J = 9.9 Hz, 1H), 2.63 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 2.38 (s, 3H), 2.03 (s, 3H), 1.76-1.64 (m, 1H), 1.49 (dd, J = 8.0, 4.8 Hz, 1H);
13C NMR (125 MHz, DMSO-d6) δ168.68, 161.98 (d, JCF= 242.3 Hz), 158.46,155.15, 155.38 (d, JCF = 247.9 Hz), 148.90, 148.51, 145.00 (d, JCF = 7.7 Hz), 139.37, 135.15 (d, JCF= 24.9 Hz), 130.06 (d, JCF = 8.4 Hz), 125.05 (d, JCF = 19.5Hz), 124.70 (d, JCF = 2.6 Hz), 115.71 (d, JCF = 21.7 Hz), 114.20 (d, JCF = 4.1 Hz), 113.70 (d, JCF = 20.9 Hz), 70.80, 34.09 (d, JCF = 1.9 Hz), 26.90, 24.38, 18.37, 17.78.
【0154】
純度試験
国際公開第2013/123240号の方法で製造した式XIの化合物の標準品を外部対照として用い、標準品と試料中の不純物のピーク面積を比較することで、試料中の各化合物の質量%を算出した。0.05質量%を超えて検出された不純物の合計を総類縁物質の含量とした。
【0155】
試験方法:液体クロマトグラフィー、紫外吸光光度計、ピーク面積
式XIの化合物の定量法
式XIの化合物(%)=AT/CT×CS/AS×100
AT:試料溶液の式XIの化合物のピーク面積
AS:標準溶液の式XIの化合物のピーク面積
CT:試料溶液中の式XIの化合物の濃度(mg/mL)
CS:標準溶液中の式XIの化合物の濃度(mg/mL)
個々の類縁物質(%)=AT/CT×CS/AS
総類縁物質(%)=試料溶液の類縁物質合計
AT:試料溶液の個々の類縁物質のピーク面積
AS:1%標準溶液の式XIの化合物のピーク面積
CT:試料溶液中の式XIの化合物の濃度(mg/mL)
CS:標準溶液中の式XIの化合物の濃度(mg/mL)
【0156】
分析方法
試料溶液:本品を希釈液にて溶解(約0.5mg/mL)
式XIの化合物の標準溶液:式XIの化合物の標準物質を希釈液にて溶解(約0.5mg/mL)
1%標準溶液:式XIの化合物の標準溶液(約0.5mg/mL)を、希釈液にて100倍に希釈
希釈液:メタノール/水混液(7:3)
注入量:10μL
面積測定範囲:試料溶液注入後70分間
【0157】
試験条件
HPLC条件:
測定波長:281nm
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に2.7μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したもの
例:Meteoric Core C18(YMC)(あるいは同等品)
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:
A液:水/アセトニトリル/ギ酸アンモニウム混液(950:50:1(v/v/w)
B液:アセトニトリル/水/ギ酸アンモニウム混液(900:100:1(v/v/w)
流量:約1.0mL/分の一定流量
【0158】
【0159】
上記実施例により得られた式XIで表される化合物、上記実施例と同様の実験を行った別の実施態様1~5で得られた式XIの化合物について、液体クロマトグラフィーを用いて、その純度を分析した結果を表2に示す。
【0160】
【0161】
式XIで表される化合物の保持時間は28±3分であった。式XIの化合物の保持時間に対する各不純物の相対保持時間は、それぞれ、以下のとおりであった。
式XVの化合物:0.08
式VIの化合物:0.11
式Xの化合物:0.16
式IXの化合物:0.39
式XIVの化合物:0.41
式XIIの化合物:0.76
式XIIIの化合物:1.36