(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】血漿分子及び粒子の炭素への吸着及び結合
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
(21)【出願番号】P 2021521137
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2019056816
(87)【国際公開番号】W WO2020081865
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-17
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520170715
【氏名又は名称】イムトリクス セラピューティクス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディアス - オーノン、ホセ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】サンディフォード、オレータ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラメシュウォール、プラネラ
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/103572(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0232183(US,A1)
【文献】安井隆雄 他,ナノバイオデバイスによる単一細胞解析と単一生体分子解析,分析化学,公益社団法人 日本分析化学会,2015年,6(6),413-419
【文献】湯川 博 他,ナノバイオデバイスによるがん細胞由来エクソソーム解析,Organ Biology,一般社団法人 日本臓器保存生物医学会,2015年,22(2),193-198,https://doi.org/10.11378/organbio.22.193
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全血を血漿、及び少なくとも1つの細胞血液画分に分離すること、ここで、前記血漿は、第1の量の非結合エクソソームを含む
;
血漿を合成炭素粒子(SCP)を含む吸着材料と接触させ、処理された血漿、及び複合体を形成
すること、ここで、前記処理された血漿は、第2の量の非結合エクソソームを含み、前記複合体は、ある量のSCP結合エクソソームを含む
;及び
第2の量の非結合エクソソームを第1の対照と比較すること、及び/又はSCP結合エクソソームを第2の対照と比較すること
を含む方法。
【請求項2】
前記SCPが、メソ細孔、ミクロ細孔、マクロ細孔、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項3】
前記メソ細孔が直径約2nm~約50nmであり、前記ミクロ細孔が直径約2nm未満であり、前記マクロ細孔が直径約50~約120nmである、請求項2に記載の
方法。
【請求項4】
前記SCP結合エクソソームが第1のカーゴを含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項5】
前記第1のカーゴがSCP結合である、請求項4に記載の
方法。
【請求項6】
前記第1のカーゴがDNA、RNA、タンパク質、脂質、又はそれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の
方法。
【請求項7】
前記SCPが約300~3000m
2/gの表面積を含む、請求項1に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年10月17日に出願され、「血漿分子及び粒子の炭素への吸収/結合」と題された米国仮出願第62/746,694号の本出願であり、その優先権を主張し、その内容は参照することにより全体として本明細書に取り込まれる。
【0002】
技術分野
一般に、本開示は、病状を診断し、それを治療(処置)する方法に関する。
【0003】
具体的には、本明細書に開示されるのは、対照と比較して、そして病状を診断するために、対象(被験者)に由来する体液中のエクソソームの量を定量化するための方法である。より具体的には、ある量のそのようなエクソソームを体液から除去し、診断された状態を治療(処置)するために、減少した量のエクソソームを含む流体を対象に戻す方法も開示される。
【背景技術】
【0004】
エクソソームは、典型的にはサイズが約50nmから約120nmであり、例えばDNA、RNA、タンパク質及び脂質を含み得る内部カーゴを有する小さなナノ粒子である。これらの細胞外小胞は、細胞間及び長距離連絡に重要であることが知られている。したがって、エクソソームは、健康な細胞と、癌細胞などであるがこれらに限定されない疾患細胞の両方から放出される。
【0005】
癌細胞は、遠隔転移の媒介、転移性ニッチの確立、及び腫瘍増殖をサポートするための微小環境への影響に関与するエクソソームを放出することが以前に見出された。したがって、病状に苦しむ患者の血液中に存在するエクソソームの量を減らす必要性が存在する。そのようなエクソソームの量を制限することは、例えば、細胞のコミュニケーションを妨げ、病気の進行を制限するであろう。したがって、本明細書の開示は、そのような必要性に対処し、対象の血液中のエクソソームの量を定量化することによって対象の病状を診断する方法と、対象の全血又は血漿中のエクソソームの量を減らすことにより、そのような病状を治療(処置)する方法の両方を提供する。このような方法は、吸着材料として合成炭素粒子(SCP)を利用する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示のより完全な理解のために、以下の添付の図面/図を参照する。
【0007】
【
図1】
図1(A)は、本明細書に記載の実施形態に開示されるように、対照及び手術前の患者の血漿において結合されなかったエクソソームナノ粒子の数のグラフ表示を示す。
【0008】
図1(B)及び
図1(C)は、本明細書に記載の実施形態で開示されるように、2つの術後血漿サンプル(それぞれ、2018年9月18日及び2018年10月3日のもの)において結合されなかったエクソソームナノ粒子の数のグラフ表示を示す。
【0009】
【
図2】
図2(A)は、本明細書に記載の実施形態に開示されるように、対照及び手術前に収集及び測定された患者の血漿において結合されたエクソソームナノ粒子の数のグラフ表示を示す。
【0010】
図2(B)及び
図2(C)は、本明細書に記載の実施形態に開示されるように、2つの術後血漿サンプルに結合したエクソソームナノ粒子の数のグラフ表示を示す。
【0011】
【
図3】
図3は無細胞DNAの存在を同定するために2%アガロース上で電気泳動された、本明細書に記載の実験1からの結合及び非結合サンプルのゲル電気泳動を示す。
【0012】
【
図4】
図4は、本明細書に記載され、対照と比較された、実験1からの結合及び非結合サンプルにおいて評価されたタンパク質の総量についてのブラッドフォードアッセイのグラフを示す。
【0013】
【
図5】
図5は、エクソソームがインビトロで細胞から放出されるエンドサイトーシスプロセスの従来技術の電子顕微鏡画像を示す。
【0014】
【
図6】
図6(A~C):本明細書に記載の実施形態によって開示されるように、(A)は、ナノサイト追跡分析(NTA)によるエンドソームサイズの特徴づけを示し、データは、エクソソームが50~100nmの範囲内にあることを示している;(B)はテストされたSCPのサイズの表を示している;(C)は精製されたエクソソームの炭素SCP‐1及びSCP‐3への結合データ(粒子数)を示している。
【0015】
【
図7】
図7(A)は、本明細書に開示される実施形態において、SCP‐1が最も多くのエクソソームを吸着する、異なるSCPに結合したエクソソームの数のグラフ表示を示す。
図7(B)は、SCPにトラップされた粒子が本明細書に開示されているエクソソームであることを検証するナノサイトトラッキング分析(NTA)を示している。そして
【0016】
【
図8】
図8(A)は、SCP‐1が60歳の卵巣癌患者の血漿からのエクソソーム、及び同様の年齢の健康なドナー(左)からの血漿に結合/吸着できることを確認する、炭素SCP‐1の結合データのグラフ表示を示す;
図8(B)及び(C)は、本明細書に開示される実施形態のエクソソームが、エクソソーム特異的マーカーによって特徴付けられるように炭素に結合することの確認を提供するさらなる結合試験をグラフで示す。
【発明の概要】
【0017】
本明細書に開示されるのは、対象(被験者)から全血を得ること;全血を血漿、及び少なくとも1つの細胞血液画分に分離すること、ここで、血漿は、第1の量の非結合エクソソームを含む;血漿を合成炭素粒子(SCP)を含む吸着材料と接触させ、処理された血漿、及び複合体を形成すること、ここで、処理された血漿は、第2の量の非結合エクソソームを含み、複合体は、ある量のSCP結合エクソソームを含む;非結合エクソソームの第2の量を第1の対照と比較する、及び/又はSCP結合エクソソームを第2の対照と比較することを含む方法のいくつかの実施形態である。この方法のいくつかの実施形態では、第1の対照は既知の量の非結合エクソソームを含み、第2の対照は既知の量の結合エクソソームを含む。
【0018】
この方法のさらなる実施形態において、対象は、第2の量の非結合エクソソームが第1の対照とは異なる場合、及び/又はSCP結合エクソソームの量が第2の対照とは異なる場合に、病状を有すると又は病状が疑われると診断される。
【0019】
いくつかのさらなる実施形態では、病状は癌であり、いくつかの実施形態では、癌は、膵臓癌、卵巣癌、膠芽腫、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0020】
本明細書に記載の方法の実施形態では、SCPは多孔性フェノール樹脂を含み、別の実施形態では、SCPはメソ細孔、ミクロ細孔、マクロ細孔、又はそれらの組み合わせを含み、いくつかの実施形態では、メソ細孔は直径が約2nmから約50nmであり、他の実施形態では、ミクロ細孔は、直径が約2nm未満であり、さらなる実施形態では、マクロ細孔は、直径が約50から約120nmである。
【0021】
この方法のいくつかの実施形態では、結合エクソソームの量は、約102エクソソーム/gSCPから約109エクソソーム/gSCP以上であり、いくつかのさらなる実施形態では、合成炭素粒子(SCP)は、約300~900m2/gの表面積を含む。
【0022】
本明細書に開示される一実施形態は、以下を含む治療方法に向けられている:対象から全血を得ること;全血を血漿と1つ又は複数の細胞血液画分に分離すること、ここで、血漿は第1の量のエクソソームを有する;血漿を吸着材料と接触させ、処理された血漿を形成すること、ここで、処理された血漿は、第2の量のエクソソームを有し、第1の量のエクソソームは、第2の量のエクソソームよりも多い;処理された血漿を1つ又は複数の細胞血液画分と接触させ、再構成された全血を形成すること;及び再構成された全血を対象に投与すること。
【0023】
この方法のさらなる実施形態では、吸着材料は、合成炭素粒子(SCP)を含み、合成炭素粒子(SCP)は、SCP‐1、SCP‐2、SCP‐3、SCP‐4、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つである;さらに別の実施形態では、合成炭素粒子(SCP)はSCP‐1である。本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、SCP‐1は、約300~900m2/gの表面積を含み、いくつかの他の実施形態では、メソ細孔、ミクロ細孔、マクロ細孔は、それぞれ直径が約2nm~約50nm、約2nm未満、及び直径約50~約120nmである。
【0024】
本明細書に開示される方法の別の実施形態では、治療方法は、単独で、又は特定された病状に適した他の形態の治療と組み合わせて使用される。
【0025】
さらなる実施形態において、開示された病状を診断する方法は、対象から全血を得ること;全血を血漿、及び少なくとも1つの細胞血液画分に分離すること、ここで、血漿は、第1の量の非結合エクソソームを含む;血漿をSCP‐1と接触させて処理された血漿及び複合体を形成すること、ここで処理された血漿が第2の量の非結合エクソソームを含み、複合体がSCP‐1結合エクソソームを含む;非結合エクソソームの第2の量を第1の対照と比較すること、及び/又は結合エクソソームを第2の対照と比較すること、ここで、結合エクソソームの量は、約102エクソソーム/gSCPから約109エクソソーム/gSCP以上である;及び非結合エクソソームの第2の量及び/又は結合エクソソームの量が第1の対照及び/又は第2の対照と異なる場合に、病状を有するとして対象を診断すること、を含む。
【0026】
上記は、以下の詳細な説明がよりよく理解され得るように、本発明の例示的な実施形態の特徴のかなり広く特定の概要を示した。開示された概念及び特定の実施形態は、以下に特許請求される本発明の同じ目的を実行するための他の方法及び構造を変更又は設計するための基礎として容易に利用できることを当業者は理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
開示された例示的な実施形態の詳細な説明
1つ又は複数の実施形態の例示的な実装が以下に提供されるが、開示されたシステム及び/又は方法は、現在知られているか存在するかにかかわらず、任意の数の技術を使用して実装され得ることを最初に理解されたい。本開示は、本明細書に例示及び説明される例示的な設計及び実装を含む、以下の例示的な実装、図面、及び技術に決して限定されるべきではなく、それらの全範囲の均等物とともに添付の特許請求の範囲内で変更され得る。
【0028】
以下の議論は、本開示の様々な例示的な実施形態に向けられている。当業者は、以下の説明が幅広い適用を有し、任意の実施形態の説明は、その実施形態の例示にすぎず、本開示の範囲が、以下に記載される特許請求の範囲を含めて、その実施形態に限定されないことを理解するであろう。
【0029】
図面の図は、必ずしも一定の縮尺である必要はない。本明細書の特定の特徴及び構成要素は、縮尺又はいくらか概略的な形で誇張されて示され得、従来の要素のいくつかの詳細は、明瞭さと簡潔さのために省略され得る。
【0030】
以下の議論及び特許請求の範囲において、「含む」(including)及び「含む」(comprising)という用語は、制限のない方法で使用され、したがって、「・・・を含むが、これらに限定されない」を意味すると解釈されるべきである。また、「連結する」(couple又はcouples)という用語は、間接的な接続又は直接的な接続のいずれかを意味することを意図している。したがって、第1の構成要素又はデバイスが第2の構成要素又はデバイスに連結する場合、その接続は、2つの構成要素又はデバイス間の直接的な係合、又は他の中間のデバイス及び接続を介して行われる間接的な接続を介することができる。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、パーセンテージ又は他の数値と組み合わせて使用される場合、そのパーセンテージ又は他の数値のプラスマイナス10%を意味する。たとえば、「約80%」という用語は、80%プラスマイナス8%を含む。本明細書で使用される場合、機器、装置、及びデバイスという用語は交換可能に使用され得る。本明細書で引用されているすべての論文、出版物、及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用される「対象」という用語は、ありとあらゆる生物を含み、「患者」という用語を含む。
【0031】
哺乳動物細胞は、エクソソームを介して通信(すなわち、シグナル伝達)することができる。一般に、エクソソームは、いくつかの実施形態では、直径が約50nmから約120nmのサイズを有する細胞外膜由来の小胞である。エクソソームは、他のいくつかの実施形態では、すべての体液に含まれる細胞由来のナノ粒子であると見なすことができる(例えば、
図5のエクソソームの形成を参照のこと)。
【0032】
さらに、エクソソームは、RNA、メッセンジャーRNA、長鎖非コードRNA、マイクロRNA、DNA、mtDNA酵素、タンパク質(シグナル伝達タンパク質などであるがこれらに限定されない)などの様々な生物活性分子又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0033】
エクソソームは、病状において役割を果たすことができる情報を運ぶ(例えば、シグナル伝達分子として機能する)。例えば、エクソソームは病状の治療(処置)又は治癒を妨げる可能性があり、病状の悪化などを促進する可能性がある。たとえば、エクソソームは、特定のシグナル伝達経路を活性化する核酸及びタンパク質の転移を介して周囲の細胞を再プログラミングすることにより、癌腫瘍の成長を促進する可能性がある。別の例として、エクソソームは、細胞外マトリックスをリモデリングし、潜在的な宿主器官における血管新生を促進することにより、転移のために宿主器官を準備することができる。
【0034】
したがって、理論によって制限されることを望むものではないが、罹患細胞(癌細胞など)に由来するエクソソームの組成は、健康な細胞(すなわち、非罹患細胞)に由来するエクソソームの組成とはしばしば異なる。その結果、病状に苦しんでいる対象の血中のエクソソームは、健康な対象の血中のエクソソームとは異なる可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、エクソソームは、アルツハイマー病などの、しかしそれには限定されない神経変性障害に、及び癌転移に関与するメカニズムに不可欠であると考えられている。
【0035】
いくつかの実施形態において、間葉系幹細胞(MSC)由来のエクソソームは、細胞生存、薬剤耐性に関連するメカニズムにおいて役割を果たす可能性があり、いくつかのさらなる実施形態において、乳癌細胞において細胞静止を誘導する。他の実施形態では、エクソソームは、それらが対象において免疫応答を引き起こさないように、薬物送達において利用され得る。
【0036】
一実施形態では、血液サンプルは、体外装置(本明細書で以下に説明される)と流体連絡している対象から得られる。対象は、病状又は疾患を有するか、又は有することが疑われる可能性があり、したがって、全血又は血漿は、疾患由来のエクソソームを含み得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、体外装置(又はいくつかの実施形態では、体外回路)は、上記のように、吸着材料を含むカラムを有する装置である。
【0038】
本開示での使用に適した装置の実施形態は、米国特許第9,669,151号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に詳細に記載され、導管による流体連絡とアクセスを調節するポンプと流体連絡する入口を含み得る。装置は、対象から入口への血流の手段を確立することによって対象に接続することができる。対象の動脈アクセスを使用して、対象から入口への血流の手段を確立することができる。
【0039】
本明細書に開示されるタイプの方法論の実施形態は、対象の静脈(例えば、頸静脈、鎖骨下静脈又は大腿静脈)を介してアクセスされる対象の血流と装置の入口との間の流体連絡を確立することを含む。あるいは、対象の血流は、1つ又は複数の慢性血管アクセスを介してアクセスされ得る。たとえば、慢性的な血管アクセスは、(i)ネイティブ動静脈瘻(ネイティブAVF)、(ii)グラフト材料(AVグラフト)を使用した動静脈シャント、(iii)トンネルダブルルーメンカテーテルなどの、外科的処置によって作成された可能性がある。ポンプは、導管を介して装置の残りの部分への対象の血液の流れを調節し、導管は、本明細書に開示される方法論での使用に適した材料からなるパイプ又はフローラインであり得る。
【0040】
一実施形態では、対象の血液は、弁に到達するまで導管を通って流れることができ、弁がオンの位置にあるとき、血流は特定の流れ方向でカラム(A)に入ることができる。血液はカラムを通してポンプで送ることができ、バルブ調整された出口を通ってカラムから出ることができる。カラムAから出口を通って出る血液は、導管に入り、そこでバルブによってアクセスが調整される入口ポートにポンプで送られる。バルブがオンの位置にあるとき、血液は入口ポートから第2のカラム(B)にポンプで送ることができる。一実施形態では、対象の血液は、別の導管を通って流れ、入口ポートに到達することができ、いくつかの実施形態では、カラムCに入ることができる。血液はカラムCから出ることができ、このカラムは、オン位置にあるときに、血液が導管に流れ込み、対象の静脈に戻ることを可能にするさらなるバルブにより調整される。
【0041】
さらに、一実施形態では、装置を通る体液(例えば、血液)の流速は、いくつかのユーザ及び/又はプロセスの目標を提供するように調整することができる。例えば、装置を通る血流の速度は、約1mL/分から約300mL/分、あるいは約25mL/分から約300mL/分、あるいは約25mL/分から約150mL/分、あるいは約150mL/分から約300mL/分の範囲であり得る。
【0042】
一実施形態では、敗血症性ショック、癌、多形性膠芽腫(GMB)、及び妊娠高血圧腎症(子癇前症)に罹患しているがこれらに限定されない対象の治療(処置)は、対象が約1時間から約24時間、あるいは約1時間から約12時間、あるいは約1時間から約6時間、あるいは約1時間から約4時間、あるいは約4時間未満の範囲の期間、装置と流体連絡していることを必要とし得る。一実施形態では、対象は、対象の総血液量の約0.5から約10倍の血液量が装置を通って循環することを可能にするのに十分な期間、装置と流体連絡している。あるいは、対象の総血液量の約1から約10倍の血液量が装置を通って循環することができる。さらに別の実施形態では、装置を循環する血液量は、約5リットルから約72リットル、あるいは約10リットルから約60リットル、あるいは約36リットルから約54リットルの範囲であり得、約1時間から約6時間、あるいは約3時間から約4時間の範囲の期間に発生し得る。いくつかの実施形態では、対象は、それらの特定の病状に対処するのに十分であるとみなされるように、装置と複数回流体連絡するように配置される治療(処置)を受けることができる。
【0043】
一実施形態では、吸着材料は、装置のカラム(A)、(B)、及び(C)内に配置されるか、又はそれらのカラムによって含まれる。本開示での使用に適した吸着材料には、消毒プロセスに付されたクロマトグラフィー材料が含まれる。一実施形態では、吸着材料は、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0044】
最も好ましくは、吸着剤材料は、合成炭素粒子を含み、ここで、前記粒子は、炭素ビーズを含む。いくつかの実施形態では、本明細書におけるSCPは、エクソソームを効率的に吸着/結合する。ここで、SPCは、一実施形態では、そのような材料との接触を介して、対象の循環中の癌由来のエクソソームを減少させることができる。そのようなビーズは、WO2019126367(PCT/US2018/066568)に詳細に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0045】
いくつかの実施形態で開示されるビーズは、本明細書に記載されるようにそれらがエクソソームを効率的に吸着し得るように多孔性を調整することができる重縮合樹脂材料に由来する炭素質材料である。
【0046】
いくつかの実施形態では、SCPは、下限(a)から上限(z)の範囲の細孔径(p)及び下限(b)から上限(y)までの範囲のかさ密度(a)を有する炭素質材料を含む。ここで、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動性(g)は1未満である。たとえば、炭素質材料は、約10nmから約5000nmの範囲の細孔径を有し、0.06g/mlから0.15g/ml、又は約20nmから約300nmの範囲のかさ密度、及び約0.3g/mlから約0.5g/ml、又は約50nmから約150nmの範囲のかさ密度及び約0.3g/mlから約0.5g/mlの範囲のかさ密度を有し得る。いくつかの実施形態では、重縮合樹脂は、約10nmから約500nmの範囲の細孔径及び約2%から約25%の範囲の粒子内密度を有する高オルトフェノール樹脂を含む。例えば、重縮合樹脂は、約25nmから約300nmの細孔径及び約5%から約20%の範囲の粒子内多孔度、又は約50nmから約150nmの細孔径と、約8%から約15%の範囲の粒子内多孔度を有し得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、重縮合樹脂は、キレート剤を含み得る。いくつかの実施形態では、炭素質材料は、下限(a)から上限(z)の範囲の細孔径(p)及び下限(b)から上限(y)の範囲のかさ密度(a)を有する。ここで、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動(g)が1×10-3未満である。例えば、炭素質材料は、約10nmから約5000nmの範囲の細孔径及び0.06g/mlから0.15g/mlの範囲のかさ密度、又は約20nmから約300nmの範囲の細孔径及び約0.3g/mlから約0.5g/mlの範囲のかさ密度、又は約50nmから約150nmの範囲の細孔径及び約0.3g/mlから約0.5g/mlの範囲のかさ密度を有し得る。炭素質材料は、吸着剤又はフィルムを含み得る。いくつかの実施形態では、炭素質材料は、下限(a)から上限(z)の範囲の細孔径(p)及び下限(b)から上限(y)の範囲のかさ密度(a)を有する。ここで、(y-b)/(z-a)として定義される比較変動(g)が1×10-5未満である。例えば、炭素質材料は、約10nmから約5000nmの範囲の細孔径及び0.06g/mlから0.15g/mlの範囲のかさ密度、又は約20nmから約300nmの範囲の細孔径及び約0.3g/mlから約0.5g/mlの範囲のかさ密度、又は約50nmから約150nmの範囲の細孔径及び約0.3g/mlから約0.5g/mlの範囲のかさ密度を有し得る。炭素質材料は、吸着剤を含み得る。
【0048】
一実施形態では、本明細書に開示されるタイプの炭素質材料は、135重量部のエチレングリコール中の100重量部のRO‐NOVOLACの高温溶液(85℃~90℃)がエチレングリコール135重量部中のヘキサミン20重量部の高温溶液(85℃~90℃)とブレンドされるように調製された。得られた高温樹脂溶液を、4重量部の乾性油を含む2000重量部の撹拌高温(145℃)鉱油に注ぎ、エマルジョンを形成し、これをビーズに成形し、さらに加熱した。次に、スラリービーズを油から分離し、炭化した。樹脂ビーズは、二酸化炭素の流れの中で管状炉の浅いベッドトレイで炭化された。温度は200分で20℃から800℃に上昇し、そこで30分間保持された。
【0049】
一実施形態では、吸着剤材料は、多孔質フェノール樹脂からのミクロ、メソ、及びマクロ細孔を含む合成炭素粒子(SCP)を含む。本明細書で使用される場合、「ミクロ細孔」という用語は、窒素吸着法及び水銀ポロシメトリー法によって測定され、IUPACによって定義される、直径が2nm未満の細孔を指す。本明細書で使用される場合、「メソ細孔」という用語は、窒素吸着法及び水銀ポロシメトリー法で測定され、IUPACで定義される、直径が約2nmから約50nmの細孔を指す。本明細書で使用される場合、「ミクロ細孔」という用語は、窒素吸着法及び水銀ポロシメトリー法によって測定され、IUPACによって定義される、50nmより大きい直径を有する細孔を指す。この開示に関連して、2つのタイプのマクロ細孔がある。マクロ細孔ビーズでは、それらはビーズ内に位置し、細孔形成剤によって形成される。それらのサイズは、10~1000nm、50~500nm、及び70~200nmである。これらのマクロ細孔は、サイトカインの吸着に効果的であることが以前に証明されている。
【0050】
本開示での使用に適したSCPは、本明細書に開示された組成物及び方法論と相容れる任意の形状を有し得る。例えば、SCPの形状は、不規則な顆粒、低角度の形状、球形(例えば、ビーズ)、ペレット、ミニリス、モノリスなどの形状であり得る。簡単にするために、本開示は、SCBのビーズの使用に言及することができるが、SCPは、任意の適切な形状であり得ることが理解されるべきである。SCPは、任意の適切な方法論を使用して形成され、本明細書に開示された特性を有する材料をもたらすことができる。SCPを形成するための例示的な方法では、大部分の細孔形成剤を含む前駆体樹脂配合物、例えば250部のエチレングリコール又は他の細孔形成剤から100部の樹脂形成成分が使用される。
【0051】
SPCは、細孔の二峰性分布、ミクロ細孔及びメソ細孔又はマクロ細孔を含む窒素吸着ポロシメトリーによって推定される細孔構造を含み得る。メソ細孔の細孔半径の対数に対する細孔容積の微分の値(dV/dlogR)は、20~500Aの範囲の細孔径の少なくともいくつかの値に対して0.2より大きい。メソポーラスカーボンは、活性化なしで250~800m2/gのBET表面積を持つ可能性がある。それは加熱によって活性化される可能性があり、その後、最大2000m2/g及びそれ以上、例えば1000~2000m2/gの表面積を有する可能性がある。
【0052】
いくつかの実施形態では、SPCは、300~700m2/gの活性化されたBET表面積を含み得る。別の実施形態では、SPCは、400~650m2/gの活性化されたBET表面積を含み得る。さらなる実施形態では、SPCは、450~600m2/gの活性化されたBET表面積を含み得る。さらに別の実施形態では、SPCは、525~575m2/gの活性化されたBET表面積を含み得る。
[0051]
いくつかの実施形態において、SPCは、300~700m2/gの活性化なしのBET表面積を含み得る。別の実施形態では、SPCは、400~650m2/gの活性化なしのBET表面積を含み得る。さらなる実施形態では、SPCは、450~600m2/gの活性化なしのBET表面積を含み得る。さらに別の実施形態では、SPCは、525~575m2/gの活性化なしのBET表面積を含み得る。
【0053】
したがって、本明細書に開示されるのは、対象の病状を診断する方法であり、いくつかの実施形態では、対象の全血から血漿を得ること(例えば、対象は、癌などの疾患状態又は病状に罹患している);血漿中のエクソソームの量を定量化すること;及び血漿中のエクソソームの量を対照量のエクソソーム(例えば、健康な対照対象の血漿中のエクソソームの量)と比較することを含み得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、当業者は、本明細書に開示される方法による病状の診断時に、治療的処置、又は治療的に有効な量の適切な化合物又は薬剤をさらに投与することができる。
【0055】
「治療有効量」は、有益な又は所望の結果をもたらすのに十分な量である。例えば、治療有効量は、所望の治療効果を達成する量である。この量は、状態、疾患、又は感染症を軽減又は阻害するために必要な量である予防的に有効な量と同じであっても異なっていてもよい。有効量は、1つ又は複数の投与、適用、又は投薬量で投与することができる。組成物の治療有効量は、選択された状態及びその後の組成物に依存する。組成物は、1日1回以上から週1回以上まで投与することができ、1日おきに1回の投与を含む。当業者は、疾患又は障害の重症度、以前の治療、対象の一般的な健康及び/又は年齢、及び存在する他の疾患などを含むがこれらに限定されない特定の要因が、対象を効果的に治療(処置)するために必要な投薬量及びタイミングに影響を及ぼし得ることを理解するであろう。さらに、既知の治療有効量のそのような組成物による対象の治療(処置)は、単一の治療(処置)又は一連の治療(処置)を含み得る。
【0056】
治療は、適切に処方された化合物及び薬剤、例えば、小分子、核酸、ポリペプチド、及び抗体(これらはすべて、本明細書では「活性化合物」と呼ぶことができる)を含むことができ、本明細書に記載の方法による診断後の投与のための医薬組成物に組み込むことができる。そのような組成物は、典型的には、特定された病状(上記の方法がそのような状態を特定するために使用される)を治療するのに適した活性化合物、及び薬学的に許容される担体を含む。「薬学的に許容される担体」は、医薬投与と適合性のある溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含み得る。補足的な活性化合物もまた、組成物に組み込むことができる。医薬組成物は、投与説明書とともに、容器、パック、又はディスペンサーに含めることができる。
【0057】
本明細書に記載の方法によって状態を診断した後に投与することができるそのような治療は、その意図された投与経路と適合性があるように処方される医薬組成物を含み得る。投与経路の例には、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、及び直腸投与が含まれる。非経口、皮内、又は皮下投与に使用される溶液又は懸濁液には、以下の成分を含むことができる:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールやメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝液、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張性を調整するための薬剤。pHは、塩酸や水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調整できる。
【0058】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載の方法によって診断される疾患には、癌、進行性悪性腫瘍、アミロイドーシス、神経芽細胞腫、髄膜腫、血管周囲細胞腫、多発性脳転移、多形性膠芽腫、膠芽細胞腫、脳幹神経膠腫、予後不良悪性脳腫瘍、悪性神経膠腫、未分化星状細胞腫、未分化乏突起膠腫、神経内分泌腫瘍、直腸腺癌、デュークスC&D結腸直腸癌、切除不能な結腸直腸癌、転移性肝細胞癌、カポジ肉腫、カロタイプ急性骨髄芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、皮膚B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、低悪性度濾胞性リンパ腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、悪性胸膜滲出性中皮腫症候群、腹膜癌、乳頭状漿液性癌、婦人科肉腫、軟部組織肉腫、強皮症、皮膚血管炎、ランゲルハンス細胞組織球症、平滑筋肉腫、進行性線維異形成症、ホルモン抵抗性前立腺癌、切除された高リスク軟部組織肉腫、切除不能な肝細胞癌、ウォルデンストロムマクログロブリン血症、くすぶり型骨髄腫、無痛性骨髄腫、ファローピウス管癌、アンドロゲン非依存性前立腺癌、アンドロゲン依存性ステージIV非転移性前立腺癌、ホルモン非感受性前立腺癌、化学療法非感受性前立腺癌、乳頭状甲状腺癌、濾胞性甲状腺癌、髄質甲状腺癌、又は平滑筋肉腫が含まれるが、これらに限定されない。さらに、癌は、進行性悪性腫瘍、アミロイドーシス、局所進行性膀胱癌、転移性移行細胞膀胱癌、再発脳腫瘍、進行性脳腫瘍、神経芽細胞腫、髄膜腫、血管周囲細胞腫、多発性脳転移、多形性膠芽腫、膠芽細胞腫、脳幹神経膠腫、予後不良悪性脳腫瘍、悪性神経膠腫、未分化星状細胞腫、未分化乏突起膠腫、転移性乳癌、神経内分泌腫瘍、直腸腺癌、デュークスC&D結腸直腸癌、切除不能な結腸直腸癌、転移性肝細胞癌、カポジ肉腫、カロタイプ急性骨髄芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、皮膚B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、低悪性度濾胞性リンパ腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、IIIB期非小細胞肺癌、悪性胸膜滲出性中皮腫症候群、多発性骨髄腫、腹膜がん、乳頭状漿液性癌、婦人科肉腫、軟部組織肉腫、強皮症、皮膚血管炎、ランゲルハンス細胞組織球症、平滑筋肉腫、進行性線維異形成症、ホルモン抵抗性前立腺癌、切除された高リスク軟部組織肉腫、切除不能な肝細胞癌、ウォルデンストロムマクログロブリン血症、くすぶり型骨髄腫、無痛性骨髄腫、ファローピウス管癌、アンドロゲン非依存性前立腺癌、アンドロゲン依存性ステージIV非転移性前立腺癌、ホルモン非感受性前立腺癌、化学療法非感受性前立腺癌、乳頭状甲状腺癌、濾胞性甲状腺癌、髄質甲状腺癌、又は平滑筋肉腫であり得る。
【0059】
他の診断された状態は、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、増殖性硝子体網膜症、トラコーマ、近視、視窩、表皮性角結膜炎、アトピー性角膜炎、上肢角膜炎、翼状片乾性角膜炎、シェーグレン症候群、にきび性酒さ、フィレクテニュロシス(phylectenulosis)、梅毒、脂質変性、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染症、帯状疱疹感染症、原生動物感染症、カポジ肉腫、ムーレン潰瘍、テリエン辺縁変性症、周辺表皮剥奪(marginal keratolysis)、関節リウマチ、全身性狼瘡、多発動脈炎、外傷、ウェゲナーサルコイドーシス、硬化炎、スティーブンスジョンソン病、ペリフィゴイド放射状角膜切開術、鎌状細胞貧血、サルコイド、弾性線維性仮性黄色腫、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、頸動脈閉塞性疾患、慢性ブドウ膜炎、慢性硝子体炎、ライム病、イールズ病、ベーチェット病、網膜炎、脈絡膜炎、推定眼ヒストプラズマ症、ベスト病、スターガルト病、扁平部炎、慢性網膜剥離、高粘稠度症候群、トキソプラズマ症、硬化性胆管炎、又はルベオーシスを含み得る。このような症状は、本明細書に開示される方法により提供される診断方法により特定されれば、それに応じて治療することができる。
【0060】
本明細書に開示されるさらなる実施形態は、そのような病状に罹患している対象におけるそのような病状を治療する方法であり、この方法は、対象の全血からエクソソームの少なくとも一部を除去すること、及びエクソソーム除去プロセスに付された全血を患者に戻すことを含み得る。
【0061】
いくつかの他の実施形態では、対象の病状を治療する方法は、対象の血漿からエクソソームの少なくとも一部を除去すること、及びエクソソーム除去プロセスに供された血漿を患者に戻すことを含み得る。他の実施形態では、非健康細胞(例えば、罹患細胞)に由来するエクソソームの除去は、全血又は血漿を吸着材料と接触させることによって、対象の全血又は血漿から除去することができ、いくつかの実施形態では、疾患に由来するエクソソームは吸着剤に吸着する。本明細書に開示される一実施形態では、全血(又は血漿などのその成分)は、米国特許第9,669,151号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される合成炭素粒子(SCP)と接触して、エクソソーム‐SCP複合体を形成する。エクソソーム‐SCP複合体を形成するために、静電相互作用、物理的相互作用、化学的相互作用など、又はそれらの組み合わせなどの任意の適切な相互作用を介して、エクソソームをSCP上に保持することができる。エクソソーム‐SCP複合体は、共有結合、イオン結合、水素結合、静電相互作用、双極子‐双極子相互作用、ファンデルワールス力、又はそれらの組み合わせなど、エクソソームとSCPの間の任意の適切なタイプの化学結合及び/又は相互作用を含むことができる。
【0062】
一実施形態では、エクソソーム‐SCP複合体は、約102エクソソーム/gSCPから約109エクソソーム/gSCP以上、あるいは約103エクソソーム/gSCPから約108エクソソーム/gSCP、又はあるいは約106エクソソーム/gSCPから約108エクソソーム/gSCPの量のエクソソームを含むことができる。所与の量の全血及び/又は血漿からSCPに結合してエクソソーム‐SCP複合体を形成するエクソソームの量は、癌などの病状の有無を示し得る。さらに、全血からのエクソソームの除去は、例えば、疾患に罹患した対象の全血又は血漿からの疾患由来のエクソソームの除去、及び病状に罹患している対象へのエクソソームが枯渇した全血(又は血漿などのその成分)の戻しを介して、癌などの特定の病状を治療又は治癒することを提供し得る。
【0063】
いくつかの実施形態において本明細書に開示されるのは、体液(例えば、全血、血漿、脳脊髄液)を本明細書に開示されるタイプのSCPと接触させることを含む、対象を治療する方法である。
【0064】
したがって、そのような実施形態では、対象は、転移していない悪性腫瘍と診断され得る。いくつかの他の実施形態では、治療は、悪性腫瘍の転移を予防又は遅延させる。
【0065】
本明細書に記載されているように、そのような方法は、次に、癌転移を単独で、又は他の形態の治療と組み合わせて制御するために使用され得る。いくつかの炭素ビーズは、エクソソームの吸着に効率的であることが確認されているが、いくつかの実施形態では、SCP‐1が最も効率的であると判断された。
【0066】
いくつかの実施形態におけるSCP‐1は、炭化材料を含み、いくつかのさらなる実施形態において、SCP‐1は、フェノール樹脂を含み、フェノール樹脂は、約300~約800m2/g、約400~約600m2/g、約500~約570m2/g、及び約525m2/g~約575m2/gの表面積を含むように構成される。いくつかの他の実施形態では、SCP‐1は細孔を含み、細孔は、約2nm~約120nm;約10nm~約100nm;約20nm~約90nm、約25nm~約85nm、約30nm~約80nm、約35nm~約75nm、約40nm~約70nm、約45nm~約70nm、約50nm~65nm、及び約55nm~約60nmであり得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、SCP‐1は活性化されない。他のいくつかの実施形態では、SCP‐1を構成する炭素材料は活性炭ではない。他の実施形態では、SCP‐1が活性化される。他のいくつかの実施形態では、SCP‐1を構成する炭素材料は活性炭である。
【0068】
いくつかの実施形態において、そのような炭素源の吸着の効率を評価するための実験は、転移性卵巣腫瘍を有する患者からの血漿を利用することを含み、血漿は腫瘍由来のエクソソームを含む。
【0069】
さらなる実施形態において、実験は、膠芽細胞腫細胞株からの細胞培地で実施され、転移性卵巣腫瘍に由来するエクソソームについて見られるのと同様の吸着効率を観察した。
【0070】
健康管理対象の血漿に由来するエクソソームもまた、そのような炭素材料又はSCPによる吸着を受けることが見出されたが、効率は著しく低下した。したがって、SPC SCP‐1は、いくつかの実施形態では、エクソソームに特異的である可能性がある。この仮説は、血漿又は血液への曝露後に炭素材料から遊離DNAが検出又は抽出されなかったため、支持されている。SCP‐1は少なくとも卵巣及び膠芽細胞腫由来のエクソソームからのエクソソームに選択的である。また、SCP‐1は対象由来のサンプルに存在するすべてのエクソソームを除去しなかったため、炭素材料は低毒性であることが示唆された。
【実施例】
【0071】
実験セクション:血漿分子及び粒子の、炭素SCP‐1などのSPCへの吸着及び結合の実施形態が本明細書に開示されている。
【0072】
本明細書で使用されるいくつかの吸着材料の実施形態を評価するために初期実験を行った:精製されたエクソソーム(サイズが50~100nm)及び数で約10
8及び10
9を、異なるSCP:炭素SCP‐1及びSCP‐3と接触させ、異なるSCPへのエクソソームの結合/吸着を可能にするために、約24時間攪拌された。エクソソームの負荷を追加することで(10
9)、SCP‐1は約10
7個のエクソソームを除去することができた(
図6(A~C)。ここで説明する実施形態は、したがって、炭素SCP‐1がSCP‐3より大きい数のエクソソームに効果的に結合/吸着できることを明らかにする。
【0073】
実験1に記載されているように、このメカニズムは、同様の年齢の健康なドナーからの血漿と比較して、卵巣癌患者からの血漿を使用する臨床サンプルについて確認された。
【0074】
実験1:一実施形態では、卵巣癌患者の同等の血漿量からのエクソソーム吸着/結合を、手術の前後に評価した。ここで、前記対象からの血漿は、1×PBS及び0.2gのSCP‐1に添加された1mLの希釈剤で1/10に希釈された。いくつかの実施形態では、SCP‐1は、250~500nmの粒径及び約27nmの細孔径を有する。
【0075】
混合物を、回転子上で連続的に混合しながら、室温でインキュベートした。24時間後、混合物を1500rpmで5分間、室温で遠心分離した。非結合エクソソームを含む上清を新しいチューブに移した。ペレットを200μLの1xPBSに再懸濁し、混合物を95℃で10分間煮沸して、結合エクソソームを分離した。サンプルを1500rpmで5分間遠心分離し、結合エクソソームを含む上清を別のチューブに入れた。非結合及び結合エクソソームは、ナノ粒子追跡分析(NTA)によって分析された。ここで、NTAは、単一粒径と濃度を測定及び分析するために使用される手法である(
図7(A)及び
図7(B)を参照)。実験対照を並行して実施し、健康な年齢が一致する対象からの血漿を同様の処理に供した。手術前、
図1(a)に示すように、対象の血漿は、対照の対象と比較して、非結合エクソソームの数が少ない。実験対照は並行して実施され、健康で年齢が一致する対象からの血漿が同様の処理を受けた(
図1(a))。したがって、一実施形態では、腫瘍由来のエクソソームの数の増加と比較して、手術前の非結合エクソソーム粒子が比較的少なかったため(術後/手術後の血漿サンプルについて
図1(b)及び
図1(C)に見られるように)、実際には、炭素(SCP‐1)と相互作用する腫瘍由来のエクソソーム発現マーカーが存在する可能性がある。
【0076】
これらのデータは、この炭素SCP‐1を臨床的に使用して、卵巣癌対象におけるエクソソームの負荷を低減できることを示している(
図8(A~C)。いくつかの実施形態においても、エクソソームが炭素(SCP‐1)に結合する能力)が、時間とともに正常化するように見える。
【0077】
実験2:いくつかの実施形態では、SCP‐1へのいくつかの実施形態などで、DNAがSCPに結合できるかどうかを決定するための試験が行われた。結果は
図3に示しており、実験1の上清には無細胞DNAが存在するが、2%アガロースで電気泳動した本明細書に記載されている実験1の結合及び非結合サンプルのゲル電気泳動によって示されるように、炭素に結合したDNAの証拠は明らかではなかった。
【0078】
実験3:いくつかの実施形態において、タンパク質の総量は、対照と比較して、実験1からの結合及び非結合サンプルにおいて評価された。実験1のサンプルにおけるタンパク質の結合/吸着は、
図4に示すように、総タンパク質についてブラッドフォードアッセイによって評価された。ここで、患者と対照からの結合及び非結合タンパク質について手術前及び手術後のデータ‐1と手術後のデータ‐2が評価された。いくつかの実施形態において、総タンパク質の量は、結合されたエクソソームサンプルにおいて、手術後の時間とともに増加することが分かる。
【0079】
したがって、本明細書に開示されるのは、個体又は対象からの全血又は血漿を吸着材料、好ましくはSCP、又は最も好ましくはSCP‐1と接触させ、いくつかの実施形態において、対象の血漿又は血液から疾患由来又は疾患誘発性のエクソソームを除去することにより、敗血症性ショック、癌、多形性膠芽腫(GMB)、及び妊娠高血圧腎症(子癇前症)、又は他のそのような状態などであるがこれらに限定されない病状に罹患している個体又は対象を特定及び治療するための方法の実施形態である。エクソソームは、病状を特定するために定量化され、対照と比較され、適切な治療(処置)は、当業者によって投与され得る。したがって、いくつかのさらなる実施形態において、処理された血液は、そのような病状を治療するために再構成され、対象に投与され、ここで、処理された血液は、単独で、又は他の治療又は治療量の医薬組成物と組み合わせて、当業者により投与され得る。
【0080】
追加の開示
以下は、本開示による非限定的な特定の実施形態である。
【0081】
第1の実施形態は、対象から全血を得ること、全血を血漿、及び少なくとも1つの細胞血液画分に分離すること、ここで、前記血漿が第1の量の非結合エクソソームを含む、血漿を合成炭素粒子(SCP)を含む吸着材料と接触させ、処理された血漿、及び複合体を形成すること、ここで、前記処理された血漿は、第2の量の非結合エクソソームを含み、前記複合体は、ある量のSCP結合エクソソームを含む、及び第2の量の非結合エクソソームを第1の対照と比較すること、及び/又はSCP結合エクソソームを第2の対照と比較することを含む方法である。
【0082】
第2の実施形態は、前記第1の対照が既知量の非結合エクソソームを含み、前記第2の対照が既知量の結合エクソソームを含む、第1の実施形態の方法である。
【0083】
第3の実施形態は、第2の量の非結合エクソソームが第1の対照と異なる場合に、及び/又はSCP結合エクソソームの量が第2の対照と異なる場合に、対象は病状を有すると診断され又は疑われる、第1又は第2の実施形態のいずれかの方法である。
【0084】
第4の実施形態は、病状が癌である第3の実施形態の方法である。
【0085】
第5の実施形態は、癌が、膵臓癌、卵巣癌、膠芽細胞腫、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、第4の実施形態の方法である。
【0086】
第6の実施形態は、前記SCPが多孔質フェノール樹脂を含む、第1から第5の実施形態のいずれかの方法である。
【0087】
第7の実施形態は、前記SCPがメソ細孔、ミクロ細孔、マクロ細孔、又はそれらの組み合わせを含む、第6の実施形態の方法である。
【0088】
第8の実施形態は、前記メソ細孔が直径約2nm~約50nmである、第7の実施形態の方法である。
【0089】
第9の実施形態は、前記ミクロ細孔が直径約2nm未満である、第7の実施形態の方法である。
【0090】
第10の実施形態は、前記マクロ細孔が直径約50~約120nmである、第7の実施形態の方法である。
【0091】
第11の実施形態は、SCP結合エクソソームの量が約102エクソソーム/gSCPから約109エクソソーム/gSCP以上である、第1から第10の実施形態のいずれかの方法である。
【0092】
第12の実施形態は、前記合成炭素粒子(SCP)が約300~900m2/gの表面積を含む、第1から第11の実施形態のいずれかの方法である。
【0093】
第13の実施形態は、対象から全血を得ること、全血を血漿及び1つ又は複数の細胞血液画分に分離すること、ここで、血漿は、第1の量のエクソソームを有する、血漿を吸着材料と接触させ、処理された血漿を形成すること、ここで、処理された血漿は、第2の量のエクソソームを有し、第1の量のエクソソームは、第2の量のエクソソームよりも多い、処理された血漿を1つ又は複数の細胞血液画分と接触させること、及び再構成された全血を形成すること、及び再構成された全血を対象に投与することを含む治療方法である。
【0094】
第14の実施形態は、前記吸着材料が合成炭素粒子(SCP)を含む、第13の実施形態の方法である。
【0095】
第15の実施形態は、前記SCPが約300~900m2/gの表面積を含む、第14の実施形態の方法である。
【0096】
第16の実施形態は、前記SCPがメソ細孔、ミクロ細孔、マクロ細孔、又はそれらの組み合わせを含む、第14の実施形態の方法である。
【0097】
第17の実施形態は、前記メソ細孔、ミクロ細孔、マクロ細孔が、それぞれ、直径約2nm~約50nm、約2nm未満、及び約50~約120nmである第16の実施形態の方法である。
【0098】
第18の実施形態は、前記方法が、単独で、又は特定された病状に対する他の形態の治療と組み合わせて使用される、第13から第17の実施形態のいずれかの方法である。
【0099】
第19の実施形態は、対象から全血を得ること、全血を血漿、及び少なくとも1つの細胞血液画分に分離することを含み、前記血漿が第1の量の非結合エクソソームを含む、血漿をSCP‐1と接触させて、処理された血漿、及び複合体を形成すること、ここで、前記処理された血漿は、第2の量の非結合エクソソームを含み、前記複合体は、SCP‐1結合エクソソームを含む、第2の量の非結合エクソソームを第1の対照と比較すること、及び/又は結合エクソソームを第2の対照と比較すること、ここで、結合エクソソームの量は、約102エクソソーム/gSCPから約109エクソソーム/gSCP以上である、及び第2の量の非結合エクソソーム及び/又は結合エクソソームの量が、第1の対照及び/又は第2の対照とは異なる場合に、対象が病状を有すると診断することを含む、病状を診断する方法である。
【0100】
第20の実施形態は、比較するステップに基づいて対象が病状を有する場合、全血又は血漿からエクソソームの少なくとも一部を除去すること、エクソソーム除去プロセスに付された全血又は血漿を患者に戻して投与する、第1の実施形態の方法である。
【0101】
本発明の実施形態が示され、説明されているが、その変更は、本発明の精神及び教示から逸脱することなく、当業者によって行うことができる。本明細書に記載の実施形態は例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。本明細書に開示される本発明の多くの変形及び変更が可能であり、本発明の範囲内である。数値の範囲又は限定が明示的に記載されている場合、そのような明示の範囲又は限定は、明示的に記載された範囲又は限定内にある同様の大きさの反復範囲又は限定を含むと理解されるべきである(例えば、約1から約10には、2、3、4等が含まれる;0.10より大きいには、0.11、0.12、0.13などが含まれる。)例えば、下限RL及び上限RUの数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数が具体的に開示される。特に、範囲内の以下の数値が具体的に開示されている:R=RL+k*(RU-RL)、ここで、kは、1パーセント刻みで1パーセントから100パーセントの範囲の変数であり、すなわち、kは1パーセントであり、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、・・・、50パーセント、51パーセント、52パーセント、・・・、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、又は100パーセントである。さらに、上記で定義された2つのR数字によって定義された任意の数値範囲も具体的に開示されている。特徴が「任意選択」として説明される場合、この特徴を備えた実施形態とこの特徴を備えていない実施形態の両方が開示される。同様に、本開示は、この特徴が必要とされる実施形態及びこの特徴が具体的に除外される実施形態を包含する。どちらの選択肢も、特許請求の範囲内にあることを意図している。含む(comprises)、含む(includes)、有する(having)などのより広い用語の使用は、からなる(consisting of)、本質的にからなる(consisting essentially of)、実質的にからなる(comprised substantially)などのより狭い用語のサポートを提供すると理解されるべきである。
【0102】
したがって、保護の範囲は、上記の説明によって限定されるのではなく、以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は、特許請求の範囲の主題のすべての均等物を含む。すべての特許請求の範囲は、本発明の実施形態として明細書に組み込まれる。したがって、特許請求の範囲はさらなる説明であり、本発明の実施形態への追加である。関連技術の説明における参考文献の議論は、それが本発明の先行技術であること、特に本出願の優先日より後に公開日を有する可能性のある参考文献であることを認めるものではない。本明細書で引用されたすべての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、それらが本明細書に記載されたものを補足する例示的、手順的又は他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。