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特許7489982二輪車両で自律制動を実行するための方法および装置
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  • 特許-二輪車両で自律制動を実行するための方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】二輪車両で自律制動を実行するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20240517BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20240517BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20240517BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20240517BHJP
   B60W 50/08 20200101ALI20240517BHJP
【FI】
B60T7/12 B
B60W30/08
B60W40/02
B60W40/08
B60W50/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021532440
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2019076562
(87)【国際公開番号】W WO2020119976
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】102018221720.3
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】クレヴス,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァル,アンニャ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンツラー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シューマッヒャー,ヤン
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】中屋 裕一郎
【審判官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118716(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173670(WO,A1)
【文献】特開2019-172155(JP,A)
【文献】特開2010-173408(JP,A)
【文献】特開2018-176861(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216308(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/190178(WO,A1)
【文献】特開2009-8614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/00 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
B60W 10/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車両で自律制動を実行するための方法において、
周辺センサ(308)を用いて車両減速の必要性を検出し(102)、
それに依存して、運転者とは無関係に車両減速を開始し(103)、
前記車両減速(103)の開始後に、車両減速操作をコントロールするための運転者のスタンバイ状態を示す運転者スタンバイ状態値を算出し(104)、
前記運転者スタンバイ状態値に依存して車両減速を継続し(106,107)、
運転者とは無関係な車両減速の開始後に、運転者とは無関係に車両減速を開始することにより生じる変化が圧縮ストロークセンサ(302,307)によって検出され、当該圧縮ストロークセンサ(302,307)のアウトプット信号を用いて前記運転者スタンバイ状態値が算出され
前記運転者スタンバイ状態値として3つの値を採用し、この場合、
前記3つの値のうちの1つが、車両減速操作のためのスタンバイ状態にある運転者の状態を信号で伝え(202)、
前記3つの値のうちの別の1つが、運転者のニュートラル状態を信号で伝え(200)、
前記3つの値のうちの残りの1つが、車両減速操作のためのスタンバイ状態にない運転者の状態を信号で伝え(201)、
前記運転者のニュートラル状態は、前記スタンバイ状態にある運転者の状態と前記スタンバイ状態にない運転者の状態との間の運転者の状態である、
二輪車両で自律制動を実行するための方法。
【請求項2】
前記周辺センサ(308)が、レーダセンサ装置、ライダーセンサ装置またはビデオセンサ装置であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
運転者のスタンバイ状態(202)において、自律制動を計画通りの目標制動力変化で実行し(106)、
運転者のニュートラル状態(200)において、前記計画通りの目標制動力変化と比較してより弱い減速および/またはより小さいジャークを伴う制動力変化を有する自律制動を実行し、
スタンバイ状態にない運転者の状態(201)において、前記自律制動を中断するか、または運転者のニュートラル状態における制動力変化と比較してより弱い減速および/またはより小さいジャークを有する制動力変化を実行する(107)、
ことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記運転者スタンバイ状態値(200,201,202)を、運転者とは無関係な車両減速の開始後に、車両に取り付けられた圧力感知式の接触センサのアウトプット信号を用いて算出することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法を実行するために構成された手段を含有する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車両で自律制動を実行するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
事前公開されていない特許文献1は、二輪車両の運転者支援システムを運転するための方法に関し、この方法は、介入のステップで、運転者特有のドライビングダイナミクスプロファイルおよび瞬間的な走行状態に依存して運転者支援システムが介入し、この際に、ドライビングダイナミクスプロファイルが、過去の二輪車両の運転者によって運転された傾斜状態値とこの際に運転された加速度値との間の関係を表し、走行状態が瞬間的に検出された加速度値および瞬間的に検出された傾斜値を表す、ことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】ドイツ連邦共和国特許出願第102017210500.3号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明は、二輪車両、特に自動二輪車で自律制動を実行するための方法に関し、この方法において、
-周辺センサを用いて車両減速の必要性が検出され、
-それに依存して、運転者とは無関係に車両減速が開始され、
-車両減速の開始後に、車両減速操作をコントロールするための運転者のスタンバイ状態を示す運転者スタンバイ状態値が算出され、
-運転者スタンバイ状態値に依存して車両減速の経時変化が継続される。
【0005】
本発明は、二輪車両の自動制動時に危険性を低下させることができる。制動のための準備状態にない注意力散漫な運転者は、このような状況において二輪車両のコントロールを完全に失うことになるので、車両減速操作をコントロールするための運転者のスタンバイ状態を表す運転者スタンバイ状態値を非常ブレーキ操作に算入することが有意義である。
【0006】
本発明の好適な実施形態によれば、周辺センサが、レーダセンサ装置、ライダーセンサ装置またはビデオセンサ装置であることを特徴とする。このような形式のセンサ装置は、乗用車分野で既に広く普及しており、二輪車両分野で共同利用されてよい。
【0007】
本発明の好適な実施形態によれば、運転者スタンバイ状態値として少なくとも2つの異なる値が採用され得ることを特徴としている。
【0008】
本発明の好適な実施形態によれば、運転者スタンバイ状態値として3つの値を採用することができ、この場合、
-前記3つの値のうちの1つが、車両減速操作のためのスタンバイ状態にある運転者の状態を信号で伝え、
-前記3つの値のうちの別の1つが、運転者のニュートラル状態を信号で伝え、
-前記3つの値のうちの残りの1つが、車両減速操作のためのスタンバイ状態にない運転者の状態を信号で伝える、
ことを特徴としている。
【0009】
本発明の好適な実施形態によれば、
-運転者のスタンバイ状態において、自律制動が計画通りの目標制動力変化で実行され、
-運転者のニュートラル状態において、計画通りの目標制動力変化と比較してより弱い減速および/またはより小さいジャークを伴う制動力変化を有する自律制動が実行され、
-スタンバイ状態にない運転者の状態において、自律制動を中断するか、または運転者のニュートラル状態における制動力変化と比較してより弱い減速および/またはより小さいジャークを有する制動力変化が実行される、
ことを特徴としている。
【0010】
スタンバイ状態にないと認識された運転者状態において、より低い強さで非常ブレーキを実行することによって、二輪車両でコントロールを失うことによる運転者の転倒の危険性は低下され得る。しかも、より弱い非常ブレーキによって、注意力散漫な運転者の注意が最新の走行状況に向けられる。何故ならば、非常ブレーキは同時に運転者警告として働くからである。
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、運転者スタンバイ状態値が、運転者とは無関係な車両減速の開始後に、自動車に取り付けられた慣性センサのアウトプット信号を用いて算出されることを特徴とする。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、運転者スタンバイ状態値が、運転者とは無関係な車両減速の開始後に、ステアリングアングルおよび/またはステアリングモーメントを用いて算出されることを特徴とする。
【0013】
本発明の好適な実施形態によれば、運転者スタンバイ状態値が、運転者とは無関係な車両減速の開始後に、自動車に取り付けられた圧力感知式の接触センサのアウトプット信号を用いて算出されることを特徴とする。
【0014】
本発明の好適な実施形態によれば、運転者スタンバイ状態値が、運転者とは無関係な車両減速の開始後に、ホイール回転数センサまたは圧縮ストロークセンサのアウトプット信号を用いて算出されることを特徴とする。
【0015】
さらに本発明は、本発明による方法を実行するために構成された手段を含有する装置を含む。この場合、装置は、特に本発明による方法を実行するためのプログラムコードが記憶されているコントロールユニットである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の1実施形態の時間経過を示す図である。
図2】3つの運転者状態のための状態図である。
図3】本発明のために使用可能な主要な自動二輪車構成要素を備えた自動二輪車の概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面は図1乃至図3を含む。
【0018】
前方モニタ式のセンサ装置が制動操作を開始すると、制動操作開始後に、車両に設けられたセンサを用いて車両および運転者から成る全システムの反応が算出される。この算出された反応から、運転者の最新の状態がモデリングできる。この運転者状態に依存して、その他の制動操作がパラメータ化され得る。運転者が制動スタンバイ状態にないことが確認されると、減速が弱められるかまたは完全に取り消され、それによって操作がコントロール可能に維持される。運転者の評価が終わる前に既に、自動的な制動操作が開始されることによって、強い減速を伴う非常ブレーキ時にかなりの制動距離が節約され得る。
【0019】
前方モニタ式のセンサ装置または周辺センサ装置は、レーダセンサ装置、ライダーセンサ装置またはビデオセンサ装置であってよい。さらに将来的に、自律式に制動操作を開始することができるネットワークシステムが仮想のセンサとみなされ得る。
【0020】
周辺センサ装置のアウトプット信号を用いて、目標減速が算出され、トリガ信号がブレーキシステムに送信され、このブレーキシステムが制動操作を開始する。ブレーキシステムは、まず運転者の状態を検知することなしに、エンジントルク低下またはブレーキトルク上昇を介して減速を開始する。特にニュートラルな運転者状態が採用され得る。全システム反応の測定によって、運転者の状態がモデリングされ得る。このために、第1のステップで、慣性センサ装置の測定結果から運転者の操作スタンバイが導き出される。例えば減速トルクが加えられ、運転者が片手だけでハンドルを握っていれば、運転者の支持トルクがハンドル運動を生ぜしめる。このような運動は、運転者と車両とから成る全システムのダイナミックスの変化を生ぜしめ、この変化が慣性測定技術で記録される。このことから、運転者は片手だけでハンドルを強く握っていて、従って減速操作のためのスタンバイ状態にない、ということが推定される。
【0021】
運転者のモデルは、図2に示されているように、例えば3つの状態を含んでいる。ここでは、ブロック200は状態「ニュートラル」、ブロック201は状態「操作のためのスタンバイ状態にない」、ブロック202は状態「操作のためのスタンバイ状態にある」を示す。
【0022】
この状態に依存して、ブレーキ作動時に、運転者状態が「操作のためのスタンバイ状態にある」と検出されたときに、目標制動が実行される。運転者状態「操作のためのスタンバイ状態にない」が確認された場合、適合された減速を伴う操作が実行される。例えば、適合された制動における減速の大きさは、目標値に対して減少されてよい。補足的にまたは選択的に、ジャーク、つまり減速の時間微分は減少されてよい。操作の過程で運転者の状態が変わると、制動操作も相応に変化され得る。さらに、運転者状態を算出するために、次のセンサ信号が評価されてよい:
-ステアリングアングルおよび/またはステアリングモーメントを用いて車両のハンドル反応が算出され得る、
-ばねストロークセンサによって車両のピッチング運動が算出され得る、
-ホイール回転数センサ、
-例えばグリップ、膝または足等の接触点における支持の程度を測定するための、圧力感知式の接触センサ。
【0023】
図1は、本発明の実施形態の時間経過を示す。ブロック101におけるこの方法のスタート後に、ブロック102で周辺検出が実行される。周辺検出時に、自動制動または非常ブレーキが必要であるかどうかが算出される。自動制動または非常ブレーキが必要である場合、ブロック103で自動制動が開始される。制動を必要としない場合、ブロック103からブロック102へ戻される。制動中に検出されたデータにより、ブロック104で運転者状態モデルを用いて、自動制動をコントロールするための運転者の瞬間的なスタンバイ状態が算出される。それに依存してブロック105で、制動のさらなる変化を決定する。図1では、このために例えば2つの可能な制動力変化が用いられる。運転者状態が制動スタンバイ状態であると算出されると、ブロック106で、計画通りに開始された自動制動がその目標変化で以って継続される。これに対して、運転者状態が制動スタンバイ状態にないと算出されると、ブロック107で、開始された自動制動が弱められた形だけで実行されるかまたは完全に中断される。ブロック108でこの方法は終了する。
【0024】
図2は、状態図の形で例えば次の状態を示す:
ブロック200:運転者状態ニュートラル
ブロック201:運転者状態「自動制動操作のためのスタンバイ状態にない」
ブロック202:運転者状態「自動制動操作のためのスタンバイ状態にある」
3つの状態間の両方向に向けられた矢印接続は、運転者状態が自動制動操作中に変化したときに、異なる状態間の移行も可能であることを示す。
【0025】
図3には、本発明のために使用可能な以下の主要な自動二輪車構成要素を備えた自動二輪車の概略的な側面図が示されている。
301:後輪ブレーキ
302:後輪のばねストロークセンサ/圧縮ストロークセンサ、
303:ブレーキコントロールユニット
304:エンジンコントロールユニット
305:前輪ブレーキ
306:前輪のホイール回転数センサ
307:前輪のばねストロークセンサ/圧縮ストロークセンサ
308:周辺センサ
309:ステアリングアングルセンサ
310:ステアリングモーメントセンサ
311:運転者状態のための評価ユニット
312:慣性測定技術
313:前輪のホイール回転数センサ
【符号の説明】
【0026】
101 スタート
102 車両減速の必要性の検出
103 車両減速の開始
104 運転者スタンバイ状態の算出
105 制動のさらなる変化
106,107 車両減速の経時変化の継続
108 終了
200 ニュートラル状態
201 スタンバイ状態にない
202 スタンバイ状態にある
図1
図2
図3