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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】風力タービン用のロータブレード
(51)【国際特許分類】
   F03D 1/06 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
F03D1/06
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021543330
(86)(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2020051232
(87)【国際公開番号】W WO2020152080
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】19153139.1
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521325813
【氏名又は名称】ベプファ、テクニクス、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】WEPFER TECHNICS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ハンス、ベプファ
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0300316(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0064979(US,A1)
【文献】特開2003-254225(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0131107(US,A1)
【文献】特許第6426869(JP,B1)
【文献】欧州特許第02998572(EP,B1)
【文献】独国特許出願公開第102014115524(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電機用のロータブレード(100)であって、
ロータブレード根元(102)と、
ロータブレード外縁(104)と、
前縁(106)および後縁(108)であって、前記前縁(106)および前記後縁(108)は、翼弦(110)を定義し、前記翼弦の長さは、前記ロータブレード根元(102)から前記ロータブレード外縁(104)にゆくに従って増加するように構成されている、前記前縁(106)および前記後縁(108)と、
前記ロータブレード根元(102)から前記ロータブレード外縁(104)まで延びるロータブレード中心線(114)を定義する複数の翼弦中心点(112)と、
を備え、
前記ロータブレード中心線(114)が前記ロータブレード外縁(104)を前縁側部分(116)と後縁側部分(118)とに分割しているものにおいて、
前記ロータブレード外縁(104)に、前記後縁側部分(118)のみに沿って延びるウィングレット(120)が配置されていることを特徴とする、ロータブレード(100)。
【請求項2】
前記後縁側部分(118)と前記ウィングレット(120)の基部(122)との間の間隔(A)が、前記ロータブレード中心線(114)から前記後縁(108)の方向にゆくに従って増加していることを特徴とする、請求項1に記載のロータブレード(100)。
【請求項3】
前記ウィングレット(120)の基部(122)は、ロータブレード面内において円形であることを特徴とする、請求項2に記載のロータブレード(100)。
【請求項4】
前記ウィングレット(120)の円形の前記基部(122)が、前記ロータブレード(100)の回転円(202)の一部であることを特徴とする、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載のロータブレード(100)。
【請求項5】
プロファイル厚さ(D)が前記ロータブレードの根元(102)から前記ロータブレードの外縁(104)に向かって減少することを特徴とする、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載のロータブレード(100)。
【請求項6】
前記翼弦(110)の長さに対する前記プロファイル厚さの比が、前記ロータブレード根元(102)から前記ロータブレード外縁(104)までほぼ一定に構成されていることを特徴とする、請求項5に記載のロータブレード(100)。
【請求項7】
前記ロータブレード(100)は、前記ロータブレード根元(102)のところで少なくとも30°の迎え角(α)を有することを特徴とする、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載のロータブレード(100)。
【請求項8】
前記ロータブレード外縁(104)のところでの迎え角(α)が最大で5°であることを特徴とする、請求項1から7のうちのいずれか一項に記載のロータブレード(100)。
【請求項9】
前記ロータブレード外縁(104)のところでの迎え角(α)が、前記前縁(106)のところではゼロより大きく、前記後縁(108)のところではゼロ以下であることを特徴とする、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載のロータブレード(100)。
【請求項10】
前記ロータブレード(100)は、前記ロータブレード根元(102)から前記ロータブレード外縁(104)に至るまで連続するねじれを有することを特徴とする、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載のロータブレード(100)。
【請求項11】
前記前縁(106)と前記後縁(108)の両方が鎌形であることを特徴とする、請求項1から10のうちのいずれか一項に記載のロータブレード(100)。
【請求項12】
前記ロータブレード中心線(114)がブレード長手方向軸線(124)に対して回転方向に補足的な傾斜を有することを特徴とする、請求項1から11のうちのいずれか一項に記載のロータブレード(100)。
【請求項13】
前記ロータブレード中心線(114)の前記補足的な傾斜は、1°から10°の間、特に2°から6°の間、特に3°から4°の間の補足的な傾斜角(β)を有することを特徴とする、請求項12に記載のロータブレード(100)。
【請求項14】
前記ロータブレード(100)がブレード長手方向軸線(124)に形成された湾曲を有することを特徴とする、請求項1から13のうちのいずれか一項に記載のロータブレード(100)。
【請求項15】
請求項1から14のうちのいずれか一項に記載のロータブレード(100)を複数備えた風力発電機用のロータリム(200)。
【請求項16】
前記ロータリム(200)は、少なくとも2つ、多くとも8つのロータブレード(100)、特に6つのロータブレード(100)を備えていることを特徴とする、請求項15に記載のロータリム(200)。
【請求項17】
前記ロータリム(200)の周速比(tip speed ratio)が最大で7、特に最大で4、特に1.5であることを特徴とする。請求項15または16に記載のロータリム(200)。
【請求項18】
請求項1から14のうちのいずれか一項に記載のロータブレード(100)を備えた風力発電機(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービン(風車)用のロータブレードであって、ロータブレード根元、ロータブレード先端、前縁および後縁を備えたロータブレードに関するものである。前縁および後縁は、翼弦(profile chord)を規定する。さらに、本発明は、ロータブレードを備えたロータリム、および、ロータブレードを備えた風力タービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロータブレード、ロータリム、風力発電機は、先行技術でよく知られている。
【0003】
例えば、欧州特許EP2998572B1号には、上面、下面、前縁、後縁、ハブ締結手段およびブレード先端部を有する風力発電機用ロータブレードが記載されており、風力発電機用ロータブレードは、ハブ領域、中間領域およびブレード先端領域に分割され、ハブ締結手段から最大ブレード深さまでの根元領域が定義されている。風力発電機用ロータブレードの内部には、抽出領域からの抽出空気を翼端領域に配置された排出領域に導くための半径方向外向き空気案内ダクトが設けられている。境界層吸引動作が行われ、空気の抽出は風力発電用ロータブレードの上側で行われ、ハブ締結手段に近いハブ領域には、ハブ締結手段の方向への流れを防ぐための境界層フェンスが設けられている。
【0004】
風力発電所のロータブレードの場合、ロータブレードの圧力側と吸引側の間で望ましくない圧力の均等化が翼端の領域で発生することがあり、この圧力の均等化が発生すると、空気はブレード先端部の周りを流れる。この効果により、ブレード先端領域の揚力が低下し、流れの抵抗を増加させる顕著な渦が発生する。このタイプのロータブレードの場合、ブレード先端領域では、通常、ブレードの迎え角が小さく、揚力がほとんどないか、あるいはまったくない翼型で、翼弦長が短くなっているものが用いられている。その結果、渦の発生を抑えることができるが、ブレード先端領域では最適ではない揚力が残る。
【0005】
文献ドイツ国特許公開DE102014115524A1号には、ブレード根元からブレード先端に向かって以下の順序で互いに隣接する部分を有する風力発電所のロータブレードが記載されている。ロータブレードは、ロータハブに接続するためのブレード接続部と、吸引側および圧力側を備えた空力的プロファイルを有するとともに吸引側に向かってまたは圧力側に向かって湾曲する移行セクションを有するロータブレード主部と、各々が1つのコード(翼弦)と1つのコード中心点を有する複数のプロファイル(翼型)を有するウィングレットと、を備えている。さらに、風力発電所のロータブレードは、(前述した複数の)コードが配置されたウィングレット面と、(複数の)コード中心点を互いに連結する中心線と、プロファイル後縁と、プロファイル前縁と、高さと、移行セクションに隣接するベースセクションと、ブレード先端に隣接するチップセクションと、ベースセクションとチップセクションとを互いに連結する中心セクションと、を備えている。ウィングレット面内に設けられ、移行セクションに隣接するウィングレットのプロファイルのコードと直交する基準線と、中心線との間のスイープ角は、ベースセクションにおけるスイープ角よりもチップセクションにおけるスイープ角の方が大きい(スイープ角は、基準線からウィングレットのプロファイル端縁に向かう方向に測定される)。ウィングレットのプロファイル端縁は、少なくとも1つの部分で凹状に湾曲している。
【0006】
風力発電所の既知のロータブレードの場合、ウィングレットを使用しても、ブレード先端部での周囲の流れを完全に回避することはできない。使用時には、既知のロータブレードは依然として大きな渦を有しており、これはロータブレードの効率の程度、ひいては風力発電所の効率の程度にネガティブな影響を与える。さらに、先行技術で知られている風力発電所は、大量の騒音を発生させている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、風力発電システム用のロータブレードを提供することであり、このロータブレードは、冒頭で述べた技術分野に属し、運転中に、より高度な効率化と騒音の低減を可能にするものである。
【0008】
どのようにして目的が達成されるかは、請求項1の特徴によって定義される。本発明は、ロータブレード根元、ロータブレード外縁、前縁および後縁を有する風力タービン用のロータブレードであって、前縁および後縁は翼弦(コード)を定義し、この翼弦の長さがロータブレード根元からロータブレード外縁にゆくに従って増加するように構成されている、ことを特徴とする。また、ロータブレードは、ロータブレード根元からロータブレード外縁までの間に、ロータブレード中心線を規定する翼弦中心点を有し、ロータブレード中心線は、ロータブレード外縁を前縁側部分と後縁側部分に分けている。さらに、ロータブレード外縁には、後縁側部分のみに沿って延びるウィングレットが配置されている。
【0009】
本発明の文脈では、ロータブレードとは、特に風力発電所での使用に適したロータブレードを意味するものと理解される。したがって、ロータブレードまたはロータリム全体が、入射する風によって動き出すことができるという目的を満たさなければならない。これとは対照的に、本発明の文脈におけるロータブレードは、例えば、水の入射によって動き出すタイプのロータブレードとは区別されるべきである。これは、例えば水力発電所の場合である。駆動状態の流体の流れをもたらすために使用される既知のロータブレードは、同様に、本発明の文脈におけるロータブレードとは区別される。これは、例えば、船舶推進用のプロペラやファンの場合である。
【0010】
その結果、例えば、後縁のところ、特に、前記後縁側部分に隣接する後縁の領域において、改善された渦の離脱を達成することができるという技術的利点が得られる。その結果、風力発電装置全体の効率を大幅に向上させることができる。さらに、かなりの騒音低減をもたらすことができるので、本発明によるロータブレードのより多目的な使用を行うことができる。例えば、本発明によるロータブレードを備えた風力発電機を、住宅地のすぐ近くで使用することが可能である。
【0011】
好ましい一実施形態によれば、前記後縁側部分とウィングレットの基部との間の間隔Aは、ロータブレード中心線から後縁の方向にゆくに従って増加する。その結果、例えば、ウィングレットの高さが後縁の方向にゆくに従って連続的に増加するという技術的利点が達成される。この連続的な増加により、ロータブレード上の層流の剥離をより長い時間防ぐことができるため、渦の離脱の挙動をさらに改善することが可能となる。その結果、効率と騒音低減の度合いがさらに向上する。
【0012】
ウィングレットの周囲の流れを最適化し、ロータブレードの動作中に望ましくない境界層の剥離や乱れを低減するために、ウィングレットの基部はロータブレード面内で円形となっている。その結果、特に低い風速では、流体が偏向(deflection)の結果としてより多くの抵抗を受けるため、より多くのトルクを発生させることができる。全体として、効率の度合いがさらに高まることになる。
【0013】
さらに好ましい実施形態によれば、ウィングレットの円形の基部は、ロータブレードの回転円の一部である。その結果、例えば、ウィングレットの高さが後縁の方向に不均衡に増加するという技術的利点が達成される。ウィングレットの高さが不均衡に増加することで、渦の離脱の動作をさらに改善することができ、その結果、効率と騒音低減の度合いをさらに改善することができる。ロータブレードの適切な補足的な傾斜により、ウィングレットの不均衡な高さの増加の効果を促進することができる。ロータブレード根元からロータブレード外縁に至るまでの翼弦長(コード長)の増加により、ロータブレードの補足的な傾斜の結果として、ロータブレードの特に大きな面積の割合がウィングレットとして前記後縁側部分の領域で利用可能となる。
【0014】
特にロータブレードの外側領域では、ロータブレードの内側領域に比べて、ロータブレード根元からロータブレードの外縁に向けてプロファイル厚さが減少していると、より高速の故に有利である。その結果、外縁での吸引力が弱まり、その結果、圧力差の発生を抑えることができる。
【0015】
ロータブレード根元からロータブレードの厚さへの移行を特に低フリクションで実現するために、プロファイル厚さと翼弦の長さの比は、ブレードの長手方向に沿ってほぼ一定の構成となっている。
【0016】
ロータブレード根元とロータブレード外縁との間でロータブレードの動作中に発生する異なる速度の故に、ロータブレードの異なる部分には異なるタスクおよび/または効果が与えられる。例えば、ロータブレードのうち、ロータブレード根元の領域に配置されたロータブレードの領域には、起動のタスクが割り当てられている。言い換えれば、当該領域は、低い空気速度ないし風速であっても揚力を可能にし、したがって、ロータブレードの起動をもたらすことが重要である。起動をもたらすために、ロータブレードは、ロータブレード根元のところで少なくとも30°の迎え角(取付角)を有する。起動角度(running-up angle)は、所望の効果に応じて、大きくも小さくもできる。
【0017】
すでに述べたように、ロータブレードの異なる部分は、ロータブレード根元とロータブレード外縁との間でロータブレードの動作中に発生する異なる動作速度を考慮して、異なるタスクおよび/または効果を与えられる。例えば、ロータブレード外縁の領域には、抵抗翼部分(drag wing section)と呼ばれるものが割り当てられている。言い換えれば、空気ないし風の速度が低くても、できるだけ高い回転速度と高いトルクを実現するためには、前記領域ができるだけ大きな抵抗を発生させることが重要である。可能な限り大きな抵抗を実現し、ロータブレードの動きを維持するために、ロータブレードは、ロータブレードの外周で最大5°の迎え角を有している。
【0018】
特に好ましい一実施形態によれば、ロータブレード外縁のところでの迎え角は、前縁のところではゼロより大きく、後縁のところではゼロ以下である。前縁から後縁への迎え角の移行は、ロータブレード外縁の領域における翼弦の湾曲によって達成される。ここで、湾曲の程度は、所望の抵抗およびロータブレードの意図された周速に関連している。その結果、例えば、ロータブレードの後縁が流体中に実質的に層流状態を残すという技術的効果が得られる。その結果、後続のロータブレードは流体中の渦とほとんど戦う必要がなく、その結果、後続の各ロータブレードの場合に最適な程度の効率を達成することができる。
【0019】
すでに述べたように、迎え角はロータブレードの部分(断面)によって異っていてもよい。ロータブレードの動作中に望ましくない境界層の剥離や乱れを低減するために、ロータブレードは、ロータブレード根元からロータブレード外縁まで連続したねじれを有している。
【0020】
特に好ましい一実施形態によれば、前縁と後縁の両方が鎌形(三日月形)となっている。特に、ロータブレードの湾曲と連動した鎌形の構成は有利である。湾曲と鎌形の形状により、ロータブレードの根元の領域で高い迎え角が得られる。これは特に、ロータブレードの自己完結型の起動機能に好都合である。ロータブレードの外側の領域では、所望の抵抗翼機能のために、迎え角は外側に向かって減少し、このことは鎌形によってさらに支持される。
【0021】
運転中のロータブレードの安定性を高め、フラッター傾向を低減するために、ロータブレードの中心線は、翼の長手方向の軸に対して回転方向に補足的な傾きを有する。このようにしてロータブレードの幾何学的作用点(geometric action point)をロータブレード本体の外側に移動させ、その結果、起こりうるフラッターを大幅に減少させることができる。フラッターの抑制は、ロータブレードを継続的に緊張させた状態に保持するトルクによって支援される。言い換えれば、ロータブレードは従ってフェザリングピッチの方向となるような傾向を有する。
【0022】
特に好ましい一実施形態によれば、ロータブレード中心線の補足的な傾きは、1°から10°の間の補足的な傾斜角βを含む。さらなる実施形態によれば、ロータブレード中心線の補足的な傾斜は、2°以上6°以下の補足的な傾斜角を含む。さらなる実施形態によれば、ロータブレード中心線の補足的な傾斜は、3°から4°の間の補足的な傾斜角を含む。
【0023】
追加の実施形態によれば、ロータブレードは、ブレード長手方向軸線に構成された湾曲を有する。特に、ロータブレードの鎌形の構成と組み合わせた湾曲構成が有利である。湾曲と鎌形の形状により、ロータブレードの根元の領域で高い迎え角が達成される。これは、例えば、ロータブレードの自己完結型の起動(自己起動)機能に役立つ。ロータブレードの外側の領域における所望の抵抗翼機能のために、迎え角は外側に向かって減少し、これは鎌形の形状によって追加的にサポートされる。
【0024】
本発明のさらなる態様に関して、目的が達成される態様は、請求項15に記載の風力タービン用ロータリムによって定義される。したがって、ロータリムは、先行する実施形態の1つによる複数のロータブレードを備える。
【0025】
本発明によるロータリムの利点は、同様の形態で、本発明によるロータブレードの利点に対応しており、その結果、例えば、後縁での改善された渦の離脱を、特に、後縁側部分に隣接する各ロータブレードの後縁のその領域で達成することができる。その結果、風力発電システム全体の効率を大幅に向上させることができる。さらに、大幅な騒音の低減を実現することができ、本発明によるロータリムを多目的に使用することができる。例えば、本発明によるロータリムを備えた風力発電機を、住宅地のすぐ近くで使用することが可能である。
【0026】
ある特定の実施形態によれば、ロータリムは、少なくとも2枚、最大で8枚のロータブレードを備える。さらなる実施形態によれば、ロータリムは、6枚のロータブレードを備える。包括的な科学実験および風洞試験によれば、丁度6枚のロータブレードを有する本発明によるロータリムは、最大程度の効率を有する。これは、1つのロータブレードの後縁と次のロータブレードの前縁との間の間隔が、風力タービンの動作状態においてロータブレードの間で流体が可能な限り安定するように構成されているという事実によって立証される。これにより、後続のロータブレードに最適な流れの条件が与えられ、効率の度合いが高まる。ここでは、ロータリム全体の周速比(tip speed ratio)との密接な因果関係がある。
【0027】
さらなる実施形態によれば、ロータリムは、最大で7の周速比を有する。さらなる実施形態によれば、ロータリムは、最大で4の周速比を有する。さらにさらなる実施形態によれば、ロータリムは、1.5の周速比を有する。
【0028】
周速比(tip speed ratio)とは、風速に対する周速(circumferential speed)の割合を意味する。先行技術で知られている風力発電機は、周速比が5から8であり、いわゆる高速運転タービン(fast running turbine)と呼ばれている。本発明によるロータリムは、1.5の周速比も達成できることから、いわゆる低速運転タービン(slow running turbine)と呼ばれることになる。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、目的が達成される態様は、先行する実施形態の1つによるロータブレードまたはロータリムを備えた風力発電機によるものである。
【0030】
本発明による風力タービンの利点は、同様の形態で、本発明によるロータブレードの利点または本発明によるロータリムの利点に対応する。各ロータブレードの後縁での改良された渦の離脱も、本発明による風力タービンによって達成される。その結果、風力発電所の効率が大幅に向上することになる。さらに、かなりの騒音低減をもたらすことができ、これにより、本発明による風力タービンをより多目的に使用することができる。本発明による風力タービンは、例えば、住宅地のすぐ近くで使用することができる。
【0031】
本発明のさらに有利な実施形態および特徴の組み合わせは、以下の詳細な説明および特許請求の範囲の全体から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図面は例示的な実施形態を説明するために使用される。
【0033】
図1図1は、本発明によるロータブレードの一実施形態を示している。
図2図2は、補足的な傾斜角を持つ本発明によるロータブレードのさらなる実施形態を示している。
図3A図3Aは、図1のA-A断面における、本発明によるロータブレードの断面図である。
図3B図3Bは、図1のB-B断面における本発明によるロータブレードの断面図である。
図3C図3Cは、図1のC-C断面における本発明によるロータブレードの断面図である。
図3D図3Dは、図1のD-D断面における本発明によるロータブレードの断面図である。
図4図4は、本発明によるロータブレードを図1のE-E方向から見た側面図である。
図5図5は、本発明によるロータリムの図式図である。
【0034】
原則として、同一部品には同一符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明によるロータブレード100の一実施形態を示す。ロータブレード100は、複数のロータブレード100を備えて構成されるロータリム200(図示せず)に適している。ロータブレード100の下部は、ロータブレード100の動作時に風力タービンのハブに隣接するロータブレード根元102を備えている。ロータブレード100のロータブレード外縁104は、ロータブレード100の外端に位置しており、この外端部は、ロータブレード根元102の反対側に位置している。使用時のロータリム200の回転方向vは、ロータブレード外縁104の上に矢印で示されている。さらに、ロータブレード100は、前縁106と後縁108とを有する。前縁106と後縁108の両方は、それぞれの場合において、鎌形(sickle-shaped)の構成であり、2つの鎌形の湾曲のそれぞれの膨らみは、ロータブレード100の回転方向vにおいて前方に向かって構成されている。言い換えれば、ロータブレード100の鎌形の湾曲は、回転方向vと逆に形成されている。直線的な接続により、それぞれ、前縁106から後縁108までの翼弦110(図示せず)が定義される。これについては、図3A図3Dの説明でより詳細に説明する。翼弦(コード)110の長さは、ロータブレード根元102からロータブレード外縁104に至るまで連続的に増加する。各翼弦の幾何学的中心により、翼弦中心点112(図示せず)が定義される。ロータブレード根元102からロータブレード外縁104に至るまでのすべての翼弦中心点112の連続した経過すなわち連続した並置により、ロータブレード中心線114が定義される。ロータブレード中心線114は、前縁106および後縁108と同様に鎌形の構成となっている。
【0036】
ロータブレード100の上端部において、ロータブレード中心線114が、ロータブレード外縁104を前縁側部分116と後縁側部分118とに分割している。前縁側部分116は、前縁106に直接隣接するロータブレード外縁104の前半部(回転方向vにおいて)を規定する。これに対応して、後縁側部分118は、後縁108に直接隣接するロータブレード外縁104の後半部(回転方向vにおいて)を規定する。ウィングレット120は、後縁側部分118の領域に位置する。ウィングレット120の範囲は、好ましくは、後縁側部分118の領域に限定されるが、ウィングレットは、これを超えて延びていてもよい。例えば、ウィングレット120は、前縁側部分116内までに至るまで、後縁側部分118の全体にわたって延びていてもよい。ウィングレット120の高さは、後縁108の方向に連続的に増加する。ここで、高さとは、ウィングレット外縁のロータブレード本体からの間隔を意味するものと理解される。したがって、後縁108に直接接しているウィングレット外縁は(A2参照)、それよりも内側に位置するウィングレット外縁の点(A1参照)よりも高い。そのため、ロータブレード外縁104の後端部におけるウィングレット120の回転方向vの高さは、後縁108に隣接する部分で最も大きくなる。ウィングレット120は、ロータブレード本体の平面内に横たわる線を構成し、これに沿ってロータブレード100のウィングレット120への移行が示されている。言い換えれば、この線は、ウィングレット120の基部(ベース)122を示すロータブレード本体のくびれ(kink)を特徴付ける。ウィングレット120の基部122は、ロータブレード外縁104または後縁側部分118に対して可変の間隔Aを構成する。後縁側部分118とウィングレット120の基部122との間の間隔Aは、ロータブレード中心線114から後縁108の方向に連続的に増加する。したがって、間隔A1は、間隔A2よりも小さい構成となっている。ウィングレット120の基部122が、ロータブレード面内において円形の構成であることが図式的に分かる。この円形の構成については、特に図2および図6を参照してより詳細に説明する。後縁側部分118の領域におけるウィングレット120の構成の結果、後縁側部分118は、ウィングレット外縁に向かって曲げられ、かつ、ロータブレード本体から上方に曲げられている。
【0037】
図2は、補足的な傾斜角βを有する本発明によるロータブレード100のさらなる実施形態を示す。補足的な傾斜角βは、ロータブレード100の回転方向vに対するブレード長手方向軸線124、124’の斜行により生じる。補足的な傾斜は、動作中のロータブレード100の安定性を高め、さらにフラッター傾向を低減する。すでに述べたように、ロータブレード100の幾何学的作用点はここで移動し、その結果、ロータブレード100を継続的に緊張状態に保持するトルクがもたらされる。図2によると、最適な補足的な傾斜角βは、およそ3°から4°である。本実施形態では、ウィングレット120の基部122の円形構成も図式的に示しており、この基部122は、ロータブレード面内に位置するように構成されている。この円形構成については、図6の説明においてさらに詳しく説明する。さらに、補足的な傾斜角βとウィングレット120の円形の基部122との間の相互作用の利点は、当該時点で詳細に説明されることになる。ロータブレード100すなわちブレード長手方向軸線124、124’が補足的な傾斜角βを有しかつ基部122が円形構成であることにより、ウィングレット120の円形の基部122は、最適な構成でロータブレード100の回転円202の一部となることができる。言い換えれば、円形の基部122の半径および中心点と、ロータブレード100の回転円の半径および中心点とは、同一である。先行する図の同一の特徴を改めて説明することは、この時点では省略する。
【0038】
図3Aは、図1の断面A-Aにおける本発明によるロータブレード100の断面図である。断面A-Aは、ロータブレード根元102に隣接して、または少なくともロータブレード根元102の領域に位置している。翼弦110の長さは、ロータブレード外縁104の方向に連続的に増加するので、翼弦110は、ロータブレード根元102の領域において最小の長さを有する。回転面204の断面は、風力発電機300(図示せず)の動作中に、ロータブレード100およびロータリム200(図示せず)全体が移動する平面を示している。翼弦110は、回転面204に対して迎え角(angle of incidence)αを成す。前記迎え角αは、ロータブレード根元102において約30°である。既に述べたように、ロータブレード100の異なる断面には、異なるタスクまたは効果が与えられる。ロータブレード根元102の領域は、ロータリム200の自己完結的な立ち上げないし起動(自己起動)を可能にする。言い換えれば、空気や風の速度が低い場合でも揚力が得られるようにすること、従ってロータブレード100の起動がもたらされることが重要である。これは、前記本実施形態では約30°である定義された迎え角αによって可能となる。迎え角αは、起動機能を補助する圧力差を発生させる。圧力差に影響を与えるもう1つのパラメータは、翼弦110に対して直交するように設定されたロータブレードの厚さの寸法を示すプロファイル厚さDである。回転方向vは、図3Aにおけるロータブレード100の移動方向を意味すると理解されるべきであり、前縁106および後縁108によってロータブレード100の移動方向が再び明確となっている。翼弦110と回転面204との交点は、翼弦中心点112に相当する。
【0039】
図3Bは、図1の断面B-Bにおける本発明によるロータブレード100の断面図である。この断面B-Bは、ロータブレード根元102とロータブレード外縁104との間のロータブレード100の中間部に位置する。翼弦110は、当該領域において、ロータブレード根元102の領域よりも幾分長い。回転面204は、動作中のロータブレード100およびロータリム200全体(図示せず)の移動平面を再び示しており、翼弦110は、回転面204に対して迎え角αを成す。迎え角αは、ロータブレード根元102の領域よりもやや小さく、0°~30°の間にある。翼弦110と回転面204との交点は、再び翼弦中心点112に対応する。プロファイル厚さDは、図3Aの断面A-Aにおけるプロファイル厚さDよりも幾分短い寸法である。先行する図の同一の特徴の新たな説明は、この時点では省略される。
【0040】
図3Cは、図1の断面C-Cにおける本発明によるロータブレード100の断面図である。断面C-Cは、ロータブレード100のうち、ロータブレード外縁104に隣接して、または少なくともロータブレード外縁104の近傍に位置する断面内に位置する。翼弦110は、この領域では、中間部の断面B-Bの領域よりもやや長く、ロータブレード根元102の領域の断面A-Aよりもかなり長い。翼弦110自体は、回転面204と実質的に平行に構成されている。迎え角αは、ほぼ0°である。プロファイル厚さDは、図3Aの断面A-Aにおけるプロファイル厚さDよりも、また、図3Bの断面B-Bにおけるプロファイル厚さDよりも、再び幾分短い寸法である。先行する図の同一の特徴を改めて説明することは、この時点では省略する。
【0041】
図3Dは、図1の断面D-Dにおける本発明によるロータブレード100の断面図である。断面D-Dは、ロータブレード100のうち、ロータブレード外縁104にすぐ隣接して位置する断面内に位置する。翼弦110は、同様に、当該領域において、中間部B-Bの領域よりも長く、かつ、ロータブレード根元102の領域の断面A-Aよりも長くなるように構成されている。翼弦110と回転面204とは、前記図3A及び図3Bと比較して負の符号を有する迎え角αを成す。ここでは、迎え角αが回転面204の下方にあるので、迎え角αは約-10°である。プロファイル厚さDは、図3Bの断面B-Bにおけるプロファイル厚さDよりも、再び幾分短い構成となっている。断面D-Dにおけるウィングレット120の一部を示す上方に変形した部分は、後縁108の領域に位置している。この時点で、先行する図の同一の特徴の新たな説明は省略される。
【0042】
図4は、図1の視線E-Eから見た、本発明によるロータブレード100の側面図である。側面図では、ロータブレード100は、ブレード長手方向軸線124(図示せず)に構成されたバルジ(膨らみ)を呈する。このバルジは、したがって、ロータブレード根元102とロータブレード外縁104との間に構成され、図3A図3Dの断面A-A~断面D-Dによる異なる迎え角αから生じるねじれに重畳される。ウィングレット120は、ロータブレード外縁104上に配置されており、このウィングレット120は、単に後縁側部分118(図示せず)の領域に位置しており、したがって、側面図では部分的にしか見えない。
【0043】
図5は、本発明によるロータリム200の図式図である。ロータリム200は、合計6枚のロータブレード100を備えている。回転方向vは、方向矢印によって図式的に示され、回転円202は、ロータリム200の円周上に図式的に示されている。ロータリム200は、丁度6つのロータブレード100から構成されており、それはその結果として効率の度合いが特に高くなるからである。これは、互いに続く2つのロータブレード100の最適な間隔によって実証される。したがって、流体は、ロータブレード100の後縁108を離れた後、十分に安定した状態になることができ、その結果、後続のロータブレード100の前縁に可能な限り最適な条件がもたらされる。これにより、最適な流れの前提条件が可能となり、その結果、風力発電機の効率の程度が向上する。
【0044】
要約すると、本発明によるロータブレードの実施形態は、互いに組み合わせることができることに留意されたい。開示された特徴のいずれも、別の特徴との組み合わせを排除するものではなく、特徴の個々の組み合わせは、互いに作用して相乗効果を形成する。例えば、プロファイル厚さDは、ロータブレード根元102からロータブレード外縁104に向かって減少する。これについては、図3A図3Dで詳細に記載されている。さらに、図3A図3Dでは、翼弦110がその長さが増加することが記載されている。ロータブレード根元102からロータブレード外縁104への特に低摩擦の移行を実現するために、翼弦110の長さに対するプロファイル厚さDの比は、ロータブレード根元102からロータブレード外縁104に至るまで実質的に一定になるように構成されている。その結果、例えば、外側端での吸引力が減衰され、その結果、圧力差が小さくなる構成とすることができる。相乗効果のさらなる例を、ロータブレード100のねじれに基づいて示す。ねじれは、ロータブレード根元102からロータブレード外縁104に向かって連続しており、対応する断面A-A~D-Dにおける翼弦110と回転面との間の迎え角αに基づいて説明される。最終的には、本発明によるロータリムは、1.5までの先端速度比(tip speed ratio)も実現できるため、低速走行タービンとして知られているものとして特に効率的である。さらに、ロータブレードのバルジ(膨らみ)と組み合わせた鎌形の構成は、特に有利である。バルジと鎌形の形状により、ロータブレードの根元102の領域における高い迎え角αが実現される。これは、ロータブレードの自己完結型の起動機能(self-contained starting function)にとって特に好都合である。ロータブレードの外側領域における所望の抵抗翼機能(resistant wing function)のために、迎え角αは外側に向かって減少し、これは鎌形の形状によってさらに助けられる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5