IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニーの特許一覧

特許7489998筋肉内注射部位を決めるためのデバイスおよび方法
<>
  • 特許-筋肉内注射部位を決めるためのデバイスおよび方法 図1
  • 特許-筋肉内注射部位を決めるためのデバイスおよび方法 図2
  • 特許-筋肉内注射部位を決めるためのデバイスおよび方法 図3
  • 特許-筋肉内注射部位を決めるためのデバイスおよび方法 図4
  • 特許-筋肉内注射部位を決めるためのデバイスおよび方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】筋肉内注射部位を決めるためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/42 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
A61M5/42 520
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021551798
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 US2020020038
(87)【国際公開番号】W WO2020180588
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】62/812,942
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/801,800
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レジーナ ヘイウッド
(72)【発明者】
【氏名】ブラッド イー.ノエ
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-090739(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104667389(CN,A)
【文献】中国実用新案第207734422(CN,U)
【文献】英国特許出願公開第02234715(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋肉内注射の部位を決めるためのデバイスであって、
第1の端部および第2の端部と、患者の肩峰に隣接して配置される上端と、を備える上部要素と、
接続端部および自由端部を有するように前記上部要素の前記第1の端部に枢動可能に取り付けられた第1の脚部と、
接続端部および自由端部を有するように前記第2の端部に枢動可能に取り付けられた第2の脚部と、
前記第1の脚部の前記自由端部に隣接して取り付けられた第1の部分と前記第2の脚部の前記自由端部に隣接して取り付けられた第2の部分とを備える端部留め具対と、前記端部留め具の第1の部分と前記第1の脚部の接続端部との間で第1の脚部に取り付けられた第1の部分を備える中間留め具対であって、前記端部留め具の第2の部分と前記第2の脚部の前記接続端部との間で前記第2の脚部に取り付けられた第2の部分を備える、中間留め具対と、
を含む、デバイス。
【請求項2】
前記上部要素、前記第1の脚部、および前記第2の脚部が、前記端部留め具対が合わせて留められた場合に、前記第1の脚部、前記第2の脚部および前記上部要素が中心を有する実質的に三角形の領域を形成するようにサイズ決めされており、前記実質的に三角形の領域の前記中心が、前記上部要素の前記上端が成人患者の肩峰に対して配置された場合に、成人患者の三角筋領域における注射の筋肉内部位に対応する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記上部要素、前記第1の脚部および前記第2の脚部が、前記中間留め具対が合わせて留められた場合に、前記第1の脚部、前記第2の脚部および前記上部要素が中心を有する実質的に三角形の領域を形成するようにサイズ決めされており、前記実質的に三角形の領域の中心が、前記上部要素の上端が小児患者の肩峰に対して配置された場合に、小児患者の三角筋領域における注射の筋肉内部位に対応する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
端部留め具対が、フックおよびループクロージャシステムを含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
中間留め具対が、フックおよびループクロージャシステムを含む、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記上部要素が、筋肉内注射を行う個人に位置を示し、人差し指および中指を配置させるための指表示を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の脚部が、前記筋肉内注射を行う個人に位置を示し、右手親指を配置させるための右手親指表示を備える、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第2の脚部が、前記筋肉内注射を行う個人に位置を示し、左手親指を配置させるための左手親指表示を備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1の脚部および前記第2の脚部がそれぞれ、前記端部留め具対でデバイスを固定することにより成人患者への注射部位が提供されることを示す、前記端部留め具対に隣接する表示を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の脚部および前記第2の脚部がそれぞれ、前記中間留め具対でデバイスを固定することにより小児患者への注射部位が提供されることを示す、前記中間留め具対に隣接する表示を備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1の脚部、前記第2の脚部および前記上部要素が、透明のプラスチックを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1の脚部、前記第2の脚部および前記上部要素が、半透明の材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
患者の三角筋領域における筋肉内注射のためにサイズ決めされた皮下注射針と、
前記皮下注射針に接続可能なシリンジと、
請求項1~12のいずれか一項に記載のデバイスと、
を含む、筋肉内注射キット。
【請求項14】
トレイをさらに含み、前記針、前記シリンジおよび前記デバイスが前記トレイに密封される、請求項13に記載の筋肉内注射キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
医療の適用において安全でない注射の実践が続くと、患者、および病院、クリニック、診療施設(practice)における医療提供者は、大部分が予防可能な健康への悪影響のリスクにさらされる。たとえば、一般的な方法は三角筋筋肉内注射であるが、これは、薬局、クリニック、診療所(physicians' office)、および病院などのさまざまな場所で行うことができる。筋肉内注射の他の部位には、外側広筋(大腿筋)、腹側臀部(ventrogluteal)部位(股関節部)、および背側臀部(dorsogluteal)(臀部)が含まれる。筋肉は皮下組織よりも大きく、かつ血管が多く、ここへの注射は通常、皮下注射または皮内注射よりも速い吸収速度を有する。
【0002】
筋肉内注射を行う個人は、典型的には、医師、看護師、医療技術者、薬剤師などの医療従事者、または患者の家族、知人、ルームメイトなどの他の提供者であり、注射の適切な部位および注射領域内に存在する神経血管構造に注意しなければならない。三角筋注射の場合、三角筋の質量は他の筋肉内注射部位と比較して比較的小さく、したがって三角筋部位における誤差の許容範囲は小さくなる。
【0003】
三角筋は、12~18か月の子供、それ以上の年齢の子供、および成人にワクチンを注射するために一般的に受け入れられている部位である。注射のための安全な領域を正確に決めることは非常に重要である。上腕の損傷が、不適切な三角筋注射の合併症として起こり得る。三角筋注射の誤った部位への注射による問題には、注射部位の痛み、紅斑、硬結、および腫れなどの注射部位反応が含まれる。問題は、三角筋下/肩峰下髄液包、腋窩神経の前枝および橈骨神経を含む、三角筋内または近傍の解剖学的構造への注射に起因して起こる。これらの問題は、三角筋内および近傍のこれらの構造に対する認識の欠如に起因する。
【0004】
三角筋注射のための安全な領域を決めるためのさまざまな方法があり、これらは医療および看護の教科書、インターネット、およびジャーナルに見出すことができるが、それらはいずれも許容できない変動性および不確実性を伴う。注射の特定の場所について普遍的に受け入れられている合意はなく、肩峰下のさまざまな距離が推奨されている。図1は、三角筋注射のための注射部位を決定するために使用することができる解剖学的マーカーを示す。少なくとも1人の著者は、三角筋54への注射を達成するために、肩峰50と三角筋粗面52との中間の部位への注射が好ましいことを示している(非特許文献1)。1つの方法は、注射を行う施術者が仮想の安全な領域の正方形を描くことであり、それは注射の安全な領域を表す。正方形の上端は、肩峰50からおよそ1本または2本の指幅の下にあり、正方形の底部は、ほぼ腋窩56の折り目から三角筋の付着点にある。注射の最適な部位は、この正方形の中央部分である。個人が注射部位を決定するための別の方法は、肩峰50を見つけ、腋窩の頂点から三角筋を横切る横方向の線を引くことである。いくつかの医学文献は、肩峰50上の三角形58の底辺57を視覚化することを推奨している。しかし、他の医学文献では、図1に示すように、三角形の底辺57を肩峰50の指2~3本の幅の下に配置することを推奨している。開業医は、図1に示されるように、親指62を伸ばした状態で手60を使用して、仮想三角形58の部分的な輪郭を形成することができる。注射部位は三角形の中心点である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】McGarvey MA,Hooper AL.The deltoid intramuscular injection site in the adult-current practice among general practitioners and practice nurses.Ir Med J.2005;98:105-7.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
安全な三角筋注射部位を見つけるためのさまざまな技術は、三角筋注射を行う際の不確実性および当て推量の原因となる。たとえば、施術者が指を置く場所に関して不確実性がある。予防接種を行う多くの施術者は、三角筋注射を頻繁に行わず、適切な注射部位を決定する能力を欠いている。さらに、さまざまな施術者の手および指の大きさの違いは、適切な三角筋注射を行う際のさらなる不確実性をもたらす可能性がある。三角筋下/肩峰下髄液包、腋窩神経の前枝および橈骨神経への注射などの問題の頻度を減らすために、三角筋注射の部位を決定する際により高い確実性および再現性を提供するデバイスおよび方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、注射の筋肉内部位を決めるためのデバイスを提供し、当該デバイスは、第1の端部および第2の端部と、患者の肩峰に隣接して配置されるように構成された上端と、を備える上部要素と;接続端部および自由端部を有するように上部要素の第1の端部に枢動可能に取り付けられた第1の脚部と;接続端部および自由端部を有するように第2の端部に枢動可能に取り付けられた第2の脚部と;
第1の脚部の自由端部に隣接して取り付けられた第1の部分と第2の脚部の自由端部に隣接して取り付けられた第2の部分とを備える端部留め具対と、端部留め具の第1の部分と第1の脚部の接続端部との間で第1の脚部に取り付けられた第1の部分を備える中間留め具対であって、第1の留め具の第2の部分と第2の脚部の自由端部との間で第2の脚部に取り付けられた第2の部分を備える、中間留め具対と、を含む。
【0008】
本開示のまた別の態様は、筋肉内注射キットに関し、患者の三角筋領域への筋肉内注射用のサイズの皮下注射針と、皮下注射針に接続可能なシリンジと、本明細書に記載のデバイスと、を含む。
【0009】
本開示の1つまたは複数の実施形態は、筋肉内注射の部位を決める方法を対象とし、第1の端部および第2の端部を有する第1の要素の上端を患者の肩峰に対して配置する工程と;第1の端部に取り付けられた第1の脚部および第2の端部に取り付けられた第2の脚部を、第1の位置および第2の位置のうちの1つに位置決めして中心を有する実質的に三角形の領域を形成する工程と、を含み、第1の位置に位置決めされた場合、三角形領域の中心は、成人患者の三角筋領域に対する筋肉内注射の部位に対応し、第2の位置に位置決めされた場合、三角形領域の中心は、小児患者の三角筋領域に対する筋肉内注射の部位に対応する。
【0010】
上で言及した本開示の特徴が達成される方法を詳細に理解できるように、上に簡潔に要約した本開示のより具体的な説明が、添付図面に表したいくつかの実施形態を参照することで得られるであろう。しかしながら、添付図面は本開示の典型的な実施形態のみを示したものであり、したがって、その範囲を限定するものとみなすべきでなく、本開示は他の均等の有効な実施形態を許容することができることに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、患者の三角筋領域を示す。
図2図2は、本開示の一実施形態によるデバイスを示す。
図3図3は、本開示の一実施形態によるデバイスを示す。
図4図4は、本開示の一態様に従って実行される方法を示す。
図5図5は、本開示の一実施形態による、デバイス、皮下注射針、およびシリンジを含むキットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本開示は、以下の説明に示される構成またはプロセス工程の詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態であることができ、様々な方法で実施または実行することができる。
【0013】
本明細書で使用される「水平」という用語は、その向きに関係なく、マスクブランクの平面または表面に平行な平面として定義される。「垂直」という用語は、定義されたとおりの水平に垂直な方向を指す。「~の上に(above)」、「~の下に(below)」、「底部(bottom)」、「上部(top)」、「横(side)」(「側壁(side wall)」のように)、「より高い(higher)」、「より低い(lower)」、「上方の(upper)」、「~の上に(over)」、「~の下に(under)」などの用語は、図に示すように、水平面に対して定義される。
【0014】
「~の上に(on)」という用語は、要素間に直接接触があることを示す。「直接上に(directly on)」という用語は、要素間に介在する要素がなく、直接接触していることを示す。
【0015】
ここで図2図5を参照すると、本開示の第1の態様は、注射の筋肉内部位の決めることを支援するためのデバイスに関する。特定の実施形態において、デバイスは、患者の三角筋領域の注射の筋肉内部位を決めるように構成される。
【0016】
1つまたは複数の実施形態によれば、デバイスは、筋肉内注射の投与について、いかなる水準の技能および経験の有する人に使用されてもよい。このデバイスは、三角筋領域への筋肉内注射の投与の経験がない、または熟練していない人々ができるようにするための普遍的な基準を提供する。筋肉内注射は、鎮痛剤、予防接種、または他の薬剤の投与のためなどのさまざまな理由で、診療所、病院、クリニック、または他の医療施設でも実施される場合がある。三角筋領域の注射部位を決めるための普遍的な基準を提供することにより、誤った注射に関連する問題が低減および/または排除される。
【0017】
特に、このデバイスは、三角筋注射の誤った部位を避けることに役立ち、これは注射部位の痛み、紅斑、硬化および腫れなどの注射部位反応を低減または防止するであろう。三角筋下/肩峰下髄液包、腋窩神経の前枝および橈骨神経を含む、三角筋内またはその近傍の解剖学的構造への注射によって生じる問題は、本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態によれば、低減または防止される。
【0018】
1つまたは複数の実施形態によれば、デバイスは、予防接種のための患者の適切な領域の適切な識別を確実にするために、患者および提供者と解剖学的に位置合わせするための誘導情報および明確に示された参照を含む。いくつかの実施形態において、デバイスは、三角筋への筋肉内注射を首尾よく行うための正しい部位を確実にするために、トレーニング補助、シミュレーターとして、または実際の患者に使用することができる。
【0019】
1つまたは複数の実施形態によるデバイスは、適切に位置合わせするために指を置く場所に関して、注射を実施する個人から当て推量を取り除く。筋肉内注射を行う多くの人々は、高い頻度でそれを行うことがないか、または誤投与もしくは悪い結果を回避するための適切な解剖学的位置合わせに関してそれほど熟練していない。いくつかの実施形態において、デバイスは、三角筋領域の筋肉内注射のためのジョブエイドまたは臨床参照ツールとして使用することができる。
【0020】
1つまたは複数の実施形態において、教育、シミュレーションで、または患者に使用することができる、単純かつ再利用可能なデバイスが提供される。いくつかの実施形態によるデバイスは、教科書および二次元学習(two-dimensional learning)に対して単純でありながら洗練された解決策を提供する。いくつかの実施形態によれば、デバイスは、結果を改善し、起こり得る負の合併症を最小限に抑え、筋肉内注射を投与するという危険な仕事を任された個人に対する信頼を高めるであろう。実施形態は、適切な部位への筋肉内注射を可能にするために、成人および小児の両方の患者に対する解剖学的に正しい位置合わせのすべてを含む、簡単に使うことのできるデバイスを提供する。
【0021】
ここで図2~4を参照すると、デバイス100の第1の実施形態は、第1の端部102および第2の端部104と、患者の肩峰に隣接して配置されるように構成された上端110とを備える、上部要素108を含む。当業者は、肩峰が、一般に肩甲骨(shoulder blade)として知られている、肩甲骨(scapula)の骨の突起であることを理解するであろう。いくつかの実施形態において、肩峰の配置の表示109は、デバイス100の上端110のすぐ下に配置される。肩峰の配置の表示109は、デバイスが筋肉内注射の適切な部位を決めるように構成されるように、ヒトの患者の解剖学的基準点に対応する視覚的マーカーを提供する。肩峰の表示109は、図4および図5に示すように、「肩上部」などの語を含むことができる。他の適切な表示を使用して、三角筋注射のためのデバイス100を配置する場所を示すこともできる。
【0022】
示される実施形態において、デバイスは、第1の脚部120が接続端部120aおよび自由端部120fを有するように、上部要素108の第1の端部102に枢動可能に取り付けられた第1の脚部120をさらに備える。デバイスは、第2の脚部130が接続端部130aおよび自由端部130fを有するように、第2の端部104に枢動可能に取り付けられた第2の脚部130をさらに備える。接続端部120aおよび130aは、任意の適切な取り付け機構によって上部要素108に取り付けられていてもよい。脚部が上部部材に枢動可能に取り付けられるように、例えば、接続端部120aおよび130a、ならびに第1の端部102および第2の端部に開けられた穴に使用して脚部120aを上部要素108に固定するのを助けるために、リベット、ナットおよびボルト、または固定ピンを使用することができる。脚部120および130は、自由にスイングすることができ、以下でさらに説明するように、回転して2つの異なるサイズの三角形領域を形成することができる。
【0023】
図4および図5に示されるデバイス100は、第1の脚部120の自由端部120fに隣接して取り付けられた第1の部分151aと第2の脚部130の自由端部130fに隣接して取り付けられた第2の部分151bとを備える端部留め具対と、端部留め具対の第1の部分151aと第1の脚部120の接続端部120aとの間で第1の脚部120に取り付けられた第1の部分150aを備える中間留め具対であって、第1の留め具対の第2の部分151bと第2の脚部130の自由端部130fとの間で第2の脚部130に取り付けられた第2の部分150bを備える、中間留め具対と、を含む。
【0024】
1つまたは複数の実施形態において、上部要素108、第1の脚部120および第2の脚部130は、端部留め具対が合わせて留められた場合、第1の脚部120、第2の脚部130、および上部要素108が、中心180cを有する実質的に三角形の領域180を形成するようにサイズ決めされており、ここで、実質的に三角形の領域180の中心180c(図2に示される)は、上部要素108の上端110が成人患者の肩峰に対して配置された場合に、成人患者の三角筋領域における注射の筋肉内部位に対応する。
【0025】
当業者は、三角形の各角(または頂点)から各頂点の反対の辺の中点まで線が引かれ、次にそれらの3本の線が三角形の中心、または重心で交わることを理解するであろう。重心は三角形の重力の中心であり、三角形のバランスが均等になる場所である。これらの線を引くことは、本開示のデバイスを利用するために必要なことではないが、この情報は、筋肉内注射の適切な部位を決定する際の視覚的補助を提供するためにデバイスのユーザにとって有用であり得る。正確な幾何学的中心からの逸脱が依然として上記の副作用なしに良好な筋肉内注射をもたらすように、三角形の正確な幾何学的中心からある程度の自由度がある。ただし、デバイスの使用法のトレーニングおよび説明のために、三角形の真の幾何学的中心の説明が望まれる場合がある。「実質的に三角形の領域」とは、概して三角形に対応する領域を意味する。図3および図4に示されるように、上部要素108は、わずかな湾曲を有する。
【0026】
いくつかの実施形態において、上部要素108、第1の脚部120、および第2の脚部130は、中間留め具対が合わせて留められた場合に、第1の脚部120、第2の脚部130、および上部要素1038が中心180cを有する実質的に三角形の領域180を形成するようにサイズ決めされており、実質的に三角形の領域の中心180cは、上部要素の上端が小児患者の肩峰に対して配置された場合に、小児患者の三角筋領域における注射の筋肉内部位に対応する。
【0027】
当業者は、小児患者が成人患者よりも小さい三角筋領域を有することを認識するであろう。したがって、第1の脚部120および第2の脚部130は長さを有し、第1の脚部120および第2の脚部の自由端部120f、130fに隣接して配置された端部留め具対の第1の部分151aおよび第2の部分151bは、端部留め具対を合わせて留めることにより形成される三角形が概して平均的な成人患者の三角筋領域に対応するように配置される。同様に、中間留め具対の第1の部分150aおよび第2の部分150bは、中間留め具対を合わせて留めることにより形成される三角形280が、概して平均的な小児患者の三角筋領域に対応するようになっている。
【0028】
いくつかの実施形態において、端部留め具対は、フックおよびループクロージャシステムを含み、これは、VELCRO(登録商標)ブランドの留め具としても知られている。いくつかの実施形態において、留め具対は、一対のインターロッキングディスクを含むことができるスナップを含んでもよい。他の適切な留め具対は、協働する接着面を含んでもよい。いくつかの実施形態による中間留め具対は、フックおよびループクロージャシステム、スナップ、または協働する接着面などの他の適切な留め具対を含むことができる。
【0029】
図4および図5を参照すると、いくつかの実施形態において、上部要素108は、筋肉内注射を行う個人に位置を示して、人差し指および中指を上部部材上に配置させるための指表示112を備える。示される実施形態において、左手の人差し指および中指の輪郭が指表示112として示されている。
【0030】
いくつかの実施形態において、第1の脚部120は、筋肉内注射を行う個人に位置を示して右手親指を配置させるための右手親指表示126を備える。右手親指表示126は、「ここに親指を合わせてください(右手)」という語または他の適切な表示を含むことができる。
【0031】
1つまたは複数の実施形態において、第2の脚部130は、筋肉内注射を行う個人に位置を示して左手の親指を配置させるための左手親指表示136を備える。左手親指表示136は、「ここに親指を合わせてください(左手)」という語または他の適切な表示を含むことができる。右手親指表示126および左手親指表示136は、手を使用して注射部位を決める技術を使用することに慣れており、または訓練された個人に対する訓練補助として望ましい場合がある。したがって、この表示は、注射を提供する個人に有用な訓練補助および参照点を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態において、第1の脚部120および第2の脚部130はそれぞれ、端部留め具対でデバイスを固定することにより成人患者への注射部位の位置が提供されることを示す、端部留め具対に隣接する表示122、132を備える。図3および図4に示されるように、第2の脚部130は、三角形のマーカーの形態の表示134と中間留め具対の第2の部分150bに隣接する「成人」の語とを備え、第1の脚部120は、三角形のマーカーの形態の表示122と中間留め具の第1の部分150aに隣接する「成人」の語とを備える。
【0033】
1つまたは複数の実施形態において、第1の脚部120および第2の脚部130はそれぞれ、端部留め具対でデバイスを固定することが小児患者の注射部位の位置を提供することを示す、中間留め具対に隣接する表示124、134を備える。図4および図5に示されるように、第1の脚部120は、中間留め具対の第1の部分150aに隣接する表示122を備え、第2の脚部130は、中間留め具対の第2の部分150bに隣接する表示132を備える。
【0034】
デバイスが構成され、中間留め具対を留めることにより三角形領域180が形成されたとき、三角形領域180の中心180cが小児患者に対する適切な注射部位に位置するように、第1の脚部120上の表示132、134および第2の脚部130上の表示132、134が、第1の脚部120および第2の脚部130の接続端部120a、130aから離れて配置されて、解剖学的基準点を提供する。同様に、端部留め具対を留めることにより三角形領域180が形成された場合、三角形領域180の中心180cは、成人患者に対する適切な注射部位に位置する。このデバイスは、成人または小児患者の三角筋領域で筋肉内注射を行うあらゆる個人に、一貫した不変の基準点を提供する。当て推量は排除され、注射を提供する人は、不適切な部位への注射に関連する上腕の痛みまたはその他の合併症を引き起こすことを恐れずに、患者の三角筋領域に自信を持って注射することができる。
【0035】
1つまたは複数の実施形態において、デバイス100は、紙、ボール紙、または紙などの不透明の材料から作られる。したがって、上部要素108、第1の脚部120、および第2の脚部130は、紙、ボール紙、または紙などの不透明の材料から作られる。他の実施形態において、デバイス100は、透明のプラスチックまたは半透明のプラスチックから作られ、三角筋に注射する際の視覚化をさらに強化する。透明プラスチックの例としては、これらに限定されないが、アクリル類(例えば、ポリメチラメタクリレート(polymethlamethacrylate)、ブチレート類(例えば、セルロースアセテートブチレート)、ポリカーボネート類(例えば、Lexan)、およびテレフタレート類(例えば、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG))が挙げられる。
【0036】
ここで図5を参照すると、本開示の別の態様は、筋肉内注射キット300を提供する。キット300は、患者の三角筋領域への筋肉内注射用にサイズ決めされた皮下注射針200を含む。これに関して、第2の針が提供されてもよい。図3および図4に戻ると、デバイス100は、注射に対して適切にサイズ決めされた針を示す針表示128を含むことができる。例えば、針表示128は、「25G×1″または25G×5/8の針を使用してください」または他の好適な表示を記載して、注射を提供する人に、使用に適したサイズの針を助言してもよい。第2の脚部130は、デバイス100を使用する個人に、注射後に安全装置を使用するように助言する安全表示138を含んでもよい。安全表示は、デバイスおよび関連する針の安全な使用を提供するために、「注射後に安全装置を作動させてください」というメッセージまたは他の表示を含んでもよい。
【0037】
図5に戻ると、キット300は、皮下注射針200に接続可能なシリンジ220をさらに含んでもよい。キットは、トレイ230をさらに含んでもよく、これは熱成形プラスチックを含み得る。シリンジ220、皮下注射針220、およびデバイスはすべて、密封することができるトレイ230内に配置することができる。キット300は、デバイス100に関して上記の特徴のいずれかまたはすべてを含むことができる。
【0038】
本開示のまた別の態様は、筋肉内注射の部位を決める方法に関する。1つまたは複数の実施形態において、この方法は、患者の肩峰に対して、第1の端部102および第2の端部104を有する上部要素108の上端110を配置する工程を含む。この方法は、第1の端部102に取り付けられた第1の脚部120および第2の端部104に取り付けられた第2の脚部を、第1の位置および第2の位置のうちの1つに置いて、中心180cを有する実質的に三角形の領域180を形成する工程をさらに含む。第1の位置に配置した場合、三角形領域180の中心180cは、成人患者の三角筋領域の筋肉内注射の適切な部位に対応する。図3および図4に関して、第1の位置は、合わせて留められている端部留め具対に対応することが理解されよう。第2の位置に置いた場合、三角形領域180の中心180cは、小児患者の三角筋領域の筋肉内注射の部位に対応する。図3および図4に関して、第2の位置は、合わせて留められている中間留め具対に対応することが理解されよう。
【0039】
方法のいくつかの実施形態において、筋肉内注射を行う個人は、左手または右手から人差し指および中指を、デバイス上の人差し指および中指を置く場所を示す指表示に置く。指表示は上部要素108に配置される。
【0040】
方法のいくつかの実施形態において、注射を提供する個人は、上部要素に人差し指および中指を置いた手の親指を、第1の脚部または第2の脚部のうちの一方に配置する。例えば、筋肉内注射を行う個人が、右手から人差し指および中指を上部要素の表示に置いた場合、その個人は、右手の親指を第1の脚部120に合わせる。都合の良いことには、第1の脚部120は、注射を投与する個人が第1の脚部120上に親指を適切に配置するのを助けるために、右手親指表示126を含む。
【0041】
あるいは、筋肉内注射を投与する個人が、左手から人差し指および中指を上部要素の表示に置いた場合、その個人は、左手の親指を第2の脚部に合わせる。都合の良いことには、第2の脚部130は、注射を投与する個人が第2の脚部130上に親指を適切に配置するのを助けるために、左手親指表示136を含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、この方法は、例えば、端部留め具対が合わせて留められた状態で、第1の脚部120および第2の脚部130を第1の位置に固定することを含む。これで、三角筋領域において成人患者に筋肉内注射を行うためにデバイスを使用する準備ができる。
【0043】
小児患者に注射を投与するための方法は、第1の脚部120および第2の脚部130を第2の位置に固定することを含む。これは、中間留め具対を留めることで実現できる。これで、三角筋領域において小児へ筋肉内注射を提供するためにデバイスを使用する準備が整う。
【0044】
この方法は、筋肉内注射のための適切なサイズの皮下注射針を示すデバイス上の表示を読み取り、皮下注射針を注射器に固定する個人をさらに含んでもよい。
【0045】
本明細書全体における「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」または「ある実施形態」に対する言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特色、構造、材料、または特徴が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。すなわち、「1つまたは複数の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「1つの実施形態において」または「実施形態において」のような語句の、本明細書全体の様々な場所における出現は、必ずしも、本開示の同一の実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特色は、1つまたは複数の実施形態において任意の適当な様式で組み合わされ得る。
【0046】
本開示は特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は本開示の原理及び応用の例示に過ぎないことが理解されるべきである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変形を本開示の方法およびデバイスに対して行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内である修正および変形を含むことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5