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  • 特許-光学ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】光学ユニット
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/63 20180101AFI20240517BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20240517BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240517BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240517BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20240517BHJP
【FI】
F21S41/63
F21W102:13
F21Y115:10
F21Y115:30
F21Y115:15
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021554331
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2020038832
(87)【国際公開番号】W WO2021085147
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2019198799
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 一利
【審査官】谷口 東虎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-256494(JP,A)
【文献】特開2010-91905(JP,A)
【文献】特開2008-175869(JP,A)
【文献】特開平11-16411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/63
F21W 102/13
F21Y 115/10
F21Y 115/30
F21Y 115/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項5】
前記光源は、回転レンズの動きの周期における一部の位相範囲において光度が変化するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ユニットに関し、特に車両用灯具に用いられる光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から出射した光が後方から入射し照射ビームとして車両前方へ出射するレンズを備え、該レンズを透過した透過光で車両前方の領域を走査することで所定の配光パターンを形成する光学ユニットが考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-256494
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の光学ユニットが備えるレンズは、透明な円板状の部材であり、レンズの回転軸は、光軸に対して平行になっている。そのため、レンズを駆動するためのモータをレンズの後方に設けることとなり、前後方向のスペースが必要となる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、光源の光で走査する新たな光学ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光学ユニットは、筒状の回転レンズと、回転レンズの内部に配置された光源と、を備える。回転レンズは、光源から出射した光が内周面から入射し照射ビームとして外周面から出射するように構成されており、かつ、該回転レンズの周期的な動きにより、前方を照射ビームで走査することで所定の照射領域を形成するように構成されている。
【0007】
この態様によると、筒状の回転レンズの周期的な動きにより前方を照射ビームで走査することで所定の照射領域を形成できる。そのため、光源から出射したそのままの光で所定の照射領域を形成する場合と比較して光源を小型化できる。
【0008】
回転レンズは、駆動部と接続される回転軸を中心に回転するとともに、光源から出射した光が通過する際に屈折する方向が周期的に変化するように構成されていてもよい。これにより、光源の光を用いた走査を簡便な構成で実現できる。
【0009】
光源は、出射面の正面方向が回転軸と交差するように配置されていてもよい。これにより、光源の出射面が回転レンズの内周面と対向する。
【0010】
回転レンズは、回転軸が車両の車幅方向に沿うように配置されていてもよい。これにより、光学ユニットの車両前後方向のスペースを短くできる。
【0011】
光源は、回転レンズの動きの周期における一部の位相範囲において光度が変化するように構成されていてもよい。これにより、所定の照射領域の一部の明るさを変えることができる。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光源の光で走査する新たな光学ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態に係る車両用前照灯を側方から見た概要図である。
図2】第1の実施の形態に係る車両用前照灯を上方から見た概要図である。
図3図3(a)は、図1に示す回転レンズのA-A断面図、図3(b)は、図1に示す回転レンズのB-B断面図、図3(c)は、図1に示す回転レンズのC-C断面図、図3(d)は、図1に示す回転レンズのD-D断面図、図3(e)は、図1に示す回転レンズのE-E断面図、図3(f)は、図3(a)に示す断面形状を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図3(g)は、図3(b)に示す断面形状を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図3(h)は、図3(c)に示す断面形状を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図3(i)は、図3(d)に示す断面形状を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図3(j)は、図3(e)に示す断面形状を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図である。
図4】第2の実施の形態に係る車両用前照灯を側方から見た概要図である。
図5図5(a)は、図4に示す回転レンズのA’領域、図5(b)は、図4に示す回転レンズのB’領域、図5(c)は、図4に示す回転レンズのC’領域、図5(d)は、図4に示す回転レンズのD’領域、図5(e)は、図4に示す回転レンズのE’領域、図5(f)は、図5(a)に示す領域A’を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図5(g)は、図5(b)に示す領域B’を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図5(h)は、図5(c)に示す領域C’を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図5(i)は、図5(d)に示す領域D’を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図5(j)は、図5(e)に示す領域E’を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
(第1の実施の形態)
本実施の形態に係る光学ユニットは、種々の車両用灯具に用いることができる。はじめに、後述する実施の形態に係る光学ユニットを搭載可能な車両用前照灯の概略について説明する。
【0017】
図1は、第1の実施の形態に係る車両用前照灯を側方から見た概要図である。図2は、第1の実施の形態に係る車両用前照灯を上方から見た概要図である。
【0018】
車両用前照灯10は、光学ユニット12と、光学ユニット12から出射した光源像を車両前方に投影する投影レンズ14と、を備える。光学ユニット12は、筒状の回転レンズ16と、回転レンズ16の内部に配置された光源としての半導体発光素子18と、回転レンズ16の側方に設けられ、回転レンズ16を回転駆動するモータ20と、半導体発光素子18の点消灯およびモータ20の駆動を制御する制御部22と、を備える。
【0019】
半導体発光素子18は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、OLED(Organic Light Emitting Diode)が好ましい。また、光源は、回転レンズ16の内部に収まる程度に小型であれば、半導体発光素子以外であってもよい。
【0020】
回転レンズ16は、ガラスやプラスチックといった透明な材料で透過領域が形成されており、半導体発光素子18から出射した光が透過領域の内周面16aから入射し照射ビームとして透過領域の外周面16bから出射するように構成されている。また、回転レンズ16は、モータ20によって駆動され、回転軸Rを中心とする周期的な動き(回転運動)により、前方を照射ビームで左右に走査することで所定の照射領域を形成するように構成されている。具体的には、内周面16aや外周面16bの表面形状を工夫することで実現されている。
【0021】
図3(a)は、図1に示す回転レンズのA-A断面図、図3(b)は、図1に示す回転レンズのB-B断面図、図3(c)は、図1に示す回転レンズのC-C断面図、図3(d)は、図1に示す回転レンズのD-D断面図、図3(e)は、図1に示す回転レンズのE-E断面図、図3(f)は、図3(a)に示す断面形状を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図3(g)は、図3(b)に示す断面形状を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図3(h)は、図3(c)に示す断面形状を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図3(i)は、図3(d)に示す断面形状を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図3(j)は、図3(e)に示す断面形状を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図である。
【0022】
なお、A-A断面は回転レンズ16の回転角度が0度の位置、B-B断面は回転レンズ16の回転角度が72度の位置、C-C断面は回転レンズ16の回転角度が144度の位置、D-D断面は回転レンズ16の回転角度が216度の位置、E-E断面は回転レンズ16の回転角度が288度の位置である。
【0023】
図3(f)~図3(j)に示すように、投影イメージIは、図の右方向に徐々に移動する。このように、車両用前照灯10は、筒状の回転レンズ16の周期的な動きにより前方を照射ビームで走査することで所定の照射領域(ハイビーム用配光パターンPH)を形成できる。そのため、半導体発光素子18から出射したそのままの光で所定の照射領域(投影イメージI)を形成する場合と比較して、照射ビームで走査することで投影イメージIより広いハイビーム用配光パターンPHを形成できるので、半導体発光素子18の小型化、あるいは素子数を低減できる。
【0024】
また、回転レンズ16は、モータ20と接続される回転軸Rを中心に回転するとともに、半導体発光素子18から出射した光が通過する際に屈折する方向が図3(a)~図3(e)に示すように周期的に変化するように構成されている。これにより、半導体発光素子18の光を用いた走査を回転レンズ16の外周面16bの形状を工夫するといった簡便な構成で実現できる。
【0025】
また、本実施の形態に係る半導体発光素子18は、出射面18a(図2参照)の正面方向Fが回転軸Rと交差(実質的に直交)するように配置されている。これにより、半導体発光素子18の出射面18aが回転レンズ16の内周面16aと平行に対向する。
【0026】
また、本実施の形態に係る回転レンズ16は、回転軸Rが車両の車幅方向Yに沿うように配置されている。これにより、光学ユニット12の車両前後方向Xのスペースを短くできる。
【0027】
なお、半導体発光素子18は、回転レンズ16の動きの周期における一部の位相範囲において光度が変化するように制御部22で制御されてもよい。これにより、所定の照射領域の一部の明るさを変えることができる。例えば、投影イメージIが図3(f)の位置を透過するタイミングで制御部22によって半導体発光素子18を実質的に消灯し、それ以外のタイミングで半導体発光素子18を点灯することで、ハイビーム用配光パターンPHの一部の領域を非照射状態にすることができる。
【0028】
このように、本実施の形態に係る光学ユニット12は、回転レンズ16の表面形状を工夫することで、光源から出射した光の透過光で光照射方向(前方)を走査する従来にない新たな光学ユニットとして機能する。
【0029】
(第1の実施の形態の変形例)
前述の光学ユニット12は、回転軸Rを中心に回転レンズ16が1回転することで、投影イメージIが左から右へ1回走査されるが、回転レンズ16の表面形状を工夫することで、回転レンズが1回転することで、投影イメージIが左から右へN回(N≧2)走査されるようにすることもできる。また、回転レンズ16の外周面16bの形状を、断面形状の順番が、図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(b)、図3(a)、図3(e)、図3(d)、図3(e)、図3(a)となるように設定することで、投影イメージIが車両前方で左右に往復走査される光学ユニットを実現できる。
【0030】
(第2の実施の形態)
図4は、第2の実施の形態に係る車両用前照灯を側方から見た概要図である。なお、図1図2と同様の構成は同じ符号を付して説明を適宜省略する。また、第1の実施の形態と異なる作用効果や構成を中心に説明する。
【0031】
車両用前照灯30は、光学ユニット32と、光学ユニット32から出射した光源像を車両前方に投影する投影レンズ14と、を備える。光学ユニット32は、筒状の回転レンズ34と、回転レンズ34の内部に配置された半導体発光素子18と、回転レンズ34の側方に設けられ、回転レンズ34を回転駆動するモータ20と、半導体発光素子18の点消灯およびモータ20の駆動を制御する制御部22と、を備える。
【0032】
回転レンズ34は、半導体発光素子18から出射した光が透過領域の内周面34aから入射し照射ビームとして透過領域の外周面34bから出射するように構成されている。また、回転レンズ34は、モータ20によって駆動され、回転軸Rを中心とする周期的な動き(回転運動)により、前方を照射ビームで上下に走査することで所定の照射領域を形成するように構成されている。
【0033】
図5(a)は、図4に示す回転レンズのA’領域、図5(b)は、図4に示す回転レンズのB’領域、図5(c)は、図4に示す回転レンズのC’領域、図5(d)は、図4に示す回転レンズのD’領域、図5(e)は、図4に示す回転レンズのE’領域、図5(f)は、図5(a)に示す領域A’を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図5(g)は、図5(b)に示す領域B’を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図5(h)は、図5(c)に示す領域C’を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図5(i)は、図5(d)に示す領域D’を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図、図5(j)は、図5(e)に示す領域E’を通過した照射ビームで形成された投影イメージを示す図である。
【0034】
なお、A’領域は回転レンズ16の回転角度が0度の位置、B’領域は回転レンズ16の回転角度が72度の位置、C’領域は回転レンズ16の回転角度が144度の位置、D’領域は回転レンズ16の回転角度が216度の位置、E’領域は回転レンズ16の回転角度が288度の位置である。
【0035】
図5(f)~図5(j)に示すように、投影イメージIは、図の上方向に徐々に移動する。このように、車両用前照灯30は、筒状の回転レンズ34の周期的な動きにより前方を照射ビームで走査することで所定の照射領域(配光パターンP1)を形成できる。
【0036】
(その他の作用効果)
筒状の回転レンズは、ブレードを有する回転レンズと比較して剛性を高めることができる。また、回転軸Rが光学ユニット(車両用前照灯)の前後方向と垂直で回転レンズの側方に駆動原を配置できるので、光学ユニットの前後方向を短くできる。また、上述の各実施の形態では、内周面は円周面であり半導体発光素子の光がほぼ垂直に入射するので、屈折の影響はほぼない。そのため、回転レンズを透過して外周面から出射する際の光の屈折を主に考慮すればよく、外周面の表面形状の設定が比較的容易である。反対に、内周面で屈折を制御しようとすると、外周面での屈折も考慮しなくてはならず、内周面および外周面の表面形状の設定が難しくなる。また、回転レンズの内周面を複雑な形状に加工することは困難であるが、外周面であれば比較的容易に加工できる。
【0037】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態や変形例に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0038】
例えば、上述の実施の形態に係る光学ユニットに、IR(infrared)-LDやIR-LED、LiDAR(Light Detection and Ranging)用LDといった不可視光線を発する光源を用いてもよい。これにより、センサデバイスやセンシング補助デバイスに適用できる光学ユニットを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、車両用灯具に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
10 車両用前照灯、 12 光学ユニット、 14 投影レンズ、 16 回転レンズ、 16a 内周面、 16b 外周面、 18 半導体発光素子、 18a 出射面、 20 モータ、 22 制御部、 30 車両用前照灯、 32 光学ユニット、 34 回転レンズ、 34a 内周面、 34b 外周面。
図1
図2
図3
図4
図5