IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バトラー, ウィリアム イーの特許一覧

特許7490002血管造影データにおける心臓周波数現象の再構成
<>
  • 特許-血管造影データにおける心臓周波数現象の再構成 図1A
  • 特許-血管造影データにおける心臓周波数現象の再構成 図1B
  • 特許-血管造影データにおける心臓周波数現象の再構成 図2
  • 特許-血管造影データにおける心臓周波数現象の再構成 図3
  • 特許-血管造影データにおける心臓周波数現象の再構成 図4
  • 特許-血管造影データにおける心臓周波数現象の再構成 図5
  • 特許-血管造影データにおける心臓周波数現象の再構成 図6
  • 特許-血管造影データにおける心臓周波数現象の再構成 図7
  • 特許-血管造影データにおける心臓周波数現象の再構成 図8
  • 特許-血管造影データにおける心臓周波数現象の再構成 図9
  • 特許-血管造影データにおける心臓周波数現象の再構成 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】血管造影データにおける心臓周波数現象の再構成
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/50 20240101AFI20240517BHJP
   A61B 6/00 20240101ALI20240517BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240517BHJP
【FI】
A61B6/50 511E
A61B6/00 535
A61B6/00 550N
A61B6/46 506B
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021557091
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 US2020025229
(87)【国際公開番号】W WO2020198592
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】62/824,582
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521313979
【氏名又は名称】バトラー, ウィリアム イー
【氏名又は名称原語表記】BUTLER, WILLIAM, E.
【住所又は居所原語表記】P.O. Box 140340, Boston, MA 02114-0340 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】バトラー, ウィリアム イー
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0000441(US,A1)
【文献】国際公開第2018/210693(WO,A1)
【文献】特開2013-188361(JP,A)
【文献】特開2017-176400(JP,A)
【文献】特開2010-187723(JP,A)
【文献】特開2018-064783(JP,A)
【文献】特開2016-187528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58 、
G06T 1/00 - 1/40 、 3/00 - 7/90 、
G06V10/00 -20/90 、30/418、40/16 、
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓周波数よりも速い速度で得られた血管造影研究から血管造影データを取得または受信し、
時間の関数として変化し得る、同時に測定された心臓信号を取得し、
同時に測定された前記心臓信号から、前記血管造影データに対応する前記心臓信号の心臓周波数を取得し
記心臓信号の心臓周波数を相互相関ターゲットとして用いて、前記心臓信号の心臓周波数によって範囲が制限された心臓周波数バンドパスフィルタを提供し、
前記心臓周波数バンドパスフィルタを空間的および時間的に処理された前記血管造影データに適用して、ウェーブレットを用いることなく心臓周波数血管造影現象の時空間的再構成を生成し、
前記心臓周波数血管造影現象の前記時空間的再構成を1つまたは複数の画像に表示する、
心臓周波数よりも速い速度で得られた血管造影研究から心臓周波数血管造影現象を抽出するための方法。
【請求項2】
前記心臓周波数バンドパスフィルタを適用して、映画の一連の血管造影画像から前記心臓周波数血管造影現象を抽出する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記心臓周波数バンドパスフィルタを適用することは、
前記血管造影データ内の各ピクセルの時間サンプルを別個の信号として処理すること、
前記心臓周波数バンドパスフィルタを前記ピクセル単位の信号に適用すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記心臓周波数バンドパスフィルタが、グレースケールを用いた画像形式で表現される実数値フィルタ、あるいは、心臓周波数の大きさと心臓周波数の位相に基づいた画像形式で表現された複素数値フィルタ、の内の1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記血管造影データにオイラー拡大を適用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記オイラー拡大を適用することは、
一連の血管造影画像に空間的分解を適用し、
前記一連の空間的に分解された血管造影画像に時間的フィルタを適用し、
記空間的に分解され時間的にフィルタリングされた一連の血管造影画像の1つまたは複数を選択的に拡大し、
前記選択的に拡大された一連の血管造影画像を前記一連の血管造影画像と組み合わせて結合された一連の血管造影画像とし、増幅された時空間的再構成の視覚化を可能にする、
ことを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記空間的分解を適用することは、マルチスケール異方性フィルタリングを実行すること、あるいはシアレットまたはリッジレットのうちの1つを含む空間的変換を適用することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
心臓周波数帯域に対応する時間的現象を含む、関心のある時間的および空間的現象を有する血管造影画像を選択することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記空間的分解を適用することは、特定の空間周波数の空間構造に対するフィルタリングを含む、それぞれが異なる空間的特性を有するいくつかの画像への血管造影画像の空間的分解を実行することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記心臓周波数バンドパスフィルタが、前記心臓信号の心臓周波数外の時間的現象に対してゼロの値が適用され、
拡大された空間的変換を有する前記心臓周波数血管造影現象を含む血管造影画像を再構成することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記再構成された血管造影画像が一連の映画ビデオとして提供される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
血管造影データを取得するためのX線源およびX線検出器と、
1つまたは複数のコンピュータプロセッサと、
1つまたは複数のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体と、
前記1つまたは複数のコンピュータプロセッサのうちの少なくとも1つによる実行のために、前記1つまたは複数のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されたプログラム命令と、を含み、
前記プログラム命令は、
心臓周波数よりも速い速度で得られた血管造影研究から前記血管造影データを取得または受信する命令と、
時間の関数として変化し得る、同時に測定された心臓信号を取得する命令と、
同時に測定された前記心臓信号から、前記血管造影データに対応する前記心臓信号の心臓周波数を取得する命令と
記心臓信号の心臓周波数を相互相関ターゲットとして用いて、前記心臓信号の心臓周波数によって範囲が制限された心臓周波数バンドパスフィルタを提供する命令と、
前記心臓周波数バンドパスフィルタを空間的および時間的に処理された前記血管造影データに適用して、ウェーブレットを用いることなく心臓周波数血管造影現象の時空間的再構成を生成する命令と、
1つまたは複数の画像内の心臓周波数血管造影現象の前記時空間的再構成を表示する命令と、を含む
心臓周波数よりも速い速度で得られた心臓周波数血管造影現象を抽出するための血管造影システム。
【請求項13】
前記心臓周波数バンドパスフィルタを適用して、一連の映画の血管造影画像から前記心臓周波数血管造影現象を抽出するプログラム命令をさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記血管造影データ内の各ピクセルの時間サンプルを別個の信号として処理し、
前記心臓周波数バンドパスフィルタを前記ピクセル単位の信号に適用するプログラム命令がさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記心臓周波数バンドパスフィルタが、グレースケールを用いた画像形式で表現された実数値フィルタのうちの1つ、あるいは、心臓周波数の大きさと心臓周波数の位相に基づいた画像形式で表現された複素数値フィルタを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
プログラム命令が、前記血管造影データにオイラー拡大を適用するための命令をさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
プログラム命令が、
空間的分解を一連の血管造影画像に適用し、
前記空間的に分解された一連の血管造影画像に時間的フィルタを適用して、空間的に分解され時間的にフィルタリングされた前記一連の血管造影画像の1つまたは複数を選択的に拡大し、
前記選択的に拡大された一連の血管造影画像を前記一連の血管造影画像と組み合わせて結合された一連の血管造影画像が、増幅された時空間的再構成の視覚化を可能にする命令をさらに含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
マルチスケール異方性フィルタリングを実行するためのプログラム命令、またはシアレットまたはリッジレットを用いて空間的変換を適用するプログラム命令をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
心臓周波数帯域に対応する時間的現象を含む、関心のある時間的および空間的現象を有する血管造影画像を選択する命令をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
血管造影画像を、特定の空間周波数の空間構造のためのフィルタリングを含む、それぞれが異なる空間的特性を有するいくつかの画像に空間的に分解することを実行する命令をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記心臓周波数バンドパスフィルタが、前記心臓信号の心臓周波数外の時間的現象に対してゼロの値が適用され、
拡大された空間的変換を有する前記心臓周波数血管造影現象を含む血管造影画像を再構成するための命令をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
具体化されたプログラム命令を集合的に有する1つまたは複数のコンピュータ可読記憶媒体を含み、
コンピュータによって実行可能なプログラム命令は、
心臓周波数よりも速い速度で得られた血管造影研究から血管造影データを取得または受信し、
時間の関数として変化し得る、同時に測定された心臓信号を取得し、
同時に測定された前記心臓信号から、前記血管造影データに対応する前記心臓信号の心臓周波数を取得し
記心臓信号の心臓周波数を相互相関ターゲットとして用いて、前記心臓信号の心臓周波数によって範囲が制限された心臓周波数バンドパスフィルタを提供し、
前記心臓周波数バンドパスフィルタを空間的および時間的に処理された前記血管造影データに適用して、ウェーブレットを用いることなく心臓周波数血管造影現象の時空間的再構成を生成し、
心臓周波数血管造影現象の前記時空間的再構成を1つまたは複数の画像に表示する、
血管造影研究から心臓周波数血管造影現象を抽出するためのコンピュータプログラム製品。
【請求項23】
コンピュータによって実行可能なプログラム命令が、前記コンピュータにオイラー拡大を前記血管造影データに適用させる、請求項22に記載のコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年3月27日に提出され、その内容の全体が本願明細書に組み込まれている米国仮出願番号62/824,582に対して優先権を主張する。
【0002】
この分野は、一般に、血管造影研究における心臓周波数現象を再構成するための技術、特に、血管造影研究における心臓周波数現象を分離および/または拡大するためにバンドパスフィルタおよび/または増幅を利用する技術に関する。
【背景技術】
【0003】
血管造影図を取得するために、化学造影剤の塊が患者に血管内注射され、一連または時系列のX線が得られる。血管系の解剖学的構造の2次元投影は、X線の通過を遮断する化学造影剤がX線投影経路で血管系を通過するときに捕捉される。取得時間に従って順番に配列されたこれらの画像の集合体は、血管造影図を含む。
【0004】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第10,123,761号(以下「761特許」)に記載されているように、透視血管造影撮影は、血管造影データを処理するためのウェーブレット(wavelet)を用いて、脳および他の臓器における移動血管脈波の時空間的再構成を可能にする心臓周波数現象を捕捉して定量化する。この技術は、毛細血管床を通る一連の動脈一回拍出量として、および相互的な心臓フェーズの一連の静脈脈拍量として血流を視覚化することを可能にする。したがって、血流中の心臓周波数現象の空間的および時間的分布は、血管造影図の映画画像に示され得る生理学的、診断的および医学的情報を提供する。
【0005】
上述の技術は、脳および他の臓器における移動血管脈波の時空間的再構成を提供するが、既存の技術に対して大きな柔軟性を提供するために、血管造影研究における心臓周波数現象を再構成するための他の方法を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施形態は、血管造影データを処理するためのウェーブレット、特にガボールウェーブレット(Gabor wavelet)を利用しない血管造影データにおける心臓周波数現象を再構成するための方法、システム、およびコンピュータ可読媒体に関する。
【0007】
心臓周波数よりも速い速度で得られた血管造影研究から心臓周波数血管造影現象を抽出するためのシステム、方法、およびコンピュータが提供される。血管造影データが、心臓周波数よりも速い速度で得られた血管造影研究から取得または受理され、心臓周波数バンドパスフィルタが血管造影データに適用されて、心臓周波数血管造影現象の時空間的再構成を出力し、これは1つまたは複数の画像内に表示され得る。
【0008】
別の態様によれば、増幅効果を得るために、オイラー拡大が血管造影データに適用されてもよい。オイラー拡大は、心臓周波数帯域に対応する時間的現象を含む、関心のある時間的および空間的現象を有するものを選択するために、血管造影画像に適用され得る。
【0009】
別の態様によれば、心臓周波数バンドパスフィルタを適用することは、映画の一連の血管造影画像から心臓周波数血管造影現象を抽出する。
【0010】
別の態様によれば、心臓周波数バンドパスフィルタを適用することは、血管造影画像内の各ピクセルの時間サンプルを別個の信号として処理すること、および心臓周波数バンドパスフィルタをピクセル単位の信号に適用することをさらに含む。
【0011】
別の態様によれば、同時に測定された心臓信号が得られ、同時に測定された心臓信号は、測定された心臓信号の周波数によって範囲が制限されたバンドパス心臓周波数フィルタを提供するための相互相関ターゲットとして用いられる。
【0012】
別の態様によれば、心臓周波数バンドパスフィルタは、グレースケールを用いた画像形式で表現される実数値フィルタ、または心臓周波数の大きさおよび心臓周波数位相に基づいた画像形式で表現される複素数値フィルタの1つを含む。
【0013】
別の態様によれば、オイラー拡大を適用することは、一連の血管造影画像に空間的分解を適用すること、空間的に分解された一連の血管造影画像に時間フィルタを適用すること、一連の血管造影画像の2重に空間的に分解され時間的にフィルタリングされた1つまたは複数を選択的に拡大すること、および拡大された時空間的再構成の視覚化を可能にするために、組み合わされた一連の血管造影画像内に選択的に増幅された一連の血管造影画像と一連の血管造影画像を再組み立てすることを含む。
【0014】
別の態様によれば、空間的分解を適用することは、マルチスケールの異方性フィルタリングを実行すること、あるいはシアレットまたはリッジレットの1つを含む空間的変換を適用することをさらに含む。
【0015】
別の態様によれば、心臓周波数帯域に対応する時間的現象を含む、関心のある時間的および空間的現象を有する血管造影画像が選択される。
【0016】
別の態様によれば、空間的分解を適用することは、特定の空間周波数の空間構造に対するフィルタリングを含む、それぞれが異なる空間的特性を有するいくつかの画像に血管造影画像を空間的に分解することを含む。
【0017】
別の態様によれば、心臓周波数バンドパスフィルタは、心臓周波数帯域外の時間的現象に対してゼロの値が適用され、血管造影画像は、拡大された空間的変換を伴う心臓周波数現象を含んで再構成される。
【0018】
これらの技術のさらなる他の目的および利点は、明細書および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面は、本発明の態様を実施するために現在考えられている好ましい実施形態を示している。
【0020】
図1A】血管造影データを取得するための本開示の態様に使用され得る回転X線システムを示している。
図1B】血管造影データを取得するための本開示の態様に使用され得る回転X線システムを示している。
【0021】
図2】本開示の態様で使用され得るコンピュータシステムまたは情報処理装置のブロック図である。
【0022】
図3】心臓信号を取得するために本開示の態様とともに使用され得るマルチパラメータの患者モニタおよびセンサに結合されたパルスオキシメータの斜視図である。
【0023】
図4】心臓信号を取得するために本開示の態様とともに使用され得る心電図(EKG)装置のブロック図である。
【0024】
図5】本開示の態様による、複素数値を表現するための輝度色相カラーモデルを示している。
【0025】
図6】本開示の態様による、時空間的血管造影現象を増幅するための一般的なアプローチを示している。
【0026】
図7】本開示の態様による、血管造影データにおける心臓周波数現象を再構成するための技術を示す詳細なフローチャートである。
【0027】
図8】本開示の態様による、時空間的血管造影現象を増幅するためのフーリエベースのアプローチを示している。
【0028】
図9】本開示の態様による、心臓周波数現象を再構成する実施例を示している。
【0029】
図10】本開示の態様による、血管造影データにおける心臓周波数現象を再構成するための技術のハイレベルのフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
時空間的再構成のためにウェーブレットに依存しない血管造影データにおける心臓周波数現象を再構成するための方法、システム、およびコンピュータ可読媒体が提供される。一連の血管造影画像(すなわち、2次元投影画像)は、心拍数よりも速く取得され、移動血管脈波の時空間的再構成を提供するために処理される。移動血管脈波の時空間的再構成を生成するために、心臓周波数バンドパスフィルタが血管造影データに適用され、いくつかの態様ではオイラー拡大および増幅を用いて、心臓周波数血管造影現象の時空間的再構成を生成しうる。これらの技術については、以下にさらに詳細に記載されている。
【0031】
図1図4を参照すると、本発明の実施形態を実施するために用いることができる例示的なシステムまたは装置が示されている。そのようなシステムおよび装置は、代表的なシステムおよび装置の単なる例示であり、他のハードウェアおよびソフトウェア構成が、本技術での使用に適していることが理解される。したがって、本技術は、本明細書に示される特定のシステムおよび装置に限定されることを意図せず、提供される主題の精神および範囲から逸脱することなく、他の適切なシステムおよび装置を使用できることが認識される。
【0032】
移動血管脈波を再構成するために、生データが、心臓周波数よりも高い速度で透視血管造影撮影システムを介して取得される(例えば、画像は、最大30Hzの速度で取得され得る)。いくつかの態様では、ナイキストのサンプリング定理に従って、画像は心臓信号の最高周波数成分の2倍以上の速さでシステムによって取得される。心拍数よりも速い速度で得られた血管造影図が与えられると、画像は、心臓周波数血管造影現象の時間変化する空間的再構成を生成するために、本明細書で提供される技術に従って処理され得る。
【0033】
最初に図1Aおよび図1Bを参照すると、透視血管造影法などを介して心拍数よりも速い速度で血管造影図を取得するために使用され得る回転X線システム28が図示されている。前述のように、血管造影図を取得する際には、化学造影剤がX線源と検出器の間に配置された患者に注入され、X線の投影がX線検出器によって2次元画像として捕捉される。一連の2次元投影画像は、心臓周波数現象を心臓空間血管造影図に時空間的に再構成することを可能にするために、心臓周波数よりも速く取得された血管造影画像フレームを有する血管造影研究を含む。
【0034】
図1Aに示されるように、血管造影撮影システムの一例が、その端部の一方にX線源アセンブリ32を支えるCアーム30を有し、もう一方の端部にX線検出器アレイアセンブリ34とを有する、土台を含む回転X線システム28の形態で示されている。土台は、X線源32および検出器34が、テーブル36上に配置された患者の周りの異なる位置および角度に向けられることを可能にする一方、医師に患者へのアクセスを提供する。土台は、テーブル36の下に延びる水平脚40と、テーブル36から離隔された水平脚40の端部で上方に延びる垂直脚42とを有する台座38を含む。支持アーム44は、水平ピボット軸46を中心に回転するために、垂直脚42の上端に回転可能に固定されている。
【0035】
ピボット軸46は、テーブル36の中心線と位置合わせされ、アーム44は、ピボット軸46から径方向外向きに延在して、その外端でCアーム駆動アセンブリ47を支持する。Cアーム30は、駆動アセンブリ47にスライド可能に固定され、矢印50によって示されるように、Cアーム30をスライドしてC軸48を中心に回転させる駆動モータ(図示せず)に結合されている。ピボット軸46およびC軸48は、テーブル36上に位置するアイソセンター56で互いに交差し、互いに直角をなしている。
【0036】
X線源アセンブリ32はCアーム30の一端に取り付けられ、検出器アレイアセンブリ34は、他端に取り付けられている。X線源アセンブリ32は、検出器アレイアセンブリ34に向けられるX線のビームを放射する。アセンブリ32および34の両方は、このビームの中心光線がシステムアイソセンター56を通過するように、ピボット軸46に対して径方向内側に延びている。したがって、ビームの中心光線は、テーブル36上に置かれた被験者からのX線減衰データの取得の間、ピボット軸46またはC軸48、あるいはその両方の周りでシステムアイソセンターを中心に回転され得る。
【0037】
X線源アセンブリ32は、励起された際にX線のビームを放射するX線源を含む。中心光線は、システムアイソセンター56を通過し、検出器アセンブリ34に収容された2次元フラットパネルデジタル検出器58に衝突する。検出器58は、例えば、検出器エレメントが208×2048エレメントの2次元アレイであってもよい。各エレメントは、衝突するX線の強度、したがってX線が患者を通過する際のX線の減衰を表す電気信号を生成する。走査中、X線源アセンブリ32および検出器アレイアセンブリ34は、システムアイソセンター56を中心に回転されて、異なる角度からX線減衰投影データを取得する。いくつかの態様では、検出器アレイは、毎秒50の投影またはビューを取得可能であり、このことは、所定の走査経路および速度に対して取得できるビューの数を決定する制限要因である。
【0038】
図1Bを参照すると、アセンブリ32および34の回転、およびX線源の操作は、X線システムの制御機構60によって管理される。制御機構60は、X線源52に電力およびタイミング信号を提供するX線コントローラ62を含む。制御機構60内のデータ取得システム(DAS)64は、検出器エレメントからデータをサンプリングし、そのデータを画像再構成器65に渡す。画像再構成器65は、DAS64からデジタル化されたX線データを受け取り、本開示の方法に従って高速画像再構成を実行する。再構成された画像は、画像を大容量記憶装置69に格納するまたは画像をさらに処理するコンピュータ66への入力として用いられる。
【0039】
制御機構60はまた、土台モータコントローラ67およびC軸モータコントローラ68を含む。コンピュータ66からの運動コマンドに応答して、モータコントローラ67および68は、それぞれのピボット軸46およびC軸48周りの回転を生成するX線システム内のモータに電力を供給する。コンピュータ66はまた、キーボードおよび他の手動で操作可能な制御装置を有するコンソール70を介して、オペレータからコマンドおよび走査パラメータを受け取る。関連するディスプレイ72が、オペレータがコンピュータ66から再構成された画像および他のデータを観察することを可能にする。オペレータが提供するコマンドは、制御信号および情報をDAS64、X線コントローラ62、およびモータコントローラ67および68に提供するために、格納されたプログラムの指示の下でコンピュータ66によって使用される。さらに、コンピュータ66は、電動テーブル36を制御して、システムアイソセンター56に対して患者を配置するテーブルモータコントローラ74を操作する。
【0040】
図2を参照すると、本発明の実施形態に従って血管造影データから心臓周波数現象を抽出するために拡張機能を提供するまたはスタンドアロン装置として使用される、図1Aおよび図1Bの回転X線システム28のような、血管造影撮影システムに組み込み得るコンピュータシステムまたは情報処理装置80(例えば、図1Bのコンピュータ66)のブロック図が示されている。一実施形態では、コンピュータシステム80は、モニタまたはディスプレイ82、コンピュータ84(プロセッサ86、バスサブシステム88、メモリサブシステム90、およびディスクサブシステム92を含む)、ユーザ力装置94、ユーザ力装置96、および通信インターフェース98を含む。モニタ82は、情報の視覚的表現または表示を生成するように構成されたハードウェアおよび/またはソフトウェアエレメントを含み得る。モニタ82のいくつかの例は、テレビモニタ、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)のようなよく知られたディスプレイ装置を含み得る。いくつかの実施形態では、モニタ82は、タッチスクリーン技術を組み込む入力インターフェースを提供し得る。
【0041】
コンピュータ84は、1つまたは複数の中央処理装置(CPU)、メモリまたは記憶装置、グラフィックス処理装置(GPU)、通信システム、インターフェースカードなどのよく知られたコンピュータコンポーネントを含み得る。図2に示すように、コンピュータ84は、バスサブシステム88を介していくつかの周辺装置と通信する1つまたは複数のプロセッサ86を含み得る。プロセッサ86は、商業的に利用可能な中央処理装置などを含み得る。バスサブシステム88は、コンピュータ84の様々なコンポーネントおよびサブシステムを意図したように互いに通信させるためのメカニズムを含み得る。バスサブシステム88は単一のバスとして概略的に示されているが、バスサブシステムの代替の実施形態では、複数のバスサブシステムを利用し得る。プロセッサ86と通信する周辺装置は、メモリサブシステム90、ディスクサブシステム92、ユーザ力装置94、ユーザ力装置96、通信インターフェース98などを含み得る。
【0042】
メモリサブシステム90およびディスクサブシステム92は、データを格納するように構成された物理記憶媒体の例である。メモリサブシステム90は、プログラム実行中のプログラムコード、命令、およびデータの揮発性記憶用のランダムアクセスメモリ(RAM)、および固定されたプログラムコード、命令、およびデータが記憶される読み取り専用メモリ(ROM)を含むいくつかのメモリを含み得る。ディスクサブシステム92は、プログラムおよびデータ用の永続的(不揮発性)記憶を提供するいくつかのファイル記憶システムを含み得る。他のタイプの物理記憶媒体は、フロッピーディスク、リムーバブルハードディスク、CD-ROMやDVDやバーコードのような光記憶媒体、フラッシュメモリなどの半導体メモリ、読み取り専用メモリ(ROMS)、バッテリバックアップ式揮発性メモリ、ネットワーク化されたストレージ装置などを含む。メモリサブシステム90およびディスクサブシステム92は、本明細書で論じられる技術の機能または特徴を提供するプログラミングおよびデータ構成を格納するように構成され得る。プロセッサ86によって実行されるか、またはそうでなければ機能を提供するソフトウェアコードモジュールおよび/またはプロセッサ命令は、メモリサブシステム90およびディスクサブシステム92に記憶され得る。
【0043】
ユーザ入力装置94は、コンピュータシステムのコンポーネントによる処理のためにユーザからの入力を受け取るように構成されたハードウェアおよび/またはソフトウェアエレメントを含み得る。ユーザ入力装置は、コンピュータシステム84に情報を入力するためのすべての可能なタイプの装置およびメカニズムを含み得る。これらは、キーボード、キーパッド、タッチスクリーン、ディスプレイに組み込まれたタッチインターフェース、マイクや音声認識システムのようなオーディオ入力装置、およびその他のタイプの入力装置を含み得る。様々な実施形態では、ユーザ入力装置94は、コンピュータマウス、トラックボール、トラックパッド、ジョイスティック、ワイヤレスリモート、描画タブレット、音声コマンドシステム、視線追跡システムなどとして具体化され得る。いくつかの実施形態では、ユーザ入力装置94は、ユーザが、コマンド、動作、または例えばボタンをクリックするなどのジェスチャ、を介してモニタ82に表示され得る、オブジェクト、アイコン、テキストなどを選択するか、さもなければ相互作用することを可能にするように構成されている。
【0044】
ユーザ出力装置96は、コンピュータシステム80のコンポーネントからユーザに情報を出力するように構成されたハードウェアおよび/またはソフトウェアエレメントを含み得る。ユーザ出力装置は、コンピュータ84から情報を出力するためのすべての可能なタイプの装置およびメカニズムを含み得る。これらは、ディスプレイ(例えば、モニタ82)、プリンタ、タッチまたはフォースフィードバック装置、オーディオ出力装置などを含み得る。
【0045】
通信インターフェース98は、他の装置との一方向または双方向の通信を提供するように構成されたハードウェアおよび/またはソフトウェアエレメントを含み得る。
【0046】
例えば、通信インターフェース98は、インターネット接続などを介して、コンピュータ84と他の通信ネットワークおよび装置との間のインターフェースを提供してもよい。
【0047】
本発明の実施形態によれば、血管造影画像を取得することに加えて、追加の心臓信号/データが、本明細書で提供される技術に基づいて血管脈波の時空間的再構成を実行するために、相互相関ターゲットとなるように同時に取得され得る、ことが認識される。例えば、心臓信号/データは、血管造影投影における位相インデックス付ピクセルのための基準心臓信号として役立ち得る。図3および図4は、パルスオキシメトリシステムおよび/または心電図(EKG)システムまたは装置の形態で、そのような装置/システムを用いて基準心臓信号を取得/提供するための例示的な装置を示す。
【0048】
図3は、センサ102およびパルスオキシメトリモニタ104を含む適切なパルスオキシメトリシステム100の一例の斜視図である。センサ102は、特定の波長の光を患者の組織に放射するためのエミッタ106と、光が患者の組織によって反射および/または吸収された後に光を検出するための検出器108とを含む。モニタ104は、発光および検出に関連してセンサ102から受信した生理学的特性を計算し得る。さらに、モニタ104は、システムに関する生理学的特性および/または他の情報を表示することができるディスプレイ110を含む。センサ102は、ケーブル112を介してモニタ104に通信可能に結合されて示されているが、あるいは、無線伝送装置などを介して通信的に結合されていてもよい。図示された実施形態では、パルスオキシメトリシステム100はまた、マルチパラメータの患者モニタ114を含む。モニタ104に加えて、または代わりに、マルチパラメータの患者モニタ114が、生理学的特性を計算し、モニタ104および他の医療モニタ装置またはシステムからの情報用の中央ディスプレイ116を提供し得る。例えば、マルチパラメータの患者モニタ114は、モニタ104からの患者のSpOおよび脈拍数情報、ならびにディスプレイ116上の血圧モニタからの血圧を表示し得る。別の実施形態では、コンピュータシステム80は、図3に示されるセンサ102のようなパルスオキシメトリセンサと通信するためのハードウェアおよびソフトウェアを含むように構成されてもよいし、本明細書に記載の技術に従って、パルスオキシメトリセンサから受け取った生理学的特性を計算し、そのような特性を利用して心臓周波数現象を抽出し、それを表示するためのハードウェアおよびソフトウェアを含むように構成されていてもよい。
【0049】
図4は、通信リンク124を介して情報管理システム122に任意に接続された心電図(「EKG」)装置120の概略図である。EKGを取得するために一般的に使用される装置は、12誘導心電計である。EKG装置120および情報管理システム122は、外部ソースから電力126を受け取る。とりわけ、情報管理システム122は、データリンク132を介してメモリユニットまたはデータベース130に接続された中央処理ユニット128を含む。CPU128は、データを処理し、プリンタ134および/またはディスプレイ136のような出力に接続される。あるいは、心電図(EKG)装置120は、オプションの情報管理システム122が利用されない場合、通信リンク124を介してプリンタ134またはディスプレイ136に直接接続し得る。本明細書で提供される実施形態によるソフトウェアプログラムは、EKG装置120、情報管理システム122、またはEKG装置120から信号を受信するように関連付けられた別の装置のいずれかに存在し得る。EKG装置120は、複数の患者のリード線138に接続され、それぞれが既知の方法で患者142からEKG信号を受信するための電極140を有している。EKG装置120は、EKG信号を受信し、ノイズをフィルタリングし、閾値を設定し、信号を分離し、マイクロコントローラ148または任意の他のタイプの処理ユニットによって処理するためにアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器146へのリード138の数に対して適切な数のEKG信号を提供する信号調整器144を備えている。マイクロコントローラ148は、メモリユニット130と同様のメモリユニット150、または任意の他のコンピュータ可読記憶媒体に接続されている。別の実施形態では、コンピュータシステム80は、図4に示される電極140のようなEKG電極と通信するためのハードウェアおよびソフトウェアを含むように構成されていてもよいし、本明細書に記載の技術に従って電極から受け取った生理学的特性を計算し、そのような特性を利用して心臓周波数現象を抽出しそれを表示するためのハードウェアおよびソフトウェアを含むように構成されていてもよい。
【0050】
前述したように、本実施形態は、血管造影データにおける心臓周波数現象を再構成するためのシステム、方法、およびコンピュータ可読媒体を対象としている。一連の血管造影画像(すなわち、2次元投影画像)は、心拍数よりも速く(図1A図1Bのシステムを介して)取得され、(図2のシステムを介して)分析されて、本明細書で提供されるバンドパスフィルタリングおよび増幅技術を利用する移動血管脈波の時空間的再構成(例えば、761特許に記載されているように)を提供する。
【0051】
いくつかの態様では、時空間的再構成は、投影と同じ次元の複素数値データであり、各時点の各ピクセルは、複素数値データを有する。実数と虚数として表されてもよい。ただし、生理学上の説明では、大きさと位相を持つ極形式で表される。いくつかの態様では、大きさは、心臓周波数での所与のピクセルにおけるコントラストの変化を表し、位相は、心周期に対する位相を表す。
【0052】
761特許は、心臓周波数血管造影現象の時間変化する抽出をもたらすためにウェーブレット変換を用いる(つまり、ウェーブレット変換が血管造影図のピクセル単位の時間信号のそれぞれに適用される)が、心臓周波数血管造影現象の時間変化する抽出をもたらすために他の方法を利用され得ることが理解されよう。
【0053】
図6~9は、本明細書で提供される技術の操作に対応するフローチャートである。本明細書で説明される操作は、血管造影画像処理および表示技術を改善するために、血管造影撮影システムまたはスタンドアロンコンピュータシステムで実施され得ることが理解されよう。一実施形態によれば、心臓周波数バンドパスフィルタが、心臓周波数よりも高い周波数で取得された血管造影データに適用されて、心臓周波数血管造影現象(例えば、移動血管脈波)の時空間的再構成を出力してもよい。映画の一連の血管造影画像から心臓周波数現象を抽出するために、心臓周波数バンドパスフィルタが血管造影図に適用される。いくつかの態様では、同時に測定された心臓信号(図3のパルスオキシメトリシステムまたは図4の心電図装置から取得されたような)は、位相指標付けのための基準心臓信号として役立ち得る。
【0054】
図6は、本明細書で提供される技術の高レベルの実施を示している。操作は別々に示されているが、特定の操作(例えば、時間処理、バンドパスフィルタリング、および増幅)が、この図に示されているものとは異なる順序で組み合わされおよび/または実行され得ることは理解されるであろう。操作610において、画像は空間的に分解される。一実施形態では、画像はピクセルに分解され、その後の計算はピクセル毎に実行されてもよい。他の態様では、ピクセルは異なる周波数帯域にグループ化され、計算は帯域ごとに実行されてもよい。
【0055】
空間的分解は、それぞれ異なる空間特性を有するいくつかの画像への画像の分離である。例えば、画像は、特定の空間周波数の空間構造に対応するグループに分離され得る。空間的分解を生成するための方法の例には、ラプラシアンピラミッド、複雑な操作可能なピラミッド、およびリースピラミッドが含まれるが、これらに限定されない。他の態様では、空間的分解は、マルチスケールの異方性フィルタリング、またはシアレットまたはリッジレットに基づく変換を含み得る。心臓周波数組織化は空間構造の1つまたは複数の特定のスケールで起こり得るので、これらのいずれかが、一連の血管造影画像における心臓周波数現象を抽出するために選択されてもよい。いくつかの態様では、空間周波数分解は、実数値または複素数値であってもよい。
【0056】
操作620において、時間的処理が、観察されたピクセルの強度を時間の関数として変換された動作信号に相関させるために実行され得る。血管脈波が血管系を通過すると、時間的処理によりこの変換された動作信号を抽出し得る。操作630において、変換された動作信号は、例えば、心臓周波数で、バンドパスフィルタリングされ得る。いくつかの態様では、血管造影画像の各ピクセルは、時間の関数として別個の信号として扱われてもよく、心臓周波数バンドパスフィルタは、ピクセルごとに適用されてもよい。他の態様では、心臓周波数バンドパスフィルタは、空間構造に対応するグループに適用されてもよい。限界では、周波数バンドパスフィルタの代わりに、同時に測定された心臓信号(例えば、図3のパルスオキシメトリシステムまたは図4の心電図装置から取得された)は、1つのタイプの超狭帯域通過心臓周波数フィルタを提供する相互相関ターゲットとして機能し得る。いくつかの態様では、同時に測定された心臓信号は、位相インデックス付け用の基準心臓信号として機能する。
【0057】
操作640において、信号(例えば、心臓スケールでの動作に対応するバンドパスフィルタリングを用いて画像から抽出された)は、増幅されてもよい。いくつかの態様では、増幅は、信号に定数を掛けることによって達成され得る。他の態様では、オイラー拡大を使用することができる。いくつかの態様では、増幅は、心臓周波数信号を分離してから増幅することによって実行され得る。この場合、増幅信号は、例えば、増幅された信号を元の信号と整列させることによって(例えば、時間変化する強度に基づいて、タイムスタンプに基づいてなど)、元の信号と再結合され得る。いくつかの態様において、増幅された信号は、元の信号に付加的に結合され得る。他の態様において、増幅された信号は、元の信号に重ね合わされ得る。したがって、操作650において、元の信号は、増幅されたバンドパス信号と結合されるか、または重ね合わされて、再構成された信号を形成することができる。例えば、任意で、操作660において、再構成された信号は、ノイズ抑制(例えば、バイラテラルフィルタリングまたは他の適切な技術)を受けることができる。これらの技術は、増幅され得る移動血管脈波として示される、出力としての心臓周波数血管造影現象の時空間的再構成を提供する。
【0058】
他の態様では、心臓周波数バンドパスフィルタは、実施形態に従って、実数値または複素数値であってもよい。心臓周波数バンドパスフィルタが実数値である場合、結果として生じる心臓周波数現象が再評価され、グレースケール、カラースケール、および/または明るさを含む任意の適切な視覚化フォーマットを用いた画像形式で表現され得る。あるいは、心臓周波数バンドパスフィルタが実数成分と虚数成分を有する複素数値である場合、大きさと位相を含む極形式で表すことができる。心臓周波数バンドパスフィルタを通過した後、大きさは心臓周波数の大きさとして、「心臓の動きの強さ」のように解釈され得る。位相は、心周期内の時間的位置として解釈され得る。大きさと位相は、明るさ-色相カラーモデルを用いて表現され、ピクセルの明るさは心臓周波数の大きさを表し、色相は心臓周波数の位相を表す。
【0059】
心臓周波数バンドパスフィルタおよび増幅された画像は、グレースケールまたはカラースケール(図5を参照)で表現することができ、任意で、色の明るさは、心臓周波数の大きさまたは空間運動速度を表すことができ、再構成された結果の心臓周波数帯域で時間的または空間的特性を強調するかどうかのユーザの選択に応じて、色相は、心臓周波数位相または空間運動方向を表すことができる。画像はグレースケールとして提示されるが、当業者は、このグレースケール画像が色相のスペクトルを含むことを認めるであろう。ピクセル内の複素数値を表現するためのカラーモデルが図5に示されており、図5は緑の領域、黄色の領域、赤の領域、および青の領域を含む色相のスペクトルを示し得る。そのような一連の画像は、例えば、脳または心臓または他の血管領域などにおける一連の血管脈波の列の動きの映画ビデオを表すために、時間インデックスにわたってアニメーション化され得る。
【0060】
図7を参照すると、例示の目的で、所与の空間的にフィルタリングされた画像、および唯一の空間次元xおよび時間次元t、について、例が以下に提供されている。この表現は、信号の連続した形態に対応する。しかしながら、これらの連続する方程式は、当技術分野で知られている技術に従って、デジタル化された画像を処理するために適用され得ることが理解される。
【0061】
操作710において、空間的にフィルタリングされた画像が生成される。画像I(x,t)は、本明細書で提供されるように、空間的分解を受け得る。たとえば、空間的分解は、粗いフィルタリングが領域を異なる周波数帯域に分離し、細かいフィルタリングが画像に磨きをかけるピラミッド分解を含み得る。空間的に分解された、または空間的にフィルタリングされた画像I(x,t)は、以下のように表すことができる。
【0062】
操作720において、血管からの動きを決定し、心臓周波数を抽出するために、時間依存性変換(または時間フィルタ)がxに適用されており、ここでxはtの関数である変換関数∂(t)によって修正されている。
【0063】
操作730において、心臓周波数の動きを抽出するための時間依存性変換は増幅係数αによって増幅され、このことが変換関数∂(t)に適用されて、以下を与える。
【0064】
いくつかの態様では、項f(x+∂(t))は、xに関する1次テイラー展開として次のように展開される。
【0065】
いくつかの態様では、テイラー展開からのより高次の項(例えば、2次、3次など)が含まれ得る。この方程式は、増幅された時間依存性変換を含む再構成された信号に対応する。たとえば、項∂(t)∂f(x)/∂xは、心臓周波数帯域外の時間的現象に対してその値がゼロになるような心臓周波数バンドパスフィルタ(時間窓付き)として機能する。時間依存性変換は、(1+α)(αがゼロより大きいように選択されている場合)だけ増幅され、元の画像f(x)と結合される。この再構成は、時空間的血管造影現象を説明するための一連の映画ビデオとして表示されていてもよい。したがって、この方法を空間的分解と組み合わせて適用することにより、画像は、空間的に分解された画像のピラミッドから合成され得る。いくつかの態様では、増幅技術は任意でもよく、バンドパスフィルタリングのみが実行されてもよい。
【0066】
別の態様では、フーリエ変換は、バンドパスフィルタとして機能し得る。操作810において、空間的分解が画像に対して実行される。操作810において、画像は、心臓スケールバンドパスフィルタにかけられた後、フーリエ変換を用いてピクセル単位で周波数領域に変換され得る。他の態様では、時間窓のフーリエ変換が適用されてもよい。操作830において、心臓スケールは、周波数領域で増幅されてもよい。操作840において、増幅された周波数領域の画像は、時間領域に逆変換されてもよく、増幅された心臓範囲を有する時空間的血管造影現象が表示され得る。
【0067】
別の態様では、オイラー拡大技術は、心臓血管造影現象のカスタム増幅を可能にするために、修正および拡張され得る。例えば、現在のアプローチは、これらの技術を血管造影図に拡張し、血管内に注入された造影剤の塊が心臓周波数よりも速く血管系を通過する間に得られる一連の時間的画像を含む。この場合、増幅因子αは、時空間的血管造影現象を増幅するように選択され、この因子の範囲を制限および標準化することによって再現性を可能にする。さらに、オイラー法は、血管造影データ用のバンドパスフィルタを選択することができ、心拍数モニタのような独立したデータから詳しく推定されおよび/または制限され得る心臓周波数帯域を推定するためのより高次の項(例えば、必要に応じて2次または3次の項)を含み得る。
【0068】
例えば、増幅は、オイラー拡大法を用いて実行されてもよい。このアプローチでは、空間フィルタは、時間的に配置された2つ以上の一連の画像に適用される。時間フィルタは、空間フィルタの複数の結果に適用される。空間的および時間的に2重にフィルタリングされた結果の1つまたは複数が選択的に増幅され、その後、時空間的現象の再構成に対応する増幅された効果を生み出すために、一連の画像に再組立される。これらの技術は、心臓周波数現象に対応する時間的現象を含む、関心のある時間的および空間的現象を有するものを選択するために、血管造影画像に適用され得る。
【0069】
本発明の追加の実施形態によれば、シアレットまたはリッジレット変換は、血管造影データにおける心臓周波数現象を抽出する際に使用され得る。シアレットおよびリッジレット変換は、画像のエッジのような異方性の特徴によって決定される多変量関数に適応する。等方性物体としてのウェーブレットは、そのような現象を捕捉できない。ウェーブレット変換は時間領域分析の目的で使用され得るが、シアレットおよびリッジレット変換は空間的分析用に使用でき、血管造影データの多重解像度(例えば、2次元の空間的および時間的)分析が実行されることが可能になる。
【0070】
例示的な実施例が図9に提供されている。この例では、バンドパスフィルタが、心臓周波数現象を視覚化するために増幅率で適用されている。図の左側の部分は、指パルスオキシメータ102(光学プレチスモグラムとしても知られている)によって記録されている心臓信号と同時に血管造影を受けている患者910を示す。
【0071】
血管造影は、患者に造影剤の塊を注入し、心臓周波数よりも速い速度で血管造影画像を取得することによって得られる。心臓周波数は、患者の心臓信号から取得されてもよい。いくつかの態様では、心臓信号は、時間の関数として変化し得る。この場合、瞬間的な心臓信号は、対応する得られた画像に関して参照され得る。
【0072】
この例では、2つの主要な表示エレメント920および930ならびに2つの視覚的制御ウィジェット940および945を備えたグラフィカルユーザインターフェースが示されている。グラフィカルユーザインターフェースは、コンピュータシステム80のモニタなどのコンピュータモニタ上に表示され得ることが理解されよう。2つの主要な表示エレメントは、心臓周波数増幅なしの心臓血管造影画像920(コンピュータモニタ上の左側で「生」とラベル付けされた)および心臓周波数増幅ありの心臓血管造影画像930(コンピュータモニタ上の右側で「心臓周波数増幅」とラベル付けされ、心臓周波数の大きさと位相用の明るさ-色相モデルを有する)である。グレースケール、モノクロなどを含むがこれらに限定されない他の表示方法も、本技術と共に使用することが意図されている。この例では、画像の下に配置された水平方向に配向されたスライダー制御ウィジェット940(「フレーム」とラベル付けされている)は、ユーザによって(例えば、マウスでドラッグすることによって)画面上で左右に動かされて、表示された画像フレームを制御し得る。心臓周波数フィルタ(図6~8に記載されている)は、一連の血管造影画像のすべての画像フレームに適用され、臨床医または放射線科医は、一度に1つのフレームを検査し得る。任意で、心臓周波数の増幅された画像の3D表現が、例えば2020年2月6日に出願され参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、同時係属中の米国特許出願第16/784,125号に記載されている技術を用いて提供されている。
【0073】
グラフィカルユーザインターフェースも、心臓周波数の増幅の程度を明示するために、ユーザによって(マウスでドラッグするなどして)調整され得る右側(「増幅率」と表示)上に、垂直方向に配向されたスライダー制御945を含む。画像を見ながらこれらのパラメータを制御することにより画像を解釈しているユーザは、特定の医療分析のためにこれらの設定をカスタマイズするため、本明細書で提供される技術に基づいて画像の増幅および空間的分析を修正し得る。これらの技術は、画像化されている対象で発生する心臓周波数活動への医学的洞察を提供し得る。
【0074】
図10は、本明細書で提供される技術の高レベルの操作を示している。操作1010において、データは、心臓周波数よりも速い速度で得られた血管造影研究から取得または受信されている。操作1020において、心臓周波数バンドパスフィルタが血管造影データに適用されて、心臓周波数血管造影現象の時空間的再構成を出力する。操作1030において、1つまたは複数の画像における心臓周波数血管造影現象の時空間的再構成が表示される。
【0075】
有益には、本明細書で提供される実施形態は、心臓周波数現象を抽出し任意で拡大するために、オイラー拡大の有無にかかわらず心臓周波数バンドパスフィルタを血管造影データに適用する、血管造影データ内の心臓周波数現象を時空間的に再構成するためのシステム、方法、およびコンピュータ可読媒体を含む。いくつかの態様において、これらの技術は、心臓周波数現象をさらに拡大するために、761特許で提供される技術と組み合わされ得る。
【0076】
これらの技術は、血管造影画像を取得するように設計されたハードウェアシステム、特に血管造影システムを適用して、患者のために画像を取得してもよい。これらの技術は、既存の血管造影アプローチに勝る技術の改善を提供し、すなわち、時空間的心臓周波数現象が増幅されて血管造影信号に重ね合わせることを可能にする。この増大により、既存の技術と比較して、血管脈波の増幅による視覚化の改善、および(空間的フィルタリング技術に基づく)詳細の分析の改善を可能にし得る。いくつかの態様では、増幅は、本明細書に記載されるようにカスタム制御されて、様々な程度の増幅および分析を可能にし、このことは様々な医学的分析のための情報をもたらすようにカスタマイズされ得る。
【0077】
したがって、前述の説明から明らかにされたものの中で、上記の物は効率的に達成されて、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、特定の変更を行うことができるので、上述の説明に含まれ、添付の図面に示された全ての事項は、例示として解釈されるべきであり、限定的な意味ではないことが意図される。
【0078】
以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載の本発明の一般的および特定の特徴のすべて、および言語の問題としてその間にあると言われる可能性のある本発明の範囲のすべての陳述を網羅することを意図していることも理解されたい。
【0079】
本明細書で提供される技術は、好ましい実施形態に関して説明されており、明示的に述べられたものとは別に、同等物、代替物、および修正が可能であり、添付の特許請求の範囲内であることが認識される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10