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特許7490044二次電池の制御装置、電池パックおよび二次電池の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】二次電池の制御装置、電池パックおよび二次電池の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20240517BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240517BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240517BHJP
   G01R 31/378 20190101ALI20240517BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
G01R31/378
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022504959
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2020027371
(87)【国際公開番号】W WO2021176745
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/009282
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】久米 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 靖博
(72)【発明者】
【氏名】中村 拳
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 英司
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-227539(JP,A)
【文献】特開2018-205139(JP,A)
【文献】特開2015-060761(JP,A)
【文献】特開2014-002055(JP,A)
【文献】特開2019-045351(JP,A)
【文献】国際公開第2019/017183(WO,A1)
【文献】特開2017-227494(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0040888(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0147614(US,A1)
【文献】特開2019-165553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/392
H01M 10/48
H02J 7/00
G01R 31/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の電圧の変化量に対する蓄電量の変化量の割合であるdQ/dVを縦軸とし、前記二次電池の電圧を横軸としたV-dQ/dV曲線に表れる複数の極値点のうち、一つ以上の極大点及び極小点をそれぞれ含む複数の特定極値点におけるdQ/dV値の平均値、又は、前記蓄電量を横軸、前記電圧を縦軸としたQ-V曲線における複数の変曲点のうち傾きの逆数が最大となる変曲点と最小となる変曲点をそれぞれ含む複数の変曲点における傾きの逆数の最大値または最小値の平均値をXとし、
校正サンプルにおいて、前記複数の特定極値点におけるdQ/dV値の前記平均値、又は、前記複数の変曲点における傾きの逆数の最大値または最小値の平均値前記校正サンプルの劣化度合いとの関係から予め求められる定数をA、Bとした際に、
前記二次電池の劣化度合いSOHを、SOH=AX+B ・・・(1)に補正する、二次電池の制御装置。
【請求項2】
前記複数の特定極値点は、前記極大点と前記極小点とのうちいずれかを2つ以上含む、請求項1に記載の二次電池の制御装置。
【請求項3】
前記複数の特定極値点は、前記極大点として3.6V以上3.8V以下の電圧範囲に表れる極大点を含む、請求項1又は2に記載の二次電池の制御装置。
【請求項4】
前記複数の特定極値点は、前記極小点として3.9V以上4.2V以下の電圧範囲に表れる極小点を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池の制御装置。
【請求項5】
前記複数の特定極値点は、前記極大点として4.0V以上4.2V以下の電圧範囲に表れる極大点を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池の制御装置。
【請求項6】
前記dQ/dVを算出するdQ/dV算出手段と、
前記V-dQ/dV曲線に表れる複数の極値点から前記複数の特定極値点を選択し、前記複数の特定極値点におけるdQ/dV値の平均値を算出する平均値算出手段と、
前記平均値に基づいて、前記二次電池の劣化度合いSOHを補正する補正手段と、を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池の制御装置。
【請求項7】
二次電池と請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池の制御装置とを備える、電池パック。
【請求項8】
前記二次電池は、正極に活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)及びリチウムマンガン酸化物(LMO)を含む、請求項7に記載の電池パック。
【請求項9】
二次電池の電圧の変化量に対する蓄電量の変化量の割合であるdQ/dVを縦軸とし、前記二次電池の電圧を横軸としたV-dQ/dV曲線に表れる複数の極値点のうち、一つ以上の極大点及び極小点をそれぞれ含む複数の特定極値点におけるdQ/dV値の平均値、又は、前記蓄電量を横軸、前記電圧を縦軸としたQ-V曲線における複数の変曲点のうち傾きの逆数が最大となる変曲点と最小となる変曲点をそれぞれ含む複数の変曲点における傾きの逆数の最大値または最小値の平均値をXとし、
校正サンプルにおいて、前記複数の特定極値点におけるdQ/dV値の前記平均値、又は、前記複数の変曲点における傾きの逆数の最大値または最小値の平均値前記校正サンプルの劣化度合いとの関係から予め求められる定数をA、Bとした際に、
前記二次電池の劣化度合いSOHを、SOH=AX+B ・・・(1)に補正する、二次電池の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の制御装置、電池パックおよび二次電池の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の状態の指標としてSOC(State of Charge)やSOH(State of Health)が知られている。SOCは、二次電池の残容量を示す指標であり、SOHは電池の劣化状態を示す指標である。SOCは、満充電容量に対する残容量の割合である。SOHは、初期の満充電から満放電までの容量に対する劣化時の満充電から満放電までの容量の割合である。
【0003】
例えば、特許文献1には、二次電池の充電時に、電圧の変化量に対する蓄電量の変化量の割合であるdQ/dVと二次電池の電圧Vから得られるV-dQ/dV曲線の極大点の電圧値から容量低下率(SOHに対応する)を推定する方法が記載されている。
【0004】
例えば、特許文献2には、二次電池の放電時に、dQ/dVを求め、電圧に対するdQ/dVの変化量の最大値からSOHを求める方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-19709号公報
【文献】特開2016-9659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二次電池が充放電サイクルを繰り返すと、実際のSOHの値から推定されるSOHの値がずれる場合がある。特許文献1及び2に記載の方法では、実際のSOHの値と推定されるSOHの値との誤差を十分小さくすることができない。
【0007】
本開示は上記問題に鑑みてなされたものであり、二次電池の劣化状態を適正値に補正できる、二次電池の制御装置、電池パックおよび二次電池の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0009】
(1)第1の態様にかかる二次電池の制御装置は、二次電池の電圧の変化量に対する蓄電量の変化量の割合であるdQ/dVを縦軸とし、前記二次電池の電圧を横軸としたV-dQ/dV曲線に表れる複数の極値点のうち、一つ以上の極大点及び極小点をそれぞれ含む複数の特定極値点又はこれと数学的に等価な点におけるdQ/dV値の平均値をXとし、校正サンプルにおける前記複数の特定極値点又はこれと数学的に等価な点におけるdQ/dV値の前記平均値と前記校正サンプルの劣化度合いとの関係から予め求められる定数をA、Bとした際に、前記二次電池の劣化度合いSOHを、SOH=AX+B ・・・(1)に補正する。
【0010】
(2)上記態様にかかる二次電池の制御装置において、前記複数の特定極値点は、前記極大点と前記極小点とのうちいずれかを2つ以上含んでもよい。
【0011】
(3)上記態様にかかる二次電池の制御装置において、前記複数の特定極値点は、前記極大点として3.6V以上3.8V以下の電圧範囲に表れる極大点を含んでもよい。
【0012】
(4)上記態様にかかる二次電池の制御装置において、前記複数の特定極値点は、前記極小点として3.9V以上4.2V以下の電圧範囲に表れる極小点を含んでもよい。
【0013】
(5)上記態様にかかる二次電池の制御装置において、前記複数の特定極値点は、前記極大点として4.0V以上4.2V以下の電圧範囲に表れる極大点を含んでもよい。
【0014】
(6)上記態様にかかる二次電池の制御装置は、前記dQ/dVを算出するdQ/dV算出手段と、前記V-dQ/dV曲線に表れる複数の極値点から前記複数の特定極値点を選択し、前記複数の特定極値点におけるdQ/dV値の平均値を算出する平均値算出手段と、前記平均値に基づいて、前記二次電池の劣化度合いSOHを補正する補正手段と、を有してもよい。
【0015】
(7)第2の態様にかかる電池パックは、二次電池と上記態様にかかる制御装置とを備える。
【0016】
(8)上記態様にかかる電池パックにおいて、前記二次電池は、正極に活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)及びリチウムマンガン酸化物(LMO)を含んでもよい。
【0017】
(9)第3の態様にかかる二次電池の制御方法は、二次電池の電圧の変化量に対する蓄電量の変化量の割合であるdQ/dVを縦軸とし、前記二次電池の電圧を横軸としたV-dQ/dV曲線に表れる複数の極値点のうち、一つ以上の極大点及び極小点をそれぞれ含む複数の特定極値点又はこれと数学的に等価な点におけるdQ/dV値の平均値をXとし、校正サンプルにおける前記複数の特定極値点又はこれと数学的に等価な点における前記平均値と前記校正サンプルの劣化度合いとの関係から予め求められる定数をA、Bとした際に、前記二次電池の劣化度合いSOHを、SOH=AX+B ・・・(1)に補正する。
【発明の効果】
【0018】
上記態様に係る二次電池の制御装置、電池パックおよび二次電池の制御方法は、二次電池の劣化状態を適正値に補正できる。
また上記態様に係る二次電池の制御装置、電池パックおよび二次電池の制御方法は、二次電池の安全性を高め、エネルギーの安定供給に寄与し、持続可能な開発目標に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態にかかる電池パックのブロックである。
図2】二次電池のV-dQ/dV曲線の一例である。
図3】校正サンプルの充放電サイクルを繰り返すことに伴い変化するV-dQ/dV曲線である。
図4】校正サンプルの劣化度合いと所定の極大点と極小点におけるdQ/dVの平均値との関係を示す。
図5】第1実施形態にかかる二次電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0021】
「電池パック」
図1は、第1実施形態にかかる電池パック100のブロック図である。電池パック100は、二次電池10と制御装置20とを備える。二次電池10と制御装置20との間では信号の通信が行われる。信号の通信は、有線でも無線でもよい。
【0022】
二次電池10は、例えば、リチウム二次電池である。二次電池10の具体的な構成は後述する。二次電池10は、使用に伴い劣化する。二次電池10の劣化の指標がSOHである。SOHは、「劣化時の満充電から満放電までの容量(Ah)/初期の満充電から満放電までの容量(Ah)×100」で表される。SOHを適切に評価することは、電池の寿命延長に繋がる。
【0023】
制御装置20は、二次電池10を制御する制御装置(コントローラー)である。制御装置20は、例えば、マイコンである。
【0024】
制御装置20は、例えば、二次電池10の劣化度合いをSOH=AX+B ・・・(1)に補正する制御プログラムを有する。以下、制御装置20の具体的な例を用いて、制御装置20について説明する。
【0025】
制御装置20は、例えば、dQ/dV算出手段21と平均値算出手段22と補正手段23とを有する。dQ/dV算出手段21、平均値算出手段22、補正手段23は、例えば、制御装置20に格納されたプログラムの一例である。
【0026】
dQ/dV算出手段21は、二次電池10の電圧及び蓄電量をモニターする。dQ/dV算出手段21は、単位時間当たりの電圧の変化量と蓄電量の変化量からdQ/dVを算出する。dQ/dVの算出は、例えば、充電時に行う。
【0027】
dQ/dV算出手段21は、算出されたdQ/dVを基に、V-dQ/dV曲線を描く。V-dQ/dV曲線は、充放電試験によって測定した容量を電圧で微分することで得られる。図2は、V-dQ/dV曲線の一例である。V-dQ/dV曲線は、横軸が二次電池の電圧であり、縦軸がdQ/dVである。
【0028】
図2に示すように、V-dQ/dV曲線は、複数の極値点を有する。極値点は、極大点と極小点とがある。V-dQ/dV曲線における極大点は、充放電曲線において電位が平坦な部分に対応する。V-dQ/dV曲線における極小点は、充放電曲線において電位の変動が大きい部分に対応する。
【0029】
dQ/dV算出手段21で求められたV-dQ/dV曲線のデータは、平均値算出手段22へ送られる。平均値算出手段22は、一つ以上の極大点及び極小点をそれぞれ選択し、選択された極大点及び極小点におけるdQ/dV値の平均値を算出する。以下、SOHの算出に用いられる選択された一つ以上の極大点及び極小点を、それぞれ特定極値点と称する場合がある。
【0030】
平均値算出手段22における極値点の選択は任意である。平均値算出手段22は、極大点と極小点を1つ以上選択する。平均値算出手段22は、極大点と極小点とのうち少なくとも一方を2つ以上選択することが好ましい。すなわち、複数の特定極値点は、極大点と極小点とのうち少なくとも一方を2つ以上含むことが好ましい。この場合、平均値算出手段22は、3つ以上の極値点をそれぞれ特定極値点として選択する。
【0031】
極大点及び極小点の選択の仕方は任意である。詳細は後述するが、選択される極大点及び極小点の組み合わせは、校正サンプルによってdQ/dV値の平均値の変動と劣化の関係が予め求められているものである。
【0032】
平均値算出手段22は、例えば、特定極値点の一つとして3.6V以上3.8V以下の電圧範囲に表れる極大点を選択してもよい。例えば、当該電圧範囲内に複数の極大点がある場合は、最も大きなメインのピークを選択する。図2における極大点P2はこの電圧範囲内にある。極大点P2は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から2番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点である。ここで初期とは、10回以内の充放電サイクルを示す。極大点P2は、例えば、負極のグラファイトのステージ構造において、ステージ2Lとステージ2との共存状態に基づく電圧安定領域に伴うピークである。
【0033】
また平均値算出手段22は、例えば、特定極値点の一つとして3.9V以上4.2V以下の電圧範囲に表れる極小点を選択してもよい。例えば、当該電圧範囲内に複数の極小点がある場合は、最も極小となるメインの極値点を選択する。図2における極小点B3はこの電圧範囲内にある。極小点B3は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から3番目に表れる電圧変動領域に伴う極小値である。極小点B3は、例えば、リチウムマンガン酸化物の立方晶における単相反応が完了することに伴うピークである。
【0034】
また平均値算出手段22は、例えば、特定極値点の一つとして4.0V以上4.2V以下の電圧範囲に表れる極大点を選択してもよい。例えば、当該電圧範囲内に複数の極大点がある場合は、最も大きなメインのピークを選択する。図2における極大点P4はこの電圧範囲内にある。極大点B4は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から4番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点である。極大点P4は、例えば、リチウムマンガン酸化物の二つの立方晶における二相共存反応に基づく電圧安定領域に伴うピークである。
【0035】
平均値算出手段22で求められたdQ/dV値の平均値は、補正手段23へ送られる。補正手段23は、平均値算出手段22から送られた平均値に基づいて、二次電池10のSOHを推定する。補正手段は、推定されたSOHを補正値として、二次電池10のSOHを補正する。
【0036】
補正値は、以下の式(1)を満たす。
SOH=AX+B ・・・(1)
式(1)において、SOHは二次電池の推定される劣化度合いであり、補正値である。式(1)において、Xは平均値算出手段22で算出された平均値である。式(1)において、A、Bは、定数である。
【0037】
A、Bの定数は、例えば、校正サンプルの複数の特定極値点におけるdQ/dV値の平均値と校正サンプルの劣化度合いとの関係から予め求められる。A、Bの定数は、平均値算出手段22で選択された特定極値点の組み合わせによって異なる。A、Bの定数は、校正サンプルによって事前に求められ、補正手段23に予め記憶されている。記憶されたA、Bの定数は、補正の際に記憶領域から読み出される。
【0038】
ここで、A、Bの定数の求め方について説明する。まず校正サンプルを準備する。校正サンプルは、実際に使用される二次電池10と同じ材料、同じ容量で作製する。同じ材料及び同じ容量で作製された校正サンプルの劣化挙動は、実際に使用される二次電池10の劣化挙動と近似する。
【0039】
次いで、校正サンプルの充放電試験を行い、V-dQ/dV曲線を得る。図3は、校正サンプルの充放電サイクルを繰り返すことに伴い変化するV-dQ/dV曲線を示す。図3では、二次電池が初期の状態のV-dQ/dV曲線を100として表記し、劣化するに従い数値が小さくなっている。図3に示すように、充放電サイクルを繰り返すと校正サンプルは劣化し、極値点におけるdQ/dV値が変化する。
【0040】
次いで、校正サンプルのV-dQ/dV曲線における極大点と極小点を1つ以上選択し、これらのdQ/dV値の平均値を求める。平均値は、充放電サイクルを所定回数行うごとに求める。また平均値を求めた時点における校正サンプルの劣化度合い(SOH)も求める。校正サンプルの劣化度合い(SOH)は、当該サイクル回数において満充電から満放電させた際の容量(Ah)を初期の満充電から満放電させた際の容量(Ah)で割ることで求められる。図4は、校正サンプルの劣化度合いと所定の極大点と極小点におけるdQ/dV値の平均値との関係を示す。
【0041】
図4に示すように、校正サンプルの劣化度合いと所定の極大点と極小点におけるdQ/dV値の平均値との間には、相関がある。図4に示すプロットの回帰直線を引く。回帰直線の傾きが定数Aであり、回帰直線の切片が定数Bである。
【0042】
補正手段23は、求められた補正値を二次電池10に送る。二次電池10のSOHの値は補正値に置き換えられる。補正値への置き換えは、例えば、充電時に選択した特定極値点をすべて通過した後に行う。補正値への置き換えは、例えば、充電時に選択した特定極値点をすべて通過する毎に行う。また補正は、補正値が得られた時点で行ってもよい。また補正は、補正値が得られた後に、補正点での保有値(補正前の値)と補正値との差分を加えてもよい。また補正は、補正完了点において、補正点での保有値に対して補正点での保有値と補正値との差分にあたる値が加わるように、補正点から補正完了点まで徐々に値を補正していってもよい。
【0043】
SOHを補正値に置き換えると、例えば、連続的に変化するSOHの値が不連続に変化する。読みだされるSOHの値が不連続に変化したということは、補正が行われたと推定できる。また補正された時点における補正値が、上記関係式(1)を満たす場合、第1実施形態にかかる二次電池の制御方法が行われたと推定できる。
【0044】
図5は、第1実施形態にかかる二次電池の模式図である。二次電池10は、例えば、発電素子4と外装体5と電解液(図示略)とを備える。外装体5は、発電素子4の周囲を被覆する。外装体5は、例えば、金属箔5Aを高分子膜(樹脂層5B)で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムである。発電素子4は、接続された一対の端子6によって外部と接続される。電解液は、外装体5内に収容され、発電素子4内に含浸している。
【0045】
発電素子4は、正極2と負極3とセパレータ1とを備える。セパレータ1は、正極2と負極3とに挟まれる。セパレータ1は、例えば、電気絶縁性の多孔質構造を有するフィルムである。セパレータ1は、公知のものを用いることができる。
【0046】
正極2は、正極集電体2Aと正極活物質層2Bとを有する。正極活物質層2Bは、正極集電体2Aの少なくとも一面に形成されている。正極活物質層2Bは、正極集電体2Aの両面に形成されていてもよい。正極集電体2Aは、例えば、導電性の板材である。正極活物質層2Bは、例えば、正極活物質と導電助材とバインダーとを有する。
【0047】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンとカウンターアニオンのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させる。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム(LCO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(NCA)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)である。正極活物質層2Bは、これらの正極活物質を複数含んでもよい。正極活物質は、これらに限られず公知のものを用いることができる。導電助材及びバインダーは公知のものを用いることができる。
【0048】
負極3は、負極集電体3Aと負極活物質層3Bとを有する。負極活物質層3Bは、負極集電体3Aの少なくとも一面に形成されている。負極活物質層3Bは、負極集電体3Aの両面に形成されていてもよい。負極集電体3Aは、例えば、導電性の板材である。負極活物質層3Bは、例えば、正極活物質と導電助材とバインダーとを有する。
【0049】
負極活物質は、イオンを吸蔵・放出可能な化合物であればよく、公知のリチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質を使用できる。負極活物質は、例えば、グラファイトである。負極活物質は、金属リチウム、シリコン化合物等でもよい。
【0050】
電解液は、外装体5内に封入され、発電素子4に含浸している。電解液は、公知のものを用いることができる。
【0051】
第1実施形態にかかる電池パック100は、制御装置20によって二次電池10のSOHを適切な値に補正できる。
【0052】
第1実施形態にかかる制御装置20は、V-dQ/dV曲線における極大点と極小点を少なくとも一つずつ選択し、これらのdQ/dV値の平均値を利用して補正を行う。上述のように、V-dQ/dV曲線における極大点は、充放電曲線において電位が平坦な部分に対応し、極小点は、充放電曲線において電位の変動が大きい部分に対応する。すなわち、V-dQ/dV曲線における極大点は、あるステージの充放電反応が進行している状態であり、極小点はあるステージから異なるステージに充放電反応が移行している状態である。異なる2つ状態のdQ/dV値の平均値を利用してSOHを補正することで、二次電池10のSOHが適切な値に補正される。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0054】
例えば、複数の特定極値点におけるdQ/dVの値の平均値に変えて、これと数学的に等価な点の値を用いてもよい。例えば、V-dQ/dV曲線は、Q-V曲線のX軸とY軸を入れ替えてQをVで微分したものであるため、dQ/dVの特定極値点は、通常のQ-V曲線における変曲点と数学的に等価である。例えば、Q-V曲線において所定の間隔の2点間の傾きの逆数が、最大または最小となる点を変曲点とし、その最大値または最小値の平均値を用いて補正を行ってもよい。この場合、補正の算出に用いる指標が変わるだけであり、dQ/dVの値の平均値を用いる場合と同様の手順で推定される補正値(SOH)を算出できる。
【実施例
【0055】
「実施例1」
実施例1の二次電池としてリチウムイオン二次電池を作製した。まず、正極を準備した。正極活物質としてNCA(組成式:Li1.0Ni0.78Co0.19Al0.03)、導電材としてカーボンブラック、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を準備した。これらを溶媒中で混合し、塗料を作製し、アルミ箔からなる正極集電体上に塗布した。正極活物質と導電材とバインダーの質量比は、95:2:3とした。塗布後に、溶媒は除去した。正極活物質層のローディングが10.0mg/cmの正極シートを作製した。
【0056】
次いで負極を準備した。負極活物質としてグラファイト、バインダーとしてスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を準備した。これらを蒸留水に分散させ、塗料を作製し、銅箔からなる負極集電体上に塗布した。負極活物質とバインダーおよび増粘剤は質量比で95:3:2とした。塗布後に乾燥させ、負極活物質層のローディングが6.0mg/cmの負極シートを作製した。
【0057】
上記で作製した正極および負極と、セパレータを介して積層した。セパレータには、ポリエチレンとポリプロピレンの積層体を用いた。得られた発電部を調製した電解液に含浸させてから外装体内に封入した後、真空シールし、評価用のリチウム二次電池を作製した。電解液は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DEC)が等量混合された溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)1.5MOL/Lを溶解させたものとした。
【0058】
リチウム二次電池の充放電サイクルを繰り返しながら、実測のSOHと推定のSOHとを求めた。実測及び推定のSOHは、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで求めた。その結果を表1に示す。
【0059】
1回の充放電の条件は、25℃において、0.1Cに相当する定電流で、終止電圧4.4Vまで充電し、その後0.1Cに相当する定電流で3.0Vまで放電した。1Cは、電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、0.1Cとはその1/10の電流値を表す。実測のSOHは、各サイクルの満充電から満放電までの容量を初回の容量で割り、100をかけることで求めた。推測のSOHは、上述の関係式(1)から求められた補正値である。また上述のように、推測のSOHは、Q-V曲線における変曲点の最大値または最小値の平均値を用いて、求められた補正値であってもよい。本実施例は、変曲点をより鮮明に捉えるためにdQ/dVの特定ピークの平均値を用いた。
【0060】
実施例1では、補正値を求める際に、一つの極大点と一つの極小点を選択した。極大点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から3番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P3)を選択した。極小点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から3番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B3)を選択した。
【0061】
「実施例2」
実施例2は、補正値を求める際に、二つの極大点と一つの極小点を選択した。極大点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から1番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P1)と、満放電状態から3番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P3)とを選択した。極小点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から2番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B2)を選択した。その他の条件は、実施例1と同じとして、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで実測及び推定のSOHを求めた。その結果を表1に示す。
【0062】
「実施例3」
実施例3は、補正値を求める際に、二つの極大点と一つの極小点を選択した。極大点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から2番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P2)と、満放電状態から3番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P3)とを選択した。極小点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から2番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B2)を選択した。その他の条件は、実施例1と同じとして、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで実測及び推定のSOHを求めた。その結果を表1に示す。
【0063】
「実施例4」
実施例4は、補正値を求める際に、二つの極大点と一つの極小点を選択した。極大点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から2番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P2)と、満放電状態から3番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P3)とを選択した。極小点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から3番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B3)を選択した。その他の条件は、実施例1と同じとして、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで実測及び推定のSOHを求めた。その結果を表1に示す。
【0064】
「実施例5」
実施例5は、補正値を求める際に、二つの極大点と一つの極小点を選択した。極大点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から2番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P2)と、満放電状態から4番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P4)とを選択した。極小点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から3番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B3)を選択した。その他の条件は、実施例1と同じとして、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで実測及び推定のSOHを求めた。その結果を表1に示す。
【0065】
「実施例6」
実施例6は、リチウムイオン二次電池の正極の正極活物質を、LiNi0.33Mn0.33Co0.33(NCM)とLiMn(LMO)を混合したものに変えた点が実施例5と異なる。NCMとLMOとの比は、8:2とした。その他の条件は、実施例5と同じとして、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで実測及び推定のSOHを求めた。その結果を表1に示す。
【0066】
「実施例7」
実施例7は、補正値を求める際に、一つの極大点と二つの極小点を選択した。極大点は、二次電池初期の充放電試験において、満放電状態から3番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P3)を選択した。極小点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から1番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B1)と満放電状態から3番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B3)とを選択した。その他の条件は、実施例1と同じとして、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで実測及び推定のSOHを求めた。その結果を表1に示す。
【0067】
「実施例8」
実施例8は、補正値を求める際に、一つの極大点と二つの極小点を選択した。極大点は、二次電池初期の充放電試験において、満放電状態から2番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P2)を選択した。極小点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から1番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B1)と満放電状態から2番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B2)とを選択した。その他の条件は、実施例1と同じとして、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで実測及び推定のSOHを求めた。その結果を表1に示す。
【0068】
「実施例9」
実施例9は、補正値を求める際に、一つの極大点と二つの極小点を選択した。極大点は、二次電池初期の充放電試験において、満放電状態から2番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P2)を選択した。極小点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から1番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B1)と満放電状態から3番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B3)とを選択した。その他の条件は、実施例1と同じとして、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで実測及び推定のSOHを求めた。その結果を表1に示す。
【0069】
「実施例10」
実施例10は、補正値を求める際に、二つの極大点と二つの極小点を選択した。極大点は、二次電池初期の充放電試験において、満放電状態から2番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P2)と満放電状態から4番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P4)とを選択した。極小点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から1番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B1)と満放電状態から3番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B3)とを選択した。その他の条件は、実施例1と同じとして、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで実測及び推定のSOHを求めた。その結果を表1に示す。
【0070】
「比較例1」
実施例1は、補正値を求める際に、一つの極大点のみを選択した。極大点は、二次電池初期の充放電試験において、満放電状態から2番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P2)を選択した。その他の条件は、実施例1と同じとして、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで実測及び推定のSOHを求めた。その結果を表1に示す。
【0071】
「比較例2」
比較例2は、補正値を求める際に、一つの極小点のみを選択した。極小点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から3番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B3)を選択した。その他の条件は、実施例1と同じとして、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで実測及び推定のSOHを求めた。その結果を表1に示す。
【0072】
「比較例3」
比較例3は、補正値を求める際に、二つの極大点を選択した。極大点は、二次電池初期の充放電試験において、満放電状態から2番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P2)と満放電状態から4番目に表れる電圧安定領域に伴う極大点(P4)とを選択した。その他の条件は、実施例1と同じとして、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで実測及び推定のSOHを求めた。その結果を表1に示す。
【0073】
「比較例4」
比較例4は、補正値を求める際に、二つの極小点を選択した。極小点は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から1番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B1)と満放電状態から3番目に表れる電圧変動領域に伴う極小点(B3)とを選択した。その他の条件は、実施例1と同じとして、100サイクル、200サイクル、300サイクルのそれぞれで実測及び推定のSOHを求めた。その結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示すように、極大点と極小点とをそれぞれ一つ以上選択した実施例1~10はいずれも、極大点と極小点とのうちのいずれか一方を利用していない比較例1~4より実測のSOHと推定のSOHとの誤差が小さかった。
【0076】
(実機検証)
本実施形態に係るSOH推定過程を制御部(制御装置)に組み込んだ蓄電池(電池パック)を用意した。蓄電池は、制御部と安全機構とを含むバッテリーマネジメントシステムと、10個のリチウムイオン二次電池セルとを中心に構成した。用意した蓄電池に対し、室温で0.2Cのレートで満放電をおこない、その後、室温で0.2Cのレートで満充電をおこない、蓄電池を実使用の初期状態とした。この充電の際に、各電圧におけるdQ/dV値を得てV-dQ/dV曲線を取得すると共に、制御部のソフトウェア上のSOHを記録した。
【0077】
上記の過程で初期状態となった蓄電池を意図的に劣化させるため、100サイクル充放電工程をおこなった。ここで、100サイクル充放電工程は、以下の手順を少なくとも含むよう構成された評価工程を含む。
1)45℃の温度環境下において0.5Cのレートで満放電とした後に、0.5Cのレートで満充電をおこなう、というサイクルを100回繰り返す。
2)最後の満放電(すなわち、100サイクル目の満放電)の後に、再び室温で0.2Cのレートでの満充電をおこない、充電時の各電圧におけるdQ/dV値を得てV-dQ/dV曲線を取得する。
3)得られた100サイクル充放電工程後のV-dQ/dV曲線と、上記の初期状態におけるV-dQ/dV曲線と、を比較する。
4-1)ピーク形状の変化が認められた場合、蓄電池内のリチウムイオン二次電池に劣化が生じたものと判断して、制御部のソフトウェア上のSOH値を記録する。
4-2)ピーク形状の変化が認められなかった場合、ふたたび上記1)~3)の作業を繰り返す。
本実機検証では、この100サイクル充放電工程(上記1)~4-2)の作業)を、初期状態とは異なる三つのV-dQ/dV曲線と、同じく三つのSOH値と、が得られるまで繰り返した。これにより、リチウムイオン二次電池の三つの劣化状態(以下、第一の劣化状態、第二の劣化状態、第三の劣化状態、という。)におけるそれぞれのV-dQ/dV曲線とSOH値とを得た。
【0078】
第一の劣化状態のV-dQ/dV曲線と、第二の劣化状態のV-dQ/dV曲線と、第三の劣化状態のV-dQ/dV曲線と、をそれぞれ出力し、極大点としてP2を、極小点としてB1とB3とを採用し、各劣化状態におけるdQ/dV強度の平均を算出した。得られた各dQ/dV強度の平均値をX軸に、それぞれの劣化状態における制御部から出力されたSOH値をY軸にとり、プロットをおこなったところ、Y=AX+Bの式で表される良好な直線関係が得られた。このことから、本実機検証で用意した蓄電池では、本発明の方法によるSOHの補正が機能していることが確認できた。
【符号の説明】
【0079】
10 二次電池
20 制御装置
21 dQ/dV算出手段
22 平均値算出手段
23 補正手段
100 電池パック
図1
図2
図3
図4
図5