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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】クラウドベースのハイブリッド状態推定
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20240517BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J3/00 170
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022513239
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2020074124
(87)【国際公開番号】W WO2021038070
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】16/555,051
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヌキ,レイナルド
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ミン
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0282188(US,A1)
【文献】特開2013-208051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0125158(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0140326(US,A1)
【文献】米国特許第08190379(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力網における状態推定の方法であって、前記方法は、
電力網トポロジを含む監視制御・データ取得(SCADA)情報のセットを受信するステップと、
前記SCADA情報のセットを用いてSCADA状態推定を生成するステップと、
クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)により、フェーザのセットを受信するステップとを含み、各フェーザは、電圧の大きさおよび位相角、または電流の大きさおよび位相角を提供し、前記方法はさらに、
前記クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)により、前記SCADA状態推定のタイムスタンプおよび前記フェーザのセットのタイムスタンプを整列させるステップと、
前記クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)により、前記フェーザのセットを用いて前記電力網トポロジを決定するステップと、
前記クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)により、前記決定した電力網トポロジと、前記フェーザのセットと、前記SCADA状態推定とを用いて、ハイブリッド状態推定を生成するステップと、
前記ハイブリッド状態推定をローカル制御システム(170)に送信するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記ハイブリッド状態推定を生成するステップは、加重最小二乗状態推定を実行するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハイブリッド状態推定を生成するステップは、以下の式および行列
【数1】

を用いて加重最小二乗状態推定を実行するステップを含み、式中、xは状態推定ベクトルであり、Aは関数行列であり、Wはハイブリッド重み行列であり、zhybridは測定行列であり、1は単位行列を表し、1’は測定された電圧フェーザがない場合における対角にゼロを有する単位行列であり、C~Cは、電流フェーザ測定値が受信された電力線の線路コンダクタンスおよびサセプタンスを含む行列である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定行列zhybridは以下の式
【数2】

を用いて定義され、式中、V (1)およびV (1)は、直交形式の前記SCADA状態推定からの電圧推定結果の実数成分および虚数成分であり、V (2)およびV (2)は、直交形式の前記フェーザのセットからの電圧フェーザ測定値の実数成分および虚数成分であり、I (2)およびI (2)は、直交形式の前記フェーザのセットからの電流フェーザ測定値の虚数成分および実数成分である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記SCADA情報のセットは、前記電力網の電圧測定値を含み、前記電力網トポロジは、前記電力網の回路遮断器のオン/オフステータスを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記SCADA状態推定を生成するステップは、前記ローカル制御システム(170)によって実行される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
フェーザの新たなセットを受信するステップと、前記SCADA状態推定のタイムスタンプおよび前記フェーザの新たなセットのタイムスタンプを整列させるステップと、前記フェーザの新たなセットを用いて前記電力網トポロジを決定するステップと、前記SCADA状態推定および前記フェーザの新たなセットを用いて更新されたハイブリッド状態推定を生成するステップと、前記ローカル制御システム(170)が第2のSCADA状態推定を前記クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)に送信するまで前記更新されたハイブリッド状態推定を送信するステップとを、繰り返し実行することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記更新されたハイブリッド状態推定を送信するステップは、毎秒少なくとも1回実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記更新されたハイブリッド状態推定を送信するステップは、毎秒少なくとも2回実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記電力網トポロジを決定するステップは、前記フェーザのセットを用いて前記電力網のトポロジの変化を検出するステップと、前記検出した変化を含むように前記電力網トポロジを更新するステップとを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記電力網トポロジを決定するステップは、前記フェーザのセットと前記電力網トポロジとの比較に応じて前記電力網トポロジの回路遮断器のオン/オフステータスを更新するステップを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記フェーザのセットを受信するステップは、フェーザ測定ユニットPMU(130)からフェーザのセットを受信するステップを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記フェーザのセットを受信するステップは、インテリジェント電子装置IEDまたは保護継電器からフェーザのセットを受信するステップを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
電力網の状態推定システムであって、前記状態推定システムは、
ローカル制御システム(170)を備え、前記ローカル制御システムは、電力網トポロジを含む監視制御・データ取得(SCADA)情報のセットを受信し前記SCADA情報のセットを用いて生成されたSCADA状態推定を送信するように構成され、前記状態推定システムはさらに、
クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)を備え、前記クラウドコンピューティングアーキテクチャは、各々が電圧の大きさおよび位相角、または電流の大きさおよび位相角を提供するフェーザのセットを受信し、前記SCADA状態推定のタイムスタンプおよび前記フェーザのセットのタイムスタンプを整列させ、前記フェーザのセットを用いて前記電力網トポロジを決定し、前記決定した電力網トポロジと、前記フェーザのセットと、前記SCADA状態推定とを用いて、ハイブリッド状態推定を生成し、前記ハイブリッド状態推定を前記ローカル制御システム(170)に送信するように、構成されている、状態推定システム。
【請求項15】
前記クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)は、加重最小二乗状態推定を実行することによって前記ハイブリッド状態推定を生成するように構成されている、請求項14に記載の状態推定システム。
【請求項16】
前記クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)は、以下の式および行列
【数3】

を用いて加重最小二乗状態推定を実行することにより、前記ハイブリッド状態推定を生成するように構成され、式中、xは状態推定ベクトルであり、Aは関数行列であり、Wはハイブリッド重み行列であり、zhybridは測定行列であり、1は単位行列を表し、1’は測定された電圧フェーザがない場合における対角にゼロを有する単位行列であり、C~Cは、電流フェーザ測定値が受信された電力線の線路コンダクタンスおよびサセプタンスを含む行列である、請求項14または15に記載の状態推定システム。
【請求項17】
前記測定行列zhybridは以下の式
【数4】

を用いて定義され、式中、V (1)およびV (1)は、直交形式の前記SCADA状態推定からの電圧推定結果の実数成分および虚数成分であり、V (2)およびV (2)は、直交形式の前記フェーザのセットからの電圧フェーザ測定値の実数成分および虚数成分であり、I (2)およびI (2)は、直交形式の前記フェーザのセットからの電流フェーザ測定値の虚数成分および実数成分である、請求項16に記載の状態推定システム。
【請求項18】
前記SCADA情報のセットは、前記電力網の電圧測定値を含み、前記電力網トポロジは、前記電力網の回路遮断器のオン/オフステータスを含む、請求項14~17のいずれか1項に記載の状態推定システム。
【請求項19】
前記ローカル制御システム(170)は、前記SCADA状態推定を生成するように構成されている、請求項14~18のいずれか1項に記載の状態推定システム。
【請求項20】
前記クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)は、前記クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)がフェーザの新たなセットを受信するたびに、前記ローカル制御システム(170)が第2のSCADA状態推定を前記クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)に送信するまで、前記フェーザの新たなセットおよび前記SCADA状態推定を用いて新たなハイブリッド状態推定を繰り返し生成するように構成されている、請求項14~19のいずれか1項に記載の状態推定システム。
【請求項21】
前記クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)は、新たなハイブリッド状態推定を、毎秒少なくとも1回生成する、請求項14~20のいずれか1項に記載の状態推定システム。
【請求項22】
前記クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)は、新たなハイブリッド状態推定を、毎秒少なくとも2回生成する、請求項14~20のいずれか1項に記載の状態推定システム。
【請求項23】
前記クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)は、前記電力網トポロジを、前記フェーザのセットを用いて前記電力網のトポロジの変化を検出し前記検出した変化を含むように前記電力網トポロジを更新することにより、決定するように構成されている、請求項14~12のいずれか1項に記載の状態推定システム。
【請求項24】
前記クラウドコンピューティングアーキテクチャ(180)は、前記電力網トポロジを、前記フェーザのセットと前記電力網トポロジとの比較に応じて前記電力網トポロジの回路遮断器のオン/オフステータスを更新することにより、決定するように構成されている、請求項14~23のいずれか1項に記載の状態推定システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
本開示は、概して電力網状態推定に関する。エネルギ管理システムアプリケーションは、電力網の制御および保護のために状態推定を使用する。従来の状態推定は、監視制御・データ取得(SCADA:supervisory control and data acquisition)測定値とネットワークトポロジデータとを用いることにより、5~15分間隔等の一定間隔でSCADA状態推定を生成することを含む。制御および保護アプリケーションは、生成されたSCADA状態推定を、次の間隔中に新たなSCADA状態推定が生成されるまで、使用する。既存の電力網状態推定には、いくつかの短所および不利な点がある。状態推定精度の向上および電力網における大きな変化に対する状態推定応答の向上を含むニーズは、まだ満たされていない。新たな状態推定を数分間待つことは、電力網の健全性および効率を脅かす可能性がある。より多くの低慣性発電システムが電力網に追加されると、発電に急変が生じる可能性が高くなる。たとえば、雲量の変化または風速の変化は、電力網の実際の状態を変えるので、現在のSCADA状態推定は、もはや電力網を正確に表したものではない。さらに、回路遮断器の開路またはネットワークトポロジのその他の変化も、電力網の実際の状態が現在のSCADA状態推定からずれる原因になる。当該技術におけるこれらおよびその他の短所に鑑みると、本明細書において開示される固有の装置、方法、システムおよび技術には大きなニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
説明のための実施形態の開示
本開示の非限定的な具体例としての実施形態、当該実施形態の実施および使用方法およびプロセスを、明確に、簡潔に、かつ正確に説明するため、かつ、当該実施形態の実行、実施および使用を可能にするために、図面に示される実施形態を含む、ある特定の具体例としての実施形態を参照し、これを説明するために特定の表現を使用する。とはいえ、それによって本開示の範囲が限定される訳ではないこと、および、本開示は、本開示の利益を享受する当業者が想到するであろう具体例としての実施形態の変更、修正、およびさらに他の応用を含み保護することを、理解されたい。
【0003】
開示の概要
本開示の具体例としての実施形態は、電力網状態推定のための固有のシステム、方法、技術および装置を含む。本開示のさらに他の実施形態、形式、目的、特徴、利点、側面および利益は、以下の説明および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】具体例としての状態推定システムを示すブロック図である。
図2】具体例としての状態推定プロセスを示すフローチャートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
説明のための実施形態の詳細な説明
図1を参照して、電力網のための、具体例としての状態推定システム100が示されている。システム100は、新たな状態推定およびネットワークトポロジを、ほぼリアルタイムで生成するように構成される。たとえば、システム100は、新たな状態推定を、いくつか例を挙げると、少なくとも毎秒または0.5秒毎に、生成してもよい。システム100は、いくつか例を挙げると、送電システムおよび配電システムを含む、さまざまな電力網において実現されてもよいことを理解されたい。
【0006】
システム100は、複数の遠隔端末装置(RTU:remote terminal unit)110と、複数のフェーザ測定装置(PMU:phasor measurement unit)130と、複数のフェーザデータコンセントレータ(PDC:phasor data concentrator)120と、ローカル制御システム(LCS:local control system)170と、クラウドコンピューティングアーキテクチャ180とを含む。システム100のトポロジは、説明を目的として図示されているのであって本開示を限定することを意図しているのではないことを、理解されたい。たとえば、具体例としての状態推定システムは、いくつか例を挙げると、より多くのまたはより少ないRTU、PDC、またはPMUを含み得る。
【0007】
複数のRTU110の各々は、複数のセンサまたは計器から電力網の特性に対応するSCADA情報を受信し、このSCADA情報をローカル制御システム170に送信するように構成される。SCADA情報は、複数のRTUに継続的に送信されてもよく、ローカル制御システム170によるポーリングに応じてローカル制御システム170に送信されてもよい。SCADA情報は、インテリジェント電子装置(IED:intelligent electronic device)、中継器、センサ、または電力網を監視するように構成されたその他の装置から受信されてもよい。SCADA情報は、電圧測定値、電流測定値、または電力測定値等の測定値を含み得る。たとえば、測定値は、バス電圧、有効電力注入、無効電力注入、および線路潮流を含み得る。また、SCADA情報は、電力網内の回路遮断器を含む制御可能なスイッチの複数のオン/オフステータスを含む、ネットワークトポロジを含み得る。ある特定の実施形態において、複数のRTU110は、ローカル制御システム170から命令を受信し、命令の受信に応じて電力網の制御可能な装置を動作させるように構成される。制御可能な装置は、いくつか例を挙げると、回路遮断器または断路器等の、制御可能なスイッチを含み得る。
【0008】
複数のRTU110とローカル制御システム170とは、通信プロトコルを使用して、RTU/LCS通信ネットワーク160を介して通信する。たとえば、複数のRTU110とローカル制御システム170とは、分散ネットワークプロトコル(DNP3)、IEC60870-5-101規格、またはIEC60870-5-104規格に基づく通信プロトコルを使用してもよい。
【0009】
複数のPMU130は、共通の時間ソースを用いて電力網の測定された電気的特性を同期させ、測定された電気的特性に対応する、シンクロフェーザとしても知られている同期されたフェーザを出力するように構成される。フェーザは、電圧の大きさおよび位相角に、または電流の大きさおよび位相角に対応していてもよい。たとえば、PMUは、配電線を介して、バスの測定値に基づく電圧フェーザを出力してもよく、または電流の測定値に基づく電流フェーザを出力してもよい。ある特定の実施形態において、PMUのうちのいくつかを、IEDまたは保護継電器等の上記PMU機能を有する他の装置に置き換えてもよい。複数のPMU130の各々は、フェーザを複数のPDC120のうちの1つに送信する。
【0010】
複数のPDC120のうちの各PDCは、複数のPMU130のうちの複数のPMUと通信するように構成される。示されている実施形態において、複数のPDC120のうちの各PDCは、複数のPMUからフェーザを集め、これらのフェーザを、各フェーザのタイムスタンプに基づいて整列させてPMUフェーザのセットにし、整列させたPMUフェーザのセットをローカル制御システム170に送信する。ある特定の実施形態において、複数のPDC120のうちの1つ以上が、整列させたPMUフェーザのセットを、クラウドコンピューティングアーキテクチャ180のクラウドPDCアプリケーション183に、直接送信する。ある特定の実施形態において、各PDCは、PMUフェーザのセットを、PDCがフェーザを受信する周波数と同じ周波数で送信する。たとえば、各PDCは、PMUフェーザのセットを、いくつか例を挙げると、60セットのPMUフェーザ/秒または30セットのPMUフェーザ/秒というレートで送信する。
【0011】
複数のPMU130と複数のPDC120とは、通信プロトコルを使用して、PMU/PDC通信ネットワーク140を介して通信する。たとえば、複数のPMU130と複数のPDC120とは、一例を挙げると、IEEE c37.118規格に基づく通信プロトコルを使用してもよい。
【0012】
複数のPDC120とローカル制御システム170とは、通信プロトコルを使用して、PDC/LCS通信ネットワーク150を介して通信する。たとえば、複数のPDC120とローカル制御システム170とは、例を挙げると、IEEE c37.118規格に基づく通信プロトコルを使用してもよい。
【0013】
ローカル制御システム170は、入出力装置179と、処理装置177と、メモリデバイス171とを含む。ローカル制御システム170は、スタンドアロンデバイス、埋め込まれたシステム、またはローカル制御システム170に関して説明した機能を実行するように構成された複数の装置であってもよい。たとえば、ローカル制御システム170はエネルギ管理システム(EMS:energy management system)であってもよい。
【0014】
入出力装置179は、ローカル制御システム170が、複数のRTU110、複数のPDC120、およびクラウドコンピューティングアーキテクチャ180を含む複数の外部装置と通信することを可能にする。入出力装置179は、いくつか例を挙げると、ネットワークアダプタ、ネットワーククレデンシャル、インターフェイス、またはポート(たとえばUSBポート、シリアルポート、パラレルポート、アナログポート、デジタルポート、VGA、DVI、HDMI(登録商標)、FireWire、CAT5、イーサネット(登録商標)、ファイバ、またはその他任意の種類のポートもしくはインターフェイス)を含み得る。入出力装置179は、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアからなるものであってもよい。入出力装置179はこれらのアダプタ、クレデンシャル、または、データを受信するための第1のポートおよびデータを送信するための第2のポート等のポートのうちの、2つ以上を含むことが、意図されている。
【0015】
処理装置177は、メモリデバイス171に格納されたアプリケーションを実行するように構成される。処理装置177は、プログラマブルタイプ、専用のハードワイヤードステートマシン、またはこれらの組み合わせであってもよい。処理装置177は、いくつか例を挙げると、複数のプロセッサ、算術論理演算装置(ALU)、中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含み得る。複数の処理ユニットを有する処理装置177の形態の場合、分散処理、パイプライン処理、または並列処理が使用されてもよい。処理装置177は、本明細書に記載の動作のみの実行専用であってもよく、または1つ以上の追加のアプリケーションにおいて使用されてもよい。示されている形態において、処理装置177は、メモリデバイス171に格納された命令のセットを含むアプリケーションに従ってプロセスを実行しデータを処理するプログラマブルタイプである。これに代えてまたはこれに加えて、プログラミング命令が、少なくとも部分的にハードワイヤードロジックまたはその他のハードウェアによって規定される。処理装置177は、入出力装置179またはその他の場所から受信した信号を処理し出力信号を提供するのに適した任意の種類の1つ以上の構成要素からなるものであってもよい。そのような構成要素は、デジタル回路、アナログ回路、またはこれらの双方を組み合わせたものを含み得る。
【0016】
メモリデバイス171は、監視制御・データ取得(SCADA)情報と、フェーザデータと、SCADAマスタアプリケーション175、データ記憶アプリケーション172、状態推定アプリケーション173、およびスーパーPDCアプリケーション174を含む複数のアプリケーションとを格納するように構成される。メモリデバイス171は、いくつか例を挙げると、ソリッドステートタイプ、電磁タイプ、光学タイプ、またはこれらの形態の組み合わせのうちの1つ以上の種類であってよい。さらに、メモリデバイス171は、揮発性、不揮発性、一時的、非一時的、またはこれらの種類の組み合わせであってもよく、メモリデバイス171のうちのいくつかまたはすべてが、いくつか例を挙げると、ディスク、テープ、メモリスティック、またはカートリッジ等のポータブルタイプであってもよい。
【0017】
SCADAマスタアプリケーション175は、処理装置177による実行が可能な命令を含み、この命令は、複数のRTU110にポーリングし、測定値およびネットワークトポロジを含むSCADA情報を複数のRTU110から受信し、SCADA情報をタイムスタンプし、受信したSCADA情報を状態推定アプリケーション173およびデータ記憶アプリケーション172に送信するのに有効な命令である。ある特定の実施形態において、SCADAマスタアプリケーション175は、5~15分毎にSCADA情報を状態推定アプリケーション173に送信する。
【0018】
状態推定アプリケーション173は、処理装置177による実行が可能な命令を含み、この命令は、SCADAマスタアプリケーション175から受信したSCADA情報を使用して電力網のSCADA状態推定を生成するのに有効な命令である。状態推定アプリケーション173は、いくつか例を挙げると、加重最小二乗、加重最小絶対値、または拡張カルマンフィルタを使用して、SCADA状態推定を生成してもよい。SCADA状態推定は、生成されると、アプリケーション173によってタイムスタンプされる。ある特定の実施形態において、状態推定アプリケーション173は、5~15分毎にSCADA状態推定を生成する。
【0019】
スーパーPDCアプリケーション174は、処理装置177による実行が可能な命令を含み、この命令は、複数のPDC120の各々からフェーザを受信し、フェーザのタイムスタンプを使用してこれらのフェーザを整列させ、整列させたフェーザのセットをクラウドコンピューティングアーキテクチャ180のクラウドPDCアプリケーション183とデータ記憶アプリケーション172とに送信するのに有効な命令である。ある特定の実施形態において、スーパーPDCアプリケーション174は、30~120回/秒のレートで複数のPDC120からフェーザを受信する。
【0020】
データ記憶アプリケーション172は、処理装置177による実行が可能な命令を含み、この命令は、スーパーPDCアプリケーション174が受信したフェーザをアーカイブし、状態推定アプリケーション173が生成したSCADA状態推定をアーカイブし、SCADAマスタアプリケーション175が受信したSCADA情報をアーカイブするのに有効な命令である。たとえば、データ記憶アプリケーション172は、一例を挙げると、6ヶ月分の履歴値を保持してもよい。
【0021】
クラウドコンピューティングアーキテクチャ180は、オンデマンドで利用できるスケーラブルなシステムリソースのシステムである。クラウドコンピューティングアーキテクチャ180は、入出力装置189と、処理装置187と、メモリデバイス181とを含む。ある特定の実施形態において、クラウドコンピューティングアーキテクチャ180は、スケーラブルなコンピューティングリソースを割り当てるように構成されたクラウドブローカーを有する仮想化されたプラットフォームである。
【0022】
入出力装置189は、クラウドコンピューティングアーキテクチャ180がローカル制御システム170と通信することを可能にする。たとえば、入出力装置189は、いくつか例を挙げると、ネットワークアダプタ、ネットワーククレデンシャル、インターフェイス、またはポート(たとえばUSBポート、シリアルポート、パラレルポート、アナログポート、デジタルポート、VGA、DVT、HDMI、FireWire、CAT5、イーサネット(登録商標)、ファイバ、またはその他任意の種類のポートもしくはインターフェイス)を含み得る。入出力装置189は、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアからなるものであってもよい。入出力装置189はこれらのアダプタ、クレデンシャル、または、データを受信するための第1のポートおよびデータを送信するための第2のポート等のポートのうちの、2つ以上を含むことが、意図されている。
【0023】
処理装置187は、分散処理、パイプライン処理、または並列処理を使用する複数の処理ユニットを含む。示されている形態において、処理装置187は、メモリデバイス181に格納されたプログラミング命令(ソフトウェアまたはファームウェア等)に従ってアプリケーションを実行するプログラマブルタイプである。処理装置187は、入出力装置189またはその他の場所から受信した信号を処理し出力信号を提供するのに適した任意の種類の1つ以上の構成要素からなるものであってもよい。そのような構成要素は、デジタル回路、アナログ回路、またはこれらの双方を組み合わせたものを含み得る。
【0024】
メモリデバイス181は、SCADA情報と、PMUフェーザと、クラウドPDCアプリケーション183、トポロジチェッカーアプリケーション184、ハイブリッド状態推定アプリケーション182、およびデータ記憶アプリケーション185を含む複数のアプリケーションとを格納するように構成される。メモリデバイス181は、いくつか例を挙げると、ソリッドステートタイプ、電磁タイプ、光学タイプ、またはこれらの形態の組み合わせのうちの1つ以上の種類であってもよい。さらに、メモリデバイス181は、揮発性、不揮発性、一時的、非一時的、またはこれらの種類の組み合わせであってもよく、メモリデバイス181のうちのいくつかまたはすべてが、いくつか例を挙げると、ディスク、テープ、メモリスティック、またはカートリッジ等のポータブルタイプであってもよい。
【0025】
クラウドPDCアプリケーション183は、処理装置187による実行が可能な命令を含み、この命令は、スーパーPDCアプリケーション174からフェーザを受信するのに有効な命令である。ある特定の実施形態において、クラウドPDCアプリケーション183は、一例を挙げると、電力網イベントの可視化等の監視機能を実行することもできる。
【0026】
トポロジチェッカーアプリケーション184は、処理装置187による実行が可能な命令を含み、この命令は、クラウドPDCアプリケーション183が受信したPMUフェーザを使用して電力網トポロジを決定するのに有効な命令である。トポロジチェッカーアプリケーション184が電力網の制御可能なスイッチのオン/オフステータスの何らかの変化を検出した場合、アプリケーション184は、電力網トポロジを更新しその後更新された電力網トポロジをハイブリッド状態推定アプリケーション182に送信する。ある特定の実施形態において、トポロジチェッカーアプリケーション184は、PMUフェーザを使用して新たな電力網トポロジを生成することにより、電力網トポロジを決定するように構成される。PMUフェーザは、電力網のより最近の測定値に対応するので、生成された電力網トポロジは、電力網内のスイッチのオン/オフステータスにおけるいずれの更新も反映することになる。ある特定の実施形態において、アプリケーション184は、PMUフェーザを、SCADAマスタアプリケーション175から送信されたネットワークトポロジと比較して、電力網の制御可能なスイッチのいずれかのオン/オフステータスが直近のSCADA状態推定以降に変化したか否かを判断することにより、電力網トポロジを決定するように構成される。たとえば、回路遮断器が開路されたことを示す配電線のゼロ電流フェーザは、SCADAマスタアプリケーション175から受信したネットワークトポロジが回路遮断器の閉路状態を含んでいた場合における電力網トポロジの変化を示す。
【0027】
他の実施形態において、トポロジチェッカーアプリケーション184は、PMUフェーザの現在のセットを使用してネットワークトポロジを生成し、生成したネットワークトポロジを、以前のフェーザのセットを使用して生成したネットワークトポロジと比較、またはSCADAマスタアプリケーション175から送信されたネットワークトポロジと比較するように構成される。電力網トポロジに対する更新を含むPMUフェーザの現在のセットに基づいたネットワークトポロジの決定に応じて、更新されたネットワークトポロジが、ハイブリッド状態推定アプリケーション182に送信される。整列させたフェーザの新たな各セットを使用してネットワークトポロジを更新することにより、クラウドコンピューティングアーキテクチャ180は、ほぼリアルタイムでネットワークトポロジの変化を反映するハイブリッド状態推定を出力するように構成される。
【0028】
ハイブリッド状態推定アプリケーション182は、処理装置187による実行が可能な命令を含み、以下でより詳細に説明するように、この命令は、状態推定アプリケーション173が生成したSCADA状態推定と、クラウドPDCアプリケーション183が受信した、PMUフェーザの直近に受信されたセットとを使用して、ハイブリッド状態推定を生成するのに有効な命令である。
【0029】
アプリケーション182は、ハイブリッド状態推定を実行する前に、受信したSCADA状態推定およびPMUフェーザのセットのタイムスタンプを、ハイブリッド状態推定に使用するために、直近のSCADA状態推定および直近のPMUフェーザのセットを識別することによって整列させる。整列後、アプリケーション182は、SCADA状態推定および同期させたフェーザデータの任意の値を極形式から直交形式に変換する。ハイブリッド状態推定の完了後、推定された状態は、直交形式から極形式に戻るように変換される。
【0030】
ハイブリッド状態推定アプリケーション182は、ハイブリッド状態推定を、ネットワーク制御システムで使用するためにローカル制御システム170に送信する。ある特定の実施形態において、ローカル制御システム170は、1秒以下毎に、クラウドコンピューティングアーキテクチャ180から新たなハイブリッド状態推定を受信する。ある特定の実施形態において、ローカル制御システム170は、2分の1秒以下毎に、新たなハイブリッド状態推定を受信する。
【0031】
データ記憶アプリケーション185は、処理装置187による実行が可能な命令を含み、この命令は、ローカル制御システム170から受信した、整列したフェーザのセットをアーカイブし、状態推定アプリケーション182が生成したハイブリッド状態推定をアーカイブし、ローカル制御システム170から受信したSCADA情報をアーカイブし、ローカル制御システム170から受信したSCADA状態推定をアーカイブするのに有効な命令である。データ記憶アプリケーション185は、一例を挙げると、1年分のアーカイブされた値を保持してもよい。
【0032】
ローカル制御システム170とクラウドコンピューティングアーキテクチャ180は、LCS/クラウド通信ネットワーク190を介して通信する。LCS/クラウド通信ネットワーク190においてデータをやり取りするために複数の通信プロトコルを使用してもよい。たとえば、同期されたフェーザデータは、一例を挙げると、IEEE C37.118プロトコルとしても知られているフェーザデータ転送プロトコルを使用して、スーパーPDCアプリケーション174からクラウドPDCアプリケーション183に送信されてもよい。SCADA状態推定、ハイブリッド状態推定、SCADA情報、およびアーカイブされたデータは、一例を挙げると、ファイル転送プロトコル(FTP)を使用して、ローカル制御システム170とクラウドコンピューティングアーキテクチャ180との間で送信されてもよい。
【0033】
図2を参照して、図1の状態推定システム100のような具体例としての状態推定システムによって実現される電力網の状態推定のための、具体例としてのプロセス200が示されている。たとえば、プロセス200の1つ以上の態様の省略、他の条件および動作の追加、および/または動作および条件を別々のプロセスに再編成もしくは分離することを含む、プロセス200に対するいくつかの変形および修正が意図されていることを理解されたい。
【0034】
プロセス200は、SCADAマスタステーションを含むローカル制御システムが複数の電力網装置からSCADA情報を受信する動作201で始まる。SCADA情報は、測定値および電力網トポロジを含み得る。測定値は、電圧測定値、電流測定値、または電力測定値を含み得る。たとえば、測定値は、バス電圧、有効電力注入、無効電力注入、および線路潮流を含み得る。電力網トポロジは、電力網の制御可能なスイッチのための複数のオン/オフステータスを含む。電力網装置は、遠隔端末装置(RTU)、インテリジェント電子装置(IED)、中継器、センサ、または電力網を監視するように構成されたその他の装置を含み得る。SCADA情報の測定値および装置ステータスはタイムスタンプを含み得るが、測定値は共通の時間ソースと同期されていない。
【0035】
プロセス200は動作203に進み、この動作において、ローカル制御システムの状態推定器が、SCADA情報のセットを用いてSCADA状態推定を生成する。状態推定器は、いくつか例を挙げると、加重最小二乗、加重最小絶対値、または拡張カルマンフィルタ等の、複数のアルゴリズムのうちの1つを使用して、SCADA状態推定を生成してもよい。
【0036】
プロセス200は動作205に進み、この動作において、ローカル制御システムはSCADA状態推定を送信し、クラウドコンピューティングアーキテクチャがこのSCADA状態推定を受信する。
【0037】
プロセス200は動作207に進み、この動作において、クラウドコンピューティングアーキテクチャは、電力網の複数のPMUによって生成されたPMUフェーザのセットを受信する。ある特定の実施形態において、PMUフェーザのセットは、電力網の複数のPDCから、クラウドコンピューティングアーキテクチャのクラウドPDCにおいて受信される。ある特定の実施形態において、PMUフェーザのセットは、電力網の複数のPDCからのPMUフェーザのセットをアグリゲートし整列させたローカル制御システムのスーパーPDCから受信される。各PMUフェーザは、電圧フェーザまたは電流フェーザに対応する。PMUフェーザのセットは同期され、したがって各々が同一のタイムスタンプを有する。
【0038】
プロセス200は動作209に進み、この動作において、クラウドコンピューティングアーキテクチャは、直近に受信したSCADA推定および直近に受信したPMUフェーザのセットを識別することにより、SCADA推定のタイムスタンプおよびPMUフェーザのセットのタイムスタンプを整列させる。
【0039】
プロセス200は動作211に進み、この動作において、クラウドコンピューティングアーキテクチャは、動作207で受信したPMUフェーザのセットを使用して、現在の電力網トポロジを決定する。ある特定の実施形態において、クラウドコンピューティングアーキテクチャは、受信したPMUフェーザのセットを使用して、更新されたネットワークトポロジを生成する。ある特定の実施形態において、受信したPMUフェーザのセットを、以前に生成されたネットワークトポロジと比較することにより、電力網の変化を検出する。次に、クラウドコンピューティングアーキテクチャは、電力網の変化を検出したことに応じて、電力網トポロジを更新する。
【0040】
プロセス200は動作213に進み、この動作において、クラウドコンピューティングアーキテクチャは、動作211で決定した電力網トポロジ、PMUフェーザのセット、およびSCADA状態推定を使用して、ハイブリッド状態推定を生成する。ある特定の実施形態において、クラウドコンピューティングアーキテクチャは、以下の式を使用して加重最小二乗状態推定を実行することにより、ハイブリッド状態推定を生成する。式中、xは状態推定ベクトルであり、Aは関数行列であり、Wはハイブリッド重み行列であり、zhybridは測定行列である。
【0041】
【数1】
【0042】
関数行列Aは以下の値を含む。1は単位行列を表し、1’は測定された電圧フェーザがない場合における対角にゼロを有する単位行列であり、C1~は、その電流フェーザ測定値が受信された電力線の線路コンダクタンスおよびサセプタンスを含む行列である。
【0043】
【数2】
【0044】
hybridは以下の値を含む。式中、V (1)およびV (1)は、直交形式のSCADA推定からの電圧推定結果の実数成分および虚数成分であり、V (2)およびV (2)は、直交形式のPMUフェーザのセットからの電圧フェーザ測定値の実数成分および虚数成分であり、I (2)およびI (2)は、直交形式のPMUフェーザのセットからの電流フェーザ測定値の実数成分および虚数成分である。
【0045】
【数3】
【0046】
Wは以下を含む。式中、Wは、SCADA状態推定についての重み行列であり、Wは、PMUフェーザのセットについての重み行列である。各重み行列は、各PMUに測定値を送信するセンサの精度のクラスに基づいて決定してもよい。
【0047】
【数4】
【0048】
プロセス200は動作215に進み、この動作において、クラウドコンピューティングアーキテクチャはハイブリッド状態推定を送信し、ローカル制御システムはこのハイブリッド状態推定を受信する。
【0049】
プロセス200は動作217に進み、この動作において、ローカル制御システムは、ハイブリッド状態推定を用いて電力網を運用する。ある特定の実施形態において、ローカル制御システムは、ハイブリッド状態推定を、高度EMSアプリケーションに提供してもよい。ハイブリッド状態推定は、いくつか例を挙げると、経済的なディスパッチ、保護、および安定性分析のために使用されてもよい。ハイブリッド状態推定は経済的スケジューリング期間中に複数回更新されるので、高慣性発電システムに、次のスケジューリング期間において電力供給を準備するための多くの時間が与えられてもよく、太陽光および風力ベースの電力源のような低慣性発電システムは、スケジューリング期間中に電力網の変化に応じて制御されてもよい。また、ハイブリッド状態推定は、システムオペレータにより、いくつか例を挙げると、電力動揺またはエリア間振動等の、低周波数のSCADA状態推定では視覚化できないイベントを視覚化するために、使用されてもよい。
【0050】
プロセス200は条件219に進み、ここで、ローカル制御システムは、新たなSCADA状態推定を生成する時期か否かを判断する。たとえば、新たなSCADA状態推定は、5~15分のSCADA間隔で生成されてもよい。新たなSCADA状態推定を生成する時期になると、プロセス200は動作203に戻り、動作ループ223を形成する。
【0051】
ローカル制御システムが、新たなSCADA状態推定を生成する必要はないと判断した場合、プロセス200は動作207に戻り、動作ループ221を形成する。新たなSCADA状態推定を生成する必要が生じるたびに、プロセス200はループ223を実行する。SCADA間隔内で、プロセス200は、状態推定およびネットワークトポロジをほぼリアルタイムで更新するのに有効なループ221を実行する。
【0052】
以下、いくつかの具体例としての実施形態のさらなる説明を提供する。一実施形態は、電力網における状態推定の方法であり、この方法は、電力網トポロジを含む監視制御・データ取得(SCADA)情報のセットを受信するステップと、SCADA情報のセットを用いてSCADA状態推定を生成するステップと、クラウドコンピューティングアーキテクチャにより、PMUフェーザのセットを受信するステップと、クラウドコンピューティングアーキテクチャにより、SCADA推定のタイムスタンプおよびPMUフェーザのセットのタイムスタンプを整列させるステップと、クラウドコンピューティングアーキテクチャにより、PMUフェーザのセットを用いて電力網トポロジを決定するステップと、クラウドコンピューティングアーキテクチャにより、決定した電力網トポロジと、PMUフェーザのセットと、SCADA状態推定とを用いて、ハイブリッド状態推定を生成するステップと、ハイブリッド状態推定をローカル制御システムに送信するステップとを含む。
【0053】
上記方法のある特定の実施形態において、この方法の、ハイブリッド状態推定を生成するステップは、以下の式および行列
【0054】
【数5】
【0055】
を用いて加重最小二乗状態推定を実行するステップを含み、式中、xは状態推定ベクトルであり、Aは関数行列であり、Wはハイブリッド重み行列であり、zhybridは測定行列であり、1は単位行列を表し、1’は測定された電圧フェーザがない場合における対角にゼロを有する単位行列であり、C~Cは、その電流フェーザ測定値が受信された電力線の線路コンダクタンスおよびサセプタンスを含む行列である。
【0056】
ある特定の形態において、測定行列は、
【0057】
【数6】
【0058】
を含み、式中、V (1)およびV (1)は、直交形式のSCADA推定からの電圧推定結果の実数成分および虚数成分であり、V (2)およびV (2)は、直交形式のPMUフェーザのセットからの電圧フェーザ測定値の実数成分および虚数成分であり、I (2)およびI (2)は、直交形式のPMUフェーザのセットからの電流フェーザ測定値の実数成分および虚数成分である。
【0059】
ある特定の形態において、SCADA情報のセットは、電力網の電圧測定値を含み、電力網トポロジは、電力網の回路遮断器のオン/オフステータスを含む。ある特定の形態において、SCADA推定を生成するステップは、ローカル制御システムによって実行される。ある特定の形態において、この方法は、PMUフェーザの新たなセットを受信するステップと、SCADA推定のタイムスタンプおよびPMUフェーザの新たなセットのタイムスタンプを整列させるステップと、PMUフェーザの新たなセットを用いて電力網トポロジを決定するステップと、SCADA状態推定およびPMUフェーザの新たなセットを用いて更新されたハイブリッド状態推定を生成するステップと、ローカル制御システムが第2のSCADA状態推定をクラウドコンピューティングアーキテクチャに送信するまで更新されたハイブリッド状態推定を送信するステップとを、繰り返し実行することを含む。ある特定の形態において、更新されたハイブリッド状態推定を送信するステップは、毎秒少なくとも1回実行される。ある特定の形態において、更新されたハイブリッド状態推定を送信するステップは、毎秒少なくとも2回実行される。ある特定の形態において、電力網トポロジを決定するステップは、PMUフェーザのセットを用いて電力網のトポロジの変化を検出するステップと、検出した変化を含むように電力網トポロジを更新するステップとを含む。ある特定の形態において、電力網トポロジを決定するステップは、PMUフェーザのセットと電力網トポロジとの比較に応じて電力網トポロジの回路遮断器のオン/オフステータスを更新するステップを含む。
【0060】
もう1つの具体例としての実施形態は、電力網の状態推定システムであり、この状態推定システムは、ローカル制御システムを備え、ローカル制御システムは、電力網トポロジを含む監視制御・データ取得(SCADA)情報のセットを受信しSCADA情報のセットを用いて生成されたSCADA状態推定を送信するように構成され、状態推定システムはさらに、クラウドコンピューティングアーキテクチャを備え、クラウドコンピューティングアーキテクチャは、PMUフェーザのセットを受信し、SCADA推定のタイムスタンプおよびPMUフェーザのセットのタイムスタンプを整列させ、フェーザのセットを用いて電力網トポロジを決定し、決定した電力網トポロジと、PMUフェーザのセットと、SCADA状態推定とを用いて、ハイブリッド状態推定を生成し、ハイブリッド状態推定を前記ローカル制御システムに送信するように、構成されている。
【0061】
上記状態推定システムのある特定の形態において、ハイブリッド状態推定を生成することは、以下の式および行列
【0062】
【数7】
【0063】
を用いて加重最小二乗状態推定を実行することを含み、式中、xは状態推定ベクトルであり、Aは関数行列であり、Wはハイブリッド重み行列であり、zhybridは測定行列であり、1は単位行列を表し、1’は測定された電圧フェーザがない場合における対角にゼロを有する単位行列であり、C~Cは、その電流フェーザ測定値が受信された電力線の線路コンダクタンスおよびサセプタンスを含む行列である。
【0064】
ある特定の形態において、測定行列は、
【0065】
【数8】
【0066】
を含み、式中、V (1)およびV (1)は、直交形式のSCADA推定からの電圧推定結果の実数成分および虚数成分であり、V (2)およびV (2)は、直交形式のPMUフェーザのセットからの電圧フェーザ測定値の実数成分および虚数成分であり、I (2)およびI (2)は、直交形式のPMUフェーザのセットからの電流フェーザ測定値の実数成分および虚数成分である。
【0067】
ある特定の形態において、SCADA情報のセットは、電力網の電圧測定値を含み、電力網トポロジは、電力網の回路遮断器のオン/オフステータスを含む。ある特定の形態において、SCADA推定を生成することは、ローカル制御システムによって実行される。ある特定の形態において、クラウドコンピューティングアーキテクチャは、クラウドコンピューティングアーキテクチャがPMUフェーザの新たなセットを受信するたびに、ローカル制御システムが第2のSCADA状態推定をクラウドコンピューティングアーキテクチャに送信するまで、PMUフェーザの新たなセットおよびSCADA状態推定を用いて新たなハイブリッド状態推定を繰り返し生成するように構成されている。ある特定の形態において、クラウドコンピューティングアーキテクチャは、新たなハイブリッド状態推定を、毎秒少なくとも1回生成する。ある特定の形態において、クラウドコンピューティングアーキテクチャは、新たなハイブリッド状態推定を、毎秒少なくとも2回生成する。ある特定の形態において、電力網トポロジを決定することは、PMUフェーザのセットを用いて電力網のトポロジの変化を検出することと、検出した変化を含むように電力網トポロジを更新することとを含む。ある特定の形態において、電力網トポロジを決定することは、PMUフェーザのセットと電力網トポロジとの比較に応じて電力網トポロジの回路遮断器のオン/オフステータスを更新することを含む。
【0068】
本開示は図面および上記説明において詳細に示され記述されているが、これは説明のためであって限定的な性質のものではないとみなされるべきであり、ある特定の具体例としての実施形態のみが示され記述されていること、ならびに本開示の精神に含まれるすべての変更および修正の保護が所望されていることを、理解されたい。上記説明で用いられる「好ましい(preferable)」、「好ましくは(preferably)」、「好ましい(preferred)」または「より好ましい(more preferred)」等の単語の使用は、そのようにして記載される特徴が、より望ましいかもしれないが必要ではない可能性もあることを示し、そのような特徴を欠いた実施形態が以下の請求項によって規定される本開示の範囲に含まれることを意図する場合もある。請求項の解釈において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「少なくとも1つの(at least one)」、または「少なくとも1つの部分(at least one portion)」等の単語が使用される場合は、請求項において特に指定されない限りこの請求項を1つのアイテムのみに限定する意図はないことを意味する。「~の(of)」という用語は、別のアイテムとの関連または関係、およびこの用語が使用される文脈からわかる別のアイテムへの所属またはそれとの関係を意味する場合がある。「~に結合される(coupled to)」、「と結合される(coupled with)」などの用語は、間接的な接続および結合を含み、さらに、特に明示的に指定されない限り、直接的な結合または接続を含むがそれが必要な訳ではない。「少なくとも一部分(at least a portion)」および/または「一部分(portion)」という表現が使用される場合、アイテムは、特に指定されない限り、一部分および/またはアイテム全体を含み得る。
図1
図2