(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】介助装置
(51)【国際特許分類】
A61G 7/14 20060101AFI20240517BHJP
A61G 5/14 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61G7/14
A61G5/14
(21)【出願番号】P 2022518469
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2020018052
(87)【国際公開番号】W WO2021220380
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中根 邦靖
(72)【発明者】
【氏名】野村 英明
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-036392(JP,A)
【文献】特開2014-008250(JP,A)
【文献】特開2019-126584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/14
A61G 5/12
A61G 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレームと、
前記本体フレームに対して少なくとも上下方向に移動可能に設けられて、被介助者の上半身を支持する支持部材と、
前記本体フレームの上側に着脱可能に配置されて、前記被介助者が足を載せるフットプレートと、
前記フットプレートの下面または前記本体フレームの上側の少なくとも一方に設けられ、前記本体フレームに対する前記フットプレートの少なくとも水平方向の移動を規制する水平方向規制部と、を備え、
前記水平方向規制部は、
前記フットプレートの下方で左右方向に延びて前記本体フレームの一部を構成する取り付け部、または、前記フットプレートの下方で左右方向に延びて前記本体フレームの一部を構成する部分に設けられた取り付け部と、前記フットプレートの下面に設けられて前記取り付け部に着脱可能に係合する係合部とを有し、前記係合部が前記取り付け部に係合することにより前記フットプレートの前後両方向の移動を規制する、
介助装置。
【請求項2】
前記フットプレートに加えられる外力により、前記フットプレートを前記本体フレームに着脱可能に取り付ける着脱型取り付け機構を含み、
前記着脱型取り付け機構は、
前記取り付け部と、前記フットプレートの下面から下向きに延びるように設けられ
た前記係合部と、を有する、
請求項1に記載の介助装置。
【請求項3】
前記取り付け部は、棒形状、筒形状、および凸形状のいずれかに形成された被把持部であり、
前記係合部は、前記被把持部を把持する把持部である、
請求項2に記載の介助装置。
【請求項4】
前記把持部を複数備え、複数の前記把持部は、把持した前記被把持部の移動を規制する規制方向が相違するものを含む、請求項3に記載の介助装置。
【請求項5】
前記取り付け部は、前記本体フレーム
の一部を構成する前記部分に設けられた取り付け孔または取り付け溝であり、
前記係合部は、前記フットプレートの下面に設けられて前記取り付け孔または前記取り付け溝に嵌入する取り付けピンである、
請求項2に記載の介助装置。
【請求項6】
前記係合部は、前記フットプレートに加えられる前記外力により、弾性変形を経た弾性復帰状態で前記取り付け部に係合し、または、弾性変形状態で前記取り付け部に係合する、請求項2~5のいずれか一項に記載の介助装置。
【請求項7】
前記係合部は、前記フットプレートに加えられる下向きの前記外力により、下降しつつ前記取り付け部に係合する、請求項2~6のいずれか一項に記載の介助装置。
【請求項8】
前記係合部は、前記フットプレートに加えられる上向きの前記外力により、上昇しつつ前記取り付け部から離脱する、請求項7に記載の介助装置。
【請求項9】
前記本体フレームに対する前記フットプレートの位置を定める位置決め部をさらに備えた、請求項1~8のいずれか一項に記載の介助装置。
【請求項10】
形状および大きさの少なくとも一方が相違する複数種類の前記フットプレートが交換可能とされている、請求項1~9のいずれか一項に記載の介助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、被介助者が足を載せるフットプレートを有する介助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の進展に伴い、介助装置のニーズが増大している。介助装置は、一般的に、被介助者の身体の一部を支持した支持部材を駆動して、被介助者の各種の動作を介助する。さらに、一部の介助装置は、被介助者が搭乗して移動する用途にも使用される。介助装置の導入によって、介助者および被介助者の身体的な負担が軽減されるとともに、介助者の人手不足も緩和される。この種の介助装置の一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の介助装置は、基台と、被介助者の上半身を支持しつつ基台に対して上下方向に移動する支持部材とを備えて、被介助者の起立動作を介助する。さらに、基台は、基台ロッドと、被介助者が足を載せるフットプレート(足載置台)と、複数の車輪と、を有する。そして、支持部材に付属されたハンドルを介助者が操作することにより、被介助者が搭乗する介助装置を移動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の介助装置は、被介助者がトイレや食堂などへ移動する用途に使用される。このため、フットプレートが排泄物や飲食物などで汚れる場合が生じる。ここで、フットプレートは固定構造であるため、介助者は、腰をかがめて難儀な拭き掃除を行っていた。さらに、介助装置は水気に弱い電装品を内蔵するため、十分な防水対策が施されていない場合水拭き掃除に配慮が必要であった。
【0006】
それゆえ、本明細書では、フットプレートを簡単に取り外して容易に掃除することができる介助装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、本体フレームと、前記本体フレームに対して少なくとも上下方向に移動可能に設けられて、被介助者の上半身を支持する支持部材と、前記本体フレームの上側に着脱可能に配置されて、前記被介助者が足を載せるフットプレートと、前記フットプレートの下面または前記本体フレームの上側の少なくとも一方に設けられ、前記本体フレームに対する前記フットプレートの少なくとも水平方向の移動を規制する水平方向規制部と、を備えた介助装置を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本明細書で開示する介助装置において、介助者等は、フットプレートを本体フレームから簡単に取り外すことができる。さらに、介助者等は、取り外したフットプレートを丸ごと水洗いしたりすることができ、すなわち、容易に掃除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の介助装置の全体構成を示す側面図である。
【
図2】介助装置の本体フレームおよびフットプレートを床面側から見上げた斜視図である。
【
図3】
図2の部分拡大図であって、着脱型取り付け機構および位置決め部を説明する斜視図である。
【
図4】従来技術の介助装置を床面側から見上げた斜視図である。
【
図5】第2実施形態の着脱型取り付け機構を模式的に示す断面図である。
【
図6】第3実施形態の水平方向規制部を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.第1実施形態の介助装置1の全体構成
第1実施形態の介助装置1の全体構成について、
図1および
図2を参考にして説明する。
図1の右上の矢印に示されるように、介助装置1の前後を定める。介助装置1は、例えば、被介助者のベッドと車椅子と間の移乗や、車椅子と便座の間の移乗など、異なる二箇所の間の移乗に利用される。介助装置1は、被介助者の上体を支持して、座位姿勢から起立姿勢への起立動作、および起立姿勢から座位姿勢への着座動作を介助する。
【0011】
ここで、起立姿勢は、臀部が座面から浮いて脚部が伸びた姿勢を意味し、立位姿勢および中腰姿勢を含む。つまり、起立姿勢は、上体が概ね直立した立位姿勢、および上体が前傾した中腰の前かがみの姿勢などを含む。また、介助装置1は、移乗する二箇所が離れている場合に、被介助者が搭乗して移動する用途にも使用される。例えば、介助装置1は、被介助者が居室からトイレや食堂などへ移動する用途に使用される。介助装置1は、本体フレーム2、フットプレート3、アーム部材5、支持部材6、アクチュエータ7、水平方向規制部に相当する着脱型取り付け機構4および位置決め部8、ならびに図略の制御部などで構成される。
【0012】
本体フレーム2は、アーム部材5およびアクチュエータ7が組み付けられる。さらに、本体フレーム2の上側に、フットプレート3が着脱可能に取り付けられる。本体フレーム2は、左右一対のパイプフレーム21、左右一対の組み付けフレーム22、左右一対の前板フレーム23、および後板フレーム24などで形成される。
【0013】
図2に示されるように、パイプフレーム21は、金属製のパイプが曲げ加工されて形成される。詳述すると、パイプフレーム21は、パイプ前部211、パイプ中間部212、およびパイプ後部213が連なる形状を有する。左右一対のパイプ中間部212は、床面Fよりもわずかに高い位置で前後方向に水平に延在し、相互に離隔して平行配置される。パイプ前部211は、パイプ中間部212の前側が上方に屈曲されて形成される。
図1に示されるように、左右のパイプ前部211の前側に、起立した板形状の組み付けフレーム22がそれぞれ設けられる。
【0014】
左右の組み付けフレーム22の上部に、揺動支持座29がそれぞれ設けられる。左右の組み付けフレーム22の下方に、前輪25がそれぞれ設けられる。左右のパイプ前部211の上端に、位置調整部281がそれぞれ設けられる。位置調整部281は、被介助者の体格などに合わせて、膝当て部材28の前後方向の位置を介助者等が調整する手動調整機構である。
【0015】
膝当て部材28は、被介助者の膝が当接する部位である。膝当て部材28が膝の位置を定めることにより、被介助者の起立動作や着座動作が安定化する。膝当て部材28は、ベースプレート282、膝当て本体283、および2本の支持ロッド284などで形成される。ベースプレート282は、金属の板材を用いて左右方向に延在するように形成され、垂直方向よりも少しだけ前傾して配置される。膝当て本体283は、弾性変形可能なウレタンフォームなどで形成され、ベースプレート282の後側に取り付けられる。2本の支持ロッド284は、金属の棒材を用いて形成され、ベースプレート282を左右の位置調整部281に結合する。
【0016】
図2に示されるように、左右のパイプ中間部212は、左右方向に延びつつ前後に離隔して配置される前側補助パイプ214および後側補助パイプ215によって結合される。前側補助パイプ214および後側補助パイプ215は、パイプフレーム21と同じ材質であり、かつ同じパイプ径である。前側補助パイプ214と後側補助パイプ215の間に、2枚の板材で形成されたアクチュエータ取り付け座216が前後方向に架け渡される。アクチュエータ取り付け座216には、アクチュエータ支持材217(
図1参照、
図2では省略)が設けられている。アクチュエータ支持材217は、アクチュエータ取り付け座216から上方に延在する。
【0017】
左右一対のパイプ後部213は、パイプ中間部212の後側が向かい合う内向きに屈曲されて形成される。左右のパイプ後部213の屈曲された端部は、結合部218で結合される。パイプ中間部212と補助パイプ(214、215)の結合部分、およびパイプ後部213同士の結合部218は、例えば、溶接加工によって結合される。
【0018】
左右一対の前板フレーム23は、それぞれ金属製板状の部材で形成される。前板フレーム23の前縁および後縁は、下方に屈折している。前板フレーム23は、溶接加工により、パイプ中間部212の前寄り位置から外向きに張り出して固定される。左右の前板フレーム23は、前側補助パイプ214の外方に位置する。左右の前板フレーム23の外側寄りの下面に、中輪26がそれぞれ設けられる。中輪26は、前輪25よりも小径である。
【0019】
後板フレーム24は、左右方向に長い金属製板状の部材で形成される。後板フレーム24の左右の側縁は、下方に屈折している。後板フレーム24は、溶接加工により、パイプ後部213の上側に固定される。後板フレーム24の後部の形状は、左右両側が後方に突出した凸形状で、中央が前側にえぐれた凹形状となっている。後板フレーム24の後部の凸形状の下面に、後輪27がそれぞれ設けられる。後輪27は、前輪25よりも小径である。
【0020】
前輪25、中輪26、および後輪27は、転舵機能を有する。したがって、介助装置1は、直進移動および旋回移動だけでなく、横移動および超信地旋回が可能である。さらに、前輪25は、介助装置1の移動を規制するロック機能を備える。
【0021】
フットプレート3は、被介助者が足を載せて搭乗する部位である。着脱型取り付け機構4は、下向きの外力が加えられて下降するフットプレート3を、本体フレーム2の上側に着脱可能に取り付ける。また、着脱型取り付け機構4は、上向きの外力が加えられたフットプレート3が本体フレーム2から離脱して上昇することを許容する。フットプレート3および着脱型取り付け機構4の詳細については後述する。
【0022】
アーム部材5は、
図1に示されるように、側方から見て途中で屈折した形状に形成される。アーム部材5の下部寄りに、左右一対の揺動軸51が設けられる。左右の揺動軸51は、それぞれ組み付けフレーム22の揺動支持座29に揺動可能に支持される。アーム部材5の揺動角度範囲を規制するために、図略のストッパ機構が揺動支持座29の近傍に設けられる。これにより、アーム部材5は、本体フレーム2に対して上前方向および下後方向に揺動可能となっている。アーム部材5は、被介助者の起立動作時に上前方向へ揺動する(
図1における時計回りの揺動)。また、アーム部材5は、被介助者の着座動作時に下後方向へ揺動する。
【0023】
アーム部材5の内部に、図略のバッテリおよびリンク機構が収納される。バッテリは、アクチュエータ7および制御部の電源となる。アーム部材5の上部の後側に揺動支持部(符号略)が設けられ、揺動支持部に揺動部材52が設けられる。揺動部材52は、アーム部材5に対して揺動する。ただし、被介助者が支持部材6に接触する以前の初期状態において、揺動部材52は、リンク機構に規制されて揺動しない。なお、本願出願人は、リンク機構の詳細な構成例を国際公開第2018/167856号に開示している。
【0024】
揺動部材52は、後側にベースプレート53を有する。ベースプレート53は、金属製や樹脂製の剛性の大きな板材を用いて概ね矩形に形成される。ベースプレート53は、ハンドル54を前面に有する。ハンドル54は、概ね四角形の枠形状に形成され、アーム部材5の上方に延在する。ハンドル54は、被介助者が把持する部位であるとともに、介助装置1を移動させるために介助者が把持する部位でもある。
【0025】
支持部材6は、ベースプレート53の後側に設けられる。支持部材6は、上体支持部材61および左右一対の脇支持部材64を含んで構成される。上体支持部材61は、ベースプレート53の後面に取り付けられる。上体支持部材61は、硬質緩衝部材62および軟質緩衝部材63が積層されて形成される。上体支持部材61は、被介助者の上半身、主に胸部から腹部の辺りを支持する。
【0026】
左右一対の脇支持部材64は、ベースプレート53に取り付けられ、上体支持部材61の左右両側に配置される。脇支持部材64は、鈍角に屈曲するL字形状に形成される。脇支持部材64は、図略の芯部材および外周部材などで形成される。脇支持部材64は、被介助者の脇に進入して上半身を支持する。上体支持部材61および脇支持部材64は、布製や皮製の保護カバーで覆われてもよい。
【0027】
アクチュエータ7は、伸縮する直動アクチュエータであり、本体部71、可動部72、およびモータ73などで形成される。本体部71は、上下に長い太径の円筒状の部材であり、上部に開口部を有する。本体部71の下端は、本体フレーム2のアクチュエータ支持材217に支持される。可動部72は、上下に長い細径の丸棒状の部材である。可動部72の上端は、アーム部材5のリンク機構に接続される。可動部72の下部は、本体部71の開口部に嵌入している。
【0028】
モータ73は、本体部71の下部の前側に取り付けられる。モータ73は、制御部によって電流の通電方向が切り替え制御され、可動部72の伸び動作および縮み動作を駆動する。これにより、可動部72は、本体部71に対して伸縮動作する。アクチュエータ7は、最小長さから所定の途中長さまで伸びる第一伸び動作、および、途中長さから最大長さまで伸びる第二伸び動作を行う。
【0029】
アクチュエータ7の第一伸び動作により、支持部材6は、リンク機構を介して駆動され、上前方向に揺動する。アクチュエータ7の第二伸び動作により、アーム部材5は、リンク機構を介して駆動され、上前方向に揺動する。このように、支持部材6は、本体フレーム2に対して上方に移動しつつ、前方にも移動する。これにより、介助装置1は、被介助者の起立動作を介助する。また、アクチュエータ7の縮み動作により、支持部材6は、下方に移動しつつ、後方にも移動する。これにより、介助装置1は、被介助者の着座動作を介助する。
【0030】
図略の制御部は、操作器および制御本体部などで構成される。操作器は、アクチュエータ7を操作する上昇ボタンおよび下降ボタンを有する。操作器は、介助者によって操作される。制御本体部は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置である。制御本体部は、上昇ボタンおよび下降ボタンの操作情報に応じて、アクチュエータ7に流れる電流を制御する。これにより、アクチュエータ7の動作および停止、ならびに伸び動作と縮み動作の切り替えが制御される。
【0031】
2.フットプレート3および着脱型取り付け機構4の詳細構成
次に、フットプレート3および着脱型取り付け機構4の詳細構成について、
図2および
図3を参考にして説明する。
図2に示されるように、フットプレート3は、本体フレーム2を覆う板形状に形成される。フットプレート3の材質として樹脂を例示でき、これに限定されない。フットプレート3の左右方向の幅寸法は、前側で大きく、後側に向かうに連れて徐々に減少する。
【0032】
フットプレート3の周縁は、下方に屈曲され、本体フレーム2を囲んでいる。フットプレート3の前縁は、左右の前板フレーム23の前縁に沿う形状となっている。フットプレート3の前縁の左右方向の中央に、アクチュエータ支持材217を通過させるための溝31が設けられる。フットプレート3の後縁は、後板フレーム24の後縁に沿う形状となっている。すなわち、フットプレート3の後縁は、左右両側の凸形状、および中央の凹形状が連なって形成される。フットプレート3の左右の側縁は、前縁の両端から後縁の両端へと斜行している。
【0033】
フットプレート3の上面は、平面に形成されている。フットプレート3の下面は、前板フレーム23および後板フレーム24に載置される。フットプレート3の下面のうち前板フレーム23および後板フレーム24に接触しない範囲に、格子状に交差する突条部32が設けられる。突条部32は、下方に突出しており、パイプフレーム21および後側補助パイプ215に接触する。突条部32は、フットプレート3の機械的剛性を高めるとともに、フットプレート3から本体フレーム2に作用する荷重を分散化する。これにより、フットプレート3の反り等の変形が抑制される。
【0034】
なお、形状および大きさの少なくとも一方が相違する複数種類のフットプレート3が交換可能とされていてもよい。例えば、フットプレート3の後縁の中央の凹形状は、便器の外形形状に対応するものである。換言すると、この凹形状は、介助装置1を便器に近付けて、被介助者の便器への移乗を容易にするためのものである。したがって、トイレへの移動以外の用途では、凹形状を持たない面積の大きなフットプレート3を用いることができる。これによれば、被介助者の足がフットプレート3を踏み外すおそれが低減される。また、大柄の被介助者や足のサイズが特に大きな被介助者に対して、標準品よりも大きなフットプレート3を用いることができる。
【0035】
着脱型取り付け機構4は、本体フレーム2の一部を構成する取り付け部(41、42)と、フットプレート3の下面に設けられて取り付け部(41、42)に着脱可能に係合する係合部(43、44)とを有する。本実施形態において、取り付け部(41、42)および係合部(43、44)は、前側に2組、後側に2組、合計で4組設けられる。なお、取り付け部(41、42)は、本体フレーム2の一部を構成するのでなく、本体フレーム2に付加的に設けられる専用部材であってもよい。以下、取り付け部(41、42)および係合部(43、44)について詳述する。
【0036】
左右一対の前側取り付け部41は、前側補助パイプ214の両端付近の部位と定められている。左右一対の後側取り付け部42は、左右のパイプ中間部212の後端付近の部位と定められている。前側取り付け部41および後側取り付け部42は、筒形状に形成された被把持部に相当する。
【0037】
左右一対の前側係合部43は、フットプレート3の下面のうち前側取り付け部41に対向する位置にそれぞれ設けられる。左右一対の後側係合部44は、フットプレート3の下面のうち後側取り付け部42に対向する位置にそれぞれ設けられる。前側係合部43および後側係合部44は、フットプレート3と一体に形成され、または、別体に形成されて後付けされる。前側係合部43および後側係合部44は、被把持部を把持する把持部に相当する。
【0038】
図3に示されるように、後側係合部44は、下向きに延びて向かい合う左右一対の把持爪45、および把持爪45の間を通り抜けた上側に区画される把持空間46を有する。一対の把持爪45の離間距離は、パイプフレーム21のパイプ径よりもわずかに小さい。把持空間46は、円形の空間であり、その内径は、パイプフレーム21のパイプ径と同じかわずかに大きい。
【0039】
したがって、フットプレート3を取り付ける際に後側係合部44が下降して後側取り付け部42を把持する途中で、一対の把持爪45は、その離間距離がパイプ径に一致するまで拡がるように弾性変形する。また、後側係合部44が把持空間46内に後側取り付け部42を把持した取り付け状態で、一対の把持爪45は、弾性変形を経た弾性復帰状態に戻る。さらに、取り付け状態において、後側係合部44は、後側取り付け部42の左右方向の移動を規制しつつ、前後方向の移動を許容する。これにより、本体フレーム2に対するフットプレート3の左右方向の位置が定まり、かつ前後方向の移動が許容される。
【0040】
一方、前側係合部43は、後側係合部44と同一形状であるが、左右一対でなく前後一対の把持爪45を有する。つまり、前側係合部43は、後側係合部44と比較して90°向きが相違する。このため、前側係合部43は、前側取り付け部41の左右方向の移動を許容しつつ、前後方向の移動を規制する。これにより、本体フレーム2に対するフットプレート3の左右方向の移動が許容され、かつ前後方向の位置が定まる。
【0041】
以上説明したように、複数の係合部(43、44)は、把持した取り付け部(41、42)の移動を規制する規制方向が相違するものを含む。これにより、本体フレーム2に対するフットプレート3の水平方向の移動が規制される。つまり、着脱型取り付け機構4は、フットプレート3の下面または本体フレーム2の上側の少なくとも一方に設けられ、本体フレーム2に対するフットプレート3の少なくとも水平方向の移動を規制する水平方向規制部の一形態となっている。
【0042】
本第1実施形態では、
図2および
図3に示されるように、水平方向規制部として左右一対の位置決め部8がさらに設けられる。詳述すると、フットプレート3の下面の後部の左右両側に、位置決めボス81がそれぞれ設けられる。一方、後板フレーム24の位置決めボス81に対向する位置に、位置決め孔82がそれぞれ設けられる。フットプレート3を本体フレーム2に取り付ける際、位置決めボス81は、位置決め孔82に嵌入して、フットプレート3の水平方向の移動を規制する。
【0043】
位置決め部8は、必須ではないが、把持爪45の破損を抑制したり、フットプレート3の取り付け操作を容易にしたりする作用がある。なお、仮に前側取り付け部41がパイプ中間部212の前端付近の部位に定められていると、前側係合部43は、後側係合部44と同じ向きになる。この場合、本体フレーム2に対するフットプレート3の前後方向の移動が規制されなくなる。したがって、位置決め部8は必須となる。
【0044】
3.フットプレート3の着脱操作および作用
次に、フットプレート3の着脱操作および作用について、従来技術と対比して説明する。フットプレート3の取り付け操作において、介助者等は、まず、本体フレーム2の上側にフットプレート3を持ち込む。介助者等は、次に、位置決め部8の位置合わせを行いつつ、下向きの外力をフットプレート3に加える。加える外力の大きさは、前側係合部43および後側係合部44の把持爪45がパイプ径まで拡がる弾性変形の所要力よりも大きくする必要がある。これにより、前側係合部43は、下降しつつ前側取り付け部41に係合し(把持し)、後側係合部44は、下降しつつ後側取り付け部42に係合する(把持する)。これで、フットプレート3の取り付け操作が終了する。
【0045】
また、フットプレート3の取り外し操作において、介助者等は、上向きの外力をフットプレート3に加える。加える外力の大きさは、把持爪45の弾性変形の所要力にフットプレート3の自重分を加算した以上とする必要がある。これにより、前側係合部43は、上昇しつつ前側取り付け部41から離脱し、後側係合部44は、上昇しつつ後側取り付け部42から離脱する。これで、フットプレート3の取り外し操作が終了する。このように、フットプレート3を簡単に着脱することができ、着脱用の工具は不要である。
【0046】
一方、
図4に示される従来技術の介助装置9は、着脱型取り付け機構4を備えず、位置決め部8に代わる固定部8Xを備える。固定部8Xは、フットプレート3の下面に下向きに設けられたボルト、後板フレーム24に形成された貫通孔、および貫通孔を通過したボルトの先端に螺合する留めナットで構成される。通常、固定部8Xの着脱操作は、介助者等のユーザ側では困難であり、または、性能保証の観点から許容されない。
【0047】
このため、フットプレート3が排泄物や飲食物などで汚れた場合に、介助者等は、腰をかがめて難儀な拭き掃除を行っていた。さらに、介助装置1は、水気に弱いアクチュエータ7や制御部等の電装品を内蔵するため、水拭き掃除に配慮が必要であった。これに対して、第1実施形態の介助装置1では、フットプレート3を取り外して掃除することができる。したがって、腰をかがめる難儀な掃除でなく、フットプレート3を丸ごと水洗いするなどの容易な掃除が可能であり、電装品への配慮も不要である。また、着脱型取り付け機構4がフットプレート3の下面側に設けられており、フットプレート3の上面に突起等が存在しない。したがって、被介助者が裸足で搭乗しても、痛みを感じることがなく、けがのおそれもない。
【0048】
また、従来技術の介助装置9は、輸送時などに誤ってフットプレート3に手をかけて持ち上げると、固定部8Xが破損したり、フットプレート3にひび割れが発生したりするおそれがあった。これに対して、第1実施形態の介助装置1では、フットプレート3に手をかけて持ち上げても、フットプレート3が外れるだけで、破損することはない。さらに、第1実施形態の介助装置1は、固定部8Xの組み付け作業が不要であるので、製造時や修理時の作業工数が削減される。
【0049】
第1実施形態の介助装置1において、介助者等は、フットプレート3を本体フレーム2から簡単に取り外すことができる。さらに、介助者等は、取り外したフットプレート3を丸ごと水洗いしたりすることができ、すなわち、容易に掃除することができる。
【0050】
4.第2実施形態の着脱型取り付け機構4A
次に、第2実施形態の着脱型取り付け機構4Aについて、
図5を参考にして説明する。第2実施形態において、介助装置1の着脱型取り付け機構4A以外の構成は、実施形態と同じである。
図5に示されるように、着脱型取り付け機構4Aは、パイプ中間部212に設けられた取り付け孔4B、および、フットプレート3の下面に設けられた取り付けピン4Cで構成される。取り付けピン4Cは、取り付け孔4Bに着脱可能に嵌入する。
図5には省略されているが、複数組の取り付け孔4Bおよび取り付けピン4Cが設けられる。
【0051】
取り付け孔4Bは、円筒形状のパイプ中間部212の上部が穿孔されて形成される。なお、取り付け孔4Bは、前板フレーム23や後板フレーム24、補助パイプ(214、215)に形成されてもよい。取り付けピン4Cは、合成ゴムなどの弾性を有する材質で形成される。取り付けピン4Cは、上側から順番に根元部4D、くびれ部4E、および先端部4Fが連なって形成される。根元部4Dは、大径であり、フットプレート3の下面に接着される。くびれ部4Eは、取り付け孔4Bの孔径と同じか、わずかに細く形成される。先端部4Fは、取り付け孔4Bの孔径よりもわずかに太い部分を有する。
【0052】
したがって、フットプレート3を取り付ける際に取り付けピン4Cが下降して取り付け孔4Bに嵌入する途中で、先端部4Fは、その直径が取り付け孔4Bの孔径に一致するまで圧縮されて弾性変形する。また、くびれ部4Eが取り付け孔4Bに到達した取り付け状態で、先端部4Fは、弾性変形を経た弾性復帰状態に戻る。さらに、取り付け状態において、取り付けピン4Cは、取り付け孔4Bの前後方向および左右方向の移動を規制する。これにより、フットプレート3は、本体フレーム2に対して位置決めされる。したがって、位置決め部8は、必須ではない。
【0053】
また、フットプレート3の取り外し操作において、介助者等は、先端部4Fの弾性変形の所要力にフットプレート3の自重分を加算した上向きの外力を加えればよい。したがって、着脱用の工具は不要である。詳細な説明は省略するが、第2実施形態の着脱型取り付け機構4Aにおいても、第1実施形態の着脱型取り付け機構4と同様の作用および効果が発生する。
【0054】
5.第3実施形態の水平方向規制部
次に、第3実施形態の水平方向規制部について、
図6を参考にして、第1および第2実施形態と異なる点を主に説明する。第1および第2実施形態の水平方向規制部は、着脱型取り付け機構(4、4A)および位置決め部8が組み合わせて構成される。これに対して、第3実施形態の水平方向規制部は、後側および前側の左右一対(全部で4箇所)の位置決め部8で構成され、着脱型取り付け機構(4、4A)が省略される。
【0055】
図6に示されるように、後側の左右一対の位置決め部8は、第1実施形態と同じ位置、すなわち後板フレーム24の左右に配置される。一方、前側の左右一対の位置決め部8は、左右の前板フレーム23にそれぞれ配置される。第3実施形態において、フットプレート3を着脱するときに、把持爪45の弾性変形(第1実施形態)や先端部4Fの弾性変形(第2実施形態)は不要である。したがって、介助者等は、フットプレート3を本体フレーム2に載置するだけで取り付けることができ、また、わずかな力で取り外すことができる。さらに、着脱型取り付け機構(4、4A)の分だけ、製造コストの削減が可能である。
【0056】
6.実施形態の変形および応用
なお、パイプフレーム21および補助パイプ(214、215)は、中空でない棒材に置き換えられてもよい。また、前側係合部43および後側係合部44は、実施形態において弾性復帰状態で前側取り付け部41および後側取り付け部42を把持するが、弾性変形状態で把持する構造に変形することができる。さらに、着脱型取り付け機構(4、4A)は、クランク形状に形成されたフック同士を着脱可能に係合させる機構や、手動で留め金具を操作する機構、磁石の磁気吸引力を利用する機構などに置き換えられてもよい。その他にも、本実施形態は、様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1:介助装置 2:本体フレーム 21:パイプフレーム 22:組み付けフレーム 23:前板フレーム 24:後板フレーム 3:フットプレート 4:着脱型取り付け機構 41:前側取り付け部 42:後側取り付け部 43:前側係合部 44:後側係合部 45:把持爪 46:把持空間 4A:別形態の着脱型取り付け機構 4B:取り付け孔 4C:取り付けピン 5:アーム部材 6:支持部材 7:アクチュエータ 8:位置決め部 8X:固定部 9:従来技術の介助装置