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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】ビスコース繊維を含む湿式ウェブ
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20240517BHJP
   D21H 13/02 20060101ALI20240517BHJP
   D04H 1/28 20120101ALI20240517BHJP
【FI】
D21H11/18
D21H13/02
D04H1/28
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2022519723
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2020077252
(87)【国際公開番号】W WO2021063957
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】19200538.7
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504455609
【氏名又は名称】ケルハイム フィブレス ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】522122857
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーイーユィ
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】ベルント,インゴ
(72)【発明者】
【氏名】バーゼル,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ノシアイネン,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】オリカイネン,イイダ
(72)【発明者】
【氏名】グランフィスト,ロビン
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-285718(JP,A)
【文献】特開2010-285719(JP,A)
【文献】特開平11-206611(JP,A)
【文献】特開2002-339218(JP,A)
【文献】特開2014-051767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H
D04H
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5%w/wの量のビスコース繊維の形態のセルロース系繊維材料を含む、湿式不織布および紙からなる群から選択される湿式ウェブであって、0.5%w/w~5%w/wの量の、5μm~30μmの粒径分布(x10)を有するミクロフィブリル化セルロースと、湿潤強度剤とを含むことを特徴とする、湿式ウェブ。
【請求項2】
ビスコース繊維が、標準的な断面を有するビスコース繊維、扁平な断面を有するビスコース繊維、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の湿式ウェブ。
【請求項3】
ビスコース繊維の少なくとも一部が、下記の特性:
繊維の厚さDに対する幅Bの比が10:1以上である、
繊維表面が滑らかである、
繊維が透明である
を有する、扁平な断面を有する中実ビスコース繊維であることを特徴とする、請求項2に記載の湿式ウェブ。
【請求項4】
ビスコース繊維の量が、5%w/w~95%w/wであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項5】
ビスコース繊維の量が、5%w/w~50%w/wであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項6】
ビスコース繊維の量が、10%w/w~30%w/wであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項7】
ビスコース繊維の量が50%w/w以上であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項8】
ビスコース繊維の量が80%w/w以上であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項9】
ビスコース繊維の量が95%w/w以上であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項10】
ビスコース繊維に加えて、更なるセルロース系繊維材料を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項11】
ビスコース繊維に加えて、木材パルプを含むことを特徴とする、請求項10に記載の湿式ウェブ。
【請求項12】
湿式ウェブに含まれる繊維材料がセルロース系繊維材料からなることを特徴とする、請求項10又は11に記載の湿式ウェブ。
【請求項13】
ビスコース繊維の長さが0.1mm~16mmであることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項14】
ビスコース繊維の長さが3mm~12mmであることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項15】
ビスコース繊維の長さが4mm~8mmであることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項16】
ミクロフィブリル化セルロースが10μm~30μmの粒径分布(x10)を有することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項17】
ミクロフィブリル化セルロースが12μm~28μmの粒径分布(x 10 )を有することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項18】
ミクロフィブリル化セルロースが12μm~25μmの粒径分布(x 10 )を有することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項19】
湿潤強度剤の量が、0.1%w/w~5%w/wであることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項20】
湿潤強度剤の量が、0.5%w/w~3%w/wであることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項21】
湿潤強度剤の量が、1%w/w~3%w/wであることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項22】
湿潤強度剤が、ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂(PAE)およびポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂(PAAE)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項23】
湿式ウェブの湿潤強度の値が、乾燥強度の値の少なくとも18%であることを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項24】
湿式ウェブの湿潤強度の値が、乾燥強度の値の少なくとも20%であることを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の湿式ウェブ。
【請求項25】
請求項4から24のいずれか一項に記載の湿式ウェブの、食品ろ過用フリースとしての使用。
【請求項26】
請求項4から24のいずれか一項に記載の湿式ウェブの、ティーバッグ紙としての使用。
【請求項27】
請求項から24のいずれか一項に記載の湿式ウェブの、透明美容マスクとしての使用であって、湿式ウェブが、ビスコース繊維の少なくとも一部が下記の特性:
繊維の厚さDに対する幅Bの比が10:1以上である、
繊維表面が滑らかである、
繊維が透明である
を有する、扁平な断面を有する中実ビスコース繊維であることを特徴とする、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスコース繊維を含む湿式ウェブに関する。
【0002】
更に、本発明は、本発明による湿式ウェブの、食品ろ過フリースまたは透明美容マスクとしての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ビスコースは、とりわけ繊維産業において使用される多目的材料である。ビスコース繊維は、再生セルロースから湿式紡糸プロセスによって得ることができる。
【0004】
製造パラメーターを変更することにより、ビスコース繊維には様々な特性を付与することができる。結果として、ビスコース繊維は、様々な形で機能化することができる。繊維の機能性は、こうした繊維から製造される製品に転移させることが望まれる。このためには、製品中には十分に高い割合、すなわち少なくとも5%、通常はこれよりもかなり多く、例えば10%のビスコース繊維、あるいは最大90%以上のビスコース繊維が必要である(ここおよび下記において、パーセンテージの値は、別段の指示がない限り重量パーセンテージを意味する)。しかし、ビスコース繊維の割合が高くなると、製品、例えば湿式不織布および紙の強度は低下する。したがって、これらの分野におけるビスコース繊維の使用は、現状では限定的である。
【0005】
ビスコース繊維の割合が高くなると、特に湿潤強度の低下が発生する。乾燥した紙は一般に、水と接触すると、水が繊維間の水素結合を切断するため、強度の著しい低下を呈する。製品の強度と機能性には、妥協が必要である。この対策として、通常は湿潤強度剤が適用される。これらは、永久/共有結合架橋を形成し、それが湿潤状態での紙の強度を向上させる。しかし、湿潤強度剤は、パルプと比較して、ビスコース繊維に対する効果が低いことが観察されている(WO2018/078094A1)。これは、一方では、天然セルロース繊維と比較して再生ビスコース繊維の表面が比較的硬いこと、他方では、ビスコース繊維はフィブリル化しないという事実に起因すると考えられる。
【0006】
WO2018/078094に記載されているように、セルロース系繊維、特にビスコース繊維の強度は、アニオン性ビスコース繊維をカチオン性ポリマーで処理することによって向上させることができる。しかし、これには追加のプロセス工程が必要となり、それに伴ってコストも上昇する。
【0007】
ビスコース繊維の強度を向上させる別の公知の方法は、前記繊維をバイコ((bi-component):2成分)繊維とブレンドすることである。バイコ繊維は通常、高融点ポリマー(例えばPP)と低融点ポリマー(例えばPE)とを含む。芯鞘バイコ繊維の場合、低融点ポリマーが鞘を形成し、高融点ポリマーが繊維の芯となる。例えばビスコース繊維とブレンドする場合、バイコ繊維は熱、例えば熱カレンダリングによって活性化できる。これにより、バイコ繊維の鞘が溶融し、非溶融芯をビスコース繊維と結合させる。こうして、不織布の全体構造の強度が向上する。
この方法の欠点は、結果として得られる製品が、ビスコース繊維それ自体とは異なり、生分解性を持たないことである。
【0008】
EP2441869A1では、高い水離解性と高い湿潤強度の両方を有する繊維状シートを提供することが目的とされた。EP2441869A1に開示される繊維状シートは、未叩解および叩解パルプと、再生セルロースと、フィブリル化精製セルロースとを含む。
【0009】
EP2781652A1は、合成および/または天然長繊維と、ナノフィブリル状セルロースとを含む湿式不織布を開示する。
【0010】
US2018/0280847A1は、ろ材におけるフィブリル化セルロース系繊維と安定繊維の使用を記載する。
【0011】
GB1064476Aは、扁平な再生セルロース繊維から本質的になる透明な紙を開示する。
【0012】
US2019/0257023A1は、イオン性部分と高分子改質剤とを含む改質セルロース系繊維に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、ビスコース繊維を含み、十分な湿潤強度を有する湿式ウェブ、特に湿式不織布または紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、少なくとも5%w/wの量のビスコース繊維の形態のセルロース系繊維材料を含む、湿式不織布および紙からなる群から選択される湿式ウェブであって、0.5%w/w~5%w/wの量の、5μm~30μmの粒径分布(x10)を有するミクロフィブリル化セルロースと、湿潤強度剤とを含むことを特徴とする、湿式ウェブによって解決される。
【0015】
本発明の湿式ウェブは、食品ろ過フリース、好ましくはティーバッグ紙としての、または透明美容マスクとしての使用に適する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ビスコース繊維と、ミクロフィブリル化セルロースと、湿潤強度剤とを含む湿式ウェブを提供する。
【0017】
本発明による湿式ウェブは、湿式不織布および紙からなる群から選択される。
【0018】
本発明による湿式ウェブは、例えば食品ろ過フリースまたは透明美容マスクとしての使用に適する。
【0019】
驚くべきことに、ミクロフィブリル化セルロースを添加すると、ビスコース繊維に対する湿潤強度剤の効果が高まることが見出されている。
【0020】
ミクロフィブリル化セルロースは一般に、長いフィブリル化繊維を含む。ミクロフィブリル化セルロースの長いフィブリルは、湿潤強度剤を吸収してビスコース繊維(同じく湿潤強度剤が適用されている)に架橋することができ、したがって、実質的に接触面積を増加させることによってビスコース繊維間に湿潤強度結合をもたらすことと考えられる。ミクロフィブリル化セルロースは、湿潤強度剤の固定点を追加することにより接着促進剤として機能し、それ故、ビスコース繊維の量が多くても湿潤強度剤の効果を向上させるものと思われる。これは、パルプとパルプ繊維の間だけでなく、パルプとビスコース繊維の間、ビスコースとビスコース繊維の間の結合にもそれぞれ影響する。理論に縛られることを望むものではないが、湿潤強度剤の効果に関しては、ミクロフィブリル化セルロースはビスコース繊維を補うこともあり得る。結果として、湿式不織布および紙中のビスコース繊維の量を大幅に増加させても湿潤強度が低下することはなく、むしろ上昇する可能性もある。
【0021】
本発明の湿式ウェブの更なる利点は、バイコ(2成分)繊維をブレンドした湿式不織布および紙とは対照的に、100%再生可能資源に由来し、生分解性を有することである。
【0022】
本発明の湿式ウェブの別の利点は、現在の技術水準で製造した湿式ウェブと比較して柔軟性が良好であること、即ち、本発明の湿式ウェブの折り畳み挙動が、スパンレース不織布よりも紙に近いことである。
【0023】
本発明の湿式ウェブのもう一つの利点は、現在の技術水準で製造した湿式ウェブと比較して、本発明の湿式ウェブは、毛羽立ち効果を本質的に示さないこと、即ち、ビスコース繊維がウェブとしっかり結合しており、ウェブをこすっても引き抜かれないことである。
【0024】
本発明の湿式ウェブに採用されるビスコース繊維は、標準的な断面を有するビスコース繊維、扁平な断面を有するビスコース繊維、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。ビスコース繊維の標準的な断面は、「BISFA Terminology fo Man-Made Fibres 2017」(https://www.bisfa.org/wp-content/uploads/2018/06/2017-BISFA-Terminology-final.pdf)、23ページに示されるように、鋸歯状の形状を有することが公知である。
【0025】
標準的な断面を有するビスコース繊維の場合、繊維は、繊維長が0.1mm~16mm、好ましくは3mm~12mm、とりわけ好ましくは4mm~8mmであり、繊度が0.5dtex~6.6dtex、好ましくは0.7dtex~1.7dtexであってもよい。
【0026】
扁平な断面を有するビスコース繊維(下記では「ビスコース扁平繊維」と呼ぶ)の場合、繊維は、繊度が1.6dtex~12dtex、好ましくは1.7dtex~3.3dtexであってもよい。
【0027】
さらに、扁平繊維の場合、ビスコース繊維の断面は、厚さに対する幅の比が6:1~30:1であってもよい。
【0028】
本発明の湿式ウェブに採用されるビスコース繊維はまた、他の任意の断面を有する繊維、好ましくは三葉または多葉繊維であってもよい。繊維の長さおよび線密度に関しては、標準的な断面を有するビスコース繊維の場合と同じ値が適用される。
【0029】
扁平な断面を有するビスコース繊維の場合、繊維の断面は、ここでも「BISFA Terminology fo Man-Made Fibres 2017」、23ページに示されるように、リボン状であってもよい。
【0030】
好ましい実施形態において、本発明の湿式ウェブは、含まれるビスコース繊維の少なくとも一部が、下記の特性:
- 繊維の厚さDに対する幅Bの比が10:1以上である、
- 繊維表面が本質的に滑らかである、
- 繊維が本質的に透明である
を有する、扁平な断面を有する中実ビスコース繊維であることを特徴とする。
【0031】
繊維の長さおよび繊度に関しては、ここでも上記のような扁平な断面を有するビスコース繊維の場合と同じ値が適用される。
【0032】
「本質的に滑らか」という用語は、繊維が、その端部領域は別として、繊維の厚さの10%を超え、特に5%を超える溝厚を有する長手方向の溝を本質的に特徴としないことを意味する。これにより、「溝」は、標準的なビスコース繊維に典型的なくぼみであると理解され、それは、標準的な断面を有するビスコース繊維の断面に関して上述したように、繊維の幅に対して小さく、標準的なビスコース繊維に典型的なものである。
好ましくは、繊維は、98%超がセルロースからなる。
【0033】
「98%超がセルロースからなる」という特徴は、完全に乾燥した繊維、いわゆる「絶乾」状態に関するものである。ビスコース繊維は一般に、通常の室内雰囲気では水分含有量が12%である。
【0034】
先に定義したタイプの扁平繊維は、WO2013/079305A1およびWO2018/158416に記載されている。
【0035】
これらの繊維の好ましいタイプは、98%超がセルロースからなるビスコース扁平繊維(「絶乾」ビスコース扁平繊維)であり、厚さDに対する幅Bの比が10:1以上であり、本質的に滑らかで本質的に透明なものであって、下記においては、「Leonardo繊維」と呼ばれるものである。以下に述べるように、Leonardo繊維は、本発明の湿式ウェブのある特定の用途にとりわけ有用である。
【0036】
更なる実施形態において、含まれるビスコース繊維は本質的に全て扁平繊維、とりわけLeonardo繊維である。
【0037】
更なる好ましい実施形態において、本発明の湿式ウェブは、ビスコース繊維の量が、5%w/w~95%w/w、好ましくは5%w/w~50%w/w、より好ましくは10%w/w~30%w/wであることを特徴とする。
【0038】
この好ましい実施形態において、本発明の湿式ウェブは、食品ろ過フリースとして、好ましくはティーバッグ紙としてとりわけ適している。
【0039】
ビスコース繊維は、食品ろ過フリースとして使用するのに十分な多孔性を呈する。しかし、湿式ウェブの湿潤強度は、ビスコース繊維の量の増加に伴って低下する。本発明の湿式ウェブは、湿潤強度剤と組み合わせたミクロフィブリル化セルロースによって与えられるその多孔性と湿潤強度のため、食品ろ過フリースとしての使用に適する。
【0040】
本発明の湿式ウェブは、ティーバッグ紙としての使用にとりわけ適している。
【0041】
本発明の湿式ウェブの利点は、結果として得られる食品ろ過フリースの高い多孔性と湿潤強度のために食品ろ過フリースに使用されているアバカ繊維の代替物として、ビスコース繊維を採用できる可能性があることである。アバカ繊維は、とりわけヨーロッパでの入手が困難であり、高価なため、置き換えが望まれている。
【0042】
この好ましい実施形態において、先に定義したようなLeonardo繊維の使用が有利である。
【0043】
更なる好ましい実施形態において、本発明の湿式ウェブは、ビスコース繊維の量が50%w/w以上、好ましくは80%w/w以上、より好ましくは95%w/w以上であることを特徴とする。
【0044】
したがって、本実施形態は、ウェブに含有されるビスコース繊維の量が非常に多いことを特徴とする。これらの実施形態は、本発明の湿式ウェブの透明美容マスクにおける使用にとりわけ有用である。
【0045】
美容マスク、とりわけフェイスマスクの重要な品質特性は、湿潤状態での高い透明度である。これは、とりわけ、上記のようなLeonardo繊維を用いて達成することができる。
【0046】
最適な効果を達成するには、美容マスクにおけるLeonardo繊維の割合を高くすることが必要である。しかし、Leonardo繊維の量が多い湿式不織布は、湿潤強度が不十分であることが判明した。これは、ここでも、ビスコース繊維に対する湿潤強度剤の効果が低いためと考えられる。しかし、美容マスクとして使用される湿式不織布の十分な湿潤強度は、ユーザの取り扱い性を満足させるために必要なものである。
【0047】
Leonardo繊維を含む本発明の湿式ウェブの利点は、美容マスクとしての適合性であり、それは、Leonardo繊維の高い透明度と、湿潤強度剤と組み合わせたミクロフィブリル化セルロースによって与えられる湿潤強度によるものである。
【0048】
更なる好ましい実施形態において、本発明の湿式ウェブは、ビスコース繊維に加えて、更なるセルロース系繊維材料を含むことを特徴とする。
【0049】
更なるセルロース系繊維材料は、木材パルプ、綿、アバカ、サイザルアサ、大麻およびケナフからなる群から選択されてもよい。木材パルプが好ましい材料である。
【0050】
木材パルプは、広葉樹または針葉樹のケミカル、ケミメカニカル、ケミサーモメカニカルまたはメカニカルパルプであってもよい。
【0051】
本発明の湿式ウェブは、ビスコース繊維に加えて、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アラミド、ガラス繊維および炭素繊維からなる群から選択される非セルロース系繊維を含んでもよい。
【0052】
しかし、更なる好ましい実施形態において、本発明の湿式ウェブは、湿式ウェブに含まれる繊維材料がセルロース系繊維材料から本質的になることを特徴とする。
【0053】
したがって、湿式ウェブは、好ましくは合成ポリマーの繊維材料を含有しない。
【0054】
本発明による湿式ウェブは、好ましい実施形態において、ミクロフィブリル化セルロースが10μm~30μm、好ましくは12μm~28μm、より好ましくは12μm~25μmの粒径分布(x10)を有することを特徴とする。
【0055】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、その一部または全部がフィブリル化セルロースまたはリグノセルロース繊維で構成されている。実際のフィブリル径もしくは粒径分布、および/またはアスペクト比(長さ/幅)は、原料および製造方法に依存する。
【0056】
最小のフィブリルは、基本フィブリルと呼ばれ、直径が約2~4nmである(例えば、Chinga-Carrasco,G.;Cellulose fibres,nanofibrils and microfibrils:The morphological sequence of MFC components from a plant physiology and fibre technology point of view,Nanoscale research letters 2011、6:417参照)。ミクロフィブリルとしても定義される基本フィブリルの凝集形態(Fengel,D.,Ultrastructural behavior of cell wall polysaccharides,Tappi J.,March 1970、Vol53、No.3.)は、例えば拡張叩解プロセスまたは圧力降下離解プロセスを使用してMFCを製造する場合に得られる主要な生成物である。フィブリルの長さは、1μm前後から10μm以上まで変動する可能性がある。
【0057】
上記から理解できるように、MFCは、本発明の意味における「セルロース系繊維材料」ではない。
【0058】
粗いMFCグレードは、フィブリル化繊維、即ち、仮道管から突出したフィブリル(セルロース繊維)をかなりの割合で含有し、仮道管から遊離した一定量のフィブリル(セルロース繊維)も含むことがある。
【0059】
MFCはまた、様々な物理的または物理化学的特性、例えば水に分散させたときに低固形分(1~5wt%)でゲル状材料を形成する能力や、大きな表面積によっても特徴付けることができる。セルロース繊維は、好ましくは、凍結乾燥させた材料をBET法で判定した場合に、形成されるMFCの最終的な比表面積が約1~約200m/g、好ましくは50~200m/gとなる程度までフィブリル化されている。
【0060】
MFCを製造するための様々な方法が存在し、例えば、単一回もしくは多数回の叩解、予備加水分解とそれに続く叩解もしくは高せん断離解、またはフィブリルの遊離である。MFCの製造をエネルギー効率がよく、持続可能なものとするには、1以上の前処理工程が通常は必要である。そのため、供給されるパルプのセルロース繊維を酵素的または化学的に前処理して、例えばヘミセルロースまたはリグニンの量を減少させてもよい。セルロース繊維は、フィブリル化前に化学的に改質してもよく、その場合、セルロース分子は、元の本来のセルロース中に存在する官能基以外の(またはそれよりも多くの)官能基を含有する。このような官能基としては、とりわけ、カルボキシメチル(CMC)、アルデヒドおよび/もしくはカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化、例えばTEMPOの触媒作用によって得られるセルロース)、または第四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が挙げられる。上記の方法の1つに従って改質または酸化した後、繊維を離解してMFCを製造することは容易である。前処理した繊維、例えば加水分解、予備膨潤、または酸化させたセルロース原料の機械的離解は、適切な設備、例えば叩解機、粉砕機、ホモジナイザー、コロイダー、摩擦粉砕機、超音波処理機、流動化装置、例えばマイクロ流動化装置、マクロ流動化装置、または流動化装置型ホモジナイザーを用いて行われる。
【0061】
MFCは、ヘミセルロースを含有してもよい。その量は、植物源に依存する。MFCの製造方法に応じ、製品は、微粒子もしくはナノ結晶セルロース、または例えば木材繊維に、もしくは製紙プロセスにおいて存在する他の化学物質も含有することがある。製品はまた、効率的にフィブリル化されていない様々な量のミクロンサイズの繊維粒子を含有することもある。
【0062】
MFCは、木材セルロース繊維から、すなわち、広葉樹だけでなく、針葉樹繊維からも製造することができる。微生物源、農業繊維、例えば麦わらパルプ、竹、バガス、または他の非木材繊維源から作製することもできる。好ましくは、未使用繊維由来のパルプ、例えばメカニカル、ケミカルおよび/またはサーモメカニカルパルプを含むパルプから作製される。破損紙または再生紙からも作製できる。
【0063】
上記のMFCの定義には、セルロースナノフィブリルまたはミクロフィブリル(CMF)に関して新規に提案された、結晶質領域と非晶質領域の両方を有する多数の基本フィブリルを含有し、5~30nmの幅での高アスペクト比と、通常50を超えるアスペクト比を有するセルロースナノ繊維材料を定義するTAPPI規格W13021が含まれるが、これに限定されない。
【0064】
下記では「MFC1」、「MFC2」、「MFC3」および「MFC4」と表される4種類の異なるMFCを、下記においてより詳細に検討する。全ての種類のMFCは、木材パルプから製造される非改質ミクロフィブリル化セルロース材料である。以下の表1からわかるように、MFC2は、MFC1、MFC3およびMFC4と比較して、小さなフィブリルからなる微細な材料である。MFC3は、最も高い粒径分布を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
粒径分布は、レーザー回折に基づきMalvern Mastersizer3000を用いて測定した。粒子から散乱する光の強度を測定し、対応する粒径を計算した。この測定技術は、設備に対する下記の設定を使用したISO13320:2009規格に基づくものである:
- 青色および赤色レーザーを使用
- 粒子の種類:非球形、ミー理論に基づく(両方のレーザーについて)
- 屈折率:1.5
- 吸収指数:0.01
- 密度:1.6g/cm
- 分散剤(水)の屈折率:1.33
- レベルセンサー閾値:100
- 赤色および青色レーザーの測定時間-背景:20秒-試料:10秒。5秒の遅延を伴う5回の測定
- 事前測定遅延:60秒
- 吸光度限界:0.5~8%
- 測定時の撹拌速度:2600rpm
- 30秒オン、30秒オフのパルスモードでの測定前に30%で90秒間の超音波
- タンク充填および超音波処理後に脱気機能作動
- 脱気を伴う3サイクルでの自動洗浄、洗浄中の超音波なし
- 結果の種類:体積分布
【0067】
この設備は、0.01~3500μmの範囲の粒子を測定することができる。なお、この設備は、球形粒子を想定している。
【0068】
本発明による湿式ウェブに含有される湿潤強度剤の量は、0.1%w/w~5%w/w、好ましくは0.5%w/w~3%w/w、とりわけ1%w/w~3%w/wであってもよい。
【0069】
湿潤強度剤として、紙製造で一般に使用される任意の湿潤強度剤を採用できる。
【0070】
好ましい実施形態において、本発明の湿式ウェブは、湿潤強度剤が、ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂(PAE)およびポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂(PAAE)からなる群から選択されることを特徴とする。
【0071】
湿潤強度剤は、親水化ポリイソシアナート、グリオキサール化ポリアクリルアミド、またはメラミン-ホルムアルデヒド樹脂からなる群から選択される高分子、好ましくはカチオン性の化合物であってもよい。好ましい湿潤強度剤は、エピクロルヒドリン樹脂であり、より好ましくはポリアミンエピクロルヒドリン樹脂(PAE)またはポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂(PAAE)である。
【0072】
好ましい実施形態において、本発明の湿式ウェブは、湿式ウェブの湿潤強度の値が、乾燥強度の値の少なくとも18%、好ましくは少なくとも20%であることを特徴とする。
【0073】
湿式ウェブの湿潤強度および乾燥強度は、下記の式によって計算してもよい:(強度MD+強度CD)/2。MDは、マシン方向の略語である。「強度MD」は、マシン方向の強度を表す。CDはクロス方向の略語である。「強度CD」は、クロス方向の強度を表す。
【0074】
強度MDおよびCDは、通常の引張試験によって測定してもよい。
【0075】
ビスコース繊維に対する湿潤強度剤の作用を増強するMFCの効果は、様々な種類の機能化湿式ウェブの作製にも使用できる。食品ろ過フリースおよび透明美容マスクとしての使用以外の更なる例は、難燃性フリース、高染料吸収フリース、および固有撥水性フリースとしての使用である。したがって、本発明の湿式ウェブに固有の機能を有するビスコース繊維を様々な量で使用してもよい。難燃性フリースには、難燃性繊維、例えばビスコース繊維Danufil BF(Kelheim Fibres GmbHが販売)を使用してもよい。高染料吸収特性を有するフリースには、高染料吸収性のビスコース繊維、例えばビスコース繊維Danufil Deep Dye(Kelheim Fibres GmbHが販売)を使用してもよい。固有撥水性フリースには、撥水性ビスコース繊維、例えばビスコース繊維Olea(Kelheim Fibres GmbHが販売)を使用してもよい。
【0076】
機能化された湿式ウェブを作製する目的で、固有の機能を有する上記の繊維を非改質ビスコース繊維と混合して、結果として得られるフリースに所望の程度の機能化を設定することができる。
【0077】
驚くべきことに、本発明の湿式ウェブの製造は、湿式不織布または紙製造の通常のプロセス工程から実質的に逸脱する必要がないことが見出されている。したがって、製造は特別なプロセス要件を課す必要はなく、複雑ではない。
【実施例
【0078】
下記の実施例は、本発明の湿式ウェブとその好ましい実施形態を更に説明するものである。
【実施例1】
【0079】
実施例1の試料の組成の概要を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
ウェブ試料の製造:
Pill Nassvliestechnik社製の傾斜ワイヤ抄紙機で湿式不織布を製造した。Danufilは、標準的なビスコース短切断繊維(標準的な断面を有する)である。Oleaは、標準的な断面を有し、疎水性のある機能化ビスコース繊維である。StoraEnso製ミクロフィブリル化セルロース(MFC)、即ち、MFC1を使用した。
【0082】
パルプ(Canfor ECF90)をパルパーでパルプ化し、試料1a)のパルプバットに移した。試料1b)~1d)では、ビスコース繊維とミクロフィブリル化セルロースを容器(バット)に直接添加した。バットで5分間撹拌した後、ウェブの製造を開始した。容器内の繊維材料(ビスコース+パルプ)の濃度は1g/L、ウェブ製造開始時の繊維懸濁液中の繊維材料(ビスコース+パルプ)の濃度は0.26g/Lであった。湿式不織布は、ベルト速度4m/分、坪量目標65g/mで製造した。
【0083】
同じパラメーターでは、更なる試験に適するビスコース繊維100%の湿式不織布の製造は不可能であった。そのような湿式不織布は強度がなく、更なる試験のために適切に取り扱うことができなかったためである。
【0084】
ウェブ試料の試験:
パラメーターである試験片幅1.5cmでの強度および厚さに関して製造した湿式不織布の試験を行った。強度指数は、下記の式を用いて計算した:強度指数=強度[cN]/坪量[g/m]。結果を表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
試料1a)は、更なる加工に適する/ふさわしい紙および湿式不織布の良好な品質についての参照試料の役割を果たす。
【0087】
試料1b):既に言及したように、試験に適したビスコース繊維100%の湿式ウェブ製品の製造は不可能であった。しかし、標準的なビスコース短切断繊維Danufilに2wt%のミクロフィブリル化セルロースを添加すると、既に十分な強度を持つ非常に扱いやすいウェブが得られている。ビスコース繊維は、不織布の多孔性を調整するために使用されることが公知である。予想通り、製造されたウェブは、非常に高い通気性を有していた。
【0088】
試料1c):添加するミクロフィブリル化セルロースを2wt%から4wt%に増やすと、不織布の強度の上昇に繋がり、参照試料1a)よりも50%高くなった。したがって、それは必要な要件さえも上回るものであった。同時に、試料は通気性も優れており、参照試料1a)の4倍も高いものであった。
【0089】
試料1d):機能化ビスコース繊維Oleaを使用した。4wt%のミクロフィブリル化セルロースを用いて製造したウェブは、非常に良好な強度と通気性を有していた。加えて、繊維の機能性(疎水性)は、不織布でも測定可能であった。不織布は完全に疎水性であり、これは、多量のOlea繊維によるものであった。
【0090】
繊維および湿式ウェブの疎水性は、下記のように試験を行った。繊維またはウェブで直径約2cmの束を形成した。束を水面に置いた。製品は、その束が少なくとも24時間濡れることなく水面に浮いていた場合に疎水性であるとみなした。
【実施例2】
【0091】
実施例2の試料の組成の概要を表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
ウェブ試料の製造:
本実施例では、先に定義したLeonardo繊維を採用した。StoraEnso製ミクロフィブリル化セルロース(MFC)、即ち、MFC1を使用した。使用した湿潤強度剤は、Kemira製Fennostrength 505(PAE)(ビスコース材料kg当たり30g)であり、ビスコース材料は、100wt%のビスコース繊維+MFCと定義した。
【0094】
試料2a)~2c)では、ビスコース繊維とミクロフィブリル化セルロースを容器(バット)に直接添加した。続いて、試料2a)および2c)については、湿潤強度剤をバットに添加した。バットで5分間撹拌した後、フリースの製造を開始した。容器内の繊維材料(ビスコース)の濃度は1g/L、ウェブ製造開始時の繊維懸濁液中の繊維材料(ビスコース)の濃度は0.17g/Lであった。湿式不織布は、ベルト速度4m/分、坪量目標45g/m、それぞれ20g/mで製造した。
【0095】
ウェブ試料の試験:
パラメーターである試験片幅は1.5cmでの強度に関して製造した湿式不織布の試験を行った。強度指数は、下記の式を用いて計算した:強度指数=強度[cN]/坪量[g/m]。結果を表5に示す。
【0096】
【表5】
【0097】
試料2a):高度に透明なビスコース繊維Leonardoを使用した。ビスコース繊維の割合が高いため、試料2a)の不織布は、参照試料1a)と比較して良好な透明度を示し、同時に良好な乾燥強度も有していた。不織布はまた、例えば美容フェイスマスクに要求されるような、湿潤状態での良好な触覚強度と寸法安定性を示した。
【0098】
これは、ビスコース繊維と組み合わせた湿潤強度剤は、非常に限られた有効性しか示さないことが当業者には公知であるため、特に驚くべきことである。これは、一方では、天然セルロース繊維と比較して再生ビスコース繊維の表面が比較的硬いこと、他方では、ビスコース繊維はフィブリル化しないという事実に起因する。したがって、繊維と湿潤強度剤の間には接触面積がほとんど存在せず、そのため繊維間にわずかな結合しか生じさせることができないのである。
【0099】
試料2b)および2c):試料2a)で示した効果を評価/確認するため、20g/mの不織布の試料であって、ミクロフィブリル化セルロースを含むものと含まないものを1回ずつ製造した。
【0100】
試験では、ミクロフィブリル化セルロースを含まない試料2b)でも、Leonardo繊維の特殊な構造のために比較的良好な強度を有していることが示された。試料2c)では、ミクロフィブリル化セルロースの添加により強度が更に向上したが、驚くべきことに、湿潤強度は不織布の乾燥強度の2倍に上昇した。
【0101】
この効果は、ミクロフィブリル化セルロースと湿潤強度剤の相互作用によるものである。ミクロフィブリル化セルロースの長いフィブリルは、湿潤強度剤を吸収してビスコース繊維(同じく湿潤強度剤が適用されている)に架橋することができ、したがって、実質的に接触面積を増加させることによってビスコース繊維間に湿潤強度結合をもたらす。ミクロフィブリル化セルロースは、湿潤強度剤の固定点を追加することにより、接着促進剤として機能する。
【実施例3】
【0102】
実施例3の試料の組成の概要を表5に示す。
【0103】
【表6】
【0104】
ウェブ試料の製造:
Pill Nassvliestechnik社製の傾斜ワイヤ抄紙機で湿式不織布を製造した。Viloft(登録商標)は、Kelheim Fibres GmbHから入手可能な扁平なビスコース短切断繊維である。StoraEnso製ミクロフィブリル化セルロース(MFC)、即ち、表1によるMFC1およびMFC2を使用した。
【0105】
パルプ(Canfor ECF90)をパルパーでパルプ化し、パルプバットに移した。ビスコース繊維(試料3a)~3c))とミクロフィブリル化セルロース(試料3b)および3c))を容器(バット)に直接添加した。バットで5分間撹拌した後、ウェブの製造を開始した。容器内の繊維材料(ビスコース+パルプ)の濃度は1g/L、ウェブ製造開始時の繊維懸濁液中の繊維材料(ビスコース+パルプ)の濃度は、0.39g/Lであった。湿式不織布は、ベルト速度4m/分、坪量目標65g/mで製造した。
【0106】
ウェブ試料の試験:
パラメーターである試験片幅1.5cmでの強度、通気性および厚さに関して製造した湿式不織布の試験を行った。強度指数は、下記の式を用いて計算した:強度指数=強度[cN]/坪量[g/m]。結果を表6に示す。
【0107】
【表7】
【0108】
試料3a)は、MFCを添加せずに製造したものであり、更なる加工に適する/ふさわしい紙および湿式不織布の良好な品質についての参照試料の役割を果たす。
【0109】
試料3b)、3c):両試料とも、MFCを添加せずに製造した参照試料3a)と比較して、引張強度の大幅な向上を示している。
【0110】
MFC2を添加した試料3b)は、参照試料3a)と比較して、参照試料3a)と比較した試料3c)よりも小さい引張指数MDの上昇(+24.6%)を示した。試料3c)は、MFC1を添加して製造した(引張指数MDは+47.5%)。結果は、MFC1とMFC2の両方が参照試料の引張指数MDの上昇をもたらすことを示している。
【実施例4】
【0111】
実施例4の試料の組成の概要を表7に示す。
【0112】
【表8】
【0113】
ウェブ試料の製造:
Pill Nassvliestechnik社製の傾斜ワイヤ抄紙機で湿式不織布を製造した。Danufil(登録商標)は、Kelheim Fibres GmbHから入手可能なビスコース短切断繊維である。StoraEnso製ミクロフィブリル化セルロース(MFC)、即ち、表1によるMFC1を使用した。使用した湿潤強度剤は、Kurita製Giluton 20XP(PAAE)(ビスコース材料kg当たり10g)であり、ビスコース材料は、100wt%のビスコース繊維+MFCと定義した。
【0114】
パルプ(Canfor ECF90)をパルパーでパルプ化し、パルプバットに移した。ビスコース繊維(試料4a)および4b))を容器(バット)に直接添加した。ミクロフィブリル化セルロースもパルパーでパルプ化し、次いで容器(バット)に添加した(試料4b))。バットで5分間撹拌した後、ウェブの製造を開始した。容器内の繊維材料(ビスコース+パルプ)+MFCの濃度は1g/L、ウェブ製造開始時の繊維懸濁液中の繊維材料(ビスコース+パルプ)+MFCの濃度は0.18g/Lであった。湿式不織布は、ベルト速度4m/分、坪量目標30g/mで製造した。
【0115】
ウェブ試料の試験:
パラメーターである試験片幅1.5cmでの強度、通気性および厚さに関して製造した湿式不織布の試験を行った。強度指数は、下記の式を用いて計算した:強度指数=強度[cN]/坪量[g/m]。結果を表8に示す。
【0116】
【表9】
【0117】
試料4a)は、MFCを添加せずに製造したものであり、更なる加工に適する/ふさわしい紙および湿式不織布の良好な品質についての参照試料の役割を果たす。
【0118】
試料4b):この試料は、MFCを添加せずに製造した参照試料4a)と比較して、乾燥引張強度(280%)および湿潤引張強度(250%)の大幅な向上を示している。
【0119】
実施例4は、ミクロフィブリル化セルロースが、湿潤強度剤の固定点を追加することにより、標準的な断面を有するビスコース繊維の湿潤状態においても接着促進剤として機能することを示した。
【実施例5】
【0120】
実施例5の試料の組成の概要を表9に示す。
【0121】
【表10】
【0122】
ウェブ試料の製造:
Pill Nassvliestechnik社製の傾斜ワイヤ抄紙機で湿式不織布を製造した。Danufilは、標準的なビスコース短切断繊維(標準的な断面を有する)である。StoraEnso製ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を使用した。使用した湿潤強度剤は、Kurita製Giluton 20XP(PAAE)(ビスコース材料kg当たり10g)であり、ビスコース材料は、100wt%のビスコース繊維+MFCと定義した。
【0123】
パルプ(Canfor ECF90)をパルパーでパルプ化し、パルプバットに移した。試料5b)~5d)では、ミクロフィブリル化セルロースをパルプ化し、容器(バット)に添加した。次いで、試料5b)~5d)では、ビスコース繊維を容器(バット)に添加した。バットで5分間撹拌した後、ウェブの製造を開始した。容器内の繊維材料(ビスコース+パルプ)の濃度は1g/L、ウェブ製造開始時の繊維懸濁液中の繊維材料(ビスコース+パルプ)の濃度は0.24g/Lであった。湿式不織布は、ベルト速度4m/分、坪量目標40g/mで製造した。
【0124】
ウェブ試料の試験:
パラメーターである試験片幅1.5cmでの強度、および厚さに関して製造した湿式不織布の試験を行った。強度指数は、下記の式を用いて計算した:強度指数=強度[cN]/坪量[g/m]。結果を表10に示す。
【0125】
【表11】
【0126】
試料5a)は、更なる加工に適する/ふさわしい、ビスコース繊維を添加した湿式不織布の参照試料としての役割を果たす。
【0127】
試料5b)~5d)は、MFCの添加により乾燥および湿潤強度が向上する利点を示す。MFC1およびMFC4をそれぞれ使用した試料5bおよび5cでは、強度の向上は+100%の範囲である。やや粗いMFC3を使用した試料5cでは、強度の向上は+35%(乾燥)および+50%(湿潤)に過ぎず、最適な粒径分布のMFCを使用することの重要性が明確に示されている。