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特許7490071シーケンシングのための新規核酸鋳型構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】シーケンシングのための新規核酸鋳型構造
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20240517BHJP
   C12Q 1/6855 20180101ALI20240517BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240517BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z ZNA
C12Q1/6855 Z
C12Q1/6869 Z
C40B40/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022554295
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2021056056
(87)【国際公開番号】W WO2021180791
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】62/988,331
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】エア,アルナ・シャンカラナラヤナン
(72)【発明者】
【氏名】チオウ,ニー-ティン
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/226689(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0352706(US,A1)
【文献】特表2019-532090(JP,A)
【文献】国際公開第2019/166565(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギャップのある環形核酸鋳型を形成する方法であって、
a.アダプターを試料中の二本鎖核酸の少なくとも1つの末端に付着させてアダプター付き核酸を形成するステップであって、前記アダプターの一方の鎖のみが切断部位を含む、前記ステップと;
b.前記アダプター付き核酸の末端を結合させて、環状のアダプター付き核酸を形成するステップと;
c.前記環状のアダプター付き核酸を、前記切断部位を認識する切断剤と接触させて、前記環状のアダプター付き核酸における一方の鎖のみの一部を除去し、それにより、環状鎖及びギャップのある鎖を有する、ギャップのある環形核酸鋳型を形成するステップと
を含み、
前記環状鎖が、前記ギャップのある環形核酸鋳型のギャップ部分にプライマー結合部位を含む、
前記方法。
【請求項2】
前記アダプターが、標的特異的配列及びアダプター配列を含むプライマーを伸長することによって付着される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アダプターがライゲーションによって付着される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アダプターが核酸バーコードを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記切断剤がニッキングエンドヌクレアーゼであり、前記切断部位が前記ニッキングエンドヌクレアーゼの認識部位である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記切断剤がウラシル-N-グリコシラーゼであり、前記切断部位がウリジン含有ヌクレオチドである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記環状のアダプター付き核酸を形成する前に、前記アダプター付き核酸を増幅するステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記環状のアダプター付き核酸を形成するステップの後に、前記試料をエキソヌクレアーゼと接触させるステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アダプター付き核酸の末端を結合させることが、ライゲーションによるものである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップcにおいて、前記環状のアダプター付き核酸における一方の鎖のみの前記一部を除去することが、前記切断剤による切断後の熱変性によるものである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ギャップのある環形核酸鋳型の前記ギャップのある鎖が、伸長可能な3’末端を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記環状鎖の少なくとも一部をコピーするために前記伸長可能な3’末端を伸長することによって標的核酸をシーケンシングすることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
試料中の核酸をシーケンシングする方法であって、
a.ギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーを形成するステップであって、
i.アダプターを試料中の二本鎖核酸の少なくとも1つの末端に付着させてアダプター付き核酸を形成すること、ここで、前記アダプターの一方の鎖のみが切断部位を含み、前記アダプターがプライマー結合部位を含む;
ii.前記アダプター付き核酸のそれぞれの末端を結合させて、環状のアダプター付き核酸を形成すること;
iii.前記環状のアダプター付き核酸を、前記切断部位を認識する切断剤と接触させて、前記環状のアダプター付き核酸のそれぞれにおける一方の鎖のみの一部を除去し、それにより、伸長可能な3’末端を有するギャップのある鎖と環状鎖とを有する、ギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーを形成すること
を含む、前記ステップと;
b.前記環状鎖の少なくとも一部をコピーするために前記伸長可能な3’末端を伸長させ、それにより、合成によるシーケンシング法によって前記ギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーをシーケンシングするステップ
を含み、
前記環状鎖が、前記ギャップのある環形核酸鋳型のギャップ部分にプライマー結合部位を含む、
前記方法。
【請求項14】
ギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーを形成する方法であって、
a.アダプターを試料中の二本鎖核酸の少なくとも1つの末端に付着させてアダプター付き核酸を形成するステップであって、前記アダプターの一方の鎖が切断部位を含む、前記ステップと;
b.前記アダプター付き核酸のそれぞれの末端を結合させて、環状のアダプター付き核酸を形成するステップと;
c.前記環状のアダプター付き核酸を、前記切断部位を認識する切断剤と接触させて、前記環状のアダプター付き核酸のそれぞれにおける一方の鎖のみの一部を除去し、それにより、環状鎖及びギャップのある鎖を有する、ギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーを形成するステップと
を含み、
前記環状鎖が、前記ギャップのある環形核酸鋳型のギャップ部分にプライマー結合部位を含む、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、核酸シーケンシングの分野に関する。より具体的には、本発明は、シーケンシングのための核酸標的の鋳型を形成する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
核酸シーケンシングの広範な使用は、新しい技術の開発及びコスト削減のために増加している。現在、ハイスループット単一分子シーケンシングの一般的な方法には、Illuminaプラットフォーム(Illumina,San Diego,Cal.)、Ion TorrentプラットフォームLife Technologies,Grand Island,NY)、SMRTを利用するPacific BioSciencesプラットフォーム(Pacific Biosciences,Menlo Park,Cal.)、又は、Oxford Nanopore Technologies(Oxford,UK)若しくはRoche Sequencing Solutions(Santa Clara,Cal.)によって製造されたものなどのナノポア技術を利用するプラットフォームが含まれる。
【0003】
正確な長範囲シーケンシングの鍵は、核酸鋳型の設計である。環状鋳型は、クラスター又はポロニー形成を伴わない代わりに、同じ鋳型分子が実質的な長さ及び複数回にわたってシーケンシングされるテンプルポリメラーゼ複合体の形成に依存する方法に特に有利である。環状鋳型は、同じ分子のいくつかの連続的なリードからコンセンサスを生成するという利点を提供する。例えば、生物学的及び固体状態のナノポアを使用する核酸シーケンシングは、急速に成長している分野である。Ameur,et al.(2019)Single molecule sequencing:towards clinical applications,Trends Biotech.,37:72、さらに、生物学的ナノポアについての米国特許第8461854号明細書、米国特許第10337060号明細書、又は固体状態のナノポアについての米国特許第10288599号明細書、米国特許出願公開第2018/0038001号明細書、米国特許第10364507号明細書、又は2つの電極間のトンネル接合についてのPCT/EP2019/066199及び米国特許出願公開第2018/0217083号明細書を参照のこと。単一分子シーケンシングのための環状核酸鋳型を形成する革新的かつ経済的な手段が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
本発明は、シーケンシングのための核酸鋳型の新規構造を含む。構造は、短い一本鎖ギャップを有する二本鎖環(「ギャップのある環」)である。この構造は、シーケンシング又は複製を開始することができる伸長可能な3’末端を含む。本発明は、シーケンシングにおいて新規鋳型構造を使用する方法並びに新規鋳型を作製する方法をさらに含む。新規鋳型は、二本鎖環の一方の鎖のみにニックを導入することによって作製される。ニックは、その特異的結合配列を認識するニッキング酵素によって、又は一本鎖切断(ニック)を形成する第2の酵素と組み合わせてウラシル塩基を認識するグリコシラーゼによって作られる。
【0005】
いくつかの実施形態において、本発明は、ギャップのある環形核酸鋳型を形成する方法であって、その方法は、アダプターを試料中の二本鎖核酸の少なくとも1つの末端に付着させてアダプター付き核酸を形成するステップであって、アダプターの一方の鎖のみが切断部位を含む、アダプター付き核酸を形成するステップと;アダプター付き核酸の末端を結合させて、環状のアダプター付き核酸を形成するステップと;環状のアダプター付き核酸を、切断部位を認識する切断剤と接触させて、環状のアダプター付き核酸における一方の鎖のみの一部を除去し、それにより、環状鎖及びギャップのある鎖を有する、ギャップのある環形核酸鋳型を形成するステップとを含む。アダプターは、標的特異的配列及びアダプター配列を含むプライマーを伸長することによって、又はライゲーションによって付着させることができる。アダプターは核酸バーコードを含み得る。
【0006】
いくつかの実施形態において、切断剤はニッキングエンドヌクレアーゼであり、切断部位はニッキングエンドヌクレアーゼの認識部位である。他の実施形態では、切断剤はウラシル-N-DNAグリコシラーゼであり、切断部位はウリジン含有ヌクレオチドである。
【0007】
いくつかの実施形態において、本方法は、環状のアダプター付き核酸を形成する前に、アダプター付き核酸を増幅するステップをさらに含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、本方法は、環状のアダプター付き核酸を形成するステップの後に、試料をエキソヌクレアーゼと接触させるステップをさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、アダプター付き核酸の末端はライゲーションによって連結される。
【0010】
いくつかの実施形態において、環状のアダプター付き核酸における一方の鎖のみの一部を除去するステップは、切断剤による切断後の熱変性によるものである。
【0011】
いくつかの実施形態において、環状鎖は、ギャップのある環のギャップ部分にプライマー結合部位を含み、本方法は、プライマーを環状鎖のプライマー結合部位にアニーリングし、プライマーをギャップのある環のギャップのある鎖に付着させるステップをさらに含む。プライマーは、5’部分にブロッキング基を含み得る。ブロッキング基は捕捉部分であり得、捕捉部分を捕捉分子で捕捉することによってギャップのある環形核酸鋳型を捕捉するステップをさらに含む。ブロッキング基は、ヘアピン構造などのナノポアへの鋳型の通り抜け(threading)を防止する化学基、又はポリカチオン性基、嵩高い基若しくは塩基修飾ヌクレオシドから選択される嵩高い基であってもよく、ポリカチオン性基又は嵩高い基がヌクレオシドの核酸塩基に付着している。
【0012】
いくつかの実施形態において、ギャップのある環のギャップのある鎖は、伸長可能な3’末端を含み、本方法は、環状鎖の少なくとも一部をコピーするために伸長可能な3’末端を伸長することによって標的核酸をシーケンシングするステップをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、試料中の核酸をシーケンシングする方法であって、本方法は、ギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーを形成するステップであって、アダプターを試料中の二本鎖核酸の少なくとも1つの末端に付着させてアダプター付き核酸を形成することであって、アダプターの一方の鎖のみが切断部位を含み、アダプターがプライマー結合部位を含む、アダプター付き核酸を形成することと;アダプター付き核酸のそれぞれの末端を結合させて、環状のアダプター付き核酸を形成することと;環状のアダプター付き核酸を、切断部位を認識する切断剤と接触させて、環状のアダプター付き核酸のそれぞれにおける一方の鎖のみの一部を除去し、それにより、伸長可能な3’末端を有するギャップのある鎖と環状鎖とを有する、ギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーを形成することとを含む、ギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーを形成するステップと;環状鎖の少なくとも一部をコピーするために伸長可能な3’末端を伸長させ、それにより、合成によるシーケンシング法によってギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーをシーケンシングするステップとを含む。本方法は、シーケンシングの前に核酸鋳型を濃縮するステップをさらに含み得る。シーケンシングの間、3’末端は、環状鎖を複数回コピーするように伸長され、シーケンシングは、3’末端を伸長して環状鎖を複数回コピーすることに由来する複数のリードを比較することによって、及び任意に、本明細書に記載される方法によってシーケンシングされた相補鎖のコンセンサス配列を比較することによって、コンセンサス配列を決定するステップを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明は、ギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーを形成する方法であって、その方法は、アダプターを試料中の二本鎖核酸の少なくとも1つの末端に付着させてアダプター付き核酸を形成するステップであって、アダプターの一方の鎖が切断部位を含む、アダプター付き核酸を形成するステップと;アダプター付き核酸のそれぞれの末端を結合させて、環状のアダプター付き核酸を形成するステップと;環状のアダプター付き核酸を、切断部位を認識する切断剤と接触させて、環状のアダプター付き核酸のそれぞれにおける一方の鎖のみの一部を除去し、それにより、ギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーを形成するステップとを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明は、ギャップのある環形核酸鋳型の濃縮されたライブラリーを形成する方法であって、本方法は、アダプターを試料中の二本鎖核酸の少なくとも1つの末端に付着させてアダプター付き核酸を形成するステップと、アダプター付き核酸に、捕捉部分を有する第1の標的特異的プライマーをハイブリダイズさせるステップと;第1のプライマーにハイブリダイズしたアダプター付き核酸を捕捉部分を介して捕捉し、それにより標的核酸を濃縮すること;濃縮されて適合された標的核酸に、1つ又は複数の切断部位の配列を含む第2のプライマーをハイブリダイズさせるステップと;第2のプライマーを伸長して、一方の鎖のみに1つ又は複数の切断部位を有する二本鎖のアダプター付き核酸を形成するステップと;二本鎖のアダプター付き核酸のそれぞれの末端を結合させて、環状のアダプター付き核酸を形成するステップと;環状のアダプター付き核酸を、切断部位を認識する切断剤と接触させて、環状のアダプター付き核酸のそれぞれにおける一方の鎖のみの一部を除去し、それにより、濃縮されたギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーを形成するステップとを含む。本方法は、捕捉部分を捕捉する前に第1のプライマーを伸長するステップをさらに含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明は、ギャップのある環形核酸鋳型の濃縮されたライブラリーを形成する方法であって、本方法は、アダプターを試料中の二本鎖核酸の少なくとも1つの末端に付着させてアダプター付き核酸を形成するステップと、アダプター付き核酸に、捕捉部分を有する第1の標的特異的プライマーをハイブリダイズさせるステップと;第1のプライマーにハイブリダイズしたアダプター付き核酸を捕捉部分を介して捕捉するステップと;捕捉されたアダプター付き核酸に、第1のプライマーと同じ鎖にハイブリダイズする第2のプライマーをハイブリダイズさせるステップと;ハイブリダイズした第2のプライマーを伸長することによって、二本鎖のアダプター付き核酸を生成し、捕捉部分を含む第1のプライマーを置換するステップと;第2のプライマーにハイブリダイズしたアダプター付き核酸内のアダプターに、1つ又は複数の切断部位の配列を含む第3のプライマーをハイブリダイズさせるステップと;第3のプライマーを伸長して、1つ又は複数の切断部位を有する二本鎖のアダプター付き核酸を形成するステップと;1つ又は複数の切断部位を有する二本鎖のアダプター付き核酸のそれぞれの末端を結合させて、環状のアダプター付き核酸を形成するステップと;環状のアダプター付き核酸を、切断部位を認識する切断剤と接触させて、環状のアダプター付き核酸のそれぞれにおける一方の鎖の一部を除去し、それにより、濃縮されたギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーを形成するステップとを含む。第1のプライマーは、捕捉部分を捕捉する前に伸長され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】二本鎖ギャップ環を形成する一般的なスキームを示す。
図2】ニッキング部位がテール化PCRプライマーを介して導入された酵素認識配列である二本鎖ギャップ環を形成する方法を示す。
図3】ニッキング部位がテール化PCRプライマーを介して導入されたウラシルである二本鎖ギャップ環を形成する方法を示す。
図4】ゲル電気泳動によって分析された環形成の産物を示す。
図5】制限酵素消化及びゲル電気泳動によって分析された、ギャップのある環の形成の産物を示す。
図6】アダプターライゲーション及びプライマー伸長を含むワークフローを示す。
図7】標的濃縮の追加のステップを有する二本鎖ギャップ環を形成する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用する技術的及び科学的用語は、当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,4th Ed.Cold Spring Harbor Lab Press(2012)を参照されたい。
【0019】
以下の定義は、本開示の理解を容易にするために提供される。
【0020】
「アダプター」という用語は、別の配列に追加の要素及び特性をもたらすために該配列に付加することができるヌクレオチド配列を指す。さらなる要素としては、限定されないが、バーコード、プライマー結合部位、捕捉部分、標識、二次構造が挙げられる。
【0021】
「バーコード」という用語は、検出及び同定することができる核酸配列を指す。バーコードは、一般に、2ヌクレオチド以上かつ約50ヌクレオチドまでの長さであり得る。バーコードは、集団中の他のバーコードとの少なくとも最小数の違いを有するように設計される。バーコードは、試料中の各分子に固有であってもよいし、試料に固有であってもよく、試料中の複数の分子によって共有されてもよい。「多重識別子」、「MID」又は「試料バーコード」という用語は、試料又は試料の供給源を識別するバーコードを指す。したがって、単一の供給源又は試料由来の全て又は実質的に全てのMIDバーコード化ポリヌクレオチドは、同じ配列のMIDを共有するが、異なる供給源又は試料由来の全て又は実質的に全て(例えば、少なくとも90%又は99%)のMIDバーコード化ポリヌクレオチドは、異なるMIDバーコード配列を有する。MIDバーコードにコードされた試料情報を維持しながら、異なるMIDを有する異なる供給源からのポリヌクレオチドを混合し、並行してシーケンシングすることができる。「固有の分子識別子」又は「UID」という用語は、それが付着しているポリヌクレオチドを識別するバーコードを指す。典型的には、UIDバーコード化ポリヌクレオチドの混合物中の全て又は実質的に全て(例えば、少なくとも90%又は99%)のUIDバーコードは固有である。
【0022】
「DNAポリメラーゼ」という用語は、デオキシリボヌクレオチドからポリヌクレオチドの鋳型指向合成を行う酵素を指す。DNAポリメラーゼには、原核生物Pol I、Pol II、Pol III、Pol IV及びPol V、真核生物DNAポリメラーゼ、古細菌DNAポリメラーゼ、テロメラーゼ及び逆転写酵素が含まれる。用語「熱安定性ポリメラーゼ」とは、熱に対して安定であり、耐熱性であり、かつ、二本鎖核酸の変性を行うのに必要な時間にわたり高温に曝された場合に、続いてポリヌクレオチド伸長反応を行うのに充分な活性を保持し、不可逆的に変性(不活性化)されない、酵素を指す。熱安定性ポリメラーゼは、熱サイクリングを必要とする核酸の増幅、例えばPCRに使用される。
【0023】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、合成によるシーケンシングに適した特性、特に国際公開第2013/188841号に記載されているナノポアを利用するチップベースのポリヌクレオチドシーケンシングに適した特性を有する。そのようなポリメラーゼの非限定的な例は、米国特許第10308918号に記載されている。DNAのシーケンシングに使用されるポリメラーゼの所望の特徴としては、限定されないが、遅いkoff(修飾ヌクレオチドについて)、速いkon(修飾ヌクレオチドについて)、高忠実度、低い又は欠如したエキソヌクレアーゼ活性、鎖置換活性、より速いkchem(修飾ヌクレオチド基質について)、増加した安定性、加工性、シーケンシング精度及び長いリード長、すなわち長い連続リードが挙げられる。本発明の文脈において、鎖置換活性が必要である。鎖置換活性は、米国特許第10308918号に記載されている置換アッセイによって実験的に決定することができる。このアッセイは、ポリメラーゼが二本鎖DNAを巻き戻して置換する能力を特徴付ける。
【0024】
「核酸」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖又は二本鎖形態のデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)及びそれらのポリマーを指す。具体的に限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する。特に示されない限り、特定の核酸配列はまた、暗に、それらの保存的に修飾されたバリアント(例えば、縮重コドン置換体)、対立遺伝子、オルソログ、SNP及び、相補的配列、同様に、明示された配列を包含する。
【0025】
「プライマー」という用語は、一本鎖鋳型核酸分子の特定の領域に結合するオリゴヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼ媒介酵素反応を介して核酸合成を開始するために使用され得る。典型的には、プライマーは約100個未満のヌクレオチドを含み、好ましくは約30個未満のヌクレオチドを含む。標的特異的プライマーは、ハイブリダイゼーション条件下で標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする。そのようなハイブリダイゼーション条件には、等温増幅緩衝液(20mM Tris-HCl、10mM(NHSO)、50mM KCl、2mM MgSO、0.1% TWEEN(登録商標)20、pH8.8、25 °C)中、約40 °C~約70 °Cの温度でのハイブリダイゼーションが含まれ得るが、これらに限定されない。標的結合領域に加えて、プライマーは、典型的には5’部分に追加の領域を有し得る。追加の領域は、ユニバーサルプライマー結合部位又はバーコードを含み得る。他の任意の配列又は配列要素は、5’-ハンドルと呼ばれることもある5’-テールを介して導入することができる。プライマーはまた、鎖合成以外の目的、例えば核酸分子内の特定の部位にハイブリダイズすることによって核酸分子に要素を導入するために使用され得る。
【0026】
「試料」という用語は、典型的にはDNA又はRNAを含む核酸分子を含む任意の生物学的試料を指す。試料は、組織、細胞又はそれらの抽出物であり得るか、又は核酸分子の精製試料であり得る。「試料」という用語は、標的核酸を含有する、又は含有すると推定される任意の組成物を指す。「試料」という用語の使用は、試料中に存在する核酸分子間の標的配列の存在を必ずしも意味しない。試料は、個体から単離された組織又は流体の試料、例えば、皮膚、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、滑液、尿、涙、血球、器官及び腫瘍の標本、並びにホルマリン固定されたパラフィン包埋組織(FFPET)及びそこから単離された核酸を含む個体から採取された細胞から確立されたインビトロ培養物の試料であり得る。試料には、無細胞DNA(cfDNA)又は循環腫瘍DNA(ctDNA)を含有する無細胞血液画分などの無細胞材料も含まれ得る。試料は、非ヒト対象又は環境から収集することができる。
【0027】
「標的」又は「標的核酸」という用語は、試料中の目的の核酸を指す。試料は、複数の標的並びに各標的の複数のコピーを含み得る。
【0028】
「ユニバーサルプライマー」という用語は、ユニバーサルプライマー結合部位にハイブリダイズすることができるプライマーを指す。ユニバーサルプライマー結合部位は、標的特異的でない様式で標的配列に典型的に付加される天然又は人工の配列であり得る。
【0029】
シーケンシングワークフローの重要な態様は、核酸鋳型の構造及び構成である。今日利用可能なシーケンシングの方法及び装置の中で、いくつかは環状核酸鋳型に依存するか又は最も適している。トポロジー的に環状の核酸構造を作製する1つの一般的な方法は、ステムループ(「ダンベル」)アダプターを線状核酸断片の末端に付着させることを含む(米国特許第8153375号明細書参照)。本明細書では、本明細書で互換的にギャップのある環又は二本鎖ギャップ環と呼ばれる一本鎖領域(ギャップ)を有する二本鎖環からなる新規の構造が開示される。
【0030】
本発明は、試料からの標的核酸をシーケンシングすることを含む。いくつかの実施形態では、試料は、対象又は患者に由来する。いくつかの実施形態では、試料は、例えば、生検によって、対象又は患者に由来する固形組織又は固形腫瘍の断片を含み得る。試料は、体液(例えば、尿、痰、血清、血漿又はリンパ、唾液、痰、汗、涙、脳脊髄液、羊水、滑液、心膜液、腹水、胸水、嚢胞液、胆汁、胃液、腸液、又は糞便試料)も含み得る。試料は、正常細胞又は腫瘍細胞が存在し得る全血又は血液画分を含み得る。いくつかの実施形態では、試料、特に液体試料は、無細胞腫瘍DNA又は腫瘍RNAを含む無細胞DNA又はRNAなどの無細胞材料を含み得る。いくつかの実施形態では、試料は、無細胞試料、例えば、無細胞腫瘍DNA又は腫瘍RNAが存在する無細胞血液由来試料である。他の実施形態では、試料は、培養試料、例えば培養物中の細胞又は培養物中に存在する感染因子に由来する核酸を含有するか又は含有すると疑われる培養物又は培養上清である。いくつかの実施形態では、感染性因子は、細菌、原生動物、ウイルス又はマイコプラズマである。
【0031】
標的核酸は、試料中に存在する可能性がある、関心対象の核酸である。各標的は、その核酸配列によって特徴付けられる。本発明は、1つ又は複数のRNA又はDNA標的の検出を可能にする。いくつかの実施形態では、DNA標的核酸は、遺伝子又は遺伝子断片(エクソン及びイントロンを含む)又は遺伝子間領域であり、RNA標的核酸は、標的特異的プライマーがハイブリダイズする転写物又は転写物の一部である。いくつかの実施形態では、標的核酸は、遺伝子バリアントの遺伝子座、例えば、一塩基多型若しくはバリアント(SNVのSNP)を含む多型、又は、例えば、遺伝子融合をもたらす遺伝子再配列を含有している。いくつかの実施形態では、標的核酸は、バイオマーカー、すなわち、そのバリアントが疾患又は状態に関連する遺伝子を含む。例えば、標的核酸は、2015年9月10日に出願された米国特許出願第14/774,518号に記載されている疾患関連マーカーのパネルから選択することができる。そのようなパネルは、AVENIO ctDNA分析キット(Roche Sequencing Solutions,Pleasanton,Cal.)として入手可能である。他の実施形態では、標的核酸は、特定の生物に特徴的であり、生物又は薬剤感受性若しくは薬剤耐性などの病原性生物の特徴の同定を助ける。さらに他の実施形態では、標的核酸は、ヒト対象の固有の特徴、例えば、対象の固有のHLA又はKIR遺伝子型を規定するHLA又はKIR配列の組み合わせである。さらに他の実施形態では、標的核酸は、免疫グロブリン(IgG、IgM及びIgA免疫グロブリンを含む)又はT細胞受容体配列(TCR)を表す再編成された免疫配列などの体細胞配列である。さらに別の適用では、標的は、胎児の疾患若しくは状態又は妊娠に関連する母体の状態に特徴的な胎児配列を含む、母体血液中に存在する胎児配列である。例えば、標的は、Zhang et al.(2019)Non-invasive prenatal sequencing for multiple Mendelian monogenic disorders using circulating cell-free fetal DNA,Nature Med.25(3):439に記載の常染色体又はX連鎖障害の1つ又は複数であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、標的核酸はRNAである(mRNA、マイクロRNA、ウイルスRNAを含む)。他の実施形態では、標的核酸は、細胞DNAを含むDNA又は循環腫瘍DNA(ctDNA)を含む無細胞DNA(cfDNA)である。標的核酸は、短い形態又は長い形態で存在し得る。より長い標的核酸は断片化され得る。いくつかの実施形態では、標的核酸は、天然に断片化されており、例えば、循環無細胞DNA(cfDNA)又は化学的に保存された試料若しくは古い試料に見られるものなどの化学的に分解されたDNAを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明は、核酸単離のステップを含む。一般に、DNA又はRNAを含む単離された核酸を生じる任意の核酸抽出方法が使用され得る。ゲノムDNA又はRNAは、溶液ベース又は固相ベースの核酸抽出技術を使用して、組織、細胞、液体生検試料(血液又は血漿試料を含む)から抽出され得る。核酸抽出には、洗浄剤ベースの細胞溶解、核タンパク質の変性、及び任意に、汚染物質の除去が含まれ得る。保存された試料からの核酸の抽出は、脱パラフィン化のステップをさらに含み得る。溶液ベースの核酸抽出方法は、塩析方法又は有機溶媒若しくはカオトロープ法を含み得る。固相核酸抽出方法には、シリカ樹脂法、陰イオン交換法又は磁性ガラス粒子及び常磁性ビーズ(KAPA Pure Beads,Roche Sequencing Solutions,Pleasanton,Cal.)又はAMPureビーズ(Beckman Coulter,Brea,Cal.)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0034】
典型的な抽出方法は、試料中に存在する組織材料及び細胞の溶解を含む。溶解された細胞から放出された核酸は、溶液中又はカラム又は膜中に存在する固体支持体(ビーズ又は粒子)に結合することができ、核酸は、タンパク質、脂質及びその断片を含む汚染物質を試料から除去するために1又は複数の洗浄ステップを受けることができる。最後に、結合した核酸を固体支持体、カラム、又は膜から解放し、さらなる処理の準備ができるまで適切なバッファー中に保存することができる。DNA又はRNAが単離されているかどうかに応じて、適切なヌクレアーゼ又はヌクレアーゼ阻害剤を使用して、1種類の核酸のみを優先的に単離することができる。DNAとRNAの両方を単離する場合、核酸の単離及び精製プロセス中に、ヌクレアーゼ及び任意にヌクレアーゼ阻害剤を使用しなくてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態において、インプットDNA又はインプットRNAは断片化を必要とする。そのような実施形態では、RNAは、熱及び金属イオン、例えばマグネシウムの組み合わせによって断片化され得る。いくつかの実施形態において、試料をマグネシウムの存在下で1~6分間85°-94℃に加熱する。(KAPA RNA HyperPrepキット、KAPA Biosystems,Wilmington,Mass).DNAは、利用可能な機器(Covaris,Woburn.Mass.)又は酵素的手段(KAPA Fragmentaseキット、KAPA Biosystems)を使用して、物理的手段、例えば超音波処理によって断片化することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、単離された核酸をDNA修復酵素で処理する。いくつかの実施形態では、DNA修復酵素は、5’-3’ポリメラーゼ活性及び3’-5’一本鎖エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、dsDNA分子に5’リン酸を付加するポリヌクレオチドキナーゼ、及びdsDNA分子の3’末端に単一dA塩基を付加するDNAポリメラーゼを含む。末端修復/Aテール化キット、例えば、Kapa Library Preparation、KAPA Hyper Prep及びKAPA HyperPlusを含むキット(Kapa Biosystems,Wilmington,Mass.)が利用可能である。
【0037】
いくつかの実施形態では、DNA修復酵素は、単離された核酸中の損傷塩基を標的とする。いくつかの実施形態では、試料核酸は、保存試料、例えばホルマリン固定パラフィン包埋(FFPET)試料からの部分的に損傷したDNAである。塩基の脱アミノ化及び酸化は、シーケンシングのプロセス中に誤った塩基リードをもたらし得る。いくつかの実施形態では、損傷したDNAは、ウラシルN-DNAグリコシラーゼ(UNG/UDG)及び/又は8-オキソグアニンDNAグリコシラーゼで処理される。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明は、アダプター核酸を利用する。アダプターは、平滑末端ライゲーション又は粘着性(cohesive)末端ライゲーションによって核酸に付加され得る。いくつかの実施形態では、アダプターは、一本鎖ライゲーション法によって付加され得る。いくつかの実施形態では、アダプター分子は、インビトロ合成人工配列である。他の実施形態では、アダプター分子は、インビトロ合成天然配列である。さらに他の実施形態では、アダプター分子は、分離した天然分子又は分離した非天然分子である。
【0039】
ライゲーションによって付加されたアダプターの場合、アダプターオリゴヌクレオチドは、標的核酸にライゲーションされる末端にオーバーハング又は平滑末端を有することができる。いくつかの実施形態では、アダプターは、標的核酸の平滑末端ライゲーションを適用することができる平滑末端を含む。標的核酸は、平滑末端化され得るか、又は酵素処理(例えば「末端リペア」)によって平滑末端にすることができる。他の実施形態では、平滑末端DNAは、単一のAヌクレオチドが一方又は両方の平滑末端の3’末端に付加されるAテール化を受ける。本明細書中に記載されるアダプターは、核酸とアダプターとの間のライゲーションを容易にするために平滑末端から伸長する単一のTヌクレオチドを有するように作製される。アダプターライゲーションを行うための市販のキットには、AVENIO ctDNA Library Prepキット又はKAPA HyperPrep及びHyperPlusキット(Roche Sequencing Solutions,Pleasanton,Cal.)が含まれる。いくつかの実施形態において、アダプターがライゲーションされたDNAは、過剰なアダプター及びライゲーションしなかったDNAから分離され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、アダプターは、ニッキングエンドヌクレアーゼ認識配列又はデオキシウラシルを含む本明細書に記載の1つ又は複数の新規要素を含む。アダプターは、ユニバーサルプライマー結合部位(シーケンシングプライマー結合部位を含む)、バーコード配列(試料バーコード(SID)又は固有の分子バーコード又は識別子(UID又はUMI)を含む)などの特徴をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、アダプターは上記の特徴の全てを含むが、他の実施形態では、上記の要素のいくつかを含有するテール化プライマーを伸長することによって、アダプターのライゲーション後に特徴のいくつかが追加される。
【0041】
アダプターは、捕捉部分をさらに含み得る。捕捉部分は、別の捕捉分子と特異的に相互作用することができる任意の部分であり得る。捕捉部分-捕捉分子対には、アビジン(ストレプトアビジン)-ビオチン、抗原-抗体、磁性(常磁性)粒子-磁石、又はオリゴヌクレオチド-相補的オリゴヌクレオチドが含まれる。捕捉分子は固体支持体に結合することができ、それにより、捕捉部分が存在する任意の核酸が固体支持体上に捕捉され、試料の残り又は反応混合物から分離される。いくつかの実施形態では、捕捉分子は、二次捕捉分子の捕捉部分を含む。例えば、アダプター中の捕捉部分は、捕捉オリゴヌクレオチドに相補的な核酸配列であり得る。捕捉オリゴヌクレオチドは、アダプター付き核酸-捕捉オリゴヌクレオチドのハイブリッドがストレプトアビジンビーズ上に捕捉され得るようにビオチン化され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明はバーコードを利用する。個々の分子の検出は通常、米国特許第7,393,665号、同第8,168,385号、同第8,481,292号、同第8,685,678号、及び同第8,722,368号に説明されているような分子バーコードを必要とする。固有の分子バーコードは、通常インビトロ操作の最初のステップの間に患者の試料中の各分子に付加される、短い人工配列である。バーコードは分子とその子孫を標識する。固有分子バーコード(unique molecular barcode:UID)には複数の用途がある。バーコードは、生検なしで癌を検出及び監視するために、試料中の個々の核酸分子を追跡して、例えば患者の血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA)分子の存在及び量を評価することを可能にする(Newman,A.,et al.,(2014)An ultrasensitive method for quantitating circulating tumor DNA with broad patient coverage,Nature Medicine doi:10.1038/nm.3519)。
【0043】
バーコードは、試料が混合(多重化)される試料の源を同定するために使用される多重試料ID(MID)であってもよい。バーコードはまた、各元の分子及びその子孫を同定するために使用される固有分子ID(UID)としても機能する。バーコードはまた、UIDとMIDとの組合せであってもよい。いくつかの実施形態では、単一のバーコードが、UID及びMIDの両方として使用される。いくつかの実施形態では、各バーコードは、所定の配列を含む。他の実施形態では、バーコードは、ランダム配列を含む。本発明のいくつかの実施形態において、バーコードは約4~20塩基長であり、したがって、96個~384個の異なるアダプター(それぞれ、同一バーコードの異なる対を有する)が、ヒトゲノム試料に付加される。当業者は、バーコードの数が試料の複雑さ(すなわち、固有の標的分子の予想数)に依存し、各実験に適した数のバーコードを作成することができることを認識するであろう。
【0044】
固有の分子バーコードはまた、分子計数及びシーケンシングのエラー訂正に使用することもできる。単一の標的分子の子孫全体が同じバーコードで標識され、バーコード化されたファミリーを形成する。バーコード化されたファミリーの全メンバに共有されていない配列の変動は、人工物として廃棄され、これは真の突然変異ではない。ファミリー全体が元の試料中の単一分子を表すので、バーコードは位置重複排除及び標的定量にも使用することができる(Newman,A.,et al.,(2016)Integrated digital error suppression for improved detection of circulating tumor DNA,Nature Biotechnology 34:547)。
【0045】
いくつかの実施形態では、複数のアダプター中のUIDの数は、複数の核酸中の核酸の数を超え得る。いくつかの実施形態では、複数の核酸中の核酸の数は、複数のアダプター中のUIDの数を超える。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明は、シーケンシング中に鋳型のナノポアへの通り抜け(threading)を防止する構造及び方法をさらに含む。これは、ナノポアを利用するがナノポアへの核酸の通り抜け(threading)を含まないシーケンシング方法にとって特に有利である。(例えば、米国特許第8461854号を参照されたい)。
【0047】
この実施形態では、この方法は、本明細書で説明するように形成されたギャップのある環のギャップ部分に通り抜け(threading)防止構造を挿入するステップを含む。具体的には、オリゴヌクレオチドプライマーは、ギャップ内の結合部位に結合し得る。プライマーに対する結合部位は、アダプター中に存在することによって、ギャップのある環形核酸鋳型に組み込まれる。(図1図2及び図3、特に図7を参照されたい)。
【0048】
いくつかの実施形態では、ライゲーションによって核酸鋳型に付加されたアダプターは、プライマー結合部位を含む。他の実施形態では、ライゲーションによって核酸鋳型に付加された2つのアダプターの各々は、環状化した際に完全なプライマー結合部位が環状鋳型において形成されるように、プライマー結合部位の一部を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、プライマー伸長によって核酸鋳型に付加されたアダプターは、プライマー結合部位を含む。例えば、プライマーの1つはプライマー結合部位を含み得る。他の実施形態では、プライマー伸長に使用される2つのプライマーの各々は、プライマー伸長及び環状化した際に完全なプライマー結合部位が環状鋳型において形成されるように、プライマー結合部位の一部を含む。
【0050】
プライマー結合部位へのプライマーのアニーリングは、例えば、ギャップのある核酸鋳型中のギャップのある鎖へのライゲーションによって付着され得る。プライマーは、5’末端に通り抜け(threading)ブロッカー構造を含む。プライマーのアニーリング及びライゲーションの際に、ギャップのある核酸鋳型中のギャップのある鎖は、5’末端に通り抜け(threading)ブロッカー構造を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、ブロッキング構造はビオチンである(図2、右下、図3、右下)。
【0052】
他の実施形態では、鋳型鎖のナノポアへの通り抜け(threading)を防止するブロッキング構造はヘアピン構造である。適切なヘアピン構造の例は、2019年11月15日に出願され、「Structure to prevent threading of nucleic acid templates through a nanopore during sequencing」と題する米国仮特許出願第62/936264号明細書に記載されている。
【0053】
他の実施形態では、鋳型鎖のナノポアへの通り抜け(threading)を防止するブロッキング構造は、プライマーの5’末端に付着し、ポリカチオン性基、傘高い基又は塩基修飾ヌクレオシドから選択される化学部分であり、ポリカチオン性基又は傘高い基がヌクレオシドの核酸塩基に付着している(例えば、2020年2月6日に出願され「Compositions that reduce template threading into a nanopore」と題する米国仮特許出願第62/971078号を参照のこと)。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明は、線形又は指数関数的増幅を含む増幅ステップを含む。増幅は等温であってもよく、又は熱サイクリングを含んでもよい。いくつかの実施形態では、増幅は指数関数的であり、PCRを伴う。いくつかの実施形態では、遺伝子特異的プライマーが増幅のために使用される。他の実施形態において、ユニバーサルプライマー結合部位は、例えば、ユニバーサルプライマー結合部位を含むアダプターをライゲーションすることによって標的核酸に付加される。全てのアダプター連結核酸は、同じユニバーサルプライマー結合部位を有し、同じプライマーセットで増幅することができる。ユニバーサルプライマーが使用される増幅サイクルの数は少なくてもよいが、その後のステップに必要な産物の量に応じて、10、20、又は約30以上の高いサイクルであってもよい。ユニバーサルプライマーを用いたPCRは配列バイアスが低減されているので、増幅バイアスを回避するために増幅サイクルの数を限定する必要はない。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明は、例えば、アダプターをライゲーションする前若しくは後、又は5’テール化(「ハンドル」)プライマーを伸長する前若しくは後の増幅ステップを含む。増幅プライマーは、標的特異的であり得る。標的特異的プライマーは、標的中の配列に相補的な少なくとも一部を含む。バーコード、第2のプライマー結合部位又はヌクレアーゼ認識部位などの追加の配列が存在する場合、それらは典型的にはプライマーの5’部分に位置する。他の実施形態では、プライマーはユニバーサルであり、例えば、標的配列にかかわらず試料中の全ての核酸を増幅することができる。ユニバーサルプライマーは、ユニバーサルプライマー結合部位を有するプライマーを伸長することによって、又はユニバーサルプライマー結合部位を有するアダプターをライゲーションすることによって、試料中の核酸に付加されたユニバーサルプライマー結合部位にアニールする。
【0056】
プライマーはまた、本明細書に記載の標的核酸を濃縮するための捕捉プローブとして使用され得る。プライマー及びプローブという用語は、特定の条件下でその標的に結合する短いオリゴヌクレオチドを指すために交換可能に使用され得る。本明細書に開示されるように(図6)、捕捉部分を有するオリゴヌクレオチドを使用して、捕捉された所望の核酸を保持することによって、又は捕捉された望ましくない核酸を枯渇させることによって、標的核酸を濃縮することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のように形成された標的核酸のライブラリーである。ライブラリーは、元の試料中に存在する核酸標的を含む二本鎖核酸分子を含む。ライブラリーの核酸分子は、標的核酸配列の一方又は両方の末端に本明細書に記載の新規アダプターをさらに含む。ライブラリー核酸は、バーコード及びプライマー結合部位などの追加の要素を含み得る。いくつかの実施形態では、追加の要素は、アダプター中に存在し、アダプターのライゲーションを介してライブラリー核酸に付加される。他の実施形態では、追加の要素の一部又は全部は、増幅プライマー中に存在し、プライマーの伸長によるアダプターのライゲーションの前にライブラリー核酸に添加される。増幅は、線形(伸長の1ラウンドのみを含む)又は指数関数的、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり得る。いくつかの実施形態では、いくつかの追加の要素は、プライマー伸長によって付加され、一方、残りの追加の要素は、アダプターのライゲーションによって付加される。
【0058】
シーケンシングされる核酸のライブラリーに追加の要素を導入するためのアダプター及び増幅プライマーの有用性は、例えば、米国特許第9476095号、同第9260753号、同第8822150号、同第8563478号、同第7741463号、同第8182989号及び同第8053192号に記載されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明は、所望の標的核酸を濃縮するステップをさらに含む。所望の核酸は、本明細書に記載の新規のライブラリー形成方法に従ってライブラリーを形成する前に濃縮することができる。あるいは、ehライブラリーが形成された後に、すなわちライブラリーの分子上で濃縮を行うことができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、本方法は、標的特異的オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、捕捉プローブ)のプールを利用する。濃縮は、減算によるものであり得、この場合、捕捉プローブは、リボソームRNA(rRNA)又は豊富に発現される遺伝子(例えば、グロビン)を含む豊富な望ましくない配列に相補的である。減算の場合、望ましくない配列は、捕捉プローブによって捕捉され、標的核酸の混合物又は核酸のライブラリーから除去され、廃棄される。例えば、捕捉プローブは、固体支持体上に捕捉され得る結合部分を含み得る。
【0061】
他の実施形態では、濃縮は捕捉及び保持であり、この場合、捕捉プローブは1つ又は複数の標的配列に相補的である。この場合、標的配列は、捕捉プローブによって標的核酸の混合物又は核酸のライブラリーから捕捉され、溶液の残りの部分が廃棄される間保持される。
【0062】
濃縮のために、捕捉プローブは、溶液中に遊離していてもよく、又は固体支持体に固定されていてもよい。プローブは、例えば、米国特許第9,790,543号に記載されている方法によって作製及び増幅することができる。プローブはまた、結合部分(例えば、ビオチン)を含み得、固体支持体(例えば、アビジン又はストレプトアビジン含有支持材料)上に捕捉され得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、濃縮は、プライマー伸長標的濃縮(PETE)によるものである。PETEの複数のバージョンは、米国特許出願公開第14/910,237号、第15/228,806号、第15/648,146号及び国際出願第PCT/EP2018/085727号に記載されている。
【0064】
簡潔には、プライマー伸長標的濃縮(PETE)は、捕捉部分を含む第1の標的特異的プライマーで核酸を捕捉し、捕捉部分を捕捉し、それによって標的核酸を濃縮することを含む。任意のさらなる標的特異的プライマー又はアダプター特異的プライマーは、濃縮された標的核酸にハイブリダイズする。他の実施形態では、PETEは、捕捉部分を含む第1のプライマーをハイブリダイズ及び伸長させて、捕捉部分を捕捉することによって核酸を捕捉し、それによって標的核酸を濃縮することと、捕捉した核酸に第2の標的特異的プライマーをハイブリダイズさせて、第2の標的特異的プライマーを伸長させて、それによって第1の標的特異的プライマーの伸長産物を置換して、標的核酸をさらに濃縮させることとを含む。
【0065】
濃縮は、捕捉部分を利用し得る。捕捉部分は、別の捕捉分子と特異的に相互作用することができる任意の部分であり得る。捕捉部分-捕捉分子対には、アビジン(ストレプトアビジン)-ビオチン、抗原-抗体、磁性(常磁性)粒子-磁石、又はオリゴヌクレオチド-相補的オリゴヌクレオチドが含まれる。捕捉分子は固体支持体に結合することができ、それにより、捕捉部分が存在する任意の核酸が固体支持体上に捕捉され、試料の残り又は反応混合物から分離される。いくつかの実施形態では、捕捉分子は、二次捕捉分子の捕捉部分を含む。例えば、捕捉部分は、捕捉オリゴヌクレオチド(捕捉分子)に相補的なオリゴヌクレオチドであり得る。捕捉オリゴヌクレオチドをビオチン化し、ストレプトアビジンビーズ上に捕捉することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、捕捉部分を捕捉し、試料中の非ライゲーション核酸から、アダプターがライゲーションした標的核酸を分離することによって、アダプターがライゲーションした核酸を濃縮する。
【0067】
いくつかの実施形態において、底部アダプター鎖の3’末端にハイブリダイズした第3のオリゴヌクレオチドは、シーケンシングプライマー又は増幅プライマーとして働く。いくつかの実施形態において、第3のオリゴヌクレオチドの伸長産物は、捕捉部分を介して捕捉される。伸長産物の捕捉は、伸長産物を、ライゲーションされていない試料核酸から、及び任意に、捕捉部分を有さない標的核酸鎖からも分離する。
【0068】
いくつかの実施形態において、アダプターのステム部分は、捕捉オリゴヌクレオチドの融解温度を上昇させる修飾ヌクレオチド、例えば、5-メチルシトシン、2,6-ジアミノプリン、5-ヒドロキシブチン-2’-デオキシウリジン、8-アザ-7-デアザグアノシン、リボヌクレオチド、2’O-メチルリボヌクレオチド又はロックド核酸を含む。別の態様では、捕捉オリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼによる消化、例えばホスホロチオエートヌクレオチドによる消化を阻害するように修飾される。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明は中間精製ステップを含む。例えば、過剰なプライマー及び過剰なアダプターなどの任意の未使用のオリゴヌクレオチドを、例えば、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィから選択されるサイズ選択方法によって除去する。いくつかの実施形態において、サイズ選択は、Beckman Coulter(Brea,Cal.)による固相可逆固定(SPRI)技術を使用して行うことができる。いくつかの実施形態では、捕捉部分(図2)を使用して、アダプターがライゲーションした核酸を、ライゲーションしていない核酸又は鋳型鎖からのプライマー伸長産物から捕捉及び分離する。
【0070】
いくつかの実施形態において、未反応の線状核酸、例えば、プライマー、プローブアダプター又はライゲーションされていない鋳型核酸は、エキソヌクレアーゼ消化によって反応混合物から除去される。いくつかの実施形態では、T7エキソヌクレアーゼ、T5エキソヌクレアーゼ、ラムダエキソヌクレアーゼ、又はエキソヌクレアーゼI、V若しくはVIIIによる消化を使用して、未反応の線状オリゴヌクレオチドと非環状化(線状)二本鎖のアダプター付き核酸との組み合わせを除去する。
【0071】
本発明は、単一分子シーケンサー、例えば合成によるシーケンシング法を行うナノポアシーケンサーによるシーケンシングに適した鋳型を形成する方法を含む。本方法は、環状鎖とギャップのある鎖とを有するギャップのある環形鋳型を形成することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、得られた二本鎖のアダプター付き核酸が鎖の一方のみに切断部位を有するように、二本鎖核酸の一方又は両方の末端にアダプターを付着させることを含む。(図1、上)。例えば、アダプター配列は、標的特異的3’部分又はランダム3’部分と、アダプター配列を含む5’-「ハンドル」とを有するプライマーを伸長することによって付加され得る(図2、左上、及び図3、左上)。フォワードプライマーはニッキング酵素認識部位を含み得、リバースプライマーは認識部位の逆相補を含む。切断部位がデオキシウラシルである実施形態では、フォワードプライマー及びリバースプライマーの一方のみが1つ又は複数のデオキシウラシルを含む。ウラシル耐性ポリメラーゼの使用は、増幅の各回においてdU含有プライマーの使用を可能にする。(図3、上の中央)。
【0072】
いくつかの実施形態において、切断部位を有するアダプターは、ライゲーションによって標的核酸に付加される。いくつかの実施形態では、組み合わせ戦略が使用される:プライマー結合部位を含むアダプターが標的核酸にライゲーションされる。1つ又は複数のニッキング部位を有する5’-ハンドルを含むプライマーを、アダプター付き核酸にハイブリダイズさせ、伸長させて、一方の鎖のみにニッキング部位を有する核酸を形成する。(図6
【0073】
切断部位の導入に続いて、二本鎖適合分子は自己環状化されて、鎖の一方のみが1つ又は複数の切断部位を有する環を形成する。(図1の中央、図2の右上、及び図3の右上)いくつかの実施形態では、自己環状化は、二本鎖適合分子の2つの末端のライゲーションによるものである。いくつかの実施形態では、ライゲーションを行うために、二本鎖適合分子中の2本の鎖の5’末端がリン酸化される。
【0074】
いくつかの実施形態では、二本鎖適合分子は、環状化の前に増幅される。
【0075】
いくつかの実施形態では、非環状化二本鎖適合分子は、反応混合物から除去される。いくつかの実施形態では、除去は、線状(非環状)核酸のみが感受性であるエキソヌクレアーゼ処理によって達成される。(図1の中央、図2の左下、及び図3の左下)。他の実施形態では、環状及び線状分子は、それらの物理的特性、例えば電気泳動移動の速度又はサイズ分離若しくはサイズ排除クロマトグラフィのカラムを通過する速度に基づいて分離される。
【0076】
いくつかの実施形態では、切断部位は、ニッキングエンドヌクレアーゼに対する認識部位である。例えば、いくつかのヘテロ二量体制限エンドヌクレアーゼの小サブユニットは、配列特異的DNAニッキング酵素として挙動し、認識部位の一方の鎖のみを切断する。Xu,et al.(2007)Discovery of natural nicking endonucleases Nb.BsrDI and Nb.BtsI and engineering of top-strand nicking variants from BsrDI and BtsI,NAR 35:4608.その後、異なる認識配列を有する他のニッキング酵素が発見又は操作され、市販されている(New England BioLabs,Ipswich,Mass.)。本発明の文脈において、一方の鎖のみにニッキング酵素部位を有する二本鎖のアダプター付き核酸を、製造業者が推奨する条件下で適切な緩衝液中で対応するニッキング酵素と共にインキュベートして、環状二本鎖適合分子の一方の鎖のみの切断及び1つ又は複数のニックの生成を達成する。(図1の下、図2の左下)。
【0077】
他の実施形態では、切断部位は、デオキシウリジンの形態でアダプターの一方の鎖にのみ存在する。いくつかの実施形態では、ウラシル含有アダプターは、ウラシルが環状二本鎖適合分子の一方の鎖にのみ存在するように、標的核酸の少なくとも1つの末端にライゲーションされる。他の実施形態では、ウラシル含有アダプターは、ウラシルを含むプライマーを伸長させることによって添加される。いくつかの実施形態では、ウラシル含有プライマー配列は、ウラシル耐性ポリメラーゼ、例えばQ5U(登録商標)DNAポリメラーゼ(New England BioLabs,Ipswich,Mass.)によってコピーされる。(図3、左上)。
【0078】
ウラシル塩基は、ウラシル-N-DNAグリコシラーゼ酵素(UNG又はUDG)を用いて環状二本鎖適合分子の一方の鎖から切り出すことができる。酵素は脱塩基部位を残し、それにより、リン-ジエステル結合の切断を引き起こしてニックをもたらす可能性がある。ニックの形成は、高温下及び(又は)アミン化合物の存在下で有利である。ニックは、脱塩基部位を認識するエンドヌクレアーゼ、例えばエンドヌクレアーゼVIIIでの処理によって導入することもできる。単一の調製物にグリコシラーゼ活性とエンドヌクレアーゼ活性を組み合わせた酵素試薬が市販されている(例えば、USER(登録商標)酵素、New England BioLabs)。
【0079】
本方法は、環状二本鎖適合分子の一方の鎖の1つ又は複数のニックの部位にギャップを形成するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、最も外側の切断部位間の距離は、約45塩基であるが、約10、20、30、40、50又は60塩基長又はその間の任意の数であってもよい。切断部位の数は、10塩基又は切断酵素認識部位のサイズに適合する任意の同様の距離ごとに約1つである。(図2の右上、図3の右上)。切断部位の配置は、二本鎖環状核酸中の1つの鎖の複数のニック(糖-リン酸骨格中の一本鎖切断)をもたらす。(図2の左下、図3の左下)。2つのニック間の核酸鎖断片は、二本鎖環状核酸から解離することができ、二本鎖環状核酸の鎖の1つにギャップを残す。(図1の下、図2の下中央、図3の下中央)いくつかの実施形態では、ニッキングに起因する断片を、適切な緩衝液中での温度上昇によって環状二本鎖適合分子から分離する。いくつかの実施形態において、ニッキングに起因する断片の変性は、除去される断片にハイブリダイズすることができる過剰なオリゴヌクレオチドとの競合によって促進される。
【0080】
いくつかの実施形態において、本方法は、通り抜け(threading)ブロック構造をギャップのある環形核酸鋳型分子のギャップに挿入することをさらに含む。ギャップに面する環状鎖の部分は、プライマー結合部位を含み得る。次いで、この方法は、オリゴヌクレオチドプライマーをギャップのある環のギャップ内のプライマー結合部位にアニーリング又はハイブリダイズさせるステップをさらに含む。プライマーは、ギャップのある環内のギャップのある鎖にライゲーションされ、したがってプライマーをギャップのある環の一方の鎖に付着させることができる。(図2の右下、図3の右下)。プライマーは、5’-末端に有利な構造又は修飾を含む(ギャップのある環の鎖にライゲーションされていないフリー末端)。いくつかの実施形態では、修飾は捕捉部分、例えばビオチンである。(図2の右下、図3の右下)。いくつかの実施形態では、本方法は、捕捉部分を捕捉分子で捕捉することによってギャップのある環形核酸鋳型を捕捉することをさらに含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、プライマーの5’末端修飾は、ポリカチオン性基、嵩高い基又は塩基修飾ヌクレオシドなどのナノポアへの鋳型の通り抜け(threading)を防止する化学基であり、ポリカチオン性基又は嵩高い基は、ヌクレオシドの核酸塩基に付着している。いくつかの実施形態において、鋳型のナノポアへの通り抜け(threading)を防止する基は、プライマーの5’末端によって形成されるヘアピン構造である。
【0082】
二本鎖ギャップ核酸鋳型中のギャップのある鎖の5’末端はフリーであってもよく、又は捕捉分子若しくはナノポアへの通り抜け(threading)を防止する構造によってブロックされていてもよいが、二本鎖ギャップ核酸鋳型中のギャップのある鎖の3’末端は伸長可能である。いくつかの実施形態では、本方法は、二本鎖ギャップ核酸鋳型中のギャップのある鎖の3’末端を伸長し、それによって、合成によるシーケンシング(SBS)法により核酸鋳型をシーケンシングするステップをさらに含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、本方法は、シーケンシングの前に、シード排除カラム又はアフィニティカラムを介して核酸を濃縮することによって、ギャップのある環形核酸鋳型を濃縮することをさらに含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、環状核酸鎖は、合成によるシーケンシング(SBS)プロセス中に複数回読み取られる。環状鎖の配列の複数のリードを使用して、シーケンシングエラーがないか又は実質的にない環状鎖のコンセンサス配列を決定する。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明に従って形成された鋳型又は鋳型のライブラリーは、1つ又は複数の標的核酸が濃縮されている。濃縮は、保持によるものであり得、すなわち、所望の配列が捕捉され、保持されるが、捕捉されていない配列は保持されず、任意に破棄される。他の実施形態では、濃縮は枯渇によるものであり、すなわち、望ましくない配列が捕捉され、試料又は反応混合物から除去され、一方で、所望の配列が試料中に残って保持される。
【0086】
図7に示されるように、いくつかの実施形態では、ギャップのある核酸鋳型の濃縮ライブラリーを形成する方法は、試料中の二本鎖核酸の少なくとも1つの末端にアダプターを付着させて、アダプター付き核酸を形成するステップを含む。次に、アダプター付き核酸を、捕捉部分を有する第1の標的特異的プライマーにハイブリダイズさせる。プライマーにハイブリダイズしたアダプター付き核酸は、捕捉部分を介して捕捉され、それによって標的アダプター付き核酸を濃縮する。いくつかの実施形態において、捕捉部分は、固体支持体に付着したリガンドによって捕捉される。捕捉された標的核酸を有する固体支持体は、アダプター付き核酸の残りを含む液相から分離される。分離後、捕捉された核酸は、濃縮された核酸として別の反応混合物に導入される。
【0087】
濃縮された核酸を、1つ又は複数の切断部位の配列を含む第2のプライマーと接触させる。いくつかの実施形態では、第2のプライマーの3’部分は、標的特異的配列又はアダプター付き核酸中のアダプターにハイブリダイズする配列を含む。第2のプライマーの5’部分は、1つ以上の切断部位を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のプライマーの5’部分は、ニッキング酵素に対する認識配列の形態の切断部位を含む。いくつかの実施形態において、プライマー中の切断部位は、ウラシル又はデオキシウラシルなどのウラシル含有ヌクレオチドである。この実施形態では、第2のプライマーの5’部分は任意である。代わりに、第2のプライマーの標的特異的部分中のチミンがウラシルに置き換えられる。
【0088】
第2のプライマーは伸長され、一方の鎖のみに1つ又は複数の切断部位を有する二本鎖のアダプター付き核酸を形成する。次に、二本鎖のアダプター付き核酸の末端を結合して、一方の鎖のみに切断部位を有する環状のアダプター付き核酸を形成する。次に、環状のアダプター付き核酸を、前記切断部位を認識する切断剤によって切断し、環状のアダプター付き核酸のそれぞれにおける一方の鎖のみの一部を除去し、それにより、濃縮されたギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーを形成する。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明に従って形成された鋳型又は鋳型のライブラリーは、異なる方法によって1つ又は複数の標的核酸が濃縮されている。ギャップのある核酸鋳型の濃縮ライブラリーを形成する方法の実施形態は、アダプター付き核酸を形成する試料中の二本鎖核酸の少なくとも1つの末端にアダプターを付着させるステップを含む。次に、アダプター付き核酸を、捕捉部分を有する第1の標的特異的プライマーにハイブリダイズさせる。任意に、ハイブリダイズしたプライマーは、標的核酸の鎖をコピーするために伸長される。プライマーにハイブリダイズしたアダプター付き核酸は、捕捉部分を介して捕捉され、それによって標的アダプター付き核酸を濃縮する。いくつかの実施形態において、捕捉部分は、固体支持体に付着したリガンドによって捕捉される。捕捉された標的核酸を有する固体支持体は、アダプター付き核酸の残りを含む液相から分離される。分離後、捕捉された核酸は、別の反応混合物に導入される。
【0090】
濃縮された標的核酸を含む反応混合物を、第1の標的特異的プライマーの内部で標的核酸にハイブリダイズする第2の標的特異的プライマーと接触させる。次いで、この方法は、ハイブリダイズした第2のプライマーを伸長し、それによって二本鎖のアダプター付き核酸を生成し、捕捉部分を含む第1のプライマー(又は第1のプライマー伸長産物)を置換し、標的核酸及び第2のプライマー伸長産物を溶液中に放出し、それによって溶液中の標的核酸をさらに濃縮することを含む。
【0091】
次に、この方法は、濃縮された核酸に、1つ又は複数の切断部位の配列を含む第3のプライマーをハイブリダイズさせることを含む。いくつかの実施形態において、第3のプライマーの3’部分は、標的特異的配列又はアダプター特異的配列を含み、第3のプライマーの5’部分は、1つ又は複数の切断部位を含む。いくつかの実施形態において、切断部位は、ニッキング酵素に対する認識配列である。いくつかの実施形態において、切断部位は、ウラシル又はデオキシウラシルであり、これらは、プライマーの標的特異的部分若しくはアダプター特異的部分又はプライマーのさらなる5’部分に配置され得る。
【0092】
次に、第3のプライマーを伸長して、1つ又は複数の切断部位を有する二本鎖のアダプター付き核酸を形成し;二本鎖のアダプター付き核酸のそれぞれの末端は自己結合して環状のアダプター付き核酸を形成する。環状のアダプター付き核酸を、前記切断部位を認識する切断剤によって切断し、環状のアダプター付き核酸のそれぞれにおける一方の鎖の一部を除去し、それにより、濃縮されたギャップのある環形核酸鋳型のライブラリーを形成する。
【0093】
本明細書に記載のように形成された核酸及び核酸のライブラリー又はそのアンプリコンは、核酸シーケンシングに供することができる。シーケンシングは、当技術分野で公知の任意の方法によって行うことができる。特に有利なのは、ナノポアを利用するハイスループット単分子シーケンシング方法である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように形成された核酸及び核酸のライブラリーは、生物学的ナノポア(US10337060)又は固体状態ナノポア(US10288599、US20180038001、US10364507)を通り抜けることを含む方法によってシーケンシングされる。他の実施形態では、シーケンシングは、タグをナノポアに通すこと(米国特許第8461854号明細書)又はナノポアを利用する任意の他の現在存在する又は将来のDNAシーケンシング技術を含む。
【0094】
ハイスループット単一分子シーケンシングの他の適切な技術としては、HiSeqプラットフォーム(Illumina,San Diego,Cal.)、Ion Torrentプラットフォーム(Life Technologies,Grand Island,NY)、SMRT(Pacific Biosciences,Menlo Park,Cal.)を利用するPacific BioSciencesプラットフォーム、又はOxford Nanopore Technologies(Oxford,UK)若しくはRoche Sequencing Solutions(Santa Clara,Cal.)によって製造されるもののようなナノポア技術、及び合成によるシーケンシングを包含するか若しくはしないいずれかの他の既存の若しくは未来のDNAシーケンシング技術を利用するプラットフォームが挙げられる。シーケンシングステップは、プラットフォーム特異的シーケンシングプライマーを利用することができる。これらのプライマーの結合部位は、増幅ステップで使用される増幅プライマーの5’部分に導入され得る。プライマー部位がバーコード化分子のライブラリーに存在しない場合、そのような結合部位を導入する追加の短い増幅ステップを実施し得る。いくつかの実施形態では、シーケンシングステップは、配列分析を伴う。いくつかの実施形態において、分析は、配列アラインメントのステップを含む。いくつかの実施形態では、アラインメントを使用して、複数の配列、例えば同じバーコード(UID)を有する複数の配列からコンセンサス配列を決定する。いくつかの実施形態では、バーコード(UID)は、全てが同一のバーコード(UID)を有する複数の配列からコンセンサスを決定するために使用される。他の実施形態では、バーコード(UID)は、を使用して、人工物、すなわち、同一のバーコード(UID)を有する一部の配列に存在するが全ての配列には存在しない変動を除去するために使用される。PCRエラー又はシーケンシングエラーから生じるこのような人工物は、除去され得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、試料中の各配列の数は、試料中の各バーコード(UID)を有する配列の相対数を定量化することによって定量化することができる。各UIDは、元の試料中の単一の分子を表し、各配列バリアントに関連する異なるUIDを計数することによって、元の試料中の各配列の画分を決定することができる。当業者は、コンセンサス配列を決定するために必要な配列読取りの数を決定することができる。いくつかの実施形態では、関連する数は、正確な定量的結果のために必要なUID(「配列深度(sequence depth)」)当たりの読取りである。いくつかの実施形態では、所望の深度はUID当たり5~50読取りである。
【0096】
いくつかの実施形態において、シーケンシングのステップは、コンセンサス決定によるエラー訂正のステップをさらに含む。本明細書に開示されるギャップのある環状鋳型の環状鎖の合成によるシーケンシングは、反復又は繰り返しのシーケンシングを可能にする。同じヌクレオチド位置の複数のリードは、各ヌクレオチド又は配列全体又は配列の一部に対するコンセンサスコールの確立を通じてシーケンシングエラーの訂正を可能にする。核酸鎖の最終配列は、各位置でのコンセンサス塩基決定から得られる。いくつかの実施形態において、核酸のコンセンサス配列は、相補鎖の配列を比較することによって、又は相補鎖のコンセンサス配列を比較することによって得られるコンセンサスから得られる。いくつかの実施形態において、本発明は、シーケンシングステップの後に、配列リードアラインメントのステップ及びコンセンサス配列を生成するステップを含む。いくつかの実施形態では、コンセンサスは、米国特許第8535882号に記載されている単純多数コンセンサスである。他の実施形態では、コンセンサスは、Lee et al.(2002)「Multiple sequence alignment using partial order graphs」、Bioinformatics,18(3):452-464及びParker and Lee(2003)「Pairwise partial order alignment as a supergraph problem-aligning alignments revealed」、J.Bioinformatics Computational Biol.,11:1-18に記載されているPartial Order Alignment(POA)法によって決定される。コンセンサス配列を決定するために使用される反復リードの数に基づいて、配列は、ほとんどエラーがないか、又は実質的にエラーがない可能性がある。
【実施例
【0097】
実施例1.「ハンドル」プライマーを用いたPCRによるギャップのある環形鋳型の調製
この実施例では、ギャップのある環形鋳型の調製は、5’「ハンドル」又はニッキング部位を含む5’配列を含む増幅プライマーを用いた標的核酸の増幅から開始した。
【0098】
標的特異的プライマーを用いた初期PCRは、pUC19プラスミド、5×反応緩衝液、dNTP、フォワードプライマー、リバースプライマー(標的特異的配列及び5’-ハンドルからなる)(表1、Nb.BsrDI認識配列が強調されている)、Q5ポリメラーゼ(New England BioLabs)及び水を含んでいた。PCRは標準的な熱サイクリングプロファイル下で行い、PCR産物を製造業者の推奨に従ってAmpure XPビーズ(Beckman Coulter)で精製した。
【0099】
【表1】
【0100】
5’リン酸修飾されたハンドルのみのプライマーを用いた第2の「ハンドル」PCRは、プレPCRからのアンプリコン、5×反応緩衝液、dNTP、ハンドル配列及び5’リン酸からなるフォワードハンドルプライマー及びリバースハンドルプライマー(表1)、Q5ポリメラーゼ及び水を含んでいた。PCRは標準的な熱サイクリングプロファイル下で行い、PCR産物を製造業者の推奨に従ってAmpure XPビーズで精製した。
【0101】
自己ライゲーションのために、第2のPCRステップからのアンプリコンを6ng/μlに希釈し、次いで8倍体積のライゲーションミックスと混合し、8本の2mLチューブに分配した(各々が360μLを含む)。ライゲーション混合物は、Blunt/TAリガーゼマスターミックス(New England BioLabs)を含み、20Cで60分間インキュベートした。ライゲーション後、反応物をExoIII(New England BioLabs)と共に37Cで60分間インキュベートした。
【0102】
環状化DNAを、製造業者の推奨に従ってQIAquick PCR精製キットを使用してカラム精製に供し、水中で再構成した。環状化及びExoIII処理の効率をゲル電気泳動によって評価した(図4)。
【0103】
ニッキング酵素Nb.BsrDI(New England BioLabs)による消化を、製造業者の推奨に従ってCutSmart緩衝液中で行った。ニックを入れたdsDNA環を、QIAquickカラムを使用して精製した。
【0104】
DNAのニッキングから生じる断片を、アニーリング緩衝液(100mM TrisHCl、500mM NaCl、10mM EDTA)中の100倍モル過剰の競合オリゴヌクレオチド(表1)の存在下で2回の熱変性によって除去した。各回の熱変性の後、QIAquickカラムを使用してDNAを精製した。
【0105】
ギャップのある環の形成効率を、II型制限酵素BsrDI(New England BioLabs)による消化によって試験した。消化産物を1% TAEアガロースで泳動し、200Vで20分間泳動した。結果を図4に示す。予測されるように、dsDNA環はBsrDIによって切断されるが、ギャップのあるDNAはBsrDIによって切断されない。
【0106】
ビオチン化通り抜け(threading)ブロッカープライマーを、製造業者のプロトコルに従ってリガーゼ緩衝液中のリガーゼを使用してギャップのある環のギャップにライゲートした。ライゲーション産物をQIAquickカラムで精製し、BsrDI消化及びゲル電気泳動によって分析した。図4に示すように、ライゲーションされたオリゴを有するギャップのあるds環は、BsrDIによって部分的に消化される。
【0107】
ライゲーションされた通り抜け(threading)ブロッカーを有するギャップのある環を生物学的ナノポア機器でシーケンシングした。得られた精度は84%であり、処理長の中央値は5.6kb~6kbの範囲であった。
実施例2.ライゲーティングアダプターによるギャップのある環形鋳型の調製
【0108】
この実施例では、第1のステップは、Nb.BsrDIを含むアダプターのライゲーションであった。「ハンドルPCR」、自己ライゲーション、エキソヌクレアーゼ処理、Nb.BsrDI消化、ギャップ形成及びブロッカーオリゴヌクレオチドのライゲーションを含む、ギャップのあるds環を形成するその後のステップは、実施例1に記載のように行った。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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