(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】負極シート及び二次電池、電池パック、電池モジュール並びに電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20240517BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240517BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/36 D
(21)【出願番号】P 2022562403
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2021117185
(87)【国際公開番号】W WO2023035145
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2022-10-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】李 遠源
(72)【発明者】
【氏名】沈 睿
(72)【発明者】
【氏名】何 立兵
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113036298(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-2005779(KR,B1)
【文献】国際公開第2021/109133(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/108981(WO,A1)
【文献】特表2015-524992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、
前記集電体の少なくとも1つの表面に位置し、且つ活物質1を含む活性層1と、
前
記活性層1
の前記集電体から離れ
た表面に位置し、且つ活物質2を含む活性層2と、を含み、
前記活物質1の粉体OI値は、8~32の範囲内であり
、前記活物質2の粉体OI値は、2~7の範囲内であり
、
前記活物質1のグラム容量は290~350mAh/gの範囲内であり、
前記活物質2のグラム容量は350~368mAh/gの範囲内であ
り、
前記活物質1と前記活物質2の粉体OI値の比をαとし、前記活物質1と前記活物質2のグラム容量の比をβとし、αとβの比α/βの範囲は4.24~6.62である、
負極シート。
【請求項2】
前
記αの範囲は2.00~6.2
5であることを特徴とする、請求項1に記載の負極シート。
【請求項3】
前
記βの範囲は0.80~1.0
0であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の負極シート。
【請求項4】
前記活性層1の面密度は、3~10mg/cm
2
であり、且つ
前記活性層2の面密度は、3~10mg/cm
2
であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載の負極シート。
【請求項5】
前記活物質1の割合範囲は、前記活性層1の総重量の92.0~98.99重量%であり、且つ
前記活物質2の割合範囲は、前記活性層2の総重量の92.0~98.99重量%であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載の負極シート。
【請求項6】
前記負極シートの空隙率は、18.0%~40.2%で
あることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載の負極シート。
【請求項7】
前記負極シートの圧密密度は、1.45~1.90g/cm
3で
あることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか1項に記載の負極シート。
【請求項8】
前記活性層1の冷間プレス後の厚さは、20~135μmであり
、
前記活性層2の冷間プレス後の厚さは、20~135μ
mであることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか1項に記載の負極シート。
【請求項9】
前記活性層1又は前記活性層2は、導電剤、接着剤及び増粘剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載の負極シート。
【請求項10】
前記活物質1は、人造黒鉛を含むか、又は人造黒鉛からなり、
硬質炭素、軟質炭素又はその組み合わせから選ばれる他の炭素材料を含むことを特徴とする、請求項1~
9のいずれか1項に記載の負極シート。
【請求項11】
前記活物質2は、人造黒鉛を含むか、又は人造黒鉛からなり、
硬質炭素、軟質炭素又はその組み合わせから選ばれる他の炭素材料を含むことを特徴とする、請求項1~1
0のいずれか1項に記載の負極シート。
【請求項12】
請求項1~1
1のいずれか1項に記載の負極シートを含むことを特徴とする、二次電池。
【請求項13】
請求項1
2に記載の二次電池を含むことを特徴とする、電池モジュール。
【請求項14】
請求項1
3に記載の電池モジュールを含むことを特徴とする、電池パック。
【請求項15】
請求項1
2に記載の二次電池と、請求項1
3に記載の電池モジュールと、請求項1
4に記載の電池パックとから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、リチウム電池の技術分野に関し、特に、サイクル中に低下する膨張性を有する負極シートに関する。また、本願は、前記負極シートの製造方法及び前記負極シートを含む二次電池、前記二次電池を含む電池パック、電池モジュール並びに電力消費装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の応用範囲がますます広くなっているにつれ、リチウムイオン電池は水力、火力、風力、太陽光発電所などのエネルギー貯蔵及び電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電動自動車、軍事装備、航空及び宇宙などの多くの分野で広く応用されている。リチウムイオン電池は大きな発展を遂げているため、その持続力が一層求められている。
【0003】
リチウムイオン電池では、リチウムイオン電池のサイクル回数の増加に伴って負極シートが膨張するため、電池の膨張力が持続的に増加しており、それにより、電池のサイクル性能が低下してしまい、電池の持続力が劣ってしまう。そのため、負極シートの膨張の低減は、電池の持続力を向上させるための最適な選択と考えられている。負極の膨張性を改善するためには、被覆又は接着剤の配合などの方法が現在効果的であるが、従来の方法ではリチウムイオン電池のエネルギー密度の低下など、リチウムイオン電池の性能を種々のレベルで損なうことがあり、また、膨張を持続的に低減する効果を達成しにくい。従って、従来の負極シートはまだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【0004】
本願は上記課題に鑑みてなされたものであり、サイクル中で低膨張効果を持続的に維持して電池の持続力を向上させることができる負極シートを提供することを目的とする。
【0005】
上記目的を達成するために、本願は、負極シートを提供する。
【0006】
本願の第1態様は、
集電体と、
前記集電体の少なくとも1つの表面に位置し、且つ活物質1を含む活性層1と、
前記2層の活性層1の各々における前記集電体から離れた少なくとも1つの表面に位置し、且つ活物質2を含む活性層2と、を含み、
前記活物質1の粉体OI値が8~32の範囲内であり、選択的に10~25の範囲内であり、前記活物質2の粉体OI値が2~7の範囲内であり、選択的に3~6の範囲内であり、
前記活物質1のグラム容量が290~350mAh/gの範囲内であり、
前記活物質2のグラム容量が350~368mAh/gの範囲内である、負極シートを提供する。
【0007】
活物質のOI値及びグラム容量を上記範囲内に限定することで、本願により提供される負極シートは、集電体への良好な接着力及び二次電池に必要な大容量を確保するとともに、サイクル中の負極シートの体積膨張を効果的に低減し、二次電池のサイクル性能及びエネルギー密度を向上させることができる。
【0008】
任意の実施形態において、前記活物質1と前記活物質2の粉体OI値の比αは2.00~6.25の範囲である。
【0009】
そのため、本願は、前記活物質1と前記活物質2の粉体OI値の比を一定の範囲内に限定することで、サイクル中の負極シートの膨張を効果的に低減する。
【0010】
任意の実施形態において、負極シートでは、前記活物質1と前記活物質2のグラム容量の比βは0.80~1.00の範囲である。
【0011】
本願は、活性層1における活物質のグラム容量と活性層2における活物質のグラム容量との比βの範囲をさらに限定することで、電池性能を確保する上で、負極シートの膨張を低減する効果をさらに実現する。
【0012】
任意の実施形態において、αとβの比α/βの値は2.0~6.7の範囲である。
【0013】
負極シートの活性層1と活性層2のグラム容量の差及びOI値の差を一定の範囲内に限定することで、予想外に、高い接着力を保証しつつ、低膨張、高エネルギー密度の効果を達成することができる。このシートを二次電池に用いると、二次電池の持続力を向上させることができる。
【0014】
本願において、人造黒鉛は、負極シートの活性層を製造するための活物質である。任意の実施形態において、活物質1に用いられる人造黒鉛の体積平均粒度Dv50は、8~24μmであってもよく、選択的に10~20μmであり、黒鉛化度は、85.0%~90.0%であり、選択的に86.0%~89.9%である。活物質2に用いられる人造黒鉛の体積平均粒度Dv50は、6~24μmであってもよく、選択的に8~20μmであり、黒鉛化度は、90.0%~97.5%であり、選択的に90.2%~96.8%である。
【0015】
任意の実施形態において、活物質1に用いられる人造黒鉛の8MPa圧力下での粉末抵抗率は、0.035Ω・cm以下であってもよく、選択的に0.025Ω・cm以下である。活物質2に用いられる人造黒鉛の8MPa圧力下での粉末抵抗率は、0.035Ω・cm以下であってもよく、選択的に0.025Ω・cm以下である。
【0016】
任意の実施形態において、活性層1の面密度は、3~10mg/cm2であり、選択的に4~8mg/cm2である。活性層2の面密度は、3~10mg/cm2であり、選択的に4~8mg/cm2である。
【0017】
任意の実施形態において、負極シートでは、前記活物質1の割合範囲は、前記活性層1の総重量の92.0~98.99重量%である。いくつかの実施形態において、負極シートでは、前記活物質2の割合範囲は、前記活性層2の総重量の92.0~98.99重量%である。
【0018】
任意の実施形態において、前記負極シートの空隙率は、18.0%~40.2%であり、選択的に22.5%~35.0%である。
【0019】
任意の実施形態において、負極シートの圧密密度は、1.45~1.90g/cm3であり、選択的に1.55~1.80g/cm3である。
【0020】
任意の実施形態において、活性層1の冷間プレス後の厚さは、20~135μmであり、選択的に30~120μmであり、活性層2の冷間プレス後の厚さは、20~135μmであり、選択的に30~120μmである。
【0021】
任意の実施形態において、活性層1及び活性層2は、それぞれ本分野で一般に負極シートに用いられる導電剤、接着剤及び増粘剤をさらに含む。
【0022】
任意の実施形態において、活性層1における活物質1は、人造黒鉛に加えて、硬質炭素、軟質炭素などの他の炭素材料を少量(活物質全体の質量含有量≦10重量%)含む。
【0023】
任意の実施形態において、活性層2における活物質2は、人造黒鉛に加えて、硬質炭素、軟質炭素などの他の炭素材料を少量(活物質全体の質量含有量≦10重量%)含む。
【0024】
本願の第2態様は、本願の第1態様に記載の負極シートを含む二次電池を提供する。
【0025】
本願の第3態様は、本願の第2態様に記載の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0026】
本願の第4態様は、本願の第3態様に記載の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0027】
本願の第5態様は、本願の第4態様に記載の二次電池と、本願の第4態様に記載の電池モジュールと、本願の第5態様に記載の電池パックとのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本願の発明者が設計した負極シートは、活性層1及び活性層2の活物質を合理的に選択し、グラム容量及びOI値を合理的な範囲内となるように総合的に調整することで、負極シート全体の膨張均一性を調整し、かつ負極シート全体の膨張を顕著に低減する。本願は、活物質1の粉体OI値及びグラム容量を総合的に調整し、両者の相乗効果を利用することで、グラム容量が高く、膨張率が低い負極シートを開発し、これによって製造された二次電池は高いエネルギー密度とサイクル性能を兼ね備える。
【0029】
本願の電池モジュール、電池パック及び電力消費装置は、本願により提供されるリチウムイオン電池を含むため、少なくとも前記リチウムイオン電池と同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本願の一実施形態による負極シートの厚さ方向に沿う断面図である。
【
図2】本願の一実施形態による二次電池の模式図である。
【
図3】
図2に示す本願の一実施形態による二次電池の分解図である。
【
図4】本願の一実施形態による電池モジュールの模式図である。
【
図5】本願の一実施形態による電池パックの模式図である。
【
図6】
図5に示す本願の一実施形態による電池パックの分解図である。
【
図7】本願の一実施形態による二次電池を電源として用いる電力消費装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本願の負極シート及びその製造方法、正極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック並びに電気機器を具体的に開示する実施形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。しかし、必要以上の詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項の詳細な説明や、実質的に同一の構造の重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0032】
本願に開示されている「範囲」は、下限及び上限の形で規定され、所定の範囲は、特定の範囲の境界を規定する1つの下限及び1つの上限を選択することによって規定される。このように規定された範囲は、端値を含んでも含まなくてもよく、任意に組み合わせてもよく、即ち、任意の下限が任意の上限と組み合わせて1つの範囲を形成することが可能である。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲が列挙される場合、60~110と80~120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲値1と2が列挙され、最大範囲値3、4、5が列挙される場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、及び2~5という範囲は全て予想され得る。本願において、数値範囲「a~b」は、別に説明しない限り、aとbとの間の任意の実数の組み合わせの短縮表現を表し、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書で既に「0~5」の間の全ての実数が列挙されていることを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの短縮表現にすぎない。なお、あるパラメータが≧2の整数であると記述される場合、そのパラメータは例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などの整数であることが開示されることになる。
【0033】
特に断らない限り、本願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わされて新たな技術的解決手段を形成し得る。
【0034】
特に断らない限り、本願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わされて新たな技術的解決手段を形成し得る。
【0035】
特に断らない限り、本願の全てのステップは、順に行われてもよいし、ランダムに行われてもよく、好ましくは順に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含むことは、前記方法が順に行われるステップ(a)及び(b)を含んでもよく、順に行われるステップ(b)及び(a)を含んでもよいことを示している。例えば、上述した前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよく、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に入ってもよいことを示し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)を含んでもよい。
【0036】
特に断らない限り、本願にいう「含む」及び「包含」は、開放型であることを意味し、密閉型であってもよい。例えば、前記「含む」及び「包含」は、列挙されていない他の成分も含む又は包含してもよく、列挙されている成分のみを含む又は包含してもよいことを表すことができる。
【0037】
特に断らない限り、本願では、用語「又は」は包括的なものである。例えば、語句「A又はB」は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、Aが真(又は存在)でBが偽(又は存在しない)であることと、Aが偽(又は存在しない)でBが真(又は存在する)であることと、又はAとBの両方が真である(又は存在する)ことはいずれも、条件「A又はB」を満たす。
【0038】
本願の発明者は、二次電池のサイクル中で、負極シートのリチウム脱離及び挿入過程が繰り返されるため、負極活物質に不可逆的な格子変化が発生し、負極活性層の体積が大きくなり、大きなシート膨張は、負極活物質層が集電体の表面から脱落するリスクを増加させ、一方、シートの内部に各方向に沿った大量の亀裂も発生させ、電池のサイクル性能を著しく劣化させ、そして、膨張したシートは、内部に大量の亀裂が存在するため、電解液が負極活物質層の各孔構造内に均一に分散するのではなく、隙間に過剰に集中することもあり、電解液の浸潤が不良となり、電池のサイクル性能が低下してしまうことを発見した。
【0039】
特に、電池全体のエネルギー密度を高めるために負極活物質のグラム容量を連続的に高めるために、上記不良が深刻になるほど、電池性能の劣化程度も著しくなる。
【0040】
上記発見した技術的課題に基づいて、本願の発明者は、負極シートの変性によって、グラム容量が高く、膨張率が低い負極シートを開発し、これによって製造された二次電池は高いエネルギー密度とサイクル性能を兼ね備えることができる。
【0041】
[負極シート]
図1を参照し、本願は、
集電体と、
前記集電体の少なくとも1つの表面に位置し、且つ活物質1を含む活性層1と、
前記2層の活性層1の各々における前記集電体から離れた少なくとも1つの表面に位置し、且つ活物質2を含む活性層2と、を含み、
前記活物質1の粉体OI値が8~32の範囲内であり、選択的に10~25の範囲内であり、
前記活物質2の粉体OI値が2~7の範囲内であり、選択的に3~6の範囲内であり、
前記活物質1のグラム容量が290~350mAh/gの範囲内であり、
前記活物質2のグラム容量が350~368mAh/gの範囲内である、負極シートを提出する。
【0042】
本願の負極シートは、活性層1及び活性層2を含み、且つ活性層1における活物質1の粉体OI値は、活性層2における活物質2の粉体OI値よりも大きく、活物質2のグラム容量は、活物質1のグラム容量以上である。このように設計される理由は、以下の通りである。
活性層2における負極活物質の粉体OI値が低く、等方性度が高く、その微細構造に不可逆的な格子膨張が発生しても、膨張応力が各方向に分散することができ、それにより負極活性層内に各方向に沿った亀裂が発生することを防止する。しかしながら、OI値の小さい負極活物質は集電体との接着力が低いため、活性層2が集電体から脱離しやすいことが予測外であり、従って、本願では、活性層2と集電体表面との間に活性層1を配置し、活性層1における活物質1の粉体OI値が高く、活性層全体と集電体表面との接着力を顕著に高めることができる。
【0043】
しかし、活性層全体と集電体表面との接着力を高めるために活物質1の粉体OI値を大きく設計する場合、活性層1の膨張率が大きくなり、そのため、本願では、負極活性材料の大きなOI値による膨張を低減するために、活性層1における活物質1のグラム容量を小さく設計し、それによりリチウムイオンの繰り返された脱離及び挿入による活性層の不可逆的な膨張を遅らせる。
【0044】
なお、負極シートのエネルギー密度を全体的に高める点で、本願は、活性層2における活物質2のグラム容量を大きく設計し、それにより負極シートのエネルギー密度を全体的に高める。
【0045】
以上から、本願の発明者が設計した負極シートは、活性層1及び活性層2の活物質を合理的に選択し、グラム容量及びOI値を合理的な範囲内となるように総合的に調整することで、負極シート全体の膨張均一性を調整し、かつ負極シート全体の膨張を顕著に低減する。本願は、活物質1の粉体OI値及びグラム容量を総合的に調整し、両者の相乗効果を利用することで、グラム容量が高く、膨張率が低い負極シートを開発し、これにより製造された二次電池は高いエネルギー密度とサイクル性能を兼ね備える。
【0046】
本願において、活物質の粉体OI値は、活物質粉体のX線回折スペクトルにおける、(004)結晶面回折ピークのピーク面積C004と(110)結晶面回折ピークのピーク面積C110との比、即ち、OI値=C004/C110と定義される。
【0047】
本願において、活物質のOI値は、X線回折計で測定し、測定過程はJISK0131-1996に準じて行われる。測定して活物質のX線回折スペクトルを得て、Highscore Plus又はJadeなどのXRDスペクトル分析ソフトウェアにより分析し計算した後、(004)結晶面回折ピークのピーク面積C004及び(110)結晶面回折ピークのピーク面積C110を得る。OI値=C004/C110とする。
【0048】
本願において、活物質のグラム容量は、活物質が放出可能な電気容量(mAh)と活物質の質量(g)との比と定義される。
【0049】
本願において、活物質のグラム容量は、活物質、導電剤、接着剤を溶剤と所定の質量比で均一に混合してスラリーにし、製造されたスラリーを銅箔集電体に塗布し、オーブンで乾燥させた後に使用に備える方法によって決定することができる。金属リチウムシートを対向電極とする。セパレータとしてポリエチレン(PE)フィルムを用いる。炭酸エチレン(EC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)を体積比1:1:1で混合し、その後、LiPF6を上記溶液に均一に溶解して電解液を得て、LiPF6の濃度は1mol/Lである。アルゴンガスで保護されたグローブボックスの中で上記各部分をCR2430型ボタン電池として組み立てる。
【0050】
得られたボタン電池を12時間静置した後、0.05Cの電流で0.005Vまで定電流放電し、10分間静置する。さらに、50μAの電流で0.005Vまで定電流放電し、10分間静置する。さらに、10μAの電流で0.005Vまで定電流放電する。その後、0.1Cの電流で2Vまで定電流充電する。充電容量を記録する。充電容量と人造黒鉛質量との比は、製造された人造黒鉛のグラム容量である。
【0051】
選択的に、前記活物質1の粉体OI値は、8、9、10、11、12、16、25、32であってもよく、又はその値は、上記いずれか2つの数値からなる範囲内であってもよい。選択的に、前記活物質2の粉体OI値は、2、3、4、6、7であってもよく、又はその位置は、上記いずれか2つの数値からなる範囲内であってもよい。選択的に、前記活物質1のグラム容量は、290、310、320、340、350であってもよく、又はその値は、上記いずれか2つの数値からなる範囲内であってもよい。選択的に、前記活物質2のグラム容量は、350、355、360、365、368であってもよく、又はその値は、上記いずれか2つの数値からなる範囲内であってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、前記活物質1と前記活物質2の粉体OI値の比αは2.00~6.25の範囲である。
【0053】
OI値について、本願は、活性層1における活物質のOI値と活性層2における活物質のOI値との比αを用いて、2つの活性層が膨張能力を低下させる差の程度を特徴付ける。発明者は、2層の活性層の活物質のOI値の差が一定の範囲内にある場合のみ、電池性能を確保する上で、負極シートの膨張を低減できることを見出した。
【0054】
選択的に、前記αの値は、2.00、2.29、2.50、2.75、3.00、4.00、4.50、5.33、6.25であってもよく、又はその値は、上記いずれか2つの数値からなる範囲内であってもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、負極シートでは、前記活物質1と前記活物質2のグラム容量の比βは0.80~1.00の範囲である。
【0056】
グラム容量について、本願は、活性層1における活物質のグラム容量と活性層2における活物質のグラム容量との比βを用いて、2つの活性層が膨張能力を低下させる差の程度を特徴付ける。発明者は、2層の活性層の活物質のグラム容量の差が一定の範囲内にある場合のみ、電池性能を確保する上で、負極シートの膨張を低減できることを見出した。
【0057】
いくつかの実施形態において、αとβの比α/βの値は2.0~6.7の範囲である。
【0058】
OI値はある方向における材料の秩序度を表し、この秩序度は材料全体における材料の電気的性能の分布、伝達能力を決定する。電極の動的動作中に、2層の間のグラム容量とOI値が合理的に適合する必要があり、電気性能が2層の間でスムーズに遷移し、「落差」が発生しないことを確保し、さらにシートの安定した動作を確保する。グラム容量とOI値の関係を観察することによって、予想外に、本願の発明者は、OI値の面から特徴付けられる差の程度とグラム容量の面から特徴付けられる差の程度との差は、小さすぎても大きすぎてもだめであり、差が小さすぎる又は大きすぎると、いずれも負極シートの大きな膨張を招くことをさらに発見した。従って、αとβの比α/βの値は2.0~6.7の範囲である。
【0059】
選択的に、活性層1は、前記集電体の2つの表面に位置し、活性層2は、前記2層の活性層1の各々における前記集電体から離れる2つの表面に位置する。
【0060】
本願の負極シートにおいて、活性層1の面密度は、3~10mg/cm2であり、選択的に4~8mg/cm2である。活性層2の面密度は、3~10mg/cm2であり、選択的に4~8mg/cm2である。
【0061】
活性層の面密度は、シートの塗布品質を示し、低すぎると電池のエネルギー密度に影響を与え、高すぎると電池の動力学的性能が悪すぎるため、活性層の面密度を一定の範囲内に制御する必要がある。本願において、面密度は、本分野で一般に用いられる方法によって測定し、又は、一定面積S(単位cm2)の負極シート及び集電体(前記負極シートに用いられる集電体と同一の製造ロット番号)をそれぞれ15枚打ち抜き、質量を計量して平均値を求める方法により測定してもよい。負極シートの質量平均値はM1(単位mg)であり、集電体質量の平均値はM2(単位mg)である。活物質層が集電体の片面のみに設けられる場合、面密度は(M1-M2)/Sであり、活物質層が集電体の両面に設けられる場合、面密度は(M1-M2)/2Sである。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記負極シートでは、前記活物質1の割合範囲は、前記活性層1の総重量の92.0~98.99重量%である。いくつかの実施形態において、負極シートでは、前記活物質2の割合範囲は、前記活性層2の総重量の92.0~98.99重量%である。負極シートの活性層における活物質の割合が低く、例えば上記範囲よりも低い場合、前記負極の塗布質量が比較的高いが、二次電池のエネルギー密度が低く、負極シートの活性層における活物質の割合が高く、例えば上記範囲よりも高い場合、活物質及び活性層を製造するための他の原料からなるスラリーの加工性が悪い。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記負極シートでは、前記負極シートの空隙率は、18.0%~40.2%であり、選択的に22.5%~35.0%である。負極シート空隙率が低い場合、電解液の浸潤が困難であり、リチウムイオンの液相伝導が制限され、シートの動力学的性能が悪く、一方、負極シートの空隙率が高い場合、空隙に充填するためにより多くの質量の電解液を必要とし、二次電池のエネルギー密度が低くなる。
【0064】
本願に記載の負極シートの空隙率とは、負極の集電体表面の活性層全体の空隙率を指し、具体的な測定プロセスは、負極シートを直径が13mmの小円板に30枚打ち抜き、それぞれ真密度計に入れてサンプルの真体積を測定し、上記30枚の小円板の真体積の平均値を計算し、当該平均値をV1として記録するV1算出ステップと、上記30枚の小円板の見かけ体積の平均値であるV2であって、且つV2=S*H*AとするV2算出ステップとで行うことができ、Sは上記30枚の小円板の平均面積であり、Hはシートの厚さであり、Aはサンプル数であり、空隙率P=(V2-V1)/V2*100%になる。負極シートの空隙率の測定プロセスはGB/T 24586-2009を参照されたい。
【0065】
なお、本願によると、負極シートの圧密密度が高いほど、電池のエネルギー密度が高くなる。しかし、圧密密度が高すぎると、一部の電力性能が失われる。そのため、負極シートの圧密密度を適切な範囲内に制御すべきである。従って、本願の負極シートでは、圧密密度が1.45~1.90g/cm3であり、選択的に1.55~1.80g/cm3である。
【0066】
本明細書において、負極シートの圧密密度は、冷間プレス後の負極シート及び集電体(前記負極シートに用いられる集電体と同一の製造ロット番号)の厚さをマイクロメータで測定し、15点取り、負極シートの厚さの平均値をHA(単位μm)とし、集電体の厚さの平均値をHB(単位μm)とし、活物質が集電体の一面のみに設けられる場合、圧密密度が10×面密度/(HA-HB)になり、活物質が集電体の両面に設けられる場合、圧密密度が20×面密度/(HA-HB)になる、という方法によって測定することができる。負極シートの圧密密度は、原料と、黒鉛化の程度と、粒子構造との組み合わせによる調整など、本分野の一般的な技術手段によって制御することができる。
【0067】
本願において、活性層1の冷間プレス後の厚さは、20~135μmであり、選択的に30~120μmであり、活性層2の冷間プレス後の厚さは、20~135μmであり、選択的に30~120μmである。
【0068】
なお、活性層1及び活性層2は、それぞれ当該分野で一般に負極シートに用いられる導電剤、接着剤及び増粘剤をさらに含む。活性層1及び活性層2において、活物質の各々の割合範囲は、それぞれ活性層1及び2の製造に用いられる全ての成分に対して、92.0~98.99重量%である。活性層1及び活性層2におけるそれぞれの活物質とそれぞれの導電剤、接着剤、増粘剤との混合比は、(92.0~98.99重量%):(0.01~2重量%):(0.5~3.5重量%):(0.5~2.5重量%)であり、選択的な混合比は、96.5重量%:0.6重量%:1.8重量%:1.1重量%である。
【0069】
導電剤は、当該分野で一般に負極シートに用いられる導電剤を用いることができる。選択的に、導電剤は、グラフェン、アセチレンブラック、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、超伝導炭素、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット及びカーボンナノファイバーのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0070】
接着剤は、当該分野で一般に負極シートに用いられる導電剤を用いることができる。選択的に、接着剤は、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0071】
増粘剤は、当該分野で一般に負極シートに用いられる導電剤を用いることができる。選択的に、増粘剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、カルボキシメチルセルロースリチウム、アルギン酸ナトリウムのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、活性層1における活物質1は、人造黒鉛に加えて、硬質炭素、軟質炭素などの他の炭素材料を少量(活物質全体に基づき、質量含有量≦10重量%)含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、活性層2における活物質2は、人造黒鉛に加えて、硬質炭素、軟質炭素などの他の炭素材料を少量(活物質全体に基づき、質量含有量≦10重量%)含む。
【0074】
本願において、前記活物質は炭素材料、特に黒鉛、特に人造黒鉛、硬質炭素、軟質炭素などである。黒鉛は炭素元素からなり、層状構造を有し、層内の炭素原子がSP2複素環を介してσ結合を形成し、作用力が強く、層間ファンデルワールス力の作用力が弱い。特に、本願には人造黒鉛が用いられ、それは単一の人造黒鉛であってもよく、構造が異なり性能が異なる2種類以上の人造黒鉛を配合した混合物であってもよい。本願の人造黒鉛又は人造黒鉛の混合物は、特定の粉体OI値及びグラム容量を有し、サイクル中の膨張を低減する効果を実現することができる。軟質炭素とは、易黒鉛化炭素であり、2500℃以上の高温で黒鉛化可能な無定形炭素を指す。軟質炭素は、結晶度(即ち黒鉛化度)が低く、結晶粒サイズが小さく、格子面間隔(d002)が大きく、電解液との相溶性に優れるが、初回放電の不可逆容量が高く、出力電圧が低く、顕著な充放電プラトー電位がない。一般的な軟質炭素には石油コークス、針状コークス、炭素繊維、炭素微小球などがある。硬質炭素とは、難黒鉛化炭素であり、高分子ポリマーの熱分解炭素を指し、このような炭素は2500℃以上の高温でも黒鉛化しにくい。一般的な硬質炭素は樹脂炭素であり、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフルフリルアルコールPEA-Cなどである。本願の発明者は、特定の人造黒鉛と少量の硬質炭素、軟質炭素とを混合することで、サイクル中の負極シートの膨張を低減する効果も実現できることを発見した。
【0075】
いくつかの実施形態において、既存の市販の人造黒鉛から、本願の上記範囲内のOI値及びグラム容量を有する人造黒鉛を選択してもよく、前記OI値及びグラム容量を有する人造黒鉛を人工で製造してもよい。例えば、人造黒鉛の原料(例えば石油生コークス、針状生コークス、焼成石油コークス、焼成針コークス、冶金コークス、アスファルトコークスなど)、接着剤の添加量を調整することで前記OI値を有する人造黒鉛が得られる。例えば、針状生コークスを用いる場合、造粒時の接着剤アスファルトの添加量が多いほど、得られる黒鉛のOI値が低くなり、焼成石油コークスに接着剤アスファルトを添加しない又は少量に添加する場合、得られた黒鉛OI値が大きい。
【0076】
いくつかの実施形態において、活物質1に用いられる人造黒鉛の体積平均粒度Dv50は、8~24μmであってもよく、選択的に10~20μmであり、黒鉛化度は、85.0%~97.5%であり、選択的に86.0%~89.9%である。活物質2に用いられる人造黒鉛の体積平均粒度Dv50は、6~24μmであってもよく、選択的に8~20μmであり、黒鉛化度は、85.0%~97.5%であり、選択的に90.2%~96.8%である。人造黒鉛は、負極シートの活性層を製造する前の人造黒鉛である。人造黒鉛の平均粒度が小さい場合、シートの圧密密度が低く、対応する二次電池のエネルギー密度が低い。それに対して、前記平均粒度が大きい場合、動力学が悪い。なお、前記人造黒鉛の黒鉛化度が高いほど、人造黒鉛材料のグラム容量が高くなり、シートの圧密密度が高くなり、対応する二次電池のエネルギー密度も高くなる。それに対して、黒鉛化度が低い場合、人造黒鉛材料のグラム容量が低く、シートの圧密密度が低く、対応する二次電池のエネルギー密度が低く、使用できなくなる。そのため、人造黒鉛の平均粒度、黒鉛層の間隔、黒鉛化度を上記範囲内に制限する必要がある。
【0077】
黒鉛化度は、炭素物質が無定形炭素から構造を再配列し、その結晶体が完璧な黒鉛に近づく度合いを評価するものである。黒鉛化度の高さは、リチウムイオン電池の負極材料となり得るか否かの必須条件とし得るほか、黒鉛化度の高さは炭素負極の充放電容量にも影響を与える。黒鉛化度は、X線回折法により測定することができ、まず、黒鉛(002)の結晶面間隔d002を測定し、次に、フランクリン方程式(Mering-Maire公式)を用いて計算し、G=(0.3440-d002)/(0.3440-0.3354)×100%になり、式中、Gは黒鉛化度(%)であり、0.3440は非黒鉛化炭素の層間距離(nm)であり、0.3354は理想的な黒鉛晶体の層間距離(六方晶系黒鉛c軸の格子定数の半分、nm)であり、d002は炭素材料(002)の結晶面の層間距離(nm)である。なお、より正確なd002値を得るために、Si粉末を混ぜて回折角度を補正し、誤差を小さくする。
【0078】
いくつかの実施形態において、活物質1に用いられる人造黒鉛の8MPa圧力下での粉末抵抗率は、0.035Ω・cm以下であってもよく、選択的に0.025Ω・cm以下である。活物質2に用いられる人造黒鉛の8MPa圧力下での粉末抵抗率は、0.035Ω・cm以下であってもよく、選択的に0.025Ω・cm以下である。人造黒鉛の粉末抵抗率が低いほど、高い導電性を有することを示し、対応して製造された負極シートが高い導電性を有し、且つ前記負極シートを用いた電池は、分極が小さく、動力学的性能に優れ、それにより長いサイクル寿命を有し得る。前記人造黒鉛の粉末抵抗率は、当該分野で周知の方法により測定することができる。例えば、抵抗率測定器(例えばST2722)を用いて四探針法に基づいて測定してもよく、一定質量のサンプルを抵抗率測定器の供給カップに入れ、8MPaまで圧力を印加し、データを手動的に収集し、粉末の抵抗率の測定結果を記録する。測定は、GB/T 30835-2014に準じる。
【0079】
活物質1及び活物質2は、少量の他の炭素材料をさらに含む場合でも、前記OI値及びグラム容量を有する活物質の製造方法は上記内容と同様である。
【0080】
本願において、負極集電体は、導電及び集電の作用を果たす優れた導電性及び機械的強度を有する材質を使用することができる。いくつかの実施形態において、前記負極集電体は、金属箔又は複合集電体を使用してもよい。例えば、金属箔としては、銅箔を使用することができる。複合集電体は、高分子材料基材及び高分子材料基材の少なくとも1つの表面に形成される金属層を含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することで形成され得る。
【0081】
本願により提供される負極シートは、
(1)市販品から所望のOI値及びグラム容量を有する活物質を選択するか、又は所望のOI値及びグラム容量を有する活物質を製造するステップと、
(2)活物質1、導電剤、接着剤、増粘剤を適量の脱イオン水中で一定の質量比で十分に撹拌して混合し、均一な負極スラリーにするステップと、
(3)この負極スラリーを負極集電体の表面に塗布して、活性層1とするステップと、
(4)活物質2、導電剤、接着剤、増粘剤を適量の脱イオン水中で一定の質量比で十分に撹拌して混合し、均一な負極スラリーにするステップと、
(5)この負極スラリーを活性層1の表面に塗布して、活性層2とするステップと、
(6)上記シートを乾燥させ、冷間プレスした後、負極シートを得るステップと、を含む方法によって製造することができる。
【0082】
本願の負極シートは、リチウムイオン電池だけでなく、膨張を低減してサイクル性能を向上させることを必要とする他のあらゆる電池、電池モジュール、電池パック又は電力消費装置にも用いることができることが理解されるべきである。
【0083】
[正極シート]
正極シートは、正極集電体及び正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる正極膜層を含み、前記正極膜層は、本願の第1態様の正極活物質を含む。
【0084】
一例として、正極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0085】
いくつかの実施形態において、前記正極集電体は、金属箔又は複合集電体を使用することができる。例えば、金属箔としては、アルミニウム箔を使用することができる。複合集電体は、高分子材料基材及び高分子材料基材の少なくとも1つの表面に形成される金属層を含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することで形成され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、正極活物質は、本分野で周知の電池用正極活物質を使用することができる。正極活物質は、一例として、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれらの各々の変性化合物のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、本願はこれらの材料に限定されず、電池の正極活物質として用いられ得る他の従来の材料を用いることもできる。これらの正極活物質は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、リチウム遷移金属酸化物の例として、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333と略称してもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523と略称してもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(NCM211と略称してもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622と略称してもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811と略称してもよい))、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及びそれらの変性化合物などのうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO4(LFPと略称してもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。
【0087】
いくつかの実施形態において、正極膜層は、選択的に接着剤をさらに含む。一例として、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、正極膜層は、選択的に導電剤を更に含む。一例として、前記導電剤は、超伝導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0089】
いくつかの実施形態において、正極シートは、正極シートを製造するための上記成分、例えば正極活物質、導電剤、接着剤及び任意の他の成分を溶剤(例えばN-メチルピロリドン)に分散させ、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布して、オーブン乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、正極シートを得るという方法によって製造することができる。
【0090】
[電解質]
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願では、電解質の種類を具体的に制限せず、必要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(即ち電解液)のうちの少なくとも1種から選択されてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記電解質は、電解液を使用する。前記電解液は、電解質塩及び溶剤を含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ素酸リチウム(LiAsF6)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサラト)ホウ酸(LiBOB)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート(LiDFOP)及びリチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート(LiTFOP)のうちの1種又は複数種から選択されてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、溶剤は、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸ブチレン(BC)、炭酸フッ化エチレン(FEC)、カルボン酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロパン酸メチル(MP)、プロパン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、ブタン酸メチル(MB)、ブタン酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの1種又は複数種から選択されてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態において、電解液中に選択的に添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤を含んでもよく、正極成膜添加剤を含んでもよく、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などの電池のある特性を改善できる添加剤を含んでもよい。
【0095】
[セパレータ]
いくつかの実施形態において、二次電池中にセパレータがさらに含まれる。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられて隔離の役割を果たす。本願では、セパレータの種類は特に制限されず、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造セパレータを選択して使用することができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つから選択されてもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に制限されない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は、同じであっても異なっていてもよく、特に制限されない。
【0097】
[外装体]
いくつかの実施形態において、二次電池は、正極シート、負極シート及び電解質を封入するための外装体を含むことができる。一例として、正極シート、負極シート及びセパレータは、積層又は捲回により積層構造の二次電池又は捲回構造の二次電池として形成することができ、二次電池が外装体内に封入され、電解質は、電解液を使用することができ、電解液は、二次電池に浸潤する。二次電池において、二次電池の数は1つであっても複数であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0098】
一実施形態において、本願は、電極アセンブリを提供する。いくつかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリとして製造することができる。前記外装体は、上記電極アセンブリ及び電解質を封入するために用いることができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装体は、袋状ソフトパックのようなソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの1種又は複数種を含んでもよい。いくつかの実施形態において、二次電池の外装体は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどのような硬質ケースであってもよい。
【0100】
[二次電池]
本願では、二次電池の形状は特に制限されず、円筒形、四角形又はその他の任意の形状であってもよい。例えば、
図2は一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0101】
いくつかの実施形態において、
図3を参照し、外装体は、筐体51及び蓋板53を含むことができる。筐体51は、底板、底板上に接続される側板、底板と側板とで囲まれる収容空洞を含むことができる。筐体51は、収容空洞に連通する開口部を有し、蓋板53は、前記収容空洞を封止するように前記開口部を覆って設けられる。正極シート、負極シート及びセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリ52として形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容空洞内に封入される。電解液は電極アセンブリ52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、1つであっても複数であってもよく、当業者は具体的な実際の需要に応じて選択することができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、二次電池は、電池モジュールとして組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は1つであっても複数であってもよく、具体的な数は当業者が電池モジュールの応用及び容量に応じて選択することができる。
【0103】
図4は一例としての電池モジュール4である。
図4を参照し、電池モジュール4において、複数の二次電池5は電池モジュール4の長さ方向に沿って順に配列されて設けられ得る。もちろん、その他の任意の方式に応じて配置されてもよい。さらに、複数の二次電池5を締結具で固定することができる。
【0104】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含むことができ、複数の二次電池5が当該収容空間に収納される。
【0105】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールはさらに電池パックとして組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は1つであっても複数であってもよく、具体的な数は当業者が電池パックの応用及び容量に応じて選択することができる。
【0106】
図5及び
図6は一例としての電池パック1である。
図6を参照し、電池パック1には、電池ボックス及び電池ボックスに設けられる複数の電池モジュール4が含まれ得る。電池ボックスは、上部ボックス本体2及び下部ボックス本体3を含み、上部ボックス本体2は、下部ボックス本体3に覆設され、電池モジュール4を収容するための密封空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式に応じて電池ボックス内に配置され得る。
【0107】
また、本願は、本願により提供される二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として使用されてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用されてもよい。前記電力消費装置は、モバイル機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電気自動車(例えば純電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自転車、電気スクーター、電気ゴルフカート、電気トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含むことができるが、これらに限定されない。
【0108】
前記電力消費装置としては、その使用の需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0109】
図7は一例としての電力消費装置である。当該電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド車、又はプラグインハイブリッド車などである。当該電力消費装置の二次電池に対する高い電力及び高いエネルギー密度上の要件を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0110】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどであってもよい。当該装置は一般に軽量化、薄型化が求められ、電源として二次電池を使用することができる。
【実施例】
【0111】
以下において、本願の負極シート、正極シート、セパレータ、電解液、リチウムイオン電池の製造方法について実施例1を用いて詳細に説明し、その他の実施例及び比較例に関する製造パラメータは表1に示される。なお、以下の記述において、負極シート1は、実施例1における負極シートに相当し、電池1は、実施例1におけるリチウムイオン電池に相当する。
【0112】
実施例1
I.リチウムイオン電池の製造
1、負極シートの製造
【0113】
(1)活物質1
活物質1は、グラム容量が340mAh/g、OI値が12の人造黒鉛であり、その製造プロセスは、黒鉛前駆体である針状生コークスを機械的に粉砕し、分級装置で微細粉末を除去し、その後整形機で整形処理し、最後に整形処理された針状生コークスを2650℃で黒鉛化処理して、実施例1の活物質1を得ることとした。
【0114】
(2)活物質2
活物質2は、グラム容量が360mAh/g、OI値が4の人造黒鉛であり、その製造プロセスは、黒鉛前駆体である焼成針コークスをローラー圧延により粉砕し、分級装置で微細粉末を除去し、その後整形機で整形処理し、その後、横型反応釜に軟化点が250℃のアスファルト(黒鉛前駆体及びアスファルトの総重量に基づき、添加量が15%)を添加して造粒し、その後、3100℃で黒鉛化処理を行い、実施例1の活物質2を得ることとした。
【0115】
(3)負極シート
グラム容量が340mAh/g、粉体OI値が12の人造黒鉛、導電剤(Super P)、接着剤(SBR)、増粘剤(CMC)を適量な脱イオン水中で96.2:0.8:1.8:1.2の質量比に応じて十分に撹拌して混合し、均一な負極スラリーにし、この負極スラリーを負極集電体銅箔の2つの表面に塗布し、
図1に示すように、活性層1とし、
グラム容量が360mAh/g、粉体OI値が4の人造黒鉛、導電剤(Super P)、接着剤(SBR)、増粘剤(CMC)を適量な脱イオン水中で96.2:0.8:1.8:1.2の質量比に応じて十分に撹拌して混合し、均一な負極スラリーにし、この負極スラリーを活性層1の表面に塗布して、活性層2とし、
上記シートを乾燥させ、冷間プレスした後に、負極シートを得た。
【0116】
2、正極シートの製造
正極活物質LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523)、導電剤(Super P)、接着剤PVDFを適量なNMP中で96.2:2.7:1.1の重量比に応じて十分に撹拌して混合し、均一な正極スラリーにし、この正極スラリーを正極集電体アルミニウム箔の表面に塗布し、乾燥させ、冷間プレスした後、正極シートを得た。
【0117】
3、電解液の製造
炭酸エチレン(EC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)を体積比1:1:1で混合し、その後LiPF6を上記溶液に均一に溶解して電解液を得た。LiPF6の濃度は1mol/Lである。
【0118】
4、セパレータ
ポリエチレン(PE)フィルムを使用した。
【0119】
5、二次電池の製造
上記正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層し、捲回して電極アセンブリを得て、電極アセンブリを外装体に入れ、上記電解液を添加し、封入、静置、化成、エージングなどの工程を経て、実施例1の二次電池を得た。前記外装体は、長さ×幅×高さ=148mm×28.5mm×97.5mmの硬質筐体を選択した。
【0120】
その他の実施例及び比較例
実施例1と同様にして実施例2-17及び比較例1-13における活物質1及び活物質2を製造した。製造に必要な原料、接着剤、接着剤の添加量、黒鉛化温度及び黒鉛化方式は、具体的に下記の表1に示す。
【0121】
【0122】
II.関連するパラメータ及び電池性能の測定
1、OI値の確定
本願における異なる活物質のOI値は、X線回折計(Bruker D8 Discover)で測定し、測定プロセスは、JB/T 4220-2011に準じて行い、測定して人造黒鉛のX線回折スペクトルを得て、積算して(004)結晶面回折ピークのピーク面積C004及び(110)結晶面回折ピークのピーク面積C110を得た。人造黒鉛のOI値はC004/C110である。測定データの詳細は表2に示される。
【0123】
本願の負極シートにおける活性層2内の活物質2のOI値は、負極シートの表層の20μm厚さの物質を掻き取り、それぞれ溶剤DMC(炭酸ジメチル)、NMP(N-メチルピロリドン)、脱イオン水を用いて超音波洗浄を行い、送風オーブンで乾燥させて活物質2を得るように測定し、上記測定方法によって活物質2のOI値を測定した。
【0124】
本願の負極シートにおける活性層1内の活物質1のOI値は、シートから上層を取り除き、活性層1を20μm保留し、残った20μm厚さの物質を掻き取り、それぞれ溶剤DMC(炭酸ジメチル)、NMP、脱イオン水を用いて超音波洗浄を行い、送風オーブンで乾燥させて活物質1を得るように測定し、上記測定方法によって活物質1のOI値を測定した。
【0125】
2、グラム容量の測定
活物質1(又は活物質2)、導電剤Super P、接着剤PVDFを溶剤NMPと91.6:1.8:6.6の質量比で均一に混合し、スラリーにする。製造されたスラリーを銅箔集電体に塗布し、オーブンで乾燥させた後に使用に備える。金属リチウムシートを対向電極とする。セパレータとしてポリエチレン(PE)フィルムを用いる。炭酸エチレン(EC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)を体積比1:1:1で混合し、その後LiPF6を上記溶液に均一に溶解して電解液を得た。LiPF6の濃度は1mol/Lである。アルゴンガスで保護されたグローブボックスの中で上記各部分をCR2430型ボタン電池として組み立てた。
【0126】
得られたボタン電池を12時間静置した後、0.05Cの電流で0.005Vまで定電流放電し、10分間静置した。さらに、50μAの電流で0.005Vまで定電流放電し、10分間静置した。さらに、10μAの電流で0.005Vまで定電流放電した。その後、0.1Cの電流で2Vまで定電流充電した。充電容量を記録した。充電容量と人造黒鉛質量との比は、製造された人造黒鉛のグラム容量である。測定データの詳細は表2に示される。
【0127】
3、負極シートのサイクル膨張率の測定
負極シートの冷間プレス後の厚さをH0と記し、その後冷間プレス後の負極シート及び正極シート、セパレータ、電解液を二次電池として製造した。その具体的なプロセスはIに記載した通りである。25℃で、製造された二次電池に対して新威充放電機上で100%DOD(100%放電深さ、即ち満充電してから満放電)の1C/1Cサイクルを行った。1回目のサイクルの放電容量(即ち初期容量)を100%と記す。サイクル容量保持率が初期容量の80%になった時に、サイクルを停止した。その後、二次電池を100%SOC(State of Charge、荷電状態)まで充電し、二次電池を解体し、対応する負極シートの厚さを測定し、それをH1として示す。負極シートのサイクル膨張率は、(H1/H0-1)×100%になる。測定データの詳細は表2~表6に示される。
【0128】
4、活性層と集電体との間の接着力の測定
ステンレス板に両面テープ(日力5000NS、幅2cm)を貼り付け、測定対象であるシートを形状と寸法が前記両面テープと一致する(略長方形)ように裁断し、両面テープに貼り付け、シートの短辺と平行な方向に沿ってシート上に隙間を切り、刃を使って活性層と銅箔との接触部(長さ約1cm)を軽く引き剥がし、幅2cmの短冊を隙間に差し込み、しわ接着剤で接着して密着させ、鋼板を高鉄引張機の下部係止溝の中間に垂直に配置し、短冊を高鉄引張機の上部係止溝の中間に配置し、速度を50mm/minに固定し、変位量を60mmと設定した。パソコンでリセットした後、測定開始をクリックし、測定してから接着力データを読み取った。測定データの詳細は表2~表6に示される。
【0129】
5、二次電池のエネルギー密度の測定
25℃で、二次電池を4.3Vまで1/3Cで定電流充電し、その後4.3V下で電流0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、続いて2.8Vまで1/3Cの電流で定電流放電し、この時の電池の放電エネルギーを記録した。電池の放電エネルギーを電池の重量で割った値は、重量エネルギー密度であり、単位がWh/kgである。測定データの詳細は表2~表6に示される。
【0130】
6、二次電池のサイクル容量保持率
25℃で、全ての実施例及び比較例のリチウムイオン電池に対して充放電測定を行った。1つの充放電サイクルは、4.3Vまで1Cの電流で定電流充電した後、4.3V下で電流0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、続いて2.8Vまで1Cの電流で定電流放電し、この時の電池容量をC1として記すようにし、以上は、電池の1つの充放電サイクルである。上記プロセスに応じて1500回サイクルし、この時の電池容量をC1500と記す。サイクル容量保持率=C1500/C1×100%になる。測定データの詳細は表2~表6に示される。
【0131】
【0132】
【0133】
注記:比較例4は、接着力が低すぎて加工が異常であったため、負極シートのサイクル膨張率及びサイクル容量保持率を検出することができない。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
以上のことから分かるように、比較例1~13に比べて、実施例1~17は活物質の粉体OI値及びグラム容量を一定の範囲内に制御し、さらに2層の活性層の活物質間のOI値及びグラム容量の差を特定の範囲内に制御することにより、接着力を確保するとともに、著しく良好なサイクル膨張率、高いエネルギー密度、及び著しく良好なサイクル容量保持率を実現する負極シートを得ることができた。
【0138】
なお、本願は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示的なものに過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲内で技術思想と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を発揮する実施形態はいずれも本願の技術範囲内に含まれる。なお、本願の主旨を逸脱しない限り、実施形態に当業者が想到できる種々の変形を加え、実施形態における構成要素の一部を組み合わせて構築される他の形態も本願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0139】
1 電池パック
2 上部ボックス本体
3 下部ボックス本体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 筐体
52 電極アセンブリ
53 蓋板