(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】曲げガラスおよびその作製方法、ならびに電子デバイス
(51)【国際特許分類】
C03B 19/02 20060101AFI20240517BHJP
C03B 11/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C03B19/02 Z
C03B11/00 E
(21)【出願番号】P 2022566256
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 CN2022078502
(87)【国際公開番号】W WO2022257509
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】202110656751.9
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521218881
【氏名又は名称】オナー デバイス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼ 文彬
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 昆
(72)【発明者】
【氏名】董 ▲長▼富
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-003171(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110963709(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109626816(CN,A)
【文献】特表2017-519715(JP,A)
【文献】特表2016-527360(JP,A)
【文献】特開2020-063182(JP,A)
【文献】特開2017-001937(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050376(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 19/02
C03B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げガラスの作製方法であって、
ガラスバッチをガラス液体へと溶融し、前記ガラス液体を清澄化するステップと、
前記清澄化されたガラス液体を予め設定された形状を有するモールドキャビティ内に導入し、圧縮成形プロセスを使用することによって、前記曲げガラスの形状に対応する形状を有するガラス製品を形成するステップであって、前記ガラス製品のサイズが前記曲げガラスのサイズよりも大きい、ステップと、
成形されたガラス製品をアニーリングするステップと、
前記曲げガラスの前記形状および前記サイズに基づいて、前記アニーリングされたガラス製品を前記曲げガラスに加工するステップと
を含
み、
前記曲げガラスはガラスセラミックスであり、
前記ガラスバッチは、核形成剤をさらに含み、
前記清澄化されたガラス液体の温度と前記モールドの温度との差は500℃以上800℃以下である、曲げガラスの作製方法。
【請求項2】
前記清澄化されたガラス液体を予め設定された形状を有するモールドキャビティ内に導入し、圧縮成形プロセスを使用することによって、前記曲げガラスの形状に対応する形状を有するガラス製品を形成するステップの後であって、前記成形されたガラス製品をアニーリングするステップの前に、
前記成形されたガラス製品に対して結晶化を実行するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の曲げガラスの作製方法。
【請求項3】
前記清澄化されたガラス液体の温度は950℃~1300℃であり、前記モールドの温度は250℃~500℃である、請求項
2に記載の曲げガラスの作製方法。
【請求項4】
前記成形されたガラス製品に対して結晶化を実行するステップは、
分離相が生成され、結晶核が形成され、前記成形されたガラス製品内で結晶が成長するように、前記成形されたガラス製品に対して熱処理を実行するステップ
を含む、請求項
2または3に記載の曲げガラスの作製方法。
【請求項5】
前記成形されたガラス製品に対して熱処理を実行するステップは、
前記成形されたガラス製品を加熱キャビティ内に配置し、前記加熱キャビティに対して熱処理を実行するステップ、または、
前記成形されたガラス製品に対して熱処理を実行するように、温度が徐々に上昇する複数の加熱キャビティに前記成形されたガラス製品を連続的に移送し、各加熱キャビティ内で予め設定された時間にわたり前記成形されたガラス製品を断熱するステップ
を含む、請求項
4に記載の曲げガラスの作製方法。
【請求項6】
前記熱処理の温度変化範囲は、第1の温度から第2の温度までであり、
前記第1の温度は、前記成形されたガラス製品に対応するモールドの温度であり、前記第2の温度と前記第1の温度との差は、100℃以上400℃以下である、請求項
4に記載の曲げガラスの作製方法。
【請求項7】
前記成形されたガラス製品をアニーリングする前記ステップは、
前記成形されたガラス製品が室温まで冷却されるように、前記成形されたガラス製品に対してプログラム冷却を実行するステップ
を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の曲げガラスの作製方法。
【請求項8】
前記成形されたガラス製品が室温まで冷却されるように、前記成形されたガラス製品に対してプログラム冷却を実行するステップは、
前記成形されたガラス製品を加熱キャビティ内に配置し、前記加熱キャビティに対してプログラム冷却を実行するステップ、または、
前記成形されたガラス製品に対してプログラム冷却を実行するように、温度が徐々に低下する複数の加熱キャビティに前記成形されたガラス製品を連続的に移送し、各加熱キャビティ内で予め設定された時間にわたり前記成形されたガラス製品を断熱するステップ
を含む、請求項
7に記載の曲げガラスの作製方法。
【請求項9】
前記プログラム冷却の速度は、1℃/分~100℃/分である、請求項
7に記載の曲げガラスの作製方法。
【請求項10】
前記圧縮成形プロセスにおいて、ダイクリアランスのサイズと対応する位置での前記曲げガラスの厚さとの差は、0以上0.1mm以下である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の曲げガラスの作製方法。
【請求項11】
前記圧縮成形プロセスにおいて、圧縮成形圧力は0.1MPa~0.5MPaである、請求項1から
3のいずれか一項に記載の曲げガラスの作製方法。
【請求項12】
前記圧縮成形プロセスにおいて、圧縮成形の作業環境は真空または不活性ガス保護雰囲気である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の曲げガラスの作製方法。
【請求項13】
前記ガラス製品の前記サイズと前記曲げガラスの前記サイズとの差が0.02mm以上0.5mm以下である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の曲げガラスの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月11日に中国国家知識産権局に出願された、「曲げガラスおよびその作製方法、ならびに電子デバイス」と題された中国特許出願第202110656751.9号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、電子製品の技術分野に関し、特に、曲げガラスおよびその作製方法、ならびに電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、曲げガラスは、電子デバイスに広く適用されている。例えば、曲げガラスは、端末製品(携帯電話またはタブレットコンピュータなど)のカバープレートとして使用され得る。
【発明の概要】
【0004】
本出願の主な目的は、曲げガラスおよびその作製方法、ならびに電子デバイスを提供することである。高温から低温への成形工程は低減されることができ、作製工程は短縮されることができる。したがって、関連技術における高温から低温に起因する資源浪費は低減されることができ、製造コストが低減される。
【0005】
前述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を用いる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、本出願は、曲げガラスの作製方法を提供し、本方法は、ガラスバッチをガラス液体へと溶融し、ガラス液体を清澄化するステップと、清澄化されたガラス液体を予め設定された形状を有するモールドキャビティ内に導入し、圧縮成形プロセスを使用することによって、曲げガラスの形状に対応する形状を有するガラス製品を形成するステップであって、ガラス製品のサイズが曲げガラスのサイズよりも大きい、ステップと、成形されたガラス製品をアニーリングするステップと、曲げガラスの形状およびサイズに基づいて、アニーリングされたガラス製品を曲げガラスに加工するステップとを含む。ガラス溶融物がモールドに直接導入され、曲げガラスに必要な3D形状が圧縮成形プロセスにより作製された後、室温まで徐々に冷却される。冷却された3Dガラスは、曲げガラスを得るために、続いて機械加工され得る。曲げガラスが板ガラス(すなわち、2Dガラス)から熱間曲げによって形成される関連技術と比較して、高温から低温への板ガラスの形成プロセスが省略されるため、高温から低温に起因する資源浪費は低減されることができ、曲げガラスの製造コストは低減されることができる。
【0007】
第1の態様の一実施態様では、清澄化されたガラス液体の温度とモールドの温度との差は250℃以上500℃以下である。曲げガラスがベースガラスである場合、ガラス液体の冷却が速すぎるときに冷却によるガラスの引張応力によってガラスが破壊されること、およびガラス液体の冷却が遅すぎるときにガラスが透明性を失うおそれがあることを回避するように、清澄化されたガラス液体の温度とモールドの温度との差が上記の範囲内に制御される。
【0008】
第1の態様の一実施態様では、清澄化されたガラス液体の温度は950℃~1300℃であり、モールドの温度は450℃~800℃である。例えば、ガラスバッチは、曲げガラスを作製するためのシリコン砂(二酸化ケイ素または石英砂)、五酸化リン、アルミナ、酸化ホウ素、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、および炭酸カルシウムを含み得る。
【0009】
第1の態様の一実施態様では、曲げガラスはガラスセラミックスであり、ガラスバッチは、核形成剤をさらに含み、清澄化されたガラス液体を予め設定された形状を有するモールドキャビティ内に導入し、圧縮成形プロセスを使用することによって、曲げガラスの形状に対応する形状を有するガラス製品を形成するステップの後であって、成形されたガラス製品をアニーリングするステップの前に、本方法は、成形されたガラス製品に対して結晶化を実行するステップをさらに含む。3Dガラスがモールド内に形成された後、結晶化がガラス製品に対して直接実行されることができ、それによって作製効率を改善する。また、ガラスバッチに核生成剤を添加することにより、結晶化度が比較的高いガラスセラミックスを得るために結晶化プロセスを制御しやすくなり、結晶化速度を高めることができる。
【0010】
第1の態様の一実施態様では、前記清澄化されたガラス液体の温度と前記モールドの温度との差は500℃以上800℃以下である。曲げガラスがガラスセラミックスである場合、清澄化されたガラス液体の温度とモールドの温度との差が上記の範囲内に制御される点で、曲げガラスがベースガラスである場合と異なり、ガラス液体の冷却が速すぎることによるガラス破壊は考慮されない。逆に、冷却が遅すぎるとガラスの失透が起こりやすく、結晶核が急激に成長してガラスが割れやすくなる。また、曲げガラスがベースガラスである場合と同様に、ガラス液体の冷却が遅すぎると、ガラス失透条件を効果的に制御することができず、ガラス失透により透明性を失うという問題がある。
【0011】
第1の態様の一実施態様では、清澄化されたガラス液体の温度は950℃~1300℃であり、モールドの温度は250℃~500℃である。例えば、ガラスバッチは、曲げガラスセラミックスを作製するためのシリコン砂(二酸化ケイ素または石英砂)、五酸化リン、アルミナ、酸化ホウ素、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、および酸化ジルコニウムを含み得る。
【0012】
第1の態様の一実施態様では、成形されたガラス製品に対して結晶化を実行するステップは、分離相が生成され、結晶核が形成され、成形されたガラス製品内で結晶が成長するように、成形されたガラス製品に対して熱処理を実行するステップを含む。
【0013】
第1の態様の一実施態様では、成形されたガラス製品に対して熱処理を実行するステップは、成形されたガラス製品を加熱キャビティ内に配置し、加熱キャビティに対して熱処理を実行するステップ、または、成形されたガラス製品に対して熱処理を実行するように、温度が徐々に上昇する複数の加熱キャビティに成形されたガラス製品を連続的に移送し、各加熱キャビティ内で予め設定された時間、成形されたガラス製品を断熱するステップを含む。
【0014】
第1の態様の一実施態様では、熱処理の温度変化範囲は、第1の温度から第2の温度までであり、第1の温度は、成形されたガラス製品に対応するモールドの温度であり、第2の温度と第1の温度との差は、100℃以上400℃以下である。ガラスセラミックスの結晶成長に必要な温度条件が満たされることができ、結晶化度が高められることができる。
【0015】
第1の態様の一実施態様では、成形されたガラス製品をアニーリングするステップは、成形されたガラス製品が室温に冷却されるように、成形されたガラス製品に対してプログラム冷却を実行するステップを含む。プログラム冷却は、プログラム制御によって冷却するプロセスである。例えば、脱型後の温度から室温までガラス製品を低下させるために、プログラムされた加熱キャビティ設定プログラムが使用されることができ、その結果、徐冷および室温への熱応力の解放が実施されることができる。
【0016】
第1の態様の一実施態様では、成形されたガラス製品が室温に冷却されるように、成形されたガラス製品に対してプログラム冷却を実行するステップは、成形されたガラス製品を加熱キャビティ内に配置し、加熱キャビティに対してプログラム冷却を実行するステップ、または、成形されたガラス製品に対してプログラム冷却を実行するように、温度が徐々に低下する複数の加熱キャビティに成形されたガラス製品を連続的に移送し、各加熱キャビティ内で予め設定された時間、成形されたガラス製品を断熱するステップを含む。
【0017】
第1の態様の一実施態様では、プログラム冷却の速度は、1℃/分~100℃/分である。
【0018】
第1の態様の一実施態様では、圧縮成形プロセスにおいて、ダイクリアランスのサイズと対応する位置での曲げガラスの厚さとの差は、0以上0.1 mm以下である。ダイクリアランスが大きすぎたり小さすぎたりすることを防止するように、ダイクリアランスの均一性は可能な限り保たれ得る。
【0019】
第1の態様の一実施態様では、圧縮成形プロセスにおいて、成形圧力は0.1 Mpa~0.5 MPaである。成形品質は改善され得る。
【0020】
第1の態様の実施態様では、圧縮成形プロセスにおいて、成形の作業環境は真空または不活性ガス保護雰囲気である。
【0021】
第1の態様の一実施態様では、ガラス製品のサイズと曲げガラスのサイズとの差が0.02 mm以上0.5 mm以下である。ガラス製品のサイズおよび形状は、安定した加工品質、高い加工精度、および高い繰り返し精度で曲げガラスを得るために、CNC(Computerized Numerical Control、コンピュータ数値制御)精密機械加工によって変更されることができ、バッチ生産に使用されることができる。
【0022】
第2の態様によれば、前述の曲げガラスの作製方法を使用することにより作製された曲げガラスが提供される。曲げガラスは、電子デバイスのカバープレートの設計要件を満たすことができ、曲げガラスセラミックスの結晶化度は、適用要件を満たすことができる。
【0023】
第2の態様の一実施態様では、曲げガラスがベースガラスである場合、曲げガラスのビッカース硬さは550 kgf/mm2~650 kgf/mm2であり、曲げガラスがガラスセラミックスである場合、曲げガラスのビッカース硬さは650 kgf/mm2~750 kgf/mm2である。同じ試験条件下で、曲げガラスは、関連技術で作製された曲げガラスの硬さとほぼ同等の硬さを有し、適用要件を満たすことができる。
【0024】
第2の態様の一実施態様では、曲げガラスがベースガラスである場合、曲げガラスのヤング率は70 Gpa~90 Gpaであり、曲げガラスがガラスセラミックスである場合、曲げガラスのヤング率は90 Gpa~105 Gpaである。同じ試験条件下で、曲げガラスは、関連技術で作製された曲げガラスのヤング率とほぼ同等のヤング率を有し、適用要件を満たすことができる。
【0025】
第2の態様の一実施態様では、曲げガラスがベースガラスである場合、曲げガラスの密度は2.4 g/cm3~2.5 g/cm3であり、曲げガラスがガラスセラミックスである場合、曲げガラスの密度は2.45 g/cm3~2.65 g/cm3である。同じ試験条件下で、曲げガラスの密度は、関連技術で作製された曲げガラスの密度とほぼ同じであり、適用要件を満たすことができる。
【0026】
第2の態様の一実施態様では、曲げガラスがベースガラスである場合、曲げガラスの熱膨張係数は60×10-7/℃~110×10-7/℃であり、曲げガラスがガラスセラミックスである場合、曲げガラスの熱膨張係数は100×10-7/℃~110×10-7/℃である。同じ試験条件下で、曲げガラス1の熱膨張係数は、関連技術で作製された曲げガラスの熱膨張係数と同等であり、適用要件を満たすことができる。
【0027】
第2の態様の一実施態様では、曲げガラスがガラスセラミックスであり、曲げガラスの主結晶相がペタライトと二ケイ酸リチウムとのうちの一方または両方を含む場合、曲げガラスの結晶化度は75重量%~90重量%であり、曲げガラスの主結晶相がメタケイ酸リチウムまたはコージライトである場合、曲げガラスの結晶化度は30重量%~50重量%である。熱処理系が同じである場合、曲げガラスは、関連技術で作製された曲げガラスとほぼ同じ結晶化度および主結晶相を有する。
【0028】
第3の態様によれば、上述の曲げガラスを含む電子デバイスが提供される。
【0029】
第3の態様の一実施態様では、電子デバイスは、携帯電話、タブレットコンピュータ、またはウェアラブルインテリジェント製品である。
【0030】
本出願は、曲げガラスおよびその作製方法、ならびに電子デバイスを提供する。ガラス溶融物がモールドに直接導入され、曲げガラスに必要な3D形状が圧縮成形プロセスにより作製された後、室温まで徐々に冷却される。冷却された3Dガラスの形状およびサイズは、曲げガラスを得るためにCNC機械加工を使用することによってトリミングされる。曲げガラスが板ガラス(すなわち、2Dガラス)から熱間曲げによって形成される関連技術と比較して、高温から低温への板ガラスの形成プロセスが省略されるため、高温から低温に起因する資源浪費は低減されることができ、曲げガラスの製造コストは低減されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本出願による携帯電話の表および裏カバーとして使用される曲げガラスの構造図である。
【
図2】本出願による曲げガラスの作製方法のフローチャートである。
【
図3】本出願による曲げガラスの内部構造図である。
【
図4】本出願による別の曲げガラスの内部構造図である。
【
図5】本出願によるガラス製品の作製方法のフローチャートである。
【
図6】本出願によるガラス製品の別の作製方法のフローチャートである。
【
図7】本出願による曲げガラスの別の作製方法のフローチャートである。
【
図8】関連技術による曲げガラスの作製方法のフローチャートである。
【
図9】関連技術による曲げガラスの別の作製方法のフローチャートである。
【
図10】関連技術による曲げガラスのさらに別の作製方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、添付の図面を参照して本出願の実施形態を詳細に説明する。
【0033】
本開示のいくつかの実施形態は電子デバイスを提供し、電子デバイスは曲げガラスを含む。電子デバイスは、電子製品または端末と呼ばれることもあり、携帯電話、モバイルコンピュータ、電子ブック、ポータブルアンドロイドデバイス(portable android device、Pad)、スマートテレビ、パーソナルデジタルアシスタント(Personal Digital Assistant、PDA)、ウェアラブルインテリジェント製品などを含むことができる。ウェアラブルインテリジェント製品は、メディアプレーヤ、スマートウォッチ、スマートグラス、スマートバンドなどを含むことができるが、これらに限定されない。
【0034】
曲げガラスは、板ガラスに対比して説明される。曲げガラスの片面が曲面であるか、両面が曲面であるかに応じて、曲げガラスは、片側曲げガラスと両側曲げガラスとを含み得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、電子デバイスは、携帯電話、タブレットコンピュータ、またはウェアラブルインテリジェント製品であり得る。
【0036】
図1に示されるように、
図1は、曲げガラス1が携帯電話の表および裏カバーのカバープレートとして働き、曲げガラス1が両側曲げガラスである場合を示す。
図1の(a)は、携帯電話の表および裏カバーのカバープレートとして働く曲げガラス1の正面図である。
図1の(b)は、携帯電話の表および裏カバーのカバープレートとして働く曲げガラス1の側面図である。
【0037】
いくつかの実施形態では、曲げガラス1がカバープレートとして電子デバイスに適用される場合、塗料層および/または指紋防止層が曲げガラス1の表面1a上にさらに配置されてもよい。
【0038】
曲げガラス1は、ケイ素-アルミニウムガラス材料から作られてもよく、塗料層は、シルクスクリーン印刷インクを使用することにより形成されてもよい。指紋防止層は、無色無臭の透明な液体を塗布することによって形成されたコーティングであるため、ガラス、金属、セラミック、およびプラスチックなどの材料は、防水、防脂、耐指紋性であり、製品表面は滑らかであり、指紋を防止するために使用され得る。
【0039】
本開示のいくつかの実施形態は、曲げガラス1の作製方法を提供する。
図2に示されるように、本方法は以下のステップを含む。
【0040】
S1.ガラスバッチをガラス液体へと溶融し、ガラス液体を清澄化する。
【0041】
曲げガラス1は、ケイ素-アルミニウムガラス材料で作られてもよい。この場合、ガラスバッチはアルミニウム-ケイ素ガラス材料である。例えば、Al2O3およびSiO2のモル百分率の合計は、75 mol%より大きい。従来のナトリウム-カルシウムガラスと比較して、曲げガラス1は、より良好な物理的および化学的特性を有する。
【0042】
例えば、いくつかの実施形態では、曲げガラス1のガラスバッチは、ケイ素砂(二酸化ケイ素または石英砂)、五酸化リン、アルミナ、酸化ホウ素、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、および炭酸カルシウムを含むことができる。
【0043】
これらの実施形態では、曲げガラス1は、より良好な化学的安定性、電気的絶縁性、機械的強度、およびより低い熱膨張係数を有する。
【0044】
曲げガラス1に結晶が存在するか否かに応じて、2つの可能な場合があり得る。第1の場合、
図3に示されるように、曲げガラス1はガラスセラミックスである。この場合、曲げガラス1内には、多数の微結晶が析出しており、曲げガラス1は、微結晶相とガラス相とから構成される多相複合体である。第2の場合、
図4に示されるように、曲げガラス1はガラスセラミックスではない。この場合、曲げガラス1には結晶が存在しない、すなわち、曲げガラス1は脆弱なベースガラスである。ベースガラスは、ガラスセラミックスの前駆体であり、結晶が析出していない状態であり、結晶とガラス体から構成される。ベースガラスは、ガラスとセラミックスの二重の特性を有する。ベースガラスは、セラミックスよりも透明であり、ガラスよりも靭性が強く、応用の見通しが良好であり、機械構造材料、電子および電気絶縁材料、大規模集積回路の基板材料、マイクロ波炉耐熱装置、耐薬品性および耐食性材料、ならびに耐鉱山性材料として使用され得る。ベースガラスは、高い機械的強度、優れた絶縁性、低い誘電損失、および安定した誘電率を有する。ベースガラスの熱膨張係数は、広い範囲内で調整されることができ、耐薬品性、耐摩耗性、良好な熱安定性、および高い使用温度の利点を有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、
図3に示されるように、曲げガラス1はガラスセラミックスである。
【0046】
これらの実施形態において、ガラスセラミックスは、ベースガラスを結晶化することによって得られ得る。ベースガラスは非晶質固体である。熱力学的な観点から、ベースガラスは準安定状態(すなわち、平衡状態よりも自由エネルギーの高い状態で存在し、非平衡準安定状態にある物質)にあり、結晶よりも高い内部エネルギーを有する。そのため、特定の条件において、ベースガラスは結晶状態に変換され得る。力学的な観点から、冷却プロセス中に、ガラス融液(すなわち、溶融によって得られるガラス液体)の粘度が急激に上昇するため、結晶核の形成および結晶の成長が抑制され、結晶性固体の成長が防止される。核生成剤が添加されない場合、不均質な結晶化メカニズムを使用することにより、熱力学的可能性および速度論的抑制が十分に利用され、特定の条件では互いに相補的な物理的プロセスで新たなバランスが形成され、ガラスセラミックスを得る。しかし、このように不均一な結晶化メカニズムは、比較的均一性の低いガラスセラミックスを得るために使用される。核生成剤が添加されると、ベースガラス中に結晶核が形成された後、熱処理により結晶核が成長し、均一に分布したガラスセラミックスを得る。
【0047】
したがって、本開示のいくつかの実施形態では、曲げガラス1がガラスセラミックスである場合、曲げガラス1のガラスバッチは核生成剤をさらに含む。ガラスバッチに核生成剤を添加することにより、核生成剤が添加されない場合よりも、結晶化度が高く分布が均一なガラスセラミックスを得るように結晶化プロセスを制御しやすくなり、結晶化速度が高められ得る。
【0048】
上記の例では、曲げガラス1がガラスセラミックスである場合、曲げガラス1のガラスバッチは、上記の成分に加えて、ジルコニアなどの核生成剤をさらに含む。ガラスバッチ中のジルコニアのモル百分率は、0より大きく10%以下であり得る。
【0049】
曲げガラス1のガラスバッチの溶融プロセス中に、ガラスバッチが高温で分解(ガス化)してガスを生成する。ガラス液体に清澄剤を添加することにより、ガラス液体中の気泡が除去されることができ、ガラス液体の粘度が低減されることができる。
【0050】
曲げガラス1のガラスバッチは、ケイ素砂(二酸化ケイ素または石英砂)、五酸化リン、アルミナ、酸化ホウ素、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどを含む。ガラス溶融プロセスでは、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが高温で分解され、二酸化炭素を生成することがある。清澄化後、ガラス液体の組成は、SiO2、Al2O3、P2O、B2O3、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaOなどを含むことができる。
【0051】
いくつかの例では、曲げガラス1がベースガラスである場合、SiO2、Al2O3、P2OおよびB2O3のモル百分率は70%~85%であることができ、Li2O、Na2OおよびK2Oのモル百分率は7%~30%であることができ、MgOおよびCaOのモル百分率は0%~8%であることができる。
【0052】
曲げガラス1がガラスセラミックスである場合、SiO2、Al2O3、P2OおよびB2O3のモル百分率は70%~85%であることができ、Li2O、Na2OおよびK2Oのモル百分率は7%~24%であることができ、MgOおよびCaOのモル百分率は0%~6%であることができ、ジルコニアのモル百分率は0%~10%であることができる。
【0053】
曲げガラス1のガラスバッチが核形成剤をさらに含む場合に、比較的高い結晶化度および均一な分布を有するガラスセラミックスが得られ得る前述の場合によれば、いくつかの実施形態では、ジルコニアのモル百分率は1%~10%であることが知られ得る。すなわち、ジルコニアのモル百分率は1%以上である。
【0054】
S2.
図5および
図6に示されるように、清澄化されたガラス液体は、予め設定された形状を有するモールド2のキャビティに導入され、圧縮成形プロセスを使用することによって、曲げガラス1の形状に対応する形状を有するガラス製品3を形成し、ガラス製品3のサイズは曲げガラス1のサイズよりも大きい。
【0055】
モールド2は、可動モールド21および固定モールド22(または凸型および凹型)を含み、両者は組み合わされ、または分離されることができる。モールドが分離されると加工物が取り出され、モールドが組み合わされると、成形材料が成形のためにモールド2のキャビティ内に射出される。
【0056】
成形プレスとは、圧縮成形を指す。それは、閉じたモールドキャビティ(すなわち、モールドキャビティ)内で加熱および加圧することによって、成形材料が製品へと形成される加工方法である。
【0057】
ガラスが混合物であり、非晶質体であり、結晶性材料とは異なり、一定の沸点を有さないことに基づいて、ガラスが特定の温度範囲(すなわち、軟化温度範囲)内で固体から液体に変換されることが知られ得る。軟化温度範囲はTg~T1であり、Tgは転移温度であり、T1は液相線温度である。転移温度とは、ガラス状態から高弾性状態への転移に対応する温度であり、液相線温度とは、物体が液体状態から固体状態へと変化し始める最高温度である。
【0058】
上記実施形態では、清澄化されたガラス液体が予め設定された形状を有するモールド2のキャビティに導入され、モールド2の温度が制御される。加圧下で、清澄化されたガラス液体は、冷却プロセスにおいて溶融状態からガラス状態に冷却され、モールド2のキャビティとほぼ同じ外観を有するガラス製品3を得る。モールド2のキャビティの予め設定された形状は、曲げガラス1の形状とほぼ同じであり得る。このようにして、曲げガラス1とほぼ同じ形状のガラス製品3が得られ得る。曲げガラス1は、ガラス製品3のサイズを曲げガラス1のサイズよりも大きくなるように制御し、さらにガラス製品3を加工(切削および研磨など)することによって得られ得る。
【0059】
上記のガラス状態は溶融状態からの急冷によって一般に得られることに基づいて、溶融状態がガラス状態に変化すると、冷却プロセスでガラス粘度が急激に上昇し、物質点が時間不足により規則的に配置されずに結晶を形成し、結晶化の潜熱が放出されないことが知られ得る。したがって、ガラス状態の材料は、結晶状態の材料よりも相対的に高い内部エネルギーを有し、ガラス状態の材料のエネルギーは、溶融状態と結晶状態との間にあり、準安定状態に属する。機械的な観点から、ガラスは不安定な高エネルギー状態にあり、例えば、低エネルギー状態変換の傾向、すなわち失透の傾向がある。したがって、曲げガラス1がベースガラスである場合、ガラス液体を冷却するプロセスにおいて、ガラス液体の冷却が速すぎるときに冷却によるガラスの引張応力によってガラスが破壊されること、およびガラス液体の冷却が遅すぎるときにガラス失透により透明性を失うおそれがあることを回避するために、任意選択で、
図5に示されるように、清澄化されたガラス液体とモールド2との温度差は250℃以上または500℃以下である。しかし、曲げガラス1がガラスセラミックスである場合、曲げガラス1がベースガラスである場合と異なり、ガラス液体の冷却が遅すぎると、ガラス失透が起こりやすくなり、結晶核が速く成長してガラスが割れやすくなる。また、曲げガラス1がベースガラスである場合と同様に、ガラス液体の冷却が遅すぎるため、ガラス失透条件を効果的に制御することができず、ガラス失透により透明性を失う。そのため、任意選択で、
図6に示されるように、曲げガラス1がガラスセラミックスである場合、清澄化されたガラス液体とモールド2との温度差は、500℃以上800℃以下である。
【0060】
上記の例に基づいて、曲げガラス1のガラスバッチがケイ素砂(二酸化ケイ素または石英砂)、五酸化リン、アルミナ、酸化ホウ素、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどを含み、曲げガラス1がベースガラスである場合、清澄化されたガラス液体の温度は950℃~1300℃であることができ、モールド2の温度は450℃~800℃であることができる。すなわち、曲げガラス1がベースガラスである場合、清澄化されたガラス液体の温度とモールド2の温度との差は、250℃以上500℃以下である。したがって、清澄化されたガラス液体の温度が950℃である場合、モールド2の温度は、450℃(950-500)~700℃(950-250)の任意の値であることができ、清澄化されたガラス液体の温度が1300℃である場合、モールド2の温度は800℃(1300-500)であることができ、清澄化されたガラス液体の温度が1200℃である場合、モールド2の温度は、700℃(1200-500)~800℃(1200-400)の任意の値であることができ、清澄化されたガラス液体の温度が1100℃である場合、モールド2の温度は、600℃(1100-500)~800℃(1100-300)の任意の値であることができ、清澄化されたガラス液体の温度が1000℃である場合、モールド2の温度は、500℃(1000-500)~750℃(1000-250)の任意の値であることができることが知られ得る。
【0061】
曲げガラス1のガラスバッチがケイ素砂(二酸化ケイ素または石英砂)、五酸化リン、アルミナ、酸化ホウ素、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどを含み、曲げガラス1がガラスセラミックスである場合、清澄化されたガラス液体の温度は950℃~1300℃であることができ、モールド2の温度は250℃~500℃であることができる。すなわち、曲げガラス1がガラスセラミックスである場合、清澄化されたガラス液体の温度とモールド2の温度との差は、500℃以上800℃以下である。したがって、清澄化されたガラス液体の温度が950℃である場合、モールド2の温度は、250℃(950-700)~500℃(950-450)の任意の値であることができ、清澄化されたガラス液体の温度が1300℃である場合、モールド2の温度は500℃(1300-800)であることができ、清澄化されたガラス液体の温度が1200℃である場合、モールド2の温度は、400℃(1200-800)~700℃(1200-500)の任意の値であることができ、清澄化されたガラス液体の温度が1100℃である場合、モールド2の温度は、300℃(1100-800)~500℃(1100-600)の任意の値であることができ、清澄化されたガラス液体の温度が1000℃である場合、モールド2の温度は、250℃(1000-750)~500℃(1000-500)の任意の値であることができることが知られ得る。
【0062】
圧縮成形工程では、清澄化されたガラス液体がモールド2のキャビティ内に導入された後、組み合わされたモールドによって加圧されることにより、キャビティの表面形状とほぼ同じ外観を有するガラス製品3に固化される。このプロセスにおいて、モールド2の温度は圧縮成形温度であり、圧縮成形時間は、清澄化されたガラス液体の温度をモールド2と同じ温度に冷却するのに要する時間であり得る。
【0063】
前述のモールド組合せプロセスでは、大きすぎる、または小さすぎるダイクリアランスが製品成形に影響を及ぼす。ダイクリアランスが大きすぎる場合、製品が不完全になり得る。ダイクリアランスが小さすぎる場合、製品のバリおよびトリミングが多すぎる可能性がある。したがって、ダイクリアランスは大きすぎても小さすぎてもならない。
【0064】
いくつかの実施形態では、ダイクリアランスのサイズと対応する位置での曲げガラス1の厚さとの差は、0.1 mmを超えない。すなわち、等厚製品であっても、不等厚製品であっても、ダイクリアランスの大きさと対応する位置における曲げガラス1の厚さとの差が0.1 mmを超えないため、ダイクリアランスの均一性を極力維持されることができるとともに、ダイクリアランスが大きすぎたり小さすぎたりする場合が回避されることができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、圧縮成形プロセスにおいて、圧縮成形圧力は0.1 Mpa~0.5 Mpaである。成形品質は改善され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、圧縮成形プロセスにおいて、圧縮成形の作業環境は真空または不活性ガス保護雰囲気である。成形は、成形機で実行されてもよい。不活性ガスは、窒素、アルゴンなどであってもよい。
【0067】
モールドの材質は特に限定されない。作製プロセスは高温高圧環境で実行される必要があるため、いくつかの実施形態では、モールド2の材料は超硬合金材料またはグラファイト材料であってもよく、超硬合金材料の表面は超硬コーティング(窒化チタンまたはダイヤモンド様膜など)でめっきされてもよく、超硬合金材料は鋼であってもよい。グラファイト材料の表面には、炭化ケイ素などがめっきされていてもよい。
【0068】
ガラス製品3のサイズと曲げガラス1のサイズとの差が、ガラス製品3のサイズが曲げガラス1のサイズよりも大きく、その後の機械的処理などによってガラス製品3が曲げガラス1に機械加工され得る限り、特に限定されない。
【0069】
いくつかの実施形態では、ガラス製品3のサイズと曲げガラス1のサイズとの差が0.02 mm以上0.5 mm以下である。ガラス製品3のサイズおよび形状は、安定した加工品質、高い加工精度、および高い繰り返し精度で曲げガラス1を得るために、CNC(Computerized Numerical Control、コンピュータ数値制御)精密機械加工によって変更されることができ、バッチ生産に使用されることができる。
【0070】
S3.成形されたガラス製品3をアニーリングする。
【0071】
ガラス製品3が脱型された後、温度は比較的高い。ガラス製品3が室温で直接に自然冷却されると、割れやすくなり、その結果、ガラス製品3が破損する。したがって、ガラス製品3は、徐冷によって熱応力を室温に解放する必要があり、すなわち、ガラス製品3はアニーリングされ得る。アニーリングプロセスでは、ガラス製品3は依然としてモールド内に配置されてもよい。
【0072】
アニーリングは、金属材料および非金属材料を含む材料の熱処理プロセスである。例えば、ガラス製品の場合、アニーリングは、ガラス製品が特定の温度までゆっくりと加熱され、十分な期間維持され、次いで適切な速度(通常は徐冷、時には制御冷却)で冷却されるプロセスである。
【0073】
いくつかの実施形態では、成形されたガラス製品3をアニーリングするステップは、
成形されたガラス製品3が室温まで冷却されるように、成形されたガラス製品3に対してプログラム冷却を実行するステップを含む。
【0074】
ここで、室温とは、室内温度をいう。なお、異なる地域に対して、室内温度は、曲げガラス1が作製される地域の室内温度であってもよい。いずれの地域についても、室内温度は、季節変化や自然環境に基づいて決定され得る。すなわち、いずれの地域についても、室内温度は、局所的な周囲温度とほぼ同じであってもよい。
【0075】
例えば、室温は25℃~35℃であり得る。
【0076】
プログラム冷却は、プログラム制御によって冷却するプロセスである。例えば、脱型後の温度から室温までガラス製品3を低下させるために、プログラムされた加熱キャビティ設定プログラムが使用されることができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、成形されたガラス製品3が室温まで冷却されるように、成形されたガラス製品3に対してプログラム冷却を実行するステップは、
成形されたガラス製品3を加熱キャビティ内に配置し、加熱キャビティに対してプログラム冷却を実行するステップ、または、
成形されたガラス製品3に対してプログラム冷却を実行するように、温度が徐々に低下する複数の加熱キャビティに成形されたガラス製品3を連続的に移送し、各加熱キャビティ内で第1の予め設定された時間、成形されたガラス製品3を断熱するステップを含む。
【0078】
これらの実施形態では、例えば、前述の加熱キャビティは、マッフル炉の断熱キャビティであってもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、プログラム冷却の速度は、1℃/分~100℃/分であってもよい。例えば、成形されたガラス製品3が加熱キャビティ内に配置され、プログラム冷却が加熱キャビティに対して実行される場合、プログラム冷却が完了するように、加熱キャビティのプログラム冷却の速度は1℃/分に設定され得る。成形されたガラス製品が、温度が徐々に低下する複数の加熱キャビティに連続的に移送され、成形されたガラス製品3が各加熱キャビティ内で第1の予め設定された時間断熱されて、成形されたガラス製品3に対してプログラム冷却を実行する場合、複数の加熱キャビティ間の温度差は100℃に設定されてもよく、成形されたガラス製品が各加熱キャビティ内で1分間断熱(すなわち、第1の予め設定された時間は1分である)して、プログラム冷却が完了することもできる。また、成形されたガラス製品3が1つの加熱キャビティ内でプログラム冷却される場合と比較して、冷却速度は改善され得るが、冷却後の成形されたガラス製品3の密度は比較的低い。
【0080】
なお、本明細書において、上記は、曲げガラス1がベースガラスであり、ガラス製品3が成形された後にガラス製品3がアニールされる場合についてのみ説明していることに留意されたい。曲げガラス1がガラスセラミックスである場合、作製方法は、ガラス製品3に対して結晶化を実行するステップをさらに含むことが当業者には理解されよう。このステップは、アニーリング後に行われてもよく、またはアニーリング前に行われてもよく、本明細書では特に限定されない。
【0081】
いくつかの実施形態では、曲げガラス1はガラスセラミックスであり、清澄化されたガラス液体を予め設定された形状を有するモールド2のキャビティ内に導入し、圧縮成形プロセスを使用することによって、曲げガラス1の形状に対応する形状を有するガラス製品3を形成するステップの後であって、成形されたガラス製品3をアニーリングするステップの前に、
図7に示されるように、本方法は、S4.成形されたガラス製品3に対して結晶化を実行するステップ、をさらに含む。
【0082】
結晶化は、非晶質が結晶に変換されるプロセスである。非晶質とは、原子配列が長距離秩序を有さず、融点が固定されていない物質であり、準安定状態にあり、定常状態に自発的に変化する傾向がある。結晶とは、3次元空間において内部の物質点(原子、分子、イオン)が周期的かつ反復的に配列された物質であり、長距離秩序(ミクロンスケールより大きい範囲で規則的な配列)を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、成形されたガラス製品3に対して結晶化を実行するステップは、
図6に示されるように、分離相が生成され、結晶核が形成され、成形されたガラス製品3内で結晶が成長するように、成形されたガラス製品3に対して熱処理を実行するステップを含む。
【0084】
熱処理は、ガラスセラミックスから所定の結晶相およびガラス相が生成される重要なステップである。ガラス製品3の組成が決定された後、ガラスセラミックスの構造および性能は、熱処理系(熱処理温度および断熱時間)に主に依存する。熱処理プロセスにおいて、ガラス製品3には、分離相、結晶核形成、結晶成長、二次結晶形成などの現象が生じ得る。異なるタイプのガラスセラミックスの場合、前述のプロセスも異なる方法で実行される。
【0085】
ガラスセラミックスの核生成および結晶成長は、転移温度Tgより高く、主結晶相の融点より低い温度で通常実行される。一般に、10×1010 Pa・s~10×1011 Pa・sの粘度に相当する温度で一定時間核生成処理が実行されることにより、ガラス製品3中に特定量の結晶核が形成され、均一に分布する。一部の高度に失透したガラス製品3(例えば、溶融物粘度が相対的に小さく、アルカリ金属酸化物の含有量が相対的に大きい系)については、核生成相が回避されることができ、ガラス製品は結晶成長温度まで直接加熱される。加熱プロセス中にガラス製品3は核生成されることができるため、大量の結晶核が生成される。異なるタイプのガラスセラミックスでは、核生成温度が異なり、結晶の成長温度および成長速度が異なり、異なる温度での断熱時間も異なることが知られ得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、成形されたガラス製品3に対して熱処理を実行するステップは、
成形されたガラス製品3を加熱キャビティ内に配置し、加熱キャビティに対して熱処理を実行するステップ、または、
成形されたガラス製品3に対して熱処理を実行するように、温度が徐々に上昇する複数の加熱キャビティに成形されたガラス製品を連続的に移送し、各加熱キャビティ内で第2の予め設定された時間にわたり成形されたガラス製品3を断熱するステップを含む。
【0087】
熱処理プロセスは、前述のプログラムされた冷却プロセスと同様のプログラムされた加熱プロセスであってもよい。プログラム加熱は、プログラム制御によって加熱するプロセスである。脱型後の温度から特定の温度までガラス製品3を上昇させるために、プログラムされた加熱キャビティ設定プログラムが使用されることができる。
【0088】
これらの実施形態では、例えば、前述の加熱キャビティは、マッフル炉の加熱キャビティであってもよい。
【0089】
プログラム加熱の速度および断熱時間は、ガラスセラミックスの種類、ミニ結晶のサイズおよび量、ならびに残留ガラス相の特性および量に基づいて決定されることができ、本明細書では特に限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態では、異なるタイプのガラスセラミックスについて、前述の作製プロセスにおいて、熱処理の温度変化範囲は、第1の温度から第2の温度までであり得る。第1の温度は、成形されたガラス製品3に対応するモールド2の温度であり、第2の温度と第1の温度との差は、100℃以上400℃以下である。ガラスセラミックスの結晶成長に必要な温度条件が満たされることができ、結晶化度が高められることができる。
【0091】
曲げガラス1がガラスセラミックスである場合にモールド2の温度が250℃~500℃である前述の場合によれば、第1の温度は250℃~500℃であり得ることが知られ得る。この場合、第2の温度と第1の温度との差が100℃以上400℃以下であることに基づいて、第2の温度が350℃~900℃であり得ることが知られ得る。
【0092】
例えば、いくつかの実施形態では、第2の温度は800℃であってもよい。この場合、第1の温度が250℃である場合、ガラス製品3は250℃~800℃の温度範囲で熱処理され、結晶がガラス製品3中に析出される。第1の温度が500℃である場合、ガラス製品3は500℃~800℃の温度範囲で熱処理され、結晶がガラス製品3中に析出される。
【0093】
いくつかの実施形態では、熱処理の断熱時間は5分~24時間である。ここで、熱処理の断熱時間は、第1の温度に関係する。第1の温度が比較的高い場合、結晶は、比較的高い温度で比較的短い断熱時間で必要なサイズおよび量まで成長され得る。第1の温度が比較的低い場合、結晶は、比較的長い断熱時間で必要なサイズおよび量まで成長され得る。
【0094】
なお、ここでの断熱時間は、熱処理プロセスの合計時間であることに留意されたい。
【0095】
S5.曲げガラス1の形状およびサイズに基づいて、アニーリングされたガラス製品3を曲げガラスに加工する。
【0096】
ガラス製品3が作製された後、ガラス製品3のサイズは曲げガラスのサイズよりも大きいので、曲げガラス1は、アニーリングされたガラス製品3を加工することによって得られ得る。
【0097】
例えば、アニーリングされたガラス製品3の形状およびサイズを処理して曲げガラス1を得るために、CNC法が使用され得る。
【0098】
本開示の一実施形態は、曲げガラス1の作製方法を提供する。ガラス溶融物がモールド2に直接導入され、曲げガラス1に必要な3D形状が圧縮成形プロセスにより作製された後、室温まで徐々に冷却される。冷却された3Dガラスの形状およびサイズは、曲げガラス1を得るためにCNC機械加工を使用することによってトリミングされる。曲げガラス1が板ガラス(すなわち、2Dガラス)から熱間曲げによって形成される関連技術と比較して、高温から低温への板ガラスの形成プロセスが省略されるため、高温から低温に起因する資源浪費は低減されることができ、曲げガラス1の製造コストは低減されることができる。
【0099】
例えば、関連技術では、曲げガラス1が等厚のベースガラスであることが一例として使用される。曲げガラス1の作製経路が
図8に示される。まず、フロートガラスプロセスまたはオーバーフロー法を使用することにより板ガラス(2Dガラス)が作製され、作製された板ガラスが切削、CNC加工、洗浄された後、熱間曲げ加工されて曲げガラスを得る。このプロセスにおいて、板ガラスは、ガラス原料工場によって完成されてもよい。最初の高温から低温への成形プロセスの後、板ガラスは曲げガラスへと作製されてもよく、これはカバープレート工場によって完成されてもよい。そして、2回目の高温から低温への成形プロセスが完了する。すなわち、高温から低温までの合計2回の成形プロセスが実行される。曲げガラス1が等厚のガラスセラミックスである例を用いて、曲げガラス1の作製経路が
図9に示される。まず、最初の成形のためにガラス溶融物が注入またはカレンダ加工され、このプロセスはガラス原料工場で完了することができる。そして、成形されたガラスは、切削、研削、および研磨により再度成形される必要がある。このプロセスは、減厚工場で完了することができる。最後に、カバープレート工場が、2回目の成形後に得られたガラスに対して3D熱間曲げ成形を実行する。すなわち、第3の成形プロセスが実行される。このプロセスでは、高温から低温までの合計3回の成形プロセスが実行される。また、曲げガラス1が不均一な厚さを有する場合、
図10に示されるように、CNC加工中に全面加工が実行される必要があり、加工資源のロスをさらに発生させ、コストをさらに増加させる。
【0100】
曲げガラス1が作製された後、同一プロセスで作製された32個のサンプルが無作為に選択され、プロセス能力試験を算出する。工程能力指数CPK(Complex Process Capability指数)は、±0.07 mmの制御サイズに基づいて1~1.5である。工程能力指数は、制御状態(安定状態)における実際の処理能力を表すために使用され、これは、本開示のこの実施形態で提供される作製方法のプロセスが品質を保証する比較的強い能力を有し、得られた曲げガラスが良好なサイズ安定性を有することを示す。
【0101】
本開示のいくつかの実施形態は、前述の曲げガラスの作製方法を使用することにより作製された曲げガラスを提供する。
【0102】
曲げガラスは、前述の曲げガラスの作製方法と同じ技術的効果を有し、ここでは詳細を繰り返さない。
【0103】
いくつかの実施形態では、曲げガラスがガラスセラミックスであり、曲げガラスの主結晶相がペタライトと二ケイ酸リチウムとのうちの一方または両方を含む場合、曲げガラスの結晶化度は75重量%~90重量%であり、曲げガラスの主結晶相がメタケイ酸リチウムまたはコージライトである場合、曲げガラスの結晶化度は30重量%~50重量%である。
【0104】
ガラスセラミックスの構造ならびに物理的および化学的性能は結晶化度および主結晶相に関係し、ガラスセラミックスの結晶化度および主結晶相は熱処理系に関係する。そのため、熱処理系を制御することにより、必要な結晶化度および主結晶相を有するガラスセラミックスが得られ得る。熱処理系が同じである場合、曲げガラスは、関連技術で作製された曲げガラスとほぼ同じ結晶化度および主結晶相を有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、前述の作製方法を使用することにより作製された曲げガラスにおいて、曲げガラス1がベースガラスである場合、曲げガラス1のビッカース硬さは550 kgf/mm2~650 kgf/mm2であり、曲げガラス1がガラスセラミックスである場合、曲げガラス1のビッカース硬さは650 kgf/mm2~750 kgf/mm2であることが実験によって見出される。このことから、同じ試験条件下で、曲げガラス1は、関連技術で作製された曲げガラスの硬さとほぼ同等の硬さを有し、適用要件を満たすことができることが知られ得る。
【0106】
ビッカース硬さは、ビッカース硬さ計を使用することにより曲げガラス1を試験することによって得られ得る。
【0107】
例えば、曲げガラスがガラスセラミックスであり、ガラスセラミックスの主な結晶相がコージライトであり、結晶化度が30重量%~50重量%である場合、曲げガラス1のビッカース硬さは650 kgf/mm2~700 kgf/mm2であり得る。ガラスセラミックスの主結晶相が二ケイ酸リチウムおよびペタライトの一方または両方であり、結晶化度が75重量%~90重量%である場合、曲げガラス1のビッカース硬さは700 kgf/mm2~750 kgf/mm2であり得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、前述の作製方法を使用することにより作製された曲げガラスにおいて、曲げガラスがベースガラスである場合、曲げガラスのヤング率は70 Gpa~90 Gpaであり、曲げガラスがガラスセラミックスである場合、曲げガラスのヤング率は90 Gpa~105 Gpaであることが実験により見出される。フックの法則によれば、物体の弾性限界内では、応力は歪みに比例し、その比は物質のヤング率と呼ばれる。ヤング率の大きさは、物質の剛性を示す。ヤング率が大きいほど、変形が少ないことを示す。同じ試験条件下で、曲げガラス1は、関連技術で作製された曲げガラスのヤング率とほぼ同等のヤング率を有し、適用要件を満たすことができることが知られ得る。
【0109】
例えば、曲げガラスがガラスセラミックスであり、ガラスセラミックスの主結晶相がコージライトまたはケイ酸リチウムであり、結晶化度が30重量%~50重量%である場合、曲げガラス1のヤング率は90 Gpa~95 Gpaである。ガラスセラミックスの主結晶相がペタライトと二ケイ酸リチウムとのうちの一方または両方であり、結晶化度が75重量%~90重量%である場合、曲げガラス1のヤング率は95 Gpa~105 Gpaである。
【0110】
いくつかの実施形態では、曲げガラスがベースガラスである場合、曲げガラスの密度は2.4 g/cm3~2.5 g/cm3であり、曲げガラスがガラスセラミックスである場合、曲げガラスの密度は2.45 g/cm3~2.65 g/cm3である。密度は、排水法を使用することにより測定され得る。前述の実施形態と同様に、同じ試験条件下で、曲げガラス1の密度は、関連技術で作製された曲げガラスの密度とほぼ同じであり、適用要件を満たすことができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、曲げガラスがベースガラスである場合、曲げガラスの熱膨張係数は60×10-7/℃~110×10-7/℃であり、曲げガラスがガラスセラミックスである場合、曲げガラスの熱膨張係数は、100×10-7/℃~110×10-7/℃である。熱膨張係数は、温度変化による物体の伸縮現象である。熱膨張係数は、単位温度の変化による長さ量の値の変化を表す。一例として、線膨張係数が使用される。熱膨張係数とは、温度20℃(すなわち、標準的な実験室環境)における固体物質の長さに対する、温度変化1℃における固体物質の方向の長さの変化の比をいう。同じ試験条件下で、曲げガラス1の熱膨張係数は、関連技術で作製された曲げガラスの熱膨張係数と同等であり、適用要件を満たすことができる。
【0112】
例えば、曲げガラスがガラスセラミックスであり、ガラスセラミックスの主結晶相がペタライトと二ケイ酸リチウムとのうちの一方または両方であり、結晶化度が75重量%~90重量%である場合、曲げガラス1の熱膨張係数は100×10-7/℃~105×10-7/℃である。ガラスセラミックスの主結晶相がケイ酸リチウムであり、結晶化度が30重量%~50重量%である場合、曲げガラス1の熱膨張係数は105×10-7/℃~110×10-7/℃である。
【0113】
本開示の実施形態の有益な技術的効果を客観的に評価するために、以下の実験例が使用されて本開示の実施形態を詳細に説明する。
【0114】
実験例1
実験例1では、曲げガラス1の作製方法を詳細に説明するために以下のいくつかの実験的解決策が設定され、それぞれ解決策1、解決策2、および解決策3として説明される。解決策1、解決策2、および解決策3において、曲げガラスの全てのガラスバッチの組成は同じであり、ケイ素砂、五酸化リン、アルミナ、酸化ホウ素、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムを含む。曲げガラス1はベースガラスであり、曲げガラスの外観形状は携帯電話の裏カバーとして使用するために必要な形状である。
【0115】
解決策1
ステップ1):曲げガラス1の組成に基づいて対応する重量の各成分を秤量し、ガラスバッチへと混合する。
【0116】
ステップ2):ステップ1)のガラスバッチを1500℃~1650℃の高温で溶融し、それを清澄化して950℃のガラス溶液を得るが、ここでガラス溶液中のSiO2、Al2O3、P2O5およびB2O3のモル百分率は70%であり、Li2O、Na2OおよびK2Oのモル百分率は30%である。
【0117】
ステップ3):清澄化されたガラス液体を、超硬質層でめっきされた圧縮成形モールドに450℃で20 g~30 gの導入量で導入する。
【0118】
ステップ4)::ダイクリアランスの最大位置と最小位置との差が0.1 mm以下である、製造される必要がある製品の外観に基づいてモールド2のキャビティの形状を設計する。
【0119】
ステップ5):超硬質モールドは、0.1 Mpaの圧力を使用することによりガラス液体に対して圧縮成形を実行し、ガラス液体を一定期間断熱する。ガラス製品が成形された後、1℃/分の冷却速度で徐冷することによって熱応力を室温に解放する。冷却プロセスは、1つの加熱キャビティ内で完了する。
【0120】
ステップ6):モールドガラスについて、必要な外観サイズを得るために、CNC技術を使用することによって、中心点位置合わせを使用することにより曲げガラスのサイズを最適化する。
【0121】
解決策2
解決策2におけるステップは、解決策1におけるステップと基本的に同じである。違いは、解決策2では、ステップ2)で得られる清澄化されたガラス液体の温度は1300℃であり、ガラス液体中で、SiO2、Al2O3、P2O5およびB2O3のモル百分率は85%であり、Li2O、Na2OおよびK2Oのモル百分率は7%であり、MgOおよびCaOのモル百分率は8%であり、ステップ3)において、モールドの温度は800℃であり、ステップ5)において、圧縮成形の圧力は0.5 Mpaであり、徐冷速度は100℃/分であることである。
【0122】
解決策3
解決策3におけるステップは、解決策1におけるステップと基本的に同じである。違いは、解決策3では、ステップ2)で得られる清澄化されたガラス液体の温度は1000℃であり、ガラス液体中で、SiO2、Al2O3、P2O5およびB2O3のモル百分率は80%であり、Li2O、Na2OおよびK2Oのモル百分率は20%であり、MgOおよびCaOのモル百分率は0%であり、ステップ3)において、モールドの温度は600℃であり、ステップ5)において、圧縮成形の圧力は0.3 Mpaであり、徐冷速度は50℃/分であることである。
【0123】
実験例2
実験例2では、曲げガラス1の作製方法を詳細に説明するために以下のいくつかの実験的解決策が設定され、それぞれ解決策4、解決策5、および解決策6として説明される。解決策4、解決策5、および解決策6において、曲げガラスの全てのガラスバッチの組成は同じであり、ケイ素砂、五酸化リン、アルミナ、酸化ホウ素、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、および核形成剤ジルコニアを含む。曲げガラスはガラスセラミックスであり、曲げガラス1の外観形状は携帯電話の裏カバーとして使用するために必要な形状である。
【0124】
解決策4
ステップ1):曲げガラス1の組成に基づいて対応する重量の各成分を秤量し、ガラスバッチへと混合する。
【0125】
ステップ2):ステップ1)のガラスバッチを1500℃~1650℃の高温で溶融し、それを清澄化して950℃のガラス溶液を得るが、ここでガラス溶液中のSiO2、Al2O3、P2O5およびB2O3のモル百分率は70%であり、Li2O、Na2OおよびK2Oのモル百分率は20%であり、ジルコニアのモル百分率は10%である。
【0126】
ステップ3):清澄化されたガラス液体を、超硬質層でめっきされた圧縮成形モールド2に250℃で20 g~30 gの導入量で導入する。
【0127】
ステップ4)::ダイクリアランスの最大位置と最小位置との差が0.1 mm以下である、製造される必要がある製品の外観に基づいてモールド2のキャビティの形状を設計する。
【0128】
ステップ5):超硬質モールド2は、0.1 Mpaの圧力を使用することによりガラス液体に対して圧縮成形を実行し、3Dガラス製品を得るために圧縮成形を実行する。次いで、3D曲げガラスを得るために、3Dガラス製品の温度は250℃から800℃に調整され、失透の断熱時間(すなわち、熱処理時間)は24時間であり、その結果、形成される主結晶相が二ケイ酸リチウムおよびペタライトの一方または両方であるようにする。XRD(X線回折)によって測定された結晶化度は90重量%である。
【0129】
ステップ6):失透した3D曲げガラスセラミックスは、1℃/分の冷却速度での徐冷によって室温に熱応力を放出する。冷却プロセスは、徐々に温度が低下する複数の加熱キャビティで完了する。
【0130】
ステップ7):モールドガラスについて、必要な外観サイズを得るために、CNC技術を使用することによって、中心点位置合わせを使用することにより曲げガラスのサイズを最適化する。
【0131】
解決策5
解決策5におけるステップは、解決策4におけるステップと基本的に同じである。違いは、解決策5では、ステップ2)で得られる清澄化されたガラス液体の温度は1300℃であり、ガラス液体中で、SiO2、Al2O3、P2O5およびB2O3のモル百分率は75%であり、Li2O、Na2OおよびK2Oのモル百分率は18%であり、MgOおよびCaOのモル百分率は6%であり、ジルコニアのモル百分率は1%であり、ステップ3)において、モールドの温度は800℃であり、ステップ5)において、圧縮成形の圧力は0.5 Mpaであり、失透の断熱時間(すなわち、熱処理時間)は5分であり、ステップ6)において、冷却速度は100℃/分であり、解決策5において、主結晶相はケイ酸リチウムであり、結晶化度は30重量%であることである。
【0132】
解決策6
解決策6におけるステップは、解決策4におけるステップと基本的に同じである。違いは、解決策6では、ステップ2)で得られる清澄化されたガラス液体の温度は1000℃であり、ガラス液体中で、SiO2、Al2O3、P2O5およびB2O3のモル百分率は85%であり、Li2O、Na2OおよびK2Oのモル百分率は7%であり、MgOおよびCaOのモル百分率は4%であり、ジルコニアのモル百分率は4%であり、ステップ3)において、モールドの温度は800℃であり、ステップ5)において、圧縮成形の圧力は0.5 Mpaであり、失透の断熱時間(すなわち、熱処理時間)は10時間であり、ステップ6)において、冷却速度は50℃/分であり、解決策6において、主結晶相はコージライトであり、結晶化度は45重量%であることである。
【0133】
結論:上記の実験例1および実験例2で得られた各曲げガラス1は、携帯電話の裏カバーの設計要件を満たし、曲げガラスセラミックスの結晶化度は30重量%以上であってもよく、最大90重量%であってもよい。したがって、曲げガラスセラミックスは、適用要件を満たすことができる。
【0134】
結論として、ガラス溶融物がモールド2に直接導入され、曲げガラス1に必要な3D形状が圧縮成形プロセスにより作製された後、室温まで徐々に冷却される。冷却された3Dガラスの形状およびサイズは、曲げガラス1を得るためにCNC機械加工を使用することによってトリミングされる。曲げガラス1が板ガラスから熱間曲げ加工によって形成される関連技術と比較して、高温から低温までの板ガラスの形成プロセスが省略されるため、高温から低温までの成形プロセスが短縮されることができ、作製プロセスが短縮されることができる。したがって、関連技術における高温から低温に起因する資源浪費は低減されることができ、製造コストが低減される。得られた曲げガラスは、関連技術で提供される作製方法を使用することにより作製されたものと同じ物理的および化学的性能を有し、電子デバイスのカバー要件を満たすことができる。
【0135】
前述の説明は、本出願の特定の実施態様にすぎず、本出願の保護範囲を限定することを意図するものではない。本出願に開示される技術的範囲内で当業者によって容易に考え出されるいかなる変形や置換も、本出願の保護範囲内に入るものとする。したがって、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。
【符号の説明】
【0136】
1 曲げガラス
1a 表面
2 モールド
21 可動モールド
22 固定モールド
3 ガラス製品