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特許7490092液圧アッセンブリおよび液圧アッセンブリを組み立てる方法
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  • 特許-液圧アッセンブリおよび液圧アッセンブリを組み立てる方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】液圧アッセンブリおよび液圧アッセンブリを組み立てる方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/34 20060101AFI20240517BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B60T8/34
F16J15/10 U
F16J15/10 T
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022576192
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 DE2021100190
(87)【国際公開番号】W WO2021254552
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】102020207505.0
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ズアレス-セミナリオ,ダリウツ
(72)【発明者】
【氏名】ツァンダー,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ケック,ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】キンペル,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ポチャート,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス,イングマー
(72)【発明者】
【氏名】レフラー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ニッゲブルグ,ベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヘイネ,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン,ティーロ
(72)【発明者】
【氏名】シュリッツクス,ミヒャエル
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119270(JP,A)
【文献】特表2004-538211(JP,A)
【文献】特開2019-077436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/32-8/96
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の電子的にスリップコントロール可能なブレーキ装置のブレーキ回路内のブレーキ圧を制御および調整するための液圧アッセンブリ(10)であって、
操作可能なブレーキ圧発生器(19)を備えたポンプハウジング(12)と、
前記ブレーキ圧発生器(19)の駆動のためのモータ(17)と、
前記モータ(17)を必要に応じて電気的に起動させるための電子制御器(20)と、を備え、
前記モータ(17)と前記電子制御器(20)とが、前記ポンプハウジング(12)の互いに対向する側に配置され、
前記ポンプハウジング(12)に軸孔(14)が形成され、前記軸孔は、前記モータ(17)が配置されている前記ポンプハウジング(12)の第1の側から、前記電子制御器(20)が固定されている前記ポンプハウジング(12)の第2の側へ貫通し、
前記軸孔(14)の内部に、前記モータ(17)によって回転運動のために駆動可能なモータ軸(18)が回転可能に配置され、
前記軸孔(14)を前記電子制御器(20)の内部空間に対し密封するため、パッキン装置が設けられている、
前記液圧アッセンブリ(10)において、
前記パッキン装置が、前記ポンプハウジング(12)のパッキン受容部(52)内に配置される挿入パッキン(50)を含み、前記挿入パッキンは、前記電子制御器(20)が前記ポンプハウジング(12)に固着されている場合、予緊張機構(48)によって機械的な予緊張力で付勢されていることを特徴とする液圧アッセンブリ。
【請求項2】
前記挿入パッキン(50)が、前記機械的な予緊張機構(48)によって、前記モータ軸(18)の長手軸線Lの方向に作用する軸線方向の力で付勢されていることを特徴とする、請求項1に記載の液圧アッセンブリ。
【請求項3】
前記電子制御器(20)の機器ハウジング(32)が中間底部(36)を含み、前記中間底部から、前記予緊張機構(48)が、好ましくは前記モータ軸(18)の長手軸線Lの方向に突出していることを特徴とする、請求項1または2に記載の液圧アッセンブリ。
【請求項4】
前記予緊張機構(48)が、前記機器ハウジング(32)の前記中間底部(36)と一体に形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の液圧アッセンブリ。
【請求項5】
前記予緊張機構(48)は片側が閉じた中空体の形態で形成され、その閉じた端部が前記電子制御器(20)の内部にあり、その開口端部内には、前記モータ軸(18)のモータから離れた端部が部分的に突出していることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の液圧アッセンブリ。
【請求項6】
前記予緊張機構(48)がその開口端部の端面でもって前記挿入パッキン(50)を押すことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の液圧アッセンブリ。
【請求項7】
前記挿入パッキン(50)が、形状的に弾性のあるプラスチック材または形状的に弾性のあるプラスチック複合材から成っていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の液圧アッセンブリ。
【請求項8】
前記挿入パッキン(50)が、中実の横断面または中空横断面を持つように実施され、且つ円形、楕円形、多角形、またはz字状の外側輪郭を有していることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の液圧アッセンブリ。
【請求項9】
前記パッキン受容部(52)が、前記軸孔(14)を周側で取り囲んで前記ポンプハウジング(12)の周囲に向けて開口する繰り抜き部であり、前記繰り抜き部が肩部を有し、前記肩部で前記挿入パッキン(50)が前記モータ軸(18)の長手軸線Lの方向で支持されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の液圧アッセンブリ。
【請求項10】
前記パッキン受容部(52)が前記軸孔(14)に向けて開口していることを特徴とする、請求項9に記載の液圧アッセンブリ。
【請求項11】
前記挿入パッキン(50)が、予め緊張させた状態で、前記パッキン受容部(52)の境界部に半径方向予緊張力および/または軸線方向予緊張力で当接していることを特徴とする、請求項9または10に記載の液圧アッセンブリ。
【請求項12】
前記電子制御器(20)によって前記モータ軸(18)の回転角を検知して電子評価するため、前記モータ軸(18)とともに回転する信号発生器(24)と、付設の位置固定して配置される信号受信器(26)とが設けられている請求項1~11のいずれか一項に記載の液圧アッセンブリにおいて、
前記信号受信器(26)が、前記電子制御器(20)のプリント回路基板(28)上に直接配置されて電気的に接触していることを特徴とする液圧アッセンブリ。
【請求項13】
前記モータ(17)が電気的に整流されていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の液圧アッセンブリ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項の構成要件にしたがって液圧アッセンブリ(10)を組み立てる方法において、
前記電子制御器(20)を前記ポンプハウジング(12)に固着する前に、前記挿入パッキン(50)を、前記ポンプハウジング(12)に配置されている前記パッキン受容部(52)内へ挿入すること、または、
前記挿入パッキン(50)を前記電子制御器(20)の前記予緊張機構(48)に予め取り付け、次に前記電子制御器(20)とともに前記ポンプハウジング(12)に取り付けること、
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部の構成要件による、特に自動車の電子的にスリップコントロール可能なブレーキ装置のブレーキ回路内のブレーキ圧を制御および調整するための液圧アッセンブリ、および、さらに、請求項14の上位概念部の構成要件による、液圧アッセンブリを組み立てる方法に関するものである。
【0002】
自動車における電子的にスリップコントロール可能なブレーキ装置はよく知られている。それは、立証されたところによると、道路交通での安全性の向上に寄与し、それ故さしあたり多くの国で法的に規定されている。
【0003】
電子的にスリップコントロール可能なブレーキ装置を用いると、車両の車輪ブレーキ内のブレーキ圧を電子的に次のようにコントロール可能であり、すなわち車両の付設の車輪に発生する車輪スリップが短時間だけ発生するようにコントロール可能である。このようにして車両は制動過程の間操縦可能に維持され、不安定な走行状態に陥らず、にもかかわらず短い制動距離で減速させることができる。加えて、電子的にスリップコントロール可能な車両ブレーキ装置には、事故が起こりやすい交通状況に依存して、または、危険な走行状態に依存して、制動過程を自動的に、すなわちドライバーの関与なしに導入してコントロールする能力がある。さらに、電子的にスリップコントロール可能なブレーキ装置は、支援運転モードまたは自動運転モードを技術的に実行に移す際に重要である。
【背景技術】
【0004】
電子的にスリップコントロール可能なブレーキ装置内部での前述のブレーキ圧コントロールは、たとえば特許文献1からすでに知られているような、いわゆる液圧アッセンブリによって行われる。
【0005】
この公知の液圧アッセンブリはポンプハウジングを含み、ポンプハウジングはとりわけ駆動可能なブレーキ圧発生器を備えている。後者は、モータにより、回転駆動するモータ軸を介して操作される。これに関連して、モータの電気による起動は必要に応じて電子制御器によって行われる。
この公知の液圧アッセンブリの場合、モータと電子制御器とはポンプハウジングの互いに対向する側に配置されている。モータ軸は軸孔の内部で回転可能に支持され、軸孔は、ポンプハウジングを、モータが配置されている側から、これに対向する、電子制御器が配置されている側まで貫通している。モータ軸とともに回転する信号発生器と、電子制御器内に位置固定して受容されている信号受信器とから成るセンサ機構により、モータ軸の回転角が検知される。パッキン装置を介して軸孔が電子制御器の内部に対し密封され、その結果ポンプハウジング内で圧力媒体が漏れる可能性があっても、軸孔を介して電子制御器の内部に侵入し、そこで障害を引き起こすことはあり得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102017218648号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明がこの従来技術と異なるのは、とりわけ電子制御器に対して軸孔を密封するために挿入パッキンを使用することである。この挿入パッキンは、ポンプハウジングに形成されるパッキン受容部内に配置され、電子制御器がポンプハウジングに固定されている場合、予緊張機構によって予緊張力で付勢される。
【0008】
挿入パッキンは多様な実施態様のものが市場で安価に入手可能であり、製造過程で取り扱いが容易であり、その製造のクオリティは組み立てに伴なってたとえば視認で、カメラを用いて、または機械的に、テストピンによって問題なく検査できる。加えて、挿入パッキンを用いると、ポンプハウジングに相対する電子制御器の組み立てによるずれを簡単に補正できる。機械的に予め緊張せしめられる挿入パッキンは、通常プラスチックから製造されている電子制御器のハウジングと、通常アルミニウム合金から成っているポンプハウジングとの間に熱で生じる膨張公差および寸法公差を吸収する。
さらに、既知の取付け条件の下での挿入パッキンのパッキン特性は前もって特定可能であり、したがってその都度の適用事例に対し必要に応じて適合させることができる。たとえば、挿入パッキンと予緊張機構とパッキン受容部との材料、形態、サイズの構造的調整により、予緊張状態の挿入パッキンを付設のパッキン受容部の境界部に対し押圧させる軸線方向の力および半径方向の力を設定可能である。
【0009】
特に液体の密封に対して、挿入パッキンには、コスト高の配量機構および挿入したシーラントを硬化するための処理時間を節減できるという利点、および、互いに密封しあっているユニットを比較的簡単に互いに引き離して、場合によっては相互に交換できるという利点がある。
【0010】
本発明の更なる利点または有利な更なる構成は、従属項または以下の説明から明らかである。
【0011】
本発明の有利な更なる構成では、挿入パッキンは、機械的な予緊張機構によって、モータ軸の長手軸線の方向に向けられる軸線方向の力で付勢されている。この軸線方向の力は、周囲条件が変化する下での挿入パッキンの確実なパッキン作用を保証する。
【0012】
さらに、電子制御器の機器ハウジングがポンプハウジング側の中間底部を含み、中間底部から、予緊張機構がモータ軸の長手軸線の方向に突出しているならば、有利である。中間底部により、電子制御器の内部空間を、ポンプハウジング側の、電磁弁のコイルユニット用の取り付け空間と、ポンプハウジングとは逆の側の、電子制御部を受容するためのプリント回路基板空間とに分割させることができる。
【0013】
有利には機器ハウジングのハウジング底部と一体に形成されている予緊張機構には、電子制御器とともにポンプハウジングに取り付けることができ、したがって付加的な部品需要または組み立ての必要性を要求しないという利点がある。加えて、これによって、予緊張機構を挿入パッキンに対し押圧する有効な軸線方向の力を構造的に狭い許容限界に設定して、大量生産で遵守することができる。
【0014】
有利には、予緊張機構は片側が閉じた中空体の形態で形成され、その閉じた端部は電子制御器の内部にあり、その開口端部内には、モータ軸のモータから離れた端部が部分的に突出している。この構成は、ポンプハウジング内で支持されているモータ軸を、ポンプハウジングを越えて電子制御器の内部まで延長し、モータ軸の端部に、モータ軸の回転角を検知するために必要な信号送信器を配置することを許容する。付設の信号受信器は、これに直接対向するように電子制御器のプリント回路基板上にダイレクトに位置決めすることができ、その結果この信号受信器をプリント回路基板と電気接触させるための別個の接触手段が削減される。
【0015】
本発明の更なる有利な他の構成では、パッキン受容部は、軸孔を周側で取り囲んでポンプハウジングの周囲に向けて外方に開口する繰り抜き部である。この繰り抜き部の基部は挿入パッキンが軸線方向で支持されている肩部を形成している。電子制御器をポンプハウジングに固定することにより、これに形成される予緊張機構がポンプハウジングのパッキン受容部と一直線に並ぶことが確保されている。
【0016】
挿入パッキンとして、弾性プラスチック材または弾性プラスチック複合材から成るパッキンを使用することができる。これは、種々の構成のパッキン横断面とともに、その都度の使用例に対しパッキン特性を構造的に調整する際に最大限の自由度を可能にさせる。
【0017】
提案したパッキンのコンセプトは、特に、電子整流モータを備える車両ブレーキ装置の液圧アッセンブリに適している。この種のモータは寿命、ダイナミクス、構成サイズに関して利点を提供するが、その電気起動はモータ軸またはロータの回転角に依存して行わねばならない。後者は、モータ軸上の信号発生器およびこれと協働する電子制御器内の信号受信器を用いて検知される。
この電子制御器は、本発明に従って実施されるパッキン装置により、圧力媒体で付勢されるポンプハウジングに対して確実に密封されており、しかも信号発生器と信号受信器との間の信号伝送は阻害されない。
【0018】
最後に、潜在的に起こりうる故障の事例に関しては、本発明によって提供される、液圧アッセンブリを破壊せずにその構成要素に分解する手段、および、電子制御器またはポンプハウジングを交換する手段は、さらに重要である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明が図面に図示されており、以下の記述で詳細に説明する。
図1】液圧アッセンブリの、本発明にとって重要な領域を、縦断面で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
唯一の図に図示した、液圧アッセンブリ(10)の領域は、とりわけポンプハウジング(12)の一部分を含んでおり、ポンプハウジング内には軸孔(14)の一部分がある。軸孔(14)のこの部分には、軸孔(14)の内部でモータ軸(18)を回転可能に支持する転がり軸受(16)が配置されている。このために必要な他の軸受は、境を接する部分なので図では認められない。図で図式的に示唆したにすぎないのはモータ(17)であり、モータによりモータ軸(18)を回転運動のために駆動可能である。同様に図式的に記載したにすぎないのは、回転するモータ軸(18)によって操作されるブレーキ圧発生器(19)であり、たとえばモータ軸(18)上に取り付けられた偏心体によって駆動されるラジアルピストンポンプである。
【0021】
モータ軸(18)は、モータから離れたその軸端でもって、ポンプハウジング(12)の境界部を越えて、ポンプハウジング(12)のこの側に配置されている電子制御器(20)の中空内部の中へ突出している。モータ軸(18)の突出端には、片側が閉じた、グラス状の保持要素(22)が装着されている。その中には、モータ軸(18)の端面から間隔をもって信号発生器(24)が受容されている。後者は、たとえば接着結合により保持要素(22)と相対回転不能に結合されている。信号発生器(24)は磁石であり、その磁場はモータ軸(18)の回転角を検知する目的で信号受信器(26)によって評価可能である。このため、この信号受信器(26)は、信号発生器(24)に対向して電子制御器(20)のプリント回路基板(28)上に配置されて、そこに装着されている電気回路と接触している。信号発生器(24)を備えた保持要素(22)はモータ軸(18)と相対回転不能に連結され、よってこのモータ軸(18)の回転運動に追従する。
【0022】
電子制御器(20)は、好ましくはプラスチックから成っている機器ハウジング(32)を有している。これはポンプハウジング(12)に固定され、機器ハウジング(32)の内部空間を取り囲む周壁を含んでいる。この内部空間は、周壁に対し横方向に延びている中間底部(36)によって、ポンプハウジング(12)側のコイル室(38)と、これとは逆の側にあって、制御電子機器のプリント回路基板(28)を受容している電子室(40)とに分割される。有利な実施形態では、中間底部(36)は、両室を互いに結合させている複数の破断部を備えたフレーム構成部を形成している。
機器ハウジング(32)のコイル室(38)内には、電磁弁のコイルアッセンブリ(42)が圧力媒体制御のために収納されている。これらのコイルアッセンブリ(42)は、バルブキャップの下に配置されているマグネットコイルから成る。液圧弁の圧力媒体制御部は、ポンプハウジング(12)に設けた付設の繰り抜き部内に固着されているので(不図示)、ポンプハウジング(12)の境界部を越えて突出しているそれぞれ1つのバルブドームでもってこれらマグネットコイルの内部へ突出している。バルブドーム内には、コイルの磁場によって操作可能な弁部材が収納されている(図示せず)。中間底部(28)には複数の電気接触要素が装着され、これら電気接触要素を介してコイルアッセンブリ(42)と電子制御器(20)のプリント回路基板(28)との電気接触が行われる。
【0023】
このプリント回路基板(28)は、電子制御器(20)の電子室(40)内で、有利には中間底部(36)に対し平行平面に間隔をもって方向づけられ、電子構成素子を備えている。プリント回路基板(28)上にある導電路は、前記構成素子を、必要に適合したブレーキ圧のコントロールを可能にする電気回路に結合させている。
【0024】
電子室(40)は、ポンプハウジング(12)とは逆の側で周囲のほうに開口しており、そこではハウジングカバー(46)によって閉鎖される。このハウジングカバー(46)により、電子制御器(20)の内部は、汚染または液圧アッセンブリ(10)の周囲から侵入する湿気から保護される。ハウジングカバーは、本実施例では金属から成り、たとえば3次元で成形されている。
【0025】
有利には中間底部(36)と一体に形成されているのは片側が閉じたグラスまたは中空体の形態である予緊張機構(48)である。その閉じた端部は機器ハウジング(32)の電子室(40)内にあり、その開口端部内には、保持要素(22)とその中に受容される信号発生器(24)とを組付けたモータ軸(18)が部分的に突出している。予緊張機構(48)は垂直に突出し、よってモータ軸(18)の長手軸線Lの方向に中間底部(36)から突出し、制御器(20)の組付け状態でコイル室(38)を貫通している。予緊張機構(48)は、その開口端部の領域において、コイル室(38)に対して突出している部分の端面でもって、ポンプハウジング(12)の段状に実施されたパッキン受容部(52)内に配置されている挿入パッキン(50)を押圧する。このパッキン受容部(52)は軸孔(14)を取り囲み、本実施例では、ポンプハウジングの周囲に向けて且つ軸孔(14)に向けて開口している。さらに、パッキン受容部(52)の基部は、挿入パッキン(50)を軸線方向に載置するための肩部を形成している。
【0026】
前述の挿入パッキン(50)自体はリング状に構成され、弾性プラスチック複合材または弾性プラスチックから製造されていてよく、たとえばEPDMまたは発泡シリコーンから製造されていてよい。挿入パッキンは、使用例に応じて横断面にて中実または中空に実施されてよく、円形の、楕円形の、多角形の、或いはたとえばz状の輪郭を持っていてよい。図示した実施例では、挿入パッキン(50)はたとえば中実に実施され、二重T形プロファイルを持っている。
【0027】
予緊張機構(48)の軸線方向の延在および半径方向の拡がりは、ポンプハウジング(12)および機器ハウジング(32)のサイズに対し構造的に次のように調整されており、すなわち制御器(20)がポンプハウジング(12)に組付けられている場合に、予緊張機構(48)の端面が挿入パッキン(50)を予め決められた軸線方向の力で付勢するように、調整されている。
【0028】
この軸線方向の力によって挿入パッキン(50)は弾性的に次のように変形し、すなわち後者がポンプハウジング(12)に設けたパッキン受容部(52)の境界部に確実に当接するように、変形する。これにより、挿入パッキン(50)は予緊張機構(48)とともに、ポンプハウジング(12)からの漏出圧力媒体が軸孔(14)を介して制御器(20)の内部へ侵入し、そこで故障の原因になりうるのを阻止する。
【0029】
もちろん、これに伴って独立請求項の構成要件でもって請求した本発明の基本思想からずれていなければ、説明した実施例の変更または補完が考えられる。
【0030】
この個所で注意しておくことは、電子制御器(20)をポンプハウジング(12)に取り付ける前に、挿入パッキン(50)をこの電子制御器(20)から切り離してパッキン受容部(52)に配置してよく、或いは、まず挿入パッキン(50)を電子制御器(12)の予緊張機構(48)に予め取り付けておいて、その後に電子制御器(20)と一緒にポンプハウジング(12)に取り付けることである。両変形実施形態は択一的に考えられる。
【符号の説明】
【0031】
10 液圧アッセンブリ
12 ポンプハウジング
14 軸孔
17 モータ
18 モータ軸
19 ブレーキ圧発生器
20 電子制御器
24 信号発生器
26 信号受信器
28 プリント回路基板
32 機器ハウジング
36 中間底部
48 予緊張機構
50 挿入パッキン
52 パッキン受容部
図1