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特許7490105原子力施設の制御要素の中性子吸収能力を検出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】原子力施設の制御要素の中性子吸収能力を検出する装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/10 20060101AFI20240517BHJP
   G01N 23/05 20060101ALI20240517BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20240517BHJP
   G01N 23/09 20180101ALI20240517BHJP
【FI】
G21C17/10
G01N23/05
G01N23/18
G01N23/09
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023049121
(22)【出願日】2023-03-26
(62)【分割の表示】P 2020508023の分割
【原出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2023085386
(43)【公開日】2023-06-20
【審査請求日】2023-03-26
(31)【優先権主張番号】15/677,098
(32)【優先日】2017-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】スタッカー、デヴィッド、エル
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04172760(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102008030416(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00-17/14
G01N 23/00-23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力施設(8)の制御要素(6)の中性子吸収能力の検出に使用できる検出装置(4)であって、当該検出装置は、
複数のマニピュレータ(62)と、
中性子放出源(32)、検出器アレイ(36)およびマスク装置(38)を具備し、当該中性子放出源と当該検出器アレイの間に当該制御要素を受け入れるように構成された中性子透過撮影装置(12)とを具備し、
当該マスク装置は、当該複数のマニピュレータのうちの少なくとも第1のマニピュレータによって多数の位置にわたって移動可能であり、当該多数の位置には、少なくとも部分的に当該中性子放出源と当該検出器アレイの間に配置される複数の異なる位置が含まれることを特徴とする
検出装置。
【請求項2】
前記マスク装置は、オリフィスを有し、概して中性子ストリームの通過を阻止するが、当該オリフィスを介する当該中性子ストリームの少なくとも一部の通過は許容するように構成されたマスクシステム(70、70A,70B)を具備することを特徴とする、請求項1の検出装置。
【請求項3】
前記オリフィスは前記中性子ストリームの一部を横断する多数の方向の多数の物理的寸法を有し、前記複数のマニピュレータは当該多数の物理的寸法のうちの少なくとも1つの物理的寸法を第1のサイズと、当該第1のサイズとは異なる第2のサイズとの間で変化させるように操作可能であることを特徴とする、請求項2の検出装置。
【請求項4】
前記マスクシステムは第1の開口を有する第1のマスクと第2の開口を有する第2のマスクとより成り、前記複数のマニピュレータは当該第1のマスクおよび当該第2のマスクのうちの少なくとも一方を操作可能であり、当該操作によって、当該第1の開口および当該第2の開口のうちの少なくとも一方の開口の少なくとも一部を当該第1の開口および当該第2の開口のうちのもう一方の開口の少なくとも一部と重ね合わせることにより前記オリフィスを形成することを特徴とする、請求項3の検出装置。
【請求項5】
前記第1のマスクおよび前記第2のマスクのうちの一方をもう一方に対して移動させることにより、前記少なくとも1つの物理的寸法を前記第1のサイズと前記第2のサイズの間で変化させることを特徴とする、請求項4の検出装置。
【請求項6】
前記複数のマニピュレータは、前記第1のマスクおよび前記第2のマスクのうちの少なくとも一方をもう一方とは別個に、前記中性子放出源と前記検出器アレイの間に少なくとも部分的に移動させるように操作可能であることを特徴とする、請求項4の検出装置。
【請求項7】
前記第1の開口および前記第2の開口のうちの少なくとも一方の長さおよび幅が、前記複数のマニピュレータによって制御されることを特徴とする、請求項4の検出装置。
【請求項8】
前記第1のマスクおよび前記第2のマスクのうちの少なくとも一方が概して板状である、請求項4の検出装置。
【請求項9】
前記中性子放出源は、オン状態とオフ状態の間で切り替え可能であり、オン状態のときは通電状態にあって中性子ストリーム(50)を発生し、オフ状態のときは非通電状態にあって有意な中性子ストリームを出力しないように構成されており、前記オン状態のときに、水素同位体を非限定的な典型例とする軽元素イオンを可変であるビーム電流および加速度で加速して、当該ビームが集束される標的上で核融合反応を引き起こす、強度可変型加速器(42)を具備することを特徴とする、請求項1の検出装置。
【請求項10】
前記マスク装置は、前記複数の異なる位置のうちの1つにある請求項1の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願で開示および特許請求する発明は概して原子力発電装置に関し、具体的には、BWRおよびPWR型原子炉の制御要素の中性子吸収能力を評価するための検出装置およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまなタイプの原子力発電システムとして、特に沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)の存在が知られている。BWRの構成機器には、原子力施設の原子炉内で中性子を吸収して核反応を制御する制御要素としての多数の制御棒ブレードが含まれる。本願で用いる表現「多数の」およびその変化形は、広義には、1を含む任意の数量(ゼロは除く)を指す。そのようなブレードの一例を、図1に参照符号6で示す。
【0003】
そのような制御棒ブレードは、ハブから4つの翼が突出する十字形断面の長尺体である。各翼は、一対の隣接する燃料集合体に挟まれて、燃料集合体が入れられた水中で中性子を吸収するように構成されている。一般的に、BWRの通常運転時は、かなり少数のブレードが一対の隣接する燃料集合体に挟まれた位置から少なくとも部分的に引き抜かれており、必要に応じて、その燃料集合体に挟まれる位置へ挿入されることがある。残りの制御棒ブレードは、照射に伴う炉心の減損および原子炉の熱的余裕の関数としての炉心反応度管理要件によって決まる、部分的ないしは完全に引き抜かれた位置にある。そのように制御棒ブレードを原子炉の燃料領域にさらに挿入すると、吸収される中性子の数が増え、核反応が既知の態様で遅くなるかまたは抑制される。
【0004】
BWR制御棒ブレードの各々は、ホウ素または他の中性子吸収材を充填して蓋をした複数の細長い中空の通孔を有する。そのようなブレード設計のひとつのタイプは、ハブの長軸に対して実質的に垂直に延びる中空の通孔が翼の端縁部からの穿孔により形成されている。この通孔に、ホウ素または他の中性子吸収材を充填して蓋をする。そのようなブレード設計の別のタイプは、ホウ素または他の中性子材を充填して端部を蓋で閉じた細長い中空管を、十字形断面の長尺体を構成するように並べて、金属シートで覆うようなさまざまな態様のうちの任意の態様で互いに固着したものである。
【0005】
時間が経過すると、ホウ素または他の中性子吸収材を充填したブレード内の通孔に、さまざまな態様のうちのいずれかで欠陥が生じることがある。そのような欠陥ができると、吸収材のために確保された空間に高圧の原子炉冷却水が入り込むようになる。中性子吸収材に水が浸入すると、一般的に、欠陥のある中空管中の吸収材が洗い流されて、中性子吸収材が部分的または完全になくなった領域が制御棒ブレード内に生じる。その結果、そのような欠陥のある通孔の周辺のブレード領域は、要求される通りに中性子を吸収しなくなる。制御棒ブレードの欠陥部が十分に大きくなり、複数の制御棒ブレードの挿入によって原子炉内の核連鎖反応を止める総合的な能力が低減したり、原子炉の出力分布が許容できない状況になって熱的余裕が失われたりすると、こうした吸収能力の喪失は安全および運転の観点から重大である。
【0006】
時間が経過すると、任意所与のブレードに、そのような欠陥による中性子吸収材の欠損のため、中性子が吸収されずそのまま通過する個所がひとつかそれ以上生じる可能性がある。ブレード内に中性子をそのまま通過させる領域が或る特定の数および/または或る特定の分布で存在するのは許容できると考えることもできるが、中性子を吸収して核反応を遅らせるかして核反応を抑制するブレード全体としての能力が損なわれることがあってはならない。したがって、欠陥の徴候が視認可能かまたは運転上認められた場合には、ブレードが中性子を効果的に吸収する能力を引き続き維持し、設計および安全要件を満たしているかを評価するために、ブレードの非破壊検査を実施する必要がある。
【0007】
そのような従来の検査方法の1つは、翼の一方の面に中性子吸収フィルムをあてがい、翼の反対側の面に中性子源を配置する。吸収されずに翼の任意所与の位置を透過した中性子は、フィルム上のその位置に痕跡を残す。そのような検査手順に使用されてきた中性子源にはカリホルニウム252が用いられているが、これは中性子を定常的に放出するため、輸送時だけでなく検査手順における或る特定の使用時点で特段の遮蔽が必要となる。ブレードに中性子源から中性子を十分に照射したのち、フィルムを取り外し、エックス線フィルムの場合とおおむね同じ方法で、中性子が翼を透過した領域に痕跡が含まれるか否かを検査する。次に、フィルムの評価結果に基づいて翼の中性子吸収能力を評価する。そのようなフィルムの使用は多くの理由で煩雑であるが、その理由には、ブレードの有効性の定量的評価に必要とされるフィルムの有意な露出を達成するのに長い時間がかかること、カリホルニウム252中性子源に特別の遮蔽が必要なこと、および検査手順の開始から結果を得るまでに長い時間を要することが含まれる。したがって、改善策が望まれる。
【発明の概要】
【0008】
原子力施設の制御要素の中性子吸収能力の検出に使用できる改良型検出装置は、中性子透過撮影装置およびロボット装置を含む。中性子透過撮影装置は、中性子放出源、検出器アレイおよびマスク装置を含む。有利なことにオン状態とオフ状態の間で便利に切り替え可能な中性子放出源は、加速器により重水素粒子を別の重水素粒子または三重水素粒子に向けて放出させて、核融合反応によってヘリウム同位体および過剰中性子を発生させる。したがって中性子放出源は、輸送時の遮蔽が不要であり、燃料検査プールに或る特定の深さまで沈められたあと初めて通電されてオン状態になる。そのため、作業者や装置のための追加の遮蔽が不要である。中性子放出源は翼の片側に配置されて中性子ストリームを発生させ、検出器アレイは翼の反対側に配置される。中性子放出源および検出器アレイはロボット操作により翼に沿って前進する。検出器アレイは、ブレードを透過する中性子ストリームの測定により、欠陥の検出を示す出力信号が発生しているか否かリアルタイムで監視される。翼の長手方向沿いのいずれかの位置で過剰な中性子の透過が検出器アレイによって検出されなければ、その翼は検査に合格して受け入れ可能であると見なされる。一方、検出器アレイが翼の所与の位置で中性子の透過を検出した場合、中性子が透過したブレードの位置をより詳細に特定するために、マスク装置のさまざまなマスクが中性子放出源と検出器アレイの間に配置される。各マスクは、中性子吸収材の板状部材であり、小さな開口が設けられている。1つ以上のマスクを使用し、ロボットマニピュレータにより1つ以上のマスクを操作すると、検出器アレイは、各翼において中性子の透過が検出された正確な位置を特定できる。そのような処理は迅速に行うことが可能であり、処理が完了したら結果を評価し、その翼が合格したか、あるいは翼を交換または修理する必要があるかを判断することができる。
【0009】
したがって、本願で開示および特許請求する発明の一局面は、原子力施設の制御要素の中性子吸収能力の検出および評価に使用できる改良型検出装置を提供することである。
【0010】
本願で開示および特許請求する発明の別の一局面は、原子力施設の制御要素の中性子吸収能力を検出し評価するために、かかる検出装置を操作する改良型方法を提供することである。
【0011】
本願で開示および特許請求する発明の別の一局面は、制御要素のブレードの中性子吸収特性をリアルタイムで評価できる、かかる装置および方法を提供することである。
【0012】
本願で開示および特許請求する発明の別の一局面は、中性子放出源がオフ状態とオン状態の間で切り替え可能であるため、輸送時や使用時に遮蔽が不要であり、中性子放出源がオン状態のときに必要な遮蔽は燃料検査プールの水によって提供される、改良型検出装置および方法を提供することである。
【0013】
本願で開示および特許請求する発明の別の一局面は、個別におよびさまざまな組み合わせで使用できる多数のマスクを有するマスク装置を提供することによって、原子力施設の制御要素の中性子吸収特性を迅速に評価できる改良型検出装置および方法を提供することであり、当該装置および方法では、段階的に精度が高まる評価装置により中性子の透過が検出されたブレード領域を評価できるため、ブレード全体を同じ高い分解能で評価する必要がなく、ブレードのさまざまな部分を適切な高い分解能で迅速に評価して、時間を節約できる。
【0014】
したがって、本願で開示および特許請求する発明の一局面は、原子力施設の制御要素の中性子吸収能力の検出に使用できる改良型検出装置を提供することである。当該検出装置は概してプロセッサおよび記憶装置を含むプロセッサ装置と、当該プロセッサ装置と通信可能d、概して多数のマニピュレータを具備するロボット装置と、概して中性子放出源、検出器アレイおよびマスク装置を具備する中性子透過撮影装置であって、概して当該中性子放出源と当該検出器アレイの間に当該制御要素を受け入れるように構成された中性子透過撮影装置とを含み、当該中性子放出源は通電状態でd中性子ストリームを発生するオン状態と非通電状態で有意な中性子ストリームを出力しないオフ状態の間で切り替え可能であり、当該検出器アレイは当該中性子ストリームのうち吸収されずに制御要素を透過した部分を検出し、さらに当該中性子ストリームのうち吸収されなかった部分を表す出力信号を発生するように構成されており、当該マスク装置は当該多数のマニピュレータのうちの少なくとも第1のマニピュレータによって多数の位置の間を移動可能であり、当該多数の位置のうちの一つの位置において当該マスク装置は少なくとも部分的に当該中性子放出源と当該検出器アレイの間に配置され、当該多数の位置のうちの別の位置において当該マスク装置は当該中性子放出源と当該検出器アレイとの間から取り外されることを特徴とする。
【0015】
本願で開示および特許請求する発明のその他の局面では、制御要素の検査に利用できる水プールを有する原子力施設における制御要素の中性子吸収能力を検出するために上述の検出装置を操作する改良型方法が提供される。この方法は概して、当該検査用水プールにオフ状態の中性子放出源を受け入れるステップと、当該オフ状態の当該中性子放出源を当該水プールに所定の水深まで沈めるステップと、当該水プールの中の当該中性子放出源の深さが当該所定の水深以深に達して、当該中性子放出源が中性子ストリームを放出できるよう十分な遮蔽が提供されるのを条件に当該制御要素の検査を開始する時に、当該中性子放出源を当該オフ状態から当該オン状態に切り替えるステップとを含むことができる。この方法はさらに、当該検出器アレイおよび当該マスク装置を当該水プール内に受け入れるステップと、当該制御要素の少なくとも一部を概して当該中性子放出源と当該検出器アレイの間に受け入れるステップと、当該中性子ストリームのうち吸収されずに当該制御要素の少なくとも一部を透過する部分を表す出力信号を発生しているか否か当該検出器アレイを監視するステップとを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本願で開示および特許請求する発明の詳細を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0017】
図1】原子力施設の制御要素に配置された、本願で開示および特許請求する発明に基づく改良型検出装置を示す図である。
【0018】
図2図1の検出装置の概略図である。
【0019】
図3図1の当該検出装置および方法の別の局面を示す別の図である。
【0020】
図4図3の検査装置の一部の側面図である。
【0021】
図5A図1の検出装置のマスク装置の一部を示す図である。
【0022】
図5B】本願の方法の別の段階を示す、図5Aのマスク装置の別の図である。
【0023】
図5C】本願の改良型方法の別の段階を示す、当該マスク装置の別の部分の図である。
【0024】
図5D】本願の改良型方法のさらに別の段階を示す、当該マスク装置の別の部分の図である。
【0025】
図6】制御要素の翼の上の中性子信号が検出された位置の拡大図であり、当該位置に含まれる、精細度が高ければ中性子信号の検出が可能な多数の位置をさらに示している。
【0026】
図7A】本願で開示および特許請求する発明の別の実施態様に基づく、開口の寸法が調節できるように構成可能な改良型マスクシステムを示す図である。
図7B】本願で開示および特許請求する発明の別の実施態様に基づく、開口の寸法が調節できるように構成可能な改良型マスクシステムを示す図である。
図7C】本願で開示および特許請求する発明の別の実施態様に基づく、開口の寸法が調節できるように構成可能な改良型マスクシステムを示す図である。
【0027】
図8A】本願で開示および特許請求する発明に基づく改良された方法のいくつかの特定の局面を示す流れ図である。
図8B】本願で開示および特許請求する発明に基づく改良された方法のいくつかの特定の局面を示す流れ図である。
【0028】
同じ参照番号は、本明細書を通して同じ部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本願で開示および特許請求する発明に基づく改良型検出装置4を全般的に図1、3、4に、また、図式的に図2に示す。この検出装置4は、原子力施設8の制御要素6の中性子吸収能力の検査に使用できる点で有利である。図1、3、4は、原子力施設8の複数の燃料集合体の間の通常の位置から取り出されて使用済燃料プールなどの水プール30に入れられた状態の制御要素6を示す。ただし、本願で詳しく後述する、当該検出装置4による検査方法の対象となる制御要素6を受け入れるための水プールは任意のものでよい。
【0030】
検出装置4は、中性子透過撮影装置12、ロボット装置14およびプロセッサ装置16を含むと言える。また、検出装置4は、プロセッサ装置16に入力信号を提供する入力装置18と、プロセッサ装置16からの出力信号を受け取る出力装置20とを含む。例えば、プロセッサ装置16、入力装置18および出力装置20、またはそれらの一部分などの或る特定の構成機器は、ロボット装置14から遠隔の制御盤21上に設置して、ロボット装置14とアンビリカル23によって接続することができる。さまざまな構成機器のその他の構成は自明である。
【0031】
プロセッサ装置16は、多数のさまざまな構成機器を含むが、本質的に、マイクロプロセッサまたは他のプロセッサと、コンピュータの内部記憶装置として機能するRAM、ROM、EPROM、EEPROM、FLASHなどの記憶装置とを含む汎用コンピュータである。プロセッサ装置16は、記憶装置に保存されてプロセッサ上で実行可能な多数のルーチン22を含み、それが実行されると、プロセッサ装置16と検出装置4が以下で詳述するような或る特定の動作を行う。入力装置18は、多数の検出装置または他の入力機構のうちの任意のものを含むことができ、さらには、プロセッサ装置に接続された入力端子を含むことができる。出力装置20は、多種多様な出力機構のうちの任意のものを含むことができ、非限定的な例として、画像ディスプレイ、オーディオトランスデューサおよびデータ出力装置などを含んでよい。
【0032】
図1、3からわかるように、制御要素6は、中心のハブ24から複数の翼28A、28B、28C、28D(総称的または個別に参照符号28で表すことがある)が延びる十字形断面の長尺体である。各翼28には多数の通孔69が形成されており、そのうちの少数を翼28Bに破線で示してある。この通孔には、制御要素6が中性子を吸収するようにホウ素含有物質または他の中性子吸収材が充填されている。なお、通孔69はすべての翼28の実質的に全長にわたって設けられていることに留意されたい。以下で詳しく説明するように、検出装置4は、各翼28に設けられた1つ以上の通孔69の中にホウ素または他の中性子吸収材がなくなっている通孔があるため、制御要素6が1つ以上の位置で中性子を吸収せずに透過させたり、中性子の吸収が減少したりしているか否か評価できる点で有利である。
【0033】
中性子透過撮影装置12は、中性子放出源32、検出器アレイ36およびマスク装置38を含むと言える。一般的に、中性子放出源32は、オン状態とオフ状態の間で切り替えることができる。オンのとき、中性子放出源32は通電状態にあり、図4に略示するように中性子ストリーム50を放出するように構成されている。オフのとき、中性子放出源32は非通電状態にあり、有意な中性子ストリームは放出されない。中性子放出源は、制御要素6の翼28に対向する側面を除くすべての面が遮蔽されていると見なせるため、中性子ストリーム50は、概して、翼28へ向かう一方向にのみ放出される。
【0034】
中性子放出源32は、加速器42、多数の第1の粒子44および多数の第2の粒子48を含むと言える。加速器42は、通電時に数百キロボルトの電位差を持つ粒子加速器である。加速器42は通電されたオン状態と通電されていないオフ状態の間で切り替え可能であるため、中性子放出源32にはオン状態とオフ状態の間で切り替えられるという利点がある。
【0035】
本願で例示する実施態様において、第1の粒子44は多数の重水素粒子である。また、本願で例示する実施態様において、第2の粒子48は、重水素粒子と三重水素粒子のいずれであってもよい。加速器42は、通電されたオン状態のとき、第1の粒子44を加速して第2の粒子48に衝突させて、重水素および/または三重水素粒子の核融合を引き起こすことにより、中性子ストリーム50を構成する中性子を生成する。第2の粒子48が重水素粒子の場合、第1の粒子44のうちの1個が第2の粒子48のうちの1個と衝突すると、ヘリウム3(3He、原子核に陽子2個と中性子1個を含む)に加えて中性子1個が生成され、当該中性子は中性子ストリーム50の一部として放出される。第2の粒子48が三重水素粒子の場合、第1の粒子44のうちの1個が第2の粒子48のうちの1個と衝突すると、ヘリウム4(4He、原子核に陽子2個と中性子2個を含む)に加えて中性子が1個生成され、当該中性子は中性子ストリーム50の一部として放出される。
【0036】
検出器アレイは、中性子(特に中性子ストリーム50)を検出するように構成された装置であり、同様に、翼28に対向する面を除くすべての面が遮蔽されていると見なすことができる。検出器アレイ36は多種多様な中性子検出装置のうちの任意のもので、非限定的な例として、BF3、3He、濃縮ウラン(核分裂電離箱)、または、中性子を吸収して、アルファ粒子、ベータ粒子、陽子、重陽子、または核分裂片などの荷電粒子を即発的に放出し、その後、収集された荷電粒子が電荷パルスとして測定されるかまたは積分されて電流に変換される他の同位体を含むかそのような物質で被覆された電離箱が含まれる。検出器アレイ36は、中性子感度が高く、照射された通常の制御要素から必然的に放出される成分であるガンマ線を排除する能力があるのが望ましい。検出器アレイ36が或る特定のしきい値を超える中性子信号を検出(すなわち中性子ストリーム50のうち所定のしきい値を満たすかまたは超える中性子部分を検出)すると、検出器アレイ36は警報信号を出力し、入力装置18がその信号をプロセッサ装置16への入力として受信する。検出器アレイ36からのそのような警報信号の受信に応答して、ルーチン22は、検出器アレイ36が存在する場所でさらなる処理を開始してもよい。ルーチン22はさらにまたはその代わりに、プロセッサ装置16に、例えば、技術者が検知可能な出力を発生させる出力装置22に送られる出力信号を発生させてもよい。
【0037】
マスク装置38は複数のマスクを含むと言える。図1、3に参照符号52A、52B、52C、52Dで表す4つのマスクはそのうちの少なくとも一部を例示するものであるが、本願では、これらのマスクを集合的または個別に参照符号52で表すことがある。以下で説明するように、図5Cに示すマスク85はマスク52のさらに別の例であるが、別例はこれに限定されない。各々のマスク52は板状で、カドミウムや他の適当な物質などの中性子吸収材で形成されている。マスク52A、52B、52C、52Dはそれぞれ参照符号56A、56B、56C、56Dで示す開口を備えており、本願ではこれらの開口を集合的または個別に参照符号56で表すことがある。例示する実施態様において、各開口56は対応するマスク52の材料の一部を切除して形成した細長いスロット状であり、その近辺に中性子ストリーム50の一部があれば、中性子の通過を許容する。開口56を有する各マスク52は、追加的または代替的にコリメータと呼ぶことがある。
【0038】
ロボット装置14は、支持部58および当該支持部58上に位置し参照符号62A、62B、62C、62D、62E、62Fで示す複数のマニピュレータを含むと言える。本願では、これらのマニピュレータを集合的または個別に参照符号62で表すことがある。各マニピュレータ62は、一方の端部が支持部58上にあり、もう一方の端部に中性子透過撮影装置12の構成要素が装着されたロボットマニピュレータである。例示する実施態様において、マニピュレータ62A、62B、62C、62Dの自由端部にはそれぞれマスク52A、52B、52C、52Dが装着されている。マニピュレータ62Eには中性子放出源32が装着され、マニピュレータ62Fには検出器アレイ36が装着されている。マニピュレータ62はそれぞれロボット操作され、互いに独立した態様で動作可能であるため、マスク52、中性子放出源32および検出器アレイ36を互いに独立に移動させることができる。図では、中性子透過撮影装置12とロボット装置14は4つのマスク52(それに加えてマスク85)および当該マスク52が装着された対応する4つのマニピュレータ62のみを含むように描かれているが、以下に詳述するように、具体的な用途の必要性に応じて任意の数のマニピュレータ62および任意の数のマスク52を使用できることがわかる。
【0039】
例示する実施態様の開口56A、56B、56C、56Dは、細長くほぼ矩形であり、長さはそれぞれ64A、64B、64C、64D、幅は68A、68B、68C、68Dである。前述のように、マスク52本体は中性子を吸収するが、開口56は中性子を通過させる。
【0040】
ロボット装置14はさらに、支持体58上に位置する或る種のロボット牽引機構を含むが、当該ロボット牽引機構は、制御要素6の翼28に係合するなどして、支持体58を制御要素6に対して移動させるか、または制御要素6を支持体58に対して移動させる。この点に関して、検出装置4または支持体58またはその両方は、水プール30の基部に位置して、水プール30内で制御要素6を受け取って搬送するように構成された別の構造体または支持要素を含んでもよいことがわかる。別案として、制御要素6を単に水プール30に搬入し、その上に支持体58を装着したあと、ロボット牽引装置を操作して支持体58を制御要素6の長軸に沿って移動させてもよい。
【0041】
検出装置4は、使用時に、中性子放出源32をオフ状態にして水プール30に搬入し、中性子放出源32が所定の深さ82(図1)に達するまで沈める。所定の深さ82で中性子放出源32をオン状態に切り替えるが、水プール30水が中性子ストリーム50を十分に遮蔽するため、作業者を中性子ストリーム50から防護するための追加の遮蔽は不要である。したがって、検出装置4は水プール30にすでに存在する遮蔽効果を活用して、中性子放出源がオン状態のときに作業者を中性子ストリーム50から遮蔽できる利点がある。中性子放出源は、オン状態とオフ状態の間で切り替えられるため、或る位置から別の位置へ移動する際と、所定の深さ82まで沈めるまでの間に、他の遮蔽を施す必要はない。すなわち、中性子放出源32は、移動時および所定の深さ82まで沈めるまでの間は、単にオフ状態であり、水プール30内の所定の深さ82以上に沈められるまでオン状態にしない。
【0042】
支持体58が制御要素6上に位置するか、または制御要素6が支持体58上に位置するとき、マニピュレータ62E、62Fを操作して、中性子放出源32と検出器アレイ36とを検査対象である翼28(図1、3、4における翼28A)の互いに反対側に配置する。中性子放出源32から放出される中性子はエネルギー状態が高すぎて検出器アレイ36で検出できないので、中性子放出源32を翼28の表面から、中性子ストリーム50の中性子が翼28を透過する間に制御要素に十分に吸収される(欠陥が存在する場合は検出器アレイ36によって検出される)ように中性子が熱化して減速するに十分な距離だけ離す必要がある。
【0043】
検出操作の初期段階において、当該マスク52を搭載したマニピュレータ62は、図1に略示するように、マスク52が中性子放出源32および検出器アレイ36から離れたところに位置するように構成される。次に、中性子放出源32がオン状態でなければオン状態に切り替えて、検出器アレイ36の出力信号を監視することにより、翼28の任意所与の位置に欠陥がないか判断する。
【0044】
出力部36から出力が検出されない場合、支持体58上の牽引装置を操作して、支持体58を、マニピュレータ62およびその上にある中性子透過撮影装置12とともに制御要素6の長軸に沿って移動させる。検査対象である翼28の長軸に沿ういずれの点からも検出器アレイ36から信号が検出されない場合、翼28は異常がないと考えられる。すなわち、中性子ストリーム50の中性子が翼28を吸収されずに透過するような領域は存在せず、中性子ストリーム50の中性子がすべて翼28に吸収され、中性子ストリーム50のいずれの部分も検出器アレイ36によって検出されない場合である。次に、制御要素6の別の翼28についてこのプロセスを繰り返し、すべての翼28を検査する。
【0045】
一方、検出器アレイ36が翼28に沿ういずれかの位置で出力信号を発生すると、入力装置18がこの信号を受けてプロセッサ装置16へ入力し、ルーチン22のうちの1つが、検出器アレイ36で発生した信号を、翼28のその位置で吸収されずに透過した中性子ストリーム50の一部が検出されたものと見なす。図1、4に例示する一組の通孔69は、中性子放出源32と検出器アレイ36とが任意所与の時点で接近して評価する、翼28に設けられた複数の通孔69を表す。したがって、この構成では、中性子ストリーム50の一部が翼28を透過したことを検出する検出器アレイ36からの出力信号だけでは、検出器アレイ36に隣接する1つ以上の通孔69のうちいずれの通孔が破損してホウ素または他の中性子吸収材がなくなった可能性があるかわからない。ただし、中性子ストリーム50の一部が翼28で吸収されずに透過したことを表す検出器アレイ36からの出力信号が検出されただけでは、翼28または制御要素6に交換を必要とする欠陥があると自動的に判定されない。むしろ、分析の結果、所与の制御要素6の欠陥のある位置(すなわち、制御要素において中性子が吸収されない位置)の数が所定値を超えず、かつそのような欠陥のある位置が十分分散して分布している場合、制御要素6は有効であり、交換の必要はないと判定することができる。ただし、中性子が吸収されずに制御要素6を透過するような制御要素6上の位置とその広がりを突き止める必要がある。しかし前述のように、検出器アレイ36から出力信号が検出されても、どの通孔69が部分的または完全に破損しているか必ずしもわからない。したがって、中性子が吸収されずに透過する翼28の位置で中性子信号が検出されたことを表す出力信号が検出器アレイ36から発生したときはいつも、中性子放出源32と検出器アレイ36が位置する翼28の領域をより精細に分析して、中性子が透過する翼28の位置をより正確に特定するためのマスク装置38の操作を行う。
【0046】
したがって、図3に略示するように、1つ以上のマニピュレータ62を操作して、1つ以上のマスク52が中性子放出源32と検出器アレイ36の間に配置されるようにマスク装置38を展開させると、そのように展開させたマスク52によって形成された開口56を通過する中性子ストリーム50からの中性子を除くすべての中性子が検出器アレイ36から遮断されるという利点が得られる。各マスク52は対応するマニピュレータ62によって個別に展開可能であるが、いずれのマスク52も、中性子放出源32と検出器アレイ36の間に配置されると、開口56が位置する個所、すなわち、開口56と同じ長さ64と幅68を有する領域を除き中性子ストリーム50からの中性子をすべて遮断すると考えられる。しかし、複数のマスク52をその開口56が重なり合うように展開すると、中性子ストリーム50のうち検出器アレイ36に到達するのは、翼28を透過するだけでなく当該開口56が重なり合う領域を通過した部分のみである。本願において、そのように協働する複数のマスク52をマスクシステム70と、また、マスクシステム70のマスク52の開口56が重なり合って形成される部分をオリフィス72と呼ぶ。互いに垂直に向いた開口56が重なり合って形成されるオリフィス72は、検出器アレイ36の断面積よりはるかに小さい。したがって、翼28の比較的小さな部分(すなわち検出器アレイ36の断面寸法より小さい)を個別に検査することにより、翼28のそのような位置に欠陥が存在し、中性子ストリーム50の中性子が通過するか否かを突き止めることができる。
【0047】
図5Aからわかるように、マスクシステム70は、翼28に重なる検出器アレイ36よりはるかに小さいオリフィス72を有する。なお、図5A、5B、5C、5Dの仮想線は、翼28に重なる検出器アレイ36の輪郭を例示するものであるが、マスク52の開口56が重なり合う様子を視覚化するために検出器アレイ36は取り除かれた状態にある。
【0048】
図5Aからわかるように、オリフィス72は、第1の寸法76(本願の実施例では幅68Aに等しい)と第2の寸法78(例示する実施態様では幅68Bに等しい)とを有すると言える。このマスクシステム70のマスク52A、52Bが図5Aに示すような配置構成で、翼28上の所与の位置84Aに重なるオリフィス72を通過した中性子ストリーム50の中性子を表す出力信号を検出器アレイ36が発生するか否か監視する。検出器アレイ36から信号が検出された場合、その事実がプロセッサ装置16に記録される。すなわち、プロセッサ装置16は、翼28の上の位置84Aで中性子が検出された事実を記録する。一方、マスクシステム70が図5Aに示すような配置にあるとき中性子が検出されなければ、プロセッサ装置16は、翼28上の位置84Aで中性子が検出されなかったという事実を記録する。
【0049】
次に、マスクシステム70を操作して、オリフィス72を別の位置(例えば図5Bに示す位置84B)へ移動させる。図5A図5Bの比較からわかるように、マニピュレータ62Bを用いてマスク52を図5A、5Bの紙面上で垂直下向きに並進させる(図5Aから図5Bへ移行する)と、オリフィス72は図5Aの第1の位置84Aから図5Bの第2の位置84Bへ移動する。マスクシステム70が図5Bのような配置構成で、位置84Bにあるオリフィス72を通過した中性子を表す出力信号を発生するか否か検出器アレイ36を監視する。オリフィス72が位置84Bにあるときに検出器アレイ36から検出信号が出力されるか否かが、プロセッサ装置16に記録される。この点に関して、図5Aの位置84Aと図5Bの位置84Bの間の任意の数の中間的な位置についても、検出器アレイ36が中性子を検出するか否かを評価し、そのような検出(または非検出)を適宜、プロセッサ装置16に記録できることがわかる。
【0050】
したがって、マスク装置38の操作は、検出器アレイ36に隣接する翼28上のすべての位置に次々にオリフィス72を重ね合わせて中性子の透過を表す出力信号を検出器アレイ36が発生するか否かを検知する、すべての位置の評価が完了するまで、行うことができる。そうする際に、図5Cに示すように、様々なマスクを使用する必要があるかもしれないが、ここでは、マスク52Bをマスク装置38の別のマスク85と組み合わせることにより、オリフィス73が翼28の上の別の位置84Cに重なる別のマスクシステム70Aが構成される。例えば、取り外されたマスク52Aの代わりにマスク85を展開させる場合がこれである。開示を簡明にするために、図1、3にはその別のマスク85は図示しない。マスク85は、ロボット装置14のそのマスク自身のマニピュレータによって別個に操作されるが、開示を簡明にするためにそのマニピュレータは図示しない。例示する実施態様において、図5Cのオリフィス73の第1の寸法76および第2の寸法78は、図5A、5Bのオリフィス72と同じである。
【0051】
マスク85の開口は、当該マスクの端寄り(例えばマスク52Aの場合)ではなくほぼ中央にあることがわかるが、このためマスク85の端部87は開口56Bの縁部の外側に位置することになる。すなわち、さまざまなマスク(参照符号52、85などで示されるマスクや、本願で明示的に示されていない他のマスクを含む)は、さまざまな組み合わせにおいて、中性子ストリーム50からの中性子のうち、翼28を透過しさらにオリフィス(例えば72または73)も通過する中性子を除くすべての中性子の通過を完全に阻止できるように構成されている。
【0052】
1つ以上のマスク52の他のマスク52に対する移動は、ルーチン22の1つとしてプログラミング可能であり、それをプロセッサ装置16およびそれに接続されたロボット装置14が実行できることがわかる。同様に、さまざまなマスク52、85および本願で明記されていない他の同様のマスクを選択し、それらを他の同様のマスク52と組み合わせて使用することは、同様にルーチン22の1つとしてプログラミング可能である。
【0053】
したがって、これまでの説明からわかるように、図5Aに略示する位置にある検出器アレイ36が、隣接する翼28上の1つ以上の位置で翼28を透過した中性子ストリーム50からの中性子を検出したことを示す出力信号を発生し、図5Aに示すようにマスク52A、52Bが展開され配置された状況で、マスクシステム70のオリフィス72がすべての位置(84A、84B、84Cなど)にラスタ方式で順次配置されるようにマスクシステム70を検出器アレイ36と翼28の間で操作すると、検出器アレイ36がどの位置で再び中性子の透過を示す出力を発生するかを突き止めることができた。換言すれば、図5A~5Cに示すように配置された検出器アレイ36が隣接する翼28上のいくつかの位置で中性子を検出したため、検出器アレイ36と翼28の間でさまざまなマスク52を展開させて、オリフィス72をすべての位置(例えば位置84A、84B、84C)にわたって移動させると、検出器アレイ36に隣接する翼28上の、中性子が実際に翼28を透過した位置をより正確に特定できた。
【0054】
例えば、図5Cの位置84Cにおいてのみ、検出器アレイ36が陽性の信号を発信したことがわかったとする。このことは、検出器アレイ36が図5A~5Cに示すような制御要素6上の位置にあり、当初、検出器アレイ36がその断面積の中のいずれかの場所で中性子を検出したことを表す出力信号を発生していたが、実際には位置84Cの範囲内のどこかで中性子が検出されていたということである。これは、翼28が位置84Cの範囲内に欠陥領域を有することを示す。
【0055】
オリフィス73の横断方向の寸法によるが、図5Cにおいて位置84Cが中性子の発生元であると突き止めたことで、情報としては十分に精確であり、さらなる分析の必要がないこともある一方、位置84Cを特定してプロセッサ装置16に伝えるだけでは、制御要素6が当該位置においてまたは総合的に中性子を吸収する能力を評価するうえで十分に精確な情報とは言えず、図5D、6に略示するように、より具体的および詳細な情報が当然必要であると判断されることがある。例えば、検出器アレイ36に隣接して配置したマスク52B、58を取り外し、代わりにマスク52C、52Dを配置して、マスクシステム70Aよりも狭い開口56C、56Dを有する別のマスクシステム70Bを構成することが考えられる。すなわち、幅68C、68Dは、幅68Bおよびマスク58の開口幅よりも狭い。したがって、図5Dに示すように開口56Cと56Dとを重ね合わすと、オリフィス72、73の第1の寸法76および第2の寸法78よりも小さい第1の寸法76Aおよび第2の寸法78Aを有する小さめのオリフィス83が形成される(図6)。
【0056】
マスクシステム70Bは、中性子ストリーム50からの中性子が透過したと判断された図5Cの位置84Cに含まれる個別の領域、すなわち、図6に示す複数の精細化位置88に沿ってオリフィス83を順次配置するように操作できる。マニピュレータ62C、62Dによってマスク52C、52Dを操作して、オリフィス83を当該位置84Cに含まれるさまざまな精細化位置88の間でラスタ方式で移動させることができるが、この操作は多数の精細化位置88で中性子の透過を示す信号が検出されるまで行う。検出器アレイ36が各精細化位置88に対応する警報信号を出力したか否かが、プロセッサ装置16に記録される。
【0057】
中性子が検出された精細化位置88の例を、図6に陰影線を付けて参照符号90A、90B、90C、90D、90Eで略示するが、本願においてそれらは集合的にまたは個別に参照符号90で表すことがある。中性子信号が検出された精細化位置90が情報として十分に詳細かつ精確なものであれば、位置84Cの評価を終了して、検出器アレイ36を制御要素60の長軸沿いの別の位置へ移動させることができる。あるいは、精細化位置90をさらに詳細に分析したければ、さらに小さな開口を有する別のマスク52を展開させて、各精細化位置90に含まれるさらに精細化された多数の領域をラスタ方式で評価し、その結果、そのようなさらに精細化された領域へ移動したとき検出器アレイ36が出力信号を発生すれば、この信号をプロセッサ装置16に記録し、中性子ストリーム50が透過した翼28上の精確な位置に関する十分に詳細な情報が得られれば検査を終了することができる。繰り返し述べるが、検出器アレイ36からのそのような出力はすべて、リアルタイムでプロセッサ装置16が受信する。
【0058】
当初は検出器アレイ36が出力を発生するまで当該検出器アレイ36をマスク装置38を展開せずに使用し、次に、中性子信号が検出された位置(例えば84A、84B、84C)および精細化位置84、90(さらなる例)を段階的に小さくした開口56を有するマスク52を使用して検査すると、検査時間の短縮、迅速な検査手順の実現が可能であることがわかる。最小可能サイズのオリフィスを用いて翼28全体を評価することもできるが、そのような評価は非常に多くの時間がかかるため、不要である可能性が高い。しかし、比較的大きな開口56A、56Bを有するマスク52A、52Bにより比較的粗い分析を行って、中性子信号が検出されたさまざまな位置84を粗い精度で特定したあと、比較的小さな開口56C、56Dを有するマスク52C、52Dにより比較的高精度の評価を行うと、中性子信号の存在が判明している位置84のみを比較的高い精度で評価することができる。したがって、マスク52A、52Bによって提供される比較的粗い分析方法を用いると、信号が検出されなかったさまざまな位置を迅速に評価して除外し、中性子信号の検出が判明した位置についてのみ比較的高い精度で分析することができる。中性子信号が検出された位置でそのように精度を段階的に上げて評価を行うと、効率が高まり、無駄な時間を極力減らすことができる。
【0059】
使用可能なマスク5には、制御要素6の通孔69の構成によって異なる多種多様なものがある。前述のように、図1に例示する様式の翼28Bの通孔69(すべての翼28の実質的に全長にわたって分布する典型的な通孔69)は、ホウ素または他の中性子吸収材を収容する通孔69の既知の構成方法の1つ(すなわち、ハブ24の長軸に垂直に延びる)によるものである。前述のように、ホウ素または他の中性子吸収材を収容する通孔が、ハブ24の長軸に平行に延びる別の設計もある。したがって、そのような別の構成の通孔を評価するために最適化された、種々のサイズおよび/または形状および/または方向の開口を有する様々な構成のマスクを提供するのが望ましいことがある。
【0060】
別案のマスクシステム170を図7A~7Cに示す。この別案のマスクシステム170は、開口156の寸法の選択肢が複数あるように構成されている。これは、マスクシステム170を、切欠き160を有する第1の板状部材154と第1の板状部材154に対して移動可能な第2の板状部材166とから成るように構成することによって実現する。この点については、第1の板状部材154に対して第2の板状部材166を移動させるか、または第2の板状部材166に対して第1の板状部材154を移動させるために、マスクシステム170に別個のロボット牽引装置を設けるとよい。図7A~7Cからわかるように、開口156の長さ164が固定されているが、幅は、例えば、比較的大きい幅168A(図7Aに例示)、比較的小さい幅168B(図7Bに例示)、さらに小さい幅168C(図7Cに例示)の間で変更可能である。このさまざまな幅168A、168B、168Cは例示的であり、本発明の精神から逸脱することなく、さらに大きい幅や、さらに小さい幅にすることができる。
【0061】
例えば、マスクシステム170は、取り外されて、比較的狭い開口56Cを有するマスク52Cと交換されるマスク52Aの代わりに用いることが可能である。同様な別例として、マスクシステム170はマスク52B、52Dの両方の代わりに使用できるが、この例では、マスク52Dと交換されるマスク52Bを取り外す必要がなくなる。マスクシステム170はむしろ、検出器アレイ36に隣接した状態のまま保持し、単に開口156の幅が狭くなるように操作することも可能である。例えば、幅を図7Aに参照符号168Aで示す幅から、図7Cに参照符号168Cで示す狭い幅になるまで段階的に変化させる。マスクシステム170は、制限なしに、別の事例のマスクシステム170や他のマスク52とともに使用可能である。
【0062】
マスクシステム170は、開口156の幅だけでなく長さ164も変えることができ、同様に開口156の位置も変えられる別の形態にすることが可能である。さまざまな開口位置または開口寸法およびその両方を提供するマスクシステムの多数のさらなる構成を想定することができる。
【0063】
本願で開示および特許請求する発明の改良された方法を、図8A、8Bに略示する。プロセスの開始点であるステップ204において、オフ状態の中性子透過撮影装置12を原子力施設8の検査用水プール30に搬入し、中性子放出源32を所定の深さ82かそれ以上の深さに沈める。次のステップ208において、制御要素6を水プール30に搬入して、制御要素6の翼28または他の部分が概して中性子放出源32と検出器アレイ36の間に位置するようにする。次にステップ212において、中性子放出源32を、加速器42に通電して中性子ストリーム50を放出させることにより、オフ状態からオン状態へ切り替える。次いで、支持体52を制御要素6に対して、または制御要素6を支持体52に対して少しずつ移動させながら、中性子ストリーム50のうち、吸収されずに制御要素6の一部を透過した部分を表す信号が検出器アレイ36から出力されないか否か監視する。そのような出力が検出されると、この出力を受信した入力装置18がプロセッサ装置16へ入力信号として提供する。ステップ220において、検出器アレイ36からしきい値を超える信号が検出されない場合、ステップ216においてプロセスを続行し、中性子透過撮影装置12を制御要素6に沿ってさらに漸進させる。一方、ステップ220において検出器アレイ36から信号を受信した場合、ステップ224において出力を発生させることができる。上述のような出力は入力装置18が受信し、その結果、警報信号の出力、またはマスクシステム38を操作するルーチン22の起動、またはその両方が起こる。
【0064】
例えば、ステップ228において、マスク装置38の一部を、概して中性子放出源32および検出器アレイ36から離れた位置から、概して中性子放出源32と検出器アレイ36の間の別の位置へ移動させる。次に、ステップ232においてプロセスを継続し、マスクシステム38を用いて制御要素6を評価するが、その評価は、初期サイズのオリフィス72を制御要素6の対応領域の周りでラスタ方式で移動させながら、中性子ストリーム50のうち吸収されずに制御要素6およびオリフィス72を透過した部分を表す別の信号の存否につき検出器アレイ36を監視して行う。ステップ236において、プロセッサ装置16は、検出器アレイ36からその別の信号を受信した制御要素6上の1つ以上の位置を記録する。ステップ240においてより精細な評価が不要であると判断されれば、ステップ244において分析を終了し、専門家による評価を受けるため分析結果を出力させる。
【0065】
しかし、ステップ240においてより精細な評価が望ましいと判断されれば、ステップ248においてプロセスを継続し、検出器アレイ36が信号を検出した位置を、マスクシステムおよび小さめのサイズのオリフィス83により、さらに評価する。そのような分析は、やはり前述のようなラスタ方式で行うかまたは、本発明の精神から逸脱することなく別の方式で行うこともできる。ステップ252において、検出器アレイ36から精細化信号が受信された制御要素6上のより精細に特定された位置のうちの任意の1つを記録する。
【0066】
上述の検査手順は、効率面の必要性に応じて、さまざまな順序のうち任意の順序で実行できることがわかる。例えば、翼28全体を、マスク装置38を配置せず中性子放出源32および検出器アレイ36を用いて評価すると、中性子信号が検出されるさまざまな位置を見つけることができる。その後、大きめの開口56A、56Bを有するマスク52A、52Bを用いて別の走査を行うが、そのようなマスクシステム70を、マスク装置38を使用しなかった最初の走査の際に検出され記録されたさまざまな位置にわたってラスタ方式で移動させる。マスク62A、62Bを配置した状況で信号が検出されたさまざまな位置が記録される。これは、評価対象である翼の全長にわたって行うことができる。さらに、より精細なマスク52C、52Dを用いて制御要素の全長にわたって別の走査を行うことができるが、その際に、すでに信号が検出され記録された位置のみがマスクシステム70Aによるさらなる分析の対象となる。その他の変形例についても自明である。
【0067】
したがって、本願で説明する検出装置および方法は、制御要素6の迅速な評価とともに、制御要素の交換が必要であるか否か、あるいは制御要素6を原子力施設8内で再展開させ得るか否かの判断を可能にすることがわかる。複数の中性子放出源および検出器アレイを用いて複数の翼28を同時に評価する、検出装置4の変形例を提供することができる。中性子放出源32は、有利なことに、オフ状態とオン状態の間で切り替え可能であるため、或る位置から別の位置への移動に遮蔽が不要である。上述のように、既知のカリホルニウム中性子放出源は、オフ状態に切り替えられないので、深さ5メートルの大きな水プールが存在しないときは線源の輸送に厳重に遮蔽された輸送キャスクが別途必要となるが、中性子放出源32はそのような遮蔽が不要で有利である。さらに、検出器アレイ36とマスクシステム38を用いる評価は、翼28のリアルタイム分析を可能にするだけでなく、評価の実施効率を高め、フィルムの長時間にわたる中性子源への露出を不要にする。また、オリフィスを徐々に小さくできるマスク装置38の構成によって、より精細な評価がより精細な評価を必要とする位置だけに限定されるため、評価時間が短縮され、制御要素6の総合評価が迅速に行える。その他の利点も自明である。
【0068】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B