(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
H04N 5/64 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2023078015
(22)【出願日】2023-05-10
(62)【分割の表示】P 2021506903の分割
【原出願日】2019-03-19
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】310021766
【氏名又は名称】株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 昭
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 徹
(72)【発明者】
【氏名】楠 俊宏
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101704(JP,A)
【文献】特開2018-190825(JP,A)
【文献】特開平11-202795(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107454805(CN,A)
【文献】特開平07-013100(JP,A)
【文献】特開2007-011394(JP,A)
【文献】特開平03-188777(JP,A)
【文献】国際公開第2015/137165(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184863(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0292889(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108700741(CN,A)
【文献】中国実用新案第206975323(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体を支持すると共に、ユーザの頭部に装着される装着バンドと、
1以上の電子部品を実装する実装面を有し、前記装置本体の上部に配置されると共に、前記実装面が上方を向いて配置される回路基板と、
前記装置本体の上部において前記実装面に対向して当該実装面よりも上方に配置される冷却装置と、
を有し、
前記回路基板は、前記電子部品として集積回路を実装しており、
前記冷却装置は、
少なくとも冷却ファンを含み、少なくとも一部が前記集積回路に接触し
ており、かつ前記装置本体の外観を構成するハウジングと非接触である、
ヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
前記装置本体は、前記装着バンドに支持される被支持部を有し、
前記被支持部は、少なくとも一部が前記冷却装置の上方に配置されている、
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記被支持部は、前記装着バンドに対して前後方向に相対的に移動可能に前記装着バンドに支持されている、
請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
少なくとも一部が前記冷却装置より上方に設けられており、ユーザからの操作を受け付けることにより、前記装着バンドに対する前記被支持部の相対的な移動の規制を解除する操作部を有する、
請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
前記冷却装置は、放熱フィンを含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
前記冷却ファンは、前記放熱フィンに対向して開口する送風口が形成されるハウジングに収容されている、
請求項5に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
前記放熱フィンは、所定方向に並んで複数設けられており、前記回路基板が設けられる側から上方に向けて延伸している、
請求項
5又は6に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
前記冷却装置は、少なくとも前記放熱フィンを載せる載置部を含む、
請求項
5~7のいずれか1項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項9】
前記冷却装置は、前記集積回路に接触すると共に前記集積回路から生じた熱を拡散させる熱拡散部材を含み、
前記熱拡散部材は、前記載置部を、前記集積回路と接触する接触部よりも上方に配置するように、前記載置部と前記接触部とを接続する接続部とを含む、
請求項
8に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項10】
前記1以上の電子部品は、前記載置部の直下において前記実装面に実装されており、前記集積回路よりも厚みが厚い第1の電子部品を含む、
請求項
8又は9に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項11】
前記1以上の電子部品は、上面視において、前記冷却装置と重ならないように配置されており、前記第1の電子部品よりも厚みが厚い第2の電子部品を含む、
請求項
10に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項12】
前記装着バンドは、前記装置本体を支持する支持部を含み、
前記装置本体は、前記支持部を前後方向にスライドさせるレールを含み、
前記回路基板は、前記実装面が前記レールの延伸方向に沿うように配置されている、
請求項1~11に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの頭部に装着して利用するヘッドマウントディスプレイの開発が進められている。特許文献1に開示されるように、ヘッドマウントディスプレイは、ディスプレイが内蔵される装置本体と、装置本体を支持すると共に、ユーザの頭部を囲むバンドとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0307282号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ヘッドマウントディスプレイにおいては、機能の数や性能を向上させると共に、消費電力が増加することとなる。消費電力が増加すると、ヘッドマウントディスプレイの各種機能を制御する電子部品の温度が上昇しやすくなる。電子部品の温度が過度に上昇してしまうと、誤動作が生じたり、動作が停止したりしてしまう可能性がある。特許文献1には、電子部品の温度の上昇を抑制するためにヒートパイプやファンを備えたヘッドマウントディスプレイが開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されるようにヘッドマウントディスプレイの装置本体の前部に冷却機器を設ける構成においては、装置本体の重心が前方に位置することとなり、ヘッドマウントディスプレイを装着するユーザにかかる負荷が大きくなってしまう。
【0005】
本明細書の目的の一つは、電子部品の温度が過度に上昇することを抑制すると共に、ユーザにかかる負荷を低減するヘッドマウントディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示で提案するヘッドマウントディスプレイの一例は、装置本体と、前記装置本体を支持すると共に、ユーザの頭部に装着される装着バンドと、前記装置本体の上部に配置されており、1以上の電子部品を実装する実装面を有する回路基板と、前記装置本体の上部において前記実装面に対向して配置される冷却装置と、を有する。
【0007】
上記のヘッドマウントディスプレイによると、電子部品の温度が過度に上昇することを抑制すると共に、ユーザにかかる負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るHMDの使用状態を示す図である。
【
図2】本実施形態の装置本体の内部構造を左斜め前から見た斜視図である。
【
図3】本実施形態の装置本体の内部構造及び装着バンドを示す分解斜視図である。
【
図4】本実施形態の装置本体の内部構造を上方から見た上面図である。
【
図5】本実施形態の装置本体の内部構造を左方から見た側面図である。
【
図6】本実施形態の装置本体の内部構造を前方から見た前面図である。
【
図7】本実施形態の冷却装置及び回路基板を示す斜視図である。
【
図8】本実施形態の冷却装置及び回路基板を示す上面図である。
【
図9】
図8のIX-IX切断線で切断した断面を示す断面図である。
【
図10】
図8のX-X切断線で切断した断面を示す断面図である。
【
図11】本実施形態におけるベイパーチャンバと回路基板に実装される電子部品とを模式的に示す前面図である。
【
図12】本実施形態の冷却装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、図中のX1及びX2が示す方向をそれぞれ右方及び左方とし、図中のY1及びY2が示す方向をそれぞれ前方及び後方とし、図中のZ1及びZ2が示す方向をそれぞれ上方及び下方とする。これら各方向は、ヘッドマウントディスプレイ1を装着したユーザから見た方向を示している。また、以下の説明では、ヘッドマウントディスプレイ1をHMD(Head Mounted Display)1と称する。
【0010】
[HMD1の全体構成の概要]
図1に示すように、HMD1は、装置本体10と、装着バンド20とを有している。
【0011】
装置本体10は、
図1に示すように、少なくとも、表示装置110と、表示装置110を収容すると共に、装置本体10の外観を構成するハウジング120とを有している。表示装置110は、例えば、液晶表示装置や有機エレクトロルミネセンス表示装置であるとよいが、その種類は特に限定されない。HMD1の使用時、装置本体10はユーザの眼前を覆う。
【0012】
装着バンド20は、装置本体10から後方に延びている。HMD1の使用時、装着バンド20はユーザの頭部Hを取り囲む。装着バンド20は、環状であり、その内側に頭部Hが配置されるとよい。HMD1の例では、装着バンド20は、後方且つ下方に斜めに延びている。ただし、これに限られるものではなく、装着バンド20は水平に延びていてもよい。
【0013】
HMD1の例では、装着バンド20は、その前部にフロント部材21を有している。フロント部材21は、額当て部211と、支持部212とを有している。
【0014】
HMD1の使用時、フロント部材21の額当て部211はユーザの頭部Hの前面に当てられる。額当て部211の内面(後面)にはクッションが設けられてもよい。また、額当て部211の内面(後面)は、頭部Hの前面にフィットするように湾曲してもよい。
【0015】
支持部212は、額当て部211の下部から前方に伸びている。支持部212は、装置本体10の上部に設けられる被支持部16を支持している。これにより、装置本体10は、装着バンド20に支持されて、装着バンド20を装着したユーザの眼前に配置されることとなる。
【0016】
[装置本体100の内部構造]
さらに、
図2~
図6を参照して、本実施形態に係るHMD1における装置本体10の内部構造の詳細について説明する。なお、本実施形態においては、装置本体10の内部構造とは、装置本体10のうち、
図1に示すハウジング12を除いた部分である。
【0017】
図2は、本実施形態の装置本体の内部構造を左斜め前から見た斜視図である。
図3は、本実施形態の装置本体の内部構造及び装着バンドを示す分解斜視図である。
図4は、本実施形態の装置本体の内部構造を上方から見た上面図である。
図5は、本実施形態の装置本体の内部構造を左方から見た側面図である。
図6は、本実施形態の装置本体の内部構造を前方から見た前面図である。
【0018】
装置本体10は、
図3に示すように、メインフレーム11と、右光学ユニット12Rと、左光学ユニット12Lと、カメラユニット13と、回路基板14と、冷却装置15と、被支持部16とを有している。
図3に示すように、HMD1においては、メインフレーム11上には回路基板14が設けられており、回路基板14上には冷却装置15が設けられており、冷却装置15上には被支持部16が設けられている。
【0019】
メインフレーム11は、右光学ユニット12R、左光学ユニット12L、カメラユニット13、回路基板14を支持している。メインフレーム11は、軽量かつ剛性の高い材料からなるとよい。例えば、メインフレーム11の材料としてはアルミニウムやマグネシウム等を採用するとよい。
【0020】
メインフレーム11は、上下方向に延伸する中フレーム111と、中フレーム111の上部に接続される上フレーム112と、中フレーム111の下部に接続される下フレーム113とを有している。
【0021】
中フレーム111は、装置本体10の略中央に設けられている。上フレーム112及び下フレーム113の左右方向の幅は、中フレーム111の左右方向の幅よりも大きい。そのため、
図3等に示すように、メインフレーム11は、前後方向から見た場合に、H形状が90度横に傾いたような形状となっている。すなわち、上フレーム112の右部と、下フレーム113の右部との間に空間が形成されている。同様に、上フレーム112の左部と、下フレーム113の左部との間にも空間が形成されている。このような形状としたことにより、前後方向から見た場合の形状(外形)を矩形とした場合と比較して、メインフレーム11を軽量化することができる。
【0022】
また、右光学ユニット12R及び左光学ユニット12Lは、中フレーム111と上フレーム112との間に形成される領域に配置されており、中フレーム111、上フレーム112、及び下フレーム113とによって支持されている。
【0023】
右光学ユニット12Rは、表示装置110からの画像光を、ユーザの右眼に導くレンズ(不図示)を少なくとも有している。同様に、左光学ユニット12Lは、表示装置110からの画像光を、ユーザの左眼に導くレンズ(不図示)を少なくとも有している。また、
図1に示した表示装置110は、右光学ユニット12R及び左光学ユニット12Lが有するレンズの前方にそれぞれ配置されているとよい。表示装置110は、シースルー型の画面を有するものであってもよいし、非シースルー型の画面を有するものであってもよい。また、光学ユニット12R、12Lは、ユーザの鼻に接触する鼻パッドなどを有していてもよい。
【0024】
また、右光学ユニット12Rと左光学ユニット12Lは、左右に移動可能にメインフレーム11に支持されているとよい。これにより、ユーザは、左右方向における、右光学ユニット12Rが備えるレンズと左光学ユニット12Lが備えるレンズとの間隔を、自己の左右の眼の間隔に応じて、調整することができる。また、上述のように、メインフレーム11においては、上フレーム112の右部と、下フレーム113の右部との間に空間が形成されており、上フレーム112の左部と、下フレーム113の左部との間にも空間が形成されている。すなわち、メインフレーム11の右部及び左部において、右光学ユニット12R及び左光学ユニット12Lの左右方向における移動を規制する部分が存在しない。そのため、右光学ユニット12R及び左光学ユニット12Lの左右方向における可動範囲を十分にとることができる。
【0025】
なお、図示の構成は一例であり、レンズ等はユニット化されているものに限られるものではなく、少なくとも、装置本体10に内蔵されるものであればよい。
【0026】
カメラユニット13は、少なくとも、カメラフレーム131と、カメラフレーム131に支持されるカメラ132、133を有している。カメラフレーム131は、中フレーム111の前部に支持されている。カメラ132、133は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を備えており、HMD1を装着したユーザの前方を撮像する。
【0027】
カメラ132、133は、複数設けられており、例えば、撮影画像からカメラの位置や姿勢を推定することにより3次元認識を可能にするSLAM(Simultaneous localization and mapping)用に用いられるものを含むとよい。
図2等においては、4つのカメラがカメラフレーム131に支持される構成を示している。ただし、カメラの個数や位置は図示するものに限られるものではない。なお、図示は省略するが、ハウジング120は、カメラ132、133がそれぞれ露出するように開口を有しているとよい。
【0028】
回路基板14は、上フレーム112に支持されている。上面視において、上フレーム112の大きさは、回路基板14の大きさよりも大きい又は略同じであるとよい。すなわち、上フレーム112は、前後方向及び左右方向において所定の幅を有するフレームであるとよい。上フレーム112は、
図3等に示すように、中フレーム111から後方に突出するように、中フレーム111の上部に接続されている。
【0029】
回路基板14は、少なくとも1以上の電子部品を実装している。以下、回路基板14のうち後述の集積回路140を実装する側の面を実装面141と呼ぶ。本実施形態においては、回路基板14は、HMD1の使用状態において、実装面141が上方を向くように、上フレーム112に支持されている。
【0030】
また、
図1でも示したように、装置本体10は、その上部に被支持部16を有している。被支持部16は、冷却装置15の上方に配置されている。
【0031】
被支持部16は、
図3、
図4等に示すように、レール161と、操作部162と、操作補助部163とを有している。レール161は、前後方向に延伸して設けられている。操作部162は、レール161の右側に配置されており、上方に突出している。操作補助部163は、レール161の左側に配置されており、上方に突出している。なお、
図6に示すように、被支持部16のうち少なくともレール161は、上面視において、冷却ファン153Rと冷却ファン153Lとの間であって、冷却ファン153Rと冷却ファン153Lと重ならないように配置されているとよい。
【0032】
フロント部材21の支持部212は、前後方向にスライド可能にレール161に嵌められる。支持部212は、被支持部16に対して相対的に前後動可能となっている。すなわち、装置本体10は、装着バンド20に対して相対的に前後動可能となっている。そのため、ユーザは、HMD1を頭部Hに装着した状態で、装置本体10の前後方向における位置を調整することができる。これにより、ユーザは、自己の眼と、光学ユニット12R、12Lに設けられるレンズとの距離(アイレリーフとも呼ばれる)を調整することができる。
【0033】
また、支持部212と被支持部16とは、不図示の規制機構により、相対移動が規制されているとよい。そして、ユーザが、操作部162を操作することにより、支持部212と被支持部16との相対移動が規制された状態から、許容される状態に切り替え可能であるとよい。例えば、ユーザが、操作部162を左方に押すことにより(
図6の矢印方向参照)、規制機構による規制が解除されるとよい。
【0034】
なお、規制機構の説明の詳細については省略するが、例えば、支持部212と被支持部16とがラックピニオン機構により相対移動可能となっており、規制機構は、ラックギア又はピニオンギアに噛み合うことにより、それらの動作を規制する機構であるとよい。そして、操作部162は、規制機構を動作させることにより、ラックギア又はピニオンギアに対する規制機構の噛み合いを解除するものであるとよい。また、操作部162は、ユーザからの操作を受け付けた後、バネ等の弾性部材の弾性力により、元の位置(
図3等に示す位置)に移動するように構成されているとよい。
【0035】
また、装置本体10は、ユーザが操作部162を操作しやすいように、操作補助部163を有するとよい。ユーザは、例えば、操作部162と操作補助部163とを人差し指と親指とで摘むことにより、操作部162を左方向に容易に押すことができる。
【0036】
さらに、
図7~
図12を参照して、本実施形態の冷却装置15の詳細について説明する。
図7は、本実施形態の冷却装置及び回路基板を示す斜視図である。
図8は、本実施形態の冷却装置及び回路基板を示す上面図である。
図9は、
図8のIX-IX切断線で切断した断面を示す断面図である。
図10は、
図8のX-X切断線で切断した断面を示す断面図である。
図11は、本実施形態におけるベイパーチャンバと回路基板に実装される電子部品とを模式的に示す前面図である。
図12は、本実施形態の冷却装置を示す分解斜視図である。
【0037】
冷却装置15は、熱拡散部材であるベイパーチャンバ151と、右ヒートシンク152Rと、左ヒートシンク152Lと、右冷却ファン153Rと、左冷却ファン153Lとを有している。
【0038】
冷却装置15は、回路基板14の実装面141に対向して配置されている。より具体的には、ベイパーチャンバ151が実装面141に対向して配置されている。
【0039】
ベイパーチャンバ151は、
図12等に示すように、右ヒートシンク152Rと右冷却ファン153Rを載置する右載置部1512Rと、左ヒートシンク152Lと左冷却ファン153Lを載置する左載置部1512Lとを有している。
【0040】
また、ベイパーチャンバ151は、右載置部1512Rと左載置部1512Lとの間に設けられる窪み部(接触部)1511を有している。
【0041】
また、ベイパーチャンバ151は、右載置部1512Rと窪み部1511とを接続する右接続部1513Rと、左載置部1512Lと窪み部1511とを接続する左接続部1513Lとを有している。
【0042】
図11に示すように、右接続部1513Rは、窪み部1511側から右載置部1512R側に向かうに従い上方に位置するように屈曲している。そのため、右載置部1512Rは、窪み部1511よりも上方に位置しており、右接続部1513Rの直下には隙間が形成されている。
【0043】
同様に、左接続部1513Lは、窪み部1511側から左載置部1512L側に向かうに従い上方に位置するように屈曲している。そのため、左載置部1512Lは、窪み部1511よりも上方に位置しており、左接続部1513Lの直下には隙間が形成されている。
【0044】
ベイパーチャンバ151は、その内部に流体が封入されている。以下の説明において、ベイパーチャンバ151のうち内部に流体が封入されている領域を熱拡散領域Dと定義する。なお、
図7、
図8、
図12において、熱拡散領域Dに対応する領域を、ハッチングを施すことにより示している。
図12に示すように、熱拡散領域Dは、右載置部1512R、右接続部1513R、窪み部1511、左接続部1513L、左載置部1512Lを跨って設けられている。なお、図面には表れていないが、ヒートシンク152R、152Lの直下の領域も熱拡散領域Dとなっている。
【0045】
ベイパーチャンバ151の内部に封入される流体は、温度が上昇することにより蒸発し、ベイパーチャンバ151内の上部に向かう。流体が上部に向かうことにより、ベイパーチャンバ151上に載置される右ヒートシンク152R及び左ヒートシンク152Lにおいて放熱が行われる。その後、流体は凝縮し、凝縮した流体は、ベイパーチャンバ151の下部へ環流される。
【0046】
右ヒートシンク152R及び左ヒートシンク152Lは、回路基板14側から上方に向けて延伸する放熱フィンを複数備えている。すなわち、右ヒートシンク152R及び左ヒートシンク152Lは、回路基板14で発生した熱を、上方に放出する構成となっている。
【0047】
本実施形態において、
図11に示すように、窪み部1511は、その下面が回路基板14に実装される集積回路(IC:integrated circuit)140の上面に直接接触するように設けられている。このような構成により、集積回路140で発生した熱を、熱拡散領域Dを通じて、ヒートシンク152R、152Lへ送っている。
【0048】
なお、集積回路140は、例えば、HMD1の全体を制御するCPU(Central Processing Unit)であるとよい。ただし、これに限られるものではなく、集積回路140は、その駆動に伴い電力消費が行われ、熱源となり得る回路であればよい。集積回路140においては、HMD1の機能の数や性能が向上するほど、その情報処理が煩雑となり、消費電力が大きくなる。集積回路140は、消費電力が大きいほど熱を生じることとなる。
【0049】
ここで、回路基板14は、複数の電子部品を実装している。複数の電子部品の厚さ(高さ)は様々である。冷却装置15と回路基板14との間には、電子部品を実装できる程度の隙間が必要となる。ベイパーチャンバ151の窪み部1511は、放熱効果を高めるため、上述のように、集積回路140に直接的に接触している。すなわち、窪み部1511の下面と、回路基板14の実装面141との間の長さは、集積回路140の厚さに略対応している。
【0050】
そのため、集積回路140よりも厚さの厚い電子部品については、窪み部1511の下面と、回路基板14の実装面141との間に配置することができない。そこで、本実施形態においては、上述のように、右載置部1512R及び左載置部1512Lを、窪み部1511よりも上方に配置することにより、右載置部1512R及び左載置部1512Lの直下に空間が形成される構成を採用した。すなわち、右載置部1512R及び左載置部1512Lと回路基板14の実装面141との間の隙間を、窪み部1511と回路基板14の実装面141との間の隙間よりも広くした。
【0051】
そして、
図11に示すように、実装面141のうち、右載置部1512Rの直下に、集積回路140よりも厚さの厚い電子部品E1(第1の電子部品)を配置した。同様に、実装面141のうち、左載置部1512Lの直下に、集積回路140よりも厚さの厚い電子部品E1(第1の電子部品)を配置した。なお、電子部品E1は、その上面が、右載置部1512R又は左載置部1512Lの下面に接触するように配置されていてもよい。この場合、電子部品E1から生じる熱を効率的に放出することができる。一方、電子部品E1の上面を右載置部1512R又は左載置部1512Lの下面に非接触とした場合、集積回路140からのみベイパーチャンバ151に熱が直接伝わるため、集積回路140から発生した熱をより効果的に放出することが可能となる。
【0052】
さらに、右載置部1512Rや左載置部1512Lの直下に配置される電子部品よりも、さらに厚さの厚い電子部品E2(第2の電子部品)については、
図7、
図11に示すように、上面視において実装面141のうち冷却装置15と重ならない領域に配置した。すなわち、回路基板14に実装される電子回路のうち、比較的厚さの厚いコネクタは、上面視において実装面141のうち冷却装置15と重ならない領域に配置されるとよい。なお、本実施形態においては、上面視において実装面141のうち冷却装置15と重ならない領域とは、実装面141の右部又は左部である。なお、電子部品E2は、例えば、種々の電気配線が接続されるコネクタであるとよい。
【0053】
なお、
図11においては、簡略化して、右載置部1512Rの直下及び左載置部1512Lの直下に配置される電子部品E1をそれぞれ1つのみ示しているが、電子部品E1は複数配置されているとよい。また、
図11においては、電子部品E2を1つのみ示しているが、電子部品E2も複数配置されているとよい。
【0054】
また、ベイパーチャンバ151は、スプリングを備える固定具171、172R、172Lの弾性力により、回路基板14に対して付勢された状態で保持されているとよい。具体的には、
図12に示す被保持孔151h1、151h2、151h3のそれぞれに、固定具171、172R、172Lが挿通されて、固定具171、172R、172Lが備えるスプリングにより被保持孔151h1、151h2、151h3の周縁部が下方に押圧されているとよい。このような構成により、ベイパーチャンバ151の窪み部1511は、回路基板14に実装される集積回路140に対して弾性的に接触することとなる。そのため、窪み部1511と、集積回路140の接触状態は安定しており、集積回路140で発生した熱を、より効果的にベイパーチャンバ151へと伝達することができる。
【0055】
固定具171、172R、172Lは、回路基板14と被支持部16との間で保持されているとよい。すなわち、
図6に示すように、固定具171、172R、172Lは、被支持部161を支持する機能を有するものであるとよい。また、
図6に示すように、固定具171、172R、172Lは、左右方向において、冷却ファン153Rと冷却ファン153Lとの間に配置されているとよい。これにより、回路基板14及び冷却装置15を装置本体10の上部に配置すると共に、被支持部161を装置本体10の上部かつ中央に配置する構成とすることができる。
【0056】
ベイパーチャンバ151を以上説明したような構成にしたことにより、集積回路140からの熱を効率的に放出すると共に、回路基板14の実装面141を大きくすることなく、複数の電子部品を回路基板14に実装することが可能となる。
【0057】
また、ベイパーチャンバ151の右載置部1512Rには、右ヒートシンク152Rと右冷却ファン153Rが載置されている。右ヒートシンク152Rと右冷却ファン153Rは、前後方向で互いに隣り合って設けられている。
【0058】
同様に、ベイパーチャンバ151の左載置部1512Lには、左ヒートシンク152Lと左冷却ファン153Lが載置されている。左ヒートシンク152Lと左冷却ファン153Lは、前後方向で互いに隣り合って設けられている。
【0059】
右冷却ファン153Rは、回路基板14を貫く方向に延伸する中心軸OR(
図8、
図9参照)を中心として回転する羽根W1を有している。同様に、左冷却ファン153Lは、回路基板14を貫く方向に延伸する中心軸OL(
図8、
図9参照)を中心として回転する羽根W2を有している。
【0060】
また、
図12に示すように、右冷却ファン153Rのハウジングには、右ヒートシンク152Rに対向して開口する送風口153aが形成されている。同様に、左冷却ファン153Lのハウジングにも、左ヒートシンク152Lに対向して開口する送風口153bが形成されている。
【0061】
右冷却ファン153Rの羽根W1が回転駆動することにより、送風口153aを通じてヒートシンク152Rに向けて送られる冷却風が生じる。同様に、左冷却ファン153Lの羽根W2が回転駆動することにより、送風口153bを通じてヒートシンク152Lに向けて送られる冷却風が生じる。このような構成により、冷却装置15における冷却性能がより向上する。なお、冷却ファン153R、153Lが発生させる冷却風の送風向きは、ここで説明したものに限られない。例えば、冷却ファン153R、153Lは、回路基板14に向けて冷却風を送風するものであってもよい。または、冷却ファン153R、152Lの下方で籠もった空気を吸い込み、上方に送る構成であってもよい。
【0062】
以上説明したHMD1においては、冷却装置15を有することにより、回路基板14が実装する電子部品から熱が発生した場合であっても、過度に温度が上昇することが抑制される。その結果、HMD1の誤動作や駆動の停止等を抑制することができる。特に、本実施形態で示した構成は、機能の数や性能を向上させることにより、電子部品における電力消費が大きなHMD1に有効である。具体的には、例えば、電力消費が大きい無線通信技術を採用するHMD1などに有効である。
【0063】
ここで、ある程度の重量のある回路基板14及び冷却装置15が、HMD1を装着したユーザの頭部Hから遠い位置である、装置本体10の前部に配置されていると、装置本体10の重心が前方に位置することとなってしまう。特に、本実施形態で示したように、HMD1の前方を撮像するカメラを有する構成においては、回路基板14及び冷却装置15を装置本体10の前部に配置した場合、それらよりもさらに前方にカメラユニット13を配置することとなる。
【0064】
その結果、HMD1を装着したユーザにかかる負荷が増加する共に、HMD1がユーザの頭部Hからずれ落ちやすくなってしまう。そのため、HMD1がずれ落ちないように、装着バンド20をユーザの頭部Hに強固に固定する等の対策を施す必要が生じてしまう。本実施形態のHMD1においては、回路基板14及び冷却装置15が、装置本体10の上部に配置されていることより、それらが装置本体10の前部に配置される構成と比較して、HMD1を装着したユーザにかかる負荷が抑制され、また、HMD1がユーザの頭部Hからずれ落ちやすくなってしまうことを抑制できる。
【0065】
なお、上記実施形態で説明したHMD1の構成は一例であり、少なくとも、装置本体10の上部に回路基板14及び冷却装置15が配置されるものであればよい。例えば、光学ユニット12R、12Lや、メインフレーム11の構成等は、図示したものに限られるものではない。
【0066】
また、本実施形態においては、冷却装置15が、ベイパーチャンバ151、ヒートシンク152R、152L、及び冷却ファン153R、153Lを有する例について説明したが、これに限られるものではなく、少なくとも回路基板14において発生する熱に対して冷却効果を有するものであればよい。すなわち、冷却装置15は、ベイパーチャンバ、ヒートシンク、冷却ファンのいずれか1つのみを有するものであってもよいし、その他の冷却構造を備えるものであってもよい。その他の冷却構造としては、例えば、ヒートパイプを有するものであってもよい。
【0067】
また、本実施形態においては、冷却装置15が、ヒートシンク及び冷却ファンをそれぞれ2つ有する例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、装着バンド20において、支持部212を右部と左部にそれぞれ形成し、それら2つの支持部212の間に1つのヒートシンク及び1つの冷却ファンを設けてもよい。
【0068】
また、本実施形態においては、装着バンド20がフロント部材21を備えており、フロント部材21を介して装置本体10に接続される構成を示したが、これに限られるものではない。例えば、装着バンド20のうち後方に延びるバンド部分が装置本体10に直接接続される構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0069】
1 ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、10 装置本体、14 回路基板、15 冷却装置、20 装着バンド。