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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/28 20090101AFI20240517BHJP
   H04W 28/06 20090101ALI20240517BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240517BHJP
   H04W 72/27 20230101ALI20240517BHJP
   H04B 7/024 20170101ALI20240517BHJP
【FI】
H04W16/28 130
H04W28/06 110
H04W84/12
H04W72/27
H04B7/024
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023079580
(22)【出願日】2023-05-12
(62)【分割の表示】P 2019036401の分割
【原出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2023106475
(43)【公開日】2023-08-01
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 佑生
【審査官】石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-510516(JP,A)
【文献】特表2017-510109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0372739(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
H04B 7/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置であって、
前記通信装置と前記通信装置とは異なる1つ以上の他の通信装置とのうちの2つ以上の通信装置により、共通の相手装置との間に形成される合計の空間ストリーム数を前記1つ以上の他の通信装置に通知する通知手段を有する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記1つ以上の他の通信装置から、前記1つ以上の他の通信装置と前記共通の相手装置との間の通信品質を取得する取得手段と、
前記通信品質に基づいて前記合計の空間ストリーム数を決定する決定手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
プリアンブルとデータフィールドを有する物理(PHY)フレームを送信する送信手段を有する通信装置であって、
前記プリアンブルは、Signal Fieldと、を含み、
前記Signal Fieldには、少なくとも、前記通信装置と、前記通信装置と異なる1つ以上の他の通信装置とにより共通の相手装置との間に形成される合計の空間ストリーム数を示すフィールドが含まれている、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項4】
前記通信装置は、D-MIMO(Distributed MIMO)に対応のスレーブ・アクセスポイントとして機能し、前記空間ストリーム数は、前記D-MIMOに対応のマスター・アクセスポイントによる指示に基づいて設定される、ことを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
プリアンブルとデータフィールドを有する物理(PHY)フレームを受信する受信手段を有する通信装置であって、
前記プリアンブルは、Signal Fieldと、を含み、
前記Signal Fieldには、少なくとも、前記通信装置と異なる複数の通信装置により前記通信装置を相手装置として形成される合計の空間ストリーム数を示すフィールドが含まれている、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項6】
前記空間ストリーム数を示すサブフィールドは、4ビット以上のビットが割り当てられる、ことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
通信装置によって実行される通信方法であって、
前記通信装置と前記通信装置とは異なる1つ以上の他の通信装置とのうちの2つ以上の通信装置により、共通の相手装置との間に形成される合計の空間ストリーム数を前記1つ以上の他の通信装置に通知することを含む、
ことを特徴とする通信方法。
【請求項8】
前記1つ以上の他の通信装置から、前記1つ以上の他の通信装置と前記共通の相手装置との間の通信品質を取得することと、
前記通信品質に基づいて前記合計の空間ストリーム数を決定することと、
をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の通信方法。
【請求項9】
プリアンブルとデータフィールドを有する物理(PHY)フレームを送信する通信装置のための通信方法であって、
前記プリアンブルは、Signal Fieldと、を含み、
前記Signal Fieldには、少なくとも、前記通信装置と、前記通信装置とは異なる1つ以上の他の通信装置とにより共通の相手装置との間に形成される合計の空間ストリーム数を示すフィールドが含まれている、
ことを特徴とする通信方法。
【請求項10】
プリアンブルとデータフィールドを有する物理(PHY)フレームを受信する通信装置のための通信方法であって、
前記プリアンブルは、Signal Fieldと、を含み、
前記Signal Fieldには、少なくとも、前記通信装置と異なる複数の通信装置により前記通信装置を相手装置として形成される合計の空間ストリーム数を示すフィールドが含まれている、
ことを特徴とする通信方法。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1から6のいずれか1項に記載の通信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANにおける通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信技術の発展とともにインターネット使用量が年々増加しており、需要の増加に応えるべく様々な通信技術の開発が進められている。中でも無線ローカルエリアネットワーク(無線LAN)技術は、無線LAN端末によるパケットデータ、音声、ビデオなどのインターネット通信におけるスループット向上を実現しており、現在も様々な技術開発が盛んに行われている。
【0003】
無線LAN技術の発展において、無線LAN技術の標準化機構であるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802による数多くの標準化作業が重要な役割を果たしている。無線LAN通信規格の一つとして、IEEE802.11規格が知られており、IEEE802.11n/a/b/g/acまたはIEEE802.11axなどの規格がある。例えば、IEEE802.11axではOFDMA(Orthogonal frequency-division multiple access)により最大9.6ギガビット毎秒(Gbps)という高いピークスループットに加え、混雑状況下での通信速度向上を実現している(特許文献1)。
【0004】
近年、更なるスループット向上のために、IEEE802.11axの後継規格として、IEEE802.11 EHT(Extremely High Throughput)と呼ばれるStudy Groupが発足した。IEEE802.11 EHTが目指すスループット向上を実現するうえで、複数の空間的に分散されたアクセスポイントを協調動作させることでアンテナ数を増加させるD-MIMO(Distributed MIMO)が検討されている。なお、MIMOはMulti-Input Multi-Ouputの略である。従来、1つのアクセスポイントが無線LAN端末であるSTA(station)と通信している時、複数のアクセスポイントが当該STAと接続可能であっても、通信衝突回避のために、STAに接続済みのアクセスポイント以外のアクセスポイントはSTAとの通信は行わなかった。D-MIMOは、複数のアンテナにより構成される複数の空間ストリームを用いて、同時刻、同チャンネルにおいて複数のアクセスポイントがSTAとの通信を可能にする技術であり、空間利用効率の向上によってスループット向上を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-50133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
STAがD-MIMO対応の複数のアクセスポイントと通信を行う際、STAは通信処理に際し、当該アクセスポイント全体により形成される空間ストリームについての情報を有することが望ましい。しかしながら、これまでの規格において、STAに送信されるフレームにおいて、複数のアクセスポイントにより形成される空間ストリーム数を設定することは定義されていなかった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、無線LAN端末が複数のアクセスポイントにより形成される空間ストリーム数についての情報を取得するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による通信装置は、前記通信装置と前記通信装置とは異なる1つ以上の他の通信装置とのうちの2つ以上の通信装置により、共通の相手装置との間に形成される合計の空間ストリーム数を前記1つ以上の他の通信装置に通知する通知手段を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無線LAN端末が複数のアクセスポイントにより形成される空間ストリーム数についての情報を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ネットワーク構成例を示す図。
図2】APの機能構成例を示す図。
図3】APのハードウェア構成例を示す図。
図4】APにより実行される処理を示すフローチャート。
図5】無線通信ネットワークにおいて実行される処理を示すシーケンスチャート。
図6】EHT SU PPDUのPHYフレーム構造の例を示す図。
図7】EHT ER PPDUのPHYフレーム構造の例を示す図。
図8】EHT MU PPDUのPHYフレーム構造の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
(ネットワーク構成)
図1に、本実施形態における無線通信ネットワークの構成例を示す。本無線通信ネットワークは、IEEE802.11 EHT(Extremely High Throughput)規格に準拠する機器(EHT機器)として、3つのアクセスポイント(AP102、AP103、AP104)と、3つのSTA(STA105、STA106、STA107)を含んで構成される。なお、EHTをExtreme High Throughputの略と解してもよい。図1に示すように、AP102、AP103、AP104が協調して形成するネットワークは円101で示される。本実施形態では、AP102が送受信する信号を、AP103とAP104は送受信することができる。尚、AP102とAP103間、および、AP102とAP104間は、有線で接続されていてもよいし、無線で接続されていてもよい。また、AP103とAP104はお互いの信号を送受信できてもできなくてもよい。本実施形態では、STA105はAP103およびAP104からのフレームを送受信できるものとする。ここでは、各STAと直接信号を送受信するAP103およびAP104を、スレーブ・アクセスポイント(S-AP)と呼ぶ。また、AP103とAP104に指示を出すことで各STAとの間でフレームを送受信することのできるAP102を、マスター・アクセスポイント(以下、M-AP)と呼ぶ。なお、M-APであるAP102は直接STA105と信号の送受信を行ってもよい。その場合、AP102はM-APかつS-APとして動作し得る。
【0012】
また、AP102~104は、IEEE802.11 EHT規格におけるMulti-AP Coordinationシステムを構成する手法のひとつである、D-MIMO(Distributed MIMO)に対応している。本実施形態では、AP103、AP104はそれぞれ、アンテナを2本、4本保持するものとする。したがって、AP103の対応できる最大の空間ストリーム数(以下、ストリーム数)は2、AP104の対応できる最大ストリーム数は4となる。また、AP102の対応できる最大ストリーム数は1、STA105の対応できる最大ストリーム数は8とする。なお、この数は説明のための例に過ぎず、別のアンテナ数(ストリーム数)が使用されてもよい。
【0013】
なお、同じ無線通信ネットワーク内のAPであれば、いずれのAPもM-APとしての役割を果たすことができる。すなわち、図1においてAP103やAP104もM-APとなり得る。また、M-APは、ビーコン送信を行わずに、各APに指示を送る等の役割を担ってもよい。
【0014】
なお、図1に示す無線通信ネットワークの構成は説明のための例に過ぎず、例えば、更に広範な領域に多数のEHT機器およびレガシー機器(IEEE802.11a/b/g/n/ax規格に従う通信装置)を含むネットワークが構成されてもよい。また、図1に示した各通信装置の配置に限定されず、様々な通信装置の位置関係に対しても、以下の議論を適用可能である。
【0015】
(APの構成)
図2は、AP103の機能構成を示すブロック図である。なお、AP104もAP103と同様の機能構成を有する。AP103は、その機能構成の一例として、無線LAN制御部201、フレーム生成部202、信号解析部203、およびUI(ユーザインタフェース)制御部204を有する。
【0016】
無線LAN制御部201は、他の無線LAN装置との間で無線信号(無線フレーム)の送受信を行うための1本以上のアンテナ205並びに回路、及びそれらを制御するプログラムを含んで構成され得る。無線LAN制御部201は、IEEE802.11シリーズの規格に従って、フレーム生成部202により生成されたフレームを元に無線LANの通信制御を実行する。
【0017】
フレーム生成部202は、無線LAN制御部201により受信された信号に対して、信号解析部203が行った解析の結果に基づいて、無線LAN制御部201で送信するべきフレームを生成する。フレーム生成部202は、信号解析部203による解析結果に基づかずに、フレームを作成してもよい。信号解析部203は、無線LAN制御部201により受信された信号に対する解析を行う。例えば、AP103が、D-MIMO動作を行う場合であって、かつ、S-APとして動作することになった場合、受信したフレームの内容を解析する。このとき、信号解析部203は、AP103がSTA105に送信するフレームに関して、AP103のほかにSTA105にフレーム送信するAPが何台存在するのか、アンテナは何本あるのか、といった情報を解析により取得し得る。UI制御部204は、AP103の不図示のユーザによる入力部304(図3)に対する操作を受け付け、当該操作に対応する制御信号を、各構成要素に伝達するための制御や、出力部305(図3)に対する出力(表示等も含む)制御を行う。
【0018】
図3に、本実施形態におけるAP103のハードウェア構成を示す。なお、AP104もAP103と同様のハードウェア構成を有する。AP103は、そのハードウェア構成の一例として、記憶部301、制御部302、機能部303、入力部304、出力部305、通信部306、および1本以上のアンテナ205を有する。
【0019】
記憶部301は、ROM、RAMの両方、または、いずれか一方により構成され、後述する各種動作を行うためのプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。なお、記憶部301として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体が用いられてもよい。
【0020】
制御部302は、例えば、CPUやMPU等のプロセッサ、ASIC(特定用途向け集積回路)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)等により構成される。ここで、CPUはCentral Processing Unitの、MPUは、Micro Processing Unitの頭字語である。制御部302は、記憶部301に記憶されたプログラムを実行することによりAP103全体を制御する。なお、制御部302は、記憶部301に記憶されたプログラムとOS(Operating System)との協働によりAP103全体を制御するようにしてもよい。
【0021】
また、制御部302は、機能部303を制御して、撮像や印刷、投影等の所定の処理を実行する。機能部303は、AP103が所定の処理を実行するためのハードウェアである。例えば、AP103がカメラである場合、機能部303は撮像部であり、撮像処理を行う。また、例えば、AP103がプリンタである場合、機能部303は印刷部であり、印刷処理を行う。また、例えば、AP103がプロジェクタである場合、機能部303は投影部であり、投影処理を行う。機能部303が処理するデータは、記憶部301に記憶されているデータであってもよいし、後述する通信部306を介してSTAもしくは他のAPと通信したデータであってもよい。
【0022】
入力部304は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部305は、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部305による出力とは、画面上への表示や、スピーカーによる音声出力、振動出力等の少なくとも1つを含む。なお、タッチパネルのように入力部304と出力部305の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。
【0023】
通信部306は、IEEE802.11シリーズの規格に準拠した無線通信の制御や、IP(Internet Protocol)通信の制御を行う。また、通信部306は1本以上のアンテナ205を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を行う。AP103は通信部306を介して、画像データや文書データ、映像データ等のコンテンツを他の通信装置と通信する。なお、本実施形態では、上述のように、AP103とAP104はそれぞれ、アンテナを2本、4本保持するものとする。
【0024】
(STAの構成)
STA105の機能構成およびハードウェア構成は、上記のAP103の機能構成(図2)およびハードウェア構成(図3)とそれぞれ同様な構成とする。すなわち、STA105は、機能構成として、無線LAN制御部201、フレーム生成部202、信号解析部203、およびUI制御部204を有し、ハードウェア構成として、記憶部301、制御部302、機能部303、入力部304、出力部305、通信部306、およびアンテナ205を有して構成され得る。
【0025】
(処理の流れ)
続いて、上述のように構成されたAP103により実行される処理の流れ、および図1に示した無線通信システムにより実行される処理のシーケンスについて図4図5を参照して説明する。図4は、AP間で情報交換した後、AP103(S-AP)がSTA105にデータ送信するまでの処理のフローチャートを示す。図4に示すフローチャートは、AP103の制御部302が記憶部301に記憶されている制御プログラムを実行し、情報の演算および加工並びに各ハードウェアの制御を実行することにより実現され得る。また、図5は、無線通信システムにおいて実行される処理のシーケンスチャートを示す。
【0026】
まず、AP103は、AP102~AP104との間で、どの通信装置がM-APの役割を担うかを決定する(S401、F501)。当該決定処理は、AP103がAP102に対してAP103に関する情報(APに関する各種パラメータを含む)を送信することにより決定され得る。本例では、AP102がM-APの役割を担うと決定されたとする。すなわち、AP103とAP104はS-APの役割を担うこととなる。また、ここまでの処理において、AP102は、AP103とAP104から取得した情報に基づき、AP103とAP104それぞれの対応できる空間ストリーム数(アンテナ数)を把握できているものとする。続いて、AP103は、AP102(M-AP)からSSID、BSSIDなどのネットワーク情報を受信すると(S402、F502)、当該受信した情報に従ってSTA105に対してBeaconを送信する(F503)。その後、AP103は、送信したBeaconに基づいて、STA105とIEEE802.11シリーズの規格に従う接続処理を行う(S403、F504)。AP103は、この接続処理の間に受信するProbe Request(プローブ要求)、Association Request(アソシエーション要求)、Auth(認証)などのフレームをそのままAP102に転送してもよい。また、AP103は、接続処理の間にAP102から受信するProbe Request、Association Request、Authなどのフレームを、そのままSTA105に対して送信してもよい。AP104もAP103と同様にSTA105と接続処理を行う。
【0027】
接続処理が完了したら、AP103はSTA105に関する情報(STAに関する各種パラメータを含む)をAP102に送信する(S404、F505)。当該STA105に関する情報には、STA105の対応できる最大ストリーム数が含まれ得る。図1の説明において記載したように、STA105の対応できる最大ストリーム数は8であるから、当該数(8を示す値)が、AP103からAP102に送信されるSTA105に関する情報に含まれ得る。AP102は、STA105に関する情報をAP103から受信すると、当該情報に基づいて、STA105向けのストリーム数を決定する(F506)。
【0028】
次に、AP103はAP102からCSI(Channel State Indication)取得を指示する信号(CSI取得指示)を受信する(S405、F507)。当該CSI取得指示はAP104も受信する(F507)。この後、AP103はAP102から受信するトリガーフレームといった同期信号(不図示)に従って、STA105にCSI取得を要求する信号(CSI取得要求)を送信する(S406、F508)。AP104も同様に、STA105にCSI取得要求を送信する(F508)。なお、AP102が送信するCSI取得指示に、当該同期信号の役割を持たせてもよい。次に、AP103は、接続中のSTA105からCSIを受信し(S407、F509)、受信したCSIをAP102に転送する(S408、F510)。AP104も同様に、STA105からCSIを受信し、AP102に転送する(F509、F510)。AP102は、AP103とAP104の各々から受信したCSIに基づいて、STA105向けにデータを送信する際の送信電力、送信タイミングなどを含む送信パラメータを決定する(F511)。当該送信電力は、S-APにおけるアンテナごとに決定され得る。また、AP102はここで、STA105向けにデータを送信する際の使用ストリーム(AP103とAP104で協調して形成される空間ストリーム)およびその数(使用ストリーム数)も決定する。なお、状況によっては、AP103またはAP104の電波がSTA105に届かないことも起こりうる。その場合、STA105と通信するときの合計ストリーム数がS501で決定した数(=8)より下回る可能性もある。本実施形態では、AP103、AP104のみがSTA105と通信可能であるものとし、AP102は、使用ストリーム数を6と決定する。これはAP103の最大ストリーム数(=2)、AP104の最大ストリーム数(=4)を合わせると6(=2+4)となり、STA105の最大ストリーム数(=8)を下回るからである。なお、AP103とAP104それぞれの最大ストリーム数の合計が、STA105の最大ストリーム数を上回る場合、AP102は、受信したCSI等に基づいて、使用ストリームと使用ストリーム数を決定してもよい。
【0029】
次に、AP102は、決定した使用ストリームに応じて、AP103とAP104の各々のアンテナが送信する際の電力を決め、AP103とAP104向けにアンテナごとの送信電力を示す情報および、決定された使用ストリーム数を示す情報を含む送信パラメータを送信し、AP103とAP104は当該送信パラメータを受信する(S409、F512)。次に、AP102はAP103とAP104に対して、STA105に送信するべきデータを送信し、AP103とAPは当該データを受信する(S410、F513)。AP103とAP104は、送信パラメータ(S409、F512)、データ(S410、F513)を受信すると、当該データと、当該送信パラメータに含まれる使用ストリーム数の情報とを含めた無線フレームを生成し、同期信号(S411、F514)を受信することに応じて送信タイミングを調整して、STA105に当該無線フレームの形式でデータを送信する(S412、F515)。当該データは、送信パラメータに含まれる送信電力を示す情報に基づいて設定された電力で送信される。なお、AP103は、送信パラメータ(S409)、データ(S410)、同期信号(S411)を同時に受信してもよいし、別のタイミングで受信してもよい。AP104も同様である。尚、本実施形態では、AP102(M-AP)がAP103とAP104各々の送信電力を決定した。ここで、AP103やAP104は、自身で送信電力を決定してもよいが、AP103とAP104でゲインが異なると、STA105における処理が複雑になり得る。
【0030】
(フレームの構造)
次に、S412、F515で送信されるIEEE802.11EHT規格で定められたPPDUのPHY(物理)フレーム構造の例を図6図8に示す。なお、PPDUは、Physical Layer (PHY) Protocol Data Unitの略である。図6は、シングルユーザ(SU)通信(APと単一のSTA間)用のPPDUである、EHT SU PPDUのPHYフレーム構造の例を示す。図7はマルチユーザ(MU)通信(APと複数のSTA間)用のPPDUであるEHT MU PPDUのPHYフレーム構造の例を示す。図8は、拡張した範囲(通信距離)(Extended Range)における通信用のPPDUであるEHT ER PPDUのPHYフレーム構造の例を示す。EHT ER PPDUは、APと単一のSTA間の通信で用いられる。
【0031】
図6図8に共通してPPDUが含む情報として、STF(Short Training Field)、LTF(Long Term Field)、SIG(Signal Field)がある。図6を例にすると、PPDU先頭部には、IEEE802.11a/b/g/n/ax規格に対して後方互換性のある、L(Legacy)-STF601、L-LTF602、L-SIG603を有する。L-STF601は、PHYフレーム信号の検出、自動利得制御(AGC:automatic gain control)やタイミング検出などに用いられる。L-STF601の直後に配置されるL-LTF602は高精度周波数・時刻同期化や伝搬チャンネル情報(CSI)取得などに用いられる。L-LTF602の直後に配置されるL-SIG603は、データ送信率やPHYフレーム長の情報を含んだ制御情報を送信するために用いられる。IEEE802.11a/b/g/n/ax規格に従うレガシー機器は、上記各種レガシーフィールド(L-STF601、L-LTF502、L-SIG603)のデータを復号化することが可能である。当該各種レガシーフィールドは、図7~8に示すPPDUにも同様に含まれる。
【0032】
図6に示すEHT SU PPDUは、上記のL-STF601、L-LTF602、L-SIG603に続いて、RL-SIG604、EHT-SIG-A605、EHT-STF606、EHT-LTF607、データフィールド608、Packet extention609を有する。RL-SIG604はなくてもよい。EHT-SIG-A605はL-SIG603の後に配置され、EHT-STF606はEHT-SIG-A605の直後に配置され、EHT-LTF607はEHT-STF606の直後に配置される。なお、L-STF601、L-LTF602、L-SIG603、RL-SIG604、EHT-SIG-A605、EHT-STF606、EHT-LTF607までのフィールドをプリアンブルと呼ぶ。EHT-SIG-A605には、PPDUの受信に必要なEHT-SIG-A1とEHT-SIG-A2のような情報が含まれる。EHT-SIG-A605に含まれるEHT-SIG-A1とEHT-SIG-A2を構成するサブフィールドとその説明をそれぞれ表1と表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
MIMO通信のストリーム数はEHT-SIG-A1のNSTS And Midamble Periodicityサブフィールドで示し、EHT-SIG-A2のDopplerフィールドの値によって取りうる値が異なる。Dopplerフィールドの値が0の場合は、移動速度が低いことを示し、ストリーム数の値は1~16まで設定することができる。Dopplerフィールドの値が1の場合は、移動速度が高いことを示し、ストリーム数n値は1~4まで制限している。なお本実施形態ではNSTS And Midamble Periodicityフィールドに4ビットを割り当てているが、EHT規格の規格を想定した拡張として、5ビット等、4ビット以上を割り当て、16より大きいストリーム数を示せるようにしてもよい。
【0036】
本実施形態では、NSTS And Midamble Periodicityサブフィールドに示すストリーム数は、D-MIMOに対応するAP(AP103、AP104)がSTA(STA105)に対して形成される全体のストリーム数(使用ストリーム数)が設定される。すなわち、AP103やAP104が単体でSTA105と通信する際に使用するストリーム数ではなく、その合計が設定される。本実施形態では、AP103のストリーム最大数2とAP104のストリーム最大数4から、STA105と通信する使用ストリーム数は6と決定される。よって、AP103が対応する最大ストリーム数2であるが、ここに入力する値は6となる。当該設定する使用ストリーム数は、M-AP(AP102)からS409、F512で指示された使用ストリーム数に基づいて設定される。
【0037】
EHT-SIG-A605に続くEHT-STF606は、EHT Short Training Fieldの略で、主な目的はMIMO送信における自動利得制御を改善することである。EHT-LTF607はEHT Long Training Fieldの略で、受信機にMIMOチャネルの推定を行う手段を提供する。なお、図6の説明に関し、使用ストリーム数はM-APから受信した値(情報)を基に設定されるとしたが、使用ストリーム数に限らずすべての値をM-APから受信した値を元に入力してよい。
【0038】
図8に示すEHT ER PPDUは、上記のように、通信距離を拡張したいときに用いるPPDUで、APと単一のSTA間の通信で用いられる。EHT ER PPDUは、L-STF801、L-LTF802、L-SIG803、RL-SIG804、EHT-SIG-A805、EHT-STF806、EHT-LTF807、データフィールド808、Packet extention809を有する。RL-SIG804はなくてもよいL-LTF802はL-STF801の直後に配置され、L-SIG803はL-LTF802の直後に配置され、EHT-SIG-A805はL-SIG803の後に配置され、EHT-STF806はEHT-SIG-A805の直後に配置され、EHT-LTF807はEHT-STF806の直後に配置される。なお、L-STF801、L-LTF802、L-SIG803、RL-SIG804、EHT-SIG-A805、EHT-STF806、EHT-LTF807までのフィールドをプリアンブルと呼ぶ。各フィールドに含まれる情報は、図6に示したEHT SU PPDUと同内容であるので説明を省略する。
【0039】
図7のEHT MU PPDUは、上述のように、MUの通信で用いるPPDUである。EHT MU PPDUは、L-STF701、L-LTF702、L-SIG703、RL-SIG704、EHT-SIG-A705、EHT-SIG-B706、EHT-STF707、EHT-LTF708、データフィールド709、Packet extention710を有する。RL-SIG704はなくてもよいL-LTF702はL-STF701の直後に配置され、L-SIG703はL-LTF702の直後に配置され、EHT-SIG-A705はL-SIG703の後に配置され、EHT-SIG-B706はEHT-SIG-A705の直後に配置され、EHT-STF707はEHT-SIG-B706の直後に配置され、EHT-LTF708はEHT-STF707の直後に配置される。なお、L-STF701、L-LTF702、L-SIG703、RL-SIG704、EHT-SIG-A705、EHT-SIG-B706、EHT-STF707、EHT-LTF708までのフィールドをプリアンブルと呼ぶ。
【0040】
EHT-SIG-A705にはPPDUの受信に必要なEHT-SIG-A1とEHT-SIG-A2のような情報を含んでいる。EHT-SIG-A705に含まれるEHT-SIG-A1とEHT-SIG-A2を構成するサブフィールドとその説明をそれぞれ表3と表4に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
EHT-SIG-B706にはPPDUの受信に必要なCommon fieldやUser Block fieldのような情報を含んでいる。EHT-SIG-B706に含まれるCommon fieldやUser Block fieldを構成するサブフィールドとその説明をそれぞれ表5と表6に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
User fieldは複数のユーザに対し、OFDMAで送信するか、MU-MIMOで送信するかによって形式が異なる。表7はOFDMAで送信する場合User fieldの説明を示し、表8はMU-MIMOで送信する場合のUser fieldの説明を示す。
【0047】
【表7】
【0048】
【表8】
【0049】
MIMO通信のストリーム数はEHT-SIG-BのUser fieldにあるNSTSサブフィールドか、もしくはSpatial configurationサブフィールドで示す。なお、本実施形態ではNSTS And Midamble Periodicityフィールドに4ビットを割り当てているが、EHT規格の規格を想定した拡張として、5ビット等、4ビット以上を割り当て、16より大きいストリーム数を示せるようにしてもよい。
【0050】
本実施形態では、NSTSサブフィールドもしくはSpatial configurationサブフィールドに示すストリーム数は、D-MIMOに対応するAP(AP103、AP104)がSTA(STA105)に対して形成される全体のストリーム数(使用ストリーム数)が設定される(MU通信用であることから、通信先はSTA105以外のSTAも含まれ得る)。すなわち、AP103やAP104が単体でSTA105と通信する際に使用するストリーム数ではなく、その合計が設定される。本実施形態では、AP103のストリーム最大数2とAP104のストリーム最大数4から、STA105と通信する使用ストリーム数は6と決定される。よって、AP103が対応する最大ストリーム数2であるが、ここに入力する値は6となる。当該設定する使用ストリーム数は、M-AP(AP102)からS409、F512で指示された使用ストリーム数に基づいて設定される。なお、他の各フィールドに含まれる情報は、図6に示したEHT SU PPDUと同内容であるので説明を省略する。
【0051】
以上のようにして本発明で示すIEEE802.11 EHT規格で用いるPPDUのフレーム構造を用いて、複数のS-APにより形成される空間ストリーム数(使用ストリーム数)をSTAに伝えることで下記の利点がある。すなわち、実際には複数のAPが存在し、STAにデータを送信していたとしても、STAから見れば単一のAPからデータを受信しているのと変わらずにPPDUを解釈することができることである。
【0052】
本実施形態では、PPDUに示す使用ストリーム数をM-APが一括管理し、その合計値をSTAに伝達したが、別の方法をとってもよい。例えば、S-APは自らが使用するストリーム数とともに他のAPが何台いるかの情報を含めてデータ送信してもよい。これによる利点は下記が考えられる。STAにデータ送信するS-APの同期精度が悪い場合、全体のAP数がわからないと、個別にデータを復元し、STAとしてデータを受信したときに、データをうまく復元できない、もしくはデータに欠損があるものと解釈してしまう可能性がある。その場合でも、STAは、STAと通信する全AP数がわかることで、全てのデータが受信できるのを待ち、解析可能になってからデータを復元する、もしくはデータフィールドを抽出することが可能となる。
【0053】
なお、図6図8は、IEEE802.11a/b/g/n/ax規格に対して後方互換性のあるフレーム構造を示したが、後方互換性を確保する必要がない場合には、L-STFおよびL-LTGのフィールドは省略されてもよい。その代わりに、EHT-STFがEHT-LTFが挿入されてもよい。
【0054】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0055】
102~104 AP(アクセスポイント)、105~107 STA(無線LAN端末)、201 無線LAN制御部、202 フレーム生成部、203 信号解析部、204 UI制御部、205 アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8