(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】電動弁、及び、これを含む冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240517BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20240517BHJP
F16K 27/10 20060101ALI20240517BHJP
F16K 27/02 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F25B41/35
F16K27/10
F16K27/02
(21)【出願番号】P 2023096971
(22)【出願日】2023-06-13
(62)【分割の表示】P 2022104537の分割
【原出願日】2019-03-05
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150968(JP,A)
【文献】特開2008-032093(JP,A)
【文献】特開2018-021671(JP,A)
【文献】実開昭55-034508(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0012039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
F25B 41/35
F16K 27/00-27/12
F23K 26/28
B23K 1/18
B23K 9/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ポートを開閉制御する弁体を含んでなる弁体ユニットと、
前記弁体ユニットに、前記弁体の端部と前記弁ポートの周縁との間を通過する流体の流量を調整するように、前記弁ポートに対して前記弁体が近接または離隔可能に制御する動作を行わせる駆動機構を作動させるロータ軸およびマグネットロータを含んでなる電磁アクチュエータと、
前記ロータ軸を回転可能に支持する雌ねじ部材と、
前記雌ねじ部材が固定される弁本体ハウジングと、
前記ロータ軸の中心軸線に対し直交する方向に前記雌ねじ部材の外周部から突出する外周縁部を有し、前記雌ねじ部材に固着され前記弁本体ハウジングの開口上面の周縁に溶接されることにより前記雌ねじ部材を固定する固定金具と、
前記電磁アクチュエータのロータ軸およびマグネットロータと、収容する収容ケースと、を備え、
前記固定金具は、前記収容ケースの中心軸線と同心上となるように外周縁部に形成され、前記収容ケースの内周面に向けて突出している当接面をそれぞれ有する前記固定金具の円周方向に沿って離間して形成されている複数のガイド部と、該複数のガイド部相互間における該ガイド部の前記当接面よりも該固定金具の中心軸方向に凹んでいる複数の凹部と、前記凹部に形成される溶接部であって、該弁本体ハウジングの前記開口上面に溶接固定される溶接部と、を有し、前記ガイド部の当接面は、前記ロータ軸の中心軸線を中心とした共通の仮想円の円周上にあるように形成され、前記溶接部のビードは、仮想円の内側の領域に形成されていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記凹部に形成される前記溶接部のビードの径方向幅は、複数の前記凹部における前記凹部の径方向凹み深さよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記ガイド部の前記当接面は、前記ロータ軸の中心軸線を中心とした共通の仮想円の円周上にあるように形成され、該仮想円の直径は、前記マグネットロータの外径よりも大であって収容ケースの内周面の内径よりも小に設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記凹部は、前記固定金具の円周方向に延びる円弧面部を含み、
前記円弧面部の外周面における曲率半径は、前記当接面の曲率半径よりも小に設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電動弁。
【請求項5】
複数の前記凹部における径方向凹み深さは、同一であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電動弁。
【請求項6】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1から5のいずれか1項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁、及び、これを含む冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ式の冷凍サイクルシステムにおいて、電動式膨張弁として使用される電動弁が、例えば、特許文献1の
図1に記載されるように、知られている。
【0003】
電動弁は、ステッピングモータと、弁本体部としての弁ハウジングと、弁機構部と、収容ケースとしての密閉ケースとを備えている。そのステッピングモータは、ロータ軸と、密閉ケース内のマグネットロータと、密閉ケースの外周部にマグネットロータに対向して配置されるステータコイルとを含んで構成されている。ロータ軸の雄ねじ部は、後述する弁機構部の支持部材の雌ねじ部に捩じ込まれている。弁ハウジングは、第1継手管内に連通し、第2継手管内に弁座リングの弁ポートを介して連通する弁室を有している。弁機構部は、支持部材と、弁ホルダと、ニードル弁とを有している。合成樹脂製の支持部材は、インサート成形された固定金具としてのステンレス製のフランジ部を介して上述の弁ハウジングの上端面に溶接により固定されている。また、弁ハウジングの上端面には、上述のフランジ部の外周部に対し所定の隙間をもって離隔した位置に、密閉ケースの下部の開口端面が溶接されている。
【0004】
ステッピングモータの作動により、ロータ軸およびマグネットロータが円滑に回動するためには、密閉ケースの内周面とマグネットロータの外周面との間に適正な隙間が形成されるとともに、弁ハウジングの上端面に溶接された密閉ケースの中心軸線が、弁ハウジングの中心軸線上にあることが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に開示されるように、弁ハウジング1011の上端面には、本願の添付図面における
図8(a)に部分的に拡大されて示されるように、上述の固定金具としてのフランジ部1033の外周部に対し所定の隙間Δgをもって離隔した位置に、密閉ケース1051の下部の開口端面が溶接されている。なお、
図8(a)においては、密閉ケース1051および弁ハウジング1011相互間のビードの図示が省略されている。このように所定の隙間Δgが設けられるのは、密閉ケース1051の下部の開口端面と弁ハウジング1011の上端面とが溶接されるとともに、フランジ部1033の外周部と弁ハウジング1011の上端面(円環状の接合部1011d)とがすみ肉溶接される場合、その後、密閉ケース1051の下端の内周面が、形成されるビード(溶接肉盛部)1033wに乗り上がることを回避するためである。仮に、上述のような隙間Δgが、密閉ケース1051の下部の内周面とフランジ部1033の外周部との間に設けられない場合、
図9(a)及び
図9(b)に部分的に拡大されて示されるように、密閉ケース1051´の下端の内周面が、ビード(溶接肉盛部)1033w´に乗り上がり、その結果として、密閉ケース1051´の軸心が弁ハウジング1011´の軸心に対しずれるとともに、密閉ケース1051´と弁ハウジング1011´との間に軸方向の隙間Δg´が形成されることとなる。従って、隙間Δg´の大きさによっては、密閉ケース1051´の下部の開口端面を弁ハウジング1011´の上端面に溶接できない虞がある。
【0007】
このような溶接作業が行われる場合、密閉ケース1051および弁ハウジング1011は、密閉ケース1051の中心軸線と弁ハウジング1011の中心軸線とが共通の中心軸線にあるように溶接機における治具等により位置調整され保持されている。
【0008】
しかしながら、組立工程中、組立精度を高精度に確保するために密閉ケース1051および弁ハウジング1011が、密閉ケース1051の中心軸線と弁ハウジング1011の中心軸線とが共通の中心軸線にあるように溶接機における治具等により位置調整され保持されることが、必要とされる場合、電動弁の組立作業工程において、組立精度の管理が煩雑となる。そこで、密閉ケース1051および弁ハウジング1011の組み立てにおいて、密閉ケース1051および弁ハウジング1011の互いの軸心を高精度に一致させ、しかも、簡単な溶接作業で組み立てることができることが要望される。
【0009】
以上の問題点を考慮し、本発明は、電動弁、及び、これを含む冷凍サイクルシステムであって、煩雑な組立精度の管理を必要とすることなく、収容ケースおよび弁本体部の互いの軸心を高精度に一致させて組み立てることができる構成を備える電動弁、及び、これを含む冷凍サイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明に係る電動弁は、流体の管路に接続される少なくとも一つの接続口に連通し、接続口に設けられた弁座の弁ポートを開閉制御する弁体を含んでなる弁体ユニットを移動可能に収容する弁室を備える弁本体ハウジングと、弁体ユニットに、弁体の端部と弁座の弁ポートの周縁との間を通過する流体の流量を調整するように、弁座の弁ポートに対して弁体が近接または離隔可能に制御する動作を行わせる駆動機構を作動させるロータ軸およびマグネットロータを含んでなる電磁アクチュエータと、弁体ユニットを案内するとともに前記ロータ軸を回転可能に支持する雌ねじ部材と、ロータ軸の中心軸線に対し直交する方向に雌ねじ部材の外周部から突出する外周縁部を有し、雌ねじ部材に固着され雌ねじ部材の下部が挿入される弁本体ハウジングの開口端部の周縁に溶接されることにより雌ねじ部材を固定する固定金具と、電磁アクチュエータのロータ軸およびマグネットロータと、雌ねじ部材と、固定金具とを収容する収容ケースと、を備え、固定金具は、収容ケースの中心軸線と同心上となるように外周縁部に形成され、収容ケースの内周面に当接する当接面をそれぞれ有する複数のガイド部と、ガイド部相互間におけるガイド部の当接面よりも固定金具の中心軸線方向内方に形成される溶接部であって、弁本体ハウジングの開口端部の上面に溶接固定される溶接部と、を有することを特徴とする。
【0011】
ガイド部の当接面は、ロータ軸の中心軸線を中心とした共通の仮想円の円周上にあるように形成され、仮想円の直径は、マグネットロータの外径よりも大であって収容ケースの内周面の内径よりも小に設定されてもよい。
【0012】
ガイド部の当接面には、少なくとも、固定金具の中心軸線の周囲を等角度でN等分した線(N=3以上の整数)と、前記仮想円とが交わる交点が位置してもよい。
【0013】
固定金具における複数のガイド部の当接面のうちの少なくとも1つの当接面は、収容ケースの内周面に沿って延びる円弧面であってもよい。溶接部は、弁本体ハウジングの開口端部の上面に、複数の点溶接、または、互いに離隔した複数の点状のすみ肉溶接、あるいは、連続したすみ肉溶接により溶接固定されてもよい。
【0014】
また、本発明に係る電動弁は、流体の管路に接続される少なくとも一つの接続口に連通し、接続口に設けられた弁座の弁ポートを開閉制御する弁体を含んでなる弁体ユニットを移動可能に収容する弁室を備える弁本体ハウジングと、弁体ユニットに、弁体の端部と弁座の弁ポートの周縁との間を通過する流体の流量を調整するように、弁座の弁ポートに対して弁体が近接または離隔可能に制御する動作を行わせる駆動機構を作動させるロータ軸およびマグネットロータを含んでなる電磁アクチュエータと、弁体ユニットを案内するとともにロータ軸を回転可能に支持する雌ねじ部材と、ロータ軸の中心軸線に対し直交する方向に雌ねじ部材の外周部から突出する外周縁部を有し、雌ねじ部材に固着され、雌ねじ部材の下部が挿入される弁本体ハウジングの開口端部の上面に溶接されることにより雌ねじ部材を固定する縁段付き固定金具と、電磁アクチュエータのロータ軸およびマグネットロータと、雌ねじ部材と、固定金具を収容する収容ケースと、を備え、縁段付き固定金具は、収容ケースの中心軸線と同心上に形成され、収容ケースの内周面に当接する当接面を有するガイド部と、収容ケースの内周面と弁本体ハウジングの開口端部の上面とにより囲まれる部分に臨むガイド部の下方位置に、ガイド部と一体に形成される溶接部であって、ガイド部の当接面よりもロータ軸の中心軸線に近い弁本体ハウジングの開口端部の上面に溶接固定される溶接部と、を有することを特徴とする。ガイド部の当接面は、ロータ軸の中心軸線を中心とした共通の仮想円の円周上にあるように形成され、仮想円の直径は、マグネットロータの外径よりも大であって収容ケースの内周面の内径よりも小に設定されてもよい。縁段付き固定金具が複数のガイド部を有する場合、各ガイド部の当接面には、少なくとも、固定金具の中心軸線の周囲を等角度でN等分した線(N=3以上の整数)と、仮想円とが交わる交点とが位置するものとされてもよい。
【0015】
さらに、本発明に係る冷凍サイクルシステムは、蒸発器と、圧縮機、および、凝縮器とを備え、上述の電動弁が、凝縮器の出口と蒸発器の入口との間に配される配管に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電動弁、及び、これを含む冷凍サイクルシステムによれば、固定金具は、収容ケースの中心軸線と同心上となるように外周縁部に形成され、収容ケースの内周面に当接する当接面をそれぞれ有する複数のガイド部と、ガイド部相互間におけるガイド部の当接面よりも固定金具の中心軸線方向内方に形成される溶接部であって、弁本体ハウジングの開口端部の周縁に溶接固定される溶接部と、を有するので煩雑な組立精度の管理を必要とすることなく、収容ケースおよび弁本体ハウジングの互いの軸心を高精度に一致させて組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る電動弁の第1の実施形態の概略の構成を示す縦断面図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1に示すIIA-IIA線に沿った断面図であって、固定金具の形状を示す図であり、
図2(b)は、
図2(a)のIIB部分を拡大して示す部分拡大図であり、
図2(c)は、
図2(a)に示す、固定金具のガイド部を説明する図である。
【
図3】
図3(a)は、固定金具の第2実施例を示す図であり、
図3(b)は、固定金具の第3実施例を示す図であり、
図3(c)は、固定金具の第4実施例を示す図である。
【
図4】本発明に係る電動弁の第2の実施形態の概略の構成を示す縦断面図である。
【
図5】
図4に示すV部分を拡大して示す拡大断面図である。
【
図6】本発明に係る電動弁の一例を使用した冷凍サイクルシステムの構成の一例を示す図である。
【
図7】本発明に係る電動弁の一例に用いられる固定金具の変形例を示す図である。
【
図8】
図8(a)は、先行技術文献における電動弁の密閉ケース、弁本体および固定金具の接合構造を部分的に拡大して示す部分断面図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示される密閉ケース、弁本体および固定金具の部分断面図である。
【
図9】
図9(a)は、先行技術文献における電動弁の密閉ケース、弁本体および固定金具の接合構造の他の一例を部分的に拡大して示す部分断面図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示すIXB部分を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明に係る電動弁の第1の実施形態の構成を、配管用パイプととともに概略的に示す。
【0019】
なお、以下の説明における上下の概念は、例えば、
図1における上下に対応しており、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0020】
第1の実施形態としての電動弁100、および、後述する第2の実施形態としての電動弁200(
図4参照)は、例えば、
図6に示されるように、膨張弁311として冷凍サイクルシステム300の配管における後述する冷房運転時における室外熱交換器312の出口(第1のポート312a)と室内熱交換器315の入口(第1のポート315a)との間に配置されている。
【0021】
膨張弁311は、冷房運転時、後述する接続用パイプ(第2の継手12)で、一次側配管Du1に接合されており、接続用パイプ(第1の継手11)で二次側配管Du2に接合されている。一次側配管Du1は、室外熱交換器312の出口(第1のポート312a)と膨張弁311とを接続し、二次側配管Du2は、室内熱交換器315の入口(第1のポート315a)と膨張弁311とを接続するものとされる。室内熱交換器315の出口(第2のポート315b)と室外熱交換器312の入口(第2のポート312b)との間には、室内熱交換器315の出口に接合される配管Du3と、流路切換弁313と、室外熱交換器312の入口に接合される配管Du6とが配されている。また、配管Du4、および、配管Du5により、圧縮機314が、流路切換弁313に接合されている。配管Du3の他端は、流路切換弁313のポート313dに接合されている。配管Du6の他端は、流路切換弁313のポート313bに接合されている。配管Du4の一端は、流路切換弁313のポート313cに接合され、配管Du4の他端は、圧縮機314の吐出口に接合されている。配管Du5の一端は、流路切換弁313のポート313aに接合され、配管Du5の他端は、圧縮機314の吸入口に接合されている。冷房運転時、ポート313aとポート313dとが連通し、ポート313bとポート313cとが連通している。これにより、冷房運転時、冷凍サイクルシステムにおける冷媒が、例えば、
図6に示される破線の矢印の示す方向に沿って循環され、室外熱交換器312が凝縮器として、室内熱交換器315が蒸発器として機能することとなる。なお、冷房運転時、膨張弁311は、第2の継手12で、一次側配管Du1に接合されており、第1の継手11で二次側配管Du2に接合されている形態について説明したが、斯かる例に限られることなく、例えば、冷房運転時、膨張弁311は、第1の継手11で、一次側配管Du1に接合され、第2の継手12で二次側配管Du2に接合されていてもよい。
【0022】
一方、暖房運転時、流路切換弁314のポート313aとポート313bとが連通し、ポート313cとポート313dとが連通するように、流路切換弁313が切り換えられる。これにより、暖房運転時、冷凍サイクルシステムにおける冷媒が、例えば、
図6に示される実線の矢印の示す方向に沿って循環され、室内熱交換器315が凝縮器として、室外熱交換器312が蒸発器として機能することとなる。なお、図示が省略される制御部により、圧縮機314および膨張弁311は、駆動制御され、流路切換弁313は、切り換え制御される。
【0023】
電動弁100は、
図1に示されるように、後述する外装部150の一部を構成する円筒状の収容ケース151内に配され後述する弁体ユニットを昇降動可能に駆動する弁駆動部と、収容ケース151の下端に結合され弁体としてのニードル121の先端部で開閉される弁ポート112aを有する弁座112を備える弁本体部110と、弁本体部110内に配され弁座112の弁ポート112aを開閉するニードル121を含んでなる弁体ユニットと、を含んで構成されている。
【0024】
弁駆動部は、後述する弁体ユニットを昇降動させるロータ軸131と、ロータ軸131の雄ねじ部131aと同心上に嵌め合わされる雌ねじが形成された雌ねじ部132bを有し、弁本体ハウジング111に固定され弁体ユニットを昇降動可能に案内する案内支持部としての雌ねじ部材132と、ロータ軸131のガイド軸部に同心上に固定され回転可能に支持され着磁されたマグネットロータ141と、収容ケース151の外周部に配されマグネットロータ141を回転させるステータコイル(不図示)と、を主な要素として含んで構成されている。マグネットロータ141およびステータコイルは、電磁アクチュエータとしてのステッピングモータの一部を構成している。
【0025】
ロータ軸131および雌ねじ部材132は、後述するロータ軸回転部130の一部を形成している。また、マグネットロータ141およびステータコイルは、後述するロータ軸駆動部140の一部を構成している。
【0026】
弁本体部110の弁本体ハウジング111は、例えば、ステンレス鋼板等の金属材料をプレス加工等により円筒状に加工して形成されている。弁本体ハウジング111は、雌ねじ部材132の下端部(張出部132B)と、後述されるロータ軸131と同心上に支持されるニードル121の他端、および、円筒状のニードルケース125とを内側に収容する弁室111Aを有している。弁室111Aには、ニードル121の他端が弁ポート112aに向けて突出している。また、弁室111Aには、ニードル121の中心軸線に対し略直交する軸線上に第1の通路としての第1の継手11の一端が接続される第1のポート111bと、ニードル121の中心軸線と共通の軸線上にある第2の通路としての第2の継手12の一端が接続される、第2のポート111cに隣接した弁ポート112aを有する弁座112とが形成されている。
【0027】
弁本体ハウジング111の上部の円形状の開口端部の周縁には、後述する収容ケース151の下端部に接合される開口端部の上面、即ち、円環形状の接合部111dが形成されている。
【0028】
なお、第1の継手11、及び、第2の継手12は、ここではいずれも銅製またはステンレス製であって、ろう付けや溶接等により弁本体ハウジング111に固定されるものであるが、これに限定されるものではない。また、本実施形態の電動弁では、第1のポート111bを流入側とし、第2のポート111cを流出側として、冷媒が流れるものとして説明するが、これには限定されず、本実施形態の電動弁100は、第1のポート111bを流出側とし、第2のポート111cを流入側としても使用できる双方向対応型の電動弁である。
【0029】
弁座112は、例えば、ステンレス鋼あるいは銅合金等の金属材料で形成され、弁本体ハウジング111の第2の継手12が接続される第2のポート111cの周囲に溶接やろう付けなどにより固定される。ニードル121がニードルケース125を伴い弁ポート112aに対し近接または離隔可能に配されることにより、弁ポート112aを通過する冷媒の流量が制御される。なお、ここでは、弁座112は、弁本体ハウジング111と別部材であるものとしたが、弁本体ハウジング111と一体に成形されるものとしてもよい。
【0030】
弁体ユニット120は、弁座112の弁ポート112aを開閉するニードル121と、ロータ軸131のフランジ部131bを、樹脂製のワッシャ124と協働してニードルケース125の開口端部125aの内周縁に係合させる円柱状の樹脂製のばね受け123と、ばね受け123のばね係合部123aとニードル121の一端のばね受け用環状平坦部との間に配され、双方を互いに離隔する方向に付勢する弁ばね122と、ばね受け123、弁ばね122、および、ニードル121の一端を収容する円筒状のニードルケース125と、を主な要素として含んで構成されている。
【0031】
ニードル121は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。ニードル121は、後述するロータ軸131等により、中心軸線CLに沿って昇降動される。これにより、弁ポート112aを通過する冷媒の流量が制御される。ニードル121における弁ポート112aに近接する側には、なだらかに中央が突出する形状が形成されている。そのような突出する形状は、上述の弁ポート112aに対するニードル121の位置制御により、実効開口面積がニードル121の位置によって増減するように形成されている。
【0032】
略円筒形状のニードルケース125の内部に配置される弁ばね122は、ニードル121と、後述するばね受け123のばね係合部123aとの間に圧縮されて配置される。なお、弁ばね122を設けることにより、後述するロータ軸131等によるねじ推力をニードル121及び弁ポート112aなどに直接与えることを防止する作用があり、その結果として、電動弁100の耐久性を高める効果がある。
【0033】
ばね受け123は、例えば、樹脂等により略円柱形状に形成されている。ばね受け123は、ニードルケース125の内部において後述するロータ軸131のフランジ部131bとニードル121との間であって、弁ばね122の内側に中心軸線CLに沿って配置される。ばね受け123のロータ軸131に接触される側の端部には、外径方向に向かって突出した円板形状のばね係合部123aが形成されている。なお、弁ばね122の内側であって中心軸線CLに沿ってばね受け123を配置することにより、弁ばね122とばね受け123との同心性を高め、弁体ユニット120の作動性を向上させる効果がある。
【0034】
ワッシャ124は、例えば、高滑性樹脂等で円環形状に形成されている。ワッシャ124は、後述するロータ軸131のフランジ部131bと、後述するニードルケース125の開口端部125aとの間に配置される。なお、ワッシャ124を設けることにより、ロータ軸131の回転を直接ニードル121に伝達することを抑制することができる。これにより、ニードル121の回転が抑制され、ニードル121および弁座112の弁ポート112a相互間における磨耗を防止する作用を有することとなる。
【0035】
ニードルケース125は、例えば、ステンレス鋼などの金属材料で、プレス加工等により略円筒形状に形成される。ニードルケース125のロータ軸131側の端部には、開口端部125aが形成されている。ニードルケース125は、後述するロータ軸131等のねじ駆動力をニードル121に伝達する作用を有している。ニードルケース125の開口端部125aは、互いに対向するロータ軸131のフランジ部131bと係合するように配置されている。また、ニードルケース125の開口端部125aと反対側の端部には、ニードル121が溶接等により固定されている。
【0036】
ロータ軸駆動部140は、マグネットロータ141と、ロータ固定部材142と、回転ストッパばね143と、可動ストッパ部材144とを備えている。
【0037】
マグネットロータ141は、後述する収容ケース151の内部のロータ室141Aに収容され、フェライト焼結体等により形成されたN極S極交互に配置された多極の永久磁石により構成されている。本実施形態では、マグネットロータ141は、後述する収容ケース151の外周に配置され、図示が省略されるヨーク、ボビン、およびコイルなどからなるステータコイルと共にステッピングモータを構成している。なお、ここではステッピングモータとしたが、これには限定されず、マグネットロータ141を回転駆動できるその他の電動機を使用しても同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
マグネットロータ141は、ロータ固定部材142を介してロータ軸131に支持されている。ロータ軸131が挿入される孔を有するロータ固定部材142は、ロータ軸131の中心軸線の回りに設けられている。ロータ固定部材142は、マグネットロータ141の取付孔に圧入されている。
【0039】
回転ストッパばね143は、コイルばね形状を有し、後述するロータ支持部材152の円筒部分152bの周囲に巻装されている。回転ストッパばね143の上端部及び下端部が、それぞれ、円筒部分152bに係止される。
【0040】
可動ストッパ部材144は、1巻き程度のコイルばね形状を有し、ロータ支持部材152の円筒部分152bの周囲に回転可能に配置される。可動ストッパ部材144の一方の端部は、多極を有するマグネットロータ141の所定の一極に一体として形成された係合突起部141bに係合され、もう一方の端部は回転ストッパばね143に螺合される。可動ストッパ部材144は、マグネットロータ141の回転に合わせて、円筒部分152bの周囲を回転しながら、上下に移動する。このような構成とすることにより、回転ストッパばね143は、電動弁100の中心軸線CLに対して、がたつきなく配置される。
【0041】
外装部150は、収容ケース151と、ロータ支持部材152と、筒状部材153とを備えている。
【0042】
収容ケース151は、例えば、ステンレス鋼板などの非磁性体の金属材料で、プレス加工等によりカップ形状に加工して形成されている。収容ケース151は、上述の弁本体ハウジング111の外径と略同一の外径を有している。収容ケース151の円形状の下端部は、例えば、TIG溶接、プラズマ溶接あるいはレーザ溶接、抵抗溶接等によって、弁本体ハウジング111の円形状の上端部と突合わせ溶接を全周にすることにより固定される。これにより、収容ケース151の内部が密閉された状態となる。また、収容ケース151には、後述するロータ支持部材152のカップ形状部分152aに形成された係合凹部152cに係合するための、ディンプル151aが形成されている。
【0043】
ロータ支持部材152は、例えば、ステンレス鋼板などの材料で、プレス加工等により形成されている。ロータ支持部材152は、収容ケース151に接触して固定されるカップ形状部分152aと、カップ形状部分152aの中央から下側に延びる円筒部分152bとから構成される。カップ形状部分152aには、係合凹部152cが形成されている。この係合凹部152cと収容ケース151のディンプル151aとの係合により、ロータ支持部材152は、収容ケース151の所定の取付位置に固定される。
【0044】
筒状部材153は、金属あるいは合成樹脂であって、潤滑性の高い素材により形成されている。筒状部材153は、ロータ支持部材152の円筒部分152bの内部に配置され、ロータ軸131の上端部(ガイド軸部)を回転可能に保持している。
【0045】
ロータ軸回転部130は、ロータ軸131と、雌ねじ部材132と、固定金具133とを備えている。
【0046】
ロータ軸131は、例えば、金属材料で形成され、概ね円柱状に形成され、電動弁100の中心軸線CLに沿って上下方向に延在している。後述するステッピングモータ等の電動機により回転されるマグネットロータ141は、ロータ軸131の軸心を中心として、後述するロータ固定部材142を介して固定されている。これにより、ロータ軸131は、マグネットロータ141を伴って中心軸線CLの周りを回転する。
【0047】
ロータ軸131のロータ固定部材142よりもニードル121側の部分には、雄ねじ部131aが形成されている。雄ねじ部131aは、後述する雌ねじ部材132の雌ねじ部132bに捩じ込まれる。さらに、ロータ軸131における雄ねじ部131aよりもニードル121側の端部には、外径方向に円板形状に突出したフランジ部131bが形成されている。フランジ部131bは、ニードルケース125の開口端部125aの内周面に対し離隔した位置に配置されている。フランジ部131bは、その直径が開口端部125aの孔の直径よりも大きくなっており、抜け止めとなっている。
【0048】
雌ねじ部材132は、例えば、樹脂で概ね円筒形状に形成されている。雌ねじ部材132の上部には、ロータ軸131の雄ねじ部131aに嵌め合わされる雌ねじ部132bが形成されている。雌ねじ部132bは、電動弁100の中心軸線CLと同心上に形成されている。雌ねじ部材132は、このロータ軸131とのねじ結合により、マグネットロータ141の回転運動をロータ軸131の中心軸線CL方向の直線運動に変換するねじ送り機構の一部を構成している。
【0049】
雌ねじ部材132における雌ねじ部132bよりも下方の部分には、ニードル121を伴ってニードルケース125を摺動可能に収容するガイド室132Aが形成されている。ガイド室132Aを形成する雌ねじ部材132の内周面は、円筒形のニードルケース125の外周面を移動可能に案内する案内面とされる。また、ガイド室132Aを形成する内周面の一部には、外部に貫通する均圧孔132cが設けられている。これにより、ガイド室132Aとロータ室141Aとが連通することとなり、ロータ軸131及びニードルケース125の移動が容易となる。また、雌ねじ部材132における均圧孔132cが形成される部分よりも下方となる端部には、上述の弁本体ハウジング111の開口端部に挿入される張出部132Bが形成されている。張出部132Bには、インサート成形により、固定金具133が固定されている。その際、固定金具133は、雌ねじ部材132の中心軸線と同心上に固定されている。
【0050】
固定金具133は、例えば、
図2(a)に示されるように、金属製の円板形状の部材である。後述する固定金具133の外周部の凹部133bの円弧面または斜面部は、弁本体ハウジング111の円環形状の接合部111dに溶接等により固定される。これにより、雌ねじ部材132は、固定金具133を介して弁本体ハウジング111に固着されることとなる。その際、雌ねじ部材132は、弁本体ハウジング111の中心軸線と同心上に固着される。
【0051】
以上説明した本発明の第1の実施形態の電動弁100には、従来の問題点を解消するために上述の簡単な形状の固定金具133を使用することにより、収容ケース151および雌ねじ部材132における同軸性を自動的に維持できる構造が設けられている。以下、
図2(a)及び
図2(b)を参照して、その構造について説明する。
【0052】
図2(a)は、
図1に示すIIA-IIA線に沿った断面図であって、固定金具133の形状を示す図であり、
図2(b)は、
図2(a)のIIB部分を拡大して示す部分拡大図であり、
図2(c)は、
図2(a)に示す、固定金具133のガイド部133c(以下、凸部133aともいう)を説明する図である。
【0053】
図2(a)、及び、
図2(b)に示すように、第1の実施例としての固定金具133は、例えば、金属製の概略円板形状の部材であって、円板形状の外周に沿って、4つの凸部133aが設けられている。各凸部133aは、収容ケース151の内周面に当接するように半径方向に突出している当接面を有している。4つの凸部133aの形状は、先端部がカップ形状の収容ケース151の内周面151bに当接するように、概ね円弧形状に形成されている。なお、当接面は、すべてが面接触だけに限られることなく、例えば、当接面における一部分が、線接触、または、点接触されるように構成されてもよい。
【0054】
4つの凸部133aは、固定金具133の円周方向に沿って均等な角度(90°)の間隔で形成されている。また、各凸部133aは、円周方向に沿った同一の幅Wを有して形成されている。連なる凸部133aと凸部133aとの間には、4つの凹部133bが、形成されている。凹部133bは、固定金具133の円周方向に延びる円弧面部と、円弧面部の両端に連なりガイド部133cの当接面に到達する斜面部とから形成されている。凹部133bの円弧部を形成する外周面の曲率半径は、凸部133aを形成する当接面の曲率半径よりも小に設定されている。
【0055】
なお、ここでは、凹部133bは、複数の凸部133a相互間における外周上の凸部133a以外の部分に設けられるものとする。
【0056】
その際、凹部133bは、固定金具133の円周方向に延びる円弧面部と、円弧面部の両端に連なりガイド部133cの当接面に到達する斜面部とから形成されている。凹部133bにおいて、例えば、円弧面部がすべてすみ肉溶接され、斜面部が溶接されない場合、その溶接された円弧面部が溶接部133dを形成することとなる。また、例えば、円弧面部が複数の点溶接により所定の間隔で溶接され、斜面部が溶接されない場合、各点溶接された部分が溶接部133dを形成することなる。さらに、上述の2箇所の斜面部だけが点溶接またはすみ肉溶接され、円弧面部が溶接されない場合、点溶接またはすみ肉溶接された部分が溶接部133dを形成することとなる。溶接されてない円弧面部あるいは斜面部、換言すれば、溶接しなくてもよい円弧面部あるいは斜面部は、
図2(b)に示されるように、溶接範囲となる場合がある。
【0057】
斯かる例においては、4つの凸部133aの当接面全部が、収容ケース151の内周面151bに当接するものとしたが、必ずしも、このようになされる必要がなく、例えば、4つの凸部133a(ガイド部133c)の当接面全部が、収容ケース151の内周面151bに当接されなくてもよい。
【0058】
図2(a)及び
図2(c)を参照して、更に詳しくガイド部133c(凸部133a)を説明する。各ガイド部133cの当接面は、ロータ軸131の中心軸線CLを中心とした共通の仮想円CIの円周上にあるように形成されている。仮想円CIの半径は、例えば、ロータ軸131と同心上にある固定金具133の中心軸線CLから最も遠い部分までの長さに設定されている。これにより、組み立ての際、固定金具133は、収容ケース151の内周面151bに嵌めこまれる。ガイド部133cは、収容ケース151の内周面151bと、回転運動するマグネットロータ141との干渉を防止できる程度に、収容ケース151と、雌ねじ部材132との間の同軸性(同軸度、同心度)を維持できればよい。このため、上述のガイド部133cの当接面の仮想円CIの直径は、マグネットロータ141の外径よりも大であって収容ケース151の内周面151bの内径よりも小に設定されている(マグネットロータ141の外径<仮想円CIの直径<収容ケース151の内径)。また、
図2(c)に示すように、収容ケース151の内周面151bに当接するガイド部133cの当接面には、固定金具133の中心軸線CLの周囲を等角度で4等分した線と、仮想円CIとが交わる交点が位置することが望ましい。なお、ここでは4等分としたが、これには限定されず、N等分(Nは3以上の整数)とすれば、上述の同軸性は維持できる。
【0059】
4つの凹部133bの円弧面または斜面部と、弁本体ハウジング111の接合部111dとが溶接固定される場合、上述のガイド部133c以外の部分にある後述する溶接部133dで溶接固定されればよい。上述したように、凹部133bは、固定金具133の円周方向に延びる円弧面部と、円弧面部の両端に連なりガイド部133cの当接面に到達する斜面部とから形成されている。例えば、
図2(b)に示すように、凹部133bを形成する中心軸線CLに最も近い部分である、
図2(a)において円弧面部だけではなく、斜面部を含む範囲において、その溶接された円弧面部または斜面部が溶接部133dである。これにより、溶接部133dに形成されるビードは、仮想円CIの外側にはなく、仮想円CIの内側となる領域に形成されるのでビードが収容ケース151の内周面151bに干渉する虞がない。
【0060】
なお、
図2(a)において破線で示される弁本体ハウジング111の円環形状の接合部111dの内径より、溶接部133dを内側に設けることはできない。固定金具133と弁本体ハウジング111とが接触できず、溶接固定が不能となるからである。
【0061】
斯かる構成において、上述の電動弁100の組み立てを行うにあたり、先ず、互いに組み付けられたロータ軸131、および、ニードル121が固定されたニードルケース125等が雌ねじ部材132に取り付けられた後、次に、雌ねじ部材132の張出部132Bが弁本体ハウジング111の開口端部に挿入され、固定金具133が、弁座112等が予め取り付けられた弁本体ハウジング111の開口端部の周縁に載置される。続いて、固定金具133の凹部133bの例えば、円弧面部と弁本体ハウジング111の開口端部の周縁とが第1の溶接機(不図示)によるすみ肉溶接により固定される。これにより、溶接された円弧面部である溶接部133dと弁本体ハウジング111の接合部111dとに第1のビードが形成される。
【0062】
なお、雌ねじ部材132の張出部132Bおよび弁本体ハウジング111の開口端部相互間の半径方向の隙間は、例えば、すきまばめ、または、しまりばめとなるように設定されてもよい。
【0063】
続いて、マグネットロータ141がロータ軸131に取り付けられた後、上述の弁本体ハウジング111が第1の溶接機から取り外され、その組み立てられた弁本体ハウジング111が第2の溶接機の支持台(不図示)に移送された後、ロータ支持部材152等が取り付けられた収容ケース151の内周面151bが、上述の固定金具133の溶接部133dが固定された弁本体ハウジング111の開口端部の周縁における固定金具133のガイド部133cの当接面に当接するように、収容ケース151の下端部が弁本体ハウジング111の開口端部の周縁に隙間なく載置される。これにより、収容ケース151の軸心とロータ軸131および雌ねじ部材132の軸心とが自動的に一致した状態となる。
【0064】
そして、第2の溶接機の支持台において、互いに外径が略同一とされる収容ケース151および弁本体ハウジング111が全体として把持されることにより、収容ケース151および弁本体ハウジング111の軸心が互いに一致した状態で、収容ケース151の下端面と弁本体ハウジング111の接合部111dとについて溶接作業が行われることとなる。これにより、収容ケース151の下端面と弁本体ハウジング111の接合部111dとに第2のビードが、上述の第1のビードに隣接して形成される。
【0065】
このように、固定金具133の例えば円板形状の外周に複数のガイド部133c(凸部133a)と、複数の凹部133bとを設けることにより、収容ケース151の内周面151bにガイド部133cの当接面が当接し、収容ケース151の内周面151bに当接しない凹部133bに形成された溶接部133dで固定金具133と弁本体ハウジング111とを溶接固定することができ、溶接部133dで形成された溶接ビードが収容ケース151の内周面151bに干渉することがないため、弁本体ハウジング111と、収容ケース151が互いに隙間なく接触し、同軸性を維持して固定することができる。
【0066】
なお、上述の例において、全てのガイド部133cの当接面が収容ケース151の内面に当接する必要がなく、全てのガイド部133cの当接面が収容ケース151の内面に当接しない状態で収容ケース151の端部と弁本体ハウジング111の端部とを密着させ、固定金具133と収容ケース151との同軸度を維持してもよい。なぜならば、ガイド部133cの当接面は、収容ケース151と弁本体ハウジング111の軸心のずれ量が、マグネットロータ141の回転時、マグネットロータ141が収容ケース151の内周面151bに当たらない範囲から当たる範囲に入るのを機械的にストッパとして働いて、収容ケース151のずれを防ぐものだからである。
【0067】
なお、固定金具133に形成された凸部133a(ガイド部133c)は、ここでは4箇所設けられるものとしたが、収容ケース151と同軸性を保てればよいので、上記の条件を満たして、2箇所以上の複数個所に設けられていればよい。以下、
図3(a)乃至
図3(c)を参照して、固定金具の第2実施例乃至第4実施例(変形例)を説明する。
【0068】
図3(a)は、固定金具の形状の他の一例を示す図であり、
図3(b)は、固定金具の形状のさらなる他の一例を示す図であり、
図3(c)は、固定金具の形状のさらなる他の一例を示す図である。
【0069】
図3(a)に示すように、第2実施例としての固定金具133Aには、3箇所の凸部133Aa(以下、ガイド部133Acともいう)と、円周上の凸部133Aaと凸部133Aaとの間には、3箇所の凹部133Abが形成されている。3箇所の凸部133Aaは、それぞれ、均等な角度間隔、例えば、120°間隔で離隔して形成されている。円周方向に沿った各凸部133Aaの幅Wは、互いに同一に設定されている。また、凹部133Abは、それぞれ、均等な角度間隔、例えば、120°間隔で離隔して形成されている。円周方向に沿った凹部133Abを形成する円弧面部の長さは、互いに同一に設定されている。また、
図3(a)に示すように、収容ケース151の内周面と当接するガイド部133Acの当接面は、固定金具133Aの中心軸線CLの周囲を等角度で3等分した線と、仮想円(
図2(c)に示される仮想円に類似した上述の各当接面が存在する共通の円)とが交わる交点が位置している。これにより、上述の同軸性を維持するための条件を満たしている。
【0070】
その際、凹部133Abは、固定金具133の円周方向に延びる円弧面部と、円弧面部の両端に連なりガイド部133Aaの当接面に到達する斜面部とから形成されている。凹部133Abにおいて、例えば、円弧面部が全てすみ肉溶接され、斜面部が溶接されない場合、その溶接された円弧面部が溶接部133Adを形成することとなる。
【0071】
また、
図3(b)に示すように、第3実施例としての固定金具133Bには、幅Wの狭い凸部133Ba1(以下、ガイド部133Bcともいう)と、円周方向に沿った約120°の中心角を有する円弧面部からなる凸部133Ba2とが互い対向する位置に設けられている。2箇所の凸部133Ba1と凸部133Ba2との間には、円周方向に沿って形成される円弧面部を含んでなる凹部133Bbが2箇所に形成されている。2箇所の凸部133Ba1の当接面、および、凸部133Ba2の当接面の円周方向の長さ(表面積)は、互いに異なり均等ではない。また、
図3(b)に示すように、収容ケース151の内周面151bと当接するガイド部133Bcの当接面は、固定金具133Bの中心軸線CLの周囲を等角度で3等分した線と、仮想円(
図2(c)に示される仮想円に類似した上述の各当接面が存在する共通の円)とが交わる交点が位置している。これにより、上述の同軸性を維持するための条件を満たしている。
【0072】
その際、凹部133Bbは、固定金具133の円周方向に延びる円弧面部と、円弧面部の両端に連なりガイド部133Bcの当接面に到達する斜面部とから形成されている。凹部133Bbにおいて、例えば、円弧面部がすべてすみ肉溶接され、斜面部が溶接されない場合、その溶接された円弧面部が溶接部133Bdを形成することとなる。
【0073】
さらに、
図3(c)に示すように、第4実施例としての固定金具133Cにおける対向して形成される2箇所の凸部133Ca(以下、ガイド部133Ccともいう)以外の残部には、2箇所の凹部133Cbが対向して形成されている。2箇所の凸部133Caの当接面は、互いに同一の中心角を有する円弧面により形成されている。2箇所の凹部133Cbを形成する外周面は、互いに同一の形状を有する曲面から形成されている。また、
図3(c)に示すように、収容ケース151の内周面151bと当接するガイド部133Ccの当接面は、固定金具133Cの中心軸線CLの周囲を等角度で4等分した線と、仮想円とが交わる交点が位置している。これにより、同軸性を維持するための条件を満たしている。
【0074】
その際、凹部133Cbは、固定金具133の円周方向に延びる曲面部と、曲面部の両端に連なりガイド部133Caの当接面に到達する斜面部とから形成されている。凹部133Cbにおいて、例えば、曲面部が全てすみ肉溶接され、斜面部が溶接されない場合、その溶接された曲面部が溶接部133Cdを形成することとなる。
【0075】
このような固定金具133の第2実施例乃至第4実施例(変形例)となる固定金具133A、133B、133Cを使用することによっても、
図2(a)に示した固定金具133を使用した場合と同様に、弁本体ハウジング111と、収容ケース151が互いに隙間なく接触し、同軸性が維持されることとなる。
【0076】
以上のように、本発明の第1の実施形態の電動弁100によれば、固定金具133の外周に沿って、複数のガイド部133cと複数の溶接部133dとを設けることにより、溶接部で発生する可能性のある溶接ビードと収容ケース151の干渉を防止し、弁本体ハウジング111と、収容ケース151が互いに隙間なく接触し、同軸性を維持して固定することができ、製造管理の軽減を可能とすることができる。
【0077】
このように構成された電動弁100の動作について説明する。
【0078】
電動弁100を駆動する場合には、まずステータに駆動パルス信号を与えることから開始する。これにより、パルス数に応じてマグネットロータ141が回転し、これに伴いロータ軸131が回転し、ロータ軸131の雄ねじ部131aと、雌ねじ部材132の雌ねじ部132bとのねじ結合により、ロータ軸131が回転しつつ中心軸線CLに沿って移動する。
【0079】
電動弁100を弁閉状態にする場合には、ロータ軸131を下側に移動させる必要がある。ニードル121が弁座112に当接した後、さらにロータ軸131が下側に移動すると、ばね受け123を介して、弁ばね122が縮み、ニードル121が、弁ばね122の反力による荷重で弁座112に押圧され、電動弁100は、確実な弁閉状態に制御される。
【0080】
このとき、ニードル121は、ばね受け123、弁ばね122を介して、弁座112に押圧されるため着座面の摩擦抵抗が、ロータ軸131と高滑性のばね受け123間の摩擦抵抗より大きくなり、回転するロータ軸131はばね受け123との間で滑り摺動するため、ニードルケース125及びニードル121への回転の伝達は抑制される。これにより、ニードル121と弁ポート112aとの磨耗が抑制される。また、ロータ軸131が押し込まれるため、ロータ軸131のフランジ部131bと共にワッシャ124が下降するので、ワッシャ124の上面がニードルケース125の開口端部125aの下端面と非接触となり、ニードルケース125の回転も停止する。
【0081】
続いて、電動弁100を弁閉状態から、弁開状態に戻す場合には、ロータ軸131を逆回転させて上側に移動させる必要がある。ロータ軸131の上昇に伴い弁ばね122はばね受け123を介して伸長する。このとき、ニードル121が弁座112に当接状態を保持している。更にロータ軸131が上側に移動すると、ロータ軸131のフランジ部131bがワッシャ124を介して、ニードルケース125の開口端部125aの内面に接触し、回転しながらニードルケース125を吊り上げる。ニードルケース125が吊り上げられると、これに固定されたニードル121も上側に移動し、ニードル121と弁座112の弁ポート112aが非接触となり、電動弁100は、弁開状態に制御される。
【0082】
このとき、ニードルケース125及びニードル121は、高滑性のワッシャ124を介して、ロータ軸131に駆動されるため、ロータ軸131の回転がニードルケース125及びニードル121に伝達されることが抑制される。これにより、ニードル121と弁ポート112aとの磨耗が抑制される。
【0083】
次に、本発明に係る電動弁の第2の実施形態について説明する。
【0084】
図4は、本発明に係る電動弁の第2の実施形態の構成を、配管用パイプととともに概略的に示す。
図5は、
図4に示すV部分を拡大して示す拡大断面図である。
【0085】
図4及び
図5に示すように、電動弁200の構成は、雌ねじ部材233にインサート成形された縁段付き固定金具233を備える点で固定金具133を有する電動弁100の構成と異なる。より詳細には、金属製の概略円板形状の縁段付き固定金具233の外周部は、収容ケース151の内周面151bに当接する当接面を有し、外方に向けて突出する凸部233a(以下、ガイド部233cともいう)と、収容ケース151の内周面151bと弁本体ハウジング111の上端面とにより囲まれる部分に、隙間を形成する凹部233bとから構成される段差部を有している。凹部233bを形成する弁本体ハウジング111の上端面の一部(接合部111d)および、弁本体ハウジング111の上端面に支持される縁段付き固定金具233の下端部の一部は、
図5に示されるように、溶接部233dを形成することとなる。
【0086】
なお、電動弁200におけるそれ以外の構成は、上述の電動弁100の構成と同一であるのでその同一の構成要素について、同一の参照符号を付し、その重複説明を省略する。
【0087】
図4及び
図5に示すように、上述の縁段付き固定金具233の段差部は、電動弁200の中心軸線CLに沿った厚さ方向に形成されている。中心軸線CLに近い部分である凹部233bは、固定金具233の下端面が弁本体ハウジング111の接合部111dとすみ肉溶接されるため、固定金具233の下側である弁本体ハウジング111側に形成される。また、凹部233bよりも中心軸線CLから遠い部分であるガイド部233cの当接面は、収容ケース151の内周面151bと当接するので固定金具233の上側である収容ケース151側に形成される。
【0088】
なお、ここでは、必ずしも凸部233aの全当接面が収容ケース151の内周面151bに当接する必要はない。
【0089】
なお、ガイド部233cの条件としては、第1の実施形態と同様に、ガイド部233cの当接面が、収容ケース151の内周面151bに当接するように、縁段付き固定金具233が収容ケース151の内周面151bに嵌めこまれる。ガイド部233cは、収容ケース151の内周面と回転運動するマグネットロータ141との干渉を防止できる程度に、収容ケース151と、弁本体ハウジング111の同軸性(同軸度、同心度)を維持できればよい。このため、上述のガイド部233cの当接面の直径は、マグネットロータ141の外径よりも大であって収容ケース151の内周面151bの内径よりも小に設定されている(マグネットロータ141の外径<当接面の直径<収容ケース151の内径)。
【0090】
また、ここでは、上述のガイド部233c以外の部分である凹部233bの一部を形成する下端部と、弁本体ハウジング111の接合部111dとが溶接固定される。これにより、溶接部233dが、縁段付き固定金具233における凹部233bを形成する下端部と弁本体ハウジング111の接合部111dとにより形成される。
【0091】
なお、凹部233bの全てを溶接部233dとする必要はなく、凹部233bの一部が溶接されるものとしてもよいし、複数の点溶接、複数の点状のすみ肉溶接で溶接固定されるものとしてもよい。
【0092】
なお、溶接部233dは、弁本体ハウジング111の円環形状の接合部111dの内径より内側に設けることはできない。固定金具233と弁本体ハウジング111が接触できず、溶接固定が不能となるからである。更に溶接部233dは、弁本体ハウジング111との溶接で生じる溶接ビード233wが収容ケース151に干渉しない位置に形成される必要がある。
【0093】
また、凸部233aは、全周に連続して設けられるものとしてもよく、あるいは、全周に連続ではなく、途中で凸部233aが複数に途切れていてももちろん構わない。そのような場合、ガイド部233cの当接面には、少なくとも、固定金具の中心軸線の周囲を等角度でN等分した線(N=3以上の整数)と、
図2(c)に示される仮想円と類似した仮想円とが交わる交点が位置するものとされる。
【0094】
但し、凸部233aが全周に設けられている場合には、凸部233aが円形となるため、製造するのが容易となるため、製造工数を低減することができる。
【0095】
さらに、本実施形態を以下のような形態としてとられることもでき、このような形態も本発明の適用範囲である。縁段付き固定金具には、例えば収容ケース151側にガイド部となる円板が形成され、この円板より直径が小さい小円板が、弁本体ハウジング111側に大きな円板と同軸に一体となって形成され、小円板には溶接部が形成される。
【0096】
以上のように、本発明の第2の実施形態の電動弁200によっても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏するのと共に、製造工数を低減できるという効果も有する。
【0097】
なお、本発明では、溶接される弁本体ハウジング111および固定金具133は、金属材料であるものとして説明してきたが、これには限定されず、例えば溶接が可能な熱可塑性樹脂等を使用するものとしてもよい。また、固定金具133および233は、円板形状であるものとして説明してきたが、これには限定されず
図7に示すように、固定金具333として6角形などの多角形のような他の形状を有する板材を使用することもできる。
【0098】
以上説明したように、本発明によれば、上述の従来の問題点を解消するために、部品の簡単な構造で弁本体ハウジングと収容ケースを固定する際の同軸性を維持することができ、製造管理の軽減を可能とする電動弁、及び、これを含む冷凍サイクルシステムを提供できる。
【符号の説明】
【0099】
CL 中心軸線
11 第1の継手
12 第2の継手
100、200 電動弁
110 弁本体部
111 弁本体ハウジング
111A 弁室
111b 第1のポート
111c 第2のポート
111d 接合部
112 弁座
112a 弁ポート
120 ニードル部
121 ニードル
122 弁ばね
123 ばね受け
123a ばね係合部
124 ワッシャ
125 ニードルケース
125a 開口端部
130、230 ロータ軸回転部
131 ロータ軸
131a 雄ねじ部
131b フランジ部
132、232 雌ねじ部材
132A、232A ガイド室
132b、232b 雌ねじ部
132c、232c 均圧孔
133、133A、133B、133C、233 固定金具
133a、133Aa、133Ba1、133Ba1、133Ca、233a 凸部
133b、133Ab、133Bb、133Cb、233b 凹部
133c、133Ac、133Bc、133Cc、233c ガイド部
133d、133Ad、133Bd、133Cd、233d 溶接部
140 ロータ軸駆動部
141 マグネットロータ
141A ロータ室
141b 係合突起部
142 ロータ固定部材
143 回転ストッパばね
144 可動ストッパ部材
150 外装部
151 収容ケース
151a ディンプル
152 ロータ支持部材
152a 傘状部分
152b 円筒部分
152c 係合凹部
153 筒状部材
300 冷凍サイクルシステム
310 室外ユニット
311 膨張弁
312 室外熱交換器
313 流路切換弁
314 圧縮機
315 室内熱交換器
320 室内ユニット