(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】部品装着システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
(21)【出願番号】P 2023128525
(22)【出願日】2023-08-07
(62)【分割の表示】P 2019210463の分割
【原出願日】2019-11-21
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 みきね
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-030641(JP,A)
【文献】特開2018-092499(JP,A)
【文献】特開2008-060249(JP,A)
【文献】特開平09-102700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を装着する装着作業を行う部品装着機と、
オペレータが携帯情報装置に入力した作業開始指令を取得する指令取得部と、
前記作業開始指令にしたがって前記装着作業を開始する作業開始部と、
前記部品装着機の機内および機外周辺部の少なくとも一方に配置され、前記機内および前記機外周辺部の少なくとも一方の安全状況を撮像して状況画像を取得するカメラと、
前記カメラが取得した前記状況画像を前記携帯情報装置に伝送する画像伝送部と、
を備える部品装着システム。
【請求項2】
前記安全状況は、前記部品装着機内の異物の有無の状況、保護カバーの開閉状況、使用しない器具や台車の残存状況、および部外者の立ち入り状況の少なくとも一つを含む、請求項1に記載の部品装着システム。
【請求項3】
基板に部品を装着する装着作業を行う部品装着機と、
オペレータが携帯情報装置に入力した作業開始指令を取得する指令取得部と、
前記作業開始指令にしたがって前記装着作業を開始する作業開始部と、
前記部品装着機の機内および機外周辺部の少なくとも一方に配置され、前記装着作業の開始状況を撮像して状況画像を取得するカメラと、
前記カメラが取得した前記状況画像を前記携帯情報装置に伝送する画像伝送部と、
を備える部品装着システム。
【請求項4】
前記開始状況は、基板の搬送状況、装着ヘッド装置の動作状況、ロータリツールの動作状況、吸着ノズルの動作状況、マークカメラの撮像時の照明状況、部品カメラの撮像時の照明状況、供給リールの回転状況、およびキャリアテープの送り出し状況の少なくとも一つを含む、請求項3に記載の部品装着システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品装着機を含んで構成される部品装着システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンが形成された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。さらに、対基板作業を実施する複数の対基板作業機を並べて配置し、制御用のホストコンピュータと組み合わせて生産ラインを構成することが一般的になっている。対基板作業機の代表例である部品装着機は、部品の装着を行う装着ヘッド装置や、部品を供給する部品供給装置などの周辺装置を交換可能に備える。生産する基板製品の種類を変更するときの段取り替えで周辺装置が交換された場合に、準備動作が必要となる。また、周辺装置が交換されなくても、準備動作が行われる場合がある。この種の部品装着機の準備動作に関する技術例が特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1の部品装着用装置では、まず入力部からの操作入力によって運転モードを自動に切り替えることにより、自動運転準備動作が開始される。自動運転準備動作の具体的な項目として、生産データの設定動作、基板の確認動作、コンベア幅の調整動作、および吸着ノズルの確認動作が示されている。そして、自動運転準備動作が正常に終了したときに、部品装着機が起動されて自動運転による生産が開始される。この自動運転準備動作では、作業モジュール(部品装着機)のモジュール別ステータスが自動運転開始条件と対照されて、不要な準備動作が除外される。これによれば、準備動作に要する時間を短縮して、生産性を向上できる、とされている。
【0004】
また、特許文献2の対基板作業機では、作業ヘッド(装着ヘッド装置)にそれ自身の固有値を記録する記録媒体を備えさせるとともに、その固有情報を読み出し、読み出した固有情報に基づいて作業ヘッドに関連する情報を認識し、認識した情報に基づいて作業ヘッドを使用するための準備処理を行う。これによれば、対基板作業機の利便性を向上でき、特に作業ヘッドの準備処理を自動で行うことができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-164909号公報
【文献】特開2004-221518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1および2の技術例では、部品装着機が装着作業を開始する以前の準備動作が自動化されている。さらに、特許文献1の技術例では、準備動作が終了した後に自動で装着作業が開始される。ここで、安全状況の確認や準備状況の最終確認などを考慮して、装着作業の開始をオペレータが指令するようにしている部品装着機がある。この場合、オペレータは、準備動作の終了を待って装着作業の開始を指令するため、無駄な待ち時間が発生する。また、オペレータは、待っている間に心理的ストレスを感じる。
【0007】
本明細書では、部品装着機の準備動作時に、オペレータの無駄な待ち時間を解消するとともに、心理的ストレスを軽減した部品装着システムを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、オペレータによって周辺装置が装備された後に準備動作を実施して、基板に部品を装着する装着作業の開始条件を成立させる準備動作部を有する部品装着機と、前記オペレータが保持する携帯情報装置に前記開始条件の成立を通知する条件成立通知部と、を備える部品装着システムを開示する。
【0009】
また、本明細書は、オペレータの指示により準備動作を実施して、基板に部品を装着する装着作業の開始条件を成立させる準備動作部を有する部品装着機と、前記オペレータが保持する携帯情報装置に前記開始条件の成立を通知する条件成立通知部と、を備える部品装着システムを開示する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書で開示する部品装着システムにおいて、オペレータによって周辺装置が装備されたときやオペレータに指示されたときに、部品装着機の準備動作部は、準備動作を自動的に実施して装着作業の開始条件を成立させる。また、条件成立通知部は、携帯情報装置に開始条件の成立を通知する。このため、オペレータは、周辺装置を装備した後や準備動作を指示した後に、部品装着機から一時的に離れて別の業務に携わることができる。そして、携帯情報装置への通知があったときに、オペレータは、部品装着機に戻って装着作業の開始を指令すればよい。したがって、オペレータは、部品装着機の傍らで準備動作が終了するまで待つ必要がなく、無駄な待ち時間が解消されるとともに、心理的ストレスも軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】第1実施形態の部品装着システムの機能ブロック図である。
【
図3】第1実施形態の部品装着システムの動作フロー図である。
【
図4】第2実施形態の部品装着システムの機能ブロック図である。
【
図5】第2実施形態の部品装着システムの動作フロー図である。
【
図6】第3実施形態の部品装着システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.部品装着機1の構成例
まず、第1実施形態の部品装着システム6に含まれる部品装着機1の構成例について、
図1を参考にして説明する。
図1の左上から右下に向かう方向が基板を搬送するX軸方向、左下(後側)から右上(前側)に向かう方向がY軸方向、鉛直方向がZ軸方向である。部品装着機1は、部品の装着作業を繰り返して実施する。部品装着機1は、基板搬送部2、部品供給部3、部品移載部4、部品カメラ11、および制御部5(
図2参照)などが基台10に組み付けられ、保護カバー12に覆われて構成されている。
【0013】
基板搬送部2は、第1ガイドレール21および第2ガイドレール22、一対の図略のコンベアベルト、ならびにクランプ機構23などで構成される。第1ガイドレール21および第2ガイドレール22は、基台10の上部中央を横断してX軸方向に延在し、かつ互いに平行するように基台10に組み付けられる。第1ガイドレール21および第2ガイドレール22に沿って、一対のコンベアベルトが設けられる。一対のコンベアベルトは、コンベア搬送面に基板を戴置した状態で輪転して、基台10の中央に設定された装着実施位置に基板を搬入および搬出する。クランプ機構23は、第1ガイドレール21と第2ガイドレール22の間に設けられる。クランプ機構23は、搬入された基板を押し上げて水平姿勢でクランプし、装着実施位置に位置決めする。
【0014】
部品供給部3は、部品装着機1の後側に着脱可能に装備される。部品供給部3は、パレット35上に複数のフィーダ31が配列されて構成される。フィーダ31は、本体32と、本体32の後側に設けられた供給リール33と、本体32の前端上部に設けられた供給位置34とを備える。供給リール33には、多数の部品が所定ピッチで封入されたキャリアテープが巻回保持される。フィーダ31は、図略のテープ駆動機構によってキャリアテープを所定ピッチで送り出し、部品の封入状態を解除して供給位置34に順次供給する供給動作を行う。
【0015】
フィーダ31は、部品供給装置の一形態であり、交換される周辺装置の一形態でもある。供給リール33やキャリアテープは、複数の部品を保持する部品保持具の一形態である。フィーダ31は、内蔵する不揮発性の記憶部に自装置固有の固有情報を記憶している。フィーダ31の固有情報として、個体識別コードの他に、供給リール33や部品の種類等に関する情報、供給位置34の位置座標等に関する情報、テープ駆動機構の動作特性等に関する情報、ならびに稼働履歴やメンテナンス履歴等に関する情報などがある。なお、部品供給装置として、トレイ式装置や他方式の装置が用いられてもよい。
【0016】
部品移載部4は、一対のY軸レール41、Y軸移動台42、Y軸モータ43、X軸移動台44、X軸モータ45、および装着ヘッド装置46などで構成される。一対のY軸レール41は、基台10の前側から後側の部品供給部3の上方にかけて配設される。Y軸移動台42は、一対のY軸レール41に装架されている。Y軸移動台42は、Y軸モータ43からボールねじ機構を介して駆動され、Y軸方向に移動する。
【0017】
X軸移動台44は、Y軸移動台42に装架されている。X軸移動台44は、X軸モータ45からボールねじ機構を介して駆動され、X軸方向に移動する。装着ヘッド装置46は、X軸移動台44の後側に、着脱可能に取り付けられる。Y軸レール41、Y軸移動台42、Y軸モータ43、およびX軸モータ45は、ヘッド駆動機構40を構成する。装着ヘッド装置46は、ヘッド駆動機構40に駆動されて水平二方向に移動する。
【0018】
装着ヘッド装置46は、ロータリツール47を下側に有する。ロータリツール47は、R軸モータ48によって回転駆動される。
図1には省略されているが、ロータリツール47の下側に、複数の吸着ノズルが環状に配置される。吸着ノズルは、図略のQ軸モータによって回転駆動される。さらに、ロータリツール47が回転したとき、最も後側に位置する吸着ノズルは、図略のZ軸モータに駆動されて昇降する。これらの動作に加えて、吸着ノズルに負圧および正圧が供給されることにより、部品の吸着動作および装着動作が行われる。
【0019】
装着ヘッド装置46は、交換される周辺装置の一形態である。また、吸着ノズルは、部品装着具の一形態である。装着ヘッド装置46は、内蔵する不揮発性の記憶部に自装置固有の固有情報を記憶している。装着ヘッド装置46の固有情報として、個体識別コードの他に、吸着ノズルの種類や大きさ等に関する情報、装置内における吸着ノズルの位置座標等に関する情報、R軸モータ48、Z軸モータ、およびQ軸モータの動作特性等に関する情報、ならびに稼働履歴やメンテナンス履歴等に関する情報などがある。なお、部品装着具として、挟持式装着具や他方式の装着具が用いられてもよい。
【0020】
マークカメラ49は、X軸移動台44の下側に設けられ、ロータリツール47に並んで配置される。マークカメラ49およびヘッド駆動機構40は、装着作業時に動作する。マークカメラ49は、位置決めされた基板に設けられている位置基準マークを撮像して、基板の正確な装着実施位置を検出する。
【0021】
また、マークカメラ49およびヘッド駆動機構40は、較正動作のときにも動作する。マークカメラ49は、基台10の上面等に設けられた位置基準マークを撮像して、ヘッド駆動機構40のX-Y座標系の較正動作を実施することができる。さらに、マークカメラ49は、フィーダ31の供給位置34を撮像して、供給位置34の位置座標の較正動作を実施することができる。
【0022】
部品カメラ11は、基板搬送部2と部品供給部3との間の基台10の上面に、上向きに設けられている。部品カメラ11は、装着作業時に動作し、装着ヘッド装置46の複数本の吸着ノズルが供給位置34で部品を吸着して基板に移動する途中の状態を撮影する。これにより、部品カメラ11は、複数本の吸着ノズルにそれぞれ保持された部品を一括して撮像できる。取得された画像データは、画像処理されて、部品の有無や正誤が確認されるとともに、吸着姿勢が取得される。
【0023】
また、部品カメラ11は、較正動作のときにも動作する。部品カメラ11は、X軸移動台44の下面等に設けられた位置基準マークを撮像して、ヘッド駆動機構40のX-Y座標系の較正動作を実施することができる。さらに、部品カメラ11は、装着ヘッド装置46を撮像して、装着ヘッド装置46や吸着ノズルの位置座標の較正動作を実施することができる。加えて、部品カメラ11とマークカメラ49の相互撮影による較正動作が実施されてもよい。
【0024】
制御部5は、基板製品の種類ごとのジョブデータを保持して、装着作業を制御する。ジョブデータは、装着作業の詳細な手順や実施方法などを記述したデータである。制御部5は、基板搬送部2、部品供給部3、部品移載部4、および部品カメラ11に各種の指令を送信し、動作状況に関する情報を受信する。制御部5は、単一のコンピュータ装置で構成されてもよく、複数のコンピュータ装置に機能分散されて構成されてもよい。
【0025】
2.第1実施形態の部品装着システム6の機能構成
次に、第1実施形態の部品装着システム6の機能構成について、
図2を参考にして説明する。図示されるように、部品装着システム6は、準備動作部53および進捗表示部54を有する部品装着機1と、条件成立通知部93とにより構成される。準備動作部53および進捗表示部54は、制御部5のソフトウェアで実現されている。条件成立通知部93は、ホストコンピュータ9のソフトウェアで実現されている。
【0026】
部品装着機1は、操作部51および表示部52を有する。操作部51は、オペレータの各種指令、例えば、準備動作を実施する指令や装着作業の作業開始指令などを受け付ける。操作部51は、例えば、複数の操作スイッチによって形成される。表示部52は、オペレータの操作内容や部品装着機1の状態などを表示する。表示部52は、例えば、液晶表示装置によって形成される。操作部51および表示部52は、これらに限定されず、両者が一体化されたタッチパネルであってもよい。
【0027】
部品装着機1の上流側には、図略の半田印刷機や印刷検査機が並んで配置される、部品装着機1の下流側には、図略の基板外観検査機やリフロー機が並んで配置される。これらの対基板作業機を制御するために、ホストコンピュータ9が設けられる。これにより、基板製品の生産ラインが構成される。部品装着機1の制御部5は、ホストコンピュータ9に有線通信で接続され、ホストコンピュータ9からの指令に基づいて装着作業を制御する。また、制御部5は、装着作業の進捗状況等をホストコンピュータ9に報告する。
【0028】
ホストコンピュータ9は オペレータが保持する携帯情報装置8と双方向の情報伝送を行う無線通信部91を有する。携帯情報装置8として、専用の無線通信端末や、汎用の携帯電話(スマートフォンなど)を例示できる。無線通信の方式として、専用の構内LAN通信や、汎用のインターネット通信を例示できる。
【0029】
準備動作部53は、オペレータによって周辺装置が装備された後に、準備動作を自動的に実施して装着作業の開始条件を成立させる。例えば、生産する基板製品の種類を変更するときの段取り替えで、装着する部品の種類を変更するために、フィーダ31が交換されて装備される。さらに、部品の大きさや形状の変更に伴い、装着ヘッド装置46が交換されて装備される。また例えば、装着作業の途中で、フィーダ31から供給している部品が無くなると、そのフィーダ31が取り外されて別のフィーダ31が装備される。
【0030】
準備動作部53が実施する準備動作は、情報転送動作および較正動作を含む。詳述すると、装着ヘッド装置46が装備されたとき、準備動作部53は、装着ヘッド装置46の固有情報を記憶部から本体側の制御部5に転送する情報転送動作を実施する。これにより、制御部5は、装備されている各装着ヘッド装置46の固有の特性や個体差を考慮して、部品の吸着動作および装着動作を安定的に制御することができる。
【0031】
さらに、準備動作部53は、装着ヘッド装置46の位置に関する較正動作を実施する。この較正動作は、マークカメラ49や部品カメラ11を用いて実施される。これにより、装着ヘッド装置46を装備したときに生じ得る装備位置の誤差が補償される。かつ、装着ヘッド装置46やロータリツール47の個体差の影響が較正動作によって解消される。したがって、制御部5は、部品の吸着動作および装着動作を高精度に制御することができる。
【0032】
また、フィーダ31が装備されたとき、準備動作部53は、フィーダ31の固有情報を記憶部から本体側の制御部5に転送する情報転送動作を実施する。これにより、制御部5は、装備されている各フィーダ31の固有の特性や個体差を考慮して、部品の供給動作および吸着動作を安定的に制御することができる。
【0033】
さらに、準備動作部53は、部品の供給位置34およびキャリアテープの状態に関する較正動作を実施する。この較正動作は、マークカメラ49や部品カメラ11を用いて実施される。これにより、フィーダ31を装備したときに生じ得る供給位置34の位置誤差が補償される。かつ、キャリアテープの個体差や変形などの影響が較正動作によって解消される。したがって、制御部5は、部品の供給動作および吸着動作を高精度に制御することができる。
【0034】
なお、準備動作部53は、上述した情報転送動作および較正動作の一方動作のみを実施してもよい。また、準備動作部53は、上述した以外の準備動作を実施してもよい。さらに、オペレータが周辺装置を装備することなく準備動作を指令した場合に、準備動作部53は、上述した較正動作を実施する。例えば、基板製品の生産数が増加して周辺装置の疲弊が懸念される場合や、次に生産する種類の基板製品に高い信頼性が要求される場合に、オペレータは、周辺装置を交換することなく準備動作を指令する。
【0035】
進捗表示部54は、準備動作部53が実施する準備動作の進捗状況を表示部52に表示する。進捗表示部54は、準備動作のうち情報転送動作に要すると推定される情報転送時間を周辺装置から取得する。周辺装置は、情報転送時間そのものを記憶して、進捗表示部54に受け渡してもよい。または、周辺装置は、記憶している固有情報の情報量(データサイズ)を受け渡し、進捗表示部54は、情報転送仕様を参照し、情報量に基づいて情報転送時間を推定してもよい。
【0036】
ここで、従来技術において、情報転送時間は、周辺装置の種類ごとに一定値とされており、制御部5に設定されていた。このため、周辺装置の設計変更によるバージョンアップのたびに、一定値の見直しおよび再設定(ソフトウェアの修正)が必要となっていた。さらに、設定誤りのおそれがあった。
【0037】
これに対して、本第1実施形態では、進捗表示部54が情報転送時間を周辺装置から取得する。したがって、情報転送時間の再設定の手間は不要であり、設定誤りは生じない。また、周辺装置の個体ごとに相違し、かつ時間経過に伴って変化し得る情報転送時間を用いることができる。例えば、周辺装置の個体に依存して固有情報の情報量に大きな差異が有る場合に、情報転送時間は、個体ごとの情報量に基づいて高い精度で推定される。また、時間経過に伴って固有情報の情報量が増大した場合に、情報量に対応する大きな情報転送時間が推定されるので、情報転送時間の精度が高く維持される。
【0038】
また、進捗表示部54は、過去の較正動作に要した時間等に基づいて、今回の較正動作の所要時間を高精度に推定することができる。なお、交換された周辺装置の較正動作は、固有情報の転送動作の後に、取得された新しい固有情報を用いて実施される。進捗表示部54は、交換された周辺装置の種類、個数などに基づいて、準備動作に要する総所要時間を推定することができる。
【0039】
さらに、進捗表示部54は、準備動作に要すると推定される現在以後の所要時間を推定して、リアルタイムで表示する。このため、オペレータは、表示された所要時間を確認して、今後の行動を判断することができる。なお、進捗表示部54は、別の表示方法、例えば、現在以後の所要時間を総所要時間で除算した進捗状況をパーセント表示する方法等を用いてもよい。
【0040】
進捗表示部54は、準備動作が終了して開始条件が成立したときに、その旨を条件成立通知部93に報告する。条件成立通知部93は、オペレータが保持する携帯情報装置8に開始条件の成立を通知する。また、進捗表示部54は、開始条件の成立を表示部52に表示する。
【0041】
3.第1実施形態の部品装着システム6の動作
次に、第1実施形態の部品装着システム6の動作について、
図3の動作フロー図を参考にして説明する。
図3のステップS1で、オペレータは、周辺装置を装備し、または準備動作を指令する。ステップS1は、準備動作部53への始動トリガとなる。次のステップS2で、準備動作部53は、所定の準備動作を実施する。この後、所定の制御サイクル時間が経過すると、動作フローの実行は、ステップS3に進められる。
【0042】
ステップS3で、進捗表示部54は、準備動作に要すると推定される現在以後の所要時間をリアルタイムで表示する。オペレータは、この表示を見て今後の行動を判断することができる。例えば、オペレータは、所要時間が短い場合に部品装着機1の傍らに留まり、所要時間が長い場合に部品装着機1から一時的に離れて別の業務に携わることができる。別の業務として、当該の部品装着機1で次に生産する別種の基板製品の段取りに関する業務や、別の生産ラインに関する業務を例示できる。
【0043】
次のステップS4で、進捗表示部54は、準備動作が終了して装着作業の開始条件が成立したか否かを判定する。開始条件が成立していない間、ステップS2からステップS4までが繰り返して実行される。したがって、オペレータは、ステップS3で逐次更新されて徐々に減少する所要時間を確認して、準備動作の進捗状況を把握することができる。ステップS4で開始条件が成立していると、動作フローの実行はステップS5に進められる。
【0044】
ステップS5で、条件成立通知部93は、携帯情報装置8に開始条件の成立を通知する。同時に、進捗表示部54は、開始条件の成立を表示部52に表示する。これで、部品装着システム6の動作は終了する。オペレータは、携帯情報装置8で開始条件の成立を認識すると部品装着機1に戻り、操作部51から装着作業の作業開始指令を入力操作する。また、オペレータは、部品装着機1の傍らにいる場合に、表示部52に表示された開始条件の成立を視認して、作業開始指令を入力操作してもよい。いずれの場合でも、部品装着機1は、装着作業を開始する。ここで、オペレータは、入力操作に先立ち、部品装着機1の内外の安全状況の確認や、部品装着機1の準備状態の最終確認を行うことができる。
【0045】
第1実施形態の部品装着システム6において、オペレータによって周辺装置が装備されたときやオペレータに指示されたときに、部品装着機1の準備動作部53は、準備動作を自動的に実施して装着作業の開始条件を成立させる。また、条件成立通知部93は、携帯情報装置8に開始条件の成立を通知する。このため、オペレータは、周辺装置を装備した後や準備動作を指示した後に、部品装着機1から一時的に離れて別の業務に携わることができる。そして、携帯情報装置8への通知があったときに、オペレータは、部品装着機1に戻って装着作業の開始を指令すればよい。したがって、オペレータは、部品装着機1の傍らで準備動作が終了するまで待つ必要がなく、無駄な待ち時間が解消されるとともに、心理的ストレスも軽減される。
【0046】
さらに、装着作業の開始に先立ち、オペレータによる安全状況の確認や準備状態の最終確認が可能である。したがって、第1実施形態の部品装着システム6は、準備動作が終了した後に自動で装着作業を開始する特許文献1の技術と比較して、安全性や確実性の面で優れる。加えて、オペレータは、進捗表示部54による表示を見て徐々に減少する所要時間を確認することができるので、心理的ストレスが顕著に軽減される。
【0047】
4.第2実施形態の部品装着システム6Aの機能構成および動作
次に、第2実施形態の部品装着システム6Aの機能構成および動作について、
図4および
図5を参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
図4の機能ブロック図に示されるように、第2実施形態では、作業開始部55が部品装着機1の制御部5に追加される。さらに、予約取得部92、指令取得部94、および作業開始通知部95がホストコンピュータ9に追加される。追加された各部は、ソフトウェアで実現されている。追加された各部の機能については、
図5の動作フロー図にしたがって次に説明する。
【0048】
図5のステップS11で、オペレータは、周辺装置を装備し、または準備動作を指令する。ステップS11は、準備動作部53への始動トリガとなる。次のステップS12で、オペレータは、携帯情報装置8に通知予約指令を入力する。予約取得部92は、入力された通知予約指令を無線通信により取得する。通知予約指令とは、開始条件の成立を携帯情報装置8に通知してもらうことを予約する指令である。ここで、通知予約指令の入力は、任意操作とされている。このため、オペレータは、表示部52に表示された開始条件の成立を視認する予定であれば、ステップS12の実行を省略してよい。
【0049】
次のステップS13で、準備動作部53は、所定の準備動作を実施する。この後、所定の制御サイクル時間が経過すると、動作フローの実行は、ステップS14に進められる。ステップS14で、進捗表示部54は、準備動作に要すると推定される現在以後の所要時間をリアルタイムで表示する。オペレータは、この表示を見て今後の行動を判断することができる。
【0050】
次のステップS15で、進捗表示部54は、準備動作が終了して装着作業の開始条件が成立したか否かを判定する。開始条件が成立していない間、ステップS13からステップS15までが繰り返して実行される。ステップS15で開始条件が成立していると、動作フローの実行はステップS16に進められる。ステップS16で、条件成立通知部93は、予約取得部92によって通知予約指令が取得されているか否かを判定する。
【0051】
通知予約指令が取得されている場合のステップS17で、条件成立通知部93は、携帯情報装置8に開始条件の成立を通知する。通知予約指令が取得されていない場合、条件成立通知部93は通知を行わず、動作フローの実行は、ステップS19に分岐される。なお、通知予約指令が取得されているか否かに関係なく、進捗表示部54は、開始条件の成立を表示部52に表示する。これで、部品装着機1は、作業開始指令を待つ状態となる。
【0052】
オペレータは、携帯情報装置8で開始条件の成立を認識したときに、ステップS18で、携帯情報装置8に作業開始指令を入力する。指令取得部94は、入力された作業開始指令を無線通信により取得する。さらに、指令取得部94は、取得した作業開始指令を作業開始部55に転送する。また、オペレータは、表示部52に表示された開始条件の成立を視認したときに、ステップS19で、操作部51から作業開始指令を入力操作する。加えて、オペレータは、携帯情報装置8で開始条件の成立を認識したときに、ステップS19を実行してもよい(
図5の破線矢印のフロー)。
【0053】
第2実施形態において、作業開始指令は、無線通信による遠隔指令、および操作部51への入力操作のどちらでも受け付けられるようになっている。どちらの場合であっても、ステップS20で、作業開始部55は、作業開始指令にしたがって装着作業を開始する。さらに、作業開始部55は、装着作業を開始したという作業開始情報を作業開始通知部95に転送する。次のステップS21で、作業開始通知部95は、転送された作業開始情報に基づいて、部品装着機1が装着作業を開始したことを携帯情報装置8に通知する。これで、部品装着システム6Aの動作は終了する。
【0054】
第2実施形態の部品装着システム6Aでは、第1実施形態と同様、オペレータの無駄な待ち時間が解消されるとともに、心理的ストレスも軽減される。また、オペレータが部品装着機1に戻らずとも、無線通信による遠隔の作業開始指令によって部品装着機1の装着作業を開始することができる。さらに、オペレータは、部品装着機1やホストコンピュータ9から離れていても、携帯情報装置8により装着作業が開始されたことを確認できる。加えて、通知予約指令の任意操作や、作業開始指令の二通りの指令方法など、フレキシブルなシステム運用が可能となっている。
【0055】
5.第3実施形態の部品装着システム6Bの機能構成および動作
次に、第3実施形態の部品装着システム6Bの機能構成および動作について、
図6を参考にして、第1および第2実施形態と異なる点を主に説明する。
図6の機能ブロック図に示されるように、第3実施形態では、第2実施形態の構成にカメラ7および画像伝送部96が追加される。カメラ7および画像伝送部96は、部品装着機1の状態(停止中、準備動作中、装着作業中)に関係なく動作する。
【0056】
カメラ7は、部品装着機1の機内および機外周辺部の少なくとも一方に配置される。カメラ7は、部品装着機1の機内および機外周辺部の少なくとも一方の安全状況、ならびに、装着作業の開始状況の少なくとも一状況を撮像して、状況画像を取得する。カメラ7は、複数台設けられてもよい。カメラ7は、動画像を撮像する動画カメラが好ましいが、一定時間間隔で静止画像を撮像する静止画カメラであってもよい。カメラ7は、状況画像の画像データを画像伝送部96に転送する。
【0057】
カメラ7が撮像する安全状況として、部品装着機1内の異物の有無の状況、保護カバー12の開閉状況、使用しない器具類や台車等の残存状況、および部外者の立ち入り状況を例示できる。カメラ7が撮像する装着作業の開始状況として、基板の搬送状況、装着ヘッド装置46やロータリツール47や吸着ノズルの動作状況、マークカメラ49や部品カメラ11の撮像時の照明状況、および供給リール33の回転状況やキャリアテープの送り出し状況を例示できる。なお、カメラ7は、上記以外の状況を撮像してもよい。
【0058】
画像伝送部96は、ホストコンピュータ9のソフトウェアで実現されている。画像伝送部96は、カメラ7が取得した状況画像の画像データを携帯情報装置8に伝送する。携帯情報装置8は、画像表示機能を有しており、カメラ7が取得した状況画像を再現して表示する。
【0059】
第3実施形態の部品装着システム6Bで、オペレータは、状況画像を見ることにより、部品装着機1の機内外の安全状況を確認することができる。したがって、遠隔指令により部品装着機1の装着作業を開始する場合でも、安全性の面で優れる。さらに、オペレータは、状況画像を見ることにより、部品装着機1の装着作業の開始状況やその後の稼働状況を確認することができる。したがって、遠隔指令により部品装着機1の装着作業を開始する場合でも、確実性の面で優れる。
【0060】
6.実施形態の応用および変形
なお、第1実施形態において、進捗表示部54を省略することができ、オペレータが部品装着機1から一時的に離れてよいことは同様である。また、第2および第3実施形態において、予約取得部92を省略することができる。この変形形態では、
図5の動作フロー図において、ステップS12が省略され、ステップS15で開始条件が成立したときに無条件でステップS17が実行され、ステップS18またはステップS19で作業開始指令が取得される。さらに、第2および第3実施形態において、作業開始通知部95を省略することができる。この変形形態では、
図5の動作フロー図において、ステップS21が省略される。
【0061】
また、各実施形態において、進捗表示部54は、準備動作の進捗状況をホストコンピュータ9や携帯情報装置8に表示してもよい。さらに、各実施形態において、部品装着システム6は、ホストコンピュータ9を含まない構成であってもよい。換言すると、予約取得部92、条件成立通知部93、指令取得部94、作業開始通知部95、および画像伝送部96は、制御部5のソフトウェアで実現されていてもよい。第1~第3実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1:部品装着機 11:部品カメラ 2:基板搬送部 3:部品供給部 31:フィーダ 4:部品移載部 46:装着ヘッド装置 49:マークカメラ 5:制御部 53:準備動作部 54:進捗表示部 55:作業開始部 6、6A、6B:部品装着システム 7:カメラ 8:携帯情報装置 9:ホストコンピュータ 91:無線通信部 92:予約取得部 93:条件成立通知部 94:指令取得部 95:作業開始通知部 96:画像伝送部