(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240517BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240517BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240517BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20240517BHJP
D06N 3/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
G02B5/22
G03G9/09
D06N3/00
(21)【出願番号】P 2023185307
(22)【出願日】2023-10-30
【審査請求日】2024-02-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】樋山 裕晃
(72)【発明者】
【氏名】藤山 英子
(72)【発明者】
【氏名】山口 直人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 臣子
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-111410(JP,A)
【文献】特開2017-031291(JP,A)
【文献】特開2019-073604(JP,A)
【文献】特開2008-229852(JP,A)
【文献】特開2012-174990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
420nm以上、450nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第一の着色剤、450nm超,500nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第二の着色剤、500nm超、570nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第三の着色剤、570nm超、650nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第四の着色剤および650nm超、700nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第五の着色剤を含有する樹脂成形品であって,
前記第一の着色剤、前記第二の着色剤、前記第三の着色剤、前記第四の着色剤および前記第五の着色剤の減法混色によって着色しており、D
65光源10度視野での明度L
*が45~55、C
*が1.0以下であり、420nm以上、700nm以下の波長範囲において10nmの波長間隔で測定された各分光透過率が、それぞれ、420nm以上、700nm以下の波長範囲における平均分光透過率から±5%以内にあることを特徴とする、樹脂成形品。
【請求項2】
JIS Z8719-1996で定義された条件等色指数M
10(D
65:F11(W
10))が1.5以下であることを特徴とする、請求項1記載の樹脂成形品。
【請求項3】
条件等色指数M
10(D
65:A(W
10))、M
10(D
65:C(W
10))、M
10(D
65:D
50(W
10))、M
10(D
65:F2(W
10))、M
10(D
65:F6(W
10))、M
10(D
65:F7(W
10))、M
10(D
65:F8(W
10))、M
10(D
65:F10(W
10))およびM
10(D
65:F12(W
10))が、それぞれ1.5以下であることを特徴とする、請求項2記載の樹脂成形品。
【請求項4】
カーボンブラックを含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つの請求項に記載の樹脂成形品。
【請求項5】
L
*a
*b
*表色系測定におけるa
*値が-0.5以上、0.5以下であり、b
*値が-0.5以上~0.5以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つの請求項に記載の樹脂成形品。
【請求項6】
NDフィルター、ブラックパネル、繊維素材、ドアバイザー、赤外透過フィルムまたは合成皮革であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つの請求項に記載の樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂成形品に関する。特に、透過色が濃度や厚みを変化させても分光反射率、分光透過率共にほぼ一定となる無彩色であり、反射色のメタメリズムが抑制された樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、黒色の塗料や樹脂成形品に含有させる顔料として、カーボンブラックが使用されてきた。しかしながら、カーボンブラックの種類によっては、反射光や透過光が、黄味や赤味を帯びた黒色となってしまい、更にメタメリズムが発生してしまう。このため、無彩色である黒色の表現は、カーボンブラック単体では困難であった。
【0003】
また、有彩色の染料および顔料を用いた減法混色によって、無彩色の樹脂成形品を得る方法では、特定の光源や視野にて調色を行うが、可視光波長である420nm~700nmでの分光反射率や分光透過率は平坦とはならない。このため、調色時に用いた光源以外の光源を用いた場合や、調色時濃度を変更した場合や、調色時の樹脂成形品厚さを変更した場合には、有彩色に色付いて見え、かつ、透過された光源色が元の光源色とは異なる色に色付いて見えることがある。
【0004】
そのため、無彩色である黒色を表現するために、例えば特許文献1では、黒色の染料やカーボンブラックと、その他染料を混合したインクを透明基材上に塗布することによって、光量調節部材を製造する方法が記載されている。また、特許文献2では、黒色以外の2種以上の染料を使用した、熱可塑性樹脂からなる黒色フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-070752号公報
【文献】国際公開2017/217429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、吸収スペクトルの吸収極大波長が630nm~750nmの範囲にある色材を少なくとも1種類含むことで、400~700nm、特に600~700nmにおける分光特性がほぼ一定である光量調節部材を、透明基板上に着色液を印刷することで製造している。しかしながら、特許文献1では、光量調節が目的であり、可視光の分光透過率はある程度一定と思慮されるものの、可視光領域全体の分光反射光については記載がなく、減法混色については記載も示唆もない。
【0007】
特許文献2では、主に加飾成形用として、同一加飾成形体中での色調差の発生と、深みと清澄感のある漆黒性の表現が困難であることを解決する発明となっている。特許文献2では、反射光のa*及びb*の絶対値が2.0以下であるものの、全光透過率が低く、濃度が高い系での検討であり、濃度が低いときの無彩色黒色表現についての課題は存在していない。また、同一加飾成形体中での色調差については述べられているものの、メタメリズムに対する検討はなされていない。
【0008】
本発明の課題は、樹脂成形品において、濃度や厚みへの依存性を低くし、黒色の染顔料単独では困難である分光反射率、分光透過率共に均一となる無彩色を得ることであり、メタメリズムを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す樹脂成形品が提供される。
[1] 420nm以上、450nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第一の着色剤、450nm超,500nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第二の着色剤、500nm以上、570nm超の波長範囲に最大吸収波長を有する第三の着色剤、570nm超、650nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第四の着色剤および650nm超、700nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第五の着色剤を含有する樹脂成形品であって,
前記第一の着色剤、前記第二の着色剤、前記第三の着色剤、前記第四の着色剤および前記第五の着色剤の減法混色によって着色しており、D65光源10度視野での明度L*が45~55、C*が1.0以下であり、420nm以上、700nm以下の波長範囲において10nmの波長間隔で測定された各分光透過率が、それぞれ、420nm以上、700nm以下の波長範囲における平均分光透過率から±5%以内にあることを特徴とする、樹脂成形品。
【0011】
[2] JIS Z8719-1996で定義された条件等色指数M10(D65:F11(W10))が1.5以下であることを特徴とする、[1]の樹脂成形品。
【0012】
[3] 条件等色指数M10(D65:A(W10))、M10(D65:C(W10))、M10(D65:D50(W10))、M10(D65:F2(W10))、M10(D65:F6(W10))、M10(D65:F7(W10))、M10(D65:F8(W10))、M10(D65:F10(W10))およびM10(D65:F12(W10))が、それぞれ1.5以下であることを特徴とする、[2]の樹脂成形品。
【0013】
[4] 前記着色剤としてカーボンブラックを含有することを特徴とする、[1]~[3]のいずれかの樹脂成形品。
【0014】
[5] L*a*b*表色系測定におけるa*値が-0.5以上、0.5以下であり、b*値が-0.5以上~0.5以下であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかの樹脂成形品。
【0015】
[6] NDフィルター、ブラックパネル、繊維素材、ドアバイザー、赤外透過フィルムまたは合成皮革であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかの樹脂成形品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、濃度や厚みへの依存性が低く、分光反射率、分光透過率共に可視光領域である420~700nmにおいてほぼ均一である無彩色が表現され、メタメリズムが抑制された樹脂成形品を提供することができる。
これによって、樹脂成形品を透過した光源による透過色を、色調の微量な変化に調整できる透明樹脂成形品を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)、(b)および(c)は、実施例で用いた青染料1、青染料2および緑染料1の分光透過率を示すグラフである。
【
図2】(a)、(b)および(c)は、実施例で用いた紫染料1、紫染料2および黄染料1の分光透過率を示すグラフである。
【
図3】(a)、(b)および(c)は、実施例で用いた黄染料2、赤染料1および赤染料2の分光透過率を示すグラフである。
【
図4】(a)および(b)は、黒混合染料1および黒混合染料2の分光透過率を示すグラフである。
【
図5】(a)、(b)および(c)は、赤顔料1、黄顔料1および黒顔料1の分光透過率を示すグラフである。
【
図6】(a)および(b)は、黒顔料2およびカーボンの分光透過率を示すグラフである。
【
図7】(a)および(b)は、実施例1および実施例2の樹脂成形品の分光透過率を示すグラフである。
【
図8】(a)および(b)は、実施例3および比較例1の樹脂成形品の分光透過率を示すグラフである。
【
図9】(a)および(b)は、比較例2および比較例3の樹脂成形品の分光透過率を示すグラフである。
【
図10】(a)および(b)は、比較例4および比較例5の樹脂成形品の分光透過率を示すグラフである。
【
図11】(a)および(b)は、比較例6および比較例7の樹脂成形品の分光透過率を示すグラフである。
【
図12】(a)および(b)は、実施例4および比較例8の樹脂成形品の分光透過率を示すグラフである。
【
図13】(a)および(b)は、実施例9および比較例10の樹脂成形品の分光透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(樹脂)
本発明の樹脂成形品は樹脂を含む。この樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。こうした熱可塑性樹脂としては、一般的な樹脂成形品を製造するために用いられる熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート;ポリスチレン;ABS;ポリアミド;ポリメチルメタクリレート;ポリウレタン;ポリフェニレンエーテル等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、非晶性の熱可塑性樹脂を用いてもよく、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
本発明の樹脂成分を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂以外に熱硬化性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、イミド樹脂、2官能以上のビニル重合性官能基をもつ単量体を重合して得られるスチレン系樹脂や(メタ)アクリレート樹脂等の従来公知の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0020】
(着色剤)
本発明の樹脂成形品は、5種以上の着色剤を含む。具体的には、420nm以上、450nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第一の着色剤、450nm超、500nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第二の着色剤、500nm超、570nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第三の着色剤、570nm超、650nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第四の着色剤および650nm超、700nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第五の着色剤を含む。
【0021】
本発明の樹脂成形品は、光学的特性として、可視光領域を網羅して吸収する。具体的には、樹脂成形品の分光透過率は、ほとんどの可視光放射を効果的に吸収することができる、420~700nmの波長範囲である必要性を、発明者は見出した。そして、420nm~700nmの波長範囲について、上記したようにして波長範囲を分割し、それぞれの波長範囲中に最大吸収波長がある五種類の着色剤を配合して調整することで、減法混色させる。減法混色とは、吸収波長の異なる着色剤を混合することで明度を低下させる手法である。これによって、濃度や厚みへの依存性が低く、分光反射率、分光透過率共に可視光領域である420~700nmにおいてほぼ均一である無彩色が表現され、メタメリズムが抑制された樹脂成形品を提供することができる。
【0022】
なお、可視光範囲の420~700nmの波長範囲では、10nmの波長間隔の分光透過率の平均値を算出した平均透過率に対し、10nmの波長間隔の各分光透過率が±5%以下、好ましくは±3%以下、より好ましくは±2%以下である。これが±5%を超える場合、条件等色指数が1.5を超える可能性が高くなってくるので、メタメリズムが生じやすくなる。また、420nm未満の波長範囲では、例えば塩化ビニル樹脂のように、使用する樹脂によっては吸収が起こることが多く樹脂成形品のメタメリズム等への影響が少ないため、波長範囲から除外している。更に、420nm未満の範囲を除外した420~700nmの範囲を基準としても、目的とする無彩色が得られる。
【0023】
ただし、各着色剤の最大吸収波長は、以下のように測定するものとする。
すなわち、420nm~700nmにおいて、10nm間隔で分光透過率を測定する。そして、分光透過率が最大値となる波長を、最大吸収波長と定義する。ゆえに、最大吸収波長は、420nmから700nmまで10nm刻みの数値をとり得る。また、各波長での各着色剤の分光透過率を測定するときには、各着色剤を、実施例記載の条件下でPET-G樹脂と混合してロール成形し、厚さ0.5mmの樹脂成形品を作製する。そして、各測定波長点において、樹脂成形品の5点の分光透過率を測定し、その平均値を分光透過率の測定値として採用する。
【0024】
(樹脂成形品の分光透過率分布)
本発明の樹脂成形品は、420nm以上、700nm以下の波長範囲において10nmの波長間隔で測定された各分光透過率が、それぞれ、420nm以上、700nm以下の波長範囲における平均分光透過率から±5%以内にある。これによっで、減法混色による無彩色を表現することができる。この結果、彩度が変化しない透過光が得られ、メタメリズムの抑制された樹脂成形品を作製できる。
【0025】
この際には、樹脂成形品について、420nm~700nmの範囲で10nmの波長間隔で分光透過率をそれぞれ測定する。各波長点において、樹脂成形品の5か所でそれぞれ1回ずつ分光透過率を測定し、5回の測定値の平均値を、各波長間隔における分光透過率とする。また、420nm~700nmの範囲内の29測定波長での各分光透過率の平均値を、平均分光透過率とする。
分光透過率の測定装置としては、据え置きタイプの測色装置や、携帯型(ハンディタイプ)のような、市販の分光測色計測色装置を用いることができる。
【0026】
各着色剤は、染料や顔料を含み、染料または顔料を単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。染料及び顔料としては、印刷インキ、塗料、及び熱可塑性樹脂の着色に従来使用されている公知の染料、有機顔料、及び無機顔料を用いることができる。これらの染料、顔料の中から前述の最大吸収波長を有する着色剤を選択する。
【0027】
本発明の樹脂成形品は、少なくとも前記した5種類以上の着色剤を含む。着色剤の種類は、5種以上である。また、着色剤の種類の上限は特に無い。しかし、420~700nmの波長範囲における10nm刻みの波長は29波長点であるので、着色剤を29種超とする必要はない。このため、着色剤の種類は、29種類以下であってよい。
【0028】
染料や顔料は、種類、粒子径、及び処理方法を用途に応じて選択して用いることが好ましい。例えば、着色物に透明性を付与する場合には、染料や顔料の種類や粒子径等を適宜選択すればよい。光輝剤は、得られる成形物表面に再帰反射特性や光散乱性を付与し、見る角度で色調が変化する材料として有効な顔料である。パールマイカ顔料としては、天然雲母(マイカ)や合成マイカを、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化すず、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト等の金属酸化物等で被覆したものを用いることができる。
着色剤の選択には、手動での調色の他、コンピュータ・カラー・マッチング(CCM)等を用いて計算されたものを使用してもよい。
【0029】
染料としては、アンスラキノン類、アゾ類、アントラピリドン類、ペリレン類、アントラセン類、ペリノン類、インダンスロン類、キナクリドン類、キサンテン類、チオキサンテン類、オキサジン類、オキサゾリン類、インジゴイド類、チオインジゴイド類、キノフタロン類、ナフタルイミド類、シアニン類、メチン類、ピラゾロン類、ラクトン類、クマリン類、ビス-ベンズオキサゾリルチオフェン類、ナフタレンテトラカルボン酸類、フタロシアニン類、トリアリールメタン類、アミノケトン類、ビス(スチリル)ビフェニル類、アジン類、ローダミン類、前述の化合物の誘導体および、それらの混合物が挙げられる。高耐熱性、耐候性などの観点から、ペリノン類、ペリレン類、アゾ類、メチン類、キノリン類が好ましく、アンスラキノン類がより好ましい。特に、アンスラキノン類とペリノン類の混合物が好ましい。
【0030】
有機顔料としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、イソインドリノン系、ジオキサン系、インジゴ系顔料などを挙げることができる。より具体的には、ジスアゾイエロー、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントイエロー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料;イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料;チオインジゴ系顔料;縮合アゾ系顔料;ベンズイミダゾロン系顔料;キノフタロンエロー;ニッケルアゾエロー;ペリノンオレンジ;アンスロンオレンジ;ジアンスラキノニルレッド;ジオキサジンバイオレットなどを挙げることができる。
【0031】
無機顔料としては、体質顔料、酸化チタン系顔料、酸化鉄系顔料、スピンネル顔料などを挙げることができる。より具体的には、カーボンブラック、酸化チタン、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、フェライト、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化アンチモン、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化ビスマス、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、水酸化亜鉛、水酸化セリウム、水酸化ランタン、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化マンガン、酸化バナジウム、炭酸亜鉛、炭酸コバルト、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタンイエロー、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトブルー、コバルトアルミクロムブルー、コバルトクロムグリーン、セルリアンブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、銅クロムブラック、銅-鉄マンガンブラック、クロムスズピンク、クロムアルミナピンク、バナジウムブルー、プラセオジウムイエロー、バナジン酸ビスマスイエロー、ビクトリアグリーン、ケイ酸コバルト、ケイ酸ジルコニウム、タルク、カオリン、ゼオライトなどを挙げることができる。
【0032】
顔料の一次平均粒子径は、通常、10μm以下であり、好ましくは1~1,000nm、さらに好ましくは10~100nmである。
【0033】
厚さ0.5mm程度の樹脂成形品に含有される樹脂の量を100質量部としたとき、樹脂成形品に含有される着色剤の合計濃度は、0.001~2.0質量部とすることが好ましい。
本発明の観点からは、着色剤の合計濃度は、0.005質量部以上とすることが更に好ましく、また、0.5質量部以下とすることが更に好ましい。
【0034】
また、樹脂成形品に含有される樹脂の量を100質量部としたとき、樹脂成形品に含有される各着色剤の濃度は、以下の範囲が好ましい。
第一の着色剤:0.0001~10.00質量部(より好ましくは0.0005~5.00質量部:特に好ましくは0.001~1.00質量部)
第二の着色剤:0.0001~10.00質量部(より好ましくは0.0005~5.00質量部:特に好ましくは0.001~1.00質量部)
第三の着色剤:0.0001~10.00質量部(より好ましくは0.0005~5.00質量部:特に好ましくは0.001~1.00質量部)
第四の着色剤:0.0001~10.00質量部(より好ましくは0.0005~5.00質量部:特に好ましくは0.001~1.00質量部)
第五の着色剤:0.0001~10.00質量部(より好ましくは0.0005~5.00質量部:特に好ましくは0.001~1.00質量部)
【0035】
(樹脂成形品のL*a*b*表色系測定)
本発明の樹脂成形品は、JIS Z 8781-4に準拠するL*a*b*表色系測定において、L*(明度)が45~55であり、C*が1.0以下であるものである。C*は0.5以下が更に好ましい。
【0036】
一般に色調を表す方法として、国際照明委員会(CIE)が策定した、目で見える色を色空間として表現する、CIE L*a*b*表色系(色空間)がある。このCIE L*a*b*表色系においては、色を3つの座標で表現し、明度が「L*」、赤(マゼンタ)~緑が「a*」(正がマゼンタ、負が緑味)、黄~青を「b*」(正が黄味、負が青味)にそれぞれ対応する。そして、ニュートラルグレイの色調は、a*値とb*値がいずれも0に近いものが理想として表示される。
【0037】
本発明の樹脂成形品は、例えば、CIE L*a*b*表色系(標準光源D65、視野角10度)におけるL*値が45~55の際に、C*値が1.0以下(好ましくは0.5以下)である。本発明の樹脂成形品は、ニーズの多様化から求められる色彩(ニュートラルグレイ)の効果を兼ね備えたものである。また、好適な実施形態においては、樹脂成形品のa*値が-0.5~+0.5であり、b*値が-0.5~+0.5である。
【0038】
(条件等色指数)
好適な実施形態においては、JIS Z8719-1996で定義された条件等色指数M10(D65:F11(W10))が1.5以下であり、好ましくは1.0以下である。条件等色指数が1.5以下であることにより、本発明の樹脂成形品は、各成形品の色が目視(人間の視覚)で高度に一致しており、かつ目視でメタメリズムが小さい。樹脂成形品の条件等色指数の下限は特に限定されないが、0.0であってよい。樹脂成形品の条件等色指数が1.5を超える場合、光源によってはニュートラルグレイではなく色付いて見えてしまう。したがって、本発明の樹脂成形品は、極めて高い意匠性を有する。
【0039】
JIS Z8719-1996で定義された条件等色指数M10(D65:F11(W10))は、樹脂成形品をJIS Z8722:2009に準じて測色し、JIS Z8781-4:2013及びJIS Z8719-1996に準じてF11及びD65光源、10°視野、10nmの波長間隔で求めたものである。
【0040】
好適な実施形態においては、樹脂成形品の条件等色指数M10(D65:A(W10))、M10(D65:C(W10))、M10(D65:D50(W10))、M10(D65:F2(W10))、M10(D65:F6(W10))、M10(D65:F8(W10))、M10(D65:F10(W10))、M10(D65:F7(W10))およびM10(D65:F12(W10))が、それぞれ1.5以下であり、好ましくは1.0以下である。これら各条件等色指数が1.5以下であることにより、本発明の樹脂成形品は、各成形品の色が目視(人間の視覚)で高度に一致しており、かつ目視でメタメリズムが小さい。各条件等色指数の下限は特に限定されないが、0.0であってよい。
【0041】
M10(D65:A(W10))は、樹脂成形品をJIS Z8722:2009に準じて測色し、JIS Z8781-4:2013及びJIS Z8719-1996に準じてA及びD65光源、10°視野、10nmの波長間隔で求めたものである。
M10(D65:C(W10))は、樹脂成形品をJIS Z8722:2009に準じて測色し、JIS Z8781-4:2013及びJIS Z8719-1996に準じてC及びD65光源、10°視野、10nmの波長間隔で求めたものである。
M10(D65:D50(W10))は、樹脂成形品をJIS Z8722:2009に準じて測色し、JIS Z8781-4:2013及びJIS Z8719-1996に準じてD50及びD65光源、10°視野、10nmの波長間隔で求めたものである。
M10(D65:F2(W10))は、樹脂成形品をJIS Z8722:2009に準じて測色し、JIS Z8781-4:2013及びJIS Z8719-1996に準じてF2及びD65光源、10°視野、10nmの波長間隔で求めたものである。
【0042】
M10(D65:F6(W10))は、樹脂成形品をJIS Z8722:2009に準じて測色し、JIS Z8781-4:2013及びJIS Z8719-1996に準じてF6及びD65光源、10°視野、10nmの波長間隔で求めたものである。
M10(D65:F8(W10))は、樹脂成形品をJIS Z8722:2009に準じて測色し、JIS Z8781-4:2013及びJIS Z8719-1996に準じてF8及びD65光源、10°視野、10nmの波長間隔で求めたものである。
M10(D65:F10(W10))は、樹脂成形品をJIS Z8722:2009に準じて測色し、JIS Z8781-4:2013及びJIS Z8719-1996に準じてF10及びD65光源、10°視野、10nmの波長間隔で求めたものである。
【0043】
M10(D65:F7(W10))は、樹脂成形品をJIS Z8722:2009に準じて測色し、JIS Z8781-4:2013及びJIS Z8719-1996に準じてF7及びD65光源、10°視野、10nmの波長間隔で求めたものである。
M10(D65:F12(W10))は、樹脂成形品をJIS Z8722:2009に準じて測色し、JIS Z8781-4:2013及びJIS Z8719-1996に準じてF12及びD65光源、10°視野、10nmの波長間隔で求めたものである。
【0044】
上記の各条件等色指数は、拡散照明:0°方向受光方式の測色光学系により測定される透過率から計算される値であることが好ましい。これにより、色の一致や、メタメリズムの抑制が、人間の視覚(目視)に一層近い感覚で達成される。
【0045】
(他の添加剤)
本発明の樹脂成形品は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の添加剤を含有してもよい。例えば、分散剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、耐衝撃助剤、充填剤、艶消し剤などが含有されていてもよい。樹脂整形品中に含まれる樹脂の量を100質量部としたとき、他の添加剤の含有量は5質量部以下が好ましく、0質量部であってもよい。
【0046】
(樹脂成形品の製造)
本発明の樹脂成形品は、一般に、樹脂と着色剤とを、バンバリーミキサー、ナウターミキサー、混練ロール、又は一軸、二軸押し出し機などにより、溶融混合、分散処理することによって、得ることが出来る。また混練前に分散均一化する目的で、タンブラーミキサー、ブレンダー、高速混合機で予備分散を行ってもよい。
【0047】
得られた樹脂成形品の成形方法としては、限定されないが、射出成形、射出圧縮成形、圧空成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、押し出し成形等の公知の方法で、所定の形状に成形される。このとき、目的に応じて熱安定剤,耐候安定剤,滑剤,顔料分散剤,静電気防止剤などの添加剤を添加することができる。また、高意匠性等、成形物に必要な目的に応じて、光輝剤や、光輝剤以外の他の顔料や染料を添加することができる。
【0048】
成形機を使用し、一般的なフィルム成形方法やシート成形方法によって着色樹脂成形品を成形することで、フィルム状又はシート状の成形体を製造することができる。成形機としては、押出成形機、中空成形機、真空成形機、圧空成形機、圧縮成形機、カレンダー成形機等を使用することができる。フィルム状成形体及びシート状成形体の厚みは、用途に応じて適宜調整すればよい。具体的には、0.1~500μmとすることが好ましく、1~100μmとすることがさらに好ましい。
【0049】
積層フィルムを共押出成形する場合は、各層を構成する樹脂が、それぞれ加熱溶融され、異なる押出機やポンプ等からそれぞれの流路を通って押出ダイに供給され、押出ダイから多層に押し出された後に接着する。この押出ダイとしては、例えばマルチマニホールドダイ、フィードブロック等のTダイを用いることができる。
【0050】
また、紡糸機を使用して着色樹脂成形品を紡糸することで、繊維状の成形体を製造することができる。繊維状の成形体の繊維径は、用途に応じて適宜調整すればよい。具体的には、1~1,000μmとすることが好ましく、1~500μmとすることがさらに好ましく、5~200μmとすることが特に好ましい。繊維状の成形体は、適当な長さに裁断してもよいし、束ねて繊維束としてもよい。さらに、布や不織布に加工することもできる。
【0051】
(本発明の樹脂成形品の好適な用途)
樹脂成形品の用途としては、いくつか挙げることができる。例えば、光吸収タイプのNDフィルターとして、基板中に光を吸収する有機色素または顔料を混ぜて練り込むタイプのものが存在する。基板には様々なプラスチック材料が用いられ、例としてPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)及びPO(ポリオレフィン)等の熱可塑性樹脂が使用されている。本発明の樹脂成形品では、透過光が無彩色となることから、NDフィルターの機能に適している。
【0052】
また、赤外線を透過する用途としては、近赤外線等をレーザー照射し、その散乱光を測定して遠距離にある対象までの距離やその対象の性質を分析する、LiDAR向けのフィルムや樹脂成形品の素材として活用できる。例えば照射装置を格納するケース等に利用することで、外見は黒色だが近赤外線を透過することで、能力を落とさず、装置を保護することができる。
【0053】
その他、無彩色やメタメリズムの低減という観点から、意匠性の高い物品に使用することができる。例えば、ドアバイザー等の車両関連、衣服などの繊維素材、トナー等の印刷用途、モニター等様々な用途に活用することができる。
【実施例】
【0054】
<染料>
下記の各染料とPET-G樹脂とを、ロール温度185℃、ロール径6インチ、プレス温度190℃にて、染料濃度0.02質量%にて成形し、厚さ0.5mmの樹脂成形品を作製した。そして各樹脂成形品の分光透過率を、
図1~
図4に示す。
・青染料1(最大吸収波長590nm、C.I.ソルベントブルー122)
・青染料2(最大吸収波長680nm、C.I.ディスパースブルー60)
・緑染料1(最大吸収波長700nm、C.I.ソルベントグリーン28)
・紫染料1(最大吸収波長540nm、ペリノン系染料)
・紫染料2(最大吸収波長570nm)
・黄染料1(最大吸収波長450nm)
・黄染料2(最大吸収波長450nm、C.I.ソルベントイエロー163)
・赤染料1(最大吸収波長420nm、C.I.ソルベントオレンジ63)
・赤染料2(最大吸収波長480nm、C.I.ソルベントレッド179)
・黒混合染料1(最大吸収波長610nm)
・黒混合染料2(最大吸収波長640nm)
【0055】
<顔料>
下記の各顔料を、PET-G樹脂を用いて、ロール温度185℃、ロール径6インチ、プレス温度190℃にて、顔料濃度0.02質量%によってロール成形することで、厚さ0.5mmの各樹脂成形品を得た。得られた樹脂成形品について、分光透過率の分光カーブを
図5、
図6に示す。
・赤顔料1(最大吸収波長480nm、C.I.ピグメントレッド149)
・黄顔料1(最大吸収波長430nm、C.I.ピグメントイエロー110)
・黒顔料1(最大吸収波長610nm、銅-鉄-マンガン酸化物)
・黒顔料2(最大吸収波長530nm、ペリレン系顔料)
・カーボン1(最大吸収波長420nm、C.I.ピグメントブラック7)
【0056】
<樹脂>
「PET-G」(イーストマンケミカル社製)
【0057】
(実験A)
(本発明実施例および比較例の樹脂成形品の製造)
表1、表2、表3に示す各例の配合の着色剤とPET-G樹脂とを混合し、ロール成形することで、各樹脂成形品を製造した。具体的には、各配合の着色剤と樹脂とを、ロール温度185℃、ロール径6インチ、プレス温度190℃にてロール成形することで、厚さ0.5mmの樹脂成形品を製造した。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
各樹脂成形品を、コニカミノルタ製CM-3600Aにて透過測定し、D65光源、10度視野でのL*a*b*C*を測定した。測定結果を表4に示す。
【0062】
【0063】
更に、各樹脂成形品各樹脂成形品を、コニカミノルタ製CM-3600Aにて透過測定し、分光透過率を得た。分光透過率のグラフを
図7~
図11に示す。
ただし、
図7~
図11において、実線は各波長点における分光透過率を示している。実線の上側の点線は、各測定波長点における分光透過率が平均分光透過率+5.0%であることを示す。実線の下側の点線は、各測定波長点における分光透過率が平均分光透過率-5.0%であることを示す。
【0064】
更に、各例の樹脂成形品について、420nm~700nmにおいて、分光透過率の最大値と平均透過率との差、および分光透過率の最小値と平均透過率との差を、表5に示す。
更に、条件等色指数を測定し、表6、表7に示す。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
実施例1では6種類の染料を用い、実施例2では5種類の染料を用い、実施例3ではカーボンを含む6種類の着色剤を用いた。そして実施例1、2、3では、第一~第五の各着色剤をそれぞれ含んでおり、減法混色を行った。
この結果、420nm以上、700nm以下の波長範囲において10nmの波長間隔で測定された各分光透過率が、それぞれ、420nm以上、700nm以下の波長範囲における平均分光透過率から±5%以内にあり、C*が1.0以下であり、各種の条件等色指数が1.5以下であり、L*a*b*表色系測定におけるa*値が-0.5以上、0.5以下であり、b*値が-0.5以上~0.5以下である。
【0069】
一方、比較例1は、メタメリズムが少なくなるように減法混色された染料4色の調色配合品である。この場合、420nm以上、700nm以下の波長範囲において10nmの波長間隔で測定された分光透過率の一部が、平均分光透過率から±5%の範囲内から外れており、かつ二種類の条件等色指数が1.5を超えており、メタメリズムがあった。
比較例2は、最大吸収波長の波長範囲が異なる染料4色の調色配合品である。この場合、420nm以上、700nm以下の波長範囲において10nmの波長間隔で測定された分光透過率の一部が、平均分光透過率から±5%の範囲内から外れており、かつ多くの条件等色指数が1.5を超えており、メタメリズムが観察された。
【0070】
比較例3は、D65光源10度視野でのみa*b*の絶対値が小さくなるよう調色された、染料3色の調色配合品である。この場合、420nm以上、700nm以下の波長範囲において10nmの波長間隔で測定された分光透過率の一部が、平均分光透過率から±5%の範囲内から外れており、かつ多くの条件等色指数が1.5を超えており、メタメリズムが観察された。
比較例4は、一般的なカーボンブラック顔料にて明度を近似させたものである。この場合には、420nm以上、700nm以下の波長範囲において10nmの波長間隔で測定された分光透過率の一部が、平均分光透過率から±5%の範囲内から外れており、かつ多くの条件等色指数が1.5を超えており、メタメリズムが観察された。
【0071】
比較例5は、ペリレンブラックを用いて明度を低下させた例であり、また比較例6、7は、市販の黒染料にて明度を低下させた例である。この場合には、420nm以上、700nm以下の波長範囲において10nmの波長間隔で測定された分光透過率の一部が、平均分光透過率から±5%の範囲内から外れており、かつ多くの条件等色指数が1.5を超えており、メタメリズムが観察された。
【0072】
(実験B)
実験Aと同様に、各配合の樹脂成形品を作製し、分光透過率、L*a*b*表色系測定におけるa*値、b*値、C*、および各条件等色指数を測定した。
【0073】
具体的には、表8に示す各配合例の着色剤を、PET-G樹脂と混合し、1オンス縦型射出成型機を用いてヒータ温度250℃にてインジェクション成形し、厚さ2.0mmの樹脂成形品を作製した。
【0074】
また、各例の樹脂成形品について、コニカミノルタ製CM-3600Aにて透過測定したD65光源10度視野でのL*a*b*C*を、表9に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
更に、各樹脂成形品の分光透過率グラフを
図12、
図13に示す。
ただし、
図12、
図13において、実線は各波長点における分光透過率を示している。実線の上側の点線は、各測定波長点における分光透過率が平均分光透過率+5.0%であることを示す。実線の下側の点線は、各測定波長点における分光透過率が平均分光透過率-5.0%であることを示す。
【0078】
更に、各例の樹脂成形品について、420nm~700nmにおいて、分光透過率の最大値と平均透過率との差、および分光透過率の最小値と平均透過率との差を、表10に示す。
更に、各条件等色指数を測定し、表11に示す。
【0079】
【0080】
【0081】
実施例4では、7種類の染料を用いた。そして実施例4では、第一~第五の各着色剤をそれぞれ含んでおり、減法混色を行った。
この結果、420nm以上、700nm以下の波長範囲において10nmの波長間隔で測定された各分光透過率が、それぞれ、420nm以上、700nm以下の波長範囲における平均分光透過率から±5%以内にあり、C*が1.0以下であり、各種の条件等色指数が1.5以下であり、L*a*b*表色系測定におけるa*値が-0.5以上、0.5以下であり、b*値が-0.5以上~0.5以下である。
【0082】
比較例8は、D65光源10度視野でのみa*b*の絶対値が小さくなるよう調色された染料3色の調色配合品である。この場合、420nm以上、700nm以下の波長範囲において10nmの波長間隔で測定された分光透過率の一部が、平均分光透過率から±5%の範囲内から外れており、多くの条件等色指数が1.5を超えていた。
【0083】
比較例9は、一般的なカーボンブラック顔料にて明度のみ近似させたものである。この場合、420nm以上、700nm以下の波長範囲において10nmの波長間隔で測定された分光透過率の一部が、平均分光透過率から±5%の範囲内から外れており、2つの条件等色指数が1.5を超えており、かつa*、b*が高くなった。
【0084】
比較例10は、市販の黒染料にて明度のみ近似させたものである。この場合、420nm以上、700nm以下の波長範囲において10nmの波長間隔で測定された分光透過率の一部が、平均分光透過率から±5%の範囲内から外れており、多くの条件等色指数が1.5を超えており、かつa*、b*が高くなった。
【0085】
以上の実施例から明らかなように、平坦な分光透過率を持つ本発明実施例の樹脂成形品は、各条件等色指数も小さく、光源による色の変化が抑制されていることがわかる。
【要約】 (修正有)
【課題】樹脂成形品において、濃度や厚みへの依存性が低く、黒色の染顔料単独では困難である、分光反射率、分光透過率共に均一となる無彩色を得ることであり、メタメリズムを抑制する。
【解決手段】樹脂成形品は、420nm以上、450nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第一の着色剤、450nm超,500nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第二の着色剤、500nm超、570nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第三の着色剤、570nm超、650nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第四の着色剤および650nm超、700nm以下の波長範囲に最大吸収波長を有する第五の着色剤を含有する。第一~第五の着色剤の減法混色によって着色し、D
65光源10度視野での明度L
*が45~55、C
*が1.0以下である。
【選択図】
図1