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特許7490167低速から高速の引き込みのための変換可能リビングヒンジを有するステント送達カテーテル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】低速から高速の引き込みのための変換可能リビングヒンジを有するステント送達カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20240520BHJP
【FI】
A61F2/966
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021181797
(22)【出願日】2021-11-08
(62)【分割の表示】P 2019565369の分割
【原出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2022028754
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】62/558,336
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523196644
【氏名又は名称】コーディス ユーエス コープ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ハルバート、 フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ギル、 マット
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0150829(US,A1)
【文献】米国特許第05601568(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステント送達システム(10)であって、
ステント(200)と、
内側シャフト(80)に結合されたカテーテル先端(90)と、
外側シース(108)と、
第1端から第2端へと長手軸に沿って延びるハウジング(100)であって、前記ハウジング(100)の外部面に前記長手軸に沿ったスロット(101)を画定するハウジング(100)と、
前記ハウジング(100)に当接する第1アーム(106a)であって、前記スロット(101)を貫通する一部分を有する第1アーム(106a)と、
リビングヒンジ(104)を介して前記第1アームに接続された第2アーム(106b)であって、アクチュエータ部材(102)を有する第2アーム(106b)と
を含み、
前記内側シャフト(80)と前記外側シース(108)との間には前記ステント(200)が配置され、
前記内側シャフト(80)及び前記外側シース(108)は遠位端から近位端へと延び、
前記内側シャフト(80)が前記カテーテル先端(90)及び前記ハウジング(100)の双方に対して実質的に固定された位置に維持されるように前記内側シャフト(80)の遠位端が前記カテーテル先端(90)に固定結合されて前記内側シャフト(80)の近位端が前記ハウジング(100)に固定結合され、
前記第2アーム(106b)は、ピボットマウント(120)を介して前記外側シース(108)に枢動可能に結合され、
前記外側シース(108)は、前記ステント(200)を展開するべく第1進行範囲及び第2進行範囲にわたって並進し、
前記外側シース(108)は、前記第1アーム(106a)及び第2アーム(106b)が前記リビングヒンジ(104)まわりに枢動するにつれて前記長手軸に沿って前記第1進行範囲にわたって並進するべく構成され、
前記外側シース(108)は、前記第1アーム(106a)及び第2アーム(106b)が実質的にリビングヒンジ(104)と同一直線上になるときに前記長手軸に沿って前記第2進行範囲にわたって並進するべく構成される、ステント送達システム。
【請求項2】
ステント送達システム(10)であって、
ステント(200)と、
第1端から第2端へと長手軸に沿って延びるハウジング(100)であって、前記ハウジング(100)の外部面に前記長手軸に沿ったスロット(101)を画定するハウジング(100)と、
前記長手軸に沿って動くように構成された外側シース(108)と、
前記ハウジング(100)に当接する第1アーム(106a)であって、前記スロット(101)を貫通する一部分を有する第1アーム(106a)と、
リビングヒンジ(104)を介して前記第1アーム(106a)に接続された第2アーム(106b)であって、アクチュエータ部材(102)を有する第2アーム(106b)と
を含み、
前記第2アーム(106b)は、ピボットマウント(120)を介して前記外側シース(108)に枢動可能に結合され、
前記外側シース(108)は、前記ステント(200)を展開するべく第1進行範囲及び第2進行範囲にわたって並進し、
前記外側シース(108)は、前記第1アーム(106a)及び第2アーム(106b)が前記リビングヒンジ(104)まわりに枢動するにつれて前記長手軸に沿って前記第1進行範囲にわたって並進するべく構成され、
前記外側シース(108)は、前記第1アーム(106a)及び第2アーム(106b)が実質的にリビングヒンジ(104)と同一直線上になるときに前記長手軸に沿って前記第2進行範囲にわたって並進するべく構成される、ステント送達システム。
【請求項3】
前記第1アーム(106a)は、前記ハウジング(100)の第1端に近接する内部壁(107)に当接することによって前記ハウジング(100)の前記内部壁(107)に対して前記第1アーム(106a)の遠位方向の動きが制限される、請求項1又は2のステント送達システム。
【請求項4】
前記ピボットマウント(120)は、前記長手軸に沿って前記スロット(101)において並進する、請求項1又は2のステント送達システム。
【請求項5】
前記ハウジング(100)の第2端においてルアーポート(110)が前記外側シース(108)に結合される、請求項1又は2のステント送達システム。
【請求項6】
前記アクチュエータ部材(102)は、前記第1進行範囲にわたって前記長手軸に対して直交方向に動くように構成される、請求項1又は2のステント送達システム。
【請求項7】
前記アクチュエータ部材(102)は、所与量の前記アクチュエータ部材(102)の動きに対し、前記第1進行範囲にわたる前記外側シース(108)の並進の方が前記第2進行範囲よりも少なくなるように構成される、請求項のステント送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張及び関連出願
本願は、2017年9月13日に出願された米国仮特許出願第62/558,336号
の米国特許法セクション119又はパリ条約による利益を主張し、その内容全体がここに
参照により、ここに完全に記載されているかのように組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
様々な身体血管の疾患を処置するべく経皮的に送達される様々な血管内人工器官を用い
ることが周知である。このようなタイプの人工器官は一般に、「ステント」と称される。
ステント(カバー付きステント又はステントグラフトを含む)は、ステンレス鋼、コバル
トクロム、ニチノール又は生分解性材料のような生体適合性材料の、一般に長手方向の管
状デバイスである。この管状デバイスは、中に孔又はスロットが切り込まれて可撓性フレ
ームワークを画定し、その結果、バルーンカテーテル等により径方向に拡張し、又は代替
的に、生体血管内の材料の形状記憶特性ゆえに自己拡張することができる。ステントは通
常、それぞれが円筒状フレームワークによって画定される一連のフープとして構成される
。フレームワークは通常、一連の支柱の、各支柱ペア間に頂点を有する交互シーケンスで
あり、隣接するフープの頂点を向く一つのフープの頂点が一緒に接続されるように構成さ
れる。これらの支柱は動くことにより、ステントに圧縮又は「圧着」を許容し、小さな外
径となるように構成される。その結果、支柱を送達システムの内側に取り付けることがで
きる。
【0003】
送達システムは、ステントを処置のための所望箇所に運び、その後所定位置に展開する
ように使用される。そのようなステントの多くは、収容、保護、格納、及び、カテーテル
システム内側からの最終的な送達を目的として、小さな初期サイズまで弾性的に圧縮され
る。展開時、ステントは、大きな展開サイズまで弾性的に自己拡張する。
【0004】
この場合は自己拡張ステントのための、送達カテーテルシステムの成功例は、「自己拡
張ステントのための送達装置」との名称の2000年2月1日に発行された特許文献1に
記載される。この特許の開示は、本願に参照してより組み入れられ、一般的に、特許文献
1の図10からの代表図面に示される可撓性カテーテルシステムを開示する。これは、同
軸に配列された内側及び外側カテーテル部材を含み、その部材はそれぞれが、近位端に固
定されたハブを有する。外側シースは、遠位端及び近位端を有する細長い管状部材として
特許文献1に記載される。これは、外側ポリマー層、内側ポリマー層、及びこれらの間の
編組補強層からなる。内側シャフトは、特許文献1において、外側シース内に同軸に位置
決めされるように記載され、一般に遠位方向に拡張して外側シースの遠位端を超える可撓
性先細遠位端を有する。内側シャフト部材はまた、外側シースの遠位端よりも近位に配置
されたストッパを含むように示される。自己拡張ステントが外側シース内に配置され、内
側シャフト部材上のストッパと外側シースの遠位端との間に位置決めされる。ステントを
展開するべく、内側シャフト部材が一定位置に保持されたまま、外側シースが医師によっ
て近位方向に引き込まれる。
【0005】
異なるタイプの周知の自己拡張ステントの追加例は、特許文献2及び3に示されている
【0006】
動作時、これらの周知のステント送達システムは一般に、患者の身体内を、所望の血管
経路又は他の身体通路に沿って、カテーテルシステム内のステントが所望の処置箇所に位
置決めされるまで進められる。医師は、狭窄に対するステント及びカテーテルシステムコ
ンポーネントの相対位置を、ビデオX線蛍光透視画面において見ている間、固定位置にお
いて内側シャフト部材に取り付けられた近位ハブを一方の手で保持するのと同時に、他方
の手で外側管状シースに取り付けられた近位ハブを徐々に引き抜く。
【0007】
いくつかの理由により、この展開操作には、ある程度の繊細なスキルが必要となり得る
。例えば、こうした理由の中には、所望の処置箇所における動的な血流がある。これは、
処置対象の病変又は狭窄の存在により、さらに乱され得る。他の要因は、外側シースが引
き込まれるにつれてステントが次第に弾性拡張することである。こうして次第に拡張する
ことは、逆の「すいかの種」現象が生じ得る機会を示す。この逆のすいかの種効果により
、弾性ステントには、外側シースを近位方向に、当該シースが漸次引き込まれるにつれて
変わる傾向を有する力によって押し戻される傾向が引き起こされる。
【0008】
その結果、医師は、2つの近位ハブを固有の相対位置で正確に保持する必要があり、こ
の拡張力に逆らって当該ハブを保持しながら、解剖学的構造物と接触するまでステントを
極めて正確に位置決めしようとしなければならない。展開されたステントの位置決めに影
響を与える可能性があることの一つは、内側シャフトを所望位置に静止させるように保持
するのが好ましいことである。内側シャフトハブを保持する医師の手が、展開中に不注意
に動くと、ステントは、最適でない位置に展開され得る。
【0009】
他の可能な因子は、内側及び外側のカテーテルシャフト部材が、任意の他の細長い物体
と同様、無限のコラム強さを有しないということである。これにより、各近位ハブの位置
及び動きが、内側及び外側のシャフト部材の各端の位置及び動きとは異なる機会が示され
得る。さらに他の因子は、ステントの位置を、ステントの拡張部分の位置が身体経路の側
壁に接触するまで調整し得ることである。それゆえ、ステントの位置は、ステントの位置
が解剖学的構造物に接触する直前となるまでずっと慎重に調整されるのが好ましい。
【0010】
一対の独立したハブを有するもの、すなわち内側シャフト部材及び外側シャフト部材そ
れぞれに一つのハブを有するもののような、いくつかの周知のカテーテルシステムは、2
つの手の操作を要求する。他の周知のカテーテルシステムは、単一の展開モードによるピ
ストル及び引き金グリップを含む。これは、関連ステントを展開させるべく単一の引き金
を引っ張ることに関与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第6,019,778号明細書
【文献】米国特許第4,580,568号明細書
【文献】米国特許第4,732,152号明細書
【発明の概要】
【0012】
出願人は、カテーテル先端に結合されたハウジングの形態にあるステント送達システム
を考え出した。カテーテル先端は、内側シャフト及び外側シースに結合され、ステントは
、内側シャフトと外側シースとの間に配置される。内側シャフト及び外側シースは、遠位
端から近位端まで延びる。ハウジングが、第1端から第2端まで長手軸に沿って延びる。
ハウジングは、当該ハウジングにおいて長手軸に沿ったスロットを画定する。第1アーム
がハウジングに結合され、第1アームの一部分がスロットに配置される。第2アームがリ
ビングヒンジを介して第1アームに接続される。第2アームは、外側シースに結合される
。第2アームの一部分がスロットに配置される。アクチュエータ部材が第2アームに結合
される。
【0013】
自己拡張ステントを身体脈管における選択箇所へと送達する方法を、カテーテル先端に
配置されて送達システムの遠位端において内側シャフトと外側シースとの間に配置された
ステントを、身体脈管における選択箇所へと動かすことと、アクチュエータを長手軸に対
する直交方向に押し下げて外側シースを、長手軸に沿った第1進行範囲にわたって並進さ
せてステントの一部分を露出させることと、アクチュエータを長手軸に沿って摺動させて
外側シースを、長手軸に沿った第2進行範囲にわたって並進させてステントを完全に展開
させることとによって達成することができる。
【0014】
上述した実施形態のそれぞれに対し、各実施形態との様々な置換で以下の特徴を利用す
ることができる。例えば、第1アームが、ハウジングの第1端に近接する内壁に結合され
る。第2アームが、外側シースに接続されたピボットマウントに結合される。ピボットマ
ウントは、長手軸に沿ってスロットにおいて並進するように制限される。ルアーポートが
、ハウジングの第2端において外側シースに結合される。外側シースは、第1アーム及び
第2アームがリビングヒンジまわりに枢動するにつれて長手軸に沿って第1進行範囲にわ
たって並進するべく構成され、外側シースは、第1アーム及び第2アームが実質的にリビ
ングヒンジと同一直線上になるときに長手軸に沿って第2進行範囲にわたって並進するべ
く構成される。アクチュエータ部材は、第1進行範囲にわたって長手軸に対して直交方向
に動くように構成される。アクチュエータ部材は、所与量のアクチュエータ部材の動きに
対し、第1進行範囲にわたる外側シースの並進の方が第2進行範囲よりも少なくなるよう
に構成される。
【0015】
これら及び他の実施形態、特徴及び利点は、本発明の典型的な実施形態の以下の詳細な
説明を、最初に簡潔に記載される添付図面とともに参照してとらえるときに、当業者にと
って明らかとなる。同様に、これらの実施形態、特徴及び利点が、ここ又は追加の特許出
願において請求され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
ここに組み入れられて本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の現在の好ましい
実施形態を示し、上述した一般的な説明及び以下の詳細な説明とともに、本発明の特徴を
説明する役割を果たす(ここで、同じ番号は同じ要素を表す)。
【0017】
図1】一実施形態に係るハンドルの斜視図を示す。
図2A-2C】図1におけるハンドルの内部の動作を示す。
図3A-3D】図1におけるハンドルのさらに他の置換を示す。
図3E図1におけるハンドルのさらに他の置換を示す。
図4】一実施形態に係る医療デバイス送達システムの模式的な図示である。
図5A】一実施形態に係るシステムの操作を示す。
図5B】一実施形態に係るシステムの操作を示す。
図5C】一実施形態に係るシステムの操作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読むべきである。ここで、異なる図面における同
じ要素には同一の番号が付される。必ずしも縮尺通りではない図面は、選択された実施形
態を描いているが、本発明の範囲を制限することを意図しない。詳細な説明は、本発明の
原理を例示を介して説明し、制限として説明するわけではない。本明細書が、当業者にと
っての本発明の実施及び使用を可能にすることは明らかであり、本発明のいくつかの実施
形態、適用例、変形例、代替例及び使用例を記載する。これらは、本発明を実施する最良
のモードであると現在考えられているものを含む。
【0019】
ここで使用されるように、任意の数値又は数値範囲に対する用語「約」、「ほぼ」又は
「近似的に」は、コンポーネントの一部又は集合がここに記載されるような意図された目
的のために機能することが許容される適切な寸法公差を示す。詳しくは、「約」、「ほぼ
」又は「近似的に」は、記載値の10%の値範囲を言及し得る。例えば、「約90%」は
、81%から99%までの値範囲を言及し得る。加えて、ここに使用されるように、用語
「患者」、「ホスト」、「ユーザ」及び「対象」は、任意の人間又は動物を言及し、シス
テム又は方法を人間用途に制限する意図ではない。ただし、人間患者における本明の使用
は、好ましい一実施形態を代表する。用語「ステント」は、被覆なしのフレームワーク、
及び適切な材料により被覆されたもの(例えばステントグラフト)を包含することが意図
される。用語「近位」は、操作者に近い箇所を示すべく使用され、「遠位」は、操作者又
はヘルスケア提供者から遠くに離れた箇所を示すべく使用される。
【0020】
ここで図面を参照すると、図全体を通して同じ番号が同じ要素を示しており、図1には
、ハンドルの形態の送達システム10の一部分が示される。ハンドルは、カテーテル先端
90(図5A)に結合されたハウジング100を画定する。カテーテル先端90は内側シ
ャフト80及び外側シース108に結合され、ステント200が、内側シャフト80と外
側シース108との間に配置される。内側シャフト80及び外側シース108は、遠位端
から近位端へと延びる。ハウジング100は、長手軸L-Lに沿って第1端から第2端へ
と延びる。ハウジング100は、当該ハウジングに長手軸L-Lに沿ったスロット101
を画定する。第1アームl06aがハウジング100に結合され、第1アーム106aの
一部分がスロット101に配置される。第2アーム106bが、リビングヒンジ104を
介して第1アーム106aに接続される。第2アーム106bは外側シース108に結合
される(図2A)。第2アーム106bは、一部分がスロット101に配置される。アク
チュエータ部材102が、第2アーム106bに結合される。
【0021】
図2Aに示されるように、第1アーム106aは、ハウジング100において第1アー
ム106aが内部当接部107に結合され又は内部当接部107に対して押圧されるべく
、リビングヒンジ104の固有弾性に依存する。代替的に、第1アーム106aは、ハウ
ジング100に第1アーム106aをさらにしっかりと保持するべく、ピボットピンを介
して枢動可能に取り付けられる。
【0022】
他方、第2アーム106bは、外側シース108に接続されたピボットマウント120
に結合される。その結果、ハウジング100内のピボットマウント120の相対的な長手
方向の動きが、外側シース108の対応する長手方向の動きをもたらす一方、内側シャフ
ト80が、ハウジング100との適切な結合によって、実質的に固定された位置に維持さ
れるように拘束される。わかることだが、外側シース108の、内側シャフト80よりも
近位に向かう長手方向の動きにより、以下にさらに詳述されるように、ステント200(
図5A及び5B)が露出及び展開される。適切なマウントの他の形態も、かかるマウント
がアーム106bの回転を許容する限り、利用することができる。図2Aに示されるよう
に、レール105がスロット101に設けられることにより、アーム106bが、ハンド
ル100から外されることなく軸L-Lに沿って並進するべく制限されることが保証され
る。
【0023】
ガイドワイヤ又は他の付属品の身体脈管300へのフラッシング又は挿入を目的として
、ハウジング100の近位端にルアーポート110が設けられる。ポート110は、スリ
ップ結合を含む適切な結合により外側シース108に結合され、外側シース108を、ル
アーポート110の小さな管状部材(図示せず)にわたって摺動させることができる。
【0024】
図2A及び2Bに示されるように、外側シース108は、第1アーム106a及び第2
アーム106bがリビングヒンジ104まわりに枢動するにつれて、第1進行範囲にわた
って長手軸L-Lに沿って並進することができる。これは、リビングヒンジ104が平ら
にされてもアーム106a及び106bを強制的に外側に延ばすリビングヒンジ104に
より達成されるロストモーション効果に起因する。一実施形態において、第1進行範囲は
、近似的に15~20mmである。ただし、この距離は、意図された用途に応じて任意の
所望値に調整することができる。第1進行範囲にわたる外側シース108の長手方向の動
きは、リビングヒンジ104が平らにされることによりもたらされる。次に、図2B及び
2Cに示されるように、ひとたびアーム106a及びl06bがリビングヒンジ104と
ほぼ同一直線上になると、当該外側シースは今度は、実質的に同一直線構成にあるリビン
グヒンジ104がハウジング100内で摺動するにつれて、第2進行範囲に沿って並進す
ることができる。一般に、第2進行範囲は、第1進行範囲よりも大きく、ステント200
又は他の医療デバイスの完全な展開を許容するのに十分な距離となり得る。
【0025】
図4は、図1~3において前述した様々なコンポーネントを利用する一実施形態を模式
的に示す。リビングヒンジ104は、ポリマー材料から作られるのが好ましく、適切な結
合部材によりアーム106a及びl06bに結合される。同様に、リビングヒンジ104
は、第1アーム106a及び第2アーム106bの統合部分としてよい。他の材料も、か
かる材料が2つのアーム間の接続を許容する限り、利用することができる。
【0026】
操作において、医療デバイス送達システム10の遠位端が、患者の身体経路300を介
して患者の中に向けられるのが好ましい。医療デバイス送達システム10は、処置対象の
身体脈管300における所望の箇所に遠位先端90が存在するようになるまで、ガイドワ
イヤ(図示せず)に沿って追従し、又は前もって配置されたガイドカテーテル(図示せず
)を通るように進行するのが好ましい。図5Aに示されるように、遠位先端90は、病変
又は狭窄302の箇所を横切るのが好ましい。デバイスが初期位置に適切に存在すると(
図5A)、医師は、ハンドル(簡潔のため示さないし、すべての実施形態において必要と
いうわけでもない)のロックを解除又は折り外す。ロックは一回のみ解除可能であり、又
は繰り返し係合及び解除することもできる。かかるロック機構は、ステント送達システム
コンポーネントの、包装、滅菌、輸送、保管、取り扱い及び準備中の不注意又は偶発的な
動き又は引き込みに抵抗するのが好ましい。
【0027】
ロックが解除された後、親指アクチュエータ102が下方に押し下げられることにより
図5B)、これらのコンポーネントのロストモーション効果ゆえに外側シース108が
操作者に向かってゆっくりと引き込まれる。親指アクチュエータ102の押し下げは、そ
れに応じて外側シース108の、第1進行範囲にわたる軸L-Lに沿った並進を引き起こ
す。関与する幾何学形状ゆえに、親指アクチュエータ102が軸L-Lに対してほぼ直交
する方向に動くときに、リビングヒンジ104がその同一直線構成となるまで進行する距
離は、この第1進行範囲よりも大きい。機械的利点が、1:1の比率未満だからである。
すなわち、直交方向に押し下げられる親指アクチュエータ102が動く距離は、その第1
進行範囲にわたって外側シース108が動く長手方向距離よりも大きくなる。それに対応
して、これらのコンポーネントの使用により、外側シース108をわずかに引き戻すため
の精密かつ敏感な調整が許容される。この微小な動きにより、この場合は図5Bに示され
るステント200である医療デバイスの小部分が露出される。この構成において、ハンド
ル100は、外側シース108を、内側シャフト80に対して一定位置に保持し、ステン
ト200のさらなる不注意の拡張に抵抗する。その後、医師は、図5Bに示されるように
、所望箇所内の医療デバイス及び送達システムの位置を最適化して当該位置に対する任意
の最終的調整をなす手順の時間及び柔軟性を有する。ステント200のいずれかの部分が
身体経路又は脈管300に接触する前に、さらなる位置調整を抑制し得る態様で、ステム
200の位置をこうして精密に調整することは好ましい。
【0028】
医師は、例えば蛍光透視X線ビデオ画面に現れるような位置決めに満足すると、図5C
に示されるように親指アクチュエータ102を摺動させることにより、今や同一直線上の
リビングヒンジ104をハウジング内で並進させ、外側シース108を第2進行範囲にわ
たってさらに引き抜くことができる。
【0029】
図5Cにおいて、ステント200が血管壁に最初に接触すると、又はステント200が
、その位置を独立して保持できるほど十分に、若しくは任意の所望ポイントにおいて拡張
されると、医師は引き続き、親指アクチュエータを引き戻す。外側シース108を(第2
進行範囲にわたって)引き戻すこの第2モードにより、医師が望むどのような速度であっ
ても、相対的に大きなスケールのかつ迅速な動きが許容され、医療デバイスを、完全に露
出させることによって迅速に展開することができる。特に、リビングヒンジ104が同一
直線上に存在し、軸L-Lに対する直交方向に押し下げられるのではなく長手方向に摺動
するとき、機械的利点は1:1となる。親指アクチュエータ102の動きが、外側シース
108の動きに直接変換されるからである。
【0030】
よって、第1進行範囲及び第2進行範囲に関連付けられる異なる機械的利点により、外
側シース108を、医療デバイスの精密な露出及び初期展開を許容する第1移動速度で(
第1進行範囲にわたって)動かすこと、及び、ひとたび医師がその位置に満足した場合に
医療デバイスの迅速な展開を完了させるべく第2の、大きな移動速度で(第2進行範囲に
わたって)動かすことが容易となる。すなわち、親指アクチュエータ102の所与量の(
直交方向の)動きにより、外側シース108の第1進行範囲にわたる並進が、第2進行範
囲にわたる同じ量の(直交方向の)動きよりも小さくなる。親指アクチュエータ102の
相対的に小さな動きが第2進行範囲にわたって必要とされるので、それに対応して医師は
、所望により外側シース108を迅速に引き抜くことができる。
【0031】
本発明のコンポーネントのための様々な材料を選択することができる。その材料は、所
望の性能特性を有する任意の材料を含む。図面に示される特定の実施形態において、内側
シャフト部材及び外側シャフト部材と、張力緩和遠位先端とを、様々なタイプのポリマー
を含む任意の生分解性かつ適切な可撓性ではあるが十分に強度のある材料から作ることが
できる。かかる材料のための可能な選択肢は、ナイロン又はポリアミド、ポリイミド、ポ
リエチレン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル等を含む。代替例において、内
側/外側シャフト部材の何らかの部分又はすべてを、例えばステンレス鋼又はニチノール
ハイポチューブを含む可撓性金属から形成することができる。ステント200は好ましく
は、例えばステンレス鋼、白金、タングステン等を含む強度があり剛性の任意の生分解性
材料から作られる。本発明のハンドルのコンポーネントは好ましくは、例えば可撓性ポリ
カーボネートを含む、又はいくつかの金属成分でさえも含む強度があり剛性の材料から作
られる。加えて、内側シャフト部材遠位先端には、ガイドワイヤを受容するべく適合され
たスルールーメンが設けられるのが好ましい。
【0032】
もちろん、多くの異なる変形例も本発明の範囲に含まれる。これらの変形例又は代替実
施形態のいくつかは、特許請求の範囲内でのサイズ、材料及び設計の任意の可能な配列を
含む。
【0033】
ここに与えられる開示により、自己拡張ステントを身体脈管内の選択箇所に送達する方
法も利用することができる。方法は、カテーテル先端に隣接して配置されて送達システム
の遠位端において内側シャフトと外側シースとの間に閉じ込められたステントを、身体脈
管内の選択箇所へと動かすことと、アクチュエータを長手軸に対する直交方向に押し下げ
て外側シースを長手軸に沿って第1進行範囲にわたり並進させることと、アクチュエータ
を長手軸に沿って摺動させて外側シースを長手軸に沿って第2進行範囲にわたり並進させ
ることと、アクチュエータを長手軸に対する直交方向に押し下げて、ステントのポートを
露出させるべく外側シースを第1進行範囲にわたり長手軸に沿って並進させることと、ア
クチュエータを長手軸に沿って摺動させて、ステントを完全に展開させるべく外側シース
を第2進行範囲にわたり長手軸に沿って並進させることとによって達成することができる
。外側シースは、所与量のアクチュエータの動きに対して第1進行範囲にわたる長手軸沿
いの並進が相対的に少なく、所与量のアクチュエータの動きに対して第2進行範囲にわた
る長手軸沿いの並進が相対的に大きくなる。外側シースは、ステント展開を容易にするべ
く所望される第1進行範囲と比べて、第2進行範囲にわたり相対的に高速で並進される。
【0034】
本発明が特定の変形例及び例示図面により記載されてきたが、当業者には、本発明が、
記載の変形例又は図面に限定されないことが認識される。加えて、上述の方法及びステッ
プが、所定の順序で生じる所定の事象を示すところ、そのような所定のステップを記載の
順序で行う必要はなく、当該ステップが、実施形態を意図される目的で機能させることが
できる限り任意の順序で行われることが意図される。したがって、本開示の趣旨内にあり
又は特許請求の範囲に見出される本発明の均等物内にある本発明の変形例が存在する範囲
で、本特許がこれらの変形例もカバーすることが意図される。
図1
図2A-2C】
図3A-3D】
図3E
図4
図5A
図5B
図5C