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特許7490171サプレッサを自己調節するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】サプレッサを自己調節するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/02 20060101AFI20240520BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20240520BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
G01N30/02 E
G01N30/26 A
G01N30/88 H
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022204190
(22)【出願日】2022-12-21
(65)【公開番号】P2023092525
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】17/558,464
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591025358
【氏名又は名称】ダイオネックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】アキンデ エフ カジョ
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-535618(JP,A)
【文献】特表2004-522970(JP,A)
【文献】国際公開第2000/042426(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/02
G01N 30/14
G01N 30/26
G01N 30/88
G01N 30/96
B01D 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンクロマトグラフィシステムのサプレッサを自己調節するための方法であって、前記方法が、
電源を設定して、オフセット電圧VOSを前記サプレッサに提供するステップと、
前記電源を起動して、前記オフセット電圧VOSに加えて印加電圧波形VAを前記サプレッサに提供するステップと、
中を溶離液が前記サプレッサを通って流れる前記イオンクロマトグラフィシステム上でイオンクロマトグラフィランを開始するステップと、
前記イオンクロマトグラフィラン中に、前記オフセット電圧VOS及び前記印加電圧波形VAに応答する前記サプレッサの電流波形を測定するステップと、
前記オフセット電圧VOSに応答して測定された電流に基づいて、前記サプレッサのサプレッサ状態を決定するステップと、
前記サプレッサ状態に基づいて前記オフセット電圧VOSを調整するステップであって、(a)非抑制状態ではオフセット電圧VOSを増加し、(b)抑制状態ではオフセット電圧VOSを維持する、調整するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記溶離液の濃度が、前記溶離液が前記サプレッサを通って流れるときに時間とともに変化するとき、前記調整するステップが、時間とともに変化した前記溶離液の前記濃度に応答して、経時的に前記オフセット電圧VOSを変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)前記測定された電流波形の減少する高値部分は、前記サプレッサ内の電気キャパシタンス及び抵抗を示し、(b)前記測定された電流波形の一定の高値部分は、前記サプレッサ内の一定の電気抵抗を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記決定するステップにおいて、前記オフセット電圧VOSに応答して測定された電流に基づき、前記測定された電流波形の増加する高値部分は、過剰抑制状態を示し、
前記調整するステップにおいて、前記サプレッサ状態に基づき、前記過剰抑制状態ではオフセット電圧VOSを低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
振動電圧が、電圧振幅A及び電圧周波数Fを有し、前記印加電圧波形VAが、正のパルス及び負のパルスを有する方形波形電圧であり、(a)第1の所定の閾値よりも小さい、前記測定された電流波形の正のパルスの電流勾配(SP)が、非抑制状態を示し、(b)前記第1の所定の閾値よりも大きく、第2の所定の閾値よりも小さい、前記測定された電流波形の前記正のパルスの中性の電流勾配(SP)が、抑制状態を示し、(c)前記第2の所定の閾値よりも大きい、前記測定された電流波形の前記正のパルスの電流勾配(SP)が、過剰抑制状態を示す、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(a)0.1mA/s未満の前記電流勾配SPが、非抑制状態を示し、(b)0.1mA/s~0.3mA/sの前記電流勾配SPが、抑制状態を示し、(c)0.3mA/sよりも大きい前記電流勾配SPが、過剰抑制状態を示す、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(a)-0.05mA/sよりも大きい、前記測定された電流波形の負のパルスの負の勾配SNが、非抑制状態を示し、(b)-0.05よりも小さい、前記測定された電流波形の前記負のパルスの負の勾配SNが、抑制又は過剰抑制状態を示す、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記印加電圧波形VAが、周期Tを有する振動電圧であり、前記測定するステップ、前記決定するステップ、及び前記調整するステップが、周期Tごとに実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記調整するステップが、周期Tごとに調整電圧ΔVだけ前記オフセット電圧VOSを調整する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記調整電圧ΔVが、前記印加電圧波形VAの振幅よりも小さい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記調整電圧ΔVが、前記印加電圧波形VAの振幅の10%未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記調整電圧ΔVが、5mVである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記測定された電流波形の増加する高値部分は、前記サプレッサ内の増加した電気抵抗及び熱効果を示す、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
(a)前記測定された電流波形の減少する高値部分は、前記サプレッサを通って流れる前記溶離液の非抑制状態を示し、(b)前記測定された電流波形の一定の高値部分は、抑制状態を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
液体試料中のイオン種の分離を自己調節するためのシステムであって、
液体試料チャネル、イオン受容チャネル、及び前記液体試料チャネル及びイオン受容チャネル間で正又は負のいずれかの電荷のイオンの通過を可能にしながら、前記液体試料チャネル及びイオン受容チャネル間のバルク液体流をブロックするように構成されたイオン交換膜を含む、イオンクロマトグラフィのサプレッサと、
前記液体試料チャネル及びイオン受容チャネルとそれぞれ電気的に連通している第1及び第2の電極と、
前記第1及び第2の電極を介して前記サプレッサに電位を印加するための電源と、
1つ以上のプロセッサ及びメモリを含む制御ユニットと、を備え、前記1つ以上のプロセッサが、
前記電源を設定して、オフセット電圧VOSを前記サプレッサに提供するステップと、
前記電源を起動して、前記オフセット電圧VOSに加えて、印加電圧波形VAを前記サプレッサに提供するステップと、
溶離液が前記サプレッサを通って流れるイオンクロマトグラフィランを開始するステップと、
前記イオンクロマトグラフィラン中に、前記オフセット電圧VOS及び前記印加電圧波形VAに応答する前記サプレッサの電流波形を測定するステップと、
前記オフセット電圧VOSに応答して測定された電流に基づいて、前記サプレッサのサプレッサ状態を決定するステップと、
前記サプレッサ状態に基づいて前記オフセット電圧VOSを調整するステップであって、(a)非抑制状態ではオフセット電圧VOS増加、(b)抑制状態ではオフセット電圧VOS維持する、調整するステップと、
を実行するように構成されたソフトウェアを走らせる、システム。
【請求項16】
前記システムが、前記サプレッサの上流のクロマトグラフィカラムと、前記サプレッサの下流の電気伝導度検出器と、を更に備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記電源が、前記電位を前記サプレッサに提供する専用電源である、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムが、前記電源及び前記制御ユニットを含む電源モジュールを更に備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
液体試料中のイオン種の分離を自己調節するための装置であって、
電位をイオンクロマトグラフィのサプレッサに印加するように構成された電源であって、前記サプレッサが、液体試料チャネル、イオン受容チャネル、及び前記液体試料チャネル及びイオン受容チャネル間で正又は負のいずれかの電荷のイオンの通過を可能にしながら、前記液体試料チャネル及びイオン受容チャネル間のバルク液体流をブロックするように構成されたイオン交換膜を含む、電源と、
1つ以上のプロセッサ及びメモリを含む制御ユニットと、を備え、前記1つ以上のプロセッサが、
前記電源を設定して、オフセット電圧VOSを前記サプレッサに提供するステップと、
前記電源を起動して、前記オフセット電圧VOSに加えて、印加電圧波形VAを前記サプレッサに提供するステップと、
溶離液が前記サプレッサを通って流れるイオンクロマトグラフィランを開始するステップと、
前記イオンクロマトグラフィラン中に、前記オフセット電圧VOS及び前記印加電圧波形VAに応答する前記サプレッサの電流波形を測定するステップと、
前記オフセット電圧VOSに応答して測定された電流に基づいて、前記サプレッサのサプレッサ状態を決定するステップと、
前記サプレッサ状態に基づいて前記オフセット電圧VOSを調整するステップであって、(a)非抑制状態ではオフセット電圧VOS増加、(b)抑制状態ではオフセット電圧VOS維持する、調整するステップと、を実行するように構成されたソフトウェアを走らせる、装置。
【請求項20】
前記電源が、前記電位を前記サプレッサに提供する専用電源である、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、イオンクロマトグラフィにおけるイオン種の分離に関し、より具体的には、イオンクロマトグラフィ中にサプレッサを自己調節するための方法及びシステムに関する。
【0002】
背景技術
イオンクロマトグラフィは、陰イオン又は陽イオンを含む試料の分析に広く使用されている。また、サプレッサは、分析物を検出できるようにすることによって、イオンクロマトグラフィにおいて助けになる役割を果たす。
【0003】
典型的なイオンクロマトグラフィプロセスは、試料を電気伝導性溶離液の溶液に導入することから始まり、次に溶離液中の試料イオンをクロマトグラフで分離し、溶離液を抑制して試料イオンと反対の溶離液イオンを除去し、試料イオンを検出する。抑制の目的は、溶離液のバックグラウンド電気伝導度を低減し、試料分析物の電気伝導度を増加させ、こうして試料分析物のその後の電気伝導性検出を促進することである。
【0004】
サプレッサは、溶離液を抑制するために使用される。サプレッサは概して、イオン交換膜によって分離された溶離液チャネルと再生液チャネルとを含む。膜は、チャネル間の液体の流れをブロックしながら、イオンがチャネル間を通過することを可能にする。特定の電荷のイオンを、溶離液チャネルを通って流れる溶離液から再生液チャネルを通って流れる再生液へ膜を通過させるサプレッサに電位が印加される。こうして、分析ストリームのバックグラウンドの電気伝導度及びノイズが低減され、一方、分析物の電気伝導度を高め、信号/ノイズ比を効果的に増加させる。
【0005】
現在、ユーザは、様々なパラメータに基づいてサプレッサの電圧及び/又は電流設定を決定しなければならない。このようなパラメータには、所与の溶離液の電解特性、並びにサプレッサを通って流れる溶離液の濃度、及びその流量が含まれる。また、既存のシステムでは、サプレッサは概して、特に様々な濃度の勾配が利用される場合に、定量的抑制を達成するために理論的に予測されたよりも高い電流を必要とする。例えば、現在のシステムは、サプレッサに適用される電流の範囲でユーザに提供し、より低い範囲では溶離液を十分に抑制しない場合、ユーザは電流を増やすようにうながされることがよくある。残念なことに、特に溶離液濃度が高い条件下では、電流が高くなると、概して熱の発生及びより高いバックグラウンドノイズにつながる。
【0006】
上記に照らして、既知のサプレッサ及びイオンクロマトグラフィシステムの上記及び他の欠点を克服する方法及びシステムを有することは有益であろう。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様は、イオンクロマトグラフィシステムのサプレッサを自己調節するための方法を対象とする。本方法は、電源を設定して、オフセット電圧VOSをサプレッサに提供すること、電源を起動して、オフセット電圧VOSに加えて印加電圧波形VAをサプレッサに提供すること、中を溶離液がサプレッサを通って流れるイオンクロマトグラフィシステム上でイオンクロマトグラフィランを開始すること、イオンクロマトグラフィラン中に、オフセット電圧VOS及び印加電圧VAに応答するサプレッサの電流を測定すること、オフセット電圧に応答して測定された電流に基づいて、サプレッサのサプレッサ状態を決定すること、及び/又はサプレッサ状態に基づいてオフセット電圧VOSを調整することであって、(a)非抑制状態ではオフセット電圧VOSが増加し、(b)抑制状態ではオフセット電圧VOSを維持される、調整すること、を含み得る。
【0008】
本発明の別の態様は、液体試料中のイオン種の分離を自己調節するためのシステムを対象とする。本システムは、液体試料チャネル、イオン受容チャネル、及びチャネル間で正又は負のいずれかの電荷のイオンの通過を可能にしながら、液体試料チャネルとイオン受容チャネルとの間でバルク液体流を実質的にブロックするように構成されたイオン交換膜を含むイオンクロマトグラフィサプレッサ、液体試料及びイオン受容チャネルとそれぞれ電気的に連通している第1及び第2の電極、第1及び第2の電極を介してサプレッサに電位を印加するための電源、及び/又は1つ以上のプロセッサ及びメモリを含む制御ユニット、を含み得る。1つ以上のプロセッサは、電源を設定して、オフセット電圧VOSをサプレッサに提供するステップ、電源を起動して、オフセット電圧VOSに加えて、印加電圧VAをサプレッサに提供するステップ、中を溶離液がサプレッサを通って流れるイオンクロマトグラフィランを開始するステップ、イオンクロマトグラフィラン中に、オフセット電圧VOS及び印加電圧VAに応答するサプレッサの電流を測定するステップ、オフセット電圧に応答して測定された電流に基づいて、サプレッサのサプレッサ状態を決定するステップ、及び/又はサプレッサ状態に基づいてオフセット電圧VOSを調整するステップであって、(a)非抑制状態ではオフセット電圧VOSが増加し、(b)抑制状態ではオフセット電圧VOSが維持される、調整するステップ、を実行するように構成されたソフトウェアを走らせる。
【0009】
また、本発明の更なる態様は、液体試料中のイオン種の分離を自己調節するための装置を対象とする。装置は、電位をイオンクロマトグラフィサプレッサに印加するように構成された電源であって、サプレッサは、液体試料チャネル、イオン受容チャネル、及びチャネル間で正又は負のいずれかの電荷のイオンの通過を可能にしながら、液体試料とイオン受容チャネルとの間のバルク液体流を実質的にブロックするように構成されたイオン交換膜を含む、電源、及び/又は1つ以上のプロセッサ及びメモリを含む制御ユニット、を含む。1つ以上のプロセッサは、電源を設定して、オフセット電圧VOSをサプレッサに提供するステップ、電源を起動して、オフセット電圧VOSに加えて、印加電圧波形VAをサプレッサに提供するステップ、中を溶離液がサプレッサを通って流れるイオンクロマトグラフィランを開始するステップ、イオンクロマトグラフィラン中に、オフセット電圧VOS及び印加電圧VAに応答するサプレッサの電流を測定するステップ、オフセット電圧に応答して測定された電流に基づいて、サプレッサのサプレッサ状態を決定するステップ、及び/又はサプレッサ状態に基づいてオフセット電圧VOSを調整するステップであって、(a)非抑制状態ではオフセット電圧VOSが増加し、(b)抑制状態ではオフセット電圧VOSが維持される、調整するステップ、を実行するように構成されたソフトウェアを走らせる。
【0010】
本発明の実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。
【0011】
溶離液の濃度が、溶離液がサプレッサを通って流れるときに時間とともに変化され得、調整するステップが、時間とともに変化した溶離液の濃度に応答して、経時的にオフセット電圧VOSを変化させ得る。
【0012】
減少する上部電流が、サプレッサ内の電気キャパシタンス及び抵抗を示し得、実質的に一定の電流が、サプレッサ内の実質的に一定の電気抵抗を示し得る。
【0013】
決定するステップはまた、オフセット電圧に応答して測定された電流に基づき得、増加する上部電流は、過剰抑制状態を示す。調整するステップはまた、サプレッサ状態に基づき得、オフセット電圧VOSは、過抑制状態に対して低下する。
【0014】
振動電圧は、電圧振幅A及び電圧周波数Fを有し得、印加電圧VAは、正のパルス幅及び負のパルス幅を有する方形波形電圧であり得る。第1の所定の閾値よりも小さい正のパルス幅の電流勾配(SP)は、非抑制状態を示し得る。第1の所定の閾値よりも大きく、第2の所定の閾値よりも小さい正のパルス幅の実質的に中性の電流勾配(SP)は、抑制状態を示し得る。第2の所定の閾値よりも大きい正のパルス幅の電流勾配(SP)は、過剰抑制状態を示し得る。
【0015】
印加電圧VAは、正のパルス幅及び負のパルス幅を有する方形波形電圧であり得、正のパルス幅は、勾配SPを有する。0.1mA/s未満の勾配SPは、非抑制状態を示し得、0.1mA/s~0.3mA/sの勾配SPは、抑制状態を示し得、0.3mA/sよりも大きい勾配SPは、過剰抑制状態を示し得る。
【0016】
印加電圧VAは、正のパルス幅及び負のパルス幅を有する方形波形電圧であり得、負のパルス幅は、勾配SNを有する。-0.05mA/sよりも大きい勾配SNは、非抑制状態を示し得、-0.05よりも小さい勾配SNは、抑制又は過剰抑制状態を示し得る。
【0017】
印加電圧VAは、周期Tを有する振動電圧であり得、測定するステップ、決定するステップ、及び調整するステップは、周期Tごとに実行される。
【0018】
調整するステップは、周期Tごとに調整電圧ΔVだけオフセット電圧VOSを調整し得る。調整電圧ΔVは、印加電圧VA未満であり得る。調整電圧ΔVは、印加電圧VAの10%未満であり得る。調整電圧ΔVは、5mVであり得る。
【0019】
増加する上部電流は、サプレッサ内の増加した電気抵抗及び熱効果を示し得る。また、(a)減少する上部電流は、サプレッサを通って流れる溶離液の非抑制状態を示し得、(b)実質的に一定の上部電流は、抑制状態を示し得る。
【0020】
システムは、サプレッサの上流のクロマトグラフィカラム及びサプレッサの下流の電気伝導度検出器を更に含み得る。
【0021】
電源は、電位をサプレッサに提供する専用電源であり得る。システムは、電源及び制御ユニットを含む電源モジュールを更に含み得る。電源は、電位をサプレッサのみに提供する専用電源であり得る。
【0022】
本発明の方法及びシステムは、本明細書に組み込まれる添付の図面、及び以下の詳細な説明から明らかとなる、又はより詳細に記載される他の特徴及び利点を有し、これらは共に、本発明の特定の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の様々な態様による、イオンクロマトグラフィサプレッサを自己調節するための例示的なシステムの概略図である。
図2】本発明の様々な態様による、イオンクロマトグラフィサプレッサを自己調節するための例示的な方法を示すブロック図である。
図3】インピーダンスの3つの形態の間、すなわち抵抗、キャパシタンス、及びインダクタンスの間の電圧信号と電流信号との間の例示的な相関を示す。
図4】本発明の様々な態様による、サプレッサに印加される例示的な電圧波形を示す。
図5】本発明の様々な態様による、サプレッサインピーダンスの例示的な評価を示す。
図6】本発明の様々な態様による、イオンクロマトグラフィサプレッサを自己調節するための別の例示的な方法を示すブロック図である。
図7】本発明の様々な態様による、サプレッサに印加される電圧信号に応答するサプレッサの例示的な電流応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、本発明の様々な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示し、以下に説明する。本発明は、例示的な実施形態に関連して説明されるが、本説明は、本発明をそれらの例示的な実施形態に限定することを意図していないことを理解されたい。それどころか、本発明は、例示的な実施形態だけでなく、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内に含まれ得る、様々な代替物、修正物、均等物、及び他の実施形態も包含することを意図している。
【0025】
クロマトグラフィは、固定相対移動相に対する分析物の明確な親和性に基づいて、クロマトグラフィカラムを通過しながら試料混合物内の分析物を分離する分離技術である。イオンクロマトグラフィ(IC)では、分離はイオンに固有である。分離に続いて、分析物はイオンの電気的特性により電気伝導度検出器によって検出され得る。これは、分離された分析物が溶離液の海によって包まれ、溶離液も電気伝導性であるため、溶離する分析物の電気伝導性検出が不可能になる可能性があるため、本質的に課題を提示する。この課題は、分離カラムと電気伝導度検出器の間にサプレッサを利用することで解決され得、このサプレッサは、溶離液を水に変えることで溶離液のバックグラウンド電気伝導度を除去し、分析物の信号を効果的に高める。
【0026】
陰イオン分析と陽イオン分析とではメカニズムがわずかに異なる。陰イオンサプレッサの場合、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのサプレッサを通って流れる溶離液からナトリウム又はカリウムイオンがそれぞれ除去され、残りの水酸化物イオンがヒドロニウムイオンと結合して水を形成し、この水は非常に低い電気伝導度を有し、こうして溶離液のバックグラウンド信号を減らす。分析物の対陽イオンはヒドロニウムに置き換えられ、こうして分析物を塩の形から酸の形に変化させ、それらの信号を増強する。陽イオンサプレッサの場合、メタスルホン酸及び硫酸のサプレッサを通って流れる溶離液からメタスルフネート及びスルフネートがそれぞれ除去され、残りのヒドロニウムイオンが水酸化物イオンと結合して水を形成し、この水は溶離液のバックグラウンド信号を再び減らす。同様に、分析物の対陰イオンは水酸化物に置き換えられ、こうして分析物を塩の形からそれらの塩基の形に変換させ、それらの信号を増強する。
【0027】
時間が経つにつれて、サプレッサは、いくつかの再生サイクルを必要とする単一カラム装置(米国特許第3,897,213、3,920,397、3,925,019、3,926,559、及び5,597,734号に記載のものなど)から、連続的に再生されるインライン装置(米国特許第4,474,664に記載のものなど)に、より最近の電解再生装置(米国特許第4,459,357、4,403,039、4,999,098、及び5,248,426号に示されるものなど)に進化してきており、これらの特許の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
一般に、サプレッサに電圧を印加して、溶離液チャネルと再生液チャネルとの間でイオン交換を行う。溶離液を十分に抑制するために必要な電圧の量は、概して溶離液の流量及び濃度に依存する。
【0029】
本発明の様々な態様によれば、本明細書の方法及びシステムは、サプレッサの状態を判断して、サプレッサに供給されているのが不十分な電流か、最適な電流か、又は電流が多すぎるかを区別することによって、サプレッサの自己調節を可能にする。サプレッサの状態は、サプレッサのインピーダンスに基づいて決定され得、キャパシタンスは非抑制状態を示し得、抵抗は抑制状態を示し得、熱効果を伴う抵抗は過剰抑制状態を示し得る。
【0030】
ここで図面に目を向けると、同様の構成要素は、様々な図を通して同様の参照番号で示されており、本発明の様々な態様による例示的なクロマトグラフィ(IC)システム30を示す図1に注目する。ICシステムは、一般に、溶離液源32、試料注入バルブ33、イオンクロマトグラフィカラム35、サプレッサ37、及び電気伝導度検出器39を含む。本発明の様々な態様によれば、システムはまた、電源40及び制御ユニット42を含み、これらは、サプレッサの性能を改善又は最適化するために、サプレッサに印加される電圧を監視及び調整するように構成されている。制御ユニットは、一般に、1つ以上のプロセッサ及びメモリを含み、プロセッサは、様々なステップを実行するためのソフトウェアを走らせるように構成されている。
【0031】
電源は、サプレッサに電位を提供する専用電源としてもよく、その構成は、既存のICシステムを改造するのに特に適していることができる。電源及び制御ユニットは、ディスクリート構成要素であってもよく、又は、電源モジュール44に統合されてもよく、それは、新しいICシステムに一体的に提供されてもよく、又は別個に提供されて既存のICシステムを改造してもよい。
【0032】
一般に、試料は試料注入バルブ33を通して溶離液に導入され、得られた溶液は、サンプル内の分析物を互いに分離するためのクロマトグラフィ分離媒体が充填されている、カラム35に流入し、それを通って流れる。カラム35を出た溶液は下流にサプレッサ37へ導かれ、サプレッサ37は溶離液の電気伝導度を抑制するが、分離された分析物のイオン電気伝導度は抑制しない。
【0033】
通常、サプレッサ37は、イオン種を含む試料が流れる主要な溶離液又は液体試料チャネル46、及び再生液が流れる再生液又はイオン受容チャネル47を含む。そのようなサプレッサはIC抑制に特によく適しているが、そのようなサプレッサは試料の前処理及び他の用途に使用され得ることが理解されよう。このように、主要なチャネルは、イオン種を有する溶離液を抑制し得、又は代わりに、イオン種を含む液体を単純に前処理し得る。
【0034】
次いで、抑制された溶離液は、分解されたイオン種を検出するための電気伝導度検出器39などの検出手段へ下流に向けられる。電気伝導度検出器では、イオン種の存在が、イオン素材の量に比例する電気信号を生成し、こうして分離されたイオン種の濃度の検出を可能にする。電気伝導度検出器は、コンピュータ、処理装置、データ取得システム、又はデータを取得及び/又は処理するための他の適切な手段に動作可能に接続され得る。
【0035】
電気伝導度検出器39を通過した後、溶離液は、サプレッサ37のイオン受容チャネル47に導かれ、こうして、その全内容が、参照により全ての目的のために本明細書に組み込まれる、米国特許第5,352,360号に記載されているのと同様の様態で、サプレッサ37に水源を提供し得る。抑制された溶離液は、次いで、廃棄に向けられる。
【0036】
電気伝導度検出器39内の溶離液のガス放出を防止するために、システムは、溶離液がサプレッサのイオン受容チャネルに流れる前に通過する電気伝導度検出器の下流にある背圧コイル49を含み得る。背圧コイルは、抑制中に発生するガスのガス放出を防ぎ、電気伝導度検出器内の気泡の形成を防ぎ、こうしてノイズを低減し、検出器の精度を向上させるのに役立つ。
【0037】
上述のように、サプレッサは、イオン種を含む試料が流れる液体試料チャネル46と、再生液が流れるイオン受容チャネル47とを含む。チャネル間にイオン交換膜51があり、チャネル間で正又は負のいずれかの電荷のイオンの通過を可能にしながら、液体試料チャネルとイオン受容チャネルとの間で大量の液体の流れを実質的にブロックするように構成されている。
【0038】
サプレッサには、液体試料チャネル46と電気的に連通する第1の電極53と、イオン受容チャネル47に電気的に連通する第2の電極54とが設けられている。電極は、それぞれのチャネルに搭載又は埋め込むことができる平板又は他の構造の形態であり得る。電極は、サプレッサを通過する溶液に対して不活性である高電気伝導性の材料で形成され得る。この目的には白金が好ましい材料であるが、他の適切な材料が利用され得ることを理解されよう。電源から電極間に電位が印加される。
【0039】
電源40は、第1及び第2の電極53、54を介してサプレッサ37に電位を印加するように構成されている。N6705Cパワーアナライザと組み合わせたN6774A電源などの外部電源が使用され得、いずれも、Keysight Technologies of Colorado Springs,CO製である。システム30の1つ以上の構成要素内に組み込まれるか、又はシステムの外部に提供される、他の適切な電源装置が利用されてもよいことを理解されよう。
【0040】
電源は、サプレッサに動作電圧又はオフセット電圧VOSを提供するように構成されている。電源はまた、オフセット電圧VOSに加えて、サプレッサに印加電圧波形VAを提供するように構成され、その目的は以下で説明するように明らかになるであろう。
【0041】
様々な実施形態では、電源モジュール及び/又は制御ユニットは、測定、ハードウェア制御、及びデータ洞察のためにエンジニアリングソフトウェアを利用し得る。適切なエンジニアリングソフトウェアは、National Instruments of Austin,TXによるLabVIEWシステムエンジニアリングソフトウェアである。そのようなソフトウェアは、スタンドアロンのコンピューティング装置で提供され得、電源モジュール及び/又は制御ユニットのファームウェアに組み込まれるか、又はICシステムの他のファームウェア又はソフトウェアに組み込まれることを理解されよう。本発明の様々な態様に従って、多種多様な電源及び制御ユニットが利用され得ることを理解されよう。
【0042】
サプレッサの状態を判断するために、特性が、その3つの主な相:(1)抑制されていない、(2)抑制された、及び(3)過剰抑制された、においてサプレッサを区別するために識別される。残念なことに、これらの状態は、非抑制状態では電気伝導度信号が高く、多くの場合、分析物の存在下で負のピークが発生するため、電気伝導度検出器を使用して評価することは困難である。電気伝導度信号は一般に、抑制された状態で許容され(例えば、多くの場合、1.0μS/cm付近又はそれ未満)、分析物を識別する正のピークを有する。また、過剰抑制状態の電気伝導度信号は、抑制状態のものと容易に区別できない、すなわち、過剰抑制状態の電気伝導度信号は抑制状態のものよりも高いが、一般に抑制状態のものと同じ大きさであり、同様に正のピークを有するためである。
【0043】
したがって、本明細書に記載のシステム及び方法は、電気伝導度信号に依存しない。代わりに、本発明の様々な態様によれば、本明細書に記載のシステム及び方法は、サプレッサ自体の測定電流信号に依存する。また、サプレッサの測定電流信号を使用して、サプレッサのインピーダンスに基づいてサプレッサの主要な動作状態を区別し得る。
【0044】
システム内の電圧及び電流は、オームの法則に従って、一般にインピーダンスによって関連付けられる:
式(1) V=Z*I
ここで、Vは電圧、Zはインピーダンス、Iは電流である。インピーダンスは、所与の印加電圧での電流に対する障害である。また、インピーダンスの3つの形は、抵抗、キャパシタンス、及びインダクタンスである。純粋な抵抗の場合、電圧信号及び電流信号は同相であり、一般に互いに比例する。キャパシタンスの場合、電圧信号は電流信号よりも遅れる。また、インダクタンスでは、電圧信号は電流信号よりも進む。
【0045】
このようなインピーダンスを示す1つの方法は、方形電圧信号を印加し、電流信号の応答を観察することである。例えば、図3は、インピーダンスの様々な形態を示す。抵抗形式のインピーダンスは、入力方形電圧信号V(t)によく似た方形電流信号i(t)を有し、電圧及び電流波形の両方が同相で比例する。キャパシタンス形式のインピーダンスは、入力方形電圧信号V(t)と比較して遅れている方形電流信号i(t)を有し、ここでは、電流信号は電圧信号の微分である。また、インダクタンス形式のインピーダンスは、入力方形電圧信号V(t)と比較して進んでいる電流信号i(t)を有し、ここでは、電流信号は電圧信号の積分である。
【0046】
したがって、オフセット電圧VOSがサプレッサに印加されてサプレッサを動作させるとき、印加電圧に対するサプレッサの電流応答を監視するために、オフセット電圧VOSに加えて比較的小さな印加電圧波形VAがサプレッサに印加され得る。印加電圧波形VAが、周波数F及び振幅Aを有する振動方形波形で印加されるとき、組み合わされたオフセット及び印加電圧波形は、図4に示されるように表すことができる。また、サプレッサの電流が測定されると、オフセット及び印加電圧から生じる測定電流応答が、サプレッサのインピーダンス及び対応する動作状態に関して指標を提供する。
【0047】
図5に示されるように、サプレッサが抑制されていないとき、それは非常に容量性であり、測定電流応答は、最も左の測定電流応答に示されるように、減少する波形を提示する。サプレッサが抑制に近づくときキャパシタンスが低下するため、左から2番目の測定電流応答に示されるように、測定電流応答はより少ない減少する波形を提示する。
【0048】
サプレッサが適切に抑制されるとき、結果として得られる波形は実質的に方形波形になる。図5に示すように、中央の測定電流応答は、図4に示す印加電圧波形に大きく近似する。抑制された状態では、溶離液が主に水であるという事実により、インピーダンスは圧倒的に抵抗によって駆動される。したがって、測定電流応答は、実質的に同相であり、図4に示される印加電圧波形に比例する。
【0049】
過剰抑制状態では、サプレッサを通るより高い電流を引き起こし得る過電圧として追加の熱効果が生じる可能性がある。抑制プロセスに対して十分以上の電流があるため、過電流は熱に変換され得、これは、観測された測定電流信号の上向きの動きに反映されている。右から2番目の測定電流応答では、波形がわずかに増加し、最も右の測定電流応答はますます増加していることがわかる。
【0050】
上述の例示的なシステムを用いて、本発明の様々な態様によるICシステムのサプレッサを自己調節するための例示的な方法をここで説明することができる。
【0051】
図2を参照すると、電源は、振動オフセット電圧VOSをサプレッサに提供するように設定することができる。また、オフセット電圧VOSに加えて、印加電圧波形VAをサプレッサに提供するように電源が起動され得る。次いで、イオンクロマトグラフィランが、溶離液がサプレッサを通って流れるICシステム上で開始され得る。
【0052】
イオンクロマトグラフィラン中、サプレッサの電流は、オフセット電圧VOS及び印加電圧VAに応答して周期的に測定され、測定電流波形に基づいてサプレッサのサプレッサ状態が決定される。上部の電圧方形波形に対応する減少する電流は、サプレッサを通って流れる溶離液の非抑制状態を示し得、これは、サプレッサ内の電気キャパシタンス及び抵抗が原因であり得る。実質的に一定の電流は、抑制状態を示し得、これは、サプレッサ内の実質的に一定の電気抵抗が原因であり得る。また、上部の電圧方形波形に対応する増加する電流は、過剰抑制状態を示し得、これは、サプレッサ内の増加した電気抵抗及び熱効果が原因であり得る。
【0053】
サプレッサに供給されるオフセット電圧VOSは、サプレッサ状態に基づいて調整され得る。オフセット電圧VOSは、非抑制状態に対して増加され得る。オフセット電圧VOSは、抑制状態に対して維持され得る。また、オフセット電圧VOSは、過抑制状態に対して低下し得る。そのような調整は、経時的にサプレッサを通って流れる溶離液の変化する濃度に応答して、経時的にオフセット電圧VOSを変化させ得る。
【0054】
電圧波形は、電圧振幅A及び電圧周波数Fを有し得、印加電圧波形VAは、正のパルス幅及び負のパルス幅を有する波形電圧であり得る。様々な実施形態では、印加された方形波形電圧を利用して、容易に識別可能な正及び負のパルス幅を提供し、そこから得られる電流応答信号は、容易に識別可能な電流勾配を提供する。第1の所定の閾値よりも小さい正のパルス幅(SP)の電流勾配は、非抑制状態を示し得、第1の所定の閾値よりも大きく、第2の所定の閾値よりも小さい正のパルス幅(SP)の実質的に中性の電流勾配は、抑制状態を示し得、第2の所定の閾値よりも大きい正のパルス幅(SP)の電流勾配は、過剰抑制状態を示し得る。
【0055】
印加電圧VAは、正のパルス幅及び負のパルス幅を有する方形波形電圧を有し得る。印加電圧VAは、周期Tを有する振動電圧であり得、測定するステップ、決定するステップ、及び調整するステップが、周期Tごとに実行される。測定電流応答は、正のパルス幅勾配SP(例えば、図7の勾配SP)及び負のパルス幅勾配SN(例えば、図7の勾配SN)を有する。本発明の様々な態様によれば、(a)約0.1mA/sよりも小さい勾配SPは、非抑制状態を示し、(b)約0.1mA/s~0.3mA/sの勾配SPは、抑制状態を示し、及び(c)約0.3mA/sよりも大きい勾配SPは、過剰抑制状態を示す。また、(a)約-0.05mA/sよりも大きい勾配SNは、非抑制状態を示し、(b)約-0.05未満の勾配SNは、抑制又は過抑制状態を示す。
【0056】
調整するステップは、周期Tごとに調整電圧ΔVだけオフセット電圧VOSを調整し得る。様々な実施形態では、調整電圧ΔVは、印加電圧VAよりも小さい。また、いくつかの実施形態では、調整電圧ΔVは、振幅Aの10%未満である。例えば、調整電圧ΔVは、約5mVであってもよい。振幅Aの約0.01~10%のΔVは、過補正を回避しながら電圧を効率的に調整し得ることが理解されよう。
【0057】
様々な実施形態において、電源及び制御ユニットは、オフセット電圧VOS及び印加電圧波形VAをサプレッサに印加し、オフセット及び印加電圧VOSVAに対するサプレッサ応答の電流を測定するように、様々な方法で構成され得る。
【0058】
例えば、電源及び制御ユニットは、図6に示されるものと同様の繰り返しサイクルプログラムを実行するように構成され得る。このようなプログラムは、サプレッサの電流応答に基づいてサプレッサに提供されるオフセット電圧の自己調節を可能にし、それによって自己調節フィードバックループを作成する。プログラムは概して、次のように走ることができる:
A)電源がオンになり、パラメータが設定される。
B)電圧周波数及びサイクル時間が設定され(例えば、10秒のサイクル時間で0.1Hz)、そのサイクル内で単一の方形波が可能になる(例えば、結果として得られる電流波の上部が最初の5秒で発生し、下部は最後の5秒間に発生する)。
C)各サイクルの後、0.01秒~4.99秒の電流及び時間の情報を使用して、電流波の上部勾配(又はSP)が計算され、5.01秒~9.99秒の下部勾配(又はSN)についても同じことが行われ(例えば、mA/s)、勾配は、データを誤差が最小の最良の線形関数に当てはめ、その線形関数の勾配値を抽出することによって計算され得る。
D)各サイクルの後、オフセット電圧VOSが勾配値に基づいて増加又は低下し、上部勾配(又はSP)及び下部勾配(又はSN)のプリセット閾値は、それに応じてオフセット電圧を増加又は低下させるように設定される。
【0059】
上記は、サプレッサを動作させるために電源及び制御ユニットがどのように構成され得るかの一例にすぎない。所定の動作電圧(すなわち、オフセット電圧VOS)及び観察可能な印加電圧波形(すなわち、印加電圧VA)をサプレッサに印加し、サプレッサを自己調節するためにサプレッサの結果として生じる電流を測定するために、様々なプロトコル及びパラメータが利用され得ることが理解されよう。例えば、上部勾配又は下部勾配(例えば、図7の勾配SP及び勾配SN)のいずれかを個別に又は一緒に使用して、サプレッサの動作状態を評価することができる。
【0060】
本発明の様々な態様による1つの例示的な実験方法では、Dionex(登録商標)AERS(登録商標)500 4mmサプレッサに方形波形電圧を印加するために、以下のパラメータが使用された:10秒のサイクル時間、0.1Hzの周波数、100mVの振幅、及び+/-5mVのデルタ電圧ΔV(すなわち、オフセット電圧が10秒ごとのサイクル時間ごとに変更される量)。電流応答が図7に示されており、減少する測定電流応答信号は、サプレッサの非抑制状態を示し、無視できる勾配は、抑制状態を示し、増加する波信号は、過剰抑制状態を示すことを見ることができる。
【0061】
このような挙動に基づいて、測定電流応答信号の上部及び下部勾配の基準が定義されて、各サプレッサ状態を区別し得る。例えば、次の表は、各サプレッサ状態を区別するために利用され得る勾配の基準を定めている。
【表1】
【0062】
図7を参照すると、上部勾配(例えば、図7のSP)が約0.100mA/s未満である場合、非抑制状態が識別され得、上部勾配が約0.100~0.300mA/sである場合、抑制状態であり、上部勾配が約0.300mA/sを超える場合、過剰抑制状態である。非抑制状態はまた、下部勾配(例えば、SN)が約-0.050mA/sを超える場合にも識別され得る。
【0063】
上記の条件について、電源は、次のようにサプレッサへの電圧を調節し得る:
A)100mVの振動振幅を有する0.1Hzの方形電圧及び所与のオフセット電圧が、サプレッサに印加される。
B)結果として得られる電流信号の上部及び下部勾配が計算される。
C)下部勾配が-0.050mA/sよりも大きい場合、サプレッサの状態は自動的に非抑制として分類され、オフセット電圧は5mVの所定のΔVだけ増加される。
D)下部勾配が-0.050mA/s未満の場合、上部勾配が評価され、上部勾配が下がる範囲に基づいて、それに応じてオフセット電圧が調整される。
E)非抑制状態が決定されると、オフセット電圧は5mVだけ増加される。
F)抑制状態が決定されると、オフセット電圧は同じままにとどまる。
G)過剰抑制状態が決定されると、オフセット電圧は5mVだけ低下する。
H)サイクルは、10秒ごとに繰り返される。
【0064】
上部勾配(例えば、図7のSP)だけで、サプレッサの非抑制状態、抑制状態、及び過剰抑制状態を識別することができ得ることを理解されよう。また、下部勾配(例えば、図7のSN)だけで、サプレッサが抑制されていないかどうかを識別することができ得ることも理解されよう。また、3つのサプレッサ状態を識別するために、両方の勾配が一緒に利用され得ることも理解されよう。
【0065】
本発明の様々な態様によれば、溶離液を完全に抑制し、電気伝導度検出結果の精度を高めるように十分な電力がサプレッサに供給されることを保証することによって、サプレッサを自己調節することが可能である。また、不注意にサプレッサを過剰給電することによる過剰抑制を防ぐことができ、それは、サプレッサの寿命を大幅に延ばし得る。
【0066】
本明細書に記載のシステム及び方法は、電気伝導度検出器からのいかなるフィードバックもなしにサプレッサに対する所望の電圧が決定されるので、より単純な機器構成を提供し得る。実際、本明細書に記載のシステム及び方法は、溶離液濃度及び/又はサプレッサを通る流速を知らなくても、サプレッサに所望の電圧を提供し得る。
【0067】
勾配又は濃度変化の場合、本明細書に記載のシステム及び方法は、サプレッサへの自動的な電圧変更を可能にする。例えば、サプレッサを通る溶離液濃度が増加するにつれて、サプレッサへの一定の電圧は、より高い溶離液濃度の抑制不足をもたらす。しかしながら、本システム及び方法は、そのような非抑制状態を識別し、自動的に是正措置を取ることを可能にする。
【0068】
本方法及びシステムは、サプレッサの測定電流応答のみに依存するので、電源及び/又は制御ユニットは、既存のICシステムに対して容易に改造することができる。
【0069】
添付の特許請求の範囲における説明の便宜及び正確な定義のために、用語「上部」及び「下部」並びに同様の用語は、図に表示されるような特徴の位置を参照して、例示的な実施形態の特徴を説明するために使用される。
【0070】
本発明の特定の例示的な実施形態の前述の説明は、例証及び説明の目的で提示されている。網羅的であること、又は本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではなく、明らかに、上記の教示に照らして多くの修正及び変形が可能であり得る。例示的な実施形態は、本発明の特定の原理及びそれらの実際の適用を説明するために選択され、説明されており、それにより、当業者が本発明の様々な例示的な実施形態、並びにその様々な代替及び修正を作成及び利用することを可能にする。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物によって定義されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7